説明

複電圧交直流電気車両

【課題】 既存の設備をできるかぎり用いて大出力化することが可能な複電圧交直流電気車両を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の複電圧交直流電気車両は、2つ以上の異なるき電区間を直通し、集電装置1a、1bと、集電装置1a、1bに直列に接続された断路器2a、2bと、断路器2a、2bと直列に接続された遮断器5aと、遮断器5aを介して電車線に印加されている電圧が交流か直流かに応じて交流入力回路18と直流入力回路17を切換える交直切換器7とを備えた第1の回路19と、第1の回路19と独立し、集電装置1cと、集電装置1cと直列に接続された遮断器5bとを備えた第2の回路20とを備え、第1の回路19の交流入力回路18と第2の回路20を切換える回路切換器12を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複電圧交直流電気車両に関する。
【背景技術】
【0002】
電気車両は、変電所からの電力を架空電車線などに供給し、車両に設けられた集電装置で受電し、車両の電動機を駆動することで走行するのが一般的である。この電車線に給電される電気方式には、直流、交流の違いがあり、例えば、現在、国内の在来線において、交流き電は20kV、直流き電は1.5kVである。これらのき電区間を走行する電気車両を同出力で比較すると、交流き電区間では数100アンペアの通電であるものは、直流き電区間では数1000アンペアの通電となる。したがって、交流専用電気車両は、絶縁の確保を中心とした車両設計が必要で、通電容量は問題になることはないが、直流専用電気車両は、通電容量の確保を中心とした車両設計が必要で、絶縁の確保が問題となることはない。
【0003】
一方で、直流、交流の違いに対応した、異なる二つの電気方式の区間を直通運転し、1台の主変圧器によって構成される従来の交直流電気車両は、図14に示す回路で構成される。図14において、1a、1bは集電装置、2a、2bは断路器、3は交流電圧検出器、4は直流電圧検知器、5は遮断器、6は交流避雷器、7は交直切換器、8は主ヒューズ、9は直流避雷器、10は交流冒進検出器、11は直流遮断器、13は主変圧器、14は整流装置、15は主制御器、16は主電動機、17は直流入力回路、18は交流入力回路を表している。
【0004】
一般に、1台の主変圧器13によって構成される交直流電気車両は、集電装置1a、1bとそれぞれに直列に接続された断路器2a、2bが、回路保護のための遮断器5を介して交流入力回路18と直流入力回路17を切換える交直切換器7と接続されており、遮断器5の直後には交流避雷器6が設置されている。
【0005】
交直切換器7の直流入力回路17側は、直流遮断器11、主制御器15を介して主電動機16と接続されている。さらに、交直切換器7の直後には直流避雷器9、交流冒進検知器10が設けられている。また、交直切換器7の交流入力回路18側は、主ヒューズ8を介して主変圧器13、主整流器14、そして前記主制御器15を介して前記主電動機16と接続され、車両中に設置されている。さらに、回路に加圧されているのが交流か直流かを検知するために、交流電圧検知器3と直流電圧検知器4が断路器2a、2bの共通接続点に設置されている。
【0006】
図14に示した従来の交直流電気車両は集電装置を2つ備えているが、直流き電区間で高速度運転をする電気車両や、負荷電流の大きい電気機関車等は、集電装置の集電能力の点から2つの集電装置1a、1bを同時に用いて運転し、交流き電区間を運転する車両は、電圧が高く集電電流が小さいので1つの集電装置1a又は1bを用いて運転しているためである。つまり、交直流電気車両は、直流き電区間を運転する場合は常に2つの断路器2a、2bを閉路して2つの集電装置から集電し、交流き電区間では1つの断路器2a又は2bのみを開いて1つの集電装置1a又は1bから電力を集電する。もし、交流き電区間において、集電装置を2つ上昇させたまま運転していても、断路器を片方開放していれば、電気回路上は1集電装置のみを用いていることとなる。
【0007】
以下に、交直流電気車両の直流・交流それぞれの区間における運転動作及び異なるき電区間へ入る場合の運転動作について、特開2002−369311号公報(特許文献1)や特開2000−125409号公報(特許文献2)を参考にして述べる。直流き電区間を走行する場合については、集電装置1a、1bは一般に電気車両の屋根上のパンタグラフで構成されるが、運転手は、集電装置1a及び1bの主、副を決定し(ここでは1aを主集電装置、1bを副集電装置とする)、両集電装置1a、1bを上昇させる。また、交直切換スイッチを直流側に設定し、遮断器5の投入スイッチを押す。遮断器5の投入指令が出されると、主集電装置1aに対応した断路器2aが投入された後、副集電装置1bに対応した断路器2bが投入される。直流電圧検知器4が直流電圧を検知し、交直切換器7が直流入力回路17側に接続されている条件下で、遮断器5及び直流遮断器11が投入され、電車線と主制御器15を接続し、電車線からの直流電力を主制御器15で交流電力に変換して車両走行用の主電動機16を駆動する。
【0008】
電気車が交流き電区間を走行する場合は、運転手が集電装置1a及び1bの主、副を決定し(ここでは1aを主集電装置、1bを副集電装置とする)、主集電装置1aを上昇させる。また、交直切換スイッチを交流側に設定し、遮断器5の投入スイッチを押す。遮断器5の投入指令が出されると、主集電装置1aに対応した断路器2aが投入される。交流電圧検知器3が電圧を検知し、交直切換器7が交流入力回路18側に接続されている条件の下で、遮断器5が投入され、電車線と主変圧器13とを接続することによって電車線からの交流電力を主変圧器13に供給し、その二次巻線側に接続されている整流装置14で直流電力に変換し、この直流電力を主制御器15で交流に再変換して車両走行用の主電動機16を駆動し電気車を走行させる。
【0009】
交流き電区間から直流き電区間へ入る場合は、交流き電区間では、主集電装置1aを上昇させ断路器2aを投入した状態で走行しており、運転手は、交流き電区間最後の停車駅で、副集電装置1bを上昇させる。尚、この状態では、断路器は主集電装置1a側の断路器2aのみが投入されているだけである。運転手は、交直セクション手前で、交直切換スイッチを直流側に設定すると、遮断器5が開放され、交直切換器7が直流入力回路17側に切換る。その状態のままセクションを通過して直流き電区間に進入し、直流電圧検知器4が直流電圧を検知すると、副集電装置1bに接続された断路器2bが投入され、遮断器5が投入される。以上により、直流き電区間での再力行が可能となる。
