説明

複数の細胞成分を検出および定量する方法

免疫染色およびin situハイブリダイゼーション分析用の生物試料を調製する単一の連続法が提供される。
一実施例において、細胞に含まれる複数の細胞構成要素を識別する方法が提供される。この方法は、細胞試料を少なくとも1つの抗体と反応させ、そこで、それぞれの抗体は特定の細胞構成要素と結合して固有の蛍光信号を生成するステップと、1つまたは複数の核酸プローブを用いたin situハイブリダイゼーションにより前記細胞試料を処理し、そこで、それぞれの核酸プローブは、前記細胞中の標的核酸配列とハイブリダイズするよう構成され、固有の蛍光信号を生成するステップと、前記反応および処理を行った細胞試料の1つまたは複数の画像を生成するステップと、前記画像において前記抗体および前記核酸プローブの両方に対応する蛍光信号を検出および分析するステップを含む。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の細胞成分を検出および定量する方法に関するものである。
【0002】
関連出願として、本出願は、1999年11月18日提出の国際出願PCT/US99/27608(WO01/37192)である2002年5月17日提出の米国特許出願10/130,559の一部継続出願である2005年9月22日提出の米国特許出願11/233,200に対して優先権を主張し、2004年9月22日提出の米国仮出願60/612,067の利益を主張する。これらの開示は本開示に反しない範囲で全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
本発明は、免疫染色および蛍光標識in situハイブリダイゼーション法を使用して複数の細胞成分を検出および定量する方法に関する。特に、免疫染色をin situハイブリダイゼーションと組み合わせることによって、細胞中の細胞成分、例えば母体血液試料に含まれる胎児ヘモグロビンなどの検出が可能になる。前記方法は、遺伝病の出産前および/または着床前診断に役立つ。
【0004】
細胞およびその構成要素を染色および分析する方法は多く存在する。そのような多くの方法を同時に適用できる能力は、遺伝病の診断における標本の詳細な調査に非常に有利であり、特別な関心がよせられている。しかし、先行技術の組み合わせでは、1つの技術を単独で適用する以上の利益をもたらさない。特に興味深いのは、例えば免疫染色および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析を生物標本に対して同時に適用する能力は、特定のタンパク質および同一細胞の核酸構成要素などに関する定量的データを同時に取得する可能性を提供する。しかし、従来または標準的な免疫染色およびFISHプロトコルは相互に排他的である。良好なFISH分析に求められる厳しい条件は一般に、有意に認識できる抗原の保持力または細胞構成要素を適切に検出するための安定した抗体ベース信号の持続性と両立しない。そのため、視覚化および定量化法を用いた遺伝子ターゲティングを使用する遺伝病の診断において、より良い技術を開発する必要がある。
【0005】
免疫染色およびin situハイブリダイゼーション分析用の生物試料を調製する単一の連続法が提供される。
【0006】
一実施例において、細胞に含まれる複数の細胞構成要素を識別する方法が提供される。この方法は、細胞試料を少なくとも1つの抗体と反応させ、そこで、それぞれの抗体は特定の細胞構成要素と結合して固有の蛍光信号を生成するステップと、1つまたは複数の核酸プローブを用いたin situハイブリダイゼーションにより前記細胞試料を処理し、そこで、それぞれの核酸プローブは、前記細胞中の標的核酸配列とハイブリダイズするよう構成され、固有の蛍光信号を生成するステップと、前記反応および処理を行った細胞試料の1つまたは複数の画像を生成するステップと、前記画像において前記抗体および前記核酸プローブの両方に対応する蛍光信号を検出および分析するステップとを含む。
【0007】
図13は、細胞における免疫染色およびXおよびY染色体を用いたFISHによって胎児ヘモグロビンを識別するため、例1に記載されるように本発明の方法で調製された細胞の免疫染色およびFISH分析の組み合わせの顕微鏡写真である。
【特許文献1】米国特許5,352,613号
【特許文献2】米国特許5,225,326号
【特許文献3】PCTWO94/02646号
【特許文献4】米国特許4,373,932号
【非特許文献1】Harrison’s Principles of Internal Medicine,第12版,Wilson他,McGraw Hill,NY,NY(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書で説明される実施例において、細胞試料中の細胞成分を検出および定量する方法が提供される。前記方法は、血液試料などの生物試料を含む様々な細胞に対して、特に母体血液における遺伝病の診断に適用することができる。
【0009】
一実施例において、前記方法は、免疫染色によって1つまたは複数の抗体から蛍光信号を生成するステップを含む。前記信号は使用される各抗体に固有であり、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)分析用の細胞試料に関する後次の処理が持続される。一実施例において、前記方法は、使用されるFISHプローブに対して望ましい蛍光または固有の蛍光を選択するステップを含む。これによって、生成された各蛍光信号およびすべての蛍光信号、前記細胞試料からの免疫組織化学的およびFISH信号蛍光を個別に視覚化および定量化することができる。
【0010】
一実施例において、コンピュータシステムを操作して、少なくとも1つの標的核酸により定義された遺伝的状態が試料に存在するかどうかを検出する方法が提供される。前記方法は、プローブおよび試料とハイブリダイズされた前記プローブのデジタル画像を使用して物体をカウントし、統計的期待値を分析して前記遺伝的状態が存在するかどうかを検出する。前記カウントは、遺伝的異常が検出された回数のカウント、および前記回数と特定の組織タイプ、細胞型または試料における異常の統計的期待値との比較などを含む。前記カウントは、遺伝的異常が発生した回数のカウント、および同一の試料における細胞型の発生回数、または同一の試料における正常核酸の発生回数との比較を含む。前記カウントは、単一細胞において1つ以上の異なる遺伝的異常が発生した回数のカウントを含む。また前記コンピュータシステムを使用して、細胞型の識別、細胞数のカウント、細胞形態の検査などを行い、この情報を前記遺伝的異常の発生数と比較または相互に関連付ける。様々な診断分析を行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施例において、コンピュータシステムを操作して、少なくとも1つの標的核酸により定義された遺伝的状態が固定試料に存在するかどうかを検出する方法が提供される。前記方法は、フルオロフォア標識プローブを標的核酸に対して特異的にハイブリダイズする条件下で蛍光in situハイブリダイゼーションおよび蛍光免疫染色を行った前記固定試料のデジタル画像、好ましくはカラー画像を受信して関心の第一物体を検出するステップと、前記画像をコンピュータで処理して細胞構成要素などの第一物体を分離するステップと、特定の事前定義された特徴において前記標的核酸と関連するプローブを示す関心の第一物体を特定するステップと、プローブ信号を持つ前記関心の第一物体をカウントするステップと、統計的期待値に照らして細胞などの第一物体の数を分析し、前記遺伝的状態が存在するかどうかを検出するステップとを含む。この方法は、前記遺伝的状態がヒトトリソミー21である場合を含む多くの遺伝的状態に適用できる。前述に加え、当然のことながら前記統計的期待値は組織型などに基づく場合がある。コンピュータを使用して検査中の細胞の組織型を識別することができるが、前記組織型はわかっていてもよい。
【0012】
いくつかの実施例において、前記受信ステップは、受信した前記カラー画像内の各画素位置における赤、緑、および青色強度を表す赤、緑、および青色画素の画像ファイルを生成するステップをさらに含む。いくつかの実施例において、前記処理ステップは、背景における複数の画素を手動で選択するステップと、前記背景部分に対応する色強度値の範囲を特定するステップと、特定された範囲内の色強度値を持つ前記画像の領域を背景として識別するステップとをさらに含む。いくつかの実施例において、測定ステップの前に、コンピュータ処理によって前記カラー画像をフィルタリングし、前記カラー画像の暗い画素の色強度値を明るくし、また明るい画素の色強度値を暗くしてもよい。前記フィルタリングステップは、前記カラー画像を穴埋めフィルターに通すステップと、前記穴埋めされたカラー画像を浸食フィルターに通すステップと、前記浸食および穴埋めされたカラー画像上で個別の操作を行って領域の輪郭を定義するステップと、論理NOT操作を行うことによって前記輪郭内の画素を選択するステップと、前記選択された画素と前記穴埋めカラー画像の間で論理AND操作を行うステップとさらに含む。
【0013】
いくつかの実施例において、前記遺伝的状態は第二核酸に対する標的核酸の割合によりさらに定義される。そして前記方法は前記第二核酸に関連する特定の事前定義された特徴を持つ第二の物体を識別するステップ、および識別された第二の物体をカウントするステップとを含む。ここで、第一物体の数の分析には、第二物体の数に対する第一物体の数の割合を特定することが含まれる。いくつかの実施例において、前記標的核酸は優勢な特性を定義し、前記第二核酸は対応する劣勢な特性を定義する。それら実施例における方法は、前記優性特性を持つ、前記劣勢特性を持つ、または特定された割合に応じて前記優性特性および前記劣勢特性を持つ、といった遺伝的状態を示すことを含むことができる。前記標的核酸が前記第二核酸の再配置である場合、前記方法は前記プローブを選択して、再配置された核酸と再配置されていない核酸との間の領域とハイブリダイズするステップをさらに含むことができる。最後に、前記方法は前記遺伝的状態を特定された割合に関連する重篤度として示すことを含んでよい。
