説明

複数のマイクロプリーツを有するカテーテルバルーン

マイクロプリーツをバルーンの円周沿いに分散させて付けた、少なくとも1つのバルーン材料で形成されるバルーンが提供される。マイクロプリーツはバルーンのプロファイルを小さくし、また膨張するとピンと張られて本質的に放射状対称になる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カテーテルバルーンのデザインはカテーテルを低プロファイルにしようとして種々の方法を組み込んできた。カテーテルの低プロファイルが望ましいのはカテーテル関連の合併症の可能性を少なくするためである。加えて、プロファイルが小さければ、曲がりくねった経路にカテーテルを使用でき、人体のより多くの部分にアクセス可能となり、また使用するガイドカテーテルを小さくすることも可能になる。カテーテルプロファイルを最小化するための従来のアプローチは、より薄いバルーン壁を形成可能にする材料を使用し、形成されたバルーン壁を折り畳み、パッキングして低プロファイルを実現するというものである。そうしたデザインはカテーテルプロファイルを比較的小さくするものの、均一なステント展開につながるデザインとはならない。
【0002】
ステント展開の均一性を向上させてきたバルーンデザインには一般に複数のひだがある。そうしたひだは「ウィング」又は「プリーツ」ともいう。公知のパッキングデザインには三折バルーンプロファイルや他の多重傾斜ウィングプロファイルなどがある。これらのパッキングデザインは狭窄拡張術に使用した場合に均一な拡張を実現するとはされておらず、動脈の外傷を招く可能性を高める。また、不均一なステント展開は面積あたりのステントセルサイズの不均一につながるし、組織及び/又はプラーク脱出にもつながりかねず、その場合には血流について管腔の面積が小さくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
求められているのは、生体内で膨張させたときにバルーン外周沿いの放射状対称を形成しやすくすることでイントロデューサーシース径を小さくし、導入時のアクセス部位及び膨張又は装置展開時の動脈壁への潜在的な外傷を少なくするような、フレキシブルなカテーテルバルーンのパッキングデザインである。展開後のステントセルを通るプラーク脱出を防止することも求められる。本発明はこうした積年の課題を解決し、均一なステント展開に寄与する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、長軸を有し少なくとも1つのバルーン材料から形成されたカテーテルバルーンであって、バルーン円周沿いにマイクロプリーツを分散させることにより低プロファイルで膨張時に本質的に対称となるカテーテルバルーンを提供する。本発明のバルーンは必要なイントロデューサーシースが小さくなるため低プロファイルを実現することができる。加えて、バルーンはバルーン自体の放射同心円状の膨張により血管外傷を少なくする。
【0005】
本発明はまた、バルーンにマイクロプリーツを形成する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】非膨張状態のマイクロプリーツ付きバルーンの横断面を示す。
【図2】公知技術の特徴を具体化した非膨張状態のひだ付きバルーンの横断面を示す。
【図3】非膨張状態のマイクロプリーツ付きカテーテルバルーンを示す。
【図4】膨張状態のマイクロプリーツ付きカテーテルバルーンの側面図である。
【図5】収縮状態のマイクロプリーツ付きカテーテルバルーンの平面図である。
【図6】カテーテルシャフトに取り付けたマイクロプリーツ付きカテーテルバルーンの略図である。
【図7】マイクロプリーツ未付加の未膨張状態のバルーンを覆う、収縮状態のエラストマーカバーを示す。
【図8】マイクロプリーツ未付加の膨張状態のバルーンを覆う、収縮状態のエラストマーチューブを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、バルーン材料から形成されたマイクロプリーツをバルーン円周沿いに分散させたカテーテルバルーンを提供する。マイクロプリーツはバルーンの進入プロファイルを小さくするが、膨張状態ではピンと張るように形成される。
【0008】
図1に示すように、本発明のカテーテルバルーン2は少なくとも1つのバルーン材料4から形成される。バルーン材料は長軸を有するバルーンへと形成され、バルーンにはマイクロプリーツ8が形成される。バルーンプリーツのサイズと分布は膨張径、非膨張径及びバルーン材料の厚さに左右される。
【0009】