【0010】
直流き電区間から交流き電区間へ入る場合、直流き電区間では、電気車は主集電装置1a、副集電装置1bを上昇させたまま、断路器2a、2bを共に投入して走行している。そこで運転手が、直交セクション手前で交直切換スイッチを交流側に設定すると、遮断器5が開放され、交直切換器7が交流入力回路18側に切換り、副集電装置1bの断路器2bが開放される。その状態のまま直交セクションを通過して交流き電区間に進入し、交流電圧検知器3が交流電圧を検知すると遮断器5が投入されて、交流き電区間での再力行が可能となる。また、直交セクション通過後の最初の停車駅で、副集電装置1bを降下させる。
【0011】
以上のように、交流き電区間と直流き電区間を直通で走行する際には、交直切換器7の切換により交流き電区間に対する回路、直流き電区間に対する回路を構成する必要があるが、現実には車両側の交流と直流の切換が正しく行われない可能性もあり、冒進保護機能をもたせる必要がある。
【0012】
以下に、切換操作をしなかった場合の保護動作について記述する。交流き電区間から直流き電区間へ入る際、交直切換器7の切換を行わなかった場合は、遮断器5は開放されないため、直流電圧が加圧されると主ヒューズ8が溶断し、主変圧器13を保護する。直流入力回路17側は異常がないため、交直切換器7を直流入力回路17側と接続し、遮断器5が投入されると、直流き電区間の運転は可能となる。
【0013】
直流き電区間から交流き電区間へ入る際、交直切換器7の切換を行わなかった場合は、直流き電区間から交流き電区間へ冒進した場合、直流電圧検知器4によってデッドセクション内において電車線電圧がないことを検知して遮断器5を開く。そのままだ行運転で交流き電区間に入っても、直流遮断器11や主制御装置16に交流が加圧されることはない。また、直流電圧検知器4の検知によって遮断器5の開放ができないまま交流20kVき電区間に入った場合、直流避雷器9に交流が加圧されたことを交流冒進検出器10が検出して遮断器5を開くので、それ以後は直流遮断器11や主制御装置16に交流が加圧されることはない。
【0014】
上述した車両は国内の在来線における交直流電気車両についてであり、全ての機器は直流1.5kV、交流20kVに対応した機器を用いている。一方で、同回路構成のまま、在来線区間に加えて、新幹線25kVき電区間も走行する車両については、集電装置、遮断器、直流遮断器、断路器、交直切換器等から構成される特別高圧回路及び、主変圧器、主制御器を25kV対応とし、20kVき電区間では出力を落として走行することが可能である。しかし、電気機関車等の高出力電気車両においては、入力電圧が下がった分だけ電流を大きくとる必要があり、遮断器の通電容量等の問題から同回路で構成することは困難である。
【0015】
また、交流き電区間、直流き電区間を直通する交直流電気車両のように、交流、直流の各電源に対応する車両を設計するためには、数1000アンペアの通電容量の確保と絶縁の両方が必要となることは既に述べたが、図14に示す回路構成のまま、さらに高電圧のき電区間を直通するためには、集電装置1a、1b、遮断器5、直流遮断器11、断路器2a、2b及び交直切換器7からなる特別高圧回路を通電容量確保、絶縁確保のために大型化しなければならないという問題点があった。
【0016】
例えば、在来線の交流20kVき電区間及び直流1.5kVき電区間に対応した交直流電気車両が、新幹線区間25kVき電区間で走行可能となるために、同回路構成のまま特別高圧回路を大型化することについて考える。その場合にはまず、屋根上に設置する集電装置(パンタグラフ)、支持碍子などは、車上に保護装置が設けられないため、絶縁上十分な考慮を払って設計されるが、交流20kV対応から交流25kV対応となるため、通電容量を確保しながら支持碍子長を伸ばし、絶縁を確保することが必要となる。また、屋根上の集電装置で集電した電力を車両内に引き込むための25kV用導体が入った貫通碍子は、20kV用導体が入った貫通碍子と比較して全長が約1.5倍になり、断路器用支持碍子の全長も約1.5倍程度必要になる他、特別高圧回路の各装置間の絶縁確保のために、20kV対応用の機器と比較して約1.5倍程度の距離が必要となる。さらに、特別高圧回路には雷やスイッチングサージなどの異常電圧も侵入することが考えられ、これらから機器の絶縁を確保するために避雷器を設ける。避雷器は、ある程度以上高い電圧が侵入してくると、避雷器内部の放電ギャップが放電してこれを大地に逃がす仕組みとなっているが、在来線の場合、避雷器が放電を開始する電圧は80〜85kVに対して新幹線の場合は、110〜120kVである。特別高圧回路の機器の絶縁耐力は、避雷器のこれらの特性をベースとして設計することから、在来線に対応した交直流電気車両を新幹線対応するためには、全体的に機器が大型化する。
【0017】
上述したように、在来線に対応した交直流電気車両と同回路構成のままに新幹線き電区間に対応させようとすると、特別高圧回路の各機器を大型化させ、通電容量、絶縁を確保しなければならない。一方で、鉄道車両には車両が地上建造物と接触しないように定めた、大きさの限界を示す車両限界が規定されている。このため、特に高出力な電気車両については、在来線の車両限界で在来線用交直流車両の回路構成のまま新幹線用25kV対応機器を設置しようとすると、高さ方向の車体寸法制約が厳しくなり、20kV対応機器構成のまま25kV機器に装置を置き換えることは実現することは現実には難しい。また、車体長さにも影響を及ぼすことが必至である。
【0018】
鉄道車両の回路保護のための遮断器についても、現存する遮断器を電気機関車のような高出力車両に適用することは定格上採用不可能で、直流1.5kVと交流25kV電圧に対応した新規設計が必要となり、開発コストがかかる等の問題が発生する。
【0019】
以上のように、図14の従来例における交直流電気車両を交流き電25kVに対応するために大出力化するためには、集電装置、遮断器、直流遮断器、断路器及び交直切換器の通電容量を大型化しなければならず、全てを新規開発品とすることからコストが上がる上に、限られたスペースに用品を搭載することは、外形、重量の物理的制約から困難である問題点があった。
【特許文献1】特開2002−369311号公報
