説明

複数の生物試料を同時に自動的に破壊するための方法及び装置

本発明は、生物試料(9)を分解するための方法に関し、該方法は、以下の工程:試料(9)を、特にはプラスチックからなる容器(6)中に入れる工程、容器(6)をアダプター(2、2a)中に挿入する工程、および該アダプターをその中の密閉された容器とともに、自動様式でアダプターを前後、特には上方に動かす装置に連結する工程、を含む。該方法は、生物試料を自動様式で分解することを可能とし、室温における試料および凍結試料のいずれにも適したものである。本発明はまた、該方法を実行するための装置に関し、該装置は、アダプター(2、2a)を含み、該アダプターは、主としてプラスチックからなりそしてスリーブ(4)を有し、該スリーブは、金属からなりそして特にプラスチックからなる容器(6)を収容するように意図されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理のための、すなわち、例えば試料からの核酸またはタンパク質の分離のための、植物または動物試料を破壊するための方法および装置に関する。このような調製および試験は、標準処理指示書に従って、検査技師によって試験室で行われる。いわゆるプロトコールは、このような処理指示書の一部である。E.coliからプラスミッドDNAを単離するためのこのようなプロトコールの例は、ドイツ公開特許公報第10153957A1号から明らかである。
【背景技術】
【0002】
試料を所望の方法で処理するためには、すなわち核酸およびタンパク質を分離するためには、例えば、いわゆる「キット」が、試料および所望する結果に応じて商業的に入手可能であり、例えば、キアゲン(www.Qiagen.com)による「ウルトラクリーン組織DNA分離キット」をあげることができる。前もって定められたプロトコールに従ってこのようなキットを用いて試料を処理する前に、試料は、適した手段で調製されなければならない。
【0003】
従来技術より公知のこのような典型的な調製を以下に記載する。
例えば、器官を、実験室動物、例えばラットから取りだす。動物の組織の選択は、目的に応じてなされる。取り出された動物の器官または組織は、洗浄緩衝溶液、例えばPBS(リン酸緩衝生理食塩水:以下の成分、Na2HP4(乾燥)、NaH2PO4(乾燥)、NaCl及び蒸留水を含む)で洗浄される。洗浄処理により、取り出された部分の組織は、血液が存在しない状態にて提供されそして望まない成分もない状態になる。
【0004】
次いで、取り除かれた組織は、とりわけ細胞内活動を停止するために液体窒素で冷却される。さもなければ、引き続く処理に付すために望まれる品質にて所望の情報を得ることができなくなるであろう。典型的には、例えば37℃の体温をもつ組織は上記処理にて液体窒素中に浸けられる。組織は、泡の生成が終わる直前に、液体窒素から引き上げられる。次いで組織は、例えばドライアイスを用いて−80℃にて保存される。
【0005】
液体窒素中での冷却工程を避けるべき場合は、その代わりに、取り除いた組織を、洗浄処理に引き続いて、例えば、RNAlater(登録商標)等の安定化剤を用いて化学的な保存を行う。RNAlater(登録商標)は、新鮮組織の保存のためにアンビオン(www.ambion.com)社によって開発された粘性のある液体である。保存効果は、主として、水分の除去による組織中のすべての酵素の不活性化および細胞活性の停止に基づいている。粘性液は、組織のすべての細胞に素早く拡散しなければならない。それゆえ、組織片の大きさは、ほとんどの場合、1/2センチメーターの辺長に制限される。化学処理の後、このように処理された組織もまた、次の処理まで保存のために−80℃に冷却される。
【0006】
典型的には、所望の試験、分離その他を実施可能とするためには、10〜100mgの組織の処理が要求される。処理に先立ち、要求される量の動物組織が、例えば、外科用メスを用いて切断される。
【0007】
別々にまたは組み合わせて、今まで記載された試料の調製工程が以下に記載する本発明の特徴となることができる。
【0008】
