説明

複素環式化合物及びそれを有効成分とする抗腫瘍剤

一般式(I)


[式中、Xは窒素原子又はCH、Rはハロゲン原子又は水酸基、Rは水素原子、水酸基又はアミノ、Rはモルホリノ(1〜2個のC−Cアルキルで置換されていてもよい)、ピロリジニル(ヒドロキシC−Cアルキルで置換されていてもよい)、NR[RはC−Cアルキル、Rはピペリジニル(C−Cアルキルで置換されていてもよい)]、R、Rは水素原子又はC−Cアルキルを表す。ただし、Rが水酸基の場合は、Rは水素原子、Rはピロリジニル(ヒドロキシC−Cアルキルで置換されていてもよい)を表す。]で示される複素環式化合物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は一般式(I)

[式中、Xは窒素原子又はCH、Rはハロゲン原子又は水酸基、Rは水素原子、水酸基又はアミノ、Rはモルホリノ(1〜2個のC−Cアルキルで置換されていてもよい)、ピロリジニル(ヒドロキシC−Cアルキルで置換されていてもよい)、NR[RはC−Cアルキル、Rはピペリジニル(C−Cアルキルで置換されていてもよい)]、R、Rは水素原子又はC−Cアルキルを表す。ただし、Rが水酸基の場合は、Rは水素原子、Rはピロリジニル(ヒドロキシC−Cアルキルで置換されていてもよい)を表す。]で示される複素環式化合物又はその薬学的に許容される塩、並びにその複素環式化合物を有効成分とする抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
s−トリアジン[1,3,5−トリアジン]誘導体、ピリミジン誘導体は、従来、合成樹脂、合成繊維、染料又は農薬の各分野で研究され、数多くの化合物が合成されている。又、医薬の分野では抗腫瘍、抗炎症、鎮痛、鎮痙等の各領域で研究され、特に抗腫瘍剤トリエチレンメラミン(Triethylenemelamine:TEM)のアナログとして開発されたヘキサメチルメラミン(Hexamethylmelamine:HMM)が良く知られている(例えば、B.L.Johnson et al.Cancer,42:2157−2161(1978)参照)。
TEMはアルキル化剤として公知であり、殺細胞作用に基づく抗腫瘍作用を持つs−トリアジン誘導体である。又、HMMは既に欧州において卵巣癌、肺小細胞癌に対する適応を持つ薬剤として市販されており、その固形癌に対する作用が注目されている。
更に、s−トリアジン誘導体の中には、殺細胞作用と選択的アロマテース阻害作用を併せ持つイミダゾリル−s−トリアジン誘導体があり、エストロジェン依存性疾患(子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症、良性乳房症、子宮内膜癌、乳癌等)の治療剤として提案されている(例えば、PCT国際公開公報WO93/17009参照)。
又、本発明者らはHMMの抗腫瘍作用の増強とイミダゾリル−s−トリアジン誘導体のアロマテース阻害作用の減少をめざして研究を進めた結果、ベンズイミダゾールの置換したs−トリアジン及びピリミジン誘導体を見出した(例えば、PCT国際公開公報WO99/05138、PCT国際公開公報WO00/43385参照)。
しかしながら、B.L.Johnson et al.Cancer,42:2157−2161(1978)においては、HMMの固形癌に対する抗腫瘍スペクトルや抗腫瘍活性の強さについてはまだ改善の余地が残されている。又、PCT国際公開公報WO93/17009のイミダゾリル−s−トリアジン誘導体については、殺細胞作用に比べてアロマテース阻害作用が相当強く、エストロジェン依存性疾患以外の癌患者に応用した場合、エストロジェンの欠乏による月経異常等の副作用発現につながることも考えられその応用範囲が限定されることから、アロマテース阻害作用を持たずに固形癌に対して有効な薬剤の開発が望まれていた。
又、PCT国際公開公報WO99/05138、PCT国際公開公報WO00/43385に示された化合物においても抗腫瘍活性面で満足するには至らなかった。
【発明の開示】
本発明者らは、更に研究を進めた結果、ベンズイミダゾール環2位に特定の置換基を有する一般式(I)の複素環式化合物に著しい活性の改善を見出し本発明を完成した。
本発明の複素環式化合物は前記一般式(I)で示されるが、この式中の各記号の定義に使用する語句の意味と例を以下に説明する。
「C−C」とは限定がなければ炭素数1〜6個を有する基を意味する。
「C−Cアルキル」としてはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基が挙げられる。
「ヒドロキシC−Cアルキル」とは、上記「C−Cアルキル」で定義される基のいずれかの炭素原子にヒドロキシ基が結合した基を意味する。
「ハロゲン原子」としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
本発明の化合物としては、例えば、以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらの化合物に限定されるものではない。
・2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2,2−ジメチルモルホリノ)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン
・2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−[メチル(1−メチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン
・2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン
・2−(4−クロロ−2−ジフルオロメチル−5−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン
・2−(4−クロロ−2−ジフルオロメチル−5−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2,2−ジメチルモルホリノ)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン
・2−(2−ジフルオロメチル−4−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン
・2−(2−ジフルオロメチル−4−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノピリミジン
・2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2,2−ジメチルモルホリノ)−6−モルホリノピリミジン
・2−(4−クロロ−2−ジフルオロメチル−5−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノピリミジン
・2−(4−クロロ−2−ジフルオロメチル−5−ヒドロキシベンズイミダゾール−1イル)−4−(2,2−ジメチルモルホリノ)−6−モルホリノピリミジン
・2−(4−ブロモ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン
・2−(4−フルオロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン
本発明の化合物は、その構造中に不斉炭素原子を有する場合、不斉炭素原子由来の異性体及びそれらの混合物(ラセミ体)が存在するが、それらはいずれも本発明の化合物に含むものとする。
又、本発明の化合物は薬学的に許容される塩として酸付加塩の形体をとってもよい。適当な酸付加塩としては、無機酸塩では例えば塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等、有機酸塩では例えば酢酸塩、シュウ酸塩、プロピオン酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ピルビン酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、桂皮酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、サリチル酸塩等が用いられる。
[製造工程]
一般式(I)で表される本発明の化合物は、下記反応式に示されるように塩化シアヌル又は2,4,6−トリクロロピリミジン(化合物II)を出発原料としてベンズイミダゾール化合物(化合物V)、モルホリン化合物(化合物VI)及びRH(化合物VII)を順次反応させることにより製造することができる。
[反応式]

(式中、R、R、R、R、R、Xは前記定義に同じであり、R’は水素原子、アミノ又はtert−ブチルジメチルシリルオキシを表す。)
以下に各々の製造工程を説明する。
1)中間体IIIの製造工程(i)

(式中、R、R’、Xは前記定義に同じ)
溶媒中、塩化水素捕捉剤の存在下で、塩化シアヌル又は2,4,6−トリクロロピリミジン(化合物II)とベンズイミダゾール化合物(化合物V)を反応させることにより中間体IIIが得られる。
この反応で用いる塩化水素捕捉剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、トリエチルアミン又はピリジン等が挙げられ、溶媒としてはアセトン、トルエン、ヘキサン、キシレン、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジクロロエタン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。
この反応においては、化合物II1モルに対して0.5〜1.2モルの化合物Vを0.5〜2モルの塩化水素捕捉剤の存在下で−15℃〜−5℃の温度で0.5〜2時間、更に室温で5〜50時間反応させる。
なお、化合物Vを塩化水素捕捉剤として用いることもできる。
2)中間体IVの製造工程(ii)

(式中、R、R、R、R’、Xは前記定義に同じ)
溶媒中、塩化水素捕捉剤の存在下で、前記製造工程(i)で得られた中間体IIIとモルホリン化合物(化合物VI)を反応させることにより中間体IVが得られる。この反応で用いる塩化水素捕捉剤としては、前記製造工程(i)の塩化水素捕捉剤と同じものが挙げられ、溶媒としてはDMF、アセトン、トルエン、キシレン、ジクロロエタン、ジクロロメタン等が挙げられる。
この反応においては、中間体III1モルに対して0.5〜1.2モルの化合物VIを0.5〜3モルの塩化水素捕捉剤の存在下で−5℃〜0℃の温度で0.5〜3時間、更に室温で5〜50時間反応させる。
なお、化合物VIを塩化水素捕捉剤として用いることもできる。
3)化合物(I)の製造工程(iii)

