説明

複数モータ駆動のサーボプレス装置

【課題】簡単な構造で、高効率、低トルク脈動の駆動ができる複数モータ駆動の大容量サーボプレス装置を提供すること。
【解決手段】複数のクランク構造(偏心リング2a、2b、コンロッド3a、3b)により昇降されるスライド1と、前記複数のクランク構造を駆動するメインギヤ11a、11bと、メインギヤ11a、11bと直接、または、間接に接続される複数のドライブギヤ12a、12bと、前記複数のメインギヤ11a、11bを直接、または、間接に接続する中間ギヤと、前記ドライブギヤ12a、12bを駆動する駆動軸に接続されるサーボモータ群21a、21bをもつサーボプレスにおいて、前記サーボモータ群21a、21bの各サーボモータ軸には複数のサーボモータが直接接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大型のサーボプレス装置、特に複数のサーボモータで駆動する大容量サーボプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
サーボモータで駆動されるサーボプレス機械は、様々なスライドモーションができることから、例えば、プレス負荷直前に減速して絞り加工をしやすくしたり、あるいは、騒音を下げたり、または、スライドの下死点付近でスライドを上下させるいわゆる振り子運転による生産性向上などに利用される。大型のサーボプレス装置はスライドを複数点で加圧する複数ポイントの駆動が採用される。これに伴い、駆動するサーボモータも大型化、大容量化するので、複数モータによる駆動が採用される。複数モータの駆動による大容量サーボプレスが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−17089号公報
【特許文献2】特開2001−62596号公報
【特許文献3】米国特許第7102316号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、2モータによって大型プレスに対応することが記載されているが、2モータの容量では不足するさらなる大型プレスではどのようにモータを配置するかが不明である。特許文献2によれば、クランクシャフトに取り付けたモータの台数を増加させることによって大型化に対応することが記載されているが、クランクシャフトを直接駆動するモータはトルクが過大に必要で、モータ自体が大型化してしまう課題がある。
【0005】
さらに、特許文献3によれば、4台モータを利用することによって大型化に対応することが記載されている。しかし、各モータにギヤをもち、これらのギヤを介してトルク伝達させるために構造が複雑化し、スライドを複数点で加圧するため、加圧ポイントを駆動するギヤを中間ギヤを用いて連結するために損失が増加するという課題がある。また、前記どの特許文献でも各モータが発生するトルク脈動を小さくして駆動をことが考慮されていないので、スライド位置精度、応答性、騒音に問題がでることがある。
【0006】
本発明は前記課題に対してなされたもので、その目的とするところは、簡単な構造で、高効率、低トルク脈動で駆動が可能な複数モータの駆動による大容量サーボプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は複数のサーボモータ軸をもつサーボプレスにおいて、前記各サーボモータ軸に複数のサーボモータを直接取り付けることにより大容量サーボプレスを実現する。
すなわち、請求項1の発明は、
複数のクランク構造により昇降されるスライドと、前記複数のクランク構造を互いに直接、または、間接に接続するギヤトレインと、前記ギヤトレインに接続する複数のサーボモータ軸をもつサーボプレスにおいて、前記各サーボモータ軸に複数のサーボモータを直接取り付けることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置である。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、前記クランク機構はメインギヤに接続されており、メインギヤはサーボモータ軸に接続されたドライブギヤと接続され、メインギヤは直接に、または、中間ギヤを介して互いに接続されることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置である。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、