切断された試料、すなわち、切断された組織は、今度は破壊される。つまり、細胞壁が開かれなければならないという意味である。このことは、機械的に、化学的にまたは酵素的に行うことができる。機械的な破壊は、例えば、キアゲン社の「組織ルプター(TissueRuptor)を用いて行うことができ、それは、キアゲン社(ドイツ、ヒルデン)によって2006年7月に発行された組織ルプターハンドブックから公知である。この場合は、回転ブレードが、1分間35,000回転で、組織の細胞壁を分解する。一般に、機械的破壊は、含有物例えば核酸へのダメージを避けるために緩衝液中で行う。
【0009】
緩衝液、すなわち、化学物質の存在下、容器中で行う機械的破砕は、欧州公開特許公報1577011A2号から公知である。
【0010】
低温ミル中での試料の調製もまた知られている。例えば、http://www.laborpraxis.de/fachartikel/lp_fachartikel_nh_2384859.html、2007年3月12日を参照できる。この積極的に冷却されたミル中で、試料は、液体窒素の温度にてすりつぶされる。試料は、液体窒素に接触することなしに、全粉砕工程中、深凍結状態に保たれる。この技術的にかなり複雑な方法は、上記した方法が使えないような試料の場合、例えば、骨等の非常に固い物質、または皮膚等のコラーゲン含有物質の場合に行うことができる。骨を調製する場合は、液体窒素を満たした容器にそれをいれて、金属ピンでそれを粉砕することもまた知られている。骨はその後、粉末状態で提供される。
【0011】
顕微鏡を用いた歴史的な試験が行われる場合は、次いで、まず試料にパラフィンを浸透させ、固ため、そしてミクロトームを用いて組織を薄層に切断する。
【0012】
植物試料が処理される場合は、外科用メスを用いてそれらをある大きさに切断することは、柔らかい物質、例えば、葉や柔らかい豆等の場合にのみ可能である。乾燥または凍結植物試料の場合は、それらを液体窒素中で冷凍し、液体窒素で積極的に冷却したすり鉢中で乳棒を用いてすりつぶす。
【0013】
ドイツ特許明細書738286号は、細胞を分解するために、分散液とともに細胞を凍結しすりつぶすことを教示している。
【0014】
食材、例えばスパイスのための粉砕/混合装置は、ドイツ公開特許公報第602005001256T2号および国際出願公開WO2004/082837A1号公報のそれぞれから明らかである。装置は、粉砕される食材とともにその中に置かれる球体をもった中空体を含む。
【0015】
米国公開特許第2004/0144874A1号公報、特開2006−051505号公報、特開2002−066366号公報および特開平3−186360号公報は、ボールミルおよびそれと類似の装置の他の例を開示している。生物試料を破壊するための方法は、これらの公報からは明らかでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】ドイツ公開特許公報第10153957A1号
【特許文献2】欧州公開特許公報1577011A2号
【特許文献3】ドイツ特許明細書738286号
【特許文献4】ドイツ公開特許公報第602005001256T2号
【特許文献5】国際出願公開WO2004/082837A1号公報
【特許文献6】米国公開特許第2004/0144874A1号公報
【特許文献7】特開2006−051505号公報
【特許文献8】特開2002−066366号公報
【特許文献9】特開平3−186360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記した方法での試料の調製は、処理後に、できる限り良い求める結果を得ることを目的としている。従って、本発明の一つの目的は、生物試料を適当でかつ簡易に破壊することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
目的の解決は、特許請求の範囲の請求項1の特徴を含む。その方法を実施するための装置は、独立した特許請求の範囲の特徴を含む。有利な実施態様は、従属する特許請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、アダプター1の側断面図を示す。
【図2】図2は、挿入体2aを置くスタンドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
