説明

複数シース/複数細管のエアロゾル噴流

エアロゾル化された物質を堆積するための装置及び方法であって、エアロゾル流が、2以上の連続したシースガス流によって囲まれるとともに集束される。混合シース及びエアロゾル流は、2以上の細管を通って連続して流れ、それによって、さらに流れを狭くする。1ミクロンよりも小さいライン幅が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本願発明は、米国仮出願(出願番号60/978,649、発明の名称「複数シース複数細管エアロゾル噴出装置」、出願日2007年10月9日)の優先権を主張するものであり、その内容を本文に援用する。
【0002】
本発明は、エアロゾル流を囲んで空気力学的な集束を提供するように複数のシースを利用する、高分解能、マスク不要な液体及び液体と粒子の懸濁剤の堆積のための装置及び方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、物質を堆積するための方法であって、この方法は、エアロゾル流を形成するように物質をエアロゾル化するステップと、第1混合流を形成するように第1シースガス流でエアロゾル流を囲むステップと、第2混合流を形成するように第2シースガス流で第1混合流を囲むステップと、第2混合流を少なくとも1つの第1細管に通過させるステップと、物質を堆積するステップと、を含む。堆積された物質のライン(線)幅は、約10ミクロンと約1ミリメータとの間である。好ましくは、方法は、第1混合流を第2シースガス流で囲む前に、第1混合流を第2細管に通過させるステップをさらに含む。その場合、堆積された物質のライン幅は、約10ミクロンよりも小さく、より好ましくは、約1ミクロンよりも小さい。好ましくは、各細管のオリフィス径は約50ミクロンと約1ミリメータとの間である。好ましくは、堆積された物質のライン幅は細管オリフィスの大きさの約40分の1未満である。好ましくは、方法は、エアロゾル流が第1細管を通過することを防止するように、排気バルブを開けるステップをさらに含む。
【0004】
本発明はまた物質を堆積するための装置であり、この装置は、エアロゾル注入口と、第1シースガス注入口と、第2シースガス注入口と、少なくとも1つの第1細管とを備える。好ましくは、装置は、第1シースガス注入口と第2シースガス注入口との間に配置された第2細管をさらに備える。好ましくは、第1細管と第2細管との間の距離は可変である。好ましくは、各細管のオリフィス径は約50ミクロンと約1ミリメータとの間である。好ましくは、堆積された物質のライン幅は細管オリフィスの大きさの約40分の1未満である。好ましくは、第1細管のオリフィス径は第2細管のオリフィス径と同じである。あるいは、第1細管のオリフィス径は第2細管のオリフィス径よりも小さくてもよい。好ましくは、装置は、エアロゾル流が第1細管を通過することを防止するための排気バルブ又は真空多岐管をさらに備える。第1細管を備える第1装置ステージは、第2細管を備える第2装置ステージに選択的に1列に積み重ねられる。
【0005】
本発明の目的、利点及び新規な特徴、並びに、さらなる適用範囲は、添付図面に従って、後に続く詳細な説明に部分的に示されており、部分的には、本技術分野の当業者には以下の検討で明らかになるか、又は、本発明の実施によって分かるであろう。本発明の目的及び利点は、特に特許請求項の範囲に定義された手段及び組合せによって実現及び達成されうる。
【0006】
添付図面は、明細書の一部に組み込まれ且つ明細書の一部を形成し、本発明の1以上の実施形態を示し、以下の説明とともに本発明の原理を説明するのを助ける。図面は、本発明の1以上の好ましい実施形態を説明する目的のために用いられるだけで、本発明を限定するように解釈されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の2重シース/2重細管ノズルの実施形態の概略図。
【図2】本発明の2重シース/1つの細管堆積ヘッドの実施形態の図。
【図3】本発明の2重シース/複数ノズルアレイの実施形態の図。
【図4】本発明の1つのシース/1つの細管堆積ヘッドの実施形態の図。
【図5】本発明に従った、第2及び第3シース流形状の図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、一般に、エアロゾル流を囲んで空気力学的な集束を提供するように複数のシースを利用する、高分解能、マスク不要な液体及び液体と粒子の懸濁剤の堆積のための装置及び方法に関する。従来の形態は、平面又は非平面のターゲット上に集束されて堆積されるエアロゾル流を用い、このエアロゾル流は、対応するバルク物質の特性に近い物理的、光学的及び/又は電気的特性を達成するように熱的に又は光化学的に処理されたパターンを形成する。このプロセスは、MD(マスクレス メソスケール マテリアル デポジション)(登録商標)技術として知られ、従来の薄フィルム処理で堆積されたラインよりも桁違いに小さい、1ミクロンよりも小さくなりうるライン幅でエアロゾル化した物質を堆積するのに用いられる。堆積はマスクの使用なしに実行される。