前記クランク機構はメインギヤに接続されており、メインギヤは中間ギヤを介してサーボモータ軸に接続されたドライブギヤと接続され、メインギヤは直接に、または、中間ギヤを介して互いに接続されることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置である。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、サーボモータ軸への複数のサーボモータの取り付けは、前記ギヤトレインに接続するサーボモータ軸に取り付けたドライブギヤの両サイドおよび/または一方側に配置することを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置である。
【0011】
請求項5の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、サーボモータ軸への複数のサーボモータの取り付けは、同一フレームを有するタンデム構造とすることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置である。
【0012】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、サーボモータ軸への複数のサーボモータの取り付けは、互いのモータのトルク脈動を打ち消すように回転軸方向に位相差をもって取り付けることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置である。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、サーボモータ軸に取り付けたエンコーダにより、概サーボモータ軸に取り付けた複数のサーボモータを制御することを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置である。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、前記複数のサーボモータ軸うちの一つをマスター軸として複数のサーボモータを制御することを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1、2、3の発明によれば、ギヤトレインにより左右クランク軸の完全同期を図りながら同一サーボモータ軸に複数モータを配置しており、少ないギヤによる駆動が可能なために、構造が簡単、損失が小さい、小型化できる、慣性モーメントが小さく高応答な稼動が可能、ギヤバックラッシュによる精度低下が少ない、ギヤにかかるトルクはモータ一組分だけでギヤ責務が小さい、という効果がある。
【0016】
請求項4の発明によれば、前記の効果に加え、サーボモータ軸を短くできるので、さらに小型化できる効果がある。
【0017】
請求項5の発明によれば、前記の効果に加え、サーボモータ軸をよりいっそう短くできるのでさらなる小型化できる効果がある。
【0018】
請求項6の発明によれば、前記の効果に加え、トルク脈動の小さな運転ができる効果がある。
【0019】
請求項7の発明によれば、前記の効果に加え、エンコーダ数が低減できるので、高信頼な駆動ができる効果がある。
【0020】
さらに、請求項8の発明によれば、前記の効果に加え、複数モータ間のバランスのよい運転ができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例1の構成図。
【図2】本発明の実施例1の横断面図。
【図3】本発明の実施例1のモータ配置図。
【図4】本発明の実施例1のモータ接続図。
【図5】本発明の実施例1のモータ接続時のトルク特性図。
【図6】本発明の実施例1の制御ブロック図。
【図7】本発明の実施例2の構成図。
【図8】本発明の実施例2のモータ配置図。
【図9】本発明の実施例3の構成図。
【図10】本発明の実施例3のモータ配置図。
【図11】本発明の実施例4の構成図。
【図12】本発明の実施例5の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図12を利用して説明する。
【実施例1】
【0023】
図1、2、3は本発明の実施例1のプレス装置を示す。図は本発明に関係する稼動部のみの簡易表現で、図1は正面から見た構成図、図2は横断面図、図3は上面から見たモータ配置図である。プレスはエキセンプレスの構造である。
【0024】
まず、図1と図2により構造を説明する。サーボプレス装置のフレーム31にサーボモータ群21aが取り付けられている。サーボモータ群21aの出力軸はこれと直結する駆動軸21asに連結されている。サーボモータはモータの出力軸または駆動軸に複数台接続されていて、ここではこの一群をサーボモータ群と称する。駆動軸21asにはドライブギヤ12aが設けられている。フレーム31にピン32が設けられている。ピン32の両端はフレーム31に固定されている。