適当に調製された試料は、プラスチックからなる容器中へと挿入される。プラスチック容器は、アダプター中へと挿入される。プラスチック容器は、次いで、密閉される。アダプターの蓋によっても密閉することが可能である。しかしながら好ましくは、破壊処理後にプラスチック容器がアダプターから取り出された場合にも密閉されているように、プラスチック容器はそれ自身が蓋を有する。さらに、プラスチック容器は再利用されず最終的に廃棄される場合は、クリーニングの労力を最小化できる。アダプターは、今度は、装置に連結され、装置は、試料を破壊するために、自動的にアダプターを往復移動、特には、上下運動させる。特には、アダプターは、複数の生物試料を同時に破壊可能とすべく、複数のプラスチック容器を収容できるように構成される。
【0021】
試料は、特に、プラスチック容器内への挿入に先立って適当に調製され、それは、試料を第一に洗浄し、次いで、液体窒素または化学的手段、すなわち、例えば、米国会社であるアンビオン(米国、フォスターシティ)のRNAlater(登録商標)、または、ウェブページ(http://www1.qiagen.com/products/RnaStabilizationPurification/AllprotectTissueReagent.aspx)に従ったキアゲンのオールプロテクト(AllProtect)を用いて保存することによって行われる。主としてプラスチック容器の大きさに依存して、適当に調製された試料が、完全にあるいは部分的に、プラスチック容器内に入れられる。もし試料の一部のみが入れられる場合は、その部分を、例えば外科用メスを用いて、切り取る。
【0022】
化学的な保存の場合は、保存されるべき試料は小さくなければならないので、プラスチック容器は、好ましくは、小さな試料をやっと収容できるように必要な大きさにする。従ってこの理由のため、調製されるべきものが、小さな試料のみ、好ましくは50mgより少ない、特に好ましくは30mgより少ない量である場合は、改善された手段によって、操作誤差を避けられる。
【0023】
本発明の方法は、試料の自動的な破壊を、すなわちいくつかの方法により可能とする。第一に、凍結または化学的に保存された試料を、挿入された状態で密閉されているプラスチック容器中にいれることにより、装置全体の他の構成成分の汚染を避けることができる。プラスチック容器は、試料を破壊した後に、経済的理由より再利用の必要がないように、安価な使い捨ての物品である。従って、使用済みのプラスチック容器の洗浄は、なしで済ませることができる。アダプターは、試料がその中に置かれた複数のプラスチック容器を収容できるので、複数の試料を同時に破壊することができる。
【0024】
一方、アダプターは、基本的には、適当にそして簡易にアダプターを準備できるように、装置から分離された要素である。特には、そのような場合は、試料を入れたプラスチック容器を挿入する前に、アダプターを、例えば、冷凍機中でまたはドライアイスを用いて、特には、−20℃〜−80℃の温度範囲にて冷却することが容易に行え、それによって、能動的冷却がないにもかかわらず、試料が溶ける心配無しに、凍結試料を破壊することができる。
【0025】
特許請求の範囲に従った教示は、植物ならびに動物およびヒトの組織の両方に、そして植物、または組織の固められたおよび新鮮な試料の両方に利用できる。さらに、破壊は、化学的に保存された試料では室温にて、そして凍結された試料では低温にて、非常に簡単な手段で可能である。
【0026】
破壊中、凍結試料を適当な冷却状態に確実に維持するために、アダプターは、一つの実施態様においては、一つの好ましくは複数の、プラスチック容器中に挿入される金属製囲いを含む。その上、アダプターは、完全にまたは少なくとも主としてプラスチックからなる。金属製囲いは、プラスチック容器を十分な長さの時間に渡って、冷えた状態に保つために必要な熱容量をもつ。さらに、アダプターは、完全にまたは部分的に主としてプラスチックからなり、その結果、アダプターは、あまり重くはなく、もっと非常に困難な取扱いを可能とするであろう。
【0027】