【0014】
本発明の一実施例に従って、一連のコンピュータ命令が定義されたコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータソフトウェア製品が提供される。前記コンピュータ命令に従って、コンピュータシステムは標的特異的フルオロフォアで標識された細胞含有試料中の標的物質の発生をカウントする。前記命令は、前記フルオロフォア標識試料のデジタルカラー画像を受信するステップと、前記フルオロフォア標識試料のカラー画像を取得するステップと、関心の物体を前記カラー画像の背景から分離するステップと、関心の物体のパラメータを測定して特定の特徴を有する物体を数えるステップと、前記物体の数を統計的に期待される値に照らして分析し、遺伝的異常を特定するステップとを制御する。前記命令により、上述の方法に関する変型例をすべて実施することができる。
【0015】
本発明の別の実施例に従って、標的特異的フルオロフォアで標識された細胞含有試料の画像を分析する装置が提供される。前記装置は、画像処理ソフトウェアを実行するコンピュータシステムと、一連の画像処理命令が定義される記憶媒体とを含む。前記画像処理命令は、前記フルオロフォア標識試料のデジタルカラー画像を受信すること、前記フルオロフォア標識試料のカラー画像を取得すること、関心の物体を前記カラー画像の背景から分離すること、関心の物体のパラメータを測定して特定の特徴を有する物体を数えること、および前記物体の数を統計的に期待される値に照らして分析し、遺伝的異常を特定することを含む。また、前記命令を様々に変えて上述の変型例をすべて実施することができる。
【0016】
さらに別の実施例において、体液または組織試料画像データをコンピュータ処理する方法が提供される。前記方法は、最初の拡大で得られた体液または組織試料の画像を表す第一画像データセットのサブセットを作成するステップを含み、前記サブセットは希少細胞を含む可能性のある候補ブロブを表す。また、二番目の拡大で得られた候補ブロブの画像を表す第二のデータセットのサブセットを作成するステップを含み、前記第二データセットのサブセットは前記希少細胞を表す。さらに、前記第二データセットのサブセットをコンピュータのメモリに保存するステップと、関心の物体のサイズおよびカラーパラメータを測定して、前記標的核酸に関連する特定の事前定義された特徴を持つ物体を識別するステップと、前記測定ステップで識別された前記物体をカウントするステップと、前記物体の数を統計的期待値に照らして分析し、前記遺伝的異常が存在するかどうかを検出するステップとを含む。
【0017】
一実施例において、コンピュータで測定、処理を行い、前記カラー画像をフィルタリングして、前記カラー画像において暗い画素の色強度値を明るくし、前記カラー画像において明るい画素の色強度値を暗くするステップを含む方法が提供される。フィルタリングは、前記カラー画像を穴埋めフィルターに通すステップと、前記穴埋めされたカラー画像を浸食フィルターに通すステップと、前記浸食および穴埋めされたカラー画像上で個別の操作を行って領域の輪郭を定義するステップと、論理NOT操作を行うことによって前記輪郭内の画素を選択するステップと、前記選択された画素と前記穴埋めされたカラー画像の間で論理AND操作を行うステップとを含む。
【0018】
一実施例において、電子顕微鏡視覚システムを使用して、体液または組織試料から採取した細胞の単分子層の光場を観察することによって、第一画像データのサブセットを作成し、希少細胞の存在を示す信号を検出することができる。一実施例において、前記方法は、さらに受信したカラー画像におけるそれぞれの画素位置における赤、緑、および青色の強度を表す赤、緑、および青色画像ファイルを生成できる。本発明のいくつかの側面に基づいて、前記処理はさらに、背景における複数の画素を手動で選択するステップと、背景部分に対応する色強度値の範囲を特定するステップと、定義された範囲内の色強度値を持つ画像の領域を背景として識別するステップとを含む。一実施例において、前記信号を測定して、意義のある信号レベルかどうかを判断することができる。前記第一および/または第二画像データのサブセットを本明細書に記載されるとおり、コンピュータによる制御および処理にさらに適した表現に変形させることができる。前記画像データを例えば赤緑青(RGB)信号から色相発光飽和(HLS)信号に変換する。フィルターおよび/またはマスクを利用して、事前に選択した条件を満たす細胞を区別し、条件を満たさない細胞を取り除くことによって希少細胞などを識別する。
【0019】
本発明の別の実施例において、臨床検査サービスを行う方法が提供される。前記方法は、体液または組織試料を受け取るステップと、体液または組織試料の塗布標本を作成するステップと、蛍光免疫染色を用いて前記塗布標本に存在する関心の物体を免疫染色するステップと、診断的意義を有する核酸配列とハイブリダイズするよう設計された蛍光プローブを用いて前記塗布標本を処理するステップと、ソフトウェアプログラムが、前記免疫染色および核酸プローブにより生成された蛍光信号に基づいて診断的意義を有するハイブリダイズ核酸配列を持つ関心の物体を自動的に識別するようにコンピュータ化された電子顕微鏡を操作するステップとを含む。
【0020】
本発明のさらに別の実施例では、コンピュータが診断的意義を有する核酸配列を持つ関心の物体を検出するステップを直接行う場合に定義された一連の命令を持つコンピュータ可読記憶媒体を含むコンピュータソフトウェア製品が提供される。前記ステップは、最初の拡大で得られた体液または組織試料の画像を表す第一画像データセットのサブセットを作成するステップを含み、前記サブセットは、細胞または希少細胞(10,000細胞中1個未満)などの関心の物体を含む可能性のある候補ブロブを示す。また、二番目の拡大で得られたブロブの画像を表す第二の画像データセットのサブセットを作成するステップを含み、前記第二のデータセットのサブセットは関心の物体を示す。さらに、前記第二データセットのサブセットをコンピュータのメモリに保存するステップと、関心の物体に関連する診断的に関心のある核酸配列を対象とする蛍光核酸プローブと関連する蛍光を測定して、標的核酸に関連する事前定義された特徴を持つ物体を識別するステップと、前記測定ステップで識別された物体をカウントするステップと、統計的期待値に照らして前記物体の数を分析し、前記遺伝的異常が存在するかどうかを検出するステップとを含む。
【0021】
本発明の一実施例に従って、診断手順用の細胞試料を調製する方法が提供される。前記細胞試料は取得され、単分子層として基板上に固定される。前記細胞試料は、10,000細胞中1個以下(0.01%以下)の割合で希少細胞を含む。前記単分子層は、前記希少細胞を対象とする蛍光免疫染色を用いて免疫染色された後、病状または異常に関連する核酸配列を対象とする蛍光プローブを用いて処理される。コンピュータ化された電子顕微鏡視覚システムを使用して希少細胞および関心の核酸配列を示す蛍光信号について、前記細胞試料の少なくとも一部を覆う光場が観察される。各信号が検出されると、前記信号が検出された座標が識別され、診断手順に用いられる。病状または異常に関連する核酸配列を示す希少細胞の数を使用して診断を行うことができる。コンピュータ化された電子顕微鏡システムによって仮の診断を自動的に行ってもよい。一実施例において、前記希少細胞は前記細胞中0.001%以下の割合で存在する。他の実施例において、前記希少細胞は0.0001%、0.00001%、または0.000001%以下のみの割合で存在する。
【0022】
本発明の別の実施例において、検出および診断される前記希少細胞型は、動物または患者から採取した細胞試料または組織において検出された癌細胞である。前記試料は細胞または組織生検を含む血液または他の体液であってよい。この実施例の一つの説明として、下記第5節に記載される癌細胞マーカー、例えばGM4タンパク質、テロメラーゼタンパク質または核酸、およびp53タンパク質または核酸を使用して、本発明の特定の使用法にしたがって特定される方法で第一または第二信号を生成してもよいことがあげられる。
【0023】
本発明の一実施例において、前記希少細胞型が前記試料に存在する場合、本発明の方法は、80%以上の頻度で前記希少細胞型を検出する。他の実施例において、前記検出頻度は85%、90%、95%、および99%以上である。
【0024】
本発明の一実施例に基づいて、診断手順用の血液試料を調製する方法が提供される。この方法は、自然に存在する割合で胎児細胞を含む非強化母体血試料の塗布標本を調製するステップと、前記胎児細胞を対象とする蛍光免疫染色を用いて前記塗布標本を処理するステップと、関心の核酸配列を対象とする蛍光核酸プローブを用いて前記塗布標本を処理するステップと、胎児細胞の存在を示す蛍光信号に対して、コンピュータ化された電子顕微鏡視覚システムを使用して塗布標本の一部を覆う光場を観察するステップと、蛍光信号を用いて、関心の核酸配列を持つ胎児細胞を前記核酸プローブから識別するステップとを含む。
【0025】
一実施例では、前記信号をさらに処理して前記希少細胞の形態的測定を表す。別の実施例では、前記細胞を標識処理して、希少細胞と他の細胞との視覚的区別を強化する。この実施例において前記信号は、例えば選択的に前記希少細胞と結合するラベルに由来する。別の実施例において前記診断手順は、識別された前記座標へ移動するステップと、分離した希少細胞の画像が得られるまで光場を拡大するステップとを含む。