【0025】
ピン32には偏心リング2aが係合している。偏心リング2aにメインギヤ11aが固定されている。メインギヤ11aは前記ドライブギヤ12aと噛み合っている。偏心リング2aはメインギヤ11aと一緒に回転する。偏心リング2aの偏心部がコンロッド3aの大径部の穴に係合している。コンロッド3aの下端部はスライド1に連結されている。
【0026】
サーボプレス装置のフレーム31にサーボモータ群21bが取り付けられている。サーボモータ群21bの出力軸は駆動軸21bsに連結されている。駆動軸21bsにはドライブギヤ12bが設けられている。フレーム31にピン33が設けられている。ピン33の両端はフレーム31に固定されている。
【0027】
ピン33には偏心リング2bが係合している。偏心リング2bにメインギヤ11bが固定されている。メインギヤ11bは前記ドライブギヤ12bと噛み合っている。偏心リング2bはメインギヤ11bと一緒に回転する。偏心リング2bの偏心部がコンロッド3bの大径部の穴に係合している。コンロッド3bの下端部はスライド1に連結されている。
メインギヤ11aと11bは噛み合っている。
【0028】
スライド1は偏心リング2aとコンロッド3aにより構成されるクランク機構と、偏心リング2bとコンロッド3bにより構成されるクランク機構とにより昇降運動を行う。すなわち、メインギヤ11aと11bの回転によるクランク構造によって昇降する。
【0029】
サーボモータ群21aのトルクは直接にメインギヤ11aに伝達され、サーボモータ群21bのトクルは直接にメインギヤ11bに伝達される。本実施例では、メインギヤ同士の同期化を図るためのギヤは設けられていない。このような構成で左右のメインギヤ17aと17bの同期化、すなわち、スライドの加圧点の同期昇降が図られる。
【0030】
また、サーボモータ群21a、21bはそれぞれが同一軸に複数のサーボモータが接続されている。図2の断面図は後述する図3(a)の場合である。
【0031】
クランク機構はサーボモータ群21a、21bの正転、逆転、速度可変制御により自由に回転駆動されるので、クランク機構以外のスライドモーション、成形方法に適合する静止を含む加減速モーション、あるいは、正逆振り子モーションなど各種スライドモーションを自在に設定でき、これらの組み合わせや切替使用が可能である。このために、プレス成形体に対する成形精度の向上、生産性や適応性が拡大できる。サーボモータ群21a、21bのモータとしては、永久磁石を用いた同期モータや、巻線界磁を用いた同期モータ、誘導モータ、リラクタンスモータなどが利用できる。
【0032】
さらに、このような交流モータでなく直流モータでもよい。ここでは、サーボモータ群21a、21bのモータは永久磁石同期モータとして説明する。また、図1はエキセンクプレスを例にとったが、クランク軸を持ってスライドを昇降させるクランクプレス装置でもよく、さらに、クランク構造でないリンクプレスやナックルプレスなど他の機構のものにも適用できる。本発明ではこのような構造によりスライドを昇降させる構造全部をクランク構造と称する(請求項1)。また、コンロッドは3a、3bの2組を示したが、さらに複数備えてもよい。
【0033】
図3はサーボモータ群におけるサーボモータ接続の具体構成例を示す。図において、図1と図2の部品番号が同一のものは同一物を表わす。
【0034】
図3(a)、(b)、(c)のサーボモータ群21aは、2台のサーボモータが同じ出力軸21acまたは駆動軸21asに接続されている。接続のやり方は後述する。サーボモータ群21bも同様に、2台のサーボモータが同じ出力軸21bcまたは駆動軸21bsに接続されている。
【0035】
図3(a)、(b)はドライブギヤ12a,12bの両側にモータを配置した例で、ドライブギヤ12aの両側にサーボモータ21a1、21a2が接続され、ドライブギヤ12bの両側にサーボモータ21b1、21b2が接続されている。駆動軸が短くバランスのよい駆動が出来る。(b)は(a)のモータ配置にメカブレーキ装置31a、31bを追加配置した例である。一方のサーボモータの反負荷側にブレーキ装置を配置している。(c)はドライブギヤ12aの一方側にモータ21a3、21a4、ドライブギヤ12bの一方側に21b3、21b4を配置した例で、モータ駆動軸のより短縮化が可能になる。(d)は複数モータのステータ部とロータ部(図の破線部)を同一フレーム内に収納した例で、いわゆるタンデム構造のモータ21a5、および、21b5を配置している。図示のように、外見上は1モータ駆動である。このような構造とすると、モータ連結部が短いのでさらなる小型化が可能となる。
【0036】