マイクロプリーツ8はひだの付いたバルーン材料4の陥入部分であり、バルーン材料のポケット10を形成する少なくとも1つのひだ5又は屈曲を有する。ポケット10は開口11と少なくとも1つの側面と底12を備える。ポケットの内側は空洞であり、そこではポケットの最も遠い部分がポケットの底に隣接している。ポケットの側面13はバルーン開口からポケットの底まで延びて、ポケットへの開口の側面をなす。開口11は理想的にはポケットの底12の正反対に位置する。マイクロプリーツ8はバルーン円周沿いに分散している。各マイクロプリーツのポケットの底は、隣接するマイクロプリーツの他のいかなる部分とも接触又は重複しないように配向する。各マイクロプリーツは少なくとも1つのひだ5を有し、バルーン材料の折り畳み収納を可能にする。図ではマイクロプリーツはその軸方向が長手方向で示されているが、分散させるマイクロプリーツの配向はらせん状、S字型、その他でもよい。一実施形態では、図1に示すように、材料を折り畳んで少なくとも1つのポケットを形成し、ポケットの底の少なくとも50%を、非膨張状態のバルーン管腔に並列させてバルーンの内側の上に位置させる。より好ましい実施形態では、ポケットの底の少なくとも75%を、バルーン管腔に並列させてバルーンの内側の上に位置させる。最も好ましい実施形態では、ポケット底の少なくとも90%を、バルーン管腔に並列させてバルーンの内側の上に位置させる。カテーテルバルーンは内部管腔を有する長軸と、外周を形成する少なくとも1つのバルーン材料と少なくとも1つのマイクロプリーツとを有する。マイクロプリーツはバルーン材料のポケットを含むが、ポケットは管腔から始まる開口、底、及び側面を有し、各側面は折り畳まれてポケットの底を開口と結び付ける。マイクロプリーツはプロファイルを小さくし、またバルーン材料を膨張時まで折り畳み構造の中に収納する。マイクロプリーツは膨張状態でピンと張るように形成する。膨張圧を受けると、バルーンは本質的に放射状対称の膨張を示し、臨床使用時に等しい静水圧荷重を与える。放射状対称の膨張を示すのは、非膨張状態のバルーンが膨張圧を受けて膨張し、膨張した状態でもバルーン上の点が互いの比例的な間隔を維持できる場合である。本発明のバルーンをステントと併用する場合、バルーンの放射状対称の膨張は均一なステント展開にも寄与する。そうした均一な放射状の膨張はバルーンを展開する血管への外傷を少なくすることも判明している。
【0010】
図2は従来のデザインのひだ付きバルーンの断面図である。図で明らかなように、材料は折り畳まれ、バルーンの管腔6の周りを長いひだが包んでいる。この折り畳みパターンでは、管腔6の周りのひだが隣接するひだと重複している。内部膨張圧がポケットの開口から入り空洞を満たした後でポケット側面が短くなるので、非対称膨張が起こる。図1に示すように、マイクロプリーツでは短い側壁が膨張圧力を受けて円周方向に伸びるので、対称膨張が可能になる。マイクロプリーツは対称性を有し、分散が均一である。
【0011】
マイクロプリーツの配向は多様でよい。本発明の一実施形態では、図3に示すように、マイクロプリーツ8はバルーン2の作動長にわたって長手方向に、すなわちカテーテルの長軸20とほぼ平行に配向する。長手方向のマイクロプリーツはバルーン径の円周沿いに均一に分散させる。必要なら、膨張性バルーン部分とは別にバルーンシール16がカテーテルシャフト14上に存在してもよい。バルーン中のマイクロプリーツ数は様々であってよく、6個以上であってよい。好ましい実施形態のバルーン径は1.0mm以下である。しかし、マイクロプリーツは任意径のバルーンに有効であろう。図4に示すような膨張状態では、バルーンのマイクロプリーツ8はピンと張られ、見えなくなる。マイクロプリーツは成形したバルーン2上又はバルーン材料の管状構造上に設けることができる。
【0012】
バルーンにマイクロプリーツを付ける方法はいろいろある。たとえば図5に示すように、非膨張バルーンをカテーテルシャフト14に付着させ、次いで膨張させて膨張外径を実現する。次いでバルーンの膨張外径に半径方向の圧縮力を加えバルーンを収縮させて、バルーン材料4に長手方向のひだを形成させる。マイクロプリーツ8のひだ5をセットするために、圧縮力と共に熱を加えて、バルーンにマイクロプリーツ構造を維持させる(図6)。一般に、膨張したバルーン径と収縮した/パッキングされたバルーン径との比が増加するにつれて、プリーツ数は増加する。バルーンシール16は参考のために示している。また、プリーツ数はバルーン壁の厚さが減るにつれて増加する。
【0013】
一態様では、平均マイクロプリーツ幅は、膨張/径バルーン径と無関係に、1mm未満、好ましくは0.7mm未満である。
【0014】