【特許文献2】特開2000−125409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、上述したような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、特別高圧の交流き電区間と、通常の高圧の交流き電区間と、直流き電区間とが点在する国内のき電区間に対応することが可能な複電圧交直流電気車両の生産を、在来の交直流電気車両から大出力化するために全てを新規開発品にするのではなく、既存の装置等をできる限り用いて可能にした複電圧交直流電気車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1の発明の複電圧交直流電気車両は、1又は複数個の集電装置と、前記1又は複数個の集電装置に直列に接続された断路器と、前記断路器と直列に接続された遮断器と、前記遮断器を介して電車線に印加されている電圧が交流か直流かに応じて交流入力回路と直流入力回路を切換える交直切換器とを備えた第1の回路と、前記第1の回路と独立し、集電装置と、前記集電装置と直列に接続された遮断器とを備えた第2の回路と、前記第1の回路の交流入力回路と前記第2の回路とを切換える回路切換器と、前記回路切換器に一次巻線側が接続された主変圧器と、前記主変圧器の二次巻線側に接続された主制御器と、前記主制御器の交流出力により駆動される主電動機とを備えものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、特別高圧の交流き電区間と、通常高圧の交流き電区間と、直流き電区間とが点在する国内のき電区間に対応することが可能な複電圧交直流電気車両を、既存の装置等をできる限り用いて生産できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて詳説する。
【0024】
(第1の実施の形態)図1は、本発明の第1の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路構成を示す図である。図1において、1a、1b、1cは集電装置、2a、2bは断路器、3a、3bは交流電圧検出器、4は直流電圧検知器、5a、5bは遮断器、6a、6bは交流避雷器、7は交直切換器、8は主ヒューズ、9は直流避雷器、10は交流冒進検出器、11は直流遮断器、12は回路切換器、13aは主変圧器、14aは整流装置、15aは主制御器、16aは主電動機、17は直流入力回路、18は交流入力回路、19は第1回路、20は第2回路を表している。尚、図1において、図14と同一の要素には同一の符号を用いて表している。
【0025】
本実施の形態の複電圧交直流電気車両では、第1回路19は集電装置1a、集電装置1b、断路器2a、断路器2b、遮断器5a、交直切換器7の機器を備えており、第2回路20は集電装置1c、遮断器5bの機器を備えている。また、第1回路19の交流入力回路18と第2回路20とを切り換える回路切換器12が設置されている。
【0026】
交流電圧検知器3aと直流電圧検知器4は、第1回路19に加圧されているのが交流か直流かを検知するために、断路器2a、2bの直後に設置されている。交流避雷器6aは、遮断器5aの直後に設置されている。また、交流検知器3bは、第2回路20に交流が加圧されていることを検知するために、集電装置1cの直後に設置され、交流避雷器6bは遮断器5bの直後に設置されている。
【0027】
交直切換器7の直流入力回路17側は、直流遮断器11、主制御器15aを介して主電動機16aと接続されており、交直切換器7の直流入力回路17側の直後には直流避雷器9、交流冒進検知器10が設置されている。交直切換器7の交流入力回路18は、主ヒューズ8を介して前記回路切換器12に接続され、回路切換器12の直後には、主変圧器13a、主整流器14aが設置され、主制御器15aを通じて主電動機16aと接続されている。
【0028】
図2は本発明の第1の実施の形態の複電圧交直流電気車両が走行する直通き電区間の構成の説明図である。図2において、53a、53bは直流送電所、54a、54bは交流送電所、70a、70bは直流き電区間、71a、71b、71cはデッドセクション、72aは通常高圧の交流き電区間(20kV)、72bは特別高圧の交流き電区間(25kV)を表している。本実施の形態の回路を持つ電気車が、国内の在来線、新幹線区間を直通運転する場合、国内の在来線は、交流き電は通常高圧の20kV、直流き電は1.5kV、新幹線区間は、交流き電で特別高圧の25kVとなっており、図2に示すように、直流1.5kVき電区間70a、70b、交流20kVき電区間72a、交流25kVき電区間72bで構成される形態を考える。直流送電所53a、53bが直流1.5kV送電、交流54aが交流20kV送電、交流送電所54bが交流25kV送電を行うことで、各区間へ電力を供給する。
【0029】
また、交直セクション、交々セクション間はそれぞれデッドセクションで構成されており、直流1.5kVき電区間70aと交流20kVき電区間72aの間にデッドセクション71a、交流20kVき電区間72aと交流25kVき電区間72bの間にデッドセクション71b、交流25kVき電区間72bと直流1.5kVき電区間70bの間にデッドセクション71cが設けられている。
【0030】
本実施の形態の回路を有する複電圧交直流電気車両は、直流1.5kVき電区間70a、70bでは、次のように動作する。集電装置1a、1b、1cは一般に電気車両の屋根上の集電装置(パンタグラフ)で構成されるが、運転手は、集電装置1a、1b、1cの主、副を決定し(ここでは1aを主集電装置、1b、1cを副集電装置とする)、集電装置1a、1bを上昇させ、1cを降下させておく。また、交直切換スイッチを直流側に設定して、遮断器の投入スイッチを押す。遮断器の投入指令が出されると、主集電装置1aに対応した断路器2aが投入された後に、副集電装置1bに対応した断路器2bが投入される。直流電圧検知器4が直流電圧を検知し、交直切換器7が直流入力回路17側と接続され、回路切換器12が第1回路19と接続された条件の下、遮断器5bが投入されない条件で遮断器5aが投入され、電車線と主制御器15aを接続し、電車線からの直流電力を主制御器15aで交流電力に変換して車両駆動用の主電動機16aを駆動する。
【0031】
