説明

複素多環系化合物

【課題】有機色素、或いは、各種の有機ゲスト分子を包接させることにより、色調と蛍光性を大きく変化させうる有機蛍光性色素として機能する新規な化合物を提供する。
【解決手段】下記一般式(V)〜(VI)で表わされる複素多環系化合物。


[式中、R1及びR2は、それぞれ炭素数1〜10のアルキル基等を示し、X、Yは、酸素原子等を示し、Arは、炭素数6〜20のアリール基等を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な複素多環系化合物に関し、さらに詳しくは、本発明は、各種用途に好適に用いられる新規な複素多環系化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機蛍光性色素は、染顔料としての利用に加え、各種表示機器における蛍光変換膜用として、さらには色素レーザ用、コピー防止用、太陽エネルギー変換用、グリーンハウスにおける蛍光フィルム用色素などとして、広い分野で用いられている。
このような用途に用いられる有機蛍光性色素においては、固体状態での蛍光波長の調整や発光強度の改善が強く望まれている。しかしながら、一般的に、有機蛍光性色素の固体状態における蛍光強度は、溶液状態における蛍光強度に比べて弱いことが知られている。この現象は、濃度消光で片付けられており、詳細はよく分かっていないのが実状である。これは、従来の有機蛍光性色素においては、結晶格子中での分子パッキング構造を様々に変化させて、固体状態における有機蛍光性色素の光吸収や蛍光性に及ぼす影響を調べることが難しかったためである。
このような点を解決するものとして、本発明者らは、先に固体状態で様々な有機低分子化合物(有機ゲスト分子)を包接させることによって、色素のもつ本来の色と蛍光発光性を大きく変化させることができる新規な包接錯体(クラスレート)形成能を有する蛍光性色素を創出した(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5参照)。このようなクラスレート形成能を有する蛍光性色素を用いると、有機ゲスト分子を包接させることによって、分子レベルで色素分子の配向・配列を様々に変化させることができ、それによって色素の固体光物性(色調と蛍光性)を大きく変化させることができる。
したがって、このような特性を利用すれば、まだ十分に解明されていない固体状態での色素分子のパッキング構造と光吸収・蛍光発光性との相関性に関する基礎的知見を得ることができ、これによって、多様なニーズに合致した光物性をもつ蛍光性有機固体材料を創出することが可能となる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「Chem.Lett.」、第9頁(1996年)
【非特許文献2】「Chem.Lett.」、第837頁(1999年)
【非特許文献3】「Chem.Lett.」、第714頁(2000年)
【非特許文献4】「Chem.Lett.」、第808頁(2001年)
【非特許文献5】「J.Chem.Perkin Trans.」、第2巻、第700〜707頁、第708〜714頁(2002年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前記の課題を解決するためなされたもので、一般的な有機色素や有機蛍光性色素として、あるいはクラスレート形成能と蛍光性を有し、各種の有機ゲスト分子を包接させることにより、色素の固体光物性(色調と蛍光性)を大きく変化させうる有機蛍光性色素などとして機能し、各種用途に好適に用いられる新規な複素多環系化合物及びそれを用いた色素、顔料又は染料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、蛍光色素として下記一般式(V)〜(VI)で表わされる特定構造を有する複素多環系化合物を用いることにより前記の目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、下記一般式(V)〜(VI)のいずれかで表わされる複素多環系化合物を提供するものである。
【0006】
【化1】

【0007】
[式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に環構造を形成していてもよい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR3 −(R3 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR4 −(R4 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。ただし、一般式(III) 及び(IV)においては、Yは酸素原子、硫黄原子又は−NR4 −を示す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。]
【発明の効果】
【0008】
本発明は、各種用途に好適に用いられる新規な複素多環系化合物、該複素多環系化合物からなる色素、該複素多環系化合物を含む顔料又は染料を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の複素多環系化合物は、下記一般式(I)及び(III) 〜(VI)のいずれかで表わされる構造を有する文献未載の新規な複素多環系化合物である。
【化2】

