説明

複数貫流集熱ユニットによる蒸気タービン機関

【課題】従来の再生可能エネルギーや廃熱利用の小型蒸気タービンは、トルク不足や回転数が不安定のため実用化に乏しく、安定稼動と費用および運用の面から解決すべきがある。
【解決手段】目的とする蒸気タービンは、外部からの熱エネルギーを媒体に吸収蓄熱する貫流集熱ユニットを複数設け、内部を媒体の作動流体10が貫流する構造とする。貫流集熱ユニットは、供給口(21、31、41)および出力口(22、32、42)に逆止弁を設け、外部からの熱エネルギーを吸収可能な位置とする。作動流体10は、逆止弁34の働きにより選択された貫流集熱ユニットB(30)から出力部12へ出力され、その後は選択される各貫流集熱ユニットの協調により、ブレード回転軸15が継続的に安定回転する外燃機関の蒸気タービン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動流体を媒体とする、熱エネルギーから安定した運動エネルギーに変換する蒸気タービン機関に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、発電などエネルギー供給の重要な機関であり、特に発電効率の向上には大きく寄与(ガスタービンの次段に導入することにより熱効率を高める)している。高圧蒸気の減圧弁の役目を担い合わせて発電を行う方法も使用されており、応用範囲が広い機関である。
【0003】
省エネおよび地球環境の観点からもエネルギー対策は重要あり、再生可能エネルギーや廃熱の積極利用への動きは活発である。また里山の環境保全に間伐材を薪ストーブや木質バイオマス燃料として使用されているが、間伐材の運搬コストなど経済性の課題もある。
【0004】
再生可能エネルギーや廃熱利用の蒸気タービンは、設備規模が大きく限られた範囲の発電(数十Kwから百Kw程度)にて実用化されている。蒸気タービン以外に燃料電池や熱電変換モジュール(ゼーベック効果による)、スターリングエンジンなどにより再生可能エネルギーや、廃熱利用の発電が一部試験運用されているが、いずれも発電出力や費用および運用の面から解決すべき点がある。
【0005】
照明や携帯通信機器を使用または充電できる実用的な小型タービン発電機は、一定以上の安定した電力(約300W以上)の出力可能であること、また取り扱い容易なサイズの機関が必要である。適正な費用(初期導入および運用)、運搬移動および燃料や熱源が制限されず騒音振動が少ない、加えてスマートグリッド電力(上流の電力会社から下流末端の電力消費機器まで、情報通信網により電力の潮流の制御や品質を確保する)への対応や災害時非常電源としての汎用性の高い、地球環境を考慮した駆動機関が望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の蒸気タービン機関は、設備規模が大きく運搬移動が困難である。また一部の小型の蒸気タービンは実用化に乏しく、トルク不足や回転数が不安定のため、発電機を機械的に接続駆動させた場合、一般電気機器を動作させるには発電電力および安定性に欠ける。
【0007】
本発明は、燃料の種類制限および入手制限が少なく、騒音振動も少ない、発電機を機械的に接続駆動させた場合、一般電気機器を動作させるに必要な発電電力量および安定性を持った、運搬移動可能な蒸気タービン機関の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明は、蒸気タービンを駆動させる外燃機関の構造とする。外部からの熱エネルギーを媒体に吸収蓄熱させる貫流集熱ユニットを複数設ける。蒸気タービンは、貫流集熱ユニットの内部を媒体である作動流体が貫流する構造を持ち、供給口および出力口に逆止弁を設け、外部からの熱エネルギーを吸収可能な位置とする。出力部はノズル部と共有立体空間を形成し、ノズル部の直後にタービンブレードと一体化したブレード回転軸を設ける。
【0009】
作動流体は、ポンプによる強制的もしくは供給部と供給口の圧力差により、供給部から各貫流集熱ユニットの供給口へ逆止弁を経由して供給される。次に、各貫流集熱ユニット内の作動流体は出力口から逆止弁を経由して出力部とノズル部へ出力され、タービンブレードへ供給される。全体の流れは一方向となり、圧力差による供給および出力されない状態が一時的に発生する場合もある。
【0010】
作動流体は、外部からの熱エネルギー(火炎の直接熱と輻射熱および放射熱)により各貫流集熱ユニット(以下、ユニットと記述)内部にて加熱蓄熱され圧力が増し、出力部の圧力より高い場合に条件を満たし、逆止弁の作用により選択されたユニットから出力部へ出力される。他の圧力の低いユニットの作動流体は、出力部より高い条件に達するまで加熱蓄熱され、条件が一致すると出力部へ出力される。ユニットは条件以下の圧力の場合は出力部への出力はされない、外部熱が遮断されない限り作動流体は、連続的に加熱蓄熱され複数のユニットが、出力部の圧力を、お互い補いながらいずれかのユニットの作動流体が、ノズル部経由にてタービンブレードと一体化したブレード回転軸を連続駆動し、熱エネルギーが運動エネルギーに変換する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、外部熱源から貫流集熱ユニットへ直接加熱する構造により、化石燃料(石油・ガスなど)・バイオマス燃料(間伐材・木質廃材など)や、排熱(機器機関・工業排水・排煙)など多くの熱源の利用が可能である。また間伐材を山林現地にて熱源とすることにより、地球環境問題やスマートグリット電力の概念に対応可能である。本発明の機械的可動部は、逆止弁とタービンブレードとブレード回転軸であり、エンジン等の内燃機関に比べ騒音振動が少ない