交流20kVき電区間72aでは次のように動作する。運転手が、集電装置1a、1b、1cの主、副を決定し(ここでは1aを主集電装置、1b、1cを副集電装置とする)、主集電装置1aのみを上昇させる。また、回路切換器12を第1回路19側に設定し、交直切換スイッチを交流側に設定して、遮断器の投入スイッチを押す。遮断器の投入指令が出されると、主集電装置1aに対応した断路器2aが投入される。交流電圧検知器3aが交流電圧を検知すると、交直切換器7が交流入力回路18側と接続され、回路切換器12が第1回路19と接続された条件の下、遮断器5bが投入されない条件で遮断器5aが投入され、電車線と主変圧器13aとを接続する。これによって、電車線からの交流電力は主変圧器13aの二次巻線側に接続されている整流装置14aで直流電力に変換され、この直流電力が主制御器15aで交流に再変換されて主電動機16aに供給され、主電動機16aを駆動して電気車を走行させる。
【0032】
交流25kVき電区間72bでは次のように動作する。運転手が、集電装置1a、1b、1cの主、副を決定し(ここでは1cを主集電装置、1a、1bを副集電装置とする)、主集電装置1cのみを上昇させる。交直切換スイッチを交流側に設定し、回路切換スイッチを第2回路20側に設定し、遮断器の投入スイッチを押す。交流電圧検知器3bが交流電圧25kVを検知し、交直切換器7が交流入力回路18側と接続され、回路切換器12が第2回路20と接続された条件の下、遮断器5aが投入されない条件下で遮断器5bが投入され、電車線と主変圧器13aとを接続することによって電車線からの特別高圧の25kV交流電力を主変圧器13aの二次巻線側に接続されている整流装置14aで直流電力に変換し、この直流電力を主制御器15aで交流に再変換して主電動機16aに供給し、主電動機16aを駆動して電気車を走行させる。
【0033】
交流20kVき電区間72aから直流1.5kVき電区間70aに入る場合は次のように動作する。電気車が、交流20kVき電区間72aを、主集電装置1aを上昇させ、断路器2aを投入して走行しており、運転手が、交流き電区間最後の停車駅で、副集電装置1bを上昇させる。尚、この状態では、副集電装置1cは降下し、断路器は2aのみが投入され、遮断器5aは閉路、遮断器5bは開路して、回路切換器12は第1回路19と接続されている。運転手は、交直セクション手前で、交直切換スイッチを直流側に設定すると、遮断器5aが開放され、交直切換器7が直流入力回路17側に切換わる。その状態のままデッドセクション71aを通過して直流1.5kVき電区間70aに進入し、直流電圧検知器4が直流電圧を検知すると、副集電装置1bに接続された断路器2bが投入され、遮断器5aが投入される。以上により、直流1.5kVき電区間70aにて再力行が可能となる。
【0034】
直流1.5kVき電区間70aから交流20kVき電区間72aに入る場合は次のように動作する。電気車が、直流1.5kVき電区間70aを、主集電装置1a、副集電装置1bを上昇させ、副集電装置1cを降下させたまま、断路器2a、2bを共に投入し、回路切換器12を第1回路19と接続して走行している。尚、この状態では遮断器5aは閉路、5bは開路している。運転手が、直交セクション手前で、回路切換器12を第1回路19と接続したまま、交直切換スイッチを交流側に設定すると、遮断器5aが開放され、交直切換器7が交流入力回路18側に切換わり、副集電装置1bの断路器2bが開放される。その状態のままデッドセクション71aを通過して交流20kVき電区間72aに進入し、交流電圧検知器3aが交流電圧を検知すると、遮断器5aが投入され、再力行が可能となる。また、セクション通過後の最初の停車駅で、副集電装置1bは降下させる。
【0035】
交流20kVき電区間72aから交流25kVき電区間72bに入る場合の動作について説明する。図3に交流20kVき電区間72aから交流25kVき電区間72bに入る場合の地上側条件について示す。図3において、55は電気車、56aは停車場、57aは誤進行防止装置、58aは連続照査装置、59は進行方向、61は信号送受信装置を表している。尚、図2と同一の要素には同一の符号を用いて示している。また、図4、図5に図3の連続照査装置58aの動作のフローについて示す。
【0036】
図3に示すように、電気車55が交流20kVき電区間72aを進行方向59に進行する。交流20kVき電区間内72aのあらゆる場所で非常停止信号を受信した場合にも、交流20kVき電区間72a内で停車可能となるように、デッドセクション71b及び交流25kVき電区間72bとの十分な距離を確保した位置に停車場56aを設け、停車場56aの交流25kVき電区間72b側端に誤進行防止装置57aを設置する。また、誤進行防止装置57aから交流20kVき電区間72a側の十分長い区間に連続照査装置58aを設置する。連続照査装置58aでは、車両の位置を常に検知していると共に、電気車55及び誤進行防止装置57aと信号の送受信を行う。また、電気車55上に、連続照査装置58a、誤進行防止装置57aと信号の送受信を行う信号送受信装置61を設置し、信号送受信装置61は車両制御装置と連動し動作している。
【0037】
図4、図5のフローに示すように、電気車55が連続照査装置58aの設置区間に進入すると、誤進行防止装置57aが連続照査装置58aからの信号待ち状態(ステップS101)となり、連続照査装置58aから信号送受信装置61に、25kVき電区間72bに進入するか、20kVき電区間72aを引き返すのかの確認信号が送信される(ステップS102)。電気車55は、20kVき電区間72aから25kVき電区間72bに進行するため、信号送受信装置61から連続照査装置58aに25kVき電区間72bに進入する確認信号を返信する。次に、信号を受信した連続照査装置58aから信号送受信装置61に停車許可信号を発信し(ステップS106)、電気車55は停車場56aに停車する。停車した電気車55に、連続照査装置58aから遮断器5a開放、断路器2a開放、上昇している集電装置1aの降下指令を送信する(ステップS108)。電気車55が遮断器5aを開放し、集電装置1aが降下した後、交流電圧検知器3aが交流電圧を検知しなくなると、車両側の信号送受信装置61から連続照査装置58aに確認信号を返信する。確認信号を受信した連続照査装置58aは、集電装置1cの上昇指令、回路切換器12の第2回路20側への接続指令、遮断器5bの閉路指令を送信し(ステップS109)、それを受信した電気車55は、集電装置1cのみを上昇させ、回路切換スイッチにより回路切換器12を第2回路20側に接続するように設定し、遮断器の投入スイッチを押す。交流電圧検知器3bが交流電圧を検知し、交直切換器7が交流入力回路18と接続され、回路切換器12が第2回路20と接続された条件が成立すると、遮断器5aが投入されない条件で、遮断器5aが開路したまま遮断器5bが投入され、遮断器5b投入の確認信号を連続照査装置58aに返信する。確認信号を受信した連続照査装置58aは誤進行防止装置57aを解除し(ステップS110)、電気車55は誤進行防止装置57aが解除されたのを確認してから力行し、デッドセクション71bを通過して交流25kVき電区間72bに進入する。尚、本手順において、停車場56aを設けずに走行したまま上記動作を実施して交流20kVき電区間72aから交流25kVき電区間72bに進行することも可能である。この確認後、連続照査装置58a、誤進行防止装置57を初期化する(ステップS111)。
