説明

複数軸駆動装置、複数軸駆動機械、及び複数軸駆動装置の駆動制御方法

【課題】複数のモータ制御回路のいずれかに異常が生じた場合であっても、複数の駆動軸の軸間誤差による締結部の過大な内部応力の発生を防止する。
【解決手段】モータ2の駆動を制御するモータ制御回路6を設け、共通の目標駆動位置指令とモータ3の駆動位置の位置偏差を保持する位置偏差カウンタ50と、その位置偏差を少なくするようモータ3の駆動を制御するための位置制御部202とを備えたモータ制御回路7を設け、モータ制御回路6は、異常通知信号を出力する異常検出部107と、異常検出されたときにモータ2の駆動を停止する停止制御手段とを有し、モータ制御回路7は、異常通知信号が入力された際に目標駆動位置指令に代えて、モータ2の駆動位置が位置制御部202へ入力されるように信号経路を切り替える切替スイッチSW2を有し、位置制御部202は、異常通知信号が入力された際に位置偏差カウンタ50の位置偏差をリセットする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一の剛性構造物の移動を複数軸で同期制御する複数軸駆動装置、複数軸駆動機械、及び複数軸駆動装置の駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばマウンタなどの産業用機械に利用されるいわゆるガントリ構造では、比較的大きな剛性構造物を、複数の駆動軸で連結して移動させる。従来、それら複数の駆動軸をそれぞれ個別のモータで駆動制御する複数軸駆動装置が、既に開発されている。この複数軸駆動装置においては、複数のモータそれぞれに対応してそれぞれ制御回路が設けられている。そして、各制御回路は、複数の駆動軸どうしの間の軸間誤差が小さくなるように、各モータのフィードバック制御を互いに同期して行う。
【0003】
従来、上記複数軸駆動装置において、例えばいずれかのモータの制御回路に異常が発生した場合に対応したものがある(例えば、特許文献1参照)。この従来の複数軸駆動装置では、異常が発生していない通常の駆動状態では、複数のモータに共通の駆動指令信号が入力され、各モータの制御回路が、対応するモータの実際の駆動位置と上記駆動指令信号で指示される目標駆動位置との位置偏差を少なくするように、各モータをフィードバック制御する。このようにして各モータは、共通の目標駆動位置に追従するように同期してフィードバック制御される。
【0004】
上記従来の複数軸駆動装置において、一方のモータに係わるモータ制御回路に異常が発生した際には、当該モータ制御回路により上記一方のモータが停止制御されるとともに、当該モータ制御回路から他方のモータ制御回路へと異常通知信号が出力される。そして、上記異常通知信号が入力された他方の制御回路は、上記共通の駆動指令信号に代えて、一方のモータの実際の駆動位置を入力するよう信号経路を切り替える。これにより、当該他方のモータ制御回路は、入力された一方のモータのモータ駆動位置と自らに係わる他方のモータのモータ駆動位置との間の位置偏差を求めて保持し、その位置偏差を少なくするように他方のモータを追従制御する。したがって、一方のモータ制御回路が故障した状態における他方のモータ制御回路での他方のモータの制御は、停止制御される一方のモータの位置に追従するように行われる。この結果、それら一方のモータ及び他方のモータにより駆動される複数の駆動軸は、それらの間の軸間誤差が小さくなるように駆動制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4385404号公報(段落0009、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術の複数軸駆動装置において、前述の一方のモータ制御回路の異常発生時に他方のモータ制御回路が信号経路を切り替えて追従制御を行う際、当該切り替わった時点において、それまでのフィードバック制御で実行していた、目標駆動位置と他方のモータのモータ駆動位置との位置偏差が保持されて残っている場合がある。この場合、上記のようにして求められた、一方のモータのモータ駆動位置と他方のモータのモータ駆動位置との間の位置偏差に、上記残っている位置偏差が合算された形で、切り替わり後の他方のモータの追従制御が開始されることとなり、高精度な追従を迅速に行えない可能性がある。この結果、2つのモータが駆動する駆動軸の間の軸間誤差が大きくなり、締結部に過大な内部応力が発生するおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、複数のモータ制御回路のいずれかに異常が生じた場合であっても、複数の駆動軸の軸間誤差による締結部の過大な内部応力の発生を防止できる複数軸駆動装置、複数軸駆動機械、及び複数軸駆動装置の駆動制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本願第1発明は、締結部によって連結された第1駆動軸及び第2駆動軸を備えた複数軸駆動機械に設けられる複数軸駆動装置であって、前記第1駆動軸を駆動するための第1モータ、及び、前記第2駆動軸を駆動する第2モータ、を設け、前記第1モータに機械結合され前記第1モータの駆動位置を検出する第1位置検出器、及び、前記第2モータに機械結合され前記第2モータの駆動位置を検出する第2位置検出器、を設け、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第1モータの目標駆動位置と前記入力した前記第1モータの駆動位置との第1位置偏差に基づき前記第1モータの駆動を制御するための第1位置制御部、を備えた第1モータ制御回路を設け、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第2位置検出器で検出された前記第2モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第2モータの目標駆動位置と前記入力された前記第2モータの駆動位置との第2位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を制御するための第2位置制御部、を備えた第2モータ制御回路を設け、前記第1モータ制御回路は、当該第1モータ制御回路内の異常を検出し、対応する異常通知信号を出力可能な異常検出手段と、前記異常検出手段により前記第1モータ制御回路内の異常が検出された場合に、前記共通の駆動指令信号から遮断した状態で前記第1モータの駆動を停止する停止制御手段と、を有し、前記第2モータ制御回路は、前記異常通知信号が入力された場合に、前記共通の駆動指令信号の前記第2位置制御部への入力を遮断し、当該共通の駆動指令信号に代えて、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置が前記第2位置制御部へ入力されるように、信号経路を切り替える第2モータ用信号切替手段を有し、前記第2位置制御部は、前記異常通知信号が入力された場合に、前記第2位置偏差を初期化処理するとともに、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を追従制御する、ことを特徴とする。
【0009】
剛性を有する同一の締結部を第1駆動軸と第2駆動軸で個別に駆動制御する場合には、各駆動軸を駆動する第1及び第2モータにそれぞれに対応する2系統の制御回路が同期して駆動制御を行う必要がある。本願第1発明においては、通常の駆動状態では、第1モータ及び第2モータに共通の駆動指令信号が第1及び第2モータ制御回路に入力される。そして、各モータ制御回路の位置制御部が、位置検出器を介して検出した当該モータ制御回路に対応したモータのモータ駆動位置と上記共通の駆動指令信号の指示する目標駆動位置との位置偏差(第1位置偏差及び第2位置偏差)を求め、これら第1及び第2位置偏差に基づき、例えば各偏差を少なくするように第1及び第2モータをフィードバック制御する。このように通常の駆動状態における各モータ制御回路でのフィードバック制御は、共通の目標駆動位置に追従するように行われ、第1及び第2駆動軸の間の軸間誤差が小さくなるよう同期制御される。
【0010】
ここで、例えば第1モータに係わる第1モータ制御回路に異常が発生した際には、当該第1モータ制御回路が備える異常検出手段が異常通知信号を出力し、停止制御手段が第1モータの駆動を停止する。その際、本願第1発明においては、第2モータに係わる第2モータ制御回路において、上記異常通知信号が入力された際に、第2モータ用信号切替手段が上記共通の駆動指令信号に代えて第1モータの位置検出器からの検出信号を入力するよう信号経路を切り替える。これにより、第2モータ制御回路の位置制御部は、第1モータのモータ駆動位置と第2モータのモータ駆動位置との間の位置偏差を求め、例えばその偏差を少なくするように第2モータを追従制御する。この結果、第1モータ制御回路が故障した状態における第2モータ制御回路での制御は、停止制御手段により停止制御される第1モータの位置に追従するように行われ、第1及び第2駆動軸の間の軸間誤差が小さくなるよう同期することができる。
【0011】
ところで、以上のようにして信号経路を切り替えて追従制御を行う際、当該切り替わった時点において、それまでのフィードバック制御で実行していた、目標駆動位置と実際の第2モータのモータ駆動位置との第2位置偏差が、第2位置制御部に残っている場合がある。この場合、上記のようにして求められた、第1モータのモータ駆動位置と第2モータのモータ駆動位置との間の位置偏差に、上記残っている第2位置偏差が合算された形で、信号経路切り替わり後の第2モータの追従制御が開始されることとなり、高精度な追従を迅速に行えない可能性がある。
【0012】
そこで、本願第1発明においては、第1モータ制御回路から上記異常通知信号が第2モータ制御回路に入力された際(すなわち上記の経路切り替えの際)に、第2位置制御部が、それまで当該第2位置制御部自体に保持されていた位置偏差を直ちに例えば0に初期化処理する。これにより、上記信号経路切り替わり後の第2モータの追従制御の開始時において、上記フィードバック制御で実行していた第2位置偏差の影響のない高精度な追従制御を、迅速に開始することができる。したがって、第1モータの駆動停止後における第2モータの追従制御の精度を向上させることができる。この結果、第1駆動軸と第2駆動軸の間の軸間誤差による、締結部の過大な内部応力の発生を防止することができる。
【0013】
第2発明は、上記第1発明において、前記第2モータ制御回路は、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置とを入力するとともに、それら入力された第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に基づいて、前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を補正するための追従用位置補正信号を生成する第1位置補正信号生成手段と、前記第2モータ用信号切替手段から入力される前記第1モータの駆動位置を、前記第1位置補正信号生成手段からの前記追従用位置補正信号により補正する、第1位置補正手段と、を有することを特徴とする。
【0014】
本願第2発明においては、第1位置補正信号生成手段からの追従用位置補正信号により、第1位置補正手段が、第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差(すなわち実際の2軸間誤差)に応じた位置補正を行う。これにより、第1モータの駆動停止後における第2モータの追従制御状態においてより高い精度で2軸間の同期駆動制御を行うことができる。)
【0015】
第3発明は、上記第2発明において、前記第1位置補正信号生成手段は、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に対し、所定の第1ゲインを乗算する第1乗算部と、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差を微分する第1微分器と、前記第1微分器での微分値に対し、所定の第2ゲインを乗算する第2乗算部と、前記第1乗算部からの出力値と、前記第2乗算部からの出力値とを、加算して前記追従用位置補正信号とする加算器と、を備えることを特徴とする。
【0016】
第1位置補正信号生成手段が、いわゆるPID演算のうちのPD演算によって追従用位置補正信号を生成し、第2位置制御部がこの追従用位置補正信号を用いて2軸間誤差を補正する制御を行うことにより、第1モータの駆動停止後における第2モータの追従制御状態において高い精度での2軸間の同期駆動制御を実現できる。