【0009】
好ましくは、MD装置は、エアロゾル噴流堆積ヘッドを使用して、外部シース流及び内部エアロゾル運搬キャリア流から構成される環状伝播噴流を形成する。環状エアロゾル噴出プロセスにおいて、エアロゾルキャリアガスは、堆積ヘッドに入り、好ましくは、エアロゾル化プロセス直後又はヒーターアセンブリ(加熱組立体)を通過した直後のいずれかに、エアロゾルを囲むとともに取り込んで、装置の軸に沿って堆積ヘッドオリフィス(開口)に向かって導かれる。好ましくは、スループット(処理質量)はエアロゾルキャリアガス質量流コントローラで制御される。好ましくは、堆積ヘッドの内部において、エアロゾル流はミリサイズのオリフィスを通過することで当初に平行化される。好ましくは、その後、発生した噴出粒子流は環状シースガスに混合される。これは、ノズルの目詰まりをなくし且つエアロゾル流を集束させるように機能する。キャリアガス及びシースガスは、たいてい、一方又は両方が調整された溶媒蒸気内容物を含んでもよい圧縮空気又は不活性ガスを含む。例えば、エアロゾルが水溶液から形成されたとき、液滴蒸発を防止するように水蒸気がキャリアガス又はシースガスに加えられてもよい。
【0010】
好ましくは、シースガスは、エアロゾル注入口の下のシースガス注入口に進入して、エアロゾル流で環状流を形成する。エアロゾルキャリアガスと同様に、好ましくは、シースガス流は質量流コントローラで制御される。混合流は、ターゲットに向かってオリフィスを通って高速(例えば、約50m/s)でノズルから出て、その後にターゲット上に衝突する。この環状流は、エアロゾル流をターゲット上に集束させて、1ミリメーター以下で、1ミクロン以下に至るまでの大きさの形状に堆積することを可能にする。
【0011】
(補助シース流)
環状エアロゾル噴流の流れ特性及び堆積特性の向上が、環状エアロゾル運搬一次流を囲んだ補助シース流を用いることで達成されうる。好ましくは、各補助シース流は混合シース/エアロゾル流を補助細管内に導く。特性が向上した流れは、オーバースプレー(スプレーしぶき)及びサテライトドロップ(衛星液滴)を削減し、(且つ、)空気力学的な集束量を増加させる。MDの利用において、環状流はセラミック細管に注入される。二重シース/二重細管(DSDC、デュアルシースデュアルキャピラリ)構造においては、第2シースガスは環状噴流を囲み、その結果生じる流れが第2細管内に導かれる。DSDCエアロゾル噴流の概要が図1に表されている。エアロゾルは、チャンバ上のポート10を通って又は側部に取り付けられたポートからノズルに進入する。第1及び第2シース(ガス)は、それぞれポート12及び14を通って進入する。第1シース(ガス)は流れを集束させて、第1細管16内に注入される。第2シース(ガス)は、その後、環状流の第2集束を提供して、全構成流が第2細管18内に注入される。図1の構造は2つの集束させるステージを備える。装置は細管の間の距離を変化可能に構成(設計)されている。DSDCエアロゾル噴流の特性が向上した流れは、複数のステージ又は3以上の連続した補助シース流及び細管を採用する複数シース/複数細管(MSMC、マルチシースマルチキャピラリ)構造を使用することによって延長できる。1ミクロン以下のライン幅は、2重シース/2重細管又は複数シース/複数細管構造のいずれかを使用して達成されうる。
【0012】
本発明の一実施形態では、補助シース流が独立して制御される。好ましい細管オリフィスの大きさは、直径約150又は約100ミクロンであるが、連続補助シース流及び細管を使用することで、オリフィス径は、約50ミクロン程度に小さくすることも、約1000ミクロン以上に大きくすることもできる。
【0013】
Dの利用によって達成された環状流は、通常、細管の出口オリフィスの約10分の1のライン幅で、エアロゾル化した物質を堆積することができる。DSDC構造は、細管オリフィスの大きさの約10分の1より小さく、細管オリフィスよりも約40分の1に至るまで小さいライン幅を形成することができ、且つ、約1ミクロン以下の細いライン幅で線を直接的に引くことができる。
【0014】
環状噴流を用いるエアロゾル化した物質の直接堆積に見られる2つの一般的な問題は、オーバースプレーの形成及びサテライトドロップの発生である。オーバースプレーは、ガスが基材上に衝突して基材表面に沿って平行に流れ始めた後に、キャリアガス流内に混入したまま残る外側のエアロゾル粒子として大まかに定義される。その後に、ドロップ(液滴)は、堆積物から数ミクロンから数十ミクロンの範囲で基材上に衝突する。DSDCノズルは、エアロゾル流の空気力学的集束を増加させることで、オーバースプレー及びサテライトドロップを減少させる。
【0015】
(複数シース/1つの細管流)