パッキング又はマイクロプリーツ加工するバルーンをカテーテルシャフト14上に置くことによって、バルーンにマイクロプリーツを付けることができる。次にバルーンをカテーテルシャフトにヒートセットし、その上に小径のエラストマーチューブ18たとえばシリコーンチューブ又は他の好適な材料を巻き下ろす(図7参照)。エラストマーチューブは一端をバルーンシール16でシールし、開放端側を膨張させる。チューブの膨張内径は、最終的な膨張状態にあるときの所望のバルーン外径よりも大きくする(図8参照)。次に、ヒートセットバルーンをこのエラストマーチューブ18の中で膨張させる。次に、膨張させたヒートセットバルーン上にエラストマーチューブ18を収縮させる。エラストマーチューブ18のエラストマーはこの段階で、膨張したバルーンに半径方向の圧縮力を加え、膨張したバルーンを収縮させて、バルーン材料4にマイクロプリーツを生じさせる。次いで、エラストマーチューブ18をマイクロプリーツ付きのヒートセットバルーンから取り去る。
【0015】
本発明に好適なバルーン材料の種類では、フルオロポリマーと第2ポリマーとを含んでなる材料が好ましい。フルオロポリマー成分に適する一般的なフルオロポリマーはPTFE又は延伸PTFE(ePTFE)であるが、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどのような他の繊維強化高配向材料を使用してもよい。第2ポリマーとしての使用に適するポリマーの非限定的な例はエラストマーたとえばウレタン、芳香族及び脂肪族ポリウレタン、熱可塑性ポリウレタン、ポリエステル熱可塑性プラスチック、スチレンブロックコポリマー、シリコーンなどである。あるいはPTFEなどのような第2のフルオロポリマーを第2ポリマーとして使用してもよい。前述の方法は非膨張バルーンのバルーンプロファイルが、膨張とその後の収縮後も本質的に同じプロファイルに戻ることを可能にする。本質的に同じプロファイルとは、収縮後のプロファイルサイズの変化が膨張前のプロファイルと比較して30%以下であることを意味する。
【0016】
本発明の複合フィルムは多孔質強化層と連続ポリマー層とを含んでなる。多孔質強化ポリマー層はシート成形が可能な薄く丈夫な多孔質膜であるのが好ましい。多孔質強化ポリマーは、オレフィン、PEEK、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエチレン及びポリテトラフルオロエチレンを非限定的に含んでなるポリマー群より選択してよい。好ましい実施形態では、多孔質強化ポリマーはePTFEであり、援用により開示されるBacinoの米国特許第5,476,589号明細書又は米国特許出願第11/334,243号明細書の教示に従って製造してもよい。この好ましい実施形態では、ePTFE膜は一方向への配向性が高く、異方性である。一方向のマトリクス引張強度が690MPa超のePTFEが好ましく、960MPa超ならなお好ましく、1,200MPa超なら最も好ましい。ePTFE膜のこのひときわ高いマトリクス引張強度は、複合材料が膨張したバルーン形態で超高フープ応力に耐えられるようにする。さらに、ePTFE膜の高いマトリクス引張強度は、非常に薄い層を使用可能にして、収縮したバルーンのプロファイルを小さくする。バルーンを小さい動脈又は静脈又は開口部に置けるようにするには、プロファイルを小さくする必要がある。バルーンを体のある部位に置くためには、バルーンカテーテルは小さい曲げ半径を通って進めることが可能でなければならないが、薄い壁のチューブは一般により一層しなやかであり、そのため血管壁にしわを寄せたり血管壁を傷付けたりせずにこのように曲げられる。
【0017】
別の好ましい実施形態では、ePTFE膜は比較的機械的に均一である。機械的にバランスのとれたePTFE膜は、ePTFE膜から作られる複合フィルムが耐えられる最大フープ応力を高められる。
【0018】
本発明の連続ポリマー層は多孔質強化ポリマーの少なくとも片面にコーティングされる。連続ポリマー層は好ましくはエラストマーであり、その非限定的な例はコポリマーを含む芳香族及び脂肪族ポリウレタン、スチレンブロックコポリマー、シリコーン好ましくは熱可塑性シリコーン、フルオロシリコーン、フルオロエラストマー、THV及びラテックスである。本発明の一実施形態では、連続ポリマー層は多孔質強化ポリマーの片面だけにコーティングされる。連続ポリマー層は多孔質強化ポリマーの両面にコーティングしてもよい。好ましい実施形態では、連続ポリマー層は多孔質強化ポリマー中に吸収され、吸収されたポリマーは多孔質強化ポリマーの細孔を満たす。
【0019】
