説明

複素多環系化合物

【課題】長時間使用しても色変換性能が劣化せず、保管中色素が析出しない色変換材料組成物、それを用いた色変換膜、そのための新規複素多環系化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(VII)及び(VIII)の化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規複素多環系化合物に関するものであり、特に、長時間使用しても色変換性能が劣化せず、保管中に色素が析出し使用できなくなってしまうことがない色変換材料組成物及びそれを用いた色変換膜を実現する新規複素多環系化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、有機蛍光性色素は、染顔料としての利用に加え、各種表示機器における蛍光変換膜用として、さらには色素レーザ用、コピー防止用、太陽エネルギー変換用、グリーンハウスにおける蛍光フィルム用色素などとして、広い分野で用いられている。
このような用途に用いられる有機蛍光性色素においては、固体状態での蛍光波長の調整や発光強度の改善が強く望まれている。しかしながら、一般的に、有機蛍光性色素の固体状態における蛍光強度は、溶液状態における蛍光強度に比べて弱いことが知られている。この現象は、濃度消光で片付けられており、詳細はよく分かっていないのが実状である。これは、従来の有機蛍光性色素においては、結晶格子中での分子パッキング構造を様々に変化させて、固体状態における有機蛍光性色素の光吸収や蛍光性に及ぼす影響を調べることが難しかったためである。
このような点を解決するものとして、本発明者らは、先に固体状態で様々な有機低分子化合物(有機ゲスト分子)を包接させることによって、色素のもつ本来の色と蛍光発光性を大きく変化させることができる新規な包接錯体(クラスレート)形成能を有する蛍光性色素を創出した(例えば、非特許文献1〜5参照)。このようなクラスレート形成能を有する蛍光性色素を用いると、有機ゲスト分子を包接させることによって、分子レベルで色素分子の配向・配列を様々に変化させることができ、それによって色素の固体光物性(色調と蛍光性)を大きく変化させることができる。
したがって、このような特性を利用すれば、まだ十分に解明されていない固体状態での色素分子のパッキング構造と光吸収・蛍光発光性との相関性に関する基礎的知見を得ることができ、これによって、多様なニーズに合致した光物性をもつ蛍光性有機固体材料を創出することが可能となる。
【0003】
また、有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)は完全固体素子であり、軽量、薄型、低電圧駆動のディスプレイを作製できるため、現在各方面で盛んに研究されている。その中で有機EL素子をディスプレイにするための最大の技術的課題は、フルカラー化方法の開発である。このようなフルカラーディスプレイの作製のためには、青・緑・赤色の発光を微細に配列しなければならないが、現在その方法として、三色塗り分け法、カラーフィルター法、色変換法という三つの方法が考えられている。
これらのうち、色変換法は、三色塗り分け法に比べて大画面化が容易であり、またカラーフィルター法に比べて輝度の損失が少ないという利点があった、そのため、本発明者らは色変換法による有機EL素子のフルカラー化を検討してきた。
この色変換法を用いてフルカラーディスプレイを製造する場合、青色発光を緑色や赤色に変換するために用いる色変換膜を、微細にパターニングする必要がある。さらに色変換膜は蛍光色素と、それらを分散する樹脂から構成されるが、その膜を高精細にパターニングするには、この樹脂自体に微細加工性が必要となる。このような目的のために、例えば特許文献1には、ビニルピリジン誘導体やアミノスチレン誘導体などの塩基性樹脂を用いた色変換材料組成物が用いられ、特許文献2には、エチレン性不飽和カルボン酸共重合体を用いた色変換材料組成物が開示され、特許文献3には、エポキシ化合物と、アクリル酸又はメタアクリル酸との反応物を、多塩基酸カルボン酸又はその無水物とを反応させて得られた不飽和基含有化合物と、蛍光色素及び蛍光性顔料から選ばれる少なくとも1種の蛍光体を含有する色変換材料組成物に関する開示がされている。
しかしながら、これらの色変換材料組成物には、青色光を吸収する色素としてクマリン系色素を含有する色変換膜に有機ELの青色発光を照射し続けたとき、クマリン系色素が分解し、光源の青色光を十分に吸収できず透過してしまい色変換性能が劣化したり、樹脂組成物によっては、保管中に色素が析出し使用できなくなってしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−208944号公報
【特許文献2】特開平9−106888号公報
【特許文献3】特開2000−119645号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「Chem.Lett.」、第9〜10頁(1996年)
【非特許文献2】「Chem.Lett.」、第837〜838頁(1999年)
【非特許文献3】「Chem.Lett.」、第714〜715頁(2000年)
【非特許文献4】「Chem.Lett.」、第808〜809頁(2001年)
【非特許文献5】「J.Chem.Soc.,Perkin Trans.2,」、第700〜707頁、第708〜714頁(2002年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、前記の課題を解決するためなされたもので、一般的な有機色素や有機蛍光性色素として、あるいはクラスレート形成能と蛍光性を有し、各種の有機ゲスト分子を包接させることにより、色素の固体光物性(色調と蛍光性)を大きく変化させうる有機蛍光性色素などとして機能し、各種用途に好適に用いられる新規な複素多環系化合物及びそれを用いた色素、顔料又は染料を提供し、さらにその化合物を利用して、長時間使用しても色変換性能が劣化せず、保管中に色素が析出し使用できなくなってしまうことがない色変換材料組成物及びそれを用いた色変換膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、蛍光色素として下記一般式(VII) 及び(VIII)で表わされる特定構造を有する複素多環系化合物を用いることにより前記の目的を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、下記一般式(VII) 及び(VIII)のいずれかで表わされる複素多環系化合物を提供するものである。
【0008】
【化1】