本発明の一つの実施態様において、深凍結試料を、少なくとも一つの移動可能な固い物体を追加的に含む冷却したプラスチック容器中に入れる。次いで、冷却したプラスチック容器は、冷却したアダプターまたは冷却したアダプターの金属製囲い中に入れられる。一つの実施態様においてアダプターが冷却される温度は、凍結試料を破壊中に融解から確実に防ぐために、−50℃より低くすべきである。好ましくは、温度は、おおよそ−80℃、例えば、−70℃〜−90℃を選択すべきである。−80℃、または−70℃〜−90℃は、ドライアイスを用いたまたは冷凍機内での、対費用効果の高い方法によって提供できる。特に良い結果が、およそ−80℃に冷却することによって得られうることが判った。−80℃より低い温度は、ある程度まで可能である。しかしながら、アダプターは、破壊を行うために過剰に冷却してはいけないという事実に注意を払うべきである。例えば、液体窒素の温度、すなわち−196℃は、良い結果を得るためには低すぎると証明されている。次いで、装置内への挿入の後、アダプターの素早い往復運動がなされ、移動可能な物体をプラスチック容器に関連して振動させ、移動可能な物体によって深凍結試料が粉砕および破壊される。例えば窒素による、アダプターの追加的な能動的冷却は不要であると証明されており、それゆえ、好ましくはそれは提供されない。このことは、破壊処理中の能動的冷却を要求する従来技術に比べて取扱いを大幅に容易にする。
【0028】
プラスチック容器の円筒状の内側は、少なくとも一つの中空球状の端をもつことが特に適している。そのような場合、移動可能な物体は、好ましくは球体または球状の端を持つピンである。球体またはピンの直径は、可動性を確実とするために、プラスチック容器の内側の直径より僅かに小さい。移動可能な物体は、試料を粉砕できるように、固く、好ましくは重い物質、例えば金属からなる。試料は、好ましくは、プラスチック容器の中空球状の端と球体またはピンとの間に置かれるようにしてプラスチック容器内に導入される。球体またはピンの直径は、好ましくは少なくとも5mm、特に好ましくは少なくとも8mmである。プラスチック容器の直径は、好ましくは15mmより大きくなく、好ましくは10mmまでである。好ましくは、プラスチック容器は破壊処理中垂直に配置され、中空球状端は底に位置する。重力によって、試料物質は主として下部領域にとどまることにより、たった一つの(より下部にある)中空球状端のみで、球体を用いて確実に破砕するために十分となる。
【0029】
特には、少なくとも−50℃に冷やした試料をプラスチック容器内に入れる。容器は、移動可能な物体が、好ましくは10〜100Hzの振動数で、特には少なくとも30Hzの振動数で、前後に好ましくは上下に激しく動くようにして、特には10〜200秒間振動させられる。振動や往復移動があまり長くなると、試料は溶ける恐れがある。可能な時間内に試料を確実に破壊するために、往復運動工程は、十分に長くなければならずかつ十分に高い振動数でなければならない。こうようにして破壊された試料は次いで、プラスチック容器から取り出され、そして所望の容量が、プロトコールに従って、キットを用いて処理される。凍結試料および1以上の移動可能な固い物体を除いては容器内には他の物質は基本的には存在せず、特には、液体窒素などの冷却剤、または例えば緩衝溶液も存在しない。それらは、少なくとも通常の場合には、所望の結果の品質を落とすだけである。
【0030】
驚くべきことに、凍結プローブをこの様式を用いて破壊すると、大きな技術的な努力なしにそして取扱いが簡単であるにもかかわらず、従来技術で知られている試料の調製に比べて、非常の良い結果が得られることが判った。追加的な破壊は基本的には不要であるが、例えば、組織ルプター中での破壊を行うこともできまたはそれを省くこともできる。従って、このようにして調製した試料は、即座に処理することができ、そして特に良い結果を得ることができる。移動可能な物体およびアダプターをその中に配置した容器のみを、例えば冷凍機中で、例えば−50℃〜−80℃の温度に冷却すれば良いので、技術的な努力は大きくない。試料を破砕した後、それを取り出し、そして例えば他の容器中で当分の間冷却保存することができる。あるいは、試料は、移動可能な物体を含んだプラスチック容器からはすぐには取り出さず、他の容器内で保存する。この場合は、プラスチック容器は、破壊用容器および保存容器の両方の役目を果たす。処理のための所望量の試料を、正確にそして簡単に利用可能とできる。加えて、この処理により均質な組織分配が達成される。固められた組織、植物の葉および種でさえ、この方法によりさらなる処理のために調製できる。しかしながらこの方法は、皮膚や骨、および比較的固いまたは粘性のある試料には適していない。
