説明

複数の電気化学セルを有する発電モジュール

本発明は、複数の基本電気化学セル(4);前記基本電気化学セルを支持するためのプレート(8)を含み、前記サポートプレートは2つの連続した電気化学セルのためのスペーサーを形成し;押圧力によって前記基本セル及び前記サポートプレートの相対的な位置を維持する押圧手段を含む発電モジュールに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、自動車用の発電モジュールに関し、特に、複数の電気化学セルを備え、電気自動車やハイブリッド自動車に適した発電モジュールに関する。
【0002】
通常、ハイブリッド推進またはハイブリッド牽引自動車は、複数のエネルギー源を使用できるように、車体に、内燃トラクションエンジン及び発電モジュールを備えた電気トラクションモータを備えている。
【0003】
この種のハイブリッド自動車や電気自動車のための発電モジュール、又はバッテリーは、複数の同一のアッセンブリを有する。各アッセンブリは、基本電気化学セルを備え、電極で生じる化学反応によって電気エネルギーを発生することができる。
【0004】
そのような基本電気化学セルは、特に、エネルギー的にも経済的にも有効である。しかしながら、これらのセルは、比較的厚みが小さく、比較的機械的強度も低いため、装置の製造時の組み立てや相対的な位置調整に困難が伴う。
【0005】
そのような装置の製造を容易にするために、すでに様々な解決策が考案されてきた。例えば、特開2004-227921号公報の要約には、底部及び上部に支持手段を備えた、積層された基本電気化学セルのための支持部材が記載されている。それぞれの支持手段は、交差し、それぞれの端部が固定ブロックを有する2つの長方形のバーを備え、支持手段の該固定ブロックは、他の支持手段の固定ブロックと協同している。
【0006】
これらのバーおよび固定ブロックは基本電気化学セルのための支持部材を形成し、主要な面が互いに重なるように、予め互いに溶接されている。さらに詳しい基本セルの溶接技術については、例えば、特開2004-253262号公報の要約を参照されたい。
【0007】
そのような基本電気化学セルのための支持部材は、極めて時間がかかり、困難かつコストの高い基本セルの溶接作業が予め必要になるという欠点を有する。また、プレートが互いに支持し合うように組み立てると、効果的な冷却を行うことができない。
【0008】
本発明の目的は、基本電気化学セルの組み立てが、極めて安全、迅速かつ効率的である発電モジュールを提案することにより前記の欠点を改善し、さらには、モジュールの効率を高め、かつ寿命を長くするために前記セルの冷却を容易にすることである。
【0009】
本発明の1側面によれば、複数の基本電気化学セルを備える発電モジュールは、前記基本電気化学セルのためのサポートプレートを備え、前記サポートプレートは2つの隣り合う電気化学セルのためのスペーサーを形成し、押圧力によって前記電気化学セル及び前記サポートプレートの相対的な位置を維持する押圧手段を備えるように構成されている。
【0010】
このような構成により、容易かつ迅速に、互いの電気化学セルの位置が相対的に定められた発電モジュールを提供することができ、さらには、前記セルを充分に冷却することができる。
【0011】
さらには、前記プレートを設けることにより、セルの相対的な位置決めが確実にできるだけではなく、前記セル間の間隔を一定に保つことができ、例えば空気のような冷却気体が循環可能になる。
【0012】
また、圧縮によって基本セル及びサポートプレートの相対的な位置を維持する押圧手段を用いることにより、溶接のようにセルを一緒に組み立てる、極めて複雑でコストのかかる作業をせずとも、極めて経済的なデバイスを提供できる。
【0013】
好ましくは、それぞれの前記サポートプレートは、少なくとも2つの隣り合う基本セルに対応している。
【0014】
前記基本セル及びそれに対応する前記サポートプレート間に摩擦エレメントを備えているのが好ましい。そのような摩擦エレメントは、サポートプレートに対する基本セルの位置決めを確実にする。
【0015】
好ましい具体例では、前記摩擦エレメントが前記サポートプレートであり、前記サポートプレートが前記基本セルよりも実質的に表面が粗い。
【0016】
有利には、前記装置は、最上位の前記基本セルを押圧するように、少なくとも1つの弾性変形エレメントがさらに設けられている。
【0017】
このような弾性変形エレメントを設けることにより、基本セル、サポートプレート及び荷重手段間の熱膨張の違いを克服することができる。さらには、該弾性変形エレメントは、基本セルの厚さに関する許容誤差と、該セルの充電状態又は放電状態による、いかなる厚みの変化も吸収することができる。
【0018】
好ましくは、前記弾性変形エレメントが柔軟性のある合成材料からなり、前記サポートプレートが堅い合成材料からなる。
【0019】
本発明の1側面によれば、前記サポートプレートが電導手段又は絶縁手段を備えている。
【0020】
前記手段は、前記装置の調整を簡単にするために、単一の部材からなるサポートプレートから構成される。
【0021】
好ましくは、前記装置は、前記基本電気化学セル及び前記サポートプレートの相対的な位置決めのための前記荷重手段が設けられているべースを備えている。
【0022】
前記サポートプレートが、前記基本電気化学セルのためのサポートフレームのアッセンブリ、及び、前記電気化学セルを互いに電気的に接続する少なくとも1つの接続部によって構成されているのが好ましい。
【0023】
本発明及び本発明の利点は、詳細が記載された実施例および添付の図によって、よりよく理解されるが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。
−図1は、本発明の一つの側面に係る発電モジュールの上面からの概略図である。
−図2及び図3は、それぞれ図1の発電モジュールの線II−II及びIII−IIIに沿った断面図である。
【0024】
以下に、図1ないし図3を参照して、図中の符号1で示される、特に電気自動車やハイブリッド自動車に用いられる、発電モジュールの一実施例を説明する。
【0025】
上から見ると、モジュール1はほぼ長方形であり、この実施例の場合、互いに接続され、複数の同様の電気化学セル4を有する2つのアッセンブリ2及び3を備えている。前記電気化学セル4は、それぞれのアッセンブリ2及び3において、2つの等しい縦の列を形成するように配置されている。従って、一方の列の電気化学セル4は、他方の列のセルと共に水平に配列されてペアを構成している。図1では、左下にある、アッセンブリ2のセル4の列の内の一つは描かれていない。
【0026】
通常、エネルギーを発生するために、それぞれのセル4は、電解質7によって分離されたカソード5及びアノード6を有している。該電解質7は、リチウム塩を含む有機溶媒型の液状電解質高分子に浸漬された、薄膜状の高分子セパレーターであってもよい。
【0027】
明確に記すため、図2及び図3では、アッセンブリ2及び3は、それぞれ8つの基本セル4からなるものとした。言うまでもないが、想定されるセルの総数は実際には異なる。実際には、自動車を動かすために必要なパワーは数十kWであり、そのためには、多くの電気化学セル4を積層することが必要になる。
【0028】
モジュール1のアッセンブリ2では、基本セル4のそれぞれのペアは、これらセル4の支持及び相対的な位置調整を確実にするための、サポートプレート8に対応付けられている。サポートプレート8は概ね長方形の形状であり、コンパクトなモジュール1とするためにセル4に比べて厚みが小さくてもよい。該厚みは、例えば、1ミリメートル程度である。
【0029】
前記プレート8は、サポートフレーム9及び、該フレーム9上に、例えばスナップ−フィッティング等により取り付けられて単一のアッセンブリを形成する実質的に同一形状の2つのサイドピース10及び11を有している。
【0030】
基本的に長方形であるフレーム9は、その長辺を結ぶ第1中央ストリップ12と、その短辺を結び、それぞれ該長辺の一方の近傍に位置する第2ストリップ13及び第3ストリップ14とを有する。即ち、ストリップ12は、2つの等しい開口9aを画定し、図1では一方の開口のみが見えている。これらの開口9aは、特に、セル4のターミナルを接続する方法を提供する。
【0031】
フレーム9のアッセンブリ3と反対側の長辺の位置には、上方に延びる垂直リム15及びサイドフレームの主面の両側に延びる垂直フォールド16がある。前記リム15及びフォールド16は、前記フレーム9の全体の長さに及ぶ。フォールド16は前記フレーム9の前記辺部分の外側に配置される。前記リム15は前記辺部分の内側に配置され、上面が傾斜している。
【0032】
反対側の長辺においても、フレーム9は上述したものと類似したリム19及びフォールド20を有している。リム15及び19の傾斜面は、一対の電気化学セル4の下面の支持を、フォールド16及び20は、前記下面の支持を目的としている。
【0033】
横に延びるピース10は、ほぼ長方形の板状であって、前記フォールド16の外側へ、フレーム9を水平に延長している。ピース10は、外側の長辺部及び短辺部の周囲に、鉛直のへり17を有し、該へり17はピース10の主面の両側に延びている。また、横に延びるピース10は、該へり17の近傍に2つの空洞18を有し、それぞれの空洞18はセルの列の一つと対応する。
【0034】
横に延びるピース11は、長方形の板状であるが、横に延びるピース10とはわずかに異なる。実際には、横に延びるピース11はアッセンブリ2の電気化学セル4のペアのためのものであるが、アッセンブリ3の電気化学セル4のペアにも対応する。即ち、横に延びるピース11は、アッセンブリ2及びアッセンブリ3に共通である。従って、ピース11は、短辺部の周囲に2つの垂直なへり(図示せず)を有している。また、ピース11も、ピース10と類似の位置に2つの空洞23を有している。
【0035】