【0009】
[式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に環構造を形成していてもよい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR3 −(R3 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR4 −(R4 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。]
【発明の効果】
【0010】
本発明は、各種用途に好適に用いられる新規な複素多環系化合物を提供することができ、該複素多環式化合物からなる色素、該複素多環系化合物を含む顔料又は染料は、種々の用途に有用であり特に、色変換材料組成物の材料として適している。
また、その色変換材料組成物から得られた色変換膜は、長時間使用しても色変換性能が劣化せず、保管中に色素が析出し使用できなくなってしまうことがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例及び比較例における色変換性能の評価で使用したカラー化有機EL素子の構成を示す図である。
【図2】実施例及び比較例における色変換性能の評価方法を説明する図である。
【図3】実施例及び比較例における色度保持率の評価方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の複素多環系化合物は、下記一般式(II)、(VII) 及び(VIII)のいずれかで表わされる構造を有する文献未載の新規な複素多環系化合物である。
【化2】

【0013】
一般式(II)、(VII) 及び(VIII)において、R1及びR2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に環構造を形成していてもよい。
前記アルキル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、シクペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、さらにはベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0014】
前記アリールアルキル基の例としては、ベンジル基、1−フェニルエチル基、2−フェニルエチル基、1−フェニルイソプロピル基、2−フェニルイソプロピル基、フェニル−t−ブチル基、α−ナフチルメチル基、1−α−ナフチルエチル基、2−α−ナフチルエチル基、1−α−ナフチルイソプロピル基、2−α−ナフチルイソプロピル基、β−ナフチルメチル基、1−β−ナフチルエチル基、2−β−ナフチルエチル基、1−β−ナフチルイソプロピル基、2−β−ナフチルイソプロピル基、1−ピロリルメチル基、2−(1−ピロリル)エチル基、p−メチルベンジル基、m−メチルベンジル基、o−メチルベンジル基、p−クロロベンジル基、m−クロロベンジル基、o−クロロベンジル基、p−ブロモベンジル基、m−ブロモベンジル基、o−ブロモベンジル基、p−ヨードベンジル基、m−ヨードベンジル基、o−ヨードベンジル基、p−ヒドロキシベンジル基、m−ヒドロキシベンジル基、o−ヒドロキシベンジル基、p−アミノベンジル基、m−アミノベンジル基、o−アミノベンジル基、p−ニトロベンジル基、m−ニトロベンジル基、o−ニトロベンジル基、p−シアノベンジル基、m−シアノベンジル基、o−シアノベンジル基、1−ヒドロキシ−2−フェニルイソプロピル基、1−クロロ−2−フェニルイソプロピル基等が挙げられる。
前記アリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ピレニル基などが挙げられる。
【0015】
前記ヘテロアリール基の例としては、1−アザーインドリジン−2−イル基、1−アザ−インドリジン−3−イル基、1−アザ−インドリジン−5−イル基、1−アザ−インドリジン−6−イル基、1−アザ−インドリジン−7−イル基、1−アザ−インドリジン−8−イル基、2−アザ−インドリジン−1−イル基、2−アザ−インドリジン−3−イル基、2−アザ−インドリジン−5−イル基、2−アザ−インドリジン−6−イル基、2−アザ−インドリジン−7−イル基、2−アザ−インドリジン−8−イル基、6−アザ−インドリジン−1−イル基、6−アザ−インドリジン−2−イル基、6−アザ−インドリジン−3−イル基、6−アザ−インドリジン−5−イル基、6−アザ−インドリジン−7−イル基、6−アザ−インドリジン−8−イル基、7−アザ−インドリジン−1−イル基、7−アザ−インドリジン−2−イル基、7−アザ−インドリジン−3−イル基、7−アザ−インドリジン−5−イル基、7−アザ−インドリジン−6−イル基、7−アザ−インドリジン−7−イル基、7−アザ−インドリジン−8−イル基、8−アザ−インドリジン−1−イル基、8−アザ−インドリジン−2−イル基、8−アザ−イシドリジン−3 −イル基、8−アザ−インドリジン−5−イル基、8−アザ−インドリジン−6−イル基、8−アザ−インドリジン−7−イル基、1−インドリジニル基、2−インドリジニル基、3−インドリジニル基、5−インドリジニル基、6−インドリジニル基、7−インドリジニル基、8−インドリジニル基、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、2−キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、9−アクリジニル基、1,7−フェナンスロリン−2−イル基、1,7−フェナンスロリン−3−イル基、1,7−フェナンスロリン−4−イル基、1,7−フェナンスロリン−5−イル基、1,7−フェナンスロリン−6−イル基、1,7−フェナンスロリン−8−イル基、1,7−フェナンスロリン−9−イル基、1,7−フェナンスロリン−10−イル基、1,8−フェナンスロリン−2−イル基、1,8−フェナンスロリン−3−イル基、1,8−フェナンスロリン−4−イル基、1,8−フェナンスロリン−5−イル基、1,8−フェナンスロリン−6−イル基、1,8−フェナンスロリン−7−イル基、1,8−フェナンスロリン−9−イル基、1,8−フェナンスロリン−10−イル基、1,9−フェナンスロリン−2−イル基、1,9−フェナンスロリン−3−イル基、1,9−フェナンスロリン−4−イル基、1,9−フェナンスロリン−5−イル基、1,9−フェナンスロリン−6−イル基、1,9−フェナンスロリン−7−イル基、1,9−フェナンスロリン−8−イル基、1,9−フェナンスロリン−10−イル基、1,10−フェナンスロリン−2−イル基、1,10−フェナンスロリン−3−イル基、1,10−フェナンスロリン−4−イル基、1,10−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−1−イル基、2,9−フェナンスロリン−3−イル基、2,9−フェナンスロリン−4−イル基、2,9−フェナンスロリン−5−イル基、2,9−フェナンスロリン−6−イル基、2,9−フェナンスロリン−7−イル基、2,9−フェナンスロリン−8−イル基、2,9−フェナンスロリン−10−イル基、2,8−フェナンスロリン−1−イル基、2,8−フェナンスロリン−3−イル基、2,8−フェナンスロリン−4−イル基、2,8−フェナンスロリン−5−イル基、2,8−フェナンスロリン−6−イル基、2,8−フェナンスロリン−7−イル基、2,8−フェナンスロリン−9−イル基、2,8−フェナンスロリン−10−イル基、2,7−フェナンスロリン−1−イル基、2,7−フェナンスロリン−3−イル基、2,7−フェナンスロリン−4−イル基、2,7−フェナンスロリン−5−イル基、2,7−フェナンスロリン−6−イル基、2,7−フェナンスロリン−8−イル基、2,7−フェナンスロリン−9−イル基、2,7−フェナンスロリン−10−イル基、1−フェナジニル基、2−フェナジニル基、1−フェノチアジニル基、2−フェノチアジニル基、3−フェノチアジニル基、4−フェノチアジニル基、10−フェノチアジニル基、1−フェノキサジニル基、2−フェノキサジニル基、3−フェノキサジニル基、4−フェノキサジニル基、10−フェノキサジニル基、2−オキサゾリル基、4−オキサゾリル基、5−オキサゾリル基、2−オキサジアゾリル基、5−オキサジアゾリル基、3−フラザニル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−メチルピロール−1−イル基、2−メチルピロール−3−イル基、2−メチルピロール−4−イル基、2−メチルピロール−5−イル基、3−メチルピロール−1−イル基、3−メチルピロール−2−イル基、3−メチルピロール−4−イル基、3−メチルピロール−5−イル基、2−t−ブチルピロール−4−イル基、3−(2−フェニルプロピル)ピロール−1−イル基、2−メチル−1−インドリル基、4−メチル−1−インドリル基、2−メチル−3−インドリル基、4−メチル−3−インドリル基、2−t−ブチル1−インドリル基、4−t−ブチル1−インドリル基、2−t−ブチル3−インドリル基、4−t−ブチル3−インドリル基等が挙げられる。
【0016】
また、これら各基は、適当な置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシル基、ハロゲン原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、エステル基、アミド基、スルホキシル基、スルホンアミド基、ニトロ基、アリール基、ヘテロアリール基などが挙げられる。
このアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基の例としては、前記と同様のものが挙げられ、ハロゲン原子の例としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられ、アルコキシル基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、その例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、各種ブトキシ基、各種ペントキシ基、各種ヘキソキシ基、各種オクトキシ基、各種デシロキシ基、シクロペンチロキシ基、シクロヘキシロキシ基、ベンジロキシ基、フェネチルオキシ基などが挙げられ、スルホンアミド基は、置換スルホンアミド又は無置換スルホンアミドのいずれでもあってもよく、アミド基は、置換アミド又は無置換アミドのいずれであってもよい。これらのアルコキシル基、スルホンアミド基、アミド基の置換基としては、前記R1とR2と同様のものが挙げられる。さらに、アルコキシカルボニル基におけるアルコキシル基の例としては、前記と同様のものが挙げられる。
【0017】
1とR2がたがいに結合して、窒素原子と一緒になって形成してなる環構造としては、例えば、1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、モルホリノ基などが挙げられる。
また、R1とR2が、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に形成してなる環構造としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【化3】

【0018】
一般式(II)、(VII) 及び(VIII)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR3 −(R3 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
前記R3 の示すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、それぞれ、前記R1及びR2で挙げたものと同様の例が挙げられ、それらの置換基も同様のものが挙げられる。
一般式(VII) 及び(VIII)において、Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR4 −(R4 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
前記R4 の示すアルキル基、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、それぞれ、前記R1及びR2で挙げたものと同様の例が挙げられ、それらの置換基も同様のものが挙げられる。
一般式(VII) 及び(VIII)において、Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、アリール基及びヘテロアリール基の例としては、それぞれ、前記R1及びR2で挙げたものと同様の例が挙げられ、それらの置換基も同様のものが挙げられる。
【0019】
前記一般式(II)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の化合物などを挙げるとができる。
【化4】