【0031】
冷却され、密閉されたアダプター中での処理は、多くの時間を要求しないので、振り動かす工程を中断して、しばらくの間アダプターを適した低い温度まで冷却する必要がない。アダプターが、十分な厚さの壁をもった金属製囲いをもつ場合には、特にこのことが当てはまる。結果として、数ミリメーターの厚さの壁でもはや十分である。一つの実施態様において、壁の厚さは、十分な熱容量を提供するために少なくとも0.5mmであり、好ましくは少なくとも1mmである。あまり重くならないようにするために、壁は、一つの実施態様において、4mmを超えない。
【0032】
破砕後、試料は粉末状態で提供されるので、引き続いて用いる化学物質が作用できる、特に大きな表面領域をもち有利である。所望量の粉末を、特に単一の手段、例えば重量測定によりまたは測定スプーン等の対応する寸法の決まった測定容器によって、次の工程のために提供できる。
【0033】
アダプターそれ自身は、非冷却状態で、非冷却試料の破壊にも適している。しかしながらその場合は、試料は、破壊処理中プラスチック容器内に試料と共に置かれた溶解緩衝液によって破壊される。試料はまた、アダプターを非冷却の状態で用いて破砕することもできる。この場合は、緩衝液と組織からなる溶液が作られる。適した溶解緩衝液は、DNAを破壊するための錯化剤および界面活性剤を含む緩衝液、例えば、溶解緩衝液ATL(キアゲンGmbH,ドイツ、ヒルデン、から市販されている)、またはRNAを破壊するためのカオトロピック剤を含む緩衝液、例えば、溶解緩衝液RLT(キアゲンGmbHから市販されている)を含む。
【0034】
前もって重さを計った片にした組織を冷却状態で粉末へと処理した後、一つの実施態様においては、緩衝液を加える、すなわち、粉末を溶液へと変える。それにより、難しさが回避され、非常に少量の試料、例えば10mgの組織粉末を再び取り出すことができる。
【0035】
組織を破壊する場合は、プラスチック容器内に置かれた比較的大きな金属製の移動可能な物体を破壊に用いるのが好ましい。細菌を破壊する場合は、移動可能な比較的小さな物体は、特にはガラスからなる(いわゆる、ガラスビーズ)。ガラスビーズは、小さな直径を持ち砂のようである。それゆえ、摩擦が非常に強くなる。このような特性が細菌を破壊するために要求される。一般には、金属ビーズはあまりに大きく、個々の球体間の距離が、細菌を破壊するためにはあまりに大きいすき間を提供してしまうであろう。
【0036】
上記したプラスチックの代わりに、原理上は、別の非金属製物質をまた選択することができ、特には、プラスチックに類似のものである。しかしながら、プラスチックが特に好ましい。
【実施例】
【0037】
他の利点および実施態様は、以下の実施例の記載から明らかとなる。
【0038】
図1は、アダプター1の側断面図を示している。アダプター1は、蓋3をもった密閉された、容器形状をした基本本体2を含む。基本本体中では、アルミニウムからなる全部で12の囲い4(上面から確認できる)が、アダプターの中心軸に対して円状に配置されている。囲い4の壁の厚みは、1mmである。囲い4は、その上部領域に、1またはそれ以上のスロット5を有する。スロットをもつ上部領域は、基本本体2中に配置された挿入体2aの中にて、締め付けられて保持される。それゆえ、囲い4は、洗浄目的のため、特には、挿入体2aと一緒に容易に基本本体2から取り出すことができる。
【0039】
図1は、蓋とともに提供されそして金属囲い4中に挿入されたプラスチック容器6を示している。プラスチック容器6は、プラスチック容器6の上下に配置された、発泡シリコーンの2つの弾性円環板7の間に固定される。円環板の上部は、蓋3の内側に配置された側溝により、蓋3によって保持されている。下部円環板7は、側溝によって、基本本体2の底に保持される。弾性円環板7は、破壊処理中容器を安定化させ、容器がダメージを受けないようにする。さらに、弾性円環板7は、騒音低減の効果もある。
【0040】
プラスチックよりなる容器6の底は、中空球状である。鋼鉄からなる球体8は、容器6内に配置される。生物試料9は、鋼鉄球体8とプラスチック容器6の中空球状底の間に置かれる。重力のため試料は少なくとも主として下部領域にとどまり、試料は底の領域で破砕されるので、プラスチック容器6の底のみ(蓋部分も同様にではなく)が中空球状であれば十分である。