【0010】
一般式(I)及び(III) 〜(VI)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に環構造を形成していてもよい。
前記アルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、さらにはベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0011】
前記アリールアルキル基の例としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
前記アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などが挙げられる。
【0012】
前記ヘテロアリール基の例としては、1−アザーインドリジン−2−イル基、1−アザ−インドリジン−3−イル基、1−アザ−インドリジン−5−イル基、1−アザ−インドリジン−6−イル基、1−アザ−インドリジン−7−イル基、1−アザ−インドリジン−8−イル基、2−アザ−インドリジン−1−イル基、2−アザ−インドリジン−3−イル基、2−アザ−インドリジン−5−イル基、2−アザ−インドリジン−6−イル基、2−アザ−インドリジン−7−イル基、2−アザ−インドリジン−8−イル基、6−アザ−インドリジン−1−イル基、6−アザ−インドリジン−2−イル基、6−アザ−インドリジン−3−イル基、6−アザ−インドリジン−5−イル基、6−アザ−インドリジン−7−イル基、6−アザ−インドリジン−8−イル基、7−アザ−インドリジン−1−イル基、7−アザ−インドリジン−2−イル基、7−アザ−インドリジン−3−イル基、7−アザ−インドリジン−5−イル基、7−アザ−インドリジン−6−イル基、7−アザ−インドリジン−7−イル基、7−アザ−インドリジン−8−イル基、8−アザ−インドリジン−1−イル基、8−アザ−インドリジン−2−イル基、8−アザ−イシドリジン−3 −イル基、8−アザ−インドリジン−5−イル基、8−アザ−インドリジン−6−イル基、8−アザ−インドリジン−7−イル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基等が挙げられる。
【0013】
また、これら各基は、適当な置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルホキシル基、スルホンアミド基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられる。
このアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の例としては、前記と同様のものが挙げられ、ハロゲン原子の例としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、アルコキシル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、各種ブトキシ基、各種ペントキシ基、各種ヘキソキシ基、各種オクトキシ基、各種デシロキシ基、シクロペンチロキシ基、シクロヘキシロキシ基、ベンジロキシ基、フェネチルオキシ基などが挙げられ、スルホンアミド基は、置換スルホンアミド又は無置換スルホンアミドのいずれでもあってもよく、アミド基は、置換アミド又は無置換アミドのいずれでもあってもよい。これらのアルコキシル基、スルホンアミド基、アミド基の置換基としては、前記R1とR2と同様のものが挙げられる。さらに、アルコキシカルボニル基におけるアルコキシル基の例としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0014】
1とR2がたがいに結合して、窒素原子と一緒になって形成してなる環構造としては、例えば、1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基などが挙げられる。
また、R1とR2が、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に形成してなる環構造としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【化3】

【0015】
一般式(I)、(V)〜(VI)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR3 −(R3 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
前記R3 の示すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、それぞれ、前記R1及びR2で挙げたものと同様の例が挙げられ、それらの置換基も同様のものが挙げられる。
一般式(III) 及び(IV)においては、Yは酸素原子、硫黄原子又は−NR4 −(R4 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示し、一般式(V)〜(VI)において、Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR4 −(R4 は同じ)を示す。
前記R4 の示すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、それぞれ、前記R1及びR2で挙げたものと同様の例が挙げられ、それらの置換基も同様のものが挙げられる。
一般式(III) 〜(VI)において、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、それぞれ、前記R1及びR2で挙げたものと同様の例が挙げられ、それらの置換基も同様のものが挙げられる。
【0016】
前記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の一般式(I−a)で表される化合物などを挙げるとができる。
【化4】

【0017】
本発明の一般式(I)で表される化合物は色素であって、それを含有する分散染料、インクジェットプリント用色素、電子写真トナー、熱転写色素、光変調素子など非線形光学材料、有機太陽電池など光電変換色素、高密度光記録型色素として好適に利用することができる。さらに、下記本発明の一般式(V)〜(VI)の製造中間体としても用いることができる。
【0018】
本発明の一般式(III) で表される化合物の具体例としては、下記の一般式(III−a)〜(III−d)で表される化合物などを挙げることができる。
【化5】