【0020】
本発明の一般式(II)で表される化合物は色素であって、それを含有する分散染料、インクジェットプリント用色素、電子写真トナー、熱転写色素、光変調素子など非線形光学材料、有機太陽電池など光電変換色素、高密度光記録型色素として好適に利用することができる。さらに、下記本発明の一般式(VII) 及び(VIII)の製造中間体としても用いることができる。
【0021】
前記一般式(VII)及び(VIII)で表される化合物の具体例としては、例えば、下記の化合物などを挙げるとができる。
【化5】

【0022】
本発明の一般式(VII) 及び(VIII)で表される化合物は、有機蛍光性色素であって、それを含有する分散染料、インクジェットプリント用色素、電子写真トナー、熱転写色素、有機電界発光素子などの発光材料、光変調素子など非線形光学材料、有機太陽電池など光電変換色素、有機EL・色素レーザーなど蛍光性色素、農業用フィルムなどの調光・波長変換色素、高密度光記録型色素、分子認識用蛍光色素などのレセプターとして好適に利用することができる。さらに、クラスレート形成能を有するものもあり、各種の有機ゲスト分子を包接させることにより、色調及び蛍光発光性を変化させ、より一層機能を高めた包接錯体からなる固体発光性の有機蛍光性色素に誘導することもできる。
本発明の一般式(VII) 及び(VIII)で表される化合物やその包接錯体は、有機蛍光性色素として、様々な用途、例えば各種表示機器における蛍光変換膜用、色素レーザ用、調光用、エネルギー変換用、高密度光記録用、表示用、分子認識のための蛍光センサ用などに用いることができる。
前記用途の中で、各種表示機器における蛍光変換膜は、例えばPDP(プラズマディスプレイ)、ELD(エレクトロルミネッセンスディスプレイ)、LED(発光ダイオード)、VFD(蛍光表示管)などの電子ディスプレイデバイスに適用することができる。
【0023】
次に、本発明の複素多環式化合物の製造方法について説明する。
本発明の一般式(VII)及び(VIII)の化合物の製造方法としては、例えば以下に示す反応式によって製造することができる。
【化6】

【0024】
以下、本発明の色変換材料組成物について説明する。
本発明の色変換材料組成物は、(A)前記一般式(VII) 及び(VIII)で表わされる複素多環系化合物のうちの少なくとも一種類からなる蛍光色素と、(B)バインダー材料を含むものである。
前記(A)成分の濃度は、特に制限はないが、色変換材料組成物の固形分の全重量に対し、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜5重量%である。濃度が0.1重量%以上であれは光源から光を充分に吸収でき色変換でき、10重量%以下であれば濃度消光により色変換効率が低下したり、高精細なパターニングができなくなることがない。
前記(B)成分のバインダー材料が光反応性樹脂であるとさらに好ましい。ここで、光反応性樹脂とは、光により硬化反応を示す樹脂のことをいい、エポキシアクリレート,ウレタンアクリレート,ポリエーテルアクリレート等の重合性オリゴマー及び/又はモノマーを配合した樹脂やアリルスルホニル塩とエポキシ化合物を配合した樹脂等がある。
【0025】
また、前記(B)成分のバインダー材料は、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂であると好ましい。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられ、特にエポキシ樹脂、ウレタン樹脂が透明性、色素の分散性が高く好ましい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、特に(メタ)アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂が透明性、色素の分散性が高く好ましい。
本発明の色変換材料組成物は、さらにローダミンB、ローダミン6Gなどのローダミン系の蛍光色素を含んでいると好ましい。
また、本発明で使用する(B)バインダー材料は、(C)メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体と、(D)光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーとを含むと好ましい。
【0026】
前記(C)メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体は、以下に示す構造で表されるものである。
【化7】