【0017】
第4発明は、上記第2又は第3発明において、前記第1モータ制御回路は、前記第1位置制御部から出力された、前記第1モータの駆動を制御するための速度指令、及び、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置を微分した第1モータの駆動速度、を入力し、前記第1位置制御部からの速度指令で指示された前記第1モータの目標駆動速度と前記入力した前記第1モータの駆動速度との第1速度偏差に基づき前記第1モータの駆動を制御するための第1速度制御部を有し、前記第2モータ制御回路は、前記第2位置制御部から出力された、前記第2モータの駆動を制御するための速度指令、及び、前記第2位置検出器で検出された前記第2モータの駆動位置を微分した第2モータの駆動速度、を入力し、前記第2位置制御部からの速度指令で指示された前記第2モータの目標駆動速度と前記入力した前記第2モータの駆動速度との第2速度偏差に基づき前記第2モータの駆動を制御するための第2速度制御部と、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置とを入力するとともに、それら入力された第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に基づいて、前記第2速度制御部へ入力される前記第2位置制御部からの速度指令を補正するための速度補正信号を生成する速度補正信号生成手段と、前記第2位置制御部から入力される前記速度指令を、前記速度補正信号生成手段からの前記速度補正信号により補正する、速度補正手段と、を有することを特徴とする。
【0018】
本願第4発明においては、速度補正信号生成手段からの速度補正信号により、速度補正手段が、第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差(すなわち実際の2軸間誤差)に応じた速度補正を行う。これにより、第1モータの駆動停止後における第2モータの追従制御状態においてより高い精度で2軸間の同期駆動制御を行うことができる。
【0019】
第5発明は、上記第2発明において、前記速度補正信号生成手段は、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差を微分する第2微分器と、前記第2微分器での微分値に対し、所定の第3ゲインを乗算し、前記速度補正信号とする第3乗算部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
速度補正信号生成手段が、いわゆるPID演算のうちのD演算によって速度補正信号を生成し、第2速度制御部がこの速度補正信号を用いて2軸間誤差を補正する制御を行うことにより、第1モータの駆動停止後における第2モータの追従制御状態において高い精度での2軸間の同期駆動制御を実現できる。
【0021】
第6発明は、上記第1乃至第5発明のいずれかにおいて、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に連結された第3駆動軸を駆動するための第3モータと、前記第3モータに機械結合され前記第3モータの駆動位置を検出する第3位置検出器と、前記共通の駆動指令信号、及び、前記第3位置検出器で検出された前記第3モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第3モータの目標駆動位置と前記入力した前記第3モータの駆動位置との第3位置偏差に基づき前記第3モータの駆動を制御するための第3位置制御部を備えた第3モータ制御回路と、を有し、前記第3モータ制御回路は、前記異常通知信号が入力された場合に、前記共通の駆動指令信号の前記第3位置制御部への入力を遮断し、当該共通の駆動指令信号に代えて、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置が前記第3位置制御部へ入力されるように、信号経路を切り替える第3モータ用信号切替手段と、を有し、前記第3位置制御部は、前記異常通知信号が入力された場合に、前記第3位置偏差を初期化処理するとともに、前記第1モータの駆動位置と前記第3モータの駆動位置との位置偏差に基づき前記第3モータの駆動を追従制御することを特徴とする。
【0022】
本願第6発明においては、上記のように第2モータ制御回路と同様の構成の第3モータ制御回路を増設することにより、3軸で駆動する複数軸駆動装置にも対応することができる。なお、さらに同様の構成を増設することによって4軸以上で駆動する複数軸駆動装置にも対応することができる。
【0023】
第7発明は、上記第1乃至第6発明のいずれかにおいて、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸は、前記締結部を構成し直線的に移動可能な第1被駆動部材及び第2被駆動部材にそれぞれ係合されるとともに、駆動により前記第1被駆動部材及び前記第2被駆動部材をそれぞれ直線的に移動させるように構成されており、前記第2モータ制御回路は、前記第1被駆動部材と前記第2被駆動部材との間で許容可能な前記直線的な移動方向に沿った相対変位量を保持し、前記相対変位量に基づいて、前記第2モータ用信号切替手段の前記切り替えにより前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を補正するための、相対変位許容用位置補正信号を生成する第2位置補正信号生成手段と、前記第2モータ用信号切替手段から前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を、前記第2位置補正信号生成手段からの前記相対変位許容用位置補正信号により補正する、第2位置補正手段と、を有することを特徴とする。
【0024】
第2位置制御部の追従制御により、第1モータの駆動停止後、第2モータは、2軸間の誤差ができるだけ少なくなるように駆動制御される。しかし、そのような追従制御の間、第1モータは駆動速度を減速し続けているため、第2モータの駆動位置が第1モータの駆動位置を追い越してしまう場合がある。この場合、第2駆動軸により駆動される第2被駆動部材から第1駆動軸により駆動される第1被駆動部材へ移動方向に押し込む力が作用することとなり、減速途中の第1被駆動部材の停止距離を増大させる可能性がある。
【0025】
そこで本願第7発明においては、第1被駆動部材と第2被駆動部材との間で許容可能な相対変位量に基づく位置補正信号生成手段からの相対変位許容用位置補正信号により、第2位置補正手段が、第2モータ用信号切替手段から第2位置制御部へ入力される第1モータの駆動位置を補正する。これにより、例えば、駆動停止側の第1モータの駆動位置よりも所定量だけ遅れた駆動位置を追従するように、第2モータの駆動位置を駆動制御することが可能となる。こうすることで、上述した第2被駆動部材による第1被駆動部材の追い越しを防ぐことができるので、結果的に停止距離の増大を防止することができる。
【0026】
また、能動的に駆動制御される第2モータの駆動位置を、駆動減速中の第1モータの駆動位置よりも意図的に遅らせることで、第2被駆動部材が締結部を介して第1被駆動部材の惰性移動を抑え、停止距離を縮小できる効果もある。
【0027】
第8発明は、上記第7発明において、前記第2位置補正信号生成手段は、前記第1被駆動部材が、前記移動方向に沿って前記第2被駆動部材よりも前記相対変位量以内で先行した位置となるような、前記相対変位許容用位置補正信号を生成することを特徴とする。
【0028】
これにより、第2被駆動部材が第1被駆動部材を追い越すのを確実に防ぐことができる。
【0029】
上記目的を達成するために、第9発明は、それぞれが直線的に移動可能に配置されるとともに互いに連結された第1被駆動部材及び第2被駆動部材と、前記第1被駆動部材に係合され、駆動により前記第1被駆動部材を直線的に移動させる第1駆動軸と、前記第2被駆動部材に係合され、駆動により前記第2被駆動部材を直線的に移動させる第2駆動軸と、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸を含む複数の駆動軸を制御する複数軸駆動装置と、を備えた複数軸駆動機械であって、前記複数軸駆動装置は、前記第1駆動軸を駆動するための第1モータ、及び、前記第2駆動軸を駆動する第2モータ、と、前記第1モータに機械結合され前記第1モータの駆動位置を検出する第1位置検出器、及び、前記第2モータに機械結合され前記第2モータの駆動位置を検出する第2位置検出器、と、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第1モータの目標駆動位置と前記入力した前記第1モータの駆動位置との第1位置偏差に基づき前記第1モータの駆動を制御するための第1位置制御部、を備えた第1モータ制御回路と、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第2位置検出器で検出された前記第2モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第2モータの目標駆動位置と前記入力された前記第2モータの駆動位置との第2位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を制御するための第2位置制御部、を備えた第2モータ制御回路と、を有し、前記第1モータ制御回路は、当該第1モータ制御回路内の異常を検出し、対応する異常通知信号を出力可能な異常検出手段と、前記異常検出手段により前記第1モータ制御回路内の異常が検出された場合に、前記共通の駆動指令信号から遮断した状態で前記第1モータの駆動を停止する停止制御手段と、を備え、前記第2モータ制御回路は、前記異常通知信号が入力された場合に、前記共通の駆動指令信号の前記第2位置制御部への入力を遮断し、当該共通の駆動指令信号に代えて、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置が前記第2位置制御部へ入力されるように、信号経路を切り替える第2モータ用信号切替手段を備え、前記第2位置制御部は、前記異常通知信号が入力された場合に、前記第2位置偏差を初期化処理するとともに、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を追従制御することを特徴とする。
【0030】
本願第9発明の複数軸駆動機械においては、直線的に移動可能な第1被駆動部材及び第2被駆動部材が互いに連結されるとともに、それぞれが第1駆動軸及び第2駆動軸に係合される。第1駆動軸は第1モータによって駆動され、第2駆動軸は第2モータによって駆動される。そして、通常の駆動状態では、第1モータ及び第2モータに共通の駆動指令信号が第1及び第2モータ制御回路に入力される。そして、各モータ制御回路の位置制御部が、位置検出器を介して検出した当該モータ制御回路に対応したモータのモータ駆動位置と上記共通の駆動指令信号の指示する目標駆動位置との位置偏差(第1位置偏差及び第2位置偏差)を求め、これら第1及び第2位置偏差に基づき、例えば各偏差を少なくするように第1及び第2モータをフィードバック制御する。このように通常の駆動状態における各モータ制御回路でのフィードバック制御は、共通の目標駆動位置に追従するように行われ、第1及び第2駆動軸の間の軸間誤差が小さくなるよう同期することができる。
【0031】
例えば第1モータに係わる第1モータ制御回路に異常が発生した際には、当該第1モータ制御回路が備える異常検出手段が異常通知信号を出力し、停止制御手段が第1モータの駆動を停止する。その際、本願第9発明においては、第2モータに係わる第2モータ制御回路において、上記異常通知信号が入力された際に、第2モータ用信号切替手段が上記共通の駆動指令信号に代えて第1モータの位置検出器からの検出信号を入力するよう信号経路を切り替える。これにより、第2モータ制御回路の位置制御部は、第1モータのモータ駆動位置と第2モータのモータ駆動位置との間の位置偏差を求め、例えばその位置偏差を少なくするように第2モータを追従制御する。この結果、第1モータ制御回路が故障した状態における第2モータ制御回路での制御は、停止制御手段により停止制御される第1モータの位置に追従するように行われ、第1及び第2駆動軸の間の軸間誤差が小さくなるよう同期することができる。
【0032】