【0026】
いくつかの実施例において、前記光場は、細胞の一連の部分を段階的に覆い、全細胞を実質的に網羅する。これは、例えばコンピュータ化された電子顕微鏡視覚システムの制御下で、コンピュータ化された電子顕微鏡視覚システムのレンズに関して前記細胞を基板上で動かすことによって行ってもよい。別の実施例において、第一信号が得られた座標が識別されると、その後でそれらの座標における希少細胞が特異的に接触される。
【0027】
いくつかの実施例では、前記診断信号を使用して前記希少細胞を識別できる。他の実施例では、位置決め信号を使用して前記希少細胞を識別することができ、前記細胞が位置決めされた後で前記診断信号が取得される。
【0028】
一実施例において、前記希少細胞は10,000細胞中1個以下(つまり、細胞の0.01%以下)の割合で前記試料中に存在する。他の実施例において、前記希少細胞は、0.001%、0.00001%または0.000001%以下の割合で存在する。特に重要な実施例において、前記希少細胞は母体血から採取した細胞試料に含まれる胎児細胞である。好ましくは、前記試料は0.001%、0.0001%、0.00001%、0.000001%、または0.0000001%以下の自然に存在する割合で胎児細胞を含む。
【0029】
前述の実施例のいずれにおいても、例えば顕微鏡スライド上で細胞を調製することができる。あるいは、前記基板が目盛りのついた座標系を持ち、1つのステップで識別された希少細胞の座標を後次の別のステップにおいて戻すことができる。同様に、実施例における前記基板はその幅の10倍の長さを持ち、実質的に一方向に長い。前記長さは幅の20倍であってもよい。前記基板は柔軟なフィルムであってよく、重要な実施例において、前記基板は細長い柔軟なフィルムであり、例えば比較的大量の母体血から提供される比較的大量の細胞を載せることができる。前述の実施例のいずれにおいても、前記免疫染色からの蛍光信号および前記核酸プローブからの蛍光信号を選択することによって、両方が存在する場合に互いをマスクしないようにする。
【0030】
実施例に基づいて、そのような方法は非強化または強化試料、例えば自然に存在する胎児細胞を含む母体血を採用してもよい。
【0031】
添付の図面を関係付けて、本発明および本発明の様々な典型的実施例に関する以下の詳細な説明を読むことで、本発明についての理解を深めることができる。本発明は、体液または組織試料として胎児細胞、希少細胞型、および血液に関して詳細に説明されているが、特に前記試料が細胞の単分子層として基板を被覆している任意の細胞型および体液または組織試料に基づく診断に本発明を適用できること、また実際に本発明がそれを包含することは当該技術分野に精通する者には明らかである。
【0032】
本発明の範囲に含まれる体液および組織試料は、血液、組織生検、髄液、髄膜液、尿、肺胞液などを含むがそれらに限定されない。通常は細胞が単分子層で存在しないそれらの組織試料の場合、当該技術分野に精通する者に知られる標準的な技術によって前記細胞を解離することができる。これらの技術は、組織のトリプシン、コラゲナーゼ、またはディスパーゼ処理を含むがそれらに限定されない。
【0033】
一実施例において、本発明を使用して胎児細胞を検出および診断する。典型的な実施例では、前記蛍光免疫染色を使用して細胞の同一性を示す。例えば、前記免疫染色はヘモグロビンイプシロン鎖、つまり、例えば胎児性ヘモグロビンに対する抗体と結合した蛍光色素であってよい。さらに、細胞認識アルゴリズムを使用して識別された有核赤血球の特徴的形態に対する各細胞の類似性を測ることによって細胞の同一性を定義してもよい。
【0034】
診断は、前記核酸プローブ信号(または免疫染色信号と核酸プローブ信号の組み合わせ)に基づいて行うことができる。
【0035】
典型的な実施例において、FISHは、胎児細胞などの希少な細胞型の変性試験DNAを変性ジオキシゲニン(DIG)標識遺伝プローブを用いてハイブリダイズするステップを含む。前記変性試験DNAを含む前記試料を洗浄し、フルオロフォアと連結された抗DIG抗体と結合する。任意で、フルオロフォア共役の抗Fab抗体を用いて培養することにより、フルオロフォアの第二層(例えばFITC)を追加する。一実施例において、FISHは、前記希少細胞の変性DNAを特定のフルオロフォアで直接標識された特定の標的DNA領域と同種のDNA配列を含む蛍光標識プローブを用いてハイブリダイズするステップを含む。
【0036】
自動試料分析は、光場において、他の物体および背景から関心の物体を区別する装置および方法によって行われる。自動システムの例は、同発明者による1994年10月4日発行の米国特許5,352,613において開示される。さらに物体が識別されると、色、つまり、前記物体を構成する画素の赤、緑、青色構成要素の組み合わせ、またはその物体に関連する他の関心のパラメータを測定して保存することができる。
【0037】
自動試料分析および遺伝的状態の診断は以下のように行うことができる。(i)フルオロフォア標識プローブを前記標的核酸に対して特異的にハイブリダイズする条件下で蛍光in situハイブリダイゼーションを行った前記固定試料のデジタルカラー画像を受信する。(ii)前記カラー画像をコンピュータ処理して、前記カラー画像の背景から関心の物体を区別する。(iii)特定の特徴を持つ前記関心の物体のパラメータを測定する。(iv)識別された物体の数をカウントする。(v)統計的期待値と比較して物体の数を分析し、遺伝的状態を判断する。前記方法は、染色体の数および/または配置の異常に関連する遺伝的状態の診断に役立つ。したがって、例えば本発明に基づいて、再配置された染色体の一節および前記一節が転座した染色体を検出する標識プローブの組み合わせを使用することにより、再配置された染色体を検出することができる。より一般的には、トリソミーと同様に、転座、削除、および挿入を含む遺伝子増幅および再配置は、適切に選択された蛍光プローブに関連して、本発明のこの側面を具体化する方法を用いて検出することができる。
【0038】
本明細書で用いられるように、「遺伝的異常」とは、1つまたは複数の染色体について、健康な検体、すなわち正常な染色体相補を持つ個人から採取した対応する染色体の数および/または配置と比較して、その数および/または配置の異常を示す。例えば遺伝的異常は、一般に最小約15の塩基対から最大で染色体全体のヌクレオチド配列を特徴とする染色体の付加、欠失、増幅、転座、および再配置を含む。また遺伝的異常には点変異も含まれる。
【0039】
前記方法は固定試料における1つまたは複数の遺伝的異常を特定する際に役立つ。ここで固定試料とは、すなわち、好ましくはそこに含まれる前記細胞および細胞成分の構造的完全性を維持するよう処理された固定担体と結合した試料である。試料を含む細胞をスライドガラスなどの固定担体に固定する方法は、当該技術分野における通常の技術を有する者にはよく知られている。
【0040】
前記試料は、少なくとも1つの標的核酸を含み、その分布が前記遺伝的異常を示す。「分布」とは、前記標的核酸を含むことが知られている1つまたは複数の核酸(例えば染色体)における前記標的核酸の有無、相対量および/または相対位置を意味する。一実施例において、前記標的核酸はトリソミー21を示すことから、前記方法はダウン症の診断に有効である。実施例において、ダウン症分析用に調製された前記試料は、母体末梢血に由来する。さらに詳しくは、標準的な手順に従って末梢血から細胞を分離し、標準的な手順(例を参照)に従って前記細胞を固定担体に結合して、前記標的核酸の検出を可能にする。
【0041】
蛍光in situハイブリダイゼーションは、フルオロフォア標識プローブを用いて特異的にハイブリダイズを行うことによって、標的核酸の視覚化を促進する核酸ハイブリダイゼーション法を示す。そのような方法は、当該技術分野における通常の技術を有する者にはよく知られ、米国特許5,225,326、米国特許出願07/668,751、国際出願PCTWO94/02646において開示されており、その全体内容は参照することにより本明細書に組み込まれる。一般に、in situハイブリダイゼーションは、核酸を含む試料中の核酸の分布、例えば、単一の細胞レベルで組織に含まれる核酸の分布を判断する際に役立つ。そのような技術は、染色体分析アプリケーションおよび細胞における特定遺伝子の有無および/または配置の検出に使用されている。しかし染色体分析の場合、一般に前記試料中の細胞を中期(または中間期)まで増殖させて「中期分布」を得た後、前記細胞を固定担体と結合させてin situハイブリダイゼーション反応を行う。
【0042】
つまり蛍光in situハイブリダイゼーションは、試料を固定担体に固定し、前記試料を少なくとも沈殿剤および/または架橋剤を含む媒体と接触させることによって、そこに含まれる構成要素の構造的完全性を維持するステップを含む。前記試料の「固定」に役立つ典型的な薬剤は、例において記載されている。代替の固定剤は、当該技術分野における通常の技術を有する者にはよく知られており、上記の特許および/または特許公開において記載されている。
【0043】
In situハイブリダイゼーションは、前記標的核酸を変性させてハイブリダイゼーション溶液に含まれる相補的プローブとのハイブリダイズを可能にすることによって行ってもよい。前記固定試料は、前記変性剤およびハイブリダイゼーション溶液と同時または連続的に接触する。そのため、一実施例において、前記固定試料は、前記変性剤および少なくとも1つのオリゴヌクレオチドプローブを含むハイブリダイゼーション溶液と接触する。前記プローブは、少なくとも前記標的核酸のヌクレオチド配列に対して実質的に相補的なヌクレオチド配列を持つ。前記ハイブリダイゼーション溶液は、任意でハイブリッド安定剤、緩衝剤、および選択膜増孔剤のうち1つまたは2つ以上を含む。特定のプローブを特定の標的核酸と懇請させるためのハイブリダイゼーション条件の最適化は、当該技術分野における通常の技術を有する者であれば十分対応できる範囲である。