【0041】
基本本体2は、その上半分において、鋼鉄製のねじ切りインサート10とともに提供され、基本本体を蓋で密閉するために、蓋3の締め付けネジ11がネジ締めされる。好ましくは、蓋を締め付けるためには4分の1回転で十分である。底の半分には、さらに鋼鉄製のネジ式軸受筒12があり、ネジ13がネジ締めされており、ネジ13のネジ山は容器2の底の部分を越えて突き出している。さらに、ネジ13は、ナット14と接着剤で固定されて連結され、この締め付けられ固定された状態から離れることがないように保証することができる。
【0042】
下側に突き出しているネジ13のネジ山の部分は、アダプター1を装置に脱着可能に固定する役目を果たし、装置とともに、アダプターは、試料9を球体8で粉砕して破壊するために振動様式で上下に動く
【0043】
さらに、基本本体2は、プラスチック、すなわちポリオキシメチレンからなる。このプラスチックは、約−80℃の低い温度および通常の洗浄溶液に耐える。ポリオキシメチレンからなる環状挿入体2aは、基本本体2の上部領域において、50ショア硬さをもつシリコーンのO−リング15によって支持されて、さらには、蓋3によって締め付けられて保持されている。金属製囲いの上部領域は、挿入体2a中に固定されている。従って、シリコーンからなるリングは、騒音を軽減するためにも役立つ。しかしながら、上記した要求を満たす他のプラスチックもまた選択できる。
【0044】
蓋3および挿入体2aは、破壊中さらに騒音を低減するために、弾性のある中間層によって互いに分離することができる。中間層はまた、シリコーンリングであることができる。
【0045】
挿入体2aは、上方に突き出している中心に配置されたグリップ16を含み、それによって囲いおよびその中にぶらさがったプラスチック容器とともに挿入体14を取り出すことができる。プラスチック容器を適当につり下げ可能とするために、囲い4の内側直径より大きい広口縁を上部部分に有する。例示的な実施態様に示されるように、プラスチック容器の広い縁を収容するために囲いの上部部分は広い内部直径を有する。挿入体2aがプラスチック容器6と一緒に取り出される場合は、プラスチック容器の広い上部縁が、拡大された内部直径をもった対応する囲いの上部の凹部中に入れられ、そして、特に移動の間、確実に保持される。
【0046】
図1に示された基本本体の直径は、約80mmである。基本本体は、約50mmの高さをもつ。金属製囲い4の内部直径は、11mmである。このような囲い4は、35mmの高さをもつ。便宜上、それに対応する寸法が決まったプラスチック容器6は、標準では、約25mgの試料物質によって満たされる。
【0047】
アダプターの上記した寸法および物質は、単に便宜上のものであり、義務的に選択される必要はない。同じことが、示されたアダプターの設計にも当てはまる。
【0048】
図2は、ぶら下がったプラスチック容器6および囲いと共に、挿入体2aをその上に置くことができるスタンドを示している。スタンドの筒状のくぼみ18は、囲い4およびプラスチック容器6を収容する役目を果たす。ドリルコーン19は、囲いからプラスチック容器を押し出すために使われ、プラスチック容器は簡単に取り出すことができる。スタンド17の上方に突き出したグリップ20は、挿入体2aの中心開口部を通って突き出て、スタンド17の上に挿入体2aを設置できる。
【0049】
以下の実施例は、図1に示されたアダプターを用いて行った。
1.新鮮なラット肝臓および新鮮なラット心臓からのDNAの分離
新鮮なラットの肝臓および心臓の各々の12試料(25mg)に、180μlのATL、すなわち、錯化剤および界面活性剤を含む緩衝液(キアゲンGmbH(ドイツ、ヒルデン)より市販されている。http://www1.qiagen.com/Products/Accessories/Buffers/BufferATL.aspx参照)、10μlのDX(http://www1 .qiagen.com/Products/ReagentDX.aspx参照)、および2つの、直径5mmの金属ステンレス製の球体(以下「ビーズ」と言う)を添加し、そして50Hzで1.5分間破壊した。試験は、2つのビーズの場合には、振動はより大きく、組織はより高程度にすりつぶされることを示した。従って、装置によって、アダプターを50Hzの振動数で上下に動かした。次いで、試料を取り出し、そして小さなテーブル遠心器を用いて遠心分離した。アダプターは、破壊処理の後、このテーブル遠心器中へと固定した。そして、短い時間の間、遠心器のスイッチを入れて、すべての成分を再びアダプターの底に集めた。