そして、本願第9発明の複数軸駆動機械においては、第1モータ制御回路から上記異常通知信号が第2モータ制御回路に入力された際(すなわち上記の経路切り替えの際)に、第2位置制御部が、それまで当該第2位置制御部自体に保持されていた位置偏差を直ちに例えば0に初期化処理する。これにより、上記信号経路切り替わり後の第2モータの追従制御の開始時において、上記フィードバック制御で実行していた第2位置偏差の影響のない高精度な追従制御を、迅速に開始することができる。したがって、第1モータの駆動停止後における第2モータの追従制御の精度を向上させることができる。この結果、第1駆動軸と第2駆動軸の間の軸間誤差による、締結部の過大な内部応力の発生を防止することができる。
【0033】
第10発明は、上記第9記載の複数軸駆動機械において、前記複数軸駆動装置の前記第2モータ制御回路は、前記第1被駆動部材と前記第2被駆動部材との間で許容可能な前記直線的な移動方向に沿った相対変位量を保持し、前記相対変位量に基づいて、前記第2モータ用信号切替手段の前記切り替えにより前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を補正するための、相対変位許容用位置補正信号を生成する位置補正信号生成手段と、前記第2モータ用信号切替手段から前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を、前記位置補正信号生成手段からの前記相対変位許容用位置補正信号により補正する、位置補正手段と、を有することを特徴とする。
【0034】
本願第10発明においては、第1被駆動部材と第2被駆動部材との間で許容可能な相対変位量に基づく位置補正信号生成手段からの相対変位許容用位置補正信号により、第2位置補正手段が、第2モータ用信号切替手段から第2位置制御部へ入力される第1モータの駆動位置を補正する。これにより、例えば、駆動停止側の第1モータの駆動位置よりも所定量だけ遅れた駆動位置を追従するように、第2モータの駆動位置を駆動制御することが可能となる。こうすることで、第2モータ制御回路による第2モータの追従制御時における第2被駆動部材による第1被駆動部材の追い越しの発生を防ぐことができ、停止距離の増大を防止することができる。また、能動的に駆動制御される第2モータの駆動位置を、駆動減速中の第1モータの駆動位置よりも意図的に遅らせることで、第2被駆動部材が締結部を介して第1被駆動部材の惰性移動を抑え、停止距離を縮小できる効果もある。
【0035】
上記目的を達成するために、第11発明は、締結部によって連結された第1駆動軸及び第2駆動軸と;前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第1駆動軸を駆動するための第1モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第1モータの目標駆動位置と前記入力した前記第1モータの駆動位置との第1位置偏差に基づき前記第1モータの駆動を制御する第1モータ制御回路と;前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第2駆動軸を駆動するための第2モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第2モータの目標駆動位置と前記入力された前記第2モータの駆動位置との第2位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を制御する第2モータ制御回路と;を備えた複数軸駆動装置の駆動制御方法であって、前記第1モータ制御回路内の異常を検出した場合に、前記共通の駆動指令信号から遮断した状態で前記第1モータの駆動を停止する停止制御手順と、前記第1モータ制御回路内の異常を検出した場合に、前記第2位置偏差を初期化処理する偏差初期化手順と、前記第1モータ制御回路内の異常を検出した場合に、前記共通の駆動指令信号の前記第2モータ制御回路への入力を遮断し、当該共通の駆動指令信号に代えて、前記第1モータの駆動位置が前記第2モータ制御回路へ入力されるように、信号経路を切り替える信号切替手順と、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差を、少なくするように前記第2モータの駆動を追従制御する、位置制御手順と、を有することを特徴とする。
【0036】
本願第11発明においては、通常の駆動状態では、第1モータ及び第2モータに共通の駆動指令信号が第1及び第2モータ制御回路に入力される。そして、各モータ制御回路が、対応したモータの駆動位置と上記共通の駆動指令信号の指示する目標駆動位置との位置偏差(第1位置偏差及び第2位置偏差)を求め、例えば各位置偏差を少なくするように第1及び第2モータをフィードバック制御する。このように通常の駆動状態における各モータ制御回路でのフィードバック制御は、共通の目標駆動位置に追従するように行われ、第1及び第2駆動軸の間の軸間誤差が小さくなるよう同期することができる。
【0037】
第1モータに係わる第1モータ制御回路に異常が発生した際には、停止制御手順で、上記共通の駆動指令信号から遮断した状態で第1モータの駆動を停止する。また、偏差初期化手順で、第2モータ制御回路に保持された第2位置偏差を初期化処理する。また、信号切替手順で、上記共通の駆動指令信号の第2モータ制御回路への入力を遮断し、これに代えて第1モータの駆動位置が第2モータ制御回路へ入力するよう、信号経路を切り替える。その後、上記初期化処理の実行とともに上記第2モータ用信号切替手順での切り替えにより入力される第1モータの駆動位置と、第2モータの駆動位置との位置偏差を少なくするように位置制御手順が第2モータを追従制御する。
【0038】
これにより、位置制御手順で第2モータの追従制御が開始される時、信号切替手順での経路切り替え前に第2モータ制御回路がフィードバック制御で実行していた第2位置偏差の影響のない、高精度な追従制御を迅速に開始することができる。したがって、第1モータの駆動停止後における第2モータの追従制御の精度を向上させることができる。この結果、第1駆動軸と第2駆動軸の間の軸間誤差による、締結部の過大な内部応力の発生を防止することができる。
【0039】
第12発明は、上記第11記載の複数軸駆動装置の駆動制御方法において、前記締結部を構成し直線的に移動可能な第1被駆動部材及び前記第2被駆動部材にそれぞれ係合された前記第1被駆動部材及び前記第2被駆動部材の相互の間で許容可能な、前記第1被駆動部材及び前記第2被駆動部材の移動する直線的な移動方向に沿った相対変位量に基づいて、前記第2モータ用信号切替手順での前記切り替えにより入力される前記第1モータの駆動位置を補正するための、相対変位許容用位置補正信号を生成する位置補正信号生成手順と、前記入力される前記第1モータの駆動位置を、前記前記相対変位許容用位置補正信号により補正する、位置補正処理手順と、を有することを特徴とする。
【0040】
本願第12発明においては、位置補正信号生成手順で、第1被駆動部材と第2被駆動部材との間で許容可能な相対変位量に基づき、相対変位許容用位置補正信号が生成され、位置補正処理手順で、第2モータ用信号切替手順での切り替えにより入力される第1モータの駆動位置を補正する。これにより、例えば、駆動停止側の第1モータの駆動位置よりも所定量だけ遅れた駆動位置を追従するように、第2モータの駆動位置を駆動制御することが可能となる。こうすることで、第2モータ制御回路による第2モータの追従制御時における、第2被駆動部材による第1被駆動部材の追い越しの発生を防ぐことができ、停止距離の増大を防止することができる。また、能動的に駆動制御される第2モータの駆動位置を、駆動減速中の第1モータの駆動位置よりも意図的に遅らせることで、第2被駆動部材が締結部を介して第1被駆動部材の惰性移動を抑え、停止距離を縮小できる効果もある。
【発明の効果】
【0041】
本発明によれば、複数のモータ制御回路のいずれかに異常が生じた場合であっても、複数の駆動軸の軸間誤差による締結部の過大な内部応力の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る複数軸駆動装置の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図2】モータ制御回路の位置制御部の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図3】モータ制御回路の位置補正処理部の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図4】モータ制御回路の速度補正処理部の詳細な構成を示す機能ブロック図である。
【図5】位置偏差カウンタでの偏差の初期化と、位置補正処理部及び速度補正処理部の補正とを実行する、本発明の一実施形態の効果を説明するグラフである。
【図6】位置偏差カウンタでの偏差の初期化を行わず、位置補正処理部及び速度補正処理部の補正のみを実行する、比較例の挙動を説明するグラフである。
【図7】位置補正処理部及び速度補正処理部の補正を実行せず、位置偏差カウンタでの偏差の初期化のみを行う、別の実施形態を説明するグラフである。
【図8】3つの駆動軸で制御する変形例に係る複数軸駆動装置の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【図9】許容誤差分だけ遅らせて追従制御する変形例に係る複数軸駆動装置の機能的構成を表す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0044】
図1は、本実施形態の複数軸駆動装置である駆動装置1を含む駆動機械100の機能的構成を表す機能ブロック図である。なお、駆動機械100の例としては、マウンタなどの産業用機械を挙げることができる。
【0045】
図1において、駆動機械100は、駆動装置1と、駆動軸152と、駆動軸153と、ガントリテーブル8(想像線で概念的に示す)に設けられた被駆動部材8a及び被駆動部材8bとを有している。
【0046】
駆動装置1は、上記駆動軸152を駆動するモータ2と、上記駆動軸153を駆動するモータ3と、位置検出器4と、位置検出器5と、モータ制御回路6と、モータ制御回路7とを有している。
【0047】
ガントリテーブル8の被駆動部材8aは、ボールネジにより構成される上記駆動軸152に係合(この例では螺合)しており、被駆動部材8bは、ボールネジにより構成される上記駆動軸153に係合(この例では螺合)している。被駆動部材8a及び被駆動部材8bは、締結部8cを介して互いに連結されている。このような構造により、モータ2,3が駆動軸152,153を回転駆動することにより、各被駆動部材8a,8bをそれぞれ図1中の左右方向に直線的に移動させ、結果としてガントリテーブル8全体を直線的に図1中の左右方向(両方向矢印参照)に移動させることができる。その際、ガントリテーブル8は、全体が剛性を備えた一体構造物であるため、各モータ2,3は、それぞれ対応する駆動軸152,153を同一方向にできるだけ同じ駆動速度で同期駆動するようになっている(詳細は後述)。
【0048】
位置検出器4及び位置検出器5(図中ではそれぞれ「検出器」と略記)は、例えば対応するモータ2,3に機械的に連結されたロータリエンコーダで構成されている。これら位置検出器4,5は、それぞれモータ2,3の積算回転量に相当するモータ駆動位置情報を個別に検出し、対応するモータ制御回路6,7に出力する。モータ2のモータ駆動位置情報は、駆動軸152の回転駆動を介し被駆動部材8aが図1中の左右方向のどの位置にあるか(どこまで移動したか)に対応しており、モータ3のモータ駆動位置情報は、駆動軸153の回転駆動を介し被駆動部材8bが図1中の左右方向のどの位置にあるか(どこまで移動したか)に対応している。
【0049】
(A)モータ制御回路の概略構成及び基本的機能
次に、上記モータ制御回路6及びモータ制御回路7の概略構成と基本的機能について説明する。
【0050】
モータ制御回路6及びモータ制御回路7には、上位の制御装置であるコントローラ9からの共通の駆動指令信号、すなわち目標駆動位置指令が制御用ネットワーク10を介し入力される。この目標駆動位置指令は、モータ2,3のモータ駆動位置の目標値、すなわち目標駆動位置を含む。
【0051】
モータ制御回路6は、単位変換部101と、位置制御部102と、速度制御部103と、微分器104と、位置補正処理部105と、速度補正処理部106と、異常検出部107と、異常処理部108と、切替スイッチSW1とを有している。
【0052】
モータ制御回路7は、単位変換部201と、位置制御部202と、速度制御部203と、微分器204と、位置補正処理部205と、速度補正処理部206と、異常検出部207と、異常処理部208と、切替スイッチSW2とを有している。
【0053】