【0044】
プローブに関して、「実質的に相補的な」という表現は、本発明の目的を達成するに足る相補性の度合い、すなわち、本発明を実施するために採用されたハイブリダイゼーション条件下で、前記プローブを非標的核酸配列に関連付けることなく、前記プローブの特定のハイブリダイゼーションを前記核酸標的に対して行うことができる相補性の度合いを示す。そのような状態は、in situハイブリダイゼーションにおける通常の技術を有する者には知られている。
【0045】
本発明が役立つ前記遺伝的異常は、正常な染色体補体を持つ個人から採取された染色体と比較して、1つまたは複数の染色体の数および/または配置に異常があるものを含む。本発明により検出される典型的な染色体は、ヒトX染色体、Y染色体、および第13、18、21染色体を含む。例えば、前記標的核酸は染色体全体、例えば第21染色体であり、ここで前記染色体の複製が3つ存在すること(前記標的核酸の「分布」)は、前記遺伝的異常であるダウン症)を示す。特に前記標的核酸(例えば染色体)とのハイブリダイズに役立つ典型的なプローブは、染色体に配置され、遺伝的異常を診断できる。例として、Harrison’s Principles of Internal Medicine,第12版,Wilson他,McGraw Hill,NY,NY(1991)を参照する。
【0046】
本発明の一実施例は、例えば、母体末梢血、胎盤組織、絨毛膜、羊水、および胚組織に含まれる胎児細胞中のトリソミー21(後述)を検出することによるダウン症の出生前診断を対象とする。しかし、本発明の方法は胎児細胞の分析に限定されない。そのため、前記標的核酸を含む細胞は、真核細胞(例えば、血液、皮膚、肺に由来する正常および腫瘍細胞源を含むヒト細胞)、原核細胞(例えば、バクテリア)、および植物細胞であってよい。一実施例に基づいて、本発明を使用して様々なウイルス株を区別する。この実施例に基づいて、前記標的核酸は非エンベロープウイルスまたはエンベロープウイルス(脂肪タンパク質膜などの非エンベロープ膜を持つ)に存在する場合がある。例として上述のAsgariを参照する。本発明により検出可能な典型的ウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス、肝炎ウイルス、およびヘルペスウイルスを含む。
【0047】
前記オリゴヌクレオチドプローブは、標準的な技法に基づいて、フルオロフォア(蛍光「タグ」または「ラベル」)を用いて標識される。前記フルオロフォアは、前記プローブと直接(つまり共有結合)または間接的に結合できる(例えば、ビオチンは前記プローブと結合し、前記フルオロフォアはアビジンに共有結合する。前記ビオチン標識プローブおよび前記フルオロフォア標識アビジンは、本発明の方法において前記フルオロフォア標識プローブとして機能する複合体を形成できる)。
【0048】
本発明の方法および装置に従って使用できるフルオロフォアは、当該技術分野における通常の技術を有する者にはよく知られている。これらは、4,6‐ジアミジノ‐2フェニルインドール(DIPA)、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、およびローダミンを含む。本明細書の例の項を参照する。また、1983年2月15日発行Gribnauらの米国特許4,373,932を参照する。その内容は、本発明の方法に従って使用できる典型的なフルオロフォアのリストを参照することにより本明細書に含まれる。互いに異なる励起および発光スペクトルを持つフルオロフォアの存在によって、1つ以上の標的核酸を単一の固定試料において同時に視覚化できる。以下に説明するように、典型的なフルオロフォアの対を使用して、2つの異なる核酸標的を同一の固定試料において同時に視覚化することができる。
【0049】
前記標的核酸の分布は遺伝的異常を示す。例として上述のAsgariを参照する。検出される遺伝的異常は、突然変異、欠失、付加、増幅、転座、および再配置を含む。例えば、前記光場における前記蛍光信号の欠損を検出することによって、欠失を識別することができる。遺伝子配列の欠失を検出するため、正常細胞に存在するが異常細胞は欠失している標的核酸に相補的な一群のプローブを調製する。前記プローブが前記固定試料において前記核酸とハイブリダイズする場合、前記配列が検出され、前記細胞はその配列に関して正常であると見なされる。しかし、前記プローブが前記固定試料とのハイブリダイズに失敗すると前記信号は検出されず、前記細胞はその配列に関して異常であると見なされる。当該技術分野における通常の技術を有する者に知られている標準的な手順に基づいて、前記in situハイブリダイゼーション反応には適切な対照が含まれる。
【0050】
標的核酸の付加に関連する遺伝的異常は、例えば、フルオロフォア標識プローブと染色体のポリヌクレオチド反復セグメント(標的核酸)の結合を検出することによって識別することができる。遺伝子配列の追加(例えばトリソミー21)を検出するため、前記標的核酸に対して相補的な一群のプローブを調製する。染色体21の複製を3つ含む固定細胞に対する前記標識プローブのハイブリダイゼーションは、例に記載されているように示される。
【0051】
増幅、突然変異、転座および再配置は、前記核酸標的における正常配列と増幅、突然変異、転座、または再配置が疑われる配列の間の分岐点に対して特異的に結合するプローブを選択し、上述の手順を行うことによって識別される。この方法において、蛍光信号は前記標的核酸に起因し、次に蛍光信号を使用して、試験中の前記試料における遺伝的異常の有無を示すことができる。前記プローブは、異常な個人のDNAではなく、正常な個人のDNAにおける分岐点において前記核酸配列に対して相補的な配列を持ち、遺伝的異常を検出する。これは、当外技術分野における通常の技術を有する者にはよく知られている。
【0052】
利用されるコンピュータ制御システムの実施例に関する新規機能は、同一の光学特性を持つ2つ以上の対物レンズの配列である。前記レンズは一列に配列され、それぞれ独自のz軸移動機構を持つため、個別に焦点することができる。このシステムは、共通の単一レンズ顕微鏡が対応できる範囲と同様の倍率に適合する前記多目的ホルダーを交換できるよう適切な機構を備えている。
【0053】
各対物レンズはそれぞれ独自のCCDカメラに接続される。各カメラは画像取得装置に接続される。取得された各光場に対して、コンピュータは前記顕微鏡試料上の物理的位置を記録する。これは、コンピュータ制御のx‐yメカニカルステージを使用することによって行われる。前記カメラが提供した画像はデジタル化され、ホストコンピュータのメモリに保存される。
【0054】
前記コンピュータは、使用中の対物レンズ配列の特徴とともに、電動ステージの位置を追跡する。各画像に関して保存された特徴を使用して、コンピュータのメモリのバーチャルパッチワークの適切な位置、すなわち「構成された」画像に、前記画像を納めることができる。
【0055】
前記ホストコンピュータシステムは、適切な装置ドライバにより前記システムのすべての機械的構成要素を制御するソフトウェアシステムによって駆動されうる。前記ソフトウェアは、前記コンピュータメモリにおいて前記デジタル画像を構成し、前記構成された画像をさらなるアルゴリズムによる処理のために供給する画像構成アルゴリズムを含むことができる。画像の分解、合成、さらに画像処理を通じて、特定の試料に対する特定の特徴が検出される。
【0056】
一実施例において、前記免疫信号およびプローブ信号が同時に検出される。前記信号を(個別に処理されている前記免疫染色およびプローブに対する異なるフルオロフォアからの信号を用いて)個別に処理してもよい。一つの実施例において、免疫染色信号およびプローブ信号が単一の座標に同時に存在すること、または2つの構成要素の相互作用から生じる単一の信号(例えばパートナー「信号」による信号の消失)を診断目的で使用してもよい。
【0057】
一般に、前記免疫染色信号の生成に使用される材料および技術は、(診断を容認し難くなるほど)前記第二プローブの生成に使用される材料および技術の妨げとなってはならず、その逆も同様である。また診断を容認し難くなるほど免疫染色またはプローブが測定される細胞の特徴を損傷したり、変えてはならない。最後に、前記細胞に望ましいまたは必要な他の処理は、一般に、診断を容認し難くなるほど、第一および第二信号の生成に使用される材料または技術を干渉してはならない。これらの制限内で適切な第一および第二信号の生成器を使用することができる。
【0058】
本発明の一実施例において、希少細胞を検出する際、本発明の方法は80%以上の頻度で前記希少細胞型を検出する。他の実施例において、前記検出頻度は85%、90%、および95%、および99%以上である。
【0059】
個別の対立遺伝子の標識に用いられる単一のフルオロフォアの数は、同時に試験できる突然変異の数に関して上限を設定するが、組み合わせ化学を標識可能な対立遺伝子の特定変異の数に採用して同時に検出される。本発明の範囲に含まれる染色体異常は、トリソミー21、18、13およびXXX、XXY、XYYといった性染色体異常を含むがそれらに制限されない。組み合わせ化学を使用して、本発明の方法で、遺伝性疾患および癌において観察される転座を含む多数の再配置を診断することができる。本発明の範囲に含まれるメンデル型遺伝病は、嚢胞性線維症、ヘモクロマトーシス、脂質異常症、マルファン症候群、およびその他結合組織の遺伝性疾患、異常血色素症、Tay‐Sachs症候群、または変異が知られている他の遺伝性疾患を含むがそれらに限定されない。組み合わせ化学染色の使用によって、複数の対立遺伝子を同時に標識および検出することができ、それによって喘息などの一般的な疾病に関する性質の継承および/または前立腺癌、乳癌、大腸癌、肺癌、白血病、リンパ腫などの癌特有の分子マーカーの存在を確立することが可能になる。