【0019】
本発明の一般式(IV)で表される化合物の具体例としては、下記の一般式(IV−a)〜(IV−d)で表される化合物などを挙げることができる。
【化6】

【0020】
本発明の一般式(V)で表される化合物の具体例としては、下記の一般式(V−a)〜(V−c)で表される化合物などを挙げることができる。
【化7】

【0021】
本発明の一般式(VI)で表される化合物の具体例としては、下記の一般式(VI−a)〜(VI−c)で表される化合物などを挙げることができる。
【化8】

【0022】
本発明の一般式(III) 〜(VI)で表される化合物は、有機蛍光性色素であって、それを含有する分散染料、インクジェットプリント用色素、電子写真トナー、熱転写色素、有機電界発光素子などの発光材料、光変調素子など非線形光学材料、有機太陽電池など光電変換色素、有機EL・色素レーザーなど蛍光性色素、農業用フィルムなどの調光・波長変換色素、高密度光記録型色素、分子認識用蛍光色素などのレセプターとして好適に利用することができる。さらに、クラスレート形成能を有するものもあり、各種の有機ゲスト分子を包接させることにより、色調及び蛍光発光性を変化させ、より一層機能を高めた包接錯体からなる固体発光性の有機蛍光性色素に誘導することもできる。
本発明の一般式(III) 〜(VI)で表される化合物やその包接錯体は、有機蛍光性色素として、様々な用途、例えば各種表示機器における蛍光変換膜用、色素レーザ用、調光用、エネルギー変換用、高密度光記録用、表示用、分子認識のための蛍光センサ用などに用いることができる。
前記用途の中で、各種表示機器における蛍光変換膜は、例えばPDP(プラズマディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネッセンスディスプレイ)、LED(発光ダイオード)、VFD(蛍光表示管)などの電子ディスプレイデバイスに適用することができる。
次に、本発明の複素多環系化合物の製造方法について説明する。
本発明の一般式(I)の化合物の製造方法について説明する。
【0023】
一般式(I)で表される1,2−ナフトキノン系誘導体である本発明の複素多環系化合物は、Xが酸素原子である場合、例えば以下に示す反応式(A)に従って製造することができる。
【化9】

【0024】
(式中、Mはアルカリ金属原子、R1及びR2は前記と同じである。)
反応式(A)で示されるように、実質上化学量論的量の1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸アルカリ金属塩(a)とm−置換フェノール(b)を、酢酸などの適当な溶媒中において、ハロゲン化銅(II)などの触媒の存在下に、0〜80℃程度の温度で反応させることにより、一般式(I−1)で表されるベンゾフラノ−1,2−ナフトキノン骨格を有し、Xが酸素原子である化合物が得られる。この際、一般式(c)で表される化合物が副生する。
【0025】
本発明の一般式(III) 及び(IV)の化合物の製造方法としては、例えばYが酸素原子である場合、以下に示す反応式(B)に従って製造することができる。
【化10】

【0026】
(式中、R1、R2及びArは、前記と同じである。)
反応式(B)で示されるように、酢酸などの適当な溶媒中において、一般式(d)で表される1,2−ナフトキノン誘導体と、それに対して実質上化学量論的量あるいは若干過剰のアリールアルデヒド(e)と、過剰の酢酸アンモニウムとを、50〜100℃程度の温度で反応させることにより、一般式(III−1)及び一般式(IV−1)で表されるナフトオキサゾール骨格を有する化合物が得られる。
【0027】
本発明の一般式(V)及び(VI)の化合物の製造方法としては、例えばX及びYがそれぞれ酸素原子である場合、以下に示す反応式(C)に従って製造することができる。
【化11】