【0038】
交流25kVき電区間72bから交流20kVき電区間72aに入る場合の動作について説明する。図6は交流25kVき電区間72bから交流20kVき電区間72aに入る場合の地上側条件について示す説明図である。図6において、56bは停車場、57bは誤進行防止装置、58bは連続照査装置、59bは進行方向を表している。尚、図2、図3と同一の要素には同一の符号を用いて示している。
【0039】
図6に示すように電気車55が進行方向59bに進行する際、交流20kVき電区間72aに停車場56bを設け、停車場56bの反交流25kVき電区間側端に誤進行防止装置57bを設置する。また、誤進行防止装置57bからデッドセクション71bを介して交流25kVき電区間72b側の十分長い区間に連続照査装置58bを設置する。連続照査装置58bは、連続的に車両の位置を検知すると共に、車両及び誤進行防止装置57bとの信号の送受信を行う。また、電気車55上に、連続照査装置58b、誤進行防止装置57bと信号の送受信を行う信号送受信装置61を設置する。
【0040】
電気車55が、連続照査装置58b設置区間に進入すると、誤進行防止装置57bが連続照査装置58bからの信号待ち状態となり、連続照査装置58bから信号送受信装置61に、交流20kVき電区間72aに進入するか、交流25kVき電区間72bに引き返すのかの確認信号が送信される。電気車55は、20kVき電区間72aから25kVき電区間72bに進行するため、信号送受信装置61から連続照査装置58bに20kVき電区間72aに進入する信号を返信する。そして、連続照査装置58bから信号送受信装置61に停車許可信号を発信し、電気車55は停車場56bに停車する。停車した電気車55に、連続照査装置58bから遮断器5b開放、上昇している集電装置1cの降下指令を発信する。遮断器5bを開放し、集電装置1cを降下して、交流電圧検知器3bが電圧を検知しなくなると、信号送受信装置61から連続照査装置58bに確認信号を返信する。確認信号を受信した連続照査装置58bは、集電装置1aの上昇指令、回路切換器12の交流入力回路18との接続指令、遮断器5aの閉路指令を送信し、車両側は主集電装置1aのみを上昇させ、回路切換スイッチにより回路切換器12を第1回路19側に接続するように設定し、遮断器の投入スイッチを押す。遮断器の投入指令が出されると、主集電装置1aに対応した断路器2aが投入される。交流電圧検知器3aが電圧を検知し、交直切換器7が交流入力回路18側と接続され、回路切換器12が第1回路19と接続された条件が成立すると、遮断器5bが投入されない条件で、遮断器5aが投入され、確認信号を連続照査装置58bに返信する。連続照査装置58bは誤進行防止装置57bを解除し、電気車55は誤進行防止装置57bが解除されたのを確認してから力行する。
【0041】
交流25kVき電区間72bから直流1.5kVき電区間70bに入る場合の動作について説明する。図7は交流25kVき電区間72bから直流1.5kVき電区間70bに入る場合の地上側条件について示す説明図である。図7において、60は電圧変換器、72cは交流き電区間を表している。尚、図2、図3、図6と同一の要素には同一の符号を用いて示している。
【0042】
電気車55が交流25kVき電区間72bから直流1.5kVき電区間70bに入る場合、図7に示すように、交流25kVき電区間72bに電圧変換器60を設置し、交流25kVを交流20kVに降圧することで、デッドセクション71cと交流25kVき電区間72bとの間に交流20kVき電区間72cを設ける。そして、上述した交流25kVき電区間72bから交流20kVき電区間72aに進行する方法、及び、交流20kVき電区間72aから直流1.5kVき電区間70aへ進入する方法を組み合わせることで、交流25kVき電区間72bから直流1.5kVき電区間70bに進入する。
【0043】
直流1.5kVき電区間70bから交流25kVき電区間72bに入る場合の動作について説明する。電気車55が直流1.5kVき電区間70bから交流25kVき電区間72bに入る場合にも、上述した交流25kVき電区間72bから直流1.5kVき電区間70bに進入する場合と同様、電圧変換器60を設置し、交流25kVを交流20kVに降圧することでデッドセクション71cと交流25kVき電区間72bの間に交流20kVき電区間72cを設ける。以上により、上述直流1.5kVき電区間70aから交流20kVき電区間72aに進行する方法、及び、交流20kVき電区間72aから交流25kVき電区間72bへ進入する方法を組み合わせることで、直流1.5kVき電区間70bから交流25kVき電区間72bに進入する。
【0044】
次に、本実施の形態の複電圧交直流電気車両の冒進保護動作について説明する。図2において、直流1.5kV70aから交流20kVのき電区間72aに車上切り替えが行われないままにデッドセクション71aへ突入した場合の冒進保護は次の通りである。まず、直流1.5kVき電区間70aから交流20kVき電区間72aへ冒進した場合、直流電圧検知器4によってデッドセクション71a内において電車線電圧がないことを検知して遮断器5aを開く。そのままだ行運転で交流20kVき電区間72aに入っても、直流遮断器11や主制御装置16aに交流が加圧されることはない。また、直流電圧検知器4の検知によって遮断器5aの開放ができないまま交流20kVき電区間72aに入った場合、直流避雷器9に交流が加圧されたことを交流冒進検出器10によって検出して遮断器5aを開くので、それ以後は直流遮断器11や主制御装置16aに交流が加圧されることはない。逆に交流20kVき電区間72aから直流1.5kVき電区間70aに冒進した場合は、主ヒューズ8が溶断して主変圧器13aを保護する。
【0045】
次に、交流20kVき電区間72aから交流25kVき電区間72bへの冒進保護について図3、そして図4、図5のフローチャートを用いて説明する。図3に示す条件下で、電気車55が連続照査装置58a設置区間に進入すると、誤進行防止装置57aが連続照査装置58aからの信号待ち状態となり(ステップS101)、連続照査装置58aから信号送受信装置61に、交流25kVき電区間72bに進入するか、交流20kVき電区間72aを引き返すのかの確認信号が送信される(ステップS102)。