図2は、2重シース流を1つの細管に通過させる、本発明の構造の一実施形態を示す。2重シース/1つの細管構造は、エアロゾル及び第1シース流から構成される環状流配給物(または分配物)の第2集束を提供するが、第2細間内に混合流を導入しない。エアロゾルはチャンバ上のポート100又は代替的に側部に取り付けられたポートからノズルに進入する。第1及び第2シースはポート120及び140を通ってそれぞれ進入する。エアロゾル及び第1シース流から構成された環状流配給物は、第2シース流によって囲まれて、1つの細管160内に注入される。3以上のシース流が代替的に採用されてもよい。複数シース/1つの細管(マルチシースシングルキャピラリ)の使用は、堆積ヘッドの内面に衝突(固着)し易いエアロゾルを堆積するときに有用である。このような固着は、堆積ヘッドに移動中に気化(蒸着、蒸発)しがちな揮発性の高蒸気圧インクから形成されたエアロゾルを堆積するときにしばしば見られる。MSSC構造は、このような液滴の固着を抑え、場合によっては完全に防止する第2シースガス層を提供する。
【0016】
複数シース/1つの細管(MSSC)構造はまた、堆積ヘッドの長さを最小化する必要があるときに、又は、第2細管ステージの追加に問題があるか、若しくは、適していないときにも有利である。このような構造の例には、基材上に平行なラインを同時にプリントするのに用いられる2以上の細管のアレイ(配列)である複数ノズルアレイがある。複数ノズルアレイ構造において、エアロゾル流は典型的には同じ平面内に位置した複数のノズルに等しく分配され、好ましくは、同時且つ等量のエアロゾル流がアレイの各細管を通って流れる。しかしながら、(複数の)ノズルアレイの使用が空気力学流の複雑さを増加させるので、集束を増加させる目的でのアレイ又は細管の第2ステージでの使用が実現可能ではなくなる。しかしながら、増加したエアロゾルの集束は複数シース構造を用いることで達成されうる。このような構成(設計)では、エアロゾル流の補助集束は細管アレイ内に進入する複数のシース流を発生させることによって達成される。図3は、2重シース/複数ノズルアレイの図である。エアロゾルミスト(噴霧)は、各ミストチューブ20に進入して、ポート22を通って進入する第1シース(ガス)によって集束される。エアロゾル及び第1シース流の第2集束は、アレイの各個別の細管26内に分配流を注入する前に、下方ポート24を通って進入する第2シース(ガス)によって実行される。この構造におけるエアロゾル流の増加した空気力学的集束は、約10ミクロン程度しかないライン幅を達成することを可能にする。
【0017】
(直列ステージ構造)
図4は、全ての補助ステージを除去することで形成された1つのシース/1つの細管構造のステージの図である。当初の環状エアロゾルジェットの増加した集束を提供する、複数のステージを1列に積み重ねられることを許容するヘッドの下方部の改変を除いて、1つのシース/1つの細管構造は従来のM3D(商標登録)堆積ヘッドと近似している。一般に、各ステージは、ポート112及び1つの細管116を通って進入する1つのシース流から構成されている。全てのステージは、同じ直径を有する細管を用いる。しかしながら、別実施形態では、細管はテーパー状であってもよく、その結果、各細管がその前の細管よりも小さい径を有する一連の細管となる。1列構造の使用は、所定細管径の堆積可能なライン幅の範囲を増加させる。1列構造では、エアロゾルが連続的に各細管を通って流れて、各ステージを通過する間により小さい径に集束される。1列構造は、1ミクロンほどしかないライン幅の堆積を可能にする。
【0018】
(複数シース/複数細管流)
直列ステージの原理の一例として、第2シース流及び第2細管によって形成された流れの特性の向上が、追加のシース流及び細管によって増加されうる。図5は、第3シースガス流が第1及び第2シース流に組み合わされて、さらに向上するであろう集束のさらなる向上及びサテライト(ドロップ)の減少を提供する第2及び第3シース流構造を示す。その結果生じた流れは、第3細管内に導かれる。同様の実施形態では、エアロゾル墳流の空気力学的な集束特性をさらに向上させるように、4以上の補助シース流及び細管が使用される。
【0019】
(空気力学的な遮断)
複数シースエアロゾル噴流の物質遮断は、噴流の最後の2つの細管の間か、噴流の第1の細管と噴流の最後の細管との間のいずれかに位置する排気バルブを開けることによって達成される。流れが排気バルブを通って方向転換するように、バルブの断面積は最後(ノズル出口)のオリフィスの断面積よりも大きい。典型的には、排気バルブは真空ポンプの前方にある。エアロゾル流を再び利用するためには、流れが噴流に沿って且つ最後の出口オリフィスを通るように方向転換されるようにバルブが閉じられる。ミストチューブからのミストを引き込む、真空用多岐管の形状の複数の真空ポートも遮断のために使用されうる。
【0020】
この同様の物質遮断の方法及び装置は、1つのシースシステムにも適用可能である。
【0021】