(式中、R1、R2及びArは、前記と同じである。)
【0028】
反応式(C)で示されるように、酢酸などの適当な溶媒中において、一般式(I−1)で表される化合物と、それに対して若干過剰のアリールベンズアルデヒド(f)と、過剰の酢酸アンモニウムとを、50〜100℃程度の温度で反応させることにより、一般式(V−1)及び一般式(VI−1)で表されるベンゾフラノナフトオキサゾール骨格を有する化合物が得られる。
【実施例】
【0029】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によってなんら制限されるものではない。
【0030】
実施例1 化合物(I−a)の合成
乳鉢に、1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸ナトリウム1.0g(3.84ミリモル)とCuCl20.26g(1.92ミリモル)入れ、少量の酢酸水溶液に溶解させた。次いで、これにm−(ジブチルアミノ)フェノール0.85g(3.84ミリモル)を少量の酢酸水溶液に溶解して加え、乳鉢中で擦り合わせた。数日間放置して反応させたのち、水を加えて析出物をろ過し、減圧乾燥した。
この析出物をジクロロメタンで抽出したのち、抽出液中のジクロロメタンを濃縮し、残液をシリカゲルカラム(展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル容量比6/1)に付して分離精製することにより、目的の化合物(I−a)である紫色粉末状結晶586mg(収率40.9%)を得た。
この化合物の分析結果を以下に示す。
【0031】
(1)融点:149〜153℃
(2)1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)1.00(6H,t)、1.37−1.50(4H,m)、1.62−1.74(4H,m)、3.34(4H,t)、6.65(1H,s)6.80(1H,dd)7.43(1H,dt)、7.65(1H,dt)、7.88(1H,d)、7.93(1H,d)、8.11(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):1618cm-1
(4)元素分析値
C H N
実測値(%) 76.91 6.83 3.76
計算値(%) 76.77 6.71 3.73
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
410nm(7800)、533nm(10800)
蛍光特性:蛍光性なし
【0032】
実施例2 化合物(V−a)及び(VI−a)の合成
化合物(I−a)0.8g(2.13ミリモル)とp−シアノベンズアルデヒド0.42g(3.16ミリモル)を酢酸60ミリリットルに溶解させ、これに酢酸アンモニウム2.63g(34.1ミリモル)を加えて、90℃で2時間反応させた。反応終了後、水を加え、更にジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し、水洗したのち、濃縮し、残液をシリカゲルカラム(展開溶媒:キシレン/酢酸容量比20/1)に付して分離精製した。
化合物(V−a)である橙色粉末状結晶521mg(収率50.2%)と、化合物(VI−a)である黄色粉末状結晶266mg(収率25.7%)を得た。
化合物(V−a)及び化合物(VI−a)の分析結果を以下に示す。
【0033】
〈化合物(V−a)〉
(1)融点:203〜204℃
(2)1H−NMR(CDCl3):δ(ppm)1.00(6H,t)、1.37−1.50(4H,m)、1.62−1.74(4H,m)、3.34(4H,t)、6.85(1H,dd)、6.95(1H,ds)、7.66(2H,m)、7.81(2H,d)、8.15(1H,d)、8.41(2H,d)、8.60(1H,d)、8.64(1H,d)、
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):1507、1632、2226cm-1
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 78.58 5.75 8.70
計算値(%) 78.83 6.00 8.62
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
362nm(14000)、420nm(28900)
蛍光特性:λem:526nm
【0034】
〈化合物(VI−a)〉
(1)融点:227〜229℃
(2)1H−NMR(CDCl3 ):δ(ppm)1.01(6H,t)、1.39−1.49(4H,m)、1.62−1.72(4H,m)、3.42(4H,t)、6.85(1H,d)、7.00(1H,ds)、7.65(1H,t)、7.71(1H,t)、7.85(2H,d)、8.13(1H,d)、8.40(1H,d)、8.48(2H,d)、8.65(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):1505、1633、2228cm-1
(4)元素分析値
C H N
実測値(%) 78.83 5.90 8.63
計算値(%) 78.83 6.00 8.62
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
366nm(26800)、418nm(4500)
蛍光特性;λem:553nm
【0035】
実施例3 化合物(V−b)及び化合物(VI−b)の合成
化合物(I−a)0.8g(2.13ミリモル)と9−アントラアルデヒド1.10g(5.33ミリモル)を酢酸150ミリリットルに溶解させ、これに酢酸アンモニウム8.21g(0.107モル)を加えて、80℃で2時間反応させた。反応終了後、水を加え、更にジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し、水洗したのち、濃縮し、残液をシリカゲルカラム(展開溶媒:キシレン/酢酸容量比20/1)に付して分離精製した。
化合物(V−b)である赤色結晶823mg(収率30.6%)と、化合物(VI−b)である橙色結晶585mg(収率21.7%)を得た。
化合物(V−b)及び化合物(VI−b)の分析結果を以下に示す。
【0036】
〈化合物(V−b)〉
(1)融点:112〜114℃
(2)1H−NMR(アセトン−d6):δ(ppm)1.00(6H,t)、1.42−1.51(4H,m)、1.67−1.75(4H,m)、3.51(4H,q)、7.03(1H,dd)、7.09(1H,d)、7.63−7.67(4H,m)、7.78−7.87(2H,m)、8.27−8.30(4H,m)、8.40(1H,d)、8.76(1H,d)、8.86(1H,d)、8.95(1H,s)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):1506、1632cm-1
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 83.36 6.14 5.02
計算値(%) 83.24 6.09 4.98
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
373nm(26800)、420nm(14400)
蛍光特性:λem;569nm
【0037】
〈化合物VI−b〉
(1)融点:175〜176℃
(2)1H−NMR(アセトン−d6):δ(ppm)1.02(6H,t)、1.43−1.55(4H,m)、1.69−1.77(4H,m)、3.52(4H,q)、7.02(1H,dd)、7.14(1H,d)、7.63−7.67(4H,m)、7.72−7.76(1H,m)、7.83−7.87(1H,m)、8.25−8.30(4H,m)、8.38(1H,d)、8.44(1H,d)、8.87(1H,d)、8.96(1H,s)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):1507、1634cm-1
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 83.48 6.23 5.16
計算値(%) 83.24 6.09 4.98
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
373nm(26400)
蛍光特性;λem:570nm
【0038】
実施例4 化合物(V−c)及び(VI−c)の合成
化合物(I−a)0.8g(2.13ミリモル)と1−ピレンカルバルデヒド0.98g(4.26ミリモル)を酢酸150ミリリットルに溶解させ、これに酢酸アンモニウム6.57g(85ミリモル)を加えて、80℃で1.5時間反応させた。反応終了後、水を加え、更にジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し、水洗したのち、濃縮し、残液をシリカゲルカラム(展開溶媒:キシレン/酢酸容量比20/1)に付して分離精製した。
化合物(V−c)である橙色結晶1.117g(収率49.4%)と化合物(VI−c)である黄色結晶0.82g(収率36.2%)を得た。
化合物(V−c)及び(VI−c)の分析結果を以下に示す。
【0039】
〈化合物(V−c)〉
(1)融点:222〜224℃
(2)1H−NMR(アセトン−d6):δ(ppm)1.04(6H,t)、1.45−1.54(4H,m)、1.70−1.78(4H,m)、3.53(4H,q)、7.02(1H,dd)、7.12(1H,d)、7.82−7.84(2H,m)、8.19(1H,t)、8.29−8.38(3H,m)、8.42−8.47(2H,m)、8.51−8.55(2H,m)、8.80―8.82(1H,m)、8.84−8.87(1H,m)、9.11(1H,d)、10.15(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):1506、1635cm-1
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 83.88 5.86 4.72
計算値(%) 83.93 5.84 4.77
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
362nm(24800)、397nm(28800)、
436nm(33600)
蛍光特性;λem:538nm
【0040】
〈化合物(VI−c)〉
(1)融点:225〜227℃