【0060】
本発明の使用例の1つは癌の分野である。特定型の癌細胞は非癌細胞の背景に対して形態的に認識することができる。そのため癌細胞の形態を第一信号として使用することができる。熱ショックタンパク質もまた、最も悪性の癌において発現するマーカーである。熱ショックタンパク質に特異の蛍光標識抗体などの標識抗体を使用して、前記第一信号を生成することができる。同様に、特定の癌または特定の組織に特異の抗原(例えば前立腺特異抗原)も存在し、癌または特定の組織に特異の抗体(例えば前立腺特異抗原)を使用して、そのような癌細胞に対する第一信号を生成することができる。
【0061】
そのため、本発明に基づいて、他の細胞の背景から希少癌細胞を識別し、特徴付けることができる。前記特徴付けは、癌細胞の存在に関する診断の確認、癌のタイプの特定、癌リスクに関連する遺伝子変化を示すマーカーの存在を特定することによる癌リスクの特定などを含む。
【0062】
遺伝子変化を示すマーカーは、癌リスクの診断を可能にする。発癌物質への暴露に関する情報を提供する。発癌物質への暴露によって生じた早期変化を検出し、癌の進行リスクが高い個人を識別することができる。そのようなマーカーは、膀胱癌の場合に第9染色体上にLOHを含み、結腸直腸腫瘍形成の場合に染色体の欠失および第7、17、および8染色体の追加/損失を検出する。
【0063】
肺癌の進行には複数の遺伝子変化が必要である。癌遺伝子の活性化K−rasおよびmycを含む。腫瘍抑制遺伝子の不活性化はRb、p53、およびCDKN2を含む。変化中の特定遺伝子を識別することは、悪性になりつつある細胞の早期発見に役立ち、薬物および遺伝子に基づく治療の潜在的標的を識別することが可能になる。
【0064】
トリソミーを特定する場合、本発明は単一細胞におけるトリソミーの存在を特定すること、および/または細胞郡におけるトリソミーを持つ単一細胞の頻度を特定すること(これは、どの細胞がトリソミーであるか不明でも行うことができる、すなわち細胞の総数と染色体の総数のカウントによる。)を意図する。次に、トリソミーの存在またはトリソミーに関連する状態のリスクが評価される。
【0065】
信号をカウントし、他の情報(例えば、他の信号数、異なる組織型に予測される信号頻度に関する統計的情報など)と比較して、関連する診断情報を生成できることを認識することが重要である。
【0066】
また本発明は1対の信号の識別と関連して説明されている。一つの信号は胎児細胞などの標的希少細胞を識別し、もう一つは遺伝的欠陥を持つ胎児細胞などの細胞の状態を評価する際に役立つ。当然のことながら、特定の実施例では単一の信号のみを検出する必要がある。例えば、胎児細胞がY染色体を含み、そのY染色体に関する異常を診断する場合、前記遺伝的異常を識別する信号は前記胎児細胞を識別する信号と同じになることがある。別の例として、単一の信号を観察された性質が劣勢な性質である状況で用いることができる。また一対の信号を使用して、2つの対立遺伝子の存在、または異なる遺伝子における2つ以上の変異により診断される状態が検出される。このような場合、前記信号の対(または3つ以上の信号)は、発現型およびその発現型を持つ細胞の両方を識別できる。そのような実施例は、当該技術分野における通常の技術を有する者には明らかである。
【実施例1】
【0067】
以下の手順に基づいて、免疫染色法を使用して胎児ヘモグロビンを含む細胞の存在について血液試料を分析し、蛍光標識in situハイブリダイゼーション法によって同一細胞に前記XおよびY染色体が存在するかどうかを判断する。
【0068】
顕微鏡分析に適した固定担体上に細胞を配置し、メタノールで固定する。空気乾燥した後、細胞をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄し、さらにリン酸緩衝生理食塩水中2%のホルムアルデヒドに入れる。次に細胞をリン酸緩衝生理食塩水、Tween(登録商標)20含有のトリス緩衝生理食塩水pH7.6の順で連続的に洗浄する。余分な液体を除去した後、遮断薬を添加して、加湿した室内でスライドを培養する。前記遮断薬を除去した後、遮断薬中の一次抗体の希釈を添加し、加湿した室内で細胞を30分から120分培養する。次に前記抗体溶液を除去し、Tween(登録商標)20含有トリス緩衝生理食塩水pH7.6中で前記細胞を数回洗浄する。余分な液体を除去し、抗マウス二次抗体の希釈を遮断薬に添加して、細胞を加湿した室内で30分から120分培養する。次に前記抗体溶液を除去し、Tween(登録商標)20含有トリス緩衝生理食塩水pH7.6中で前記細胞を再び数回洗浄する。余分な液体を除去した後、新鮮なフィルター処理したHNPP/迅速還元染料の溶液をアルカリリン酸緩衝生理食塩水に添加して、前記細胞試料を10分間培養する。前記染色溶液を除去して、前記細胞をTween(登録商標)20含有トリス緩衝生理食塩水pH7.6中で洗浄し、次にTween(登録商標)20含有トリス緩衝生理食塩水pH7.6中のDAPI溶液で洗浄する。前記細胞をTween(登録商標)20含有トリス緩衝生理食塩水pH7.6、次に標準クエン酸生理食塩水で2度洗浄し、余分な液体を除去して、前記細胞を空気乾燥する。次に、前記細胞を事前に37℃に温めた0.005%ペプシン中で5分間培養する。次に、前記細胞を50mMMgClのリン酸緩衝生理食塩水中で5分間洗浄した後、リン酸緩衝生理食塩水中で2度洗浄する。余分な液体を除去し、前記細胞を乾燥する。DNAおよび/またはRNAなどの蛍光標識FISHプローブの溶液をハイブリダイゼーションに添加し、前記細胞を含むスライドの上部にカバースリップを適用して、細胞を74℃で2.5分、次に37℃で4〜16時間、加湿された室内で培養する。前記カバースリップを取り外し、前記細胞を0.4倍の標準クエン酸生理食塩水中、室温で2分間洗浄する。余分な液体を除去し、前記細胞を空気乾燥して、顕微鏡観察および分析のために装着する。
【実施例2】
【0069】
図1のブロック図は、本発明のこの側面を具体化するのに適したシステムの基本的要素を示す。そのようなシステムの基本的要素は、X‐Yステージ201、水銀光源203、モーター付対物レンズタレット(ノズル)207を備えた蛍光顕微鏡205、カラーCCDカメラ209、パーソナルコンピュータ(PC)システム211、および1つまたは2つのモニター213、215を含む。
【0070】
前記システムの個別要素は特注するか、または標準的な構成要素として市販のものを購入できる。ここでは各要素について詳細に説明する。
【0071】
前記X−Yステージ201は、選択された顕微鏡205との使用に適した任意の電動位置ステージであってよい。好ましくは、前記X−Yステージ201は、パーソナルコンピュータに接続でき、専用にコンパイルされたソフトウェアコマンドを使用して電子的に制御できる電動ステージである。そのような電子制御されるX‐Yステージ201を使用する場合、前記PC211の拡張バスに接続されたステージコントローラ回路カードによって、前記ステージ201を前記PC211に接続する。また前記ステージ201は、手動で駆動可能である必要がある。ここに記載されるような電子制御ステージは、Olympus(東京−会社名)などを含む顕微鏡製造業者、およびLUDL(米国ニューヨーク-会社名)などの他の製造業者によって製造される。
【0072】
前記顕微鏡205は、例えば、反射光蛍光照明器203および20倍のモーター付対物レンズタレット207、および60倍または63倍の油浸レンズを備えた任意の蛍光顕微鏡であり、最大倍率600倍を提供する。前記モーター付ノズル207は、好ましくは前記PC211に接続され、専用にコンパイルされたソフトウェアコマンドを使用して、電子的に倍率を連続的に切り替える。そのような電子的に制御される電動ノズル207を使用する場合、前記PC211の拡張バスに接続されたノズルコントローラ回路カードによって、前記ステージ201がPC211に接続される。前記顕微鏡205およびステージ201を設定して、完全な光場の照明を一定かつ実質的に均等に提供できる水銀光源203を含める。
【0073】
前記顕微鏡205は、カメラ209により見られる画像を生成する。前記カメラ209は、任意の3チップCCDカメラまたは電子出力を提供するために接続される、感度および解像度の高い他のカメラであってよい。前記カメラ209の出力は、フレーム取り込み器および前記PC211に取り付けられた画像処理回路基板に取り込まれる。適切であると考えられるカメラはSONY(登録商標)930である(日本SONY社)。
【0074】
本発明に関連して、様々なフレーム取り込みシステムを使用することができる。前記フレーム取り込み器は、例えば、MATROX(登録商標、カナダ、モントリオール)から入手可能なMATROX IM‐CLD(カラー画像キャプチャモジュール)とMATROX IM‐640(画像処理モジュール)ボードセットの組み合わせであってよい。前記MATROX IM‐640モジュールは、オンボードハードウェアでサポートされた画像処理能力を特徴とする。これらの能力は、MATROX IMAGINGLIBRARY(MIL)ソフトウェアパッケージの能力を補間する。そのため、極めて速くMILベースのソフトウェアアルゴリズムを実行する。前記MATROXボードは専用のSVGAモニターへの表示をサポートする。前記専用モニターは、前記PCシステム211で通常使用されるモニターに加えて提供される。前記MATROX画像処理ボードを用いた使用に適した任意のSVGAモニターを使用できる。本発明に関連して使用可能な専用モニターの一例は、ViewSonic4E((登録商標)カリフォルニア州ウォールナットクリーク)SVGAモニターである。十分な処理能力および記憶能力を得るため、前記PC211は少なくとも32MB RAMおよび少なくとも2GBのハードディスクドライブ記憶空間を持つINTEL PENTIUMベースのPCであってよい。前記PC211は、好ましくはモニターをさらに含む。本明細書に記載の特定機能以外については、前記PC211は従来どおり、キーボード、プリンター、または他の望ましい周辺機器(図示せず)を含んでよい。