(式中、R、R、R、R、R、R’、Xは前記定義に同じ)
溶媒中、前記製造工程(ii)で得られた中間体IVに塩化水素捕捉剤の存在下、RH(化合物VII)を反応させることにより、本発明の化合物(I)が得られる。
この反応で用いる塩化水素捕捉剤としては、前記製造工程(i)の塩化水素捕捉剤と同じものが挙げられ、溶媒としてはDMF、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、ジクロロエタン等が挙げられる。
この反応においては、中間体IV1モルに対して1〜5モルのRH(化合物VII)を室温〜140℃で0.1〜16時間反応させる。なお、塩化水素捕捉剤の存在下で反応させる場合は、中間体IV1モルに対して1〜5モルの塩化水素捕捉剤を用いる。なお、化合物VIIを塩化水素捕捉剤として用いることもできる。
ただし、化合物(I)の製造に当たって化合物VIと化合物VIIが同一の場合は、製造工程(ii)、(iii)を一段階で行い化合物(I)を得ることができる。その場合は、化合物III1モルに対して2〜10モルの化合物VI又はVIIを用いて−10℃〜5℃で0.1〜5時間反応させ、さらに室温〜120℃で3〜50時間反応させる以外は前記製造工程(ii)の反応条件に従う。
又、製造工程(i)、(ii)、(iii)において用いられる化合物V、VI又はVIIの反応性が低い場合は、水素化ナトリウムで処理した後に各工程の反応を進めることが好ましい。水素化ナトリウムを使用する場合は、各工程の出発物質(化合物II、III又はIV)1モルに対して1.0〜1.2モルの水素化ナトリウムを用いる。
なお、R又はRが水酸基である場合は、常法に従ってtert−ブチルジメチルシリル等のアルキルシリル基で水酸基を保護したベンズイミダゾール化合物を用いて反応を行い、最終工程で保護基を脱離することで目的とする化合物が得られる。Rがハロゲン原子、Rが水酸基である本発明の化合物は、上記方法で同様に得られるRが水素原子、Rが水酸基の化合物(I)を用いて、常法でハロゲン化することにより得られる。
又、前記製造工程(i)、(ii)、(iii)は、順序が入れ替わることも可能であり、その際の反応条件の変更は当業者にとって自明な範囲で行うことができる。
なお、上記各工程で得られる生成物は必要に応じて通常の方法、例えば抽出、濃縮、中和、濾過、再結晶、カラムクロマトグラフィー等で分離精製することができる。
本発明の一般式(I)の化合物の酸付加塩は、当該技術分野で周知の各種の方法によって製造することができる。用いる適当な酸としては、無機酸では例えば塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸、リン酸等、有機酸では例えば酢酸、シュウ酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等が挙げられる。
次に、一般式(I)で表される本発明の化合物の抗腫瘍効果を説明する。なお、試験1及び2における被験化合物番号は後記実施例の化合物番号に対応する。
又、比較化合物として以下のs−トリアジン系の抗腫瘍剤又はエストロジェン依存性疾患治療剤を用いた。
化合物A:2−(ベンズイミダゾール−1−イル)−4−(trans−2,3−ジメチルモルホリノ)−6−モルホリノピリミジン[国際公開公報(WO99/05138)記載の代表例]
化合物B:2−(2−メチルベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン[国際公開公報(WO99/05138)記載の代表例]
化合物C:2−(イミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン[国際公開公報(WO93/17009)記載の代表例]
化合物D:ヘキサメチルメラミン(HMM)
試験1
MEM培地に10%ウシ胎仔血清、25mM HEPES及び0.1mg/mlカナマイシンを加えた培養液中で37℃、5%炭酸ガスの条件下で継代維持したMCF−7ヒト乳癌細胞を試験に用いた。対数増殖期にあるMCF−7細胞をトリプシン/EDTA処理により単浮遊細胞とし、MEM培地(10%ウシ胎仔血清、25mM HEPES、0.1mg/mlカナマイシン添加)で、1ml当たり4×10個の単細胞浮遊液を調製した。被験化合物はDMSOに溶解した後、RPMI1640培地(10%ウシ胎仔血清、25mM HEPES、0.1mg/mlカナマイシン添加)にて希釈し、濃度を2.0×10−9〜2.0×10−4Mに調製した。
96穴マイクロプレートに1ウェル当りこの細胞懸濁液0.1mlを入れ、24時間培養して細胞をマイクロプレートに接着させた後、試料溶液0.1mlを添加し、5%炭酸ガス中、37℃で72時間培養した。
種々の試料濃度での増殖阻害度から50%増殖阻害濃度(GI50μM)を算出し、その結果を下記表1に示す。