(2)1H−NMR(アセトン−d6):δ(ppm)1.04(6H,t)、1.48−1.53(4H,m)、1.71−1.79(4H,m)、3.53(4H,q)、7.01(1H,dd)、7.18(1H,d)、7.78−7.87(2H,m)、8.20(1H,t)、8.31−8.39(3H,m)、8.43−8.49(2H,m)、8.53−8.57(2H,m)、8.64−8.67(1H,m)、8.83(1H,d)、9.21(1H,d)、10.18(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):1500、1635cm-1
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 83.76 5.99 4.65
計算値(%) 83.93 5.84 4.77
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
377nm(48800)、395nm(36400)
蛍光特性;λem:551nm
【0041】
参考例1 化合物(III−a)及び(IV−a)の合成
4−[4−(ジブチルアミノ)フェニル]―1,2−ナフトキノン2.00g(5.54ミリモル)とp−エトキシベンズアルデヒド0.83g(5.54ミリモル)及び酢酸アンモニウム6.82g(88.4ミリモル)を酢酸59ミリリットルに溶解させ、80℃で110分間還流攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム水溶液で中和を行い、塩化メチレンを加えて有機物を抽出した。塩化メチレン層を水洗後、減圧乾固し、シリカゲルカラム(展開溶媒;ジクロロメタン/酢酸エチル容量比10/1)に付して分離精製した。
化合物(III−a)1.15g(収率42.3%)と、化合物(IV−a)0.75g(収率27.5%)を得た。
【0042】
〈化合物(III−a)〉
(1)融点:−
(2)1H−NMR(アセトン−d6):δ(ppm)1.00(6H,t)、1.40(4H,m)、1.47(3H,t)、1.66(4H,m)、3.35(4H,t)、4.12(2H,q)、6.79(2H,d)、7.03(2H,d)、7.39(2H,d)、7.46(1H,t)、7.64(1H,t)、7.65(1H,s)、8.13(1H,d)、8.27(2H,d)、8.62(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):−
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 80.67 7.16 6.57
計算値(%) 80.45 7.37 6.50
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
337nm、446nm
蛍光特性;λem:512nm
【0043】
〈化合物(IV−a)〉
(1)融点:−
(2)1H−NMR(アセトン−d6):δ(ppm)1.00(6H,t)、1.40(4H,m)、1.46(3H,m)、1.66(4H,m)、3.35(4H,t)、4.14(2H,q)、6.77(2H,d)、7.05(2H,d)、7.38(2H,d)、7.45(1H,t)、7.64(1H,t)、7.77(1H,s)、8.13(1H,d)、8.28(2H,d)、8.33(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):−
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 80.63 7.02 6.72
計算値(%) 80.45 7.37 6.50
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
351nm、437nm
蛍光特性;λem:540nm
【0044】
参考例2 化合物(III−b)及び(IV−b)の合成
4−[4−(ジブチルアミノ)フェニル]−1,2−ナフトキノン2.00g(5.54ミリモル)と3,4−ジフルオロベンズアルデヒド0.78g(5.54ミリモル)及び酢酸アンモニウム6.82g(88.4ミリモル)を酢酸59ミリリットルに溶解させ、80℃で2.5時間還流撹拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム水溶液で中和を行い、塩化メチレンを加えて有機物を抽出した。塩化メチレン層を水洗後,減圧乾固し,シリカゲルカラム(展開溶媒;ジクロロメタン/酢酸エチル容量比10/1)に付して分離精製した。
化合物(III−b)0.29g(収率10.8%)と、化合物(IV−b)0.19g(収率7.2%)を得た。
【0045】
〈化合物(III−b)〉
(1)融点:−
(2)1H−NMR(アセトン−d6):δ(ppm)1.00(6H,t)、1.43(4H,m)、1.66(4H,m)、3.36(4H,t)、6.77(2H,d)、7.32(1H,m)、7.37(2H,d)、7.49(1H,t)、7.65(1H,s)、7.67(1H,t)、8.08(1H,m)、8.16(2H,m)、8.60(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):−
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 76.89 6.37 5.91
計算値(%) 76.67 6.43 5.77
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
303nm、353nm
蛍光特性;λem:454nm
【0046】
〈化合物(IV−b)〉
(1)融点:−
(2)1H−NMR(アセトン−d6):δ(ppm)1.00(6H,t)、1.42(4H,m)、1.66(4H,m)、3.36(4H,m)、6.78(2H,d)、7.36(3H,d)、7.49(1H,t)、7.65(1H,t)、7.77(1H,s)、8.17(3H,m)、8.39(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr):−
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 77.01 6.24 5.83
計算値(%) 76.67 6.43 5.77
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
345nm(16000)、−
蛍光特性;λem:466nm
【0047】
参考例3 化合物(III−c)及び(IV−c)の合成
4−[4−(ジエチルアミノ)フェニル]−1,2−ナフトキノン3.0g(9.82ミリモル)と1−ピレンカルバルデヒド2.26g(9.82ミリモル)を酢酸150ミリリットルに溶解させ、これに酢酸アンモニウム15.14g(0.196モル)を加えて80℃で1.5時間加熱還流で反応させた。反応終了後、水を加え、さらにジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し、水洗したのち、濃縮し、残液をシリカゲルカラム(展開溶媒;キシレン/酢酸容量比20/1)に付して分離精製した。
化合物(III−c)である橙色結晶0.253g(収率4.9%)と、化合物(IV−c)である黄色結晶0.977g(収率19.2%)を得た。
化合物(III−c)及び化合物(IV−c)の分析結果を以下に示す。
【0048】
<化合物(III−c)>
(1)融点:187〜189℃
(2)1H-NMR(CDCl3 ):δ(ppm)1.27(6H,t)、3.48(4H,q)、6.85(2H,d)、7.46(2H,d)、7.52−7.55(1H,m)、7.72−7.76(1H,m)、7.80(1H,s)、8.09(1H,t)、8.13−8.20(3H,m)、8.26−8.39(4H、m)、8.84(1H,d)、8.98(1H,d)、10.00(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr);1522、1609cm-1
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 86.13 5.26 5.45
計測値(%) 86.02 5.46 5.42
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
278nm(36700)、404nm(41500)
蛍光特性;λem:518nm
【0049】
<化合物(IV−c)>
(1)融点:211〜223℃
(2)1H-NMR(CDCl3 ):δ(ppm)1.27(6H,t)、3.47(4H,q)、6.68(2H,d)、7.45(2H,d)、7.49−7.54(1H,m)、7.67−7.71(1H,m)、7.95(1H,s)、8.08(1H,t)、8.13−8.21(3H,m)、8.26−8.37(4H、m)、8.48(1H,d)、9.02(1H,d)、9.87(1H,d)
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr);1521、1609cm-1
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 86.59 5.37 5.52
計測値(%) 86.02 5.46 5.42
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
273nm(39200)、395nm(33300)
蛍光特性;λem:520nm
【0050】
参考例4 化合物(IV−d)の合成
参考例3において、1−ピレンカルバルデヒドの代わりに9−アントラアルデヒド(9.82ミリモル)を用いた以外は同様な操作を行い、化合物(IV−d)を得た。
化合物(IV−d)の分析結果を以下に示す。
(1)融点:178〜180℃
(2)1H-NMR(アセトン−d6 ):δ(ppm)1.23(6H,t)、3.50(4H)、6.90(2H,d)、7.42(2H,d)、7.57−7.64(5H,m)、7.69−7.73(1H,m)、7.89(1H,s)、8.13−8.18(3H,m)、8.22−8.26(2H、m)、8.32−8.34(1H,m)、8.91(1H,S)、
(3)赤外吸収スペクトル(IR;KBr);1521、1609cm-1
(4)元素分析
C H N
実測値(%) 85.34 5.73 5.69
計測値(%) 85.60 5.77 5.85
(5)光吸収及び蛍光特性(測定溶媒:1,4−ジオキサン)
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
333nm(12800)、350nm(12900)、
371nm(12800)、386nm(12800)
蛍光特性;λem:547nm
【0051】
なお、下記の化合物(III−e)
【化12】