【0050】
次いで、20μlのプロテイナーゼKを添加して、ボルテックスで撹拌し、そして溶液を56℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後に、4μlのRNAseA(100mg/ml)を試料に添加して、5分間インキュベートした。他の工程は、DNeasyプロトコール(http://www1.qiagen.com/Products/GenomicDnaStabilizationPurification/DNea syTissueSystem/DNeasyBloodTissueKit.aspx参照)に従って行った。
【0051】
結果:
心臓:
心臓組織は、平均5.83μgのDNAを回収し、標準偏差は、1.07であった。分離されたDNA量は、僅かにもっと高くできていたかも知れないが、それ以外は、不満ななかった。
【0052】
肝臓:
肝臓組織は、平均34.08μgのDNAを回収し、標準偏差は、10.97であった。肝臓組織の破壊は、破壊が非常にうまくいっていることを示した。
【0053】
2.新鮮なウシ肝臓からのDNAの分離
新鮮なウシの肝臓の各々の12試料(25mg)に、180μlのATL、6μlのDX、および2つのビーズを添加し、そして50Hzで2分間破壊した。次いで、試料を取り出し、そして遠心分離した。その後、20μlのプロテイナーゼKを添加して、ボルテックスで撹拌し、そして溶液を56℃で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後に、4μlのRNAseA(100mg/ml)を試料に添加して、室温で5分間インキュベートした。さらなる工程は、キアゲン(ヒルデン、ドイツ)によるQIAキューブの組織および齧歯類追尾プロトコールに従って行った。組織および齧歯類追尾プロトコールは、QIAキューブと共に発送される。
【0054】
結果:
肝臓:
肝臓組織は、平均44.38μgのDNAを回収し、標準偏差は、12.84であった。肝臓組織の破壊もまた、破壊が非常にうまくいっていることを示した。DNAも同様に、白い小さな塊として目に見え、ピペットを用いるという困難さのみで新たなMRV(micro reaction vessel:微量反応容器、または「eppi」と略す)へ移すことができる。
【0055】
一般には20μgのDNAの回収が期待できる。44.38μgのDNAという高平均値は、進行したDNAの分解を示唆している。小さなフラグメントは、測定においてより高いシグナルを生じ、それは、より高濃度として誤って示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物試料(9)を破壊するための方法であって、以下の工程:
試料(9)を、非金属製容器(6)に入れる工程、
容器(6)を、アダプター(2、2a)中に挿入する工程:および
アダプターを、その中に置かれた密閉された容器(6)とともに、該アダプターを自動的に往復運動、特には上下運動させる装置に接続する工程、を含む方法。
【請求項2】
自動的往復運動によりアダプターによって同時に破壊される生物試料(9)がその中に置かれた、複数の容器(6)がアダプター中に挿入される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料(9)は最初に洗浄され、次いで、液体窒素で凍結または化学的に保存され、および、そのようにして調製された試料を容器(6)中に入れる、上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項4】
アダプターが、容器(6)を挿入する金属製の囲い(4)を含む(ここで、生物試料は容器(6)の中に置かれている)、上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項5】