図3は、同一駆動軸に2台のモータを接続した例を示すが、1つのモータ能力、あるいは当該プレス装置の駆動に必要な能力に応じてモータ台数を3台、あるいはそれ以上としてもよい。
【0037】
プレス装置の所要能力から、モータ台数がさらに必要な場合、図1の他の方法として一つのメインギヤを駆動するサーボモータ駆動軸数を増加する、すなわち、例えば、メインギヤ11aに噛み合う12aとは別のドライブギヤを設け、この軸に複数のサーボモータを取り付けるようにしてもよい。
【0038】
ブレーキ装置はスライドの停止保持や非常停止時に用いられる。その配置について、図3(b)の例ではサーボモータ21a2の反負荷側にブレーキ装置31a、サーボモータ21b1の反負荷側にブレーキ装置31bを配置している。ブレーキ装置は他の配置でもよい。例えば、ブレーキ装置31aはサーボモータ21a1の反負荷側でもよい。また、ブレーキの能力から、各サーボモータ21a1、21a2、21b1、21b2の反負荷側全部に配置してもよい。さらに、メインギヤ11aと11bにブレーキ専用のギヤを配置し、このギヤの軸にブレーキ装置を配置してもよく、あるいは、メインギヤにつながる軸に配置してもよい。ブレーキ装置の配置は、図3(c)、(d)に対しても同様に考えることができる。例えば、(c)では、ブレーキ装置をドライブギヤとモータ配置と対称位置、すなわち、ドライブギヤから見て駆動軸のモータが接続されていない側にブレーキ装置を配置してもよい。
【0039】
次に本発明の特徴である複数サーボモータの接続方法を説明する。永久磁石サーボモータには磁気回路の構造によるコギングトルク、あるいは電機子電流波形によるトルク脈動など、モータの回転位置に応じたトルク脈動が発生する。トルク脈動はスライド位置精度の悪化や応答性の低下、あるいは駆動時の騒音の原因になるので、小さいことが望ましい。
本発明では同一軸に複数のモータを接続するので、各モータの出すトルク脈動を打ち消すように接続することができる。すなわち、図3(c)のようにモータを配置する場合、同一出力軸21acに2台のサーボモータを接続するとき、2つのサーボモータ21a3と21a4のトルク脈動の位相が逆になる回転位置に接続する。図4は2つのモータのロータの接続位相を変えてトルク脈動をなくす例で、図示のようにモータ21a3のロータ21a3rと、モータ21a4のロータ21a4rの磁極位置が互いに電気角で90度違うように出力軸21acでの取り付け位相を調整する。モータ21a3と21a4のステータは同一構造のものを同一位置で配置する。
【0040】
トルク脈動を低減する複数モータの配置としては、出力軸21acへのロータ磁極取付位相は同一とし、ステータ側で脈動が逆位相になるように接続してもよい。また、ステータの両方の位相を調整してもよい。モータ21b1と21b2でも同様に接続することができる。
【0041】
図4は図3(c)のモータ配置を例としたが、(a)や(d)の配置でも同様に接続することができる。
【0042】
図5は、2つのモータを上記説明したように接続したとき、2台のモータの発生トルクが回転位置によりどのように変化するか模式的に示す例である。この図の円周方向はトルクの大きさを示し、同一電流を流したとき、モータ軸の回転位置によってトルクがどのように変化するかを示す。実線Aは一方のサーボモータ21a3の発生トルクを示し、点線Bは他方のサーボモータ21a4の発生トルクを示す。図は一回転で12回の脈動がある例を示したが、実際はモータの構造により様々である。
【0043】
駆動軸21asにはこの和のトルクが出力される。それぞれのモータのトルク脈動分が互いにキャンセルできるのでトルク脈動の非常に小さな駆動が実現できる。図の破線Sはこの様子を示す(2台のモータのトルクの和を1台に換算して示す。すなわち、各モータの発生トルクの和の1/2を示す)トルクである。図から分かるように、破線Sの脈動は非常に小さくなる。
【0044】
同一駆動軸に3台のモータを接続するときは、3台の和でトルク脈動がなくなるように接続する。すなわち、図4のようにロータの軸への接続位相を調整するときは、それぞれのロータの磁極位相が電気角で120度の位相となるように接続する。4台以上でも同様に考えて接続をする。
【0045】
このように接続するとトルク脈動が非常に小さな駆動システムが実現でき、同一駆動軸に複数モータを配置するのに適する接続である。
【0046】
図6は2台のモータを図3(c)、図4のように接続したときのサーボモータの制御系の構成例を示すブロック図である。図において、サーボモータ21a3と21a4が接続される出力軸の軸端にモータの回転位置を検出するエンコーダ61aが接続され、サーボモータ21b3と21ab4が接続される出力軸の軸端にモータの回転位置を検出するエンコーダ61bが接続される。エンコーダ61aの回転信号は位置指令/位置/速度制御部64に入力され、このエンコーダ61aが接続された駆動軸21asをマスター軸としてサーボモータ21a3と21a4、21b3と21b4の回転位置と回転速度、すなわちスライドの位置、速度が制御される。