の光吸収及び蛍光特性(測定溶媒;1,4−ジオキサン)を示す。
【0052】
<化合物(III-e)>
光吸収特性;λmax(εmax/dm3mol-1cm-1):
385nm(21800)
蛍光特性;λem:513nm
【0053】
実施例5 化合物(I−d)の合成
下記化合物(I−d)(9-(Cyclohexylmethyl-hexyl-amino)benzo[b]naphtho[1,2-d]furan-5,6-dione) を以下のようにして合成した。
【化13】

【0054】
1,2−ナフトキノン−4−スルホン酸ナトリウム塩(1.0g, 3.84×10-3モル)と3−(シクロヘキシルメチル−ヘキシル−アミノ)−フェノール(1.11g, 3.84×10-3モル) とCuCl2(0.52g,3.84×10-3モル) を酢酸15ミリリットルに溶解させ、40℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後、水を加え、さらにジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し、水洗したのち、濃縮し、残液をシリカゲルカラム(展開溶媒;ジクロロメタン/酢酸エチル=20/1)に付して分離精製し、化合物(I−d)の緑色粉末状結晶0.135g(収率8%) を得た。
化合物(I−d)(Mw=433.25)の分析結果を以下に示す。
(1)融点:−
(2)1H-NMR(アセトン−d6 ):δ(ppm)0.89−0.94(5H,m)、1.34−1.40(11H,m)、1.66−1.83(6H,m)、3.34(2H,d)、3.57(2H,t)、6.84(1H,d)、7.07(1H,dd)、7.55(1H,td)、7.78(1H,td)、8.04(1H,dd)、8.14(1H,d)、8.23(1H,d)
【0055】
実施例6 化合物(V−d)の合成
下記化合物(V−d)[一般式(V)で、R1=ヘキシル基、R2=シクロヘキシルメチル基、X=O、Y=O、Ar=ベンゼン環、Arの置換基=CN]を以下のようにして合成した。
【化14】