【0046】
電気車55が交流20kVき電区間72aに引き返す(2)の場合は、連続照査装置58aに20kV側に引き返す確認信号を返信し、連続照査装置58aから信号送受信装置61に停車許可信号が送信される(ステップS103)。許可信号を受信した電気車55は、停車場56aに停車する。連続照査装置58aは、電気車55が停車場56aに停止したのを確認して、連続照査装置58a及び誤進行防止装置57aを初期化して次の車両に備える(ステップS104)。
【0047】
また、電気車55から信号の返信がない(3)の場合には、連続照査装置58aが信号送受信装置61に非常停止指令を送信し、電気車55を非常停止させる(ステップS105)。
【0048】
交流20kVき電区間72aから交流25kVき電区間72bに進行する(1)の場合には、信号送受信装置61から連続照査装置58aに交流25kVき電区間72bに進入する確認信号を返信する。
【0049】
確認信号を受信した連続照査装置58aは信号送受信装置61に停車許可信号を送信し(ステップS106)、電気車55が連続照査区間内58aの誤進行防止装置57aまで進行した場合には、電気車55を非常停止させる(ステップS107)。電気車55が停車場56aで停車した場合には、ステップS108以下の動作へと移行する。尚、停車した電気車55は誤進行防止装置57aが解除されるまで、力行することができない。
【0050】
停車した電気車55に、連続照査装置58aから遮断器5a開放、断路器2a開放、上昇している集電装置1aの降下指令を送信する(ステップS108)。電気車55側は、遮断器5aを開放し、集電装置1aが降下した後、交流電圧検知器3aが電圧を検知しなくなると、信号送受信装置61から連続照査装置58aに確認信号を返信する。
【0051】
確認信号を受信した連続照査装置58aは、集電装置1cの上昇指令、回路切換器12の第2回路20との接続指令及び遮断器5b閉路指令を送信し(ステップS109)、それを受信した電気車55は、主集電装置1cのみを上昇させ、回路切換スイッチにより回路切換器12を第2回路20側に設定し遮断器の投入スイッチを押す。交流電圧検知器3bが交流電圧25kVを検知し、交直切換器7が交流入力回路18と接続され、回路切換器12が第2回路20と接続された条件が成立すると、遮断器5aが投入されない条件で、遮断器5bが投入される。遮断器5bが投入されると、電気車55は、遮断器5b投入確認信号を連続照査装置58aに返信する。確認信号を受信した連続照査装置58aは誤進行防止装置57aを解除し(ステップS110)、電気車55は誤進行防止装置57aが解除されたのを確認してから力行する。電気車55がデッドセクション71bを通過して完全に交流25kVき電区間72bに入ったところで、連続照査装置58aは誤進行防止装置57a及び連続照査装置58aを初期化して次の車両に備える(ステップS111)。尚、本手法においては交流20kVき電区間72aから交流25kVき電区間72bに進入するまでの間、第2回路20を用いて力行するが、出力が落ちるだけで問題なく走行可能である。
【0052】
交流25kVき電区間72bから交流20kVき電区間72aへの冒進保護は次の通りである。図6に示す条件下で、電気車55が連続照査装置58b設置区間に進入すると、誤進行防止装置57bが連続照査装置58bからの信号待ち状態となり、連続照査装置58bから電気車55上の信号送受信装置61に、交流20kVき電区間72aに進入するか、交流25kVき電区間72bを引き返すのかの確認信号が送信される。
【0053】
電気車55は交流25kVき電区間72bに引き返す場合は、連続照査装置58bに交流25kV側に引き返す確認信号を返信し、確認信号を受信した連続照査装置58bから電気車55の信号送受信装置61に停車許可信号を発信する。信号を受信した電気車55は、停車場56bに停車する。連続照査装置58bは、電気車55が停車場56bに停止したのを確認して、連続照査装置58b及び誤進行防止装置57bを初期化し次の車両に備える。また、電気車55から信号の返信がない場合には、連続照査装置58bが信号送受信装置61に非常停止指令を送信し、電気車55を非常停止させる。
【0054】
交流25kVき電区間72bから交流20kVき電区間72aに進行する場合、信号送受信装置61から連続照査区間57bに交流20kVき電区間72aに進入する確認信号を返信する。確認信号を受信した連続照査装置58bは信号送受信装置61に停車許可信号を送信し、電気車55が連続照査区間内58bの誤進行防止装置57bまで進行した場合には、電気車55を非常停止させ、電気車55が停車場所56aで停車した場合には、次の動作へと移行する。尚、停車した電気車55は誤進行防止装置57bが解除されるまで、力行することができない。
【0055】
停車した電気車55に、連続照査装置58bから遮断器5b開放、上昇している集電装置1cの降下指令を送信する。電気車55側は、遮断器5bを開放し、集電装置1cが降下した後、交流電圧検知器3bが電圧を検知しなくなると、信号送受信装置61から連続照査装置58bに確認信号を返信する。
【0056】
確認信号を受信した連続照査装置58bは、集電装置1aの上昇指令、回路切換器12の交流入力回路18との接続指令、遮断器5aを閉じる指令を送信し、それを受信した車両側は主集電装置1aのみを上昇させ、回路切換スイッチにより回路切換器12を第2回路20側に設定し、遮断器の投入スイッチを押す。遮断器の投入指令が出されると、主集電装置1aに対応した断路器2aが投入される。交流電圧検知器3aが電圧を検知し、交直切換器7が交流入力回路18と接続され、回路切換器12が第1回路19と接続される条件が成立すると、遮断器5bが投入されない条件で、遮断器5aが投入され、確認信号を連続照査装置58bに返信する。確認信号を受信した連続照査装置58bは誤進行防止装置57bを解除し、電気車55は誤進行防止装置57bが解除されたのを確認してから力行する。電気車55が力行し、連続照査装置58b設置区間を抜けたところで連続照査装置58bは誤進行防止装置57b及び連続照査装置58bを初期化し、次の車両に備える。尚、本手法においては第2回路のまま交流25kVき電区間72bから交流20kVき電区間72aに進入するが、出力が落ちるだけで問題なく走行可能である。また、本手法を用いずに第2回路20を構成したまま交流20kVき電区間72aを走行することが可能であるが、第2回路20を構成したまま直流き電区間70aへ冒進するのを防止するために本手法を用いることを特徴としている。