上記試験結果から、本発明の化合物はヒト乳癌細胞に対して、公知の比較化合物A、B、C、Dに比べ明らかに優れた抗腫瘍作用を有することが判明した。
又、本発明の化合物はヒト非小細胞性肺癌細胞、ヒト結腸癌細胞を用いたin vitro試験においても有効であったため、各種ヒト固形癌治療への応用が期待される。
試験2
ミュータント系BALB/cヌードマウスを用いて継代したヒト結腸癌WiDrの2mm角切片を腫瘍移植片としてミュータント系BALB/cヌードマウスの左胸部皮下に移植し、腫瘍が指数増殖期に達した時点で一群5匹に群分けし、実験に用いた。検体は生理食塩液に溶解あるいはメノウ乳鉢で1%HPC液に懸濁して、それぞれ200mg/kgの投与量で1日1回、週6回2週間腹腔内投与した。経日的に腫瘍の長径及び短径を計測し、腫瘍体積を算出した。各計測日の腫瘍体積を検体投与開始日の腫瘍体積で除して相対腫瘍増殖率を算出し、検体投与群の相対腫瘍増殖率(T)及び対照群の相対腫瘍増殖率(C)からT/C(%)を算出した。最終日のT/C(%)が50%以下でかつMann−WhitneyのU検定で片側1%の危険率で有意差がある場合を有効(+)と判定した。その結果、試験1で用いた本発明の化合物は有効であり、比較化合物Aは無効であった。
次に、本発明の化合物を哺乳類とりわけヒトに適用する場合の投与方法、剤型、投与量について説明する。
本発明の化合物は経口的又は非経口的に投与可能であり、経口投与の剤型としては錠剤、コーティング錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、マイクロカプセル剤、シロップ剤等が、又非経口投与の剤型としては注射剤(用時溶解して用いる注射用凍結乾燥剤を含む)、坐剤等が使用できる。これらの剤型の調製は薬学的に許容される賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、懸濁化剤、乳化剤、防腐剤、安定化剤及び分散剤、例えば乳糖、白糖、でんぷん、デキストリン、結晶セルロース、カオリン、炭酸カルシウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、蒸溜水又は生理食塩水を用いて行われる。
投与量は患者の症状、年齢、体重等に応じて異なるが、成人に対する一日量として100〜1,000mgを2〜3回に分けて投与することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
次に、本発明化合物の実施例を示し更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
2−(2−ジフルオロメチル−4−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノピリミジン(化合物1)
(1)DMF(10ml)に4−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール1.49g(5.0mmol)を溶解し、室温にて2,4,6−トリクロロピリミジン0.91g(5.0mmol)を加え、さらに炭酸カリウム0.55gを加え、5時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで数回抽出し、飽和食塩水で水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=8:1)にて精製し、2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジクロロピリミジン1.12g(収率50%)を得た。
(2)得られた2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジクロロピリミジン386mg(0.87mmol)をDMF(6ml)に溶解し、室温にて2−ピロリジンメタノール0.13ml(1.3mmol)を加え、さらに炭酸カリウム179mgを加えた。室温で30分間撹拌した後、反応液に水を加え、酢酸エチルで数回抽出し、飽和食塩水で水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−クロロピリミジン291mg(収率64%)を得た。
(3)得られた2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−クロロピリミジン281mg(0.54mmol)にモルホリン4.4g(50mmol)を加え、室温で9時間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで数回抽出し、飽和食塩水で水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=2:3)にて精製し、2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノピリミジン216mg(収率72%)を得た。
2−(4−tert−ブチルジメチルシリルオキシ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノピリミジン213mg(0.38mmol)を無水THF(7ml)に溶解し、室温にてテトラ−n−ブチルアンモニウムフロリド0.4ml(1M THF溶液)を加え、30分間撹拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで数回抽出し、飽和食塩水で水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:4)にて精製し、標記化合物を無色結晶として101mg(収率60%)得た。
融点:195〜198℃
NMR(CDCl)δ:2.0−2.1(4H,m),3.4−4.0(12H,m),4.0−4.1(1H,m),4.3−4.4(1H,m),5.36(1H,s),6.85(1H,d,J=8Hz),7.28(1H,t,J=8Hz),7.58(1H,brs),7.58(1H,t,J=54Hz),7.73(1H,d,J=8Hz)