【0027】
Rは、置換もしくは無置換の炭素数1〜10のアルキル基,置換もしくは無置換の炭素数6〜20のアリール基であり、例えば、ベンジル基、メチル基、エチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ヒドキシルエチル基等が挙げられ、Rとしては、溶解性、現像性及び膜質のバランスが取れていることから、メチル基、ベンジル基が好ましい。m及びnは、それぞれ1以上の整数である。 この共重合体の分子量としては、Mw(重量平均分子量)=5000〜10万が好ましく,より好ましくは1万〜5万である。Mwが5,000以上であれば色変換膜の強度が低下することがなく、10万以下であれば溶液粘度が過大になることがなく均一な色変換膜が形成される。
共重合比qは、q=m/(m+n)=0.5〜0.95が好ましく、より好ましくは0.7〜0.9である。共重合比が0.5以上であれは、現像時に現像液で膜が膨潤せずパターニングの精度が低下することがなく、0.95以下であれば現像液への溶解性が小さくなりすぎず現像できない場合がない。
【0028】
前記(D)光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーとしては、水酸基を有するモノマーとして2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記(メタ)アクリレートの例として、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート及びグリセロール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0029】
本発明において、(D)成分のモノマー及び/又はオリゴマーは、1種又は2種以上併用して使用することができる。これらのモノマーやオリゴマーは、本発明の色変換組成物組成物及び色変換膜の性質を損なわない範囲で使用でき、通常は、(C)メタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体100重量部に対し、10〜200重量部である。(D)成分の量が、200重量部以下であれば、プレキュア後のタック性に問題が生じることがない。
【0030】
本発明の色変換材料組成物は、(A)及び(B)成分、もしくは(A)〜(D)成分に加え、さらに(E)エポキシ基を有する化合物を含むことが好ましく、このような化合物としては、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等を挙げることができる。これらの化合物を色変換材組成物に添加することで、色変換膜にした場合の膜強度が向上する。また、(D)成分の光重合の後に熱を加えることで、光架橋物と(E)エポキシ基を有する化合物がさらに架橋し、膜の架橋密度を上げることができる。
(E)エポキシ基を有する化合物の含有量は、色変換材料組成物の全量に対し、好ましくは0.1〜15重量%、より好ましくは0.5〜7重量%である。15重量%以下であれば、色変換材料組成物の保存中にエポキシ基を有する化合物が重合せず溶液粘度が変動することがなく、0.1重量%以上であれば十分な効果が得られる。
【0031】
本発明の色変換材料組成物には、必要に応じ光重合開始剤又は増感剤を添加してもよく、光重合開始剤や増感剤は、(D)成分の光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマーの光硬化反応に用いられるだけでなく、必要に応じて配合される他の光重合性化合物の重合開始剤としても用いられる。この光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、イオウ化合物、アントラキノン類、有機過酸化物及びチオール類等が好適に使用される。これらを具体的に例示すると、アセトフェノン類としてはアセトフェノン、2、2−ジエトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−t−ブチルアセトフェノン等であり、ベンゾフェノン類としてはベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p、p’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン等であり、ベンゾインエーテル類としてはベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等であり、イオウ化合物としてはベンジルメチルケタール、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2、4−ジエチルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2−イソプロピルチオキサンソン等であり、アントラキノン類としては2−エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1、2−ベンズアントラキノン、2、3−ジフェニルアントラキノン等であり、有機過酸化物としては、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキサイド等であり、チオール類としては2−メルカプトベンゾオキサゾールや2−メルカプトベンゾチアゾール等が挙げられる。これらの光重合開始剤や増感剤は、その1種のみを単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0032】
また、それ自体では光重合開始剤や増感剤として作用しないが、上記の化合物と組み合わせて使用すると光重合開始剤や増感剤の能力を増大させ得る化合物を添加することもできる。そのような化合物としては、例えば、ベンゾフェノンと組み合わせて使用すると効果のあるトリエタノールアミンなどの第3級アミンを挙げることができる。
これらの光重合開始剤や増感剤の好ましい使用量は、(D)成分100重量部に対して、0〜10重量部である。使用量が10重量部以下であれば、光が内部に達し易く、未硬化部が生じず、基板と樹脂との密着性が良好で、色素の蛍光性が低下することがない。
【0033】
また、本発明の色変換材料組成物には、蛍光色素の蛍光収率を向上させるため、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂のオリゴマー又はポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルヒドリン、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂又はベンゾグアナミン樹脂等の透明樹脂を添加することができ、特にメラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。これらの樹脂は、色変換材料組成物及び色変換膜の性質を損なわない範囲で使用でき、好ましい使用量は、(C)成分のメタクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体100重量部に対して、200重量部以下であり、さらに好ましくは100重量部以下である。使用量が200重量部以下であればプレキュア後のタック性に問題を生じるおそれがない。
【0034】
本発明の色変換材料組成物には、さらに必要に応じて硬化促進剤、熱重合禁止剤、可塑剤、充填剤、溶剤、消泡剤、レベリング剤などの添加剤を配合することができる。硬化促進剤としては、例えば、過安息香酸誘導体、過酢酸、ベンゾフェノン類等があり、熱重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコール、フェノチアジン等があり、可塑剤としては、例えば、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、トリクレジル等があり、充填剤としては、例えば、グラスファイバー、シリカ、マイカ、アルミナ等があり、消泡剤やレベリング剤として、例えば、シリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物等が好適に使用される。
【0035】
以下、本発明の色変換膜について説明する。
本発明の色変換膜は、前記本発明の色変換材料組成物からなるものであり、前記色変換材料組成物を用いてこれをフィルム化したり、あるいは基板上に塗布等の手段を用いて形成すればよく、特に、フォトリソグラフィー法を用いると所望のパターンを有する色変換膜を精度よく形成できる。
また、色変換膜の製造方法に応じて、色変換材料組成物に用いる各種成分を溶剤に溶解させる際の溶剤としては、ケトン類、エステル類又はラクトン類等が好ましい。ケトン類としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はシクロヘキサノン等が挙げられ、エステル類としては2−アセトキシー1−エトキシプロパン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ又はセロソルブアセテート等が挙げられ、ラクトン類としてはγ−ブチロラクトン等が挙げられる。