連続ポリマー層は積層、トランスファーロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、リバースロールコーティング及び溶液コーティング又は溶液吸収などを非限定的に含む任意の従来法によって多孔質強化ポリマーに適用することができる。好ましい実施形態では、連続ポリマー層は溶液吸収法で多孔質強化ポリマーに適用する。この実施形態では、連続ポリマー層を好適な溶媒に溶解して、ワイヤーロッド法を用いて多孔質強化ポリマーの表面及び全体にコーティングする。コーティングされた多孔質強化ポリマーを次に溶媒オーブンに通し溶媒を飛ばして、連続ポリマー層が多孔質強化ポリマーの表面及び全体にコーティングされる。連続ポリマー層にシリコーンを使用するときなどのように、コーティングされた多孔質強化ポリマーは溶媒を飛ばす必要がない場合もある。別の実施形態では、連続ポリマー層は多孔質強化ポリマーの少なくとも片面にコーティングされ、その後硬化が可能な「生(green)」の状態に維持される。たとえば紫外線(UV)硬化性ウレタンを連続ポリマー層として使用し、多孔質強化ポリマーの表面にコーティングしてもよい。多孔質強化ポリマーとUV硬化性ウレタンの連続ポリマー層とを含んでなるこの複合フィルムは次に、少なくとも1つのバルーン層を形成するように巻き付けて、次いでUV光を照射して硬化させることができる。プライ(ply)とは巻き付けで適用される層の数であり、層(layer)はバルーンの周りに巻き付けられる複合フィルムの単一層である。
【0020】
本発明の特定の実施形態を説明してきたが、本発明は以上の説明に限定されない。後続の特許請求の範囲内で本発明の一部として種々の変化や態様変更を加えられることは自明である。
【0021】
以下の実施例は本発明の説明が目的であり、本発明の限定又は本発明の趣旨からの逸脱を目論むものではまったくない。
【実施例】
【0022】
例1−バルーンの例
本発明のバルーンカテーテルのバルーン部分はマイクロプリーツをその外周沿いに分散させて付けてあるが、Balloon Development Station Model 210A (Beahm Designs社; 米カリフォルニア州キャンベル)とディスペンシングチップ(品番:5121-1-B, FED, Inc.; 米ロードアイランド州イーストプロビデンス)とを使用して白金触媒硬化シリコーンチューブ(品番:30400, Saint-Gobain Performance Plastics社; 米マサチューセッツ州タウントン)の50mm部分を膨張させて製造した。まず、Touhy Borstアダプター(品番:80369, Qosina社; 米ニューヨーク州エッジウッド)を使用してチューブの一端をディスペンシングチップに取り付けた。シリコーンチューブはおよそ275kPaまで膨張させた。完全に膨張したところで、チューブを膨張させたまま圧力を約130kPaに急降下させた。シリコーンチューブがなお膨張している間に、1.5mm径のPTFE被覆マンドレル(New England Precision Grinding, Inc.; 米マサチューセッツ州ホリストン)をチューブに約100mm挿入した。チューブを収縮させ、チューブが収縮しマンドレルを圧迫する際に、長さを一定に保つように手で十分に張力を与えた。チューブを100mmほどの長さにカットしドーナツ状に巻き上げ、ディスペンシングチップからはずした。
【0023】
本例の巻き付けバルーンはバルーン管腔の周りの長手方向パスをなすバルーン材料からなった。長手方向パスはバルーンの長軸に対しほぼ同じ角度をなす1つ又は複数の材料層からなる。長手方向パスは、周辺又は隣接部分とは異なる領域又は区域を形成する特徴的な1つ又は複数の巻き付けられた材料層を含む。なお、パスはバルーンの全長にまたがってもよいし、特定の例たとえば非膨張領域などのようにバルーンの部分長だけにまたがってもよい。
【0024】
層は1つのストランド、ストリップ又は厚さのバルーン材料であるとみなされ、別のストランド、ストリップ又は厚さのバルーン材料の上に、周りに、横に又は下において、巻き付けられ、折り畳まれ、置かれ又は織られることができる。
【0025】
長手方向パスは、単一の巻き付け角度でバルーン全長にまたがる場合もあることは明らかだが、連続した長手方向の巻き付けの途中で巻き付け角度が変化するような巻き付けを含んでもよい。従って、この種の巻き付けパターンでは単一のパスに複数の巻き付け角度が含まれることになる。
【0026】
4mm径×40mm長のバルーンを、前述のようなほぼ3層のePTFE/eFEPフィルム複合材をらせん状に巻き付けておいた0.36mm径ステンレス鋼ハイポチューブ(Creganna Medical Devices社; アイルランド、ゴールウェイ州Parkmore West)に取り付けた。このバルーンをカテーテルシャフトに、約5mm幅のePTFE/eFEPフィルムをバルーンの外周にほぼ5回巻いて取り付け、シールした。各バルーン端にバンドを1枚巻き付けて、バンドがバルーン端とカテーテルで等分される位置でハイポチューブシャフトとバルーンの両方と接触するシールとなるようにした。