アッセンブリ3の形状は、アッセンブリ2と同様である。言うまでもなく、モジュール1のアッセンブリの数は、要求される出力パワーに応じて調整できる。
【0036】
次に、サポートプレート8とアッセンブリ2の基本セル4との相対的な配置について説明する。
【0037】
最下位のサポートプレート8は、ブロック25ないし28を介してベース24に支えられている。ブロック25ないし28は、それぞれ、フォールド16、へり17、ストリップ13、ストリップ14及びフォールド20のそれぞれの底面を支えている。最下位にある2つの電気化学セル4の各主底面は、ストリップ12ないし14及びリム15、19の上面によって、前記プレートの高さで支えられている。
【0038】
真上のサポートプレート8は、フォールド16、20及びストリップ12ないし14のそれぞれの底面を介して、2つの最下位の電気化学セル4の主面によって支えられる。前記サポートプレート8は、実質的にセル間の間隔を一定に維持し、冷却の目的でガスが循環できるようにするため、最下位の基本セルの真上に電気化学セル4を支持するだけではなく、前記セル間に空間を形成する。
【0039】
他の6つのサポートプレート8及びアッセンブリ2の電気化学セル4は、上述したものと同様である。また、サポートプレート8とアッセンブリ3の電気化学セル4との相対的な配置は、アッセンブリ2の場合と同様である。
【0040】
いくつかの電気化学セル4を互いに電気的に接続するために、電導手段又は絶縁手段29、30が、各ピース10及び11の空洞18及び空洞23の内部に固定されている。電導手段又は絶縁手段29、30をどのように使用するかは、電気化学セル4が電気的に直列又は並列に接続されているかによって決まる。
【0041】
この目的を達成するために、それぞれの電気化学セル4は、端部に接続され、対応するセルの幅よりわずかに幅の小さな薄い金属シート状である2つの接続タブ31及び32を有している。図を明確にするために、ここでは、接続タブ31及び32は、電解質7に接続されている。各セル4が実際には外装部材(図示せず)を有しており、タブ31、32は当該外装部材に接続されていても良い。
【0042】
導電手段又は絶縁手段30は、アッセンブリ2の電気化学セル4とアッセンブリ3の電気化学セル4を電気的に接続するために用いられる。即ち、フレーム9は、前記セル4及び前記セルが互いに電気的に接続されるためのパーツ10及び11をサポートするために用いられる。
【0043】
アッセンブリ2の基本セル4及び積層されたプレート8の相対的な位置を維持するため、モジュール1は、前記プレート及びセルに押圧力を加える手段を備えている。当該押圧手段は、最上位のセル4に接するフランジ33、34、該フランジに対応する押圧プレート35、36及び固定ロッド37、38を有している。
【0044】
前記フランジ33、34は、最上位のピース10、11のそれぞれを覆う面積を有している。該フランジ33、34は、最上位の電気化学セル4を押さえ、最上位の絶縁手段29、30が通過するための空間(図示せず)を有しており、該フランジの上面は、導電手段又は絶縁手段29及び30の上面よりも下方に位置する。
【0045】
各フランジ33、34は、絶縁手段29、30よりもわずかに面積が大きく、最上位の絶縁手段29、30の上面を押さえるように配置された2つのプレート35、36を有する。前記プレート35、36及び絶縁手段29、30の間には、2つの隣り合ったセル4の列を電気的に接続するための金属のバー(図示せず)が設けられている。
【0046】
各プレート35に対して4つ描かれている、固定ロッド37は、この目的のために設けられた穴を介して、前記プレート及びプレート8を通過し、それぞれブロック25の位置で、ベース24に対してサポートプレート8及び電気化学セル4を固定するために使用される。この目的のため、プレート35の上面を押さえるように、ナット39が前記ロッドに螺合されている。
【0047】
同様に、ロッド38及びナット40は、フランジ34を通過して、ブロック28の位置で、ベース24に対してプレート8及び電気化学セル4を固定するために用いられる。即ち、フランジ34は、アッセンブリ2及びアッセンブリ3の電気化学セル4を固定するために用いられる。フランジ34のの反対側では、アッセンブリ3は、セル4の他端を固定するための他のフランジ(図示せず)を有している。
【0048】
モジュール1の各アッセンブリにおいて、前記押圧手段は、弾性変形エレメント42を介して最上位の電気化学セル4の上面を押さえる2つの横押圧バー41を有している。該押圧バー41は、互いに等しく、フレーム9の長辺とほぼ同じ長さである。これらは、ブロック26又は27に対して垂直に配置されている。
【0049】
変形可能なエレメント42は長方形であり、押圧バー41と同じ長さである。好ましくは、前記エレメント42は、例えば、エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)等の柔軟な合成材料からなる。ここでは、それぞれの押圧バー41に対して3つのネジ状のロッド43及びナット44が設けられ、サポートプレート8及び電気化学セル4がベース24に固定されている。ロッド43の下端部は、ここでは、ブロック26及び27に取り付けられている。