モータ制御回路6の単位変換部101は、上記位置検出器4から検出されたモータ駆動位置情報の単位変換を行い、コントローラ9が出力する上記目標駆動位置指令と互換性のあるフォーマットの信号に変換する。同様に、モータ制御回路7の単位変換部201は、上記位置検出器5から検出されたモータ駆動位置情報の単位変換を行い、コントローラ9が出力する上記目標駆動位置指令と互換性のあるフォーマットの信号に変換する。また、例えば位置検出器4と位置検出器5とがそれぞれの分解能の違いなどにより位置制御の単位系が異なる場合には、単位変換部101,201が予め設定した各系統共通の単位に変換する。このように単位変換部101,201は信号の形式的な変換を行うに過ぎず、信号自体を実質的に変化させるものではない。したがって、以下において、位置検出器4より単位変換部101による変換を介した各部への信号の送信の説明や、位置検出器5より単位変換部201による変換を介した各部への信号の送信の説明において、単位変換部201の存在及びその変換機能の記述は省略する。
【0054】
モータ制御回路6の位置制御部102は、上記目標駆動位置指令と位置検出器4が検出したモータ2のモータ駆動位置情報との間の位置偏差に基づき(この例では位置偏差を少なくするように)、当該モータ2の駆動を制御する機能を備える。モータ制御回路7の位置制御部202は、上記目標駆動位置指令と位置検出器5が検出したモータ3のモータ駆動位置情報との間の位置偏差に基づき(この例では位置偏差を少なくするように)、当該モータ3の駆動を制御する機能を備える。これら位置制御部102及び位置制御部202の詳細機能を、図2及び上記図1を用いて説明する。
【0055】
図2は、上記位置制御部102,202の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図2において、位置制御部102,202は、位置偏差カウンタ50と、微分器51と、2つの乗算器52,53と、加算器54とを有している。
【0056】
モータ制御回路6に備えられる位置制御部102の位置偏差カウンタ50には、通常の制御状態では、切替スイッチSW1及び加算器109を介しコントローラ9からの上記目標駆動位置指令が入力される。後述の異常処理部108からの指示信号が入力されるモータ制御回路7の異常発生時には、上記目標駆動位置指令に代えて、上記位置検出器5から出力されたモータ3のモータ駆動位置情報(以下適宜、第2モータ駆動位置情報という)が入力される。また、位置偏差カウンタ50には、位置検出器4が検出したモータ2のモータ駆動位置情報(以下適宜、第1モータ駆動位置情報という)も入力される。
【0057】
そして、位置偏差カウンタ50は、上記目標駆動位置指令又は第2モータ駆動位置情報と上記第1モータ駆動位置情報との位置偏差(以下適宜、第1位置偏差という)を求め、内部に保持する。そして、この位置偏差カウンタ50が保持した第1位置偏差は、乗算器52へ出力される。なお、後述するように異常処理部108,208から指示信号が入力された際には、位置偏差カウンタ50は、それまで保持していた上記第1位置偏差を直ちに初期化する(例えば0にリセットする)。
【0058】
乗算器52は、上記第1位置偏差に対し所定の位置ループゲインを乗算して目標駆動速度指令を生成し、加算器54へ出力する。一方、上記目標駆動位置指令はまた微分器51にも入力される。微分器51は、上記目標駆動位置指令を微分した後、その微分値を乗算器53へ出力する。乗算器53は、上記微分値に所定の速度フィードフォワードゲインKvFFを乗算した値を加算器54へ出力する。加算器54は、上記乗算器52からのゲイン乗算後の目標駆動速度指令に、応答性を向上させるための上記乗算器53からの乗算値を加算し、目標駆動速度指令を生成して上記速度制御部103へ出力する。
【0059】
モータ制御回路7に備えられる位置制御部202の位置偏差カウンタ50には、通常の制御状態では、上記同様、切替スイッチSW2及び加算器209を介しコントローラ9からの上記目標駆動位置指令が入力される。後述の異常処理部208からの指示信号が入力されるモータ制御回路6の異常発生時には、上記目標駆動位置指令に代えて、上記位置検出器4からの上記第1モータ駆動位置情報が、入力される。また位置偏差カウンタ50には、位置検出器5からの上記第2モータ駆動位置情報も入力される。そして、位置偏差カウンタ50は、上記目標駆動位置指令又は第1モータ駆動位置情報と上記第2モータ駆動位置情報との位置偏差(以下適宜、第2位置偏差という)を求め、内部に保持する。そして、上記同様、異常処理部208から指示信号が入力された際には、位置偏差カウンタ50は、それまで保持していた上記第2位置偏差を直ちに初期化する。この第2位置偏差に対し乗算器52でループゲインが乗算されたものと、目標駆動位置指令が微分器51で微分されさらに乗算器53で速度フィードフォワードゲインKvFFが乗算されたものとが、加算器54で加算されて目標駆動速度指令が生成され、上記速度制御部203へ出力される。なお、目標駆動速度指令が各請求項記載の速度指令に相当する。
【0060】
なお、上記の位置ループゲインやフィードフォワードゲインKvFFは、使用するガントリテーブル8も併せた当該駆動装置1の固有パラメータとして予め調整・記憶された値を用いる。
【0061】
図1に戻り、モータ制御回路6の速度制御部103は、上記位置制御部102から加算器115を介して入力された上記目標駆動速度指令と、上記位置検出器4からの上記第1モータ駆動位置情報を微分器104が微分した速度フィードバックとを、入力する。そして、速度制御部103は、それら目標駆動速度指令で指示されるモータ2の目標駆動速度と速度フィードバック(モータ2の駆動速度に相当)との間の速度偏差に基づき(この例では速度偏差を少なくするように)、いわゆるPID演算などにより算出したトルク指令をモータ2に出力し当該モータ2の駆動速度を制御する。
【0062】
モータ制御回路7の速度制御部203は、上記同様、上記位置制御部202から加算器215を介して入力された上記目標駆動速度指令と、上記位置検出器5からの上記第2モータ駆動位置情報を微分器204が微分した速度フィードバック(モータ3の駆動速度に相当)とを入力し、それらの間の速度偏差に基づき(この例では速度偏差を少なくするように)トルク指令をモータ3に出力し駆動速度を制御する。
【0063】
以上のようにして、上記位置制御部102及び上記速度制御部103を備えたモータ制御回路6は、基本的には、通常状態においては、モータ2の駆動位置が上記目標駆動位置指令の表す駆動位置となるように、モータ3の駆動をフィードバック制御する(モータ制御回路7の異常発生時については後述)。同様に、上記位置制御部202及び上記速度制御部203を備えたモータ制御回路7は、基本的に、通常状態においては、モータ3の駆動位置が上記目標駆動位置指令の表す駆動位置となるように、モータ3の駆動をフィードバック制御する(モータ制御回路6の異常発生時については後述)。
【0064】
(B)位置補正処理部及び速度補正処理部
図1に示すように、モータ制御回路6には、上記基本構成に加え、位置補正処理部105及び速度補正処理部106が設けられている。
【0065】
位置補正処理部105は、モータ制御回路7の異常発生(後述)に伴って切替スイッチSW1が図1中の下方位置に切り替えられ、位置検出器5からの第2モータ駆動位置情報が位置制御部102へ入力される際、当該第2モータ駆動位置情報を補正するための位置補正信号を生成する。
【0066】
同様に、モータ制御回路7には、上記基本構成に加え、位置補正処理部205及び速度補正処理部206が設けられている。
【0067】
位置補正処理部205は、モータ制御回路6の異常発生(後述)に伴って切替スイッチSW2が図1中の上方位置に切り替えられ、位置検出器4からの第1モータ駆動位置情報が位置制御部202へ入力される際、当該第1モータ駆動位置情報を補正するための位置補正信号を生成する。
【0068】
図3は、モータ制御回路6,7が備える上記位置補正処理部105,205の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図3において、位置補正処理部105,205は、減算器66と、微分器67と、2つの乗算器68,69と、加算器70とを有している。
【0069】
モータ制御回路6に備えられる位置補正処理部105の減算器66には、位置検出器5からの上記第2モータ駆動位置情報と、位置検出器4からの上記第1モータ駆動位置情報とが入力される。減算器66は、第1モータ駆動位置情報から第2モータ駆動位置情報を減算することで、モータ3の駆動位置を基準としたモータ2の駆動位置の相対的な軸間誤差、つまりモータ駆動位置情報間の位置偏差を算出する。この位置偏差は乗算器68において所定のゲインK1が乗算された後加算器70へ出力される。また上記位置偏差はまた微分器67にも出力されて微分された後に乗算器69で所定のゲインK2が乗算され、加算器70へ出力される。加算器70は、乗算器68からの乗算値と乗算器69からの乗算値とを加算し、上記位置制御部102へ入力される第2モータ駆動位置情報を補正するための上記位置補正信号を生成する。このような構成により、位置補正処理部105は、駆動軸152,153の間の軸間誤差に対していわゆるPID演算のうちのPD演算により上記位置補正信号を生成する。そして、この位置補正信号を、位置制御部102に入力する第2モータ駆動位置情報に対し上記加算器109で加算することにより、当該位置制御部102が2軸間誤差を補正する位置制御を行うことができる。
【0070】
同様に、モータ制御回路7に備えられる位置補正処理部205の減算器66は、入力された位置検出器4からの上記第1モータ駆動位置情報を、位置検出器5からの上記第2モータ駆動位置情報から減算することで、モータ2の駆動位置を基準としたモータ3の駆動位置の相対的な軸間誤差(2つのモータ駆動位置情報間の位置偏差)を算出する。この位置偏差は、上記同様、一方は乗算器68でゲインK1が乗算され、他方は微分器67で微分され乗算器69でゲインK2が乗算され、それら両方の値が加算器70で加算される。この結果、上記位置制御部202へ入力される第1モータ駆動位置情報を補正するための上記位置補正信号が生成される。このPD演算による上記位置補正信号を、位置制御部202に入力される第1モータ駆動位置情報に対し上記加算器209が加算することで、位置制御部202が2軸間誤差を補正する位置制御を行うことができる。
【0071】
なお、上記ゲインK1が各請求項記載の第1ゲインに相当し、ゲインK2が第2ゲインに相当し、これらゲインK1,K2は、使用するガントリテーブル8も併せた当該駆動装置1の固有パラメータとして予め調整・記憶された値を用いる。また、乗算部68が第1乗算部に相当し、微分器67が第1微分器に相当し、乗算部219が第2乗算部に相当する。
【0072】
一方、モータ制御回路6の速度補正処理部106は、モータ制御回路7の異常発生(後述)に伴って上記位置検出器5から入力された第2モータ駆動位置情報を用いて位置制御部102から速度制御部103へ目標駆動速度指令が入力される際、当該目標駆動速度指令を補正するための速度補正信号を生成する。モータ制御回路7の速度補正処理部206は、モータ制御回路6の異常発生(後述)に伴って上記位置検出器4から入力された第1モータ駆動位置情報を用いて位置制御部202から速度制御部203へ目標駆動速度指令が入力される際、当該目標駆動速度指令を補正するための速度補正信号を生成する。
【0073】
図4は、モータ制御回路6,7が備える上記速度補正処理部106,206の詳細な構成を示す機能ブロック図である。図4において、速度補正処理部106,206は、減算器71と、微分器72と、乗算器73とを有している。
【0074】
モータ制御回路6に備えられる速度補正処理部106の減算器71には、位置検出器5からの上記第2モータ駆動位置情報と、位置検出器4からの上記第1モータ駆動位置情報とが入力される。減算器71は、第1モータ駆動位置情報から第2モータ駆動位置情報を減算することで、モータ3の駆動位置を基準としたモータ2の駆動位置の相対的な軸間誤差、つまり2つのモータ駆動位置情報間の位置偏差を算出する。この位置偏差は微分器72に出力されて微分された後、乗算器73へ出力される。乗算器73は、上記微分器72からの微分値に対し所定のゲインK3を乗算し、これによって、第1モータ駆動位置情報を用いて位置制御部102から速度制御部103へ目標駆動速度指令が入力される際の当該目標駆動速度指令を補正する上記速度補正信号を生成する。このような構成により、速度補正処理部106は、駆動軸152,153の間の軸間誤差に対していわゆるPID演算のうちのD演算により上記速度補正信号を生成する。そして、この速度補正信号を、速度制御部103に入力する上記目標駆動速度指令に対し加算器115で加算することにより、当該速度制御部103が2軸間誤差を補正する速度制御を行うことができる。