【0057】
電気車55が交流25kVき電区間72bから直流1.5kVき電区間70bに進入する場合には、上述したように、図7に示す交流25kVき電区間72bに電圧変換器60を設置し、交流25kVを交流20kVに降圧することで、交流25kVき電区間と直流1.5kVき電区間の間に交流20kVき電区間72cを設けるため、直接冒進することはない。
【0058】
電気車55が直流1.5kVき電区間70bから交流25kVき電区間72bに進入する場合についても、上述したように、図7に示す交流25kVき電区間72bに電圧変換器60を設置し、交流25kVを交流20kVに降圧することで、直流1.5kVき電区間と交流25kVき電区間の間に交流20kVき電区間72cを設けるため、直接冒進することはない。
【0059】
以上の本発明の第1の実施の形態によれば、従来の複電圧交直流電気車両の回路を大出力対応に交換するのではなく、従来の回路に加えて、これと独立した高電圧対応の第2の特別高圧回路を設け、それらを回路切換器によって切換えることで大出力対応可能な複電圧交直流電気車両とすることができる。また、冒進保護動作についても検討をし、本発明の有用性を確認した。
【0060】
(第2の実施の形態)図8は、本発明の第2の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路構成を示す図である。図8において、13bは主変圧器、21aは電圧変換器を表している。尚、図1、図14と同一の要素には同一の符号を用いて表している。図8に示す第2の実施の形態は、回路切換器12と主変圧器13bの間に交流20kVは交流20kVのまま、交流25kVは交流20kVに変圧可能な電圧変換器21aを設けることを特徴とする。その他の構成機器は第1の実施の形態と同じである。
【0061】
本実施の形態の回路切換動作及び制御動作は、第1の実施の形態と同じであり、電圧変換器21aを設置することで、25kV用と比較して形状が小さい20kV用の主変圧器13bを用いることが可能となる。また、従来の交直流電気車両用の第1回路19及び主変圧器13b、整流装置14a、主制御器15aをそのまま流用することで、開発コストを抑制することも可能である。
【0062】
(第3の実施の形態)図9は、本発明の第3の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路構成を示す図である。図9において、22aは終端接続部(25kV用)、22bは終端接続部(20kV用)を表している。尚、図1、図8、図14と同一の要素には同一の符号を用いて表している。図9に示す第3の実施の形態では、第1回路19と第2回路20、回路切換器12を異なる車両H、車両Jに分散して搭載する。また、車両H、車両Jそれぞれに25kV用主変圧器13a、整流装置14a、主制御器15aを設けることで、各車両が自走可能となることを特徴とする。尚、車両H、車両Jは25kV用終端接続部22a、20kV用終端接続部22bを介して接続されており、異なる車両に主変圧器13a、整流装置14a、主制御器15aを搭載した構成以外は、回路切換動作、制御動作ともに第1の実施の形態と同じである。
【0063】
第3の実施の形態では、異なる電圧に対する回路を2車両に分散して搭載することで、外形、重量の物理的制約を緩和することを可能とする。
【0064】
(第4の実施の形態)図10は、本発明の第4の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路構成を示す図である。尚、図1、図8、図9、図14と同一の要素には同一の符号を用いて表している。図10に示す第4の実施の形態では、第1回路19、第2回路20を異なる車両K、車両Mに搭載する。また、車両Mに、交流20kVは交流20kVのままとし、交流25kVは交流20kVに変圧可能な電圧変換器21aを搭載する。電圧変換器21aを搭載した以外は回路切換動作、制御動作ともに第3の実施の形態と同じである。
【0065】
電圧変換器21aを車両Mに搭載することで、車両Mに印加される交流電圧25kVは、車両Kには印加されない。すなわち、車両Kには交流20kV電圧のみが印加され、絶縁距離等の制約が従来の在来専用交直流電気車と等しくなることを特徴とする。
【0066】
また、従来の交直流電気車両用の第1回路19、20kV用終端接続部22b、20kV用主変圧器13b、整流装置14a、主制御器15aを流用することで、開発コスト抑制も可能である。
【0067】
(第5の実施の形態)図11は、本発明の第5の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路構成を示す図である。尚、図1、図8、図9、図10、図14と同一の要素には同一の符号を用いて表している。図11に示す第5の実施の形態では、第1回路19と第2回路20、回路切換器12を異なる車両N、車両Pに分散して搭載する。また、車両Nのみに交流25kV用主変圧器13a、整流装置14a、主制御器15aを設けることで、車両Pは、第2回路20に対応したき電区間において、電力の集電のみを行うため、外形、重量の物理的制約の緩和が可能であることを特徴とする。尚、車両N、車両Pを終端接続部22a、22bを介して接続した以外は第1の実施の形態と回路切換動作、制御動作ともに同じである。
【0068】
(第6の実施の形態)図12は、本発明の第6の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路構成を示す図である。尚、図1、図8、図9、図10、図11、図14と同一の要素には同一の符号を用いて表している。図12に示す第6の実施の形態は、車両Tに交流20kVは交流20kVのまま、交流25kVは交流20kVに変圧可能な電圧変換器21aを備えることによって、車両Tは電力の集電及び電圧の変換のみを行うことを特徴とする。これにより、第4の実施の形態と同様の理由で、車両Rに印加された電圧が車両Tにも印加されることがなくなる。また、従来の交直流電気車両用の第1回路19、20kV用終端接続部22b、20kV用主変圧器13b、整流装置、主制御器を流用することで、開発コスト抑制も可能である。尚、電圧変換器21aを搭載した以外は回路切換動作、制御動作ともに第5の実施の形態と同じである。
【0069】