【0036】
本発明の色変換膜をフォトリソグラフィー法で製造するには、通常、まず前記感光性の色変換材料組成物を溶液にして基板表面に塗布し、ついでプレキュアにより溶媒を乾燥(プリベーク)させた後、このようにして得られた皮膜の上にフォトマスクをあて、活性光線を照射して露光部を硬化させ、さらに弱アルカリ水溶液を用いて未露光部を溶出させる現像を行なってパターンを形成し、さらに後乾燥としてポストベークを行なう。
色変換材料組成物の溶液を塗布する基板としては、400〜700nmの可視領域の光の透過率が50%以上であって、平滑な基板が好ましい。具体的にはガラス基板やポリマー板が使用される。ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス又は石英等が好適に使用できる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド又はポリスルフォン等が挙げられる。本発明の色変換料組成物の溶液を基板に塗布する方法としては、公知の溶液浸浸法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機やスピナー機を用いる方法など何れの方法も使用できる。これらの方法により、所望の厚さに塗布した後、溶剤を除去する(プリベーク)ことにより、被膜が形成される。
【0037】
このプリベークはオーブン、ホットプレート等により加熱することにより行なわれる。プリベークにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば、80〜150℃の温度で1〜30分間行なわれる。また、プリベーク後に行なわれる露光は、露光機により行なわれ、フォトマスクを介して露光することによりパターンに対応した部分のレジストのみを感光させる。露光機及び露光照射条件は適宜選択することができ、照射する光としては、例えば、可視光線、紫外線、X線及び電子線などが使用できる。照射量は、特に限定されないが、例えば、1〜3000mJ/cm2の範囲で選択される。
露光後のアルカリ現像は、露光されない部分のレジストを除去する目的で行なわれ、この現像によって所望のパターンが形成される。このアルカリ現像に適した現像液としては、例えば、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩の水溶液などが使用できる。特に、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどの炭酸塩を1〜3重量%含有する弱アルカリ水溶液を用いて10〜50℃、好ましくは20〜40℃の温度で現像するのがよく、市販の現像機や超音波洗浄機などを用いて微細な画像を精密に形成することができる。
【0038】
このようにして現像した後、80〜220℃、10〜120分の条件で熱処理(ポストベーク)が行なわれる。このポストベークは、パターニングされた色変換膜と基板との密着性を高めるために行なわれる。これはプリベークと同様に、オーブン、ホットプレート等により加熱することにより行なわれる。
なお、バインダー材料が熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂である場合には露光工程は不要である。熱硬化性樹脂はプリベーク後に熱処理(ポストベーク)を行うことにより膜が硬化する。
本発明の色変換膜の膜厚は、入射光を所望の波長に変換するのに必要な膜厚を適宜選ぶ必要があり、1〜100μmの範囲が好ましく、より好ましくは1〜20μmの膜厚である。
また、本発明の色変換膜は、所望の波長を得るためにカラーフィルタを併設し、色純度を調整することができる。カラーフィルタとしては、例えば、ペリレン系顔料、レーキ顔料、アゾ系顔料、キナクリドン系顔料、アントラキノン系顔料、アントラセン系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、フタロシアニン系顔料、トリフェニルメタン系塩基性染料、インダンスロン系顔料、インドフェノール系顔料、シアニン系顔料、ジオキサジン系顔料等を単独及びこれらの2種以上の混合物からなる色素、又は色素をバインダー樹脂中に溶解又は分散させた固体状態のものを好適に使用することができる。
【0039】
本発明の色変換膜を、実際に用いる場合の構成の例を以下に示す。
(1)光源/色変換膜
(2)光源/基板/色変換膜
(3)光源/色変換膜/基板
(4)光源/透光性基板/色変換膜/基板
(5)光源/色変換膜/カラーフィルタ
(6)光源/基板/色変換膜/カラーフィルタ
(7)光源/色変換膜/基板/カラーフィルタ
(8)光源/基板/色変換膜/基板/カラーフィルタ
(9)光源/基板/色変換膜/カラーフィルタ/基板
(10)光源/色変換膜/カラーフィルタ/基板
等である。
以上の構成を用いる際に、各構成要素は順次積層しても良いし、また貼り合わせを行っても良い。この色変換膜の積層の手順は特に制限はなく、どちらからでもよく、左から右に作製しても良いし、右から左に作製しても構わない。
【0040】
本発明の色変換膜は、光源の光を吸収し、より長波長の光を発光すると好ましく、前記光源としては、有機EL素子、LED(発光ダイオード)、冷陰極管、無機EL素子、蛍光灯又は白熱灯等が用いられ、色素を劣化させる紫外光の発生が少ない有機EL素子やLED素子が特に好ましい。
【実施例】
【0041】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら制限されるものではない。
また、以下の実施例において行う色変換膜の各種評価は、以下のようにして行った。
(1)色変換性能の評価
色変換膜と有機EL素子を組み合わせてカラー化有機EL素子を構成する場合の具体例を図1に示す。同図に示すように、カラー化有機EL素子は、光取り出し側から見て、ガラス基板1、色変換膜2、陽極3、有機EL発光層4、陰極5からなる。そして、有機EL発光層4は、水分及び酸素の存在下で劣化しやすいため、色変換膜を含む素子部分全てを覆うように陰極5側から対向ガラス基板を用いて封止されている。
このような構成のカラー化有機EL素子では、個々の素子の性能にばらつきがあること及び励起光である有機EL発光自体が半減寿命を有するため、色変換膜自体の蛍光性能、耐久性のみを区別して評価することが困難である。
そこで、図2に示すように、透明ガラス板に色変換膜を形成した試験片を作製し、別途作製した440〜470nmの範囲で色変換膜に用いた色素に合わせて適宜選択したピーク波長を有する青色有機EL素子を重ね合せて青色光を照射して色変換膜及びカラーフィルタを通して得られる透過光のスペクトルを、分光輝度計(ミノルタ製CS−1000)を用いて2度視野で測定した。
そして、青色有機EL素子の発光スペクトルと比較し、下記のようにして色変換膜の相対蛍光強度を定義した。
色変換効率=(色変換膜及びカラーフィルタを通して得られる透過光の輝度)/(EL素子の輝度)
また、測定したスペクトルから色座標を求めた。
このようにして同一の有機EL素子を用いることにより、色変換膜の性能を互いに比較できる。
【0042】
(2)色変換膜への励起光連続照射試験(色素保持率の評価)
有機EL素子は発光強度の半減寿命を有するため一定強度を有する励起光源として波長470nmにピークを有する青色EL素子を用い、図3に示すように、窒素置換可能なチャンバー内に励起光源と、光源に接するように色変換膜((1)で作製した試験片)を配置し、これらを乾燥窒素雰囲気下に置き、青色EL素子を400nitで1000時間連続点灯した。
青色光照射前後の試験片の色素の吸光度(比較例の場合はクマリン6に由来する吸光度)を比較することにより色素保持率を算出した。
【0043】
合成実施例1
(1)4-[4-(ジブチルアミノ)-2-ヒドロキシフェニル]-1,2-ナフトキノン(中間体1)の合成
1,2-ナフトキノン-4-スルホン酸ナトリウム塩(1.0g、3.84mmol)とN,N-ジブチル-3-アミノフェノール(1.28g、4.01mmol) とNiCl2(0.5g、3.84mmol) をジメチルホルムアミド(DMF)45ml に溶解させ、50℃で3時間加熱撹拌した。反応終了後300ml のイオン交換水に注ぎ、析出物を濾取した。濾物から生成物を塩化メチレンで抽出し、減圧濃縮し、残液をシリカゲルカラム(展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル=20/1)に付して分離精製した。4-[4-( ジブチルアミノ)-2-ヒドロキシフェニル]-1,2- ナフトキノン(中間体1)である青色粉末状結晶0.77g(収率53.1%) を得た。
(2)化合物6及び化合物7の合成
中間体1(2.07g、5.49mmol) と無水酢酸銅(995mg、5.49mmol) をジメチルスルフォキシド(DMSO)60mlに溶解させ、100℃で11時間加熱攪拌した。反応終了後、反応物を蒸留水400ml に注ぎ、析出物を濾取し、シリカゲルカラム(展開溶媒:ジクロロメタン/酢酸エチル=10/1)に付して分離精製した。化合物6の紫色粉末結晶0.22g (収率10.4%)と化合物7の青色粉末状結晶1.27g (収率61.7%)を得た。
【0044】
【化8】