【0012】
本発明のブレード回転軸は、適正な外部熱量を確保することにより、各貫流集熱ユニットの最大圧力の作動流体が連続出力され、発電機を接続した場合、外部熱エネルギーに応じた発電電力量が安定的に確保できる。また蒸気タービン機関のサイズ・重量は、外部熱源に依存されず、発電機等を使用場所にて組み立て接続することにより、蒸気タービン機関の運搬移動は容易である。
【0013】
貫流集熱ユニットは、蒸気タービン機関から容易に取外しが可能な構造を有し石油ストーブの内部に設置を行い、発電中に燃料(石油)不足の場合は取外し、薪ストーブや瓦斯ストーブを熱源として発電が可能である。災害時等の非常電源として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】蒸気タービン機関の概略構成図
【図2】作動流体の圧力差による作動流体の圧力図
【図3】図2の逆止弁の開閉動作チャート表
【図4】図2より加熱エネルギーが大きい場合の圧力図
【図5】図4の逆止弁の開閉動作チャート表
【図6】発電機を駆動した例の図
【図7】形状が丸の集熱ユニットの例の図
【図8】ファンヒーターのファン直接駆動の図
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図1〜図5に基づいて説明する。
【0016】
図1において、貫流集熱ユニットAとBおよびC(20、30、40)が外部熱源(図示されてない)に加熱され、内部の作動流体10が加熱蓄熱されると出力部12の作動流体10の圧力12aは、全て同一の開閉圧力と設定された各逆止弁(24、34、44)により、各貫流集熱ユニットの圧力(20a、30a、40a)の中で、圧力選択された最も高い貫流集熱ユニットB(30)と同等となる。圧力選択され30aを持った貫流集熱ユニットB(30)の作動流体10は、出力部12へ出力されノズル部13を経由、タービンブレード14に衝突、ブレード回転軸15が回転する。
【0017】
加熱開始後の最初に、貫流集熱ユニットB(30)の作動流体10の圧力30aが、出力部の作動流体の圧力12aを超えた場合に逆止弁BD34が閉から開に状態になり、貫流集熱ユニットB(30)が圧力選択された貫流集熱ユニットとなる。次に時間経過と共に圧力30aが徐々に低下すると同時に他の貫流集熱ユニットの圧力が高くなり、各逆止弁(24、34、44)の働きにより、他の貫流集熱ユニットが圧力選択された貫流集熱ユニットとなる。
【0018】
貫流集熱ユニットB(30)の次に貫流集熱ユニットC(40)が圧力選択される状態は、貫流集熱ユニットC(40)の作動流体10の圧力40aが圧力12aより高くなった後、逆止弁BD44が閉から開に状態になり、圧力30aが圧力12aより低下し逆止弁BD34は開から閉の状態となった場合である。次に外部加熱時間の経過と共に圧力選択される貫流集熱ユニットが切換る(換わらない場合や複数もある)。
【0019】
図2は、加熱時間の経過と共に圧力選択される貫流集熱ユニットが換わる(B→C→A)動作状況を表している。逆止弁BD24とBD34およびBD44は約0.5(MPa)にて閉から開に状態になるような機械的な設定とする。過熱開始から約10分にて貫流集熱ユニットBの作動流体10の圧力30aが、0.5(MPa)を超えた場合に逆止弁BD34が開となり、出力部の作動流体の圧力12a(10分までは大気圧の約0.1MPa)も同一圧力となりブレード回転軸15が回転する。
【0020】
この時点にて他の貫流集熱ユニットの圧力20aと40aは、0.5(MPa)を超えてないので逆止弁BD24とBD44は開とならない、圧力40aは約32分後に0.5(MPa)を超え、逆止弁BD44が機械的に開となる条件であるが圧力12a(30aと略同一圧力)が逆方向から加えてられているので閉のまま変化なし。約37分後に圧力20aと40aが逆転するので逆止弁BD44が開、BD34が閉、圧力12aは40aの影響を受け略同一圧力となり、ブレード回転軸15の回転するエネルギーの源となる。
【0021】
作動流体10は、熱源の温度により水以外の媒体(フロン、アルコール、オイル)とその混合物を使用し、図示されてない凝縮器やポンプにより、ノズル部13から供給部11に戻り循環する。水を使用する場合は駆動環境により循環させず排水させることもある。
【0022】
図3は、図2の貫流集熱ユニットの圧力による、逆止弁の開閉動作チャート表です。図4は、図2より外部からの熱エネルギーが大きい場合の圧力図です。図5は、同じく作動流体の圧力が高い状態での逆止弁の開閉動作チャート表です。各図(図2〜図5)に示されている様に、加熱開始後の最初の逆止弁の動きは約0.5(MPa)にて開となり、それ以降は適正な連続加熱の状態が保たれれば、各貫流集熱ユニットからの圧力の協調により逆止弁が開閉され連続的に安定した出力が確保される。
【0023】
逆止弁は、各々個別に任意に設定でき、外部制御信号により開閉動作可能である。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施の3例を図6〜図8に基づいて説明する。