【0075】
同様に、モータ制御回路7に備えられる速度補正処理部206の減算器71は、入力された位置検出器4からの上記第1モータ駆動位置情報を、位置検出器5からの上記第2モータ駆動位置情報から減算することで、モータ2の駆動位置を基準としたモータ3の駆動位置の相対的な軸間誤差(2つのータ駆動位置情報間の位置偏差)を算出する。この位置偏差は、上記同様、微分器72で微分された後乗算器73でゲインK3が乗算される。この結果、第2モータ駆動位置情報を用いて位置制御部202から速度制御部203へ目標駆動速度指令が入力される際の当該目標駆動速度指令を補正する上記速度補正信号が生成される。このD演算による上記速度補正信号を、速度制御部203に入力される上記目標駆動速度指令に対し加算器215が加算することで、速度制御部203が2軸間誤差を補正する速度制御を行うことができる。
【0076】
なお、上記ゲインK3が各請求項記載の第3ゲインに相当し、このゲインK3は、使用するガントリテーブル8も併せた当該駆動装置1の固有パラメータとして予め調整・記憶された値を用いる。また、微分器72が第2微分器に相当し、乗算部73が第3乗算部に相当する。
【0077】
(C)異常検出部及び異常処理部
既に述べたように、本実施形態の特徴として、モータ制御回路6は、当該モータ制御回路6の異常の発生を検出する異常検出部107を備えている。また、モータ制御回路7は、当該モータ制御回路7の異常の発生を検出する異常検出部207を備えている。
【0078】
モータ制御回路6の異常検出部107は、当該モータ制御回路6内の異常の発生を検出する。具体的には、異常検出部107は、例えば過熱、過電圧、不足電圧、過電流等の異常状態を公知の手法で検出し、対応する異常通知信号(どのような異常が発生しているかという情報を含む)をモータ制御回路7の異常処理部208へ出力する。同様に、モータ制御回路7の異常検出部207は、モータ制御回路内の異常状態を検出し、対応する上記異常通知信号をモータ制御回路6内の異常処理部108へ出力する。なお、このモータ制御回路6とモータ制御回路7との相互的な異常通知信号の送受は、図示のように専用の配線を個別に接続して送受してもよいし、又は上記制御ネットワーク10上でコントローラ9による処理を介入させずに2つの制御回路6,7だけで相互に直接送受してもよい。
【0079】
モータ制御回路6の異常処理部108は、モータ制御回路7の異常検出部207から上記異常通知信号を入力すると、対応する指示信号を、位置制御部102、位置補正処理部105、速度補正処理部106、及び切替スイッチSW1へ出力する。これによって、位置制御部102の位置偏差カウンタ50の上記初期化(リセット)や、位置補正処理部105における上記位置補正信号の生成・出力開始、速度補正処理部106における上記速度補正信号の生成・出力開始、及び切替スイッチSW1の信号経路の切り替え、がそれぞれ行われる。切替スイッチSW1は、通常状態(モータ制御回路6,7のいずれも正常に動作している状態)においては、図1に示す上方位置に切り替えられており、コントローラ9からの上記目標駆動位置指令が上記位置制御部102へ入力される状態にある。モータ制御回路7で異常が発生して上記異常処理部108からの指示信号が入力されると、切替スイッチSW1は、図1に示す下方位置に切り替えられ、位置制御部102はコントローラ9からの上記目標駆動位置指令と遮断されるとともに、位置検出器5からの上記第2モータ駆動位置情報が位置制御部102へと入力される。
【0080】
同様に、モータ制御回路7の異常処理部208は、モータ制御回路6の異常検出部107から上記異常通知信号を入力すると、対応する指示信号を、位置制御部202、位置補正処理部205、速度補正処理部206、及び切替スイッチSW2へ出力する。これによって、位置制御部202の位置偏差カウンタ50の上記初期化(リセット)や、位置補正処理部205における上記位置補正信号の生成・出力開始、速度補正処理部206における上記速度補正信号の生成・出力開始、及び切替スイッチSW2の信号経路の切り替え、がそれぞれ行われる。切替スイッチSW2は、通常状態においては、図1に示す下方位置に切り替えられており、コントローラ9からの上記目標駆動位置指令が上記位置制御部202へ入力される状態にある。モータ制御回路6で異常が発生して上記異常処理部208からの指示信号が入力される、切替スイッチSW2は、図1に示す上方位置に切り替えられ、位置制御部202はコントローラ9からの上記目標駆動位置指令と遮断されるとともに、位置検出器4からの上記第1モータ駆動位置情報が位置制御部202へと入力される。
【0081】
(D)通常状態のフィードバック制御、及び、異常検出時の追従制御
以上のように構成された本実施形態の駆動装置1の動作及び作用を以下に説明する。
【0082】
駆動装置1は、剛性を有する同一の締結部8cを駆動軸152と駆動軸153とで個別に駆動制御する。このため、各駆動軸152,153を駆動するモータ2,3にそれぞれに対応する2系統のモータ制御回路6,7が、互いに同期して駆動制御を行う必要がある。通常の駆動状態(モータ制御回路6,7のいずれも正常に動作している状態)では、コントローラ9から両モータ2,3に共通の目標駆動位置指令がモータ制御回路6,7に入力される。そして、各モータ制御回路6,7の位置制御部102,202が、位置検出器4,5を介して検出した各系統のモータ2,3のモータ駆動位置と上記共通の目標駆動指令が指示する目標駆動位置との位置偏差(第1位置偏差及び第2位置偏差)を求め、これら第1位置偏差及び第2位置偏差に基づき(この例では当該位置偏差を少なくするように)各モータ2,3をフィードバック制御する。このように通常の駆動状態における各モータ制御回路6,7でのフィードバック制御は、共通の目標駆動位置に追従するように行われ、駆動軸152,153の間の軸間誤差が小さくなるよう同期制御される。
【0083】
ここで、例えばモータ制御回路6に異常が発生した場合を例にとって説明する。モータ制御回路6に異常が発生した際には、当該モータ制御回路6が備える異常検出部107がモータ制御回路7の異常処理部208へ異常通知信号を出力するとともに、切替スイッチSW1が図1中のどの端子とも接続せずに信号の入力を遮断する。これにより、コントローラ9からモータ制御回路6の位置制御部102への目標駆動位置指令の入力が遮断され、また当該モータ制御回路6が備える特に図示しない停止制御部(停止制御手段に相当)がモータ2の駆動を停止する。なお、このときに実行する制御手順が、各請求項記載の停止制御手順に相当する。このモータの駆動停止は、公知の適宜の手法で行えば足りるが、例えば、モータ2をモータ制御回路6から遮断し、その代わりにモータ2の端子を抵抗で短絡させることで制動トルクを得るダイナミックブレーキを利用することができる。
【0084】
一方、モータ制御回路7では、モータ制御回路6の異常検出部107からの上記異常通知信号が異常処理部208に入力され、この異常処理部208からの上記指示信号により、切替スイッチSW2が図1中の上方位置に切り替わる。なお、このときに実行する制御手順が、各請求項記載の信号切替手順に相当する。これにより、信号経路が切り替わり、位置制御部202には、コントローラ9からの上記共通の目標駆動位置指令に代えて、モータ2の位置検出器4からの第1モータ駆動位置情報が入力されるようになる。この結果、位置制御部202の位置偏差カウンタ50がモータ2のモータ駆動位置とモータ3のモータ駆動位置との間の位置偏差を求めて保持し、この位置偏差に基づきモータ3の追従制御が行われる。このように、モータ制御回路6が故障した状態におけるモータ制御回路7でのモータ3の制御は、上記のようにコントローラ9側から遮断された状態で停止制御されるモータ2の位置に追従するように行われ、この結果、駆動軸152,153の間の軸間誤差が小さくなるよう同期することができる。
【0085】
ところで、モータ制御回路7において、上記のようにスイッチSW2が信号経路を切り替えてモータ3の追従制御が行われる際、当該切り替わった時点において、それまでの上記フィードバック制御で実行していた、目標駆動位置と実際のモータ3のモータ駆動位置との位置偏差が、モータ制御回路7の位置偏差カウンタ50に残っている場合がある。この場合、上記のようにして切替スイッチSW2の切り替え後に位置偏差カウンタ50で求められた、モータ2のモータ駆動位置とモータ3のモータ駆動位置との間の位置偏差に、上記残っているフィードバック制御時の位置偏差が合算された形で、信号経路切り替わり後のモータ3の追従制御が開始されることとなり、高精度な追従を迅速に行えない可能性がある。
【0086】
そこで、本実施形態では、上述したように、モータ制御回路6の異常検出部107からの異常通知信号のモータ制御回路7の異常処理部208への入力に応じ、位置制御部202が、その位置偏差カウンタ50に保持されていた上記フィードバック制御時の位置偏差が初期化処理される(偏差初期化手順に相当)。これにより、モータ3の追従制御の開始時において、上記フィードバック制御で実行していた位置偏差の影響のない高精度な追従制御を、迅速に開始することができる。なお、このときに実行する制御手順が、各請求項記載の位置制御手順に相当する。
【0087】
また逆に、本実施形態では、例えばモータ制御回路7に異常が発生した場合も上記同様の制御が行われる。すなわち、モータ制御回路7に異常が発生した際には、上記同様、当該モータ制御回路7が備える異常検出部207がモータ制御回路6の異常処理部108へ異常通知信号を出力するとともに、切替スイッチSW2が図1中のどの端子とも接続せずに信号の入力を遮断する。これにより、コントローラ9からモータ制御回路7の位置制御部202への目標駆動位置指令の入力が遮断され、また当該モータ制御回路7が備える特に図示しない停止制御部(停止制御手段に相当)がモータ3の駆動を停止する(停止制御手順に相当)。モータ制御回路6では、モータ制御回路7の異常検出部207からの上記異常通知信号が異常処理部108に入力され、この異常処理部108からの上記指示信号により、切替スイッチSW1が図1中の下方位置に切り替わる(信号切替手順に相当)。これにより、位置制御部102には、コントローラ9からの上記共通の目標駆動位置指令に代えて、モータ3の位置検出器5からの第2モータ駆動位置情報が入力されるようになる。この結果、位置制御部102の位置偏差カウンタ50がモータ2のモータ駆動位置とモータ3のモータ駆動位置との間の位置偏差を求めて保持し、この位置偏差に基づきモータ2の追従制御が行われる。すなわち、モータ制御回路7が故障した状態におけるモータ制御回路6でのモータ2の制御は、上記同様、コントローラ9側から遮断された状態で停止制御されるモータ3の位置に追従するように行われる。そして、モータ制御回路7の異常検出部207からの異常通知信号のモータ制御回路6の異常処理部108への入力に応じ、上記同様、位置制御部102の位置偏差カウンタ50に保持されていた上記フィードバック制御時の位置偏差が初期化処理される(偏差初期化手順に相当)。これにより、モータ2の追従制御の開始時において、上記フィードバック制御で実行していた位置偏差の影響のない高精度な追従制御を、迅速に開始することができる(位置制御手順に相当)。
【0088】
(E)各請求項の用語との対照
以上において、モータ制御回路6における異常検出に対応してモータ2を停止制御するとともに、モータ制御回路7がモータ3を追従制御する場合には、モータ2が第1モータに相当し、モータ3が第2モータに相当し、駆動軸152が第1駆動軸に相当し、駆動軸153が第2駆動軸に相当し、位置検出器4が第1位置検出器に相当し、位置検出器5が第2位置検出器に相当する。また、モータ制御回路6が第1モータ制御回路に相当し、そのうち位置制御部102が第1位置制御部に相当し、速度制御部103が第1速度制御部に相当する。また、位置制御部102の位置偏差カウンタ50が算出する、目標駆動位置指令で指示されたモータ2の目標駆動位置と第1モータ駆動位置情報の表すモータ2の駆動位置との偏差が、第1位置偏差に相当する。また異常検出部107が、異常検出手段に相当する。
【0089】