【0027】
巻き上げたシリコーンチューブは約20mm長の巻き上げていないテール部を付けた状態でマンドレルからはずし、次いで前述のカテーテルシャフトに取り付けた完全収縮バルーン上に巻き下ろした。取り付けた複合材バルーン上へのシリコーンチューブの巻き下ろしでは、巻き下ろしシリコーンチューブの端が複合材バルーンの端よりも少し突き出し、カテーテルシャフトに対するシールとなるようにした。次いで、ディスペンシングチップとBalloon Development Station Model 210Aを用いてシリコーンチューブをテール部から約130kPaに膨張させ、その内径が約4.5mmとなるようにした。シリコーンチューブが完全に膨張したところで、別個のBalloon Development Station Model 210AとTouhy Borstとを用いて約130kPaでバルーンカテーテルを4mm径に膨張させた。
【0028】
次に、チューブの軸方向長さがまったく変わらないようにしながら、シリコーンチューブを完全に収縮させた。シリコーンチューブの軸方向長さを固定したままバルーンを収縮させることで、シリコーンチューブから複合材バルーンに対して法線方向の圧縮力と接線方向の剪断力の両方がかかるようにした。この剪断力はシリコーンチューブ内径の円周の縮小と二つの表面間の表面摩擦とから生じた。これらの複合的な力によってバルーン外周沿いに均一に分散したいくつもの長手方向プリーツが形成された。
【0029】
バルーンカテーテルとシリコーンチューブの両方をインフレーションデバイスから取り外した後、550kPa、150℃、30秒に設定した熱スエージ加工機を使用してこのアセンブリーをスエージ加工すなわち半径方向に圧縮した。バルーンを全長にわたってスエージ加工してマイクロプリーツをヒートセットした。次いで、シリコーンチューブを130kPa空気圧に膨張させ、バルーンカテーテルから巻き戻して除去した。この方法により、密にパッキングされた長手方向マイクロプリーツ付きバルーンがカテーテルに取り付けられシールされた状態で得られた。
【0030】
例2−パッキングしたマイクロプリーツ付きバルーンの拡張
例1に従って4mm径バルーンを折り畳んだ。バルーンは、非膨張状態で、各行が11個の直線状の標識点をもつ2つの平行な行により標識した。第1行の標識点の位置は第2行の対応する標識点の真上で一致させて、11の列が形成されるようにした。膨張圧がかかると、各行の標識点はバルーン壁と共に放射状に膨張し、隣接する標識点間で相対的に等距離の間隔を示した。従って、膨張バルーン表面の行は、非膨張バルーン表面の当初の標識した行と類似する配置の行をなす直線状の標識点を維持した。加えて、第2行の直線状の標識点も、当初の標識した行と類似の配置をなす直線状の行を維持し、また2つの平行な行における等距離の垂直間隔も非膨張バルーン表面の標識点の当初の配置と類似した。バルーンは放射同心円状対称に膨張したことが分かった。
【0031】
例3−パッキングしたマイクロプリーツ付きバルーンの拡張
例2で説明したバルーン表面に同様の標識を施したが、ここでは行を4行にし、各行11個の標識点が平行な行と列を形成するように配置した。膨張圧がかかると、各行の標識点はバルーン壁と共に放射状に膨張し、対応する行の隣接する標識点間で相対的に等距離の間隔を示した。同様に、列もバルーン壁と共に放射状に膨張して、対応する列の隣接する標識点間で相対的に等距離の間隔を示し、列と行の間の平行配置を維持した。従って、膨張したバルーン表面の行と列はどちらも非膨張バルーン表面の当初の標識した列と類似の配置をなす直線状の標識点を維持し、やはり膨張時に放射同心円状対称を示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長軸を有し内部管腔と少なくとも1つのマイクロプリーツを付けた外周を形成する少なくとも1つのバルーン材料とを含んでなるカテーテルバルーンであって、該マイクロプリーツはバルーン材料のポケットを含み、該ポケットは該管腔から始まる開口、底、及び側面を有し、各側面は折り畳まれてポケットの底が管腔に隣接しているカテーテルバルーン。
【請求項2】
膨張が本質的に放射状対称である請求項1に記載のバルーン。
【請求項3】
ポケットの底はポケットの開口と並んでいる請求項1に記載のバルーン。
【請求項4】