【0045】
合成実施例2
化合物8 [一般式(VII)でR1=R2=n−ブチル基、X= O, Y= O, Ar= アントラセン環] の合成
化合物7(1.5g 、4.00mmol) と9-アントラアルデヒド(0.98g、4.79mmol) を酢酸120ml に溶解させ、これに酢酸アンモニウム(4.93g、64.0mmol) を加え105℃で15時間反応させた。反応終了後、水を加え、さらにジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し、水洗したのち、減圧濃縮し、残液をシリカゲルカラム( 展開溶媒:ジクロロメタン) に付して分離精製した。化合物8の赤色結晶0.91g (収率46.7%)を得た。
【0046】
【化9】

【0047】
合成実施例3
化合物9 [一般式(VII)でR1=R2=n−ブチル基、X= O, Y= O, Ar= ピレン環] 及び化合物10 [一般式(VIII)でR1=R2=n−ブチル基、X= O, Y= O, Ar= ピレン環] の合成
化合物7(1.5g 、4.00mmol) と1-ピレンカルバルデヒド(1.10g、4.79mmol) を酢酸150ml に溶解させ、これに酢酸アンモニウム(4.93g、63.9mmol) を加え100 ℃で15時間反応させた。反応終了後、水を加え、さらにジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し水洗したのち、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(展開溶媒:キシレン/酢酸=20/1)に付して分離精製した。ナフトオキサゾール誘導体である化合物9の橙色結晶を1.12g (収率49.4%)と化合物10の黄色結晶0.82g (収率36.2%)を得た。
【0048】
【化10】

【0049】
合成実施例4
化合物11 [一般式(VII)でR1=R2=n−ブチル基、X= O, Y= O, Ar= ベンゼン環,Arの置換基= CN] 、化合物12 [一般式(VIII)でR1=R2=n−ブチル基、X= O, Y= O, Ar= ベンゼン環,Arの置換基= CN] 及び化合物13 [一般式(VII)でR1=R2=n−ブチル基、X= O, Y= NH, Ar= ベンゼン環,Arの置換基= CN] の合成
化合物7(0.176g 、0.47mmol) とp-シアノベンズアルデヒド(0.61g、0.47mmol) を酢酸8mlに溶解させ、これに酢酸アンモニウム(0.578g 、7.5mmol)を加え80℃で7時間反応させた。反応終了後、反応物を減圧濃縮し、炭酸ナトリウム水溶液で中和を行い、ジクロロメタンで生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し水洗したのち、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(展開溶媒:ジクロロメタン) に付して分離し、化合物13の橙色結晶を0.074g(収率32% )と化合物11及び化合物12の混合物を得た。化合物11及び12の混合物をシリカゲルカラム(展開溶媒:キシレン/酢酸エチル=30/1)に付して分離精製した。化合物11の橙色結晶0.02g (収率9%)と化合物12の黄色結晶0.019g(収率8%)を得た。
【0050】
【化11】