さらに、モータ制御回路7が第2モータ制御回路に相当し、そのうち位置制御部202が第2位置制御部に相当し、速度制御部203が第2速度制御部に相当する。また、位置偏差カウンタ50が算出する目標駆動位置指令の指示するモータ3の目標駆動位置と第2モータ駆動位置情報の表すモータ3の駆動位置との偏差が、第2位置偏差に相当する。また、切替スイッチSW2が、第2モータ用信号切替手段に相当する。そして、位置補正処理部205が第1位置補正信号生成手段に相当し、位置補正処理部205が生成する上記位置補正信号が追従用位置補正信号に相当し、加算器209が第1位置補正手段に相当する。さらに、速度補正処理部206が速度補正信号生成手段に相当し、加算器215が速度補正手段に相当する。
【0090】
一方、モータ制御回路7における異常検出に対応してモータ3を停止制御するとともに、モータ制御回路6がモータ2を追従制御する場合には、モータ3が第1モータに相当し、モータ2が第2モータに相当し、駆動軸153が第1駆動軸に相当し、駆動軸152が第2駆動軸に相当し、位置検出器5が第1位置検出器に相当し、位置検出器4が第2位置検出器に相当する。また、モータ制御回路7が第1モータ制御回路に相当し、そのうち位置制御部202が第1位置制御部に相当し、速度制御部203が第1速度制御部に相当する。また、位置制御部202の位置偏差カウンタ50が算出する、目標駆動位置指令で指示されたモータ3の目標駆動位置と第2モータ駆動位置情報の表すモータ3の駆動位置との偏差が、第1位置偏差に相当する。また異常検出部107が、異常検出手段に相当する。
【0091】
さらに、モータ制御回路6が第2モータ制御回路に相当し、そのうち位置制御部102が第2位置制御部に相当し、速度制御部103が第2速度制御部に相当する。また、位置偏差カウンタ50が算出する目標駆動位置指令の指示するモータ2の目標駆動位置と第1モータ駆動位置情報の表すモータ2の駆動位置との偏差が、第2位置偏差に相当する。また、切替スイッチSW1が、第2モータ用信号切替手段に相当する。そして、位置補正処理部105が第1位置補正信号生成手段に相当し、位置補正処理部105が生成する上記位置補正信号が追従用位置補正信号に相当し、加算器109が第1位置補正手段に相当する。さらに、速度補正処理部106が速度補正信号生成手段に相当し、加算器115が速度補正手段に相当する。
【0092】
(F)本実施形態の効果
以上説明したように、本実施形態の駆動装置1によれば、モータ制御回路6での異常発生時には、モータ制御回路7の位置制御部202の位置偏差カウンタ50に保持されていた位置偏差が直ちに初期化処理されるので、信号経路切り替わり後のモータ3の追従制御の開始時において、それまでのフィードバック制御で実行していた位置偏差の影響のない高精度な追従制御を、迅速に開始することができる。また、モータ制御回路7での異常発生時には、モータ制御回路6の位置制御部102の位置偏差カウンタ50に保持されていた位置偏差が直ちに初期化処理されるので、信号経路切り替わり後のモータ2の追従制御の開始時において、それまでのフィードバック制御で実行していた位置偏差の影響のない高精度な追従制御を、迅速に開始することができる。この結果、モータ2,3の駆動停止後におけるモータ3,2の追従制御の精度を向上させ、駆動軸152,153の間の軸間誤差による、ガントリテーブル8の締結部8cの過大な内部応力の発生を防止できる。
【0093】
また、この実施形態では特に、異常処理部108,208からの指示信号に応じ、モータ制御回路6,7の位置補正処理部105,205によって位置制御部102,202が2軸間誤差を補正する位置制御を行うことができる。これにより、モータ2,3の駆動停止後におけるモータ3,2の追従制御状態において、より高い精度で2軸間の同期駆動制御を行うことができる。
【0094】
また、この実施形態では特に、異常処理部108,208からの指示信号に応じ、モータ制御回路6,7の速度補正処理部106,206によって速度制御部103,203が2軸間誤差を補正する速度制御を行うことができる。これにより、モータ2,3の駆動停止後におけるモータ3,2の追従制御状態において、より高い精度で2軸間の同期駆動制御を行うことができる。
【0095】
以上説明した本実施形態による効果を、以下、比較例を参照しつつ具体的に説明する。
【0096】
図5〜図7は、モータ制御回路6での異常発生を想定して、上記の手法によりモータ2を停止制御するとともにモータ制御回路7の追従制御を行ったときの、モータ3の速度挙動、及び、駆動軸152,153間に生じる軸間誤差の挙動、のシミュレーション結果を表す図である。いずれの図も横軸には時間をとっている。
【0097】
図5(a)〜図5(c)は、上記本実施形態の駆動装置1におけるシミュレーション結果を表している。図5(a)は、モータ制御回路6の位置制御部102に対しコントローラ9から入力される上記目標駆動位置指令による目標駆動速度の挙動を表しており、縦軸は、図中の1目盛を所定の速度Vとした相対値により表している。図5(b)は、位置検出器5により検出されるモータ3の実際の速度の挙動を表しており、縦軸は、上記図5(a)同様、図中の1目盛を所定の速度Vとした相対値により表している。図5(c)は、駆動軸152と駆動軸153との間に生じる軸間誤差の挙動を表しており、縦軸は、図中の1目盛を所定の距離Xとした相対値により表している。
【0098】
図5(a)〜図5(c)において、本実施形態の駆動装置1においては、モータ制御回路7の異常発生とともに、前述のスイッチSW1の経路切替により位置制御部102へ入力されていた目標駆動位置指令が遮断され、目標駆動速度が0となる(図5(a)参照)。そしてモータ3は、上記の際に停止制御されるモータ2に対し追従するように制御される結果、速やかに減速され、停止する(図5(b)参照)。その際、前述の位置制御部202の位置偏差カウンタ50における偏差の初期化(リセット)や、位置補正処理部205及び速度補正処理部206の補正の結果、駆動軸152と駆動軸153との間に生じる軸間誤差を小さい値(図中の−X程度)にとどめることができる(図5(c))。
【0099】
一方、図6(a)〜図6(c)は、上記実施形態の比較例として、上記実施形態の位置偏差カウンタ50における偏差の初期化(リセット)を行わなかった場合の同様のシミュレーション結果を表している。なお、この比較例は、上記初期化による効果を明確にするために、位置補正処理部205及び速度補正処理部206の補正は引き続き行う場合の比較例としている。図6(a)及び図6(b)は、上記図5(a)及び図5(b)と同様、目標駆動位置指令による目標駆動速度の挙動、及び、モータ3の実際の速度の挙動を表しており、縦軸も上記図5(a)及び図5(b)と同様である。図6(c)は、図5(c)と同様の軸間誤差の挙動を表しており、縦軸は、図5(c)と異なり、図中の1目盛を所定の距離10Xとした相対値により表している(すなわち縦軸は図5(c)の1/10倍に圧縮した状態で表されている)。
【0100】
図6(b)において、この比較例では、モータ3は、図5(b)と同様にモータ制御回路7の異常発生とともにモータ2に対し追従するように制御され、減速され停止する。しかしながら、前述の位置制御部202の位置偏差カウンタ50における偏差の初期化(リセット)が行われないため、モータ3の追従制御の開始時においてそれまでのフィードバック制御で実行していた上記偏差の影響が残り、迅速な高精度追従制御が十分に行えない。この結果、駆動軸152と駆動軸153との間に生じる軸間誤差が著しく大きくなる(図中の−40X程度)ことがわかる(図6(c))。したがって、この比較例と比べた場合には、図5(c)に示す本実施形態の駆動装置1では、位置制御部202の位置偏差カウンタ50における偏差の初期化(リセット)の機能により、軸間誤差が1/40程度まで低減できることがわかる。
【0101】
一方、図7(a)〜図7(c)は、上記のように位置制御部202の位置偏差カウンタ50における偏差の初期化の効果が大きいことに鑑み、別の実施形態として、前述の位置補正処理部205及び速度補正処理部206の補正を行わず、上記位置制御部202の位置偏差カウンタ50における偏差の初期化のみを行った場合の同様のシミュレーション結果を表している。図7(a)、図7(b)、図7(c)はそれぞれ、上記図5(a)、図5(b)、図5(c)と同様、目標駆動位置指令による目標駆動速度の挙動、モータ3の実際の速度の挙動、軸間誤差の挙動を表し、縦軸についても図5(a)、図5(b)、図5(c)とそれぞれ同一となっている。
【0102】
図6(7)に示す他の実施形態においても、上記図5(b)の実施形態と同様、モータ制御回路7の異常発生とともにモータ2に対し追従するように制御され、減速され停止する。その際、前述の位置制御部202の位置偏差カウンタ50における偏差の初期化(リセット)の効果により、モータ3の追従制御の開始時においてそれまでのフィードバック制御で実行していた上記偏差の影響をなくし、迅速な高精度追従制御を行うことがわかる。この際、上記図5(a)〜図5(c)に示した実施形態と異なり、位置補正処理部205及び速度補正処理部206の補正を行っていないため、当該実施形態に比べれば駆動軸152と駆動軸153との間に生じる軸間誤差が若干大きくなっている(図中の−2X程度)。しかしながら、例えば図6(c)の比較例と比べた場合には、位置制御部202の位置偏差カウンタ50における偏差の初期化(リセット)の機能により、軸間誤差が1/20程度まで低減できることがわかる。
【0103】
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、その趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。以下、そのような変形例を順を追って説明する。
【0104】
(1)駆動軸を3軸以上備える場合
上記実施形態においては、ガントリテーブル8をモータ2,3で駆動される2つの駆動軸152,153により移動させる2軸構成の例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、図8に示すように、3つのモータ2,3,11によりそれぞれ駆動される3つの駆動軸152,153,154によりガントリテーブルを移動させる、3軸構成に本発明を適用してもよい。
【0105】
なお、この図8においては、上記実施形態と同等の部分には同一の符号を付している。また、図8では、ガントリテーブルの図示を省略するとともに、コントローラ9と各位置検出器4,5,12と各モータ制御回路6,7,13の切替スイッチSW1,SW2,SW3との間の接続配線だけを図示し、各モータ制御回路6,7,13の内部構成を簡略化して示している。なお、第3モータ制御回路13は、上記モータ制御回路6,7と同等の構成となっている。
【0106】
この構成の場合の各切替スイッチSW1,SW2,SW3は、切替接続する対象の端子を3つ有している。3つのうち、1つの端子は、コントローラ9からの目標駆動位置指令を入力する端子である。他の2つの端子は、それぞれ他の系統の位置検出器4,5,12からモータ駆動位置情報を入力する端子である。すなわち、モータ制御回路6に係わる切替スイッチSW1は、上記目標駆動位置指令を入力する「C」端子と、モータ3の位置検出器5からの第2モータ駆動位置情報を入力する「2」端子と、モータ11の位置検出器12からのモータ駆動位置情報(以下適宜、第3モータ駆動位置情報という)を入力する「3」端子とを備えている。モータ制御回路7に係わる切替スイッチSW2は、上記目標駆動位置指令を入力する「C」端子と、モータ2の位置検出器4からの第1モータ駆動位置情報を入力する「1」端子と、モータ11の位置検出器12からの第3モータ駆動位置情報を入力する「3」端子とを備えている。モータ制御回路13に係わる切替スイッチSW3は、上記目標駆動位置指令を入力する「C」端子と、モータ2の位置検出器4からの第1モータ駆動位置情報を入力する「1」端子と、モータ3の位置検出器5からの第3モータ駆動位置情報を入力する「2」端子とを備えている。通常の駆動状態(モータ制御回路6,7,13のいずれも正常に動作している状態)では、いずれの切替スイッチSW1,SW2,SW3も「C」端子に切り替わることでコントローラ9からの目標駆動位置指令をモータ制御回路6,7,13に入力する。
【0107】
ここで、例えばモータ制御回路6に何らかの異常が発生し上記異常検出部107(図1参照)で検出された場合には、図示するように切替スイッチSW1は上記3つのどの端子とも接続せずに信号の入力を遮断する。
【0108】
そして、上記異常検出部107からの異常通知信号に基づく異常処理部208(図1参照)の指示信号により、切替スイッチSW2は端子「1」へ切り替えられる。これにより、位置検出器4とモータ制御回路7とが接続され、モータ制御回路7の位置制御部202(図1参照)へモータ2の第1モータ駆動位置情報が入力される。この結果、前述と同様にして、モータ3は、モータ制御回路7により、停止制御されるモータ2の位置に追従するように駆動制御される。