【0056】
前記化合物(I−d)(9-(Cyclohexylmethyl-hexyl-amino)benzo[b]naphtho[1,2-d]furan-5,6-dione) (0.135g,3.04×10-4モル) とp−シアノベンズアルデヒド(0.048g,3.66×10-4モル) を酢酸20ミリリットルに溶解させ、これに酢酸アンモニウム(0.375g,4.86×10-3モル) を加え90℃で10時間反応させた。反応終了後、水を加え、さらにジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し、水洗したのち、濃縮し、残液をシリカゲルカラム(展開溶媒;ジクロロメタン) に付して分離精製し、化合物(V−d)の黄色結晶0.04g(収率23.5%) を得た。
化合物(V−d)(Mw=533.31)の分析結果を以下に示す。
(1)融点:−
(2)1H-NMR(アセトン−d6 ):δ(ppm)0.89−0.96(5H,m)、1.29−1.48(11H,m)、1.61−1.89(6H,m)、3.36(2H,d)、3.54(2H,t)、7.01(1H,dd)、7.07(1H,d)、7.65−7.68(1H,m)、7.74−7.81(1H,m)、8.06−8.08(2H,m)、8.32(1H,d)、8.52−8.54(2H,m)、8.65(1H,d)、8.76(1H,d)
【0057】
参考例5
フェニルナフトオキサゾール蛍光性色素 [化合物1;一般式(III) でR1=R2=エチル基、Y= O, Ar= ベンゼン環, Arの置換基 =CN] 、 [化合物2;一般式(IV)でR1=R2=エチル基、Y= O, Ar= ベンゼン環, Arの置換基=CN] の合成
【化15】