(第7の実施の形態)図13は、本発明の第7の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路構成を示す図である。尚、図1、図8、図9、図10、図11、図12、図14と同一の要素には同一の符号を用いて表している。図13に示す第7の実施の形態は、交流20kV及び25kVを交流1.5kVに変圧可能な電圧変換器21bを設置することで、主変圧器を不要とすることを特徴とする。その他の構成機器は第2の実施の形態と同じである。
【0070】
本実施の形態の回路切換動作及び制御動作は、第1の実施の形態と同じであり、電圧変換器21bを設置することで主変圧器が省略され、外形等の制約を緩和し、コストを抑制することも可能である。尚、上記の各実施の形態で集電装置1a、1b、1cとは、一般的に車両屋上に設置されるパンタグラフであるが、例えば、第3軌条集電装置などでもよい。また、主整流器14a、14bは電圧・電流を制御する方式でも、単純なダイオードブリッジなどでもよい。また、説明のため、国内の直流1.5kV、交流20kV、交流25kVき電を例として挙げたが、海外の直流3kV、交流15kV、交流25kVき電としても同様の効果を得ることが可能であり、通常高圧は低圧交流側、特別高圧は高圧交流側を意味するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の第1の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路図。
【図2】本発明の第1の実施の形態の複電圧交直流電気車両の直通き電区間の説明図。
【図3】本発明の第1の実施の形態の交流20kVき電区間から交流25kVき電区間に入る場合の地上側条件について示す説明図。
【図4】本発明の第1の実施の形態の複電圧交直流電気車両の交々セクション通過時の冒進保護のフローチャート(その1)。
【図5】本発明の第1の実施の形態の複電圧交直流電気車両の交々セクション通過時の冒進保護のフローチャート(その2)。
【図6】本発明の第1の実施の形態の交流25kVき電区間から交流20kVき電区間に入る場合の地上側条件について示す説明図。
【図7】本発明の第1の実施の形態の交流25kVき電区間から直流1.5kVき電区間に入る場合の地上側条件について示す説明図。
【図8】本発明の第2の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路図。
【図9】本発明の第3の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路図。
【図10】本発明の第4の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路図。
【図11】本発明の第5の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路図。
【図12】本発明の第6の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路図。
【図13】本発明の第7の実施の形態の複電圧交直流電気車両の回路図。
【図14】従来の交直流電気車両の回路図。
【符号の説明】
【0072】
1a、1b、1c 集電装置
2a、2b 断路器
3a、3b 交流電圧検出器
4 直流電圧検知器
5a、5b 遮断器
6a、6b 交流避雷器
7 交直切換器
8 主ヒューズ
9 直流避雷器
10 交流冒進検出器
11 直流遮断器
12 回路切換器
13a、13b 主変圧器
14a、14b 整流装置
15a、15b 主制御器
16a、16b 主電動機
17 直流入力回路
18 交流入力回路
19 第1回路
20 第2回路
21a、21b 電圧変換器
22a、22b 終端接続部
53a、53b 直流送電所
54a、54b 交流送電所
55 電気車
56a、56b 停車場
57a、57b 誤進行防止装置
58a、58b 連続照査装置
59、59b 進行方向
60 電圧変換器
61 信号送受信装置
70a、70b 直流き電区間
71a、71b、71c デッドセクション
72a、72b、72c 交流き電区間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は複数個の集電装置と、前記1又は複数個の集電装置に直列に接続された断路器と、前記断路器と直列に接続された遮断器と、前記遮断器を介して電車線に印加されている電圧が交流か直流かに応じて交流入力回路と直流入力回路を切換える交直切換器とを備えた第1の回路と、
前記第1の回路と独立し、集電装置と、前記集電装置と直列に接続された遮断器とを備えた第2の回路と、
前記第1の回路の交流入力回路と前記第2の回路とを切換える回路切換器と、
前記回路切換器に一次巻線側が接続された主変圧器と、
前記主変圧器の二次巻線側に接続された主制御器と、
前記主制御器の交流出力により駆動される主電動機とを備えたことを特徴とする複電圧交直流電気車両。
【請求項2】
前記主変圧器と前記回路切換器との間に電圧変換器を備えたことを特徴とする請求項1に記載の複電圧交直流電気車両。
【請求項3】
前記第1の回路と、前記第2の回路と、前記回路切換器と、前記主変圧器及び前記主制御器とを、1編成内の同一の車両に搭載したことを特徴とする請求項1又は2に記載の複電圧交直流電気車両。
【請求項4】
前記第1の回路を有する車両と、前記第2の回路を有する車両とを、1編成内の異なる車両にしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の複電圧交直流電気車両。
【請求項5】
前記第1の回路を有する車両及び前記第2の回路を有する車両のそれぞれに、前記主変圧器及び前記主制御器を設けたことを特徴とする請求項4に記載の複電圧交直流電気車両。
【請求項6】
前記第1の回路を有する車両にのみ、前記主変圧器及び前記主制御器を設けたことを特徴とする請求項4に記載の複電圧交直流電気車両。
【請求項7】
前記回路切換器の直後に特別高圧交流を通常高圧交流に変換する電圧変換器を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の複電圧交直流電気車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−340546(P2006−340546A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164538(P2005−164538)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】