【0109】
同様に、上記異常検出部107からの異常通知信号に基づく異常処理部(図示せず。上記異常処理部208と同等の機能を備える)の指示信号により、切替スイッチSW3は端子「1」へ切り替えられる。これにより、位置検出器4とモータ制御回路13とが接続され、モータ制御回路13の位置制御部(図示せず。上記位置制御部202と同等の機能を備える)には、コントローラ9からの共通の目標駆動位置指令に代えて、モータ2の第1モータ駆動位置情報が入力される。この結果、位置制御部に備えられた位置偏差カウンタ(上記位置偏差カウンタ50と同等の機能を備える)がモータ2のモータ駆動位置とモータ11のモータ駆動位置との間の位置偏差を求めて保持し、この位置偏差に基づきモータ11の追従制御が行われる。その際、上記異常処理部からの指示信号に応じ、上記同様、位置制御部の位置偏差カウンタに保持されていた、それまでのフィードバック制御時の位置偏差が初期化処理される。この結果、前述と同様にして、モータ11が、モータ制御回路13により、停止制御されるモータ2の位置に高精度かつ迅速に追従するよう、駆動制御される。
【0110】
以上において、駆動軸154が各請求項記載の第3駆動軸に相当し、モータ11が第3モータに相当し、位置検出器12が第3位置検出器に相当する。またモータ制御回路13が第3モータ制御回路に相当し、モータ制御回路13に備えられた位置制御部が第3位置制御部に相当する。また切替スイッチSW3が第3モータ用信号切替手段に相当する。
【0111】
なお、以上はモータ制御回路6に何らかの異常が発生したときにモータ制御回路7,13でモータ3,11の追従制御を行う場合を例にとって説明したが、本変形例では、同様に、モータ制御回路7に何らかの異常が発生したときにモータ制御回路6,13でモータ2,11の追従制御が行われ、さらにモータ制御回路13に何らかの異常が発生したときにモータ制御回路6,7でモータ2,3の追従制御が行われる。これらの場合も、同様の効果を得る。
【0112】
以上のように、モータ3に係わるモータ制御回路7と同様の構成及び機能を備えた、モータ11に係わるモータ制御回路13を増設することにより、上記のような3軸構成の駆動装置1Aを実現することができる。なお、さらに同様の構成を増設することによって4軸以上で駆動する複数軸駆動装置を実現することも可能である(特に図示せず)。
【0113】
(2)ガントリテーブルの許容誤差分だけ遅らせて追従制御する場合
上記実施形態において、例えばモータ2の駆動停止後におけるモータ3の追従制御では、駆動軸152,153の間の2軸間誤差をできるだけ少なくするように駆動制御される。しかしながら、そのような追従制御の間、モータ2は駆動速度を減速し続けているため、モータ3の駆動位置がモータ2の駆動位置を追い越してしまう場合がある。この場合、駆動軸153により駆動される被駆動部材8bから駆動軸152により駆動される被駆動部材8へ、移動方向に押し込む力が作用することとなり、減速途中の被駆動部材8aの停止距離を増大させる可能性がある。本変形例は、このような場合に対応し、ガントリテーブル8が許容可能な軸間誤差分だけ意図的にモータ3の追従を遅らせることで、モータ3の駆動位置がモータ2の駆動位置を追い越してしまうのを防ぐ例である。
【0114】
図9は、本変形例による駆動装置1Bを含む駆動機械100の機能的構成を表す機能ブロック図であり、上記図1に対応する図である。上記図1と同等の部分については同じ符号を付し、適宜説明を省略又は簡略化する。
【0115】
この図9において、本変形例では、モータ2に係わるモータ制御回路6Bにおいて、上記実施形態のモータ制御回路6の構成に加え、新たに許容誤差補正処理部125及び減算器126を設けている。また、モータ3に係わるモータ制御回路7Bにおいて、上記実施形態のモータ制御回路7の構成に加え、新たに許容誤差補正処理部225及び減算器226を設けている。
【0116】
許容誤差補正処理部125,225には、ガントリテーブル8の被駆動部材8a及び被駆動部材8bとの間(言い換えれば駆動軸152,153の間)で許容可能な、直線的な移動方向(図9中左右方向)に沿った許容軸間誤差(各請求項記載の相対変位量に相当)を記憶保持しており、この許容軸間誤差に対応する補正信号(各請求項記載の相対変位許容用位置補正信号に相当)を減算器126,226へ出力する。補正信号に含まれる補正量は、上記許容軸間誤差以下の量となっている。なお、この許容軸間誤差は、当該ガントリテーブル8Bがその軸間誤差を保持したままの状態で、振動などを発生させることなく全体を円滑に直線移動できる程度の誤差である。
【0117】
前述のように、例えばモータ制御回路6Bにおいて何らかの異常が発生した場合、異常処理部208からの指示信号により切替スイッチSW2が図9中の上方位置に切り替わり、コントローラ9からの上記共通の目標駆動位置指令に代わって、モータ2の位置検出器4からの第1モータ駆動位置情報が位置制御部202へ入力されるようになる。本変形例では、その際、許容誤差補正処理部225が上記補正信号を生成する。なお、このときに実行する手順が、各請求項記載の位置補正信号生成手順に相当する。そして、減算器226が、第1モータ駆動位置情報から、上記許容誤差補正処理部225からの補正信号を減算処理し、切替スイッチSW2を介して位置制御部202へ出力する。なお、このときに実行する手順が、各請求項記載の位置補正処理手順に相当する。これにより、モータ制御回路6Bに異常が発生してモータ2の駆動を停止した場合、モータ制御回路7Bは、駆動停止制御中のモータ2の駆動位置から、その移動方向に対して上記許容軸間誤差以内だけ遅れた位置に追従するよう(言い換えれば、被駆動部材8aが上記移動方向に沿って上記許容時間誤差以内で被駆動部材8bより先行した位置となるよう)、モータ3を駆動制御する。なお、この場合、許容誤差補正処理部225が各請求項記載の第2位置補正信号生成手段に相当し、許容誤差補正処理部225が出力する上記補正信号が相対変位許容用位置補正信号に相当し、減算器226が第2位置補正手段に相当する。
【0118】
一方、例えばモータ制御回路7Bにおいて何らかの異常が発生した場合、異常処理部108からの指示信号により切替スイッチSW1が図9中の下方位置に切り替わり、コントローラ9からの上記共通の目標駆動位置指令に代わって、モータ3の位置検出器5からの第2モータ駆動位置情報が位置制御部102へ入力されるようになる。本変形例では、その際、許容誤差補正処理部125が上記補正信号を生成し(各請求項記載の位置補正信号生成手順に相当)し、減算器126が、第2モータ駆動位置情報から、上記許容誤差補正処理部125からの補正信号を減算処理し(各請求項記載の位置補正処理手順に相当)、切替スイッチSW1を介して位置制御部102へ出力する。これにより、モータ制御回路7Bに異常が発生してモータ3の駆動を停止した場合、モータ制御回路6Bは、駆動停止制御中のモータ3の駆動位置から、その移動方向に対して上記許容軸間誤差以内だけ遅れた位置に追従するよう(言い換えれば、被駆動部材8bが上記移動方向に沿って上記許容時間誤差以内で被駆動部材8aより先行した位置となるよう)、モータ2を駆動制御する。なお、この場合、許容誤差補正処理部125が各請求項記載の第2位置補正信号生成手段に相当し、許容誤差補正処理部125が出力する上記補正信号が相対変位許容用位置補正信号に相当し、減算器126が第2位置補正手段に相当する。
【0119】
以上説明したように、本変形例においては、駆動停止側のモータ2,3の駆動位置よりも、移動方向に対して許容軸間誤差だけ遅れた位置を追従するようにモータ3,2の駆動位置を駆動制御する。これにより、被駆動部材8bによる被駆動部材8aの追い越し、又は、被駆動部材8aによる被駆動部材8bの追い越しを防ぐことができるので、結果的に停止距離の増大を防止することができる。
【0120】
また、能動的に駆動制御されているモータ3,2の駆動位置を、駆動減速中のモータ2,3の駆動位置より意図的に遅らせることで、被駆動部材8b,8aが締結部8cを介して被駆動部材8a,8bの惰性移動を抑え、停止距離を縮小できる効果もある。
【0121】
(3)その他
なお、以上においては、各系統のモータ2,3に回転型のモータを用いた構成を例にとって説明したが、これに限られない。他にも、直動型のモータを用いて各駆動軸を駆動する構成としてもよい。この場合も、上記同様の効果を得ることができる。
【0122】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0123】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0124】
1,1A,1B 駆動装置(複数軸駆動装置)
2 モータ
3 モータ
4 位置検出器
5 位置検出器
6,6B モータ制御回路
7,7B モータ制御回路
8 ガントリテーブル
8a 被駆動部材
8b 被駆動部材
8c 締結部
9 コントローラ
11 モータ
12 位置検出器
13 モータ制御回路
50 位置偏差カウンタ
100 駆動機械
102 位置制御部
103 速度制御部
105 位置補正処理部
106 速度補正処理部
107 異常検出部
108 異常処理部
109 加算器
115 加算器
125 許容誤差補正処理部
126 減算器
152 駆動軸
153 駆動軸
154 駆動軸
202 位置制御部
203 速度制御部
205 位置補正処理部
206 速度補正処理部
207 異常検出部
208 異常処理部
209 加算器
215 加算器
225 許容誤差補正処理部
226 減算器
SW1 切替スイッチ
SW2 切替スイッチ
SW3 切替スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
締結部によって連結された第1駆動軸及び第2駆動軸を備えた複数軸駆動機械に設けられる複数軸駆動装置であって、
前記第1駆動軸を駆動するための第1モータ、及び、前記第2駆動軸を駆動する第2モータ、を設け、
前記第1モータに機械結合され前記第1モータの駆動位置を検出する第1位置検出器、及び、前記第2モータに機械結合され前記第2モータの駆動位置を検出する第2位置検出器、を設け、
前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第1モータの目標駆動位置と前記入力した前記第1モータの駆動位置との第1位置偏差に基づき前記第1モータの駆動を制御するための第1位置制御部、を備えた第1モータ制御回路を設け、
前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第2位置検出器で検出された前記第2モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第2モータの目標駆動位置と前記入力された前記第2モータの駆動位置との第2位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を制御するための第2位置制御部、を備えた第2モータ制御回路を設け、
前記第1モータ制御回路は、
当該第1モータ制御回路内の異常を検出し、対応する異常通知信号を出力可能な異常検出手段と、
前記異常検出手段により前記第1モータ制御回路内の異常が検出された場合に、前記共通の駆動指令信号から遮断した状態で前記第1モータの駆動を停止する停止制御手段と、
を有し、
前記第2モータ制御回路は、
前記異常通知信号が入力された場合に、前記共通の駆動指令信号の前記第2位置制御部への入力を遮断し、当該共通の駆動指令信号に代えて、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置が前記第2位置制御部へ入力されるように、信号経路を切り替える第2モータ用信号切替手段
を有し、
前記第2位置制御部は、
前記異常通知信号が入力された場合に、前記第2位置偏差を初期化処理するとともに、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を追従制御する、
ことを特徴とする複数軸駆動装置。
【請求項2】
請求項1記載の複数軸駆動装置において、
前記第2モータ制御回路は、
前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置とを入力するとともに、それら入力された第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に基づいて、前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を補正するための追従用位置補正信号を生成する第1位置補正信号生成手段と、