【0051】
合成実施例5
化合物14 [一般式(VII)でR1=R2=n−ブチル基、X= O, Y= O, Ar= ベンゼン環,Arの置換基= OC25]の合成
化合物7(2.0g 、5.3mmol)とp-エトキシベンズアルデヒド(0.96g、6.39mmol) を酢酸60mlに溶解させ、これに酢酸アンモニウム(6.56g、84.3mmol) を加え100 ℃で24時間反応させた。反応終了後、反応物を減圧濃縮し、炭酸ナトリウム水溶液で中和を行い、さらにジクロロメタンを加えて生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し水洗した後、減圧濃縮してシリカゲルカラム(展開溶媒:ジクロロメタン) に付して分離精製した。化合物14の黄色結晶0.978g(収率36.5%)を得た。
【0052】
【化12】

【0053】
合成実施例6
化合物15 [一般式(VIII)でR1=R2=n−ブチル基、X= O, Y= O, Ar= ベンゼン環,Arの置換基= F] の合成
化合物7(1.50g、4.00mmol) と4-フルオロベンズアルデヒド(0.56g、4.51mmol) を酢酸70mlに溶解させ、これに酢酸アンモニウム(4.93g、63.9mmol) を加え90℃で3時間反応させた。反応終了後、反応物を減圧濃縮し、炭酸ナトリウム水溶液で中和を行い、ジクロロメタンで生成物を抽出した。ジクロロメタン層を分離し水洗したのち、減圧濃縮し、シリカゲルカラム(展開溶媒:キシレン/酢酸=20/1)に付して分離精製した。化合物15を0.22g (収率11.8%)得た。
【0054】
【化13】

【0055】
実施例1〜6
下記表1〜2に示す(A)蛍光色素、(B)バインダー材料((C)バインダー樹脂,(D)光重合可能なエチレン性不飽和基を有するモノマー及び/又はオリゴマー)、(E)エポキシ基を有する化合物及びその他成分(溶剤も含む)を用いて、色変換材料組成物を調製した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
実施例1〜6については、得られた色変換膜用樹脂組成物を用いて、スピンコーター法により、 2.5cm×5cmのガラス基板上に製膜した。製膜条件としては、スピンコーターの回転数を1000rpm とし、回転時間を10秒間として製膜し、 120℃、2分の乾燥処理をした。
その後、実施例1〜5については 300mJ/cm2の紫外光を照射したのちに 200℃、60分の熱処理を施し、膜厚10μm 以下の色変換膜を得た。実施例6については 200℃、60分の熱処理のみを施した。
得られた色変換膜について、上記(1)色変換性能の評価及び(2)色変換膜への励起光連続照射試験(色素保持率の評価)の方法に従い、470nmにピークを持つ青色EL素子を用いて初期色変換効率及び色度座標を求め、さらに、青色EL素子を400nitで1000時間照射した後の色度及び色素保持率を測定した。それらの結果を表3に示す。
また、実施例1〜6の色変換材料組成物は冷蔵庫5℃にて安定に保管できた。
【0059】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、分散染料、インクジェットプリント用色素、有機電解発光素子の発光材料などとして、あるいは包接錯体(クラスレート)形成能と蛍光性を有し、各種の有機低分子化合物(有機ゲスト分子)を包接させることにより、色素の固体光物性(色調と蛍光性)を大きく変化させうる有機蛍光性色素などとして機能し、各種用途に好適に用いられる新規な複素多環系化合物を提供することができ、該複素多環式化合物からなる色素、該複素多環系化合物を含む顔料又は染料は、種々の用途に有用であり特に、色変換材料組成物の材料として適している。
また、その色変換材料組成物から得られた色変換膜は、長時間使用しても色変換性能が劣化せず、保管中に色素が析出し使用できなくなってしまうことがなく、その色変換膜は、有機エレクトロルミネッセンス素子やLED素子等をフルカラー化する色変換膜として最適である。
【符号の説明】
【0061】
1はガラス基板、2は色変換膜,3は陽極,4は有機EL発光層、5は陰極である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(VII)で表される複素多環系化合物。
【化1】

[式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に環構造を形成していてもよい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR3 −(R3 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR4 −(R4 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。]
【請求項2】
下記一般式(VIII)で表される複素多環系化合物。
【化2】

[式中、R1 及びR2 は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数7〜30のアリールアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示し、それらは互いに結合して環構造を形成していてもよく、窒素原子が結合しているベンゼン環と共に環構造を形成していてもよい。
Xは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR3 −(R3 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Yは、酸素原子、硫黄原子、−NH−又は−NR4 −(R4 は、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。)を示す。
Arは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20のアリール基又は置換基を有していてもよい炭素数5〜20のヘテロアリール基を示す。]

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−143904(P2010−143904A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−287588(P2009−287588)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【分割の表示】特願2005−504979(P2005−504979)の分割
【原出願日】平成16年2月12日(2004.2.12)
【出願人】(803000012)株式会社テクノネットワーク四国 (8)
【Fターム(参考)】