容器(6)、試料(9)およびアダプター(2、2a)が最初に−20℃より低い温度、好ましくは−50℃より低い温度に冷却され、それに引き続いて、アダプターを往復運動することにより試料が破壊される、上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項6】
アダプター(2、2a)が−80℃より低い温度には冷やされない、上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項7】
少なくとも一つの移動可能な固い物体(8)、好ましくは2つの移動可能な固い物体が容器中に入れられ、該物体は、特には金属またはガラスからなる、上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項8】
破壊に先立って、溶解緩衝液、特には、DNAを破壊するための錯化剤および界面活性剤を含む緩衝液、好ましくはATL、またはRNAを破壊するためのカオトロピック剤を含む緩衝液、特にはRLTが容器(6)中に入れられる、上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項9】
アダプター(2,2a)が、少なくとも10Hz、好ましくは少なくとも30Hzの振動数で往復運動される、上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項10】
容器(6)内に入れられる試料の重量が、50mg未満、好ましくは30mg未満である、上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項11】
容器(6)がプラスチックからなる上記いずれかの請求項に記載の方法。
【請求項12】
上記いずれかの請求項に記載の方法を行うための装置であって、非金属製の容器(6)を収容するための金属製の囲い(4)を有し、特には主としてプラスチックからなる、好ましくはプラスチックからなるアダプター(2、2a)を含む装置。
【請求項13】
アダプター(2、2a)が、脱着可能に、特にはネジを緩めて外せるようにして、囲いと平行にアダプターを自動的に往復運動できる装置に連結されている、上記いずれかの装置に関する請求項に記載の装置。
【請求項14】
装置が、少なくとも10Hz、好ましくは少なくとも30Hzの振動数でアダプターを往復運動できるように構成されている、上記いずれかの装置に関する請求項に記載の装置。
【請求項15】
その中に生物試料(9)および追加的に特には金属またはガラスからなる移動可能な固い物体(8)が置かれ、かつ囲い中に挿入される容器(6)を有する、上記いずれかの装置に関する請求項に記載の装置。
【請求項16】
16mmを超えない、好ましくは12mmを超えない内部の囲い直径をもつ金属製囲い(4)を有する、上記いずれかの装置に関する請求項に記載の装置。
【請求項17】
容器(6)を収容するための、少なくとも6の金属製囲い(4)、好ましくは少なくとも12の金属製囲い(4)を有する上記いずれかの装置に関する請求項に記載の装置。
【請求項18】
囲い(4)が、アダプターから取り外しできる挿入体(2a)によって保持されている上記いずれかの装置に関する請求項に記載の装置。
【請求項19】
囲い(4)が、その上部から見た場合に、リング形状に配置されている上記いずれかの装置に関する請求項に記載の装置。
【請求項20】
アダプター(2、2a)に堅固に連結されることができる蓋(3)を有する、上記いずれかの装置に関する請求項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−502639(P2012−502639A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−527268(P2011−527268)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060173
【国際公開番号】WO2010/031636
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(599072611)キアゲン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (83)
【Fターム(参考)】