【0047】
位置指令/位置/速度制御部64は、スライド位置指令からモータの回転位置/速度を演算して、時々刻々のモータの回転位置指令を発生し、これに基づいてモータの回転位置/速度の制御をし、各モータのトルク指令を演算する。位置指令/位置/速度制御部64からのトルク指令は同一で、各モータを駆動するトルク制御部62a3、62a4、62b3、62b4に入力される。
【0048】
トルク制御部62a3、62a4、62b3、62b4は同一構成で、各トルク制御部62はトルク指令に応じて各モータに流れる電流制御を実施する。トルク制御部62はトルク指令に応じた電流指令発生部、電流制御部、PWM制御部、パワー素子から構成されるパワー制御部、モータに流れる電流を検出する電流検出部などから構成される。詳細構成は周知であるので省略する。
【0049】
エンコーダ61からの信号は各モータの磁極位置を検出する信号としても利用され、各トルク制御部62に入力される。このとき、図4のように同一駆動軸に接続された2台のモータは位相調整されて接続されるので、駆動軸の回転位置に対するモータ磁極位置が異なる。このため一方のモータは位相調整部63で位相調整されて入力される。なお、トルク制御部62にエンコーダ位置とモータ磁極位置を合わせる機能があれば、位相調整部63は不要である。
【0050】
このように構成すると、駆動軸21asをマスター軸、駆動軸21bsをスレーブ軸としてマスター、スレーブ駆動が行なえ、各モータが同一トルクを出しながらバランスの良い運転ができる。また、上記説明のように同一軸に接続したモータはトルク脈動が小さくなるように接続されるので、トルク脈動の小さな駆動が実現できる。
【0051】
ここで説明したように、同一軸に2台のモータが接続されるので、エンコーダはそれぞれのモータに持つ必要はなく、同じ軸では一つでよい。モータ毎にエンコーダをもつことも可能であるが、本実施例の方法より、エンコーダ数が低減され、また、検出用の配線削減ができるので、高信頼化ができる。
【0052】
上記説明では、同一軸へのモータ接続はトルク脈動が小さくなるようにモータ自体の機械的位相差により接続するようにしたが、モータの位相差接続でトルク脈動を低減するのではなく、電気的制御にも可能である。すなわち、モータの回転位置によってトルク脈動は分かるので、脈動分を打ち消すように2台のモータそれぞれを利用して電流制御を行なってもよい。このとき、2台のモータでトルク脈動分を打ち消すための電流は同一ではなく、それぞれ違えて互い脈動分を打ち消すように電流を流すと効果がある。
【0053】
図6のように構成すれば、万一、あるモータの制御部が異常停止のとき、例えば、サーボモータ21a3の制御部に異常が生じたとき、サーボモータ21a3の制御部だけを停止させ、他の正常なモータだけで容易に運転継続が出来る。停止したモータの接続される駆動軸は正常なモータで駆動されているので、モータ毎に駆動軸をもつ場合のように停止したモータの駆動軸がつれ回りされることがない。このため、信頼性の高い駆動ができる。
【0054】
以上説明した本実施例のプレス構造は、メインギヤ同士を接続し、左右クランク構造の完全同期を図りながら同一駆動軸に複数モータを配置しているので、少ないギヤによる駆動が可能なために、構造が簡単、損失が小さい、小型化できる、慣性モーメントが小さく高応答な稼動が可能、ギヤバックラッシュによる精度低下が少ない、メインギヤにかかるトルクはモータ一組分だけでギヤ責務が小さい、さらに、トルク脈動が小さいので、スライド位置精度の向上、高応答、低騒音という効果がある。
【実施例2】
【0055】
図7は本発明の実施例2の構成図である。実施例1の構成に対し、中間ギヤを追加配置したのが特徴である。
【0056】
偏心リング702aの偏心部がコンロッド703aの大径部の穴に係合している。コンロッド703aの下端部はスライド701に連結されている。また、偏心リング702bの偏心部がコンロッド703bの大径部の穴に係合している。コンロッド703aの下端部はスライド701に連結されている。
【0057】
偏心リング702a、702bの一端にはそれぞれメインギヤ711a、711bが接続されている。メインギヤ711aはサーボモータ群721aの駆動軸に接続したドライブギヤ712aに噛み合わされ、サーボモータ群721aと接続される。また、メインギヤ711bはサーボモータ群721bの駆動軸に接続したドライブギヤ712bに噛み合わされ、サーボモータ群721bと接続される。さらに、メインギヤ711aは中間ギヤ713aと噛み合わされ、メインギヤ711bは中間ギヤ713bと噛み合わされ、中間ギヤ713aと713bが噛み合わされている。このようにメインギヤ11aと11bが互いに接続される。