【0050】
このように、最上位の電気化学セル4を支持するエレメント42を設けることによって、サポートプレート8及びセル4の相対的なずれが生じるのを抑制するために、電気化学セル4に押圧力を加えることができる。さらには、基本セル4、サポートプレート8及びロッド43間の異なる熱膨張を吸収する。このようなエレメント42は、該セルの充電状態又は放電状態による、いかなる厚みの変化も吸収する。
【0051】
プレート8をセル4に対して確実に維持し、さらに装置1をコンパクトにするために、プレート8は、該プレートと電気化学セル4との摩擦係数を得るために、例えばポリプロピレン(PP)等の堅い合成材料からなり、摩擦手段によって前記プレートに対するセル4の水平位置を維持するように設計されている。
【0052】
言うまでもなく、前記目的のために、セル4とプレート8の間に特別なエレメントを設けることも考えられる。
【0053】
本発明の発電モジュールによれば、装置の最適な操作を得るために冷却ガスの循環を可能にする、セルが互いに間隔を介した、いくつかの基本セルからなるアッセンブリを、極めて容易かつ確実に得ることができる。また、所望のパワーやエネルギーによって、装置のアッセンブリの数や、それぞれの前記アッセンブリのセルの数を適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一つの側面に係る発電モジュールの上から見た概略図。
【図2】図1の発電モジュールの線II−IIに沿った断面図。
【図3】図1の発電モジュールの線III−IIIに沿った断面図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基本電気化学セル(4)を備える発電モジュールであって、
前記基本電気化学セルのためのサポートプレート(8)を備え、
前記サポートプレートは2つの連続した前記基本電気化学セルのためのスペーサーを形成し、
押圧手段が押圧力によって前記基本電気化学セル及び前記サポートプレートの相対的な位置を維持するように構成されていることを特徴とする発電モジュール。
【請求項2】
それぞれの前記サポートプレート(8)は、少なくとも2つの隣り合う基本電気化学セル(4)に対応付けられていることを特徴とする請求項1に記載の発電モジュール。
【請求項3】
前記基本電気化学セル及びそれに対応する前記サポートプレートの間に摩擦エレメントを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の発電モジュール。
【請求項4】
前記摩擦エレメントが前記サポートプレートであり、前記サポートプレートが前記基本電気化学セルよりも実質的に表面が粗いことを特徴とする請求項3に記載の発電モジュール。
【請求項5】
最上位の前記基本電気化学セルを押さえるように、少なくとも1つの弾性変形エレメント(42)がさらに設けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の発電モジュール。
【請求項6】
前記弾性変形エレメントが柔軟性のある合成材料からなり、前記サポートプレートが堅い合成材料からなることを特徴とする請求項5に記載の発電モジュール。
【請求項7】
前記サポートプレートが電導手段又は絶縁手段(29、30)を備えることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の発電モジュール。
【請求項8】
前記基本電気化学セル及び前記サポートプレートの相対的な位置決めのための前記押圧手段が設けられているべース(24)を備えていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の発電モジュール。
【請求項9】
前記サポートプレートが、前記基本電気化学セルのためのサポートフレーム(9)のアッセンブリ、及び、前記基本電気化学セルを互いに電気的に接続する少なくとも1つの接続部(10、11)によって構成されることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の発電モジュール。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2009−517823(P2009−517823A)
【公表日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542802(P2008−542802)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/051204
【国際公開番号】WO2007/063234
【国際公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】