前記第2モータ用信号切替手段から入力される前記第1モータの駆動位置を、前記第1位置補正信号生成手段からの前記追従用位置補正信号により補正する、第1位置補正手段と、
を有することを特徴とする複数軸駆動装置。
【請求項3】
請求項2記載の複数軸駆動装置において、
前記第1位置補正信号生成手段は、
前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に対し、所定の第1ゲインを乗算する第1乗算部と、
前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差を微分する第1微分器と、
前記第1微分器での微分値に対し、所定の第2ゲインを乗算する第2乗算部と、
前記第1乗算部からの出力値と、前記第2乗算部からの出力値とを、加算して前記追従用位置補正信号とする加算器と、
を備えることを特徴とする複数軸駆動装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3記載の複数軸駆動装置において、
前記第1モータ制御回路は、
前記第1位置制御部から出力された、前記第1モータの駆動を制御するための速度指令、及び、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置を微分した第1モータの駆動速度、を入力し、前記第1位置制御部からの速度指令で指示された前記第1モータの目標駆動速度と前記入力した前記第1モータの駆動速度との第1速度偏差に基づき前記第1モータの駆動を制御するための第1速度制御部を有し、
前記第2モータ制御回路は、
前記第2位置制御部から出力された、前記第2モータの駆動を制御するための速度指令、及び、前記第2位置検出器で検出された前記第2モータの駆動位置を微分した第2モータの駆動速度、を入力し、前記第2位置制御部からの速度指令で指示された前記第2モータの目標駆動速度と前記入力した前記第2モータの駆動速度との第2速度偏差に基づき前記第2モータの駆動を制御するための第2速度制御部と、
前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置とを入力するとともに、それら入力された第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に基づいて、前記第2速度制御部へ入力される前記第2位置制御部からの速度指令を補正するための速度補正信号を生成する速度補正信号生成手段と、
前記第2位置制御部から入力される前記速度指令を、前記速度補正信号生成手段からの前記速度補正信号により補正する、速度補正手段と、
を有することを特徴とする複数軸駆動装置。
【請求項5】
請求項2記載の複数軸駆動装置において、
前記速度補正信号生成手段は、
前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差を微分する第2微分器と、
前記第2微分器での微分値に対し、所定の第3ゲインを乗算し、前記速度補正信号とする第3乗算部と、
を備えることを特徴とする複数軸駆動装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の複数軸駆動装置において、
前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に連結された第3駆動軸を駆動するための第3モータと、
前記第3モータに機械結合され前記第3モータの駆動位置を検出する第3位置検出器と、
前記共通の駆動指令信号、及び、前記第3位置検出器で検出された前記第3モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第3モータの目標駆動位置と前記入力した前記第3モータの駆動位置との第3位置偏差に基づき前記第3モータの駆動を制御するための第3位置制御部を備えた第3モータ制御回路と、
を有し、
前記第3モータ制御回路は、
前記異常通知信号が入力された場合に、前記共通の駆動指令信号の前記第3位置制御部への入力を遮断し、当該共通の駆動指令信号に代えて、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置が前記第3位置制御部へ入力されるように、信号経路を切り替える第3モータ用信号切替手段と、
を有し、
前記第3位置制御部は、
前記異常通知信号が入力された場合に、前記第3位置偏差を初期化処理するとともに、前記第1モータの駆動位置と前記第3モータの駆動位置との位置偏差に基づき前記第3モータの駆動を追従制御する、
ことを特徴とする複数軸駆動装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の複数軸駆動装置において、
前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸は、
前記締結部を構成し直線的に移動可能な第1被駆動部材及び第2被駆動部材にそれぞれ係合されるとともに、駆動により前記第1被駆動部材及び前記第2被駆動部材をそれぞれ直線的に移動させるように構成されており、
前記第2モータ制御回路は、
前記第1被駆動部材と前記第2被駆動部材との間で許容可能な前記直線的な移動方向に沿った相対変位量を保持し、前記相対変位量に基づいて、前記第2モータ用信号切替手段の前記切り替えにより前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を補正するための、相対変位許容用位置補正信号を生成する第2位置補正信号生成手段と、
前記第2モータ用信号切替手段から前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を、前記第2位置補正信号生成手段からの前記相対変位許容用位置補正信号により補正する、第2位置補正手段と、
を有することを特徴とする複数軸駆動装置。
【請求項8】
請求項7記載の複数軸駆動装置において、
前記第2位置補正信号生成手段は、
前記第1被駆動部材が、前記移動方向に沿って前記第2被駆動部材よりも前記相対変位量以内で先行した位置となるような、前記相対変位許容用位置補正信号を生成する
ことを特徴とする複数軸駆動装置。
【請求項9】
それぞれが直線的に移動可能に配置されるとともに互いに連結された第1被駆動部材及び第2被駆動部材と、前記第1被駆動部材に係合され、駆動により前記第1被駆動部材を直線的に移動させる第1駆動軸と、前記第2被駆動部材に係合され、駆動により前記第2被駆動部材を直線的に移動させる第2駆動軸と、前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸を含む複数の駆動軸を制御する複数軸駆動装置と、を備えた複数軸駆動機械であって、
前記複数軸駆動装置は、
前記第1駆動軸を駆動するための第1モータ、及び、前記第2駆動軸を駆動する第2モータ、と、
前記第1モータに機械結合され前記第1モータの駆動位置を検出する第1位置検出器、及び、前記第2モータに機械結合され前記第2モータの駆動位置を検出する第2位置検出器、と、
前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第1モータの目標駆動位置と前記入力した前記第1モータの駆動位置との第1位置偏差に基づき前記第1モータの駆動を制御するための第1位置制御部、を備えた第1モータ制御回路と、
前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第2位置検出器で検出された前記第2モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第2モータの目標駆動位置と前記入力された前記第2モータの駆動位置との第2位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を制御するための第2位置制御部、を備えた第2モータ制御回路と、
を有し、
前記第1モータ制御回路は、
当該第1モータ制御回路内の異常を検出し、対応する異常通知信号を出力可能な異常検出手段と、
前記異常検出手段により前記第1モータ制御回路内の異常が検出された場合に、前記共通の駆動指令信号から遮断した状態で前記第1モータの駆動を停止する停止制御手段と、
を備え、
前記第2モータ制御回路は、
前記異常通知信号が入力された場合に、前記共通の駆動指令信号の前記第2位置制御部への入力を遮断し、当該共通の駆動指令信号に代えて、前記第1位置検出器で検出された前記第1モータの駆動位置が前記第2位置制御部へ入力されるように、信号経路を切り替える第2モータ用信号切替手段
を備え、
前記第2位置制御部は、
前記異常通知信号が入力された場合に、前記第2位置偏差を初期化処理するとともに、前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を追従制御する
ことを特徴とする複数軸駆動機械。
【請求項10】
請求項9記載の複数軸駆動機械において、
前記複数軸駆動装置の前記第2モータ制御回路は、
前記第1被駆動部材と前記第2被駆動部材との間で許容可能な前記直線的な移動方向に沿った相対変位量を保持し、前記相対変位量に基づいて、前記第2モータ用信号切替手段の前記切り替えにより前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を補正するための、相対変位許容用位置補正信号を生成する位置補正信号生成手段と、
前記第2モータ用信号切替手段から前記第2位置制御部へ入力される前記第1モータの駆動位置を、前記位置補正信号生成手段からの前記相対変位許容用位置補正信号により補正する、位置補正手段と、
を有することを特徴とする複数軸駆動機械。
【請求項11】
締結部によって連結された第1駆動軸及び第2駆動軸と;前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第1駆動軸を駆動するための第1モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第1モータの目標駆動位置と前記入力した前記第1モータの駆動位置との第1位置偏差に基づき前記第1モータの駆動を制御する第1モータ制御回路と;前記第1駆動軸及び前記第2駆動軸に共通の駆動指令信号、及び、前記第2駆動軸を駆動するための第2モータの駆動位置、を入力し、前記共通の駆動指令信号で指示された前記第2モータの目標駆動位置と前記入力された前記第2モータの駆動位置との第2位置偏差に基づき前記第2モータの駆動を制御する第2モータ制御回路と;を備えた複数軸駆動装置の駆動制御方法であって、
前記第1モータ制御回路内の異常を検出した場合に、前記共通の駆動指令信号から遮断した状態で前記第1モータの駆動を停止する停止制御手順と、
前記第1モータ制御回路内の異常を検出した場合に、前記第2位置偏差を初期化処理する偏差初期化手順と、
前記第1モータ制御回路内の異常を検出した場合に、前記共通の駆動指令信号の前記第2モータ制御回路への入力を遮断し、当該共通の駆動指令信号に代えて、前記第1モータの駆動位置が前記第2モータ制御回路へ入力されるように、信号経路を切り替える信号切替手順と、
前記第1モータの駆動位置と前記第2モータの駆動位置との位置偏差を、少なくするように前記第2モータの駆動を追従制御する、位置制御手順と、
を有することを特徴とする複数軸駆動装置の駆動制御方法。
【請求項12】
請求項11記載の複数軸駆動装置の駆動制御方法において、
前記締結部を構成し直線的に移動可能な第1被駆動部材及び前記第2被駆動部材にそれぞれ係合された前記第1被駆動部材及び前記第2被駆動部材の相互の間で許容可能な、前記第1被駆動部材及び前記第2被駆動部材の移動する直線的な移動方向に沿った相対変位量に基づいて、前記第2モータ用信号切替手順での前記切り替えにより入力される前記第1モータの駆動位置を補正するための、相対変位許容用位置補正信号を生成する位置補正信号生成手順と、
前記入力される前記第1モータの駆動位置を、前記前記相対変位許容用位置補正信号により補正する、位置補正処理手順と、
を有することを特徴とする複数軸駆動装置の駆動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−257909(P2011−257909A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130871(P2010−130871)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】