【0075】
前記PC211は、前記MATROX IMAGING LIBRARY(MIL)を使用して、MICROSOFT C++でコンパイルされた塗布標本分析プログラムを実行する。MILは、関数のソフトウェアライブラリであり、前記フレーム取り込み器211の操作を制御する関数、および前記フレーム取り込み器211によって取り込まれた画像を処理し、PC211にディスクファイルとして保存するための関数を含む。MILは、特にフィルタリング、対象選択、および様々な測定関数などの画像処理タスクに適した多くの特別な画像処理ルーチンを含む。前記塗布標本分析ソフトウェアプログラムはWINDOWS95アプリケーションとして実行する。前記プログラムはプロンプトを表示して、前記コンピュータモニター213上に測定結果が表示され、前記撮像ハードウェア211を通じて取得された前記画像は専用画像モニター215上に表示される。
【0076】
前記塗布標本分析プログラムを使用して顕微鏡画像を処理するため、前記システムはまず較正される。較正によって、日々のパフォーマンスの変化とともに、使用する顕微鏡、カメラなどによる差異を補正する。このフェーズの間、較正画像を見て、以下の較正パラメータが設定される。
【0077】
前記システムの色反応、
胎児細胞に対してスキャンする塗布標本を含むスライド上の領域の寸法または境界、
倍率20xおよび60x(または63x)を使用する場合の光場の実寸法、および
倍率20xおよび60x(または63x)を使用する場合の最小および最大胎児核領域。
【0078】
物体認知信号の検出
前記検出アルゴリズムは2つのステージで動作する。第一ステージはプレスキャンステージIであり、図2のフローチャートの実施例に示されている。ここで、可能な胎児細胞位置が低倍率および高速で識別される。例えば、倍率20xの対物レンズを選択して胎児細胞の検索を開始する。
【0079】
前記プログラムは、プリセット開始点、例えば、塗布標本を含むスライドの角の一つに前記自動化ステージ(図2、201)を移動する(ステップ301)。
前記プリセット開始点における前記ステージのx‐y位置は記録された(ステップ303)光場である。
前記CCDカメラ209を使用して前記光場を取得して(ステップ305)、RGB(赤/緑/青)画像としてPC211に転送する。
前記RGB画像をILLS(色相/輝度/彩度)表示に変換する。(ステップ307)
【0080】
前記色相構成要素を白黒画像として2進定量化し(ステップ309)、190から255の範囲の色相値を持つ画素をゼロ(黒)に設定して関心の領域(ブロブ)を表す一方、その他の画素値を255に設定する(白、背景)。前記ブロブは胎児細胞核領域であると考えられるものを表す。
【0081】
前記2進定量化した画像における各ブロブの領域を測定する。倍率20xで約20〜200画素サイズの範囲外である場合、前記ブロブの画素の値を255(背景)に設定し、これらを後次の処理から除外する(ステップ311、313、315および317)。
【0082】
次にカスタムMATROX関数を使用して、各ブロブの重心(CG)の座標を計算する(ステップ319)。ブロブの重心は、前記ブロブ形状の材料である薄い一定密度の板からのカットアウトのバランスがとれる点である。これらの座標は、現行の光場のz‐y位置に沿ってデータベースに保存されるため、前記ブロブを次の処理ステージにおいて高倍率で再配置することができる。
【0083】
それぞれ連続する光場のx‐y位置を記録しながら、前記スライドが完全にカバーされるまで追加の光場を同様に処理する(ステップ321および323)。
【0084】
図3Aおよび3Bのフローチャートの実施例に示されるステージIIは、以下のような胎児細胞認識の最終プロセスを含む。
【0085】
倍率63xを選択する(ステップ401)。
前記プログラムは自動化ステージを移動して(図2、201)、検出された重心の第一位置の座標(胎児細胞核領域であると考えられる)を前記光場の中心にくるようにする(ステップ403)。
前記CCDカメラを使用して前記光場を取得して(図2、209)、RGB画像として前記コンピュータに転送する(ステップ405)。
前記RGB画像をHLSモデルに変換する(ステップ407)。
輝度値が輝度の可能な各値と等しい画素数をカウントすることによって、前記プログラムは輝度ヒストグラムを生成する(ステップ409)。前記カウントは、各指標に対応するグレーレベルの値を持つ画素数を含む長さ256の配列として保存される。
【0086】
前記プログラムは次に、前記配列に保存された値によって表される輝度分布曲線を分析して(ステップ411)、最終の頂点を配置する。この頂点が前記画像におけるプラズマ領域を表す画素値を含むことが明らかになっている。前記輝度分散曲線を分析する機能は、9点移動平均を計算して前記曲線を滑らかにし、点10のグレーレベル値の距離により定義される線の接線を計算し、これらの線の傾斜角度を計算し、前記曲線が傾斜を持たない位置で連続する点を検出して、これらの点(グレーレベル)が最小値(曲線の谷)を表す場合は−1、あるいは最大値(曲線の頂点)を表す場合は1に設定した後、グレーレベル値の配列における1または−1の位置を検出することによって曲線の頂点または谷の位置を検出する。
【0087】
次に前記プログラムは、前記分布の最終頂点の前に起こる前記輝度分布の谷に見られる画素のグレーレベル値をカットオフ値として設定する(ステップ413)。
このカットオフ値を使用して、前記プログラムは次に第二の2進定量化した画像を生成する(ステップ415)。これは白黒画像であり、前記カットオフ点より低いグレーレベル値を持つ前記輝度画像の画素に対応する画素は255(白)に設定され、前記カットオフ点より高いグレーレベル値を持つ前記輝度画像の画素に対応する画素はゼロ(黒)に設定される。この画像の白いブロブは細胞として処理されるが、黒い領域は非細胞領域として処理される。
【0088】
閉鎖フィルターを前記第二の2進定量化した画像に適用し(ステップ417)、この方法で穴、すなわち白い領域における黒い点をふさぐ。
ここで前記プログラムは前記細胞の領域を測定する。前記細胞のいずれかの領域が200画素未満である場合、これらの細胞は除外する。すなわち、これらの細胞を含む画素は画素値255(黒)に設定される(ステップ419)。
【0089】
MILに見られる穴埋め機能を残りのブロブに適用する(ステップ412)。
処理の結果生じる2進定量化した画像はマスクであり、その白い領域は細胞のみを示す。
HLS画像の彩度構成要素に基づいて、白血球から赤血球が区別される。前記マスクを使用して、処理を前記細胞領域のみに限定する。
ここで前記プログラムは画素数をカウントし、その彩度値はそれぞれ可能な彩度の値である。前記カウントは各指標に対応するグレーレベル値を持つ画素数を含む長さ256の配列に保存される(ステップ423)。
【0090】
次に前記プログラムは、前記配列に保存された値によって表される前記彩度分散曲線を分析して(ステップ425)、第一頂点を見つける。この頂点は白血球に含まれる領域を表す画素値を含む。
前記頂点の後にくる最初の最小値(谷)に一致するグレーレベル値をカットオフ点として設定する(ステップ427)。
このカットオフ値を使用して、前記プログラムは第三の2進定量化した画像を生成する(ステップ429)。カットオフ点より高いグレーレベル値を持つ前記彩度画像における画素に対応する画素は255(白)に設定される。これらは赤血球領域を構成する。カットオフ点より低いグレーレベル値を持つ前記彩度画像における画素に対応する画素は0(黒)に設定される。この第三の2進定量化した画像の白いブロブは、赤血球に属する領域の素である。
閉鎖フィルターを前記第三の2進定量化した画像に適用する(ステップ431)。この方法で、穴、すなわち白い領域における黒い点をふさぐ。
MILに見られる穴埋め機能が残りのブロブに適用される(ステップ433)。
【0091】
処理の結果得られた2進定量化した画像は、白血球のみを含む新しいマスクである。
MILの境界ブロブ消去機能を残りのブロブに適用して(ステップ435)、前記画像領域の境界と一致する画素を含むものを削除する。前記画像領域の境界と一致する場合に前記細胞がどれだけ欠失するかが不明であるため、そのようなブロブを後次の処理に含めることはできない。
浸食フィルターをこのマスクに6回適用する。それによって、いかなる連結したブロブ(白血球種)も分離される(ステップ437)。
「厚い」フィルターを14回適用する(ステップ439)。前記「厚い」フィルターは拡張フィルターに相当する。つまり、前記ブロブの周辺に一連の画素を連続的に追加することによって、ブロブのサイズを大きくする。拡大するブロブが隣接して拡大しているブロブに接する場合、前記厚いフィルターはこの2つの拡大するブロブを接続しない。そのため、隣接するブロブを分離できる。
【0092】
第一の2進定量化したマスク(すべての細胞を含む)および第三の2進定量化したマスク(白血球の分離された種を含む)は、RECONSTRUCTUFROMSEED MILオペレータによって結合される。これにより構成される第四のマスクは、第一のマスクから複製され、第三のマスクによって許容されたブロブ(細胞)を含むため、白血球を表す(ステップ441)。
【0093】