【0058】
4-[4-(ジエチルアミノ) フェニル]-1,2-ナフトキノン(2.00 g,5.54ミリモル) と p-シアノベンズアルデヒド (0.73 g, 5.54ミリモル)及び酢酸アンモニウム (6.82 g, 88.4ミリモル) を酢酸59ミリリットルに溶解させ、80℃で110 分還流攪拌した。反応終了後、炭酸ナトリウム水溶液で中和を行い、塩化メチレンを加え有機物を抽出した。塩化メチレン層を水洗後、減圧乾固し、シリカゲルカラム(展開溶媒; ジクロロメタン :酢酸エチル= 10 :1) を展開溶媒として用いたカラムクロマトグラフィーより分離精製し、粉末状結晶の化合物1 (0.82g,収率35.7%) 及び化合物2(0.59g, 収率25.4%) を得た。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、分散染料、インクジェットプリント用色素、有機電解発光素子の発光材料などとして、あるいは包接錯体(クラスレート)形成能と蛍光性を有し、各種の有機低分子化合物(有機ゲスト分子)を包接させることにより、色素の固体光物性(色調と蛍光性)を大きく変化させうる有機蛍光性色素などとして機能し、各種用途に好適に用いられる新規な複素多環系化合物を提供することができ、該複素多環系化合物からなる色素、該複素多環系化合物を含む顔料又は染料は、種々の用途に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(V)で表される複素多環系化合物。
【化1】

[式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に環構造を形成していてもよい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR3 −(R3 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR4 −(R4 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。]
【請求項2】
下記一般式(VI)で表される複素多環系化合物。
【化2】

[式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に環構造を形成していてもよい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR3 −(R3 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR4 −(R4 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。]

【公開番号】特開2010−116401(P2010−116401A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287587(P2009−287587)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【分割の表示】特願2004−34963(P2004−34963)の分割
【原出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(803000012)株式会社テクノネットワーク四国 (8)
【Fターム(参考)】