【0058】
このように左右のメインギヤ11aと11bの同期化が図られる。図示の例では、メインギヤ711aと711bは互いに逆方向の回転である。また、サーボモータ群721a、721bは後述するように同一軸に複数のモータが接続されている。
【0059】
実施例1のプレス構成と比較して、中間ギヤ713a、713bの調整によりプレス装置におけるメインギヤ配置の自由度が高まり、より多様のプレス装置に適用できる。
【0060】
図8はモータ接続の具体構成例を示す。図において、図7と部品番号が同一のギヤは同一物を表わす。
【0061】
図8(a)、(b)、(c)のサーボモータ群721aは同一モータ駆動軸721asに2台のサーボモータが接続されている。サーボモータ群721bは同一モータ駆動軸721bsに2台のサーボモータが接続されている。(a)、(b)はドライブギヤ712a,712bの両側にモータを配置した例で、ドライブギヤ712aの両側にサーボモータ721a1、721a2が接続され、ドライブギヤ712bの両側にサーボモータ721b1、721b2が接続されている。バランスよい駆動が出来る。
【0062】
図8(b)は(a)のモータ配置にメカブレーキ装置731a、731bを追加配置した例で、中間ギヤ713aと713bの軸に接続している。実施例1のブレーキ配置も可能である。(c)はドライブギヤ712aの一方側にモータ721a3、721a4、および、ドライブギヤ712bの一方側にモータ721b3、721b4を配置した例で、モータ駆動軸のより短縮化が可能になる。(d)は複数モータのステータ部とロータ部(図の破線)を同一フレーム内に収納した例で、いわゆるタンデム構造のモータ21a5、および、21b5を配置している。図示のように、外見上は1モータ駆動である。このような構造とすると、モータ連結部が短いのでさらなる小型化が可能となる。
【0063】
本実施例においても、実施例1と同様、同一軸にあるモータの接続、制御が行なえるので、トルク脈動の小さい駆動ができる。
【実施例3】
【0064】
図9は本発明の実施例3の構成図である。実施例1の構成に対し、中間ギヤにより2段減速としたのが特徴である。
【0065】
偏心リング902aの偏心部がコンロッド903aの大径部の穴に係合している。コンロッド903aの下端部はスライド901に連結されている。また、偏心リング902bの偏心部がコンロッド903bの大径部の穴に係合している。コンロッド903aの下端部はスライド901に連結されている。偏心リング902a、902bの一端にはそれぞれメインギヤ911a、911bが接続されている。
【0066】
メインギヤ911aは中間小ギヤ914aと噛み合わされ、その中間ギヤ軸に接続された中間大ギヤ913aはドライブギヤ912aと噛み合わされている。ドライブギヤ912aはサーボモータ群921aと接続される。また、メインギヤ911bは中間小ギヤ914bと噛み合わされ、その中間ギヤ軸に接続された中間大ギヤ913bはドライブギヤ912bと噛み合わされている。ドライブギヤ912bはサーボモータ群921bと接続される。
【0067】
さらに中間小ギヤ915aと915bは噛み合わされており、これを介してメインギヤ911aと911bが互いに接続される。このように左右のメインギヤ911aと911bの同期化が図られながらサーボモータ群921aと921bによって駆動される。図示の例では、メインギヤ911aと911bは互いに逆方向の回転である。また、サーボモータ群921a、921bは後述するように同一軸に複数のモータが接続されている。
【0068】
実施例1や実施例2の構成と比較して、中間ギヤによりモータ駆動軸からのトルクが2段減速されてメインギヤ911a、912bを駆動するので、サーボモータ群921a、921bの高速化が可能となり、モータの小型化ができ、また、モータ軸から見た慣性モーメントが小さくなるので、高応答な制御ができる。
【0069】
図10はモータ接続の具体構成例を示す。図において、図9と部品番号が同一のギヤは同一物を表わす。
【0070】
図10(a)、(b)、(c)のサーボモータ群921aは同一モータ駆動軸921asに2台のサーボモータが接続されている。サーボモータ群921bは同一モータ駆動軸921bsに2台のサーボモータが接続されている。(a)はドライブギヤ912a,912bの両側にモータを配置した例で、ドライブギヤ912aの両側にサーボモータ921a1、921a2が接続され、ドライブギヤ912bの両側にサーボモータ921b1、921b2が接続されている。バランスよい駆動が出来る。