第四のマスクにおけるブロブの領域および稠密度を測定する。領域(A)はブロブの画素数である。稠密度はブロブの周辺長(p)および面積(A)に由来し、p2/4(A)に等しい。形状が複雑になるほど値が大きくなる。円は最小の稠密度値(1.0)を持つ。周辺長はブロブにおける端の全長であり、対角端がデジタル化された場合に生じる階段効果のために設けられた許容範囲を持つ(内部角は2.0ではなく1.414とカウントされる)。ブロブはそれらの領域が1000から8000画素の間で稠密度が3未満の場合にのみ、第四のマスクに保持される。それによって、比較的粗雑な輪郭を持つ細胞を考慮に入れることができる。前記画像の境界に接触するブロブは後次の処理から除外される(ステップ443)。
【0094】
前記第四のマスクは、以下の方法で色相構成要素に適用される(ステップ445、447、449および451)。
前記色相構成要素からの画素は、それらの座標が前記「マスク」における白色(255)画素と一致するとその色相値を保持する新規画像に複写され、前記新規画像に含まれるその他の画素はすべてゼロ(黒)に設定される(ステップ445)。
隣接する非ゼロ画素領域のそれぞれにおける前記画素値、すなわち赤血球の画像に対応するブロブは、190〜255の間で値をチェックする。各ブロブにおけるそのような画素数をカウントする(ステップ447)。
【0095】
そのような画素が200以上ある場合、前記ブロブは有核赤血球を表す。そのような細胞それぞれの重心を示す座標が保存される。前記マスクを2進定量化して、非ゼロ値を持つ画素をすべて255(白)に設定する。前記マスクは個別のタグイメージファイル形式(TIFF)ファイルとして保存される(ステップ449)。
前記プログラムは、胎児細胞であると考えられる細胞について次の保存座標に移る。それらは以前のステップ中に保存された座標のいずれとも一致しない。事前に設定された数の有核赤血球が識別されるまで、全体プロセスが繰り返される。前記有核赤血球の座標および各マスクファイルの名前を含む結果は、血液スライドの様々な特徴コードと共に結果テキストファイルに保存される。座標が保存された有核赤血球が、目的の胎児細胞である(ステップ451)。
【0096】
胎児細胞といった関心の物体が識別された後、例えば上述のin situPCRまたはPCRin situハイブリダイゼーションまたはFISHによって第二の信号が生成される。
【0097】
診断的信号の検出
in situPCRまたはPCRin situハイブリダイゼーション処理を行った細胞を含む塗布標本をステージ上に配置する(図2、201)。必要に応じて、前述のような較正ステップを行う。較正によって前記ソフトウェアはパフォーマンスの日による差異とともに、顕微鏡、カメラごとの差異を補正できる。実施例の方法における前記診断信号の検出は、図4のフローチャートに示すように、以下のとおり行う。
【0098】
倍率60x(63x)の対物レンズを選択する(ステップ501)。
上述のように第一信号の検出から収集された結果ファイルから得られたデータに基づいて、x‐yステージを第一胎児細胞位置に移動する(ステップ503)。
CCDカメラ(図2、209)を使用して前記光場を取得し、RGB画像として前記コンピュータ(図2、211)に転送する(ステップ505)。
前記RGB画像を前記HLSモデルに変換する(ステップ507)。
白黒マスクを含むTIFFファイルを個別の画像としてロードする(ステップ509)。
前記マスクにおいて白い領域に対応しない色相構成要素の画素をゼロ(黒)に設定する(ステップ511)。
【0099】
胎児細胞を示す残りの領域をPCR後に生成された信号に対応する画素値を検索する。例えば、前記信号はアルカリフォスファターゼの存在によって生じる色(つまり赤)であってよい。前記色相構成要素の黒色でない領域は、0〜30までの画素値を検索する(ステップ513)。
前記ステージを次の非処理胎児細胞に移動し、上記のプロセスを繰り返す(ステップ515)。
【0100】
前記PC211は、前記フレーム取り込み器および画像処理回路217の操作を制御するSIMPLEと呼ばれるソフトウェアプログラムを実行する。またSIMPLEは、フレーム取り込み器および画像処理回路217によって取り込まれた画像を処理した後、画像および処理したデータをディスクファイルとしてPC211に保存する。SIMPLEは、特にフィルタリング、物体選択、および測定などの画像処理に適した特別なルーチンを持つアイコンベースの環境を提供する。SIMPLEタスクの大部分は、マウスまたはトラックボールなど(図示せず)、PC211に接続されたポインティングデバイスを使用して、人間の操作者にによって指示される。
【0101】
SIMPLEを使用して画像を処理するために、多くの画像較正ステップを最初に行う必要がある。一つの実施例において、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を用いて適切に染色された新規スライドを蛍光顕微鏡に配置する。識別する関心の物体、すなわち核または染色体領域は、特定の染色的特徴を持つ。複数の蛍光検出手順を組み合わせることによって、複数の標的を特定の標本中で同時に描写することができる。つまり、異なる標的を異なる波長で蛍光する異なるフルオロフォアで標識する場合、前記画像におけるフルカラー情報が得られると、前記ソフトウェアプログラムは異なるフルオロフォアを放出する物体を個別に識別するようにできる。異なるフルオロフォアに対して異なる親和性を持つ標的は、放出される色の組み合わせによって区別される。各標的は2つ以上のフルオロフォアに対応する波長で放出するが、たとえば、それぞれの強度は異なる。そのため、前記顕微鏡画像の3つの色構成要素すべてが処理中に使用される。
【0102】
顕微鏡に挿入された新規標本それぞれに対して、まず事前処理手順を行う。図11のフローチャートは、本発明のこの実施例に関する処理ステップを示す。事前処理を行うことにより、ソフトウェアは標本間の差異を補正することができる。
【0103】
一実施例において、FISH処理を行った細胞を含むスライドをX‐Yステージ201に配置する。前記X‐Yステージ201は、希少細胞を含むことが判明した初期観察位置に移動する。事前定義された数の特定型希少細胞が測定されるまで、処理ループを繰り返し実行する。本実施例が意図されるアプリケーションにおいて、染色体DNAの複数標的を識別しながら、20〜100の核が処理されるまで前記ループを実行する。それらの核に含まれる染色体領域の測定データはASCIIファイルに収集される。
【0104】
フィルタリングステップ12000は、ピクセルベースで以下のように操作する。ステップ12001において、穴埋めフィルターを画像に適用する。このフィルターは前記SIMPLE言語から使用可能であり、明るい物体内の暗い領域を検索することによって、いつ明るい蛍光染色体内に暗い穴が発現したかを測定する。それらの領域は照明される。前記穴埋めフィルターの出力は、一時画像ファイル12101に保存され、ステップ12003において侵食フィルターへの入力として使用される。侵食フィルタリングもまたSIMPLE言語を通じて使用可能であり、小カーネルの中心画素を前記カーネルにおいて最も暗い画素と置き換える。3x3のカーネルを使用してよい。別の操作(ステップ12005)を次に行って、物体同士が接触するが融合しない程度まで成長させる。このステップによっても、すべての物体の端を定義する輪郭が形成される。論理NOT操作(ステップ12007)は、前記輪郭ではなく、前記輪郭内の画素が選択されるようにする。最後にステップ12009において、ステップ12007の結果は、保存された一時画像ファイル12101とAND操作を施される。これは前記一時画像ファイル12101および保持するステップ12007の出力にの双方において定義される画素のみを残す。
【0105】
複数の蛍光検出手順の組み合わせを使用する場合、1つの核につき2つ以上の染色体領域を検出することができる。そのため、第21染色体の場合2つ、第18染色体の場合2つ、X染色体の場合1つ、およびY染色体の場合1つの染色体領域を認識することができ、ハイブリダイゼーション信号の列挙によって検出される数的異常の可能性を発見できる。前記ハイブリダイゼーション信号の列挙は、CLIPPER(カリフォルニア州COMPUTER ASSOCIATES)を使用してコンパイルされたSIMPLE外部のアプリケーションプログラムを通じて20100核の測定を完了した後で実行してもよい。このプログラムは、測定結果のASCIIファイルを読み取り、それらのRGBカラーの組み合わせに基づいて、検出された染色体領域を分類する。2つ以上の異なるフルオロフォアを組み合わせて使用する場合、RGBカラー値の異なる組み合わせを使用して異なる標的を区別する。そのうちいくつかの標的は複数のフルオロフォアにより標識される。例えば、標的は赤および緑フルオロフォアで染色されるが、1つの標識はフルオロフォアを受け取って赤30%および緑70%を発光し、別の標識はフルオロフォアを受け取って赤70%および緑30%を発光する。一方、第三の標識はフルオロフォアを受け取って赤のみを発光する。前記3つの標識はそれらの相対的な発光量に基づいて識別される。第21染色体などの特定染色体に対応する染色体領域を示す信号の数が2より大きく、操作者が選択した統計的に有意なレベルである場合、特定の試料中にトリソミー21が存在する可能性が高いことを識別するレポートが発行される。
【0106】