【0026】
1つ目の例を、図6を参照して説明する。蒸気タービン機関50に変速機51を経由して発電機52を連結することにより発電でき、制御および外部接続端子部53に接続した電気機器の使用や蓄電池の充電ができる。
【0027】
蒸気タービン機関50の発電機の出力規模や使用形態(容易に点検が困難な場所にて使用するなど)においては、制御部および外部接続端子部53と各機器(50、51、52)を制御信号53bの信号により、相互に運転を自動制御することにより適正な出力が可能となる。蒸気タービン機関50には各種センサー(温度、圧力、逆止弁開閉状態など)と逆止弁開閉動作機構(マグネットソレノイドなど)を装備し、変速機51および発電機52には回転計や温度センサー(過熱防止)と回転制御機構(無段変速機制御、励磁装置制御など)を装備する。
【0028】
2つ目の例を、図7を参照して説明する。外部熱源の炎や放射熱が丸状の場合は、効率よく集熱するために、貫流集熱ユニットAとBおよびC(20と30および40)の形状を丸とする。貫流集熱ユニットの形状は任意であり、それぞれの貫流集熱ユニットの取付け位置も任意とする。薪ストーブの内部に貫流集熱ユニットを取付ける場合、貫流集熱ユニットA20は薪の炎、貫流集熱ユニットB30は薪の炭火の放射、貫流集熱ユニットC40は薪火の対流による熱エネルギーを回収できる任意の位置に取付けることが可能である。
【0029】
3つ目の例を、図8を参照して説明する。ファンヒーター本体56の内部に蒸気タービン機関50を取付け、熱源55から温風55cと放射熱を介した熱エネルギーにてファン54を回転させる。ファン54は、変速機51を経て蒸気タービン機関50の運動エネルギーの出力から直接回転され、温風55cをファンヒーター本体56から送風できる。送風量は、多少の時間差を生じ熱源55の熱エネルギーの変化と比例する。発電機にて電動ファンを動作させるよりもシンプルなので保全性が良くなる。
【符号の説明】
【0030】
10 :作動流体
11 :供給部
11a :供給部の作動流体の圧力
12 :出力部
12a :出力部の作動流体の圧力
13 :ノズル部
14 :タービンブレード
15 :ブレード回転軸
20 :貫流集熱ユニットA
20a :貫流集熱ユニットAの作動流体の圧力
21 :供給口A
22 :出力口A
23 :逆止弁AS
24 :逆止弁AD
30 :貫流集熱ユニットB
30a :貫流集熱ユニットBの作動流体の圧力
31 :供給口B
32 :出力口B
33 :逆止弁BS
34 :逆止弁BD
40 :貫流集熱ユニットC
40a :貫流集熱ユニットCの作動流体の圧力
41 :供給口C
42 :出力口C
43 :逆止弁CS
44 :逆止弁CD
50 :蒸気タービン機関
51 :変速機
52 :発電機
53 :制御部および外部接続端子
53b :制御信号
54 :ファン
55 :熱源
55c :温風
56 :ファンヒーター本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部を作動流体が貫流する筒状の貫流集熱ユニットを複数備え、前記貫流集熱ユニットの供給口と出力口に逆止弁を設け、前期作動流体は出力部に出力され、前記出力部はノズル部と共有立体空間を形成し、前記ノズル部の直後にタービンブレードと一体化したブレード回転軸を設けていることを特徴とする蒸気タービン機関。
【請求項2】
前記作動流体は、外部からの熱エネルギーにより複数の前記貫流集熱ユニット内部にて加熱蓄熱され圧力が増し、前記出力部の圧力より高い前記貫流集熱ユニットの前記逆止弁が開となり、前記出力部へ出力され、他の圧力の低い前記貫流集熱ユニットの前記作動流体は、前記出力部より高い条件に達するまで加熱蓄熱され、条件が満足されると前記出力部へ出力され、条件以下の圧力の場合は前記出力部への出力はされない、外部熱が遮断されない限り前記作動流体は、連続的に加熱蓄熱され複数の前記貫流集熱ユニットが前記出力部の圧力を、お互い補いながらいずれかの前記貫流集熱ユニットの前記作動流体が、前記ブレード回転軸を回転することを特徴とする請求項1記載の蒸気タービン機関。
【請求項3】
供給部、前記出力部、前記ブレード回転軸、前記貫流集熱ユニット、前記供給口、前記出力口、前記逆止弁に状態監視センサーを装備し自動運転制御できることを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸気タービン機関。
【請求項4】
前記貫流集熱ユニットを任意の形状とした請求項1乃至3いずれか記載の蒸気タービン機関。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれか記載の蒸気タービン機関を用いた発電機。
【請求項6】
請求項1乃至4いずれか記載の蒸気タービン機関を用いたファンヒーター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−127637(P2012−127637A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−294640(P2010−294640)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【出願人】(511004140)
【Fターム(参考)】