MS m/z:446(M
【実施例2】
2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2,2−ジメチルモルホリノ)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン(化合物2)
(1)アセトン(50ml)に6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール500mg(2.3mmol)を溶解し、−15℃にて2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン542mg(2.3mmol)を加え、さらに炭酸カリウム500mgを加えた。徐々に室温まで昇温した後、室温で5時間撹拌した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:4)にて精製し、2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−クロロ−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン272mg(収率28%)を得た。
(2)得られた2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−クロロ−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン150mg(0.36mmol)をDMF(6ml)に溶解し、−15℃にて2,2−ジメチルモルホリン塩酸塩150mg(1.0mmol)を加え、さらに炭酸カリウム500mgを加えた。室温で1晩撹拌した後、反応液に水を加え、酢酸エチルで数回抽出し、飽和食塩水で水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:2)にて精製し、標記化合物を無色結晶として130mg(収率73%)得た。
融点:238℃(分解)
NMR(CDCl)δ:1.27(6H,s),3.68(2H,s),3.7−3.9(12H,m),6.82(1H,d,J=2.3Hz),7.42(1H,dt,J=9.6Hz,J=53Hz),7.50(1H,d,J=2.3Hz)
MS m/z:494(M
実施例2)と同様にして、相当する出発原料から下記化合物を製造した。
・2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン(化合物3)
融点:256℃(分解)
NMR(CDOD−CDCl(1:1))δ:1.9−2.2(4H,m),3.68(2H,s),3.5−4.0(11H,m),4.39(1H,brs),6.84(1H,d,J=2.1Hz),7.58(1H,t,J=53Hz),7.64(1H,d,J=2.1Hz)
MS m/z:480(M
・2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−[メチル(1−メチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン(化合物4)
融点:194℃(分解)
NMR(CDOD−CDCl(1:1))δ:1.3−1.5(2H,m),1.8−2.1(4H,m),2.35(3H,s),2.9−3.2(3H,m),3.21(3H,s),3.5−3.8(8H,m),6.84(1H,d,J=2.2Hz),7.49(1H,t,J=53Hz),7.80(1H,d,J=2.2Hz)
MS m/z:507(M
・2−(2−ジフルオロメチル−4−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン(化合物5)
融点:245℃(分解)
NMR(CDCl)δ:1.9−2.1(4H,m),3.5−4.0(12H,m),4.7−4.8(1H,m),5.1−5.3(1H,m),6.89(1H,d,J=9Hz),7.30(1H,t,J=9Hz),7.50(1H,brs),7.55(1H,t,J=54Hz),7.83(1H,d,J=9Hz)
MS m/z:447(M
・2−(2−ジフルオロメチル−5−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン
融点:>250℃
NMR(CDCl)δ:3.8−4.0(16H,m),7.01(1H,d,J=9Hz),7.30(1H,s),7.54(1H,t,J=53Hz),8.19(1H,d,J=9Hz)
MS m/z:433(M
【実施例3】
2−(4−クロロ−2−ジフルオロメチル−5−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン(化合物6)
実施例2)の方法で製造した2−(2−ジフルオロメチル−5−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジン433mg(1.00mmol)をクロロホルム(10ml)に溶解し、N−クロロコハク酸イミド400mg(3.0mmol)を加えた。60℃で1時間撹拌した後、反応液に水を加え、クロロホルムで数回抽出し、飽和食塩水で水洗後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧下溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=99:1)にて精製し、標記化合物を無色結晶として189mg(収率44%)得た。
融点:>250℃
NMR(CDCl)δ:3.7−3.9(16H,m),5.63(1H,s),7.15(1H,d,J=9Hz),7.51(1H,t,J=53Hz),8.14(1H,d,J=9Hz)
MS m/z:467(M
【産業上の利用可能性】
本発明の化合物は、アロマテース阻害作用なしに従来のs−トリアジン誘導体、ピリミジン誘導体と比べて明らかに強い抗腫瘍作用を有し、固形癌の治療に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)