本発明は、細胞含有試料における染色体異常の臨床検出に関連して説明されているが、本明細書で開示される前記画像処理方法は、他の臨床用途を持つ。例えば、説明されている前記画像処理ステップを使用して、人口透析プロセスを自動化することができる。本アプリケーションの技術を1993年10月7日提出の出願08/132,804と組み合わせると、多様な細胞型をそれらの形態に基づいて視覚化および分析することができる。細胞形態は、細胞形態が生理的状態と関連している状態を診断する目的で観察することができる。そのような状態は、当該技術分野に精通する者には知られている。例として、上述のHarrisonを参照する。これらの技術に基づいて様々な細胞の特徴および異常が検出される。最後に、前記試料は血液試料、血清試料、尿試料、または子宮頚部から採取した細胞試料に由来する可能性があるため、それを得た特定の源は本発明の制限とはならない。本明細書に記載される細胞の視覚化および画像分析法は、個別の細胞分析を用いて、分離された細胞の形態または他の特徴のいずれかによって検出可能ないかなる状態に対しても使用することができる。
【0107】
ヒト胎児ヘモグロビンに特異な抗体(ニュージャージー州、Research Diagnostics Inc.)および胚細胞イプシロンヘモグロビン鎖に特異な抗体(ジョージア州、Immuno‐Rx)は商業的に入手可能であり、蛍光標識された抗体として使用でき、または蛍光標識された二次抗体を使用することによって蛍光信号を生成することができる。当該技術分野において知られているように、他のタイプの染色または標識によって蛍光を生成することができる。この処理ステップに必要なタイプの蛍光染色は当該技術分野において知られており、詳細については記載しない。
【0108】
コンピュータおよび画像処理技術は、変化を続けている。上述の方法および装置の必要性を満たす新規の技術については、ここでは明確に記載されていないが、明らかに本発明の範囲内であると考えられる。例えば、従来の画素および画像ファイル形式について上述されているが、他の形式を使用することもできる。画像ファイルは、当該技術分野で現在知られているJEPGまたはGIF技術、またはまだ開発されていない他の技術を用いて圧縮することができる。現在使用されている前記HLS空間の代わりに、RGB色記述空間で処理を行ってもよい。特に求められている特徴の検出がそれによって強化される場合は、熟練した技術者の要望に応じて、他の色空間を使用することもできる。
【0109】
本明細書において、本発明は多くの特定実施例に関連して記載されている。追加の変型例も当該技術における熟練者には明らかであり、本発明の範囲に含まれるものと考えられ、本明細書に添付の請求項およびそれらに相当するものによってのみ制限される。
【0110】
本発明の実施例において、細胞の細胞成分を分析して、例えば出生前および着床前遺伝子診断、または胚細胞あるいは胎児細胞の性染色体における染色体異常を検出する例が示されている。
【0111】
図13は、細胞中の胎児ヘモグロビンの存在およびXおよびY染色体を識別するための細胞の免疫染色およびFISH分析を組み合わせた顕微鏡写真である。胎児ヘモグロビンは、前記細胞から検出されたオレンジの蛍光信号で示されるように、前記試料中および図右下に示される前記細胞の細胞質に存在する。XおよびY染色体は、前記細胞の核の中にそれぞれ緑、水色、赤の蛍光点で示される。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施例の方法を要約したフローチャートである。
【図2】本発明の一側面の一実施例において使用される分析システムのブロック図である。
【図3】第一信号の検出に至るステージIのフローチャートである。
【図4A】第一信号の検出に至るステージIIのフローチャートである。
【図4B】第一信号の検出に至るステージIIのフローチャートである。
【図5】第二信号の検出を示すフローチャートである。
【図6】連続塗布標本法を使用する本発明の一実施例を示す装置の変型例の略図である。
【図7】本発明の一側面に関する一実施例で使用される分析および試薬吐出システムのブロック図である。
【図8】本発明の一実施例である多目的顕微鏡システムの概要を示す。
【図9】画像「構成」方法である。
【図10】本発明の一実施例における較正ステップを示すフローチャートである。
【図11】本発明の一実施例における前処理ステップを示すフローチャートである。
【図12A】本発明の一実施例におけるメイン処理ステップを示すフローチャートである。
【図12B】本発明の一実施例におけるメイン処理ステップを示すフローチャートである。
【図13】細胞における免疫染色およびXおよびY染色体を用いたFISHによって胎児ヘモグロビンを識別するため、例1に記載されるように本発明の方法で調製された細胞の免疫染色およびFISH分析の組み合わせの顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ特定の細胞構成要素と結合して固有の蛍光信号を生成する少なくとも1つの抗体と細胞試料を反応させるステップと、それぞれ前記細胞において標的核酸配列とハイブリダイズするよう構成されるとともに固有の蛍光信号を生成する、1つまたは複数の核酸プローブを用いたin situハイブリダイゼーションによって、前記細胞試料を処理するステップと、前記反応および処理を行った細胞試料の1つまたは複数の画像を生成するステップと、前記画像において前記抗体および前記核酸プローブの両方に対応する蛍光信号を検出および分析するステップとを含む、細胞中の複数細胞成分を識別する方法。
【請求項2】
前記細胞試料が血液試料である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液試料が末梢血試料である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記血液試料が妊婦から採取されたものである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
対照と比較して前記蛍光信号を定量するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の核酸プローブが、前記細胞試料中のXおよび/またはY染色体とハイブリダイズするよう構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
コンピュータシステムを操作して、少なくとも1つの標的核酸により定義された遺伝的状態が細胞試料に存在するかどうかを検出する方法であって、核酸を標的とするハイブリッド蛍光標識プローブおよび関心の細胞の非核酸構成要素を対象とする蛍光免疫染色を持つ固定試料を撮像するステップであって、前記プローブおよび免疫染色の蛍光標識は異なるステップと、前記サンプルから蛍光を検出するステップと、前記免疫染色および前記プローブから蛍光を示す関心の物体の数を特定するステップと、前記免疫染色および前記プローブの両方から蛍光を示すそのような細胞の数に関する統計的期待値から、前記遺伝的状態が存在するかどうかを特定するステップとを含む方法。
【請求項8】
前記核酸プローブが、前記細胞試料中のXおよび/またはY染色体とハイブリダイズするよう構成される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記免疫染色が胎児ヘモグロビンと結合する、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
自然に存在する濃度の胎児細胞を含む母体血液試料を調製する方法であって、関心の細胞の非核酸構成要素を対象とする蛍光免疫染色を用いて前記試料を処理するステップと、関心の核酸配列を対象とする蛍光核酸プローブを用いて前記試料を処理するステップと、前記蛍光免疫染色および前記蛍光核酸プローブから蛍光信号を検出するよう動作可能に構成されたコンピュータ化された電子顕微鏡視覚システムを使用して前記細胞試料の一部を覆う光場を観察するステップと、前記蛍光信号の検出によって関心の核酸配列を持つ関心の細胞を識別するステップとを含む方法。
【請求項11】
前記関心の細胞が胎児細胞である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記胎児細胞が母体血液に由来する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記核酸プローブがXおよび/またはY染色体DNA配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記コンピュータ視覚システムが1つの対物レンズを使用して前記免疫染色および前記核酸プローブから蛍光信号を取得する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
関心の核酸配列を持つと識別された関心の細胞数に基づいて自動的に仮診断を行うステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12A】
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【図12B】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−511002(P2009−511002A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532482(P2008−532482)
【出願日】平成18年9月22日(2006.9.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/037301
【国際公開番号】WO2007/035929
【国際公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.WINDOWS
【出願人】(504133615)イコニシス インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】