特にこれらの好適な実施形態を参考に付して本発明は詳細に記載されているが、他の実施形態でも同じ結果を達成することができる。本発明の変形及び改変は、本技術分野の当業者に自明であり、添付の特許請求の範囲において、全てのそのような改変及び均等物をカバーしている。上に挙げられた全ての参考文献、適用例、特許及び刊行物は、その内容を本文に援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を堆積する方法であって、
エアロゾル流を形成するように前記物質をエアロゾル化するステップと、
第1シースガス流で前記エアロゾル流を囲んで、第1混合流を形成するステップと、
第2シースガス流で前記第1混合流を囲んで、第2混合流を形成するステップと、
前記第2混合流を少なくとも1つの第1細管に通過させるステップと、
前記物質を堆積するステップと、を含む方法。
【請求項2】
堆積された前記物質のライン幅は約10ミクロンと約1ミリメータとの間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1混合流を前記第2シースガス流で囲む前に、前記第1混合流を第2細管に通過させるステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
堆積された前記物質のライン幅は約10ミクロンよりも小さいことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ライン幅は約1ミクロンよりも小さいことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記各細管のオリフィス径は約50ミクロンと約1ミリメータとの間であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
堆積された物質のライン幅は前記細管のオリフィスの大きさの約40分の1未満であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記エアロゾル流が前記第1細管を通過することを防止するように、排気バルブを開くステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
物質を堆積させるための装置であって、
エアロゾル注入口と、
第1シースガス注入口と、
第2シースガス注入口と、
少なくとも1つの第1細管と、を備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
前記第1シースガス注入口と前記第2シースガス注入口との間に配置された第2細管をさらに備えることを特徴とする請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記第1細管と前記第2細管との間の距離は可変であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記各細管のオリフィス径は約50ミクロンと約1ミリメータとの間であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項13】
堆積された前記物質のライン幅は前記細管のオリフィスの大きさの約40分の1未満であることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項14】
前記第1細管のオリフィス径は前記第2細管のオリフィス径と同じであることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項15】
前記第1細管のオリフィス径は、前記第2細管のオリフィス径よりも小さいことを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項16】
前記エアロゾル流が前記第1細管を通過することを防止するための排気バルブ又は真空多岐管をさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の装置。
【請求項17】
前記第1細管を備える第1装置ステージは、前記第2細管を備える第2装置ステージに、1列に積み重ねられることを特徴とする請求項10に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2011−502741(P2011−502741A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−529049(P2010−529049)
【出願日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際出願番号】PCT/US2008/079383
【国際公開番号】WO2009/049072
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(501429955)オプトメック,インク. (6)
【Fターム(参考)】