[式中、Xは窒素原子又はCH、Rはハロゲン原子又は水酸基、Rは水素原子、水酸基又はアミノ、Rはモルホリノ(1〜2個のC−Cアルキルで置換されていてもよい)、ピロリジニル(ヒドロキシC−Cアルキルで置換されていてもよい)、NR[RはC−Cアルキル、Rはピペリジニル(C−Cアルキルで置換されていてもよい)]、R、Rは水素原子又はC−Cアルキルを表す。ただし、Rが水酸基の場合は、Rは水素原子、Rはピロリジニル(ヒドロキシC−Cアルキルで置換されていてもよい)を表す。]で示される複素環式化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
がクロルである請求の範囲第1項記載の化合物。
【請求項3】
がクロル、Rがアミノである請求の範囲第1項記載の化合物。
【請求項4】
がクロル、Rがアミノ、Rがジメチルモルホリノ、R、Rが水素原子、Xが窒素原子である請求の範囲第1項記載の化合物。
【請求項5】
がクロル、Rが水酸基である請求の範囲第1項記載の化合物。
【請求項6】
がクロル、Rが水酸基、Rがモルホリノ、R、Rが水素原子、Xが窒素原子である請求の範囲第1項記載の化合物。
【請求項7】
が水酸基、Rが水素原子、Rがピロリジニル(ヒドロキシメチルで置換されていてもよい)である請求の範囲第1項記載の化合物。
【請求項8】
一般式(I)で表される化合物が、2−(2−ジフルオロメチル−4−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノピリミジン、2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2,2−ジメチルモルホリノ)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン、2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン、2−(6−アミノ−4−クロロ−2−ジフルオロメチルベンズイミダゾール−1−イル)−4−[メチル(1−メチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン、2−(2−ジフルオロメチル−4−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン又は2−(4−クロロ−2−ジフルオロメチル−5−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4,6−ジモルホリノ−1,3,5−トリアジンである請求の範囲第1項記載の化合物。
【請求項9】
一般式(I)で表される化合物が、2−(2−ジフルオロメチル−4−ヒドロキシベンズイミダゾール−1−イル)−4−(2−ヒドロキシメチルピロリジン−1−イル)−6−モルホリノ−1,3,5−トリアジンである請求の範囲第1項記載の化合物。
【請求項10】
請求の範囲第1〜9項記載の少なくとも1つの化合物を有効成分とする抗腫瘍剤。
【請求項11】
薬学的に許容しうる希釈剤又は担体と共に、抗腫瘍活性成分として請求の範囲第1〜9項記載の少なくとも1つの化合物を含有する医薬組成物。

【国際公開番号】WO2004/037812
【国際公開日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【発行日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−546465(P2004−546465)
【国際出願番号】PCT/JP2003/013589
【国際出願日】平成15年10月24日(2003.10.24)
【出願人】(591163694)全薬工業株式会社 (10)
【Fターム(参考)】