【0071】
図10(b)はドライブギヤ912aの一方側にモータ921a3、921a4、および、ドライブギヤ912bの一方側に921b3、921b4を配置した例で、モータ駆動軸のより短縮化が可能になる。(c)はドライブギヤごとに(a)のモータ配置と(b)のモータ配置を採用した例で、モータとギヤ群全体での配置面積の縮小化ができる。(d)は複数モータのステータ部とロータ部(図の破線部)を同一フレーム内に収納した例で、いわゆるタンデム構造のモータ921a5、および、921b5を配置している。図示のように、外見上は1モータ駆動である。このような構造とすると、モータ連結部が短いのでさらなる小型化が可能となる。
【0072】
本実施例においても、実施例1と同様、同一軸にあるモータの接続と、全モータの制御が行なえるので、トルク脈動の小さい駆動ができる。
【実施例4】
【0073】
図11は本発明の実施例4の構成図である。実施例3の構成に対し、2段減速は同じであるが、メインギヤ同士を噛み合わせている点が特徴である。
【0074】
偏心リング1102aの偏心部がコンロッド1103aの大径部の穴に係合している。コンロッド1103aの下端部はスライド1101に連結されている。また、偏心リング1102bの偏心部がコンロッド1103bの大径部の穴に係合している。コンロッド1103aの下端部はスライド1101に連結されている。偏心リング1102a、1102bの一端にはそれぞれメインギヤ1111a、1111bが接続されている。
【0075】
メインギヤ1111bは、中間小ギヤ1114と噛み合い、その中間ギヤ軸に接続された中間大ギヤ1113はドライブギヤ1112aと噛み合い、さらに、ドライブギヤ1112bと噛み合っている。ドライブギヤ1112aは駆動軸によってサーボモータ群1121aと接続され、ドライブギヤ1112bは駆動軸によってサーボモータ群1121bと接続される。また、メインギヤ1111aはメインギヤ1111bと接続される。
【0076】
このように左右のメインギヤ1111aと1111bは互いに同期化を図りながら、サーボモータ群1121a、サーボモータ群1121bによって駆動される。サーボモータ群1121a、1121bはこれまでの実施例と同じように同一軸に複数のモータが接続されている。サーボモータ群1121a、1121bの具体配置はこれまでの例と同様にできる。
【0077】
実施例3と比較して、中間ギヤの数が少ないので簡易な形でモータ駆動軸からのトルクが2段減速されてメインギヤ1111a、1112bに伝達される。
【0078】
実施例1や実施例2の構成と比較して、中間ギヤによりモータ駆動軸からのトルクが2段減速されてメインギヤを駆動するので、サーボモータ群の高速化が可能となり、モータの小型化ができ、また、モータ軸から見た慣性モーメントが小さくなるので、高応答な制御ができる。
【0079】
本実施例においても、実施例1と同様、同一軸にあるモータの接続と、全モータの制御が行なえるので、トルク脈動の小さい駆動ができる。
【実施例5】
【0080】
図12は本発明の実施例5の構成図である。実施例3の構成に対し、さらに他の中間ギヤ方式により2段減速としたのが特徴である。
【0081】
偏心リング1202aの偏心部がコンロッド1203aの大径部の穴に係合している。コンロッド1203aの下端部はスライド1201に連結されている。また、偏心リング1202bの偏心部がコンロッド1203bの大径部の穴に係合している。コンロッド1203aの下端部はスライド1201に連結されている。偏心リング1202a、1202bの一端にはそれぞれメインギヤ1211a、1211bが接続されている。
【0082】
メインギヤ1211bは、中間小ギヤ1214bと噛み合わされ、その中間ギヤ軸に接続された中間大ギヤ1213は、ドライブギヤ1212aと噛み合い、さらに、ドライブギヤ1212bと噛み合っている。ドライブギヤ1212aは駆動軸によってサーボモータ群1221aと接続され、ドライブギヤ1212bは駆動軸によってサーボモータ群1221bと接続される。
【0083】
また、メインギヤ1211aは、中間小ギヤ1214aと噛み合い、さらに、中間小ギヤ1214bと噛み合っている。このように左右のメインギヤ1211aと1211bは互いに同期化を図りながら、サーボモータ群1221a、サーボモータ群1221bによって駆動される。サーボモータ群1221a、1221bはこれまでの実施例と同じように同一軸に複数のモータが接続されている。サーボモータ群1221a、1221bの具体配置はこれまでの例と同様にできる。
【0084】