放射状対称は均一なステント展開とステント円周に沿った均一なステントセルサイズに寄与する請求項2に記載のバルーン。
【請求項5】
マイクロプリーツは長手方向に配向する請求項1に記載のバルーン。
【請求項6】
マイクロプリーツはらせん状に配向する請求項1に記載のバルーン。
【請求項7】
膨張が本質的に放射状対称である請求項6に記載のバルーン。
【請求項8】
膨張は臨床使用時に等しい静水圧荷重を付与する請求項1に記載のバルーン。
【請求項9】
放射状対称は均一なステント展開とステント円周に沿った均一なステントセルサイズに寄与する請求項2に記載のバルーン。
【請求項10】
マイクロプリーツは長手方向に配向する請求項9に記載のバルーン。
【請求項11】
マイクロプリーツはらせん状に配向する請求項9に記載のバルーン。
【請求項12】
少なくとも1つのバルーン材料はPTFEとエラストマーとを含んでなる請求項1に記載のバルーン。
【請求項13】
マイクロプリーツは本質的にS字型である請求項1に記載のバルーン。
【請求項14】
長手方向のマイクロプリーツはバルーン径の円周沿いに均一に分散される請求項5に記載のバルーン。
【請求項15】
6個以上のマイクロプリーツを付けた請求項1に記載のバルーン。
【請求項16】
マイクロプリーツは膨張状態ではピンと張られて見えなくなる請求項1に記載のバルーン。
【請求項17】
各マイクロプリーツは隣接するマイクロプリーツの他のいかなる部分とも接触又は重複しないように配向する請求項1に記載のバルーン。
【請求項18】
非膨張状態で間隔が1.0mm未満である複数のマイクロプリーツを付けた請求項1に記載のバルーン。
【請求項19】
バルーンにマイクロプリーツを付ける方法であって、次の各ステップを含む方法:
a. バルーンを膨張させて膨張外径を実現する
b. 膨張外径に半径方向の圧縮力を加える
c. バルーンを収縮させてバルーンに長手方向のひだを付ける
d. ひだをセットするに足る熱と圧縮力を加える
及び
e. バルーンから熱と圧力を除去してマイクロプリーツ付きバルーンを形成する。
【請求項20】
ステップ(a)のバルーンはフルオロポリマーとポリマーとから構成される請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ポリマーはエラストマーである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ポリマーはウレタンである請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ポリマーは第2のフルオロポリマーであるである請求項20に記載の方法。
【請求項24】
フルオロポリマーはPTFEである請求項20に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(d)のひだは本質的にS字型である請求項19に記載の方法。
【請求項26】
ひだはバルーン径の円周に沿って配置される請求項19に記載の方法。
【請求項27】
非膨張状態のバルーンプロファイルは収縮後のバルーンプロファイルと本質的に同じである請求項19に記載の方法。
【請求項28】
バルーンにマイクロプリーツを付ける方法であって、次の各ステップを含む方法:
a. バルーンをヒートセットする
b. ヒートセットバルーン上に小径エラストマーチューブを巻き下ろす
c. エラストマーチューブの一端をシールする
d. エラストマーチューブを開放端から膨張させる
e. チューブを膨張させて、膨張したヒートセットバルーンの所期外径よりも大きい内径を実現する
f. ヒートセットバルーンを膨張させる
g. エラストマーチューブを収縮させる
h. ヒートセットバルーンを収縮させて軸方向のひだを形成させる
i. 熱と圧縮力を加えて軸方向のひだをセットする
及び
j. マイクロプリーツ付きヒートセットバルーンからエラストマーチューブを除去する。
【請求項29】
エラストマーチューブはシリコーンである請求項28に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−500112(P2010−500112A)
【公表日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−523784(P2009−523784)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際出願番号】PCT/US2007/017307
【国際公開番号】WO2008/021019
【国際公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】