実施例4と比較して、中間ギヤ1214aを介することにより、メインギヤのフレキシブルな配置が可能となる。
【0085】
実施例1や実施例2の構成と比較して、中間ギヤによりモータ駆動軸からのトルクが2段減速されてメインギヤを駆動するので、サーボモータ群の高速化が可能となり、モータの小型化ができ、また、モータ軸から見た慣性モーメントが小さくなるので、高応答な制御ができる。
【0086】
本実施例においても、実施例1と同様、同一軸にあるモータの接続と、全モータの制御が行なえるので、トルク脈動の小さい駆動ができる。
【0087】
上記の実施例で互いに組み合せ可能なものは適宜組み合せて実施できるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0088】
1、701、901、1101、1201…スライド
2、702、902、1102、1202…偏心リング
3、703、903、1103、1203…コンロッド
11、711、911、1111、1211…メインギヤ
12、712、912、1112、1212…ドライブギヤ
713、913、914、1113、1114、1213、1214…中間ギヤ
21、721、921、1121、1221…サーボモータ
31、731…ブレーキ装置
61…エンコーダ
62…トルク制御部
63…位相調整部
64…位置指令/位置/速度制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のクランク構造により昇降されるスライドと、
前記複数のクランク構造を互いに直接、または、間接に接続するギヤトレインと、
前記ギヤトレインに接続する複数のサーボモータ軸をもつサーボプレス装置において、
前記各サーボモータ軸に複数のサーボモータを直接取り付けることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置。
【請求項2】
請求項1記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、
前記クランク構造はメインギヤに接続されており、メインギヤはサーボモータ軸に接続されたドライブギヤと接続され、
メインギヤは直接に、または、中間ギヤを介して互いに接続されることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置。
【請求項3】
請求項1記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、
前記クランク構造はメインギヤに接続されており、メインギヤは中間ギヤを介してサーボモータ軸に接続されたドライブギヤと接続され、
メインギヤは直接に、または、中間ギヤを介して互いに接続されることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、
サーボモータ軸への複数のサーボモータの取り付けは、前記ギヤトレインに接続するサーボモータ軸に取り付けたドライブギヤの両サイドおよび/または一方側に配置することを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、
サーボモータ軸への複数のサーボモータの取り付けは、同一フレームを有するタンデム構造とすることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、
サーボモータ軸への複数のサーボモータの取り付けは、互いのモータのトルク脈動を打ち消すように回転軸方向に位相差をもって取り付けることを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、
サーボモータ軸に取り付けたエンコーダにより、概サーボモータ軸に取り付けた複数のサーボモータを制御することを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置。
【請求項8】
請求項7記載の複数モータ駆動のサーボプレス装置において、
前記複数のサーボモータ軸うちの一つをマスター軸として複数のサーボモータを制御することを特徴とする複数モータ駆動のサーボプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−245533(P2011−245533A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−122998(P2010−122998)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000100861)アイダエンジニアリング株式会社 (153)
【Fターム(参考)】