説明

規定された比表面積を有するジケトピペラジン微粒子

本明細書において、約67m/g未満の比表面積を有するジケトピペラジン微粒子が開示される。ジケトピペラジン微粒子は、フマリルジケトピペラジンであり得、インスリンといった薬物を含有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、約67m/g未満の比表面積を有するジケトピペラジン微粒子に関する。FDKP微粒子は、疾患又は不調(例えば内分泌系の疾患(糖尿病及び肥満を含む))の治療おける薬物又は活性剤のためのデリバリーシステムとして用いられ得る。
【背景技術】
【0002】
薬物の送達は、特に送達される化合物が対象に経口投与され標的部位に到達する前に消化管において直面する環境下で不安定である場合に、長年大きな問題となっていた。例えば、特に、投与の容易さ、患者コンプライアンス、及びコスト低減の観点から、薬物の経口投与が多くの場合において望ましい。しかしながら、多くの化合物は、経口投与されると、効果が無くなり、又は低い若しくは変化しやすい有効性を示す。おそらくこれは、薬物が消化管における環境に不安定である、又はそれらが吸収されると有効性が無くなるからである。
【0003】
経口のドラッグデリバリーに関連した問題に起因して、肺へのドラッグデリバリーが探索されてきた。例えば、典型的には、肺へ送達される薬物は、肺の組織に影響を与えるようにデザインされ、それは例えば、血管拡張剤、界面活性剤、化学療法剤、又はインフルエンザ若しくは他の呼吸器系疾患のためのワクチンである。ヌクレオチド薬物を含む他の薬物は、肺に送達されてきた。それらは、特に治療にふさわしい組織であるからである。例えば、嚢胞性繊維症における遺伝子治療では、不完全なアデノシンデアミナーゼを発現するレトロウイルスベクターが肺に投与される。
【0004】
全身的な効果を有する薬物のための肺へのドラッグデリバリーもまた行われ得る。全身的薬剤を肺に送達させる利点は、大きな表面積及び肺の粘膜表面による摂取の容易さを含む。肺のドラッグデリバリーのこれらの形式のすべてに関連する一つの問題は、気管を内張りしている絨毛といった生体バリアのすべてを薬物が通り抜けること、及び一定の容積及び重量の薬物を投与しようとすることにおける問題に起因して、薬物を肺に送達するのが困難であるということである。
【0005】
したがって、薬物の肺への送達においては改善の余地がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、肺への薬物の改善された送達を可能とするシステム、微粒子、及び方法を提供する。本明細書において開示される態様は、約35m/gから約67m/gの間の比表面積(SSA)を有するジケトピペラジン(DKP)微粒子を提供することにより改善された送達を達成する。この範囲における比表面積を有するDKP微粒子は、改善された空気力学的パフォーマンス及び改善された薬物吸収といった、肺へのドラッグデリバリーに有用な特性を示す。
【0007】
本明細書に開示される一実施態様は、約67m/g未満の比表面積を有するジケトピペラジン微粒子を含む。他の実施態様は、比表面積が約35m/gから約67m/gの間であるジケトピペラジン微粒子を含む。他の実施態様は、比表面積が活性剤の無い状態では約35m/gより大きいが、微粒子に活性剤が吸収された後では約62m/g未満であるジケトピペラジン微粒子を含む。
【0008】
他の実施態様において、約35m/gから約67m/gの間の範囲の比表面積を有するフマリルジケトピペラジン(FDKP)微粒子は、薬物又は活性剤を含み、上記のSSAは、粒子への薬物の添加前に決定される。粒子への活性剤の結合は、SSAを低減させる傾向にある。FDKP微粒子の種々の態様において、薬物は、例えば、ペプチド又はタンパク質(内分泌ホルモン、例えば、インスリン、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、グルカゴン、エキセンディン、副甲状腺ホルモン、オベスタチン、カルシトニン、オキシントモジュリン、及び同様物を含む)であり得る。約35m/gから約67m/gの間の範囲の比表面積を有するFDKP微粒子の他の実施態様は、微粒子を作るための合成プロセスの下流コンディションに依存して変化し得る薬物/ペプチド含量を含み得る。特定の例において、FDKP微粒子は、標的とされ又は送達される用量に依存して変化し得る薬物/ペプチド含量を有するように調製され得る。例えば、薬物がインスリンの場合、インスリン成分は、微粒子を含む粉末製剤中、約3U/mgから約4U/mgであり得る。ある実施態様において、薬物は、微粒子の表面に吸収されている。このような薬物が充填された微粒子のさらなる実施態様において、薬物が充填された微粒子のSSAは、約62m/g未満である。
【0009】
本明細書に開示された実施態様はまた、微粒子を含有する乾燥粉末を含む。一実施態様において、乾燥粉末は、約67m/g未満の比表面積を有するFDKP微粒子を含む。他の実施態様は、比表面積が約35m/gから約67m/gであるジケトピペラジン微粒子を含む。他の実施態様は、比表面積が約35m/gから約62m/gである、薬物又は活性剤を含有するジケトピペラジン微粒子を含む。
【0010】
乾燥粉末の実施態様において、FDKP微粒子は、薬物を含む。乾燥粉末の他の態様において、薬物は、種々の分子サイズ又は質量のペプチド(インスリン、グルカゴン様ペプチド−1、グルカゴン、エキセンディン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、オキシントモジュリン、及び同様物を含む)である。乾燥粉末のこれらの実施態様の一つにおいて、薬物がインスリンである場合、FDKP微粒子のインスリン含量は、約3U/mgから約4U/mgである。
【0011】
さらなる実施態様は、吸入器、一単位用量の乾燥粉末薬剤容器(例えばカートリッジ)、並びに本明細書に開示された微粒子及び活性剤を含有する粉末製剤、を含むドラッグデリバリーシステムに関連する。一実施態様において、乾燥粉末での使用のためのドラッグデリバリーシステムは、吸入システムを含み、それは、粉末製剤を細分化し投与するための導管を通るエアフローに、大きい抵抗を与える空気路を有する、高抵抗性吸入器を含む。一実施態様において、吸入システムは、例えば、約0.065から約0.200(√kPa)/L/分の抵抗値を有する。ある実施態様において、乾燥粉末は、ピーク吸入圧力差が約2kPaから約20kPaの範囲であり得る吸入システムでの吸入により効果的に送達され得、それは、約7L/分から約70L/分の間の最大流量を作り出し得る。ある実施態様において、吸入システムは、持続的なフローとして、又は患者に送達される粉末の1又は2以上のパルスとして、吸入器から粉末を噴射することにより一回量を提供するように構成される。ここに開示されるいくつかの実施態様において、乾燥粉末吸入器システムは、吸入器内の既定の質量フローバランスを含む。例えば、吸入器に存在し患者に入る全流量のおよそ10%から70%のフローバランスは、1又は2以上の投与口により送達され、エアフローは粉末製剤を含有する領域を通過し、およそ30%から90%のエアフローが吸入器の他の導管から生み出される。さらに、バイパスのフロー又は粉末容器の領域に入らず及び存在しない(例えば、カートリッジを通過する)フローは、吸入器内の粉末投与口に存在するフローと再結合し得、マウスピースに存在する前に流体化された粉末を薄め、加速し、最終的には細分化する。一実施態様において、約7−70L/分の範囲の吸入器システム流速は、1−30mgの間の1回量分で投与される容器粉末含量又はカートリッジ粉末含量の75%以上をもたらす。ある実施態様において、前述のような吸入システムは、一回の吸入で、40%以上、50%以上、60%以上、又は70%以上の割合で粉末用量の吸入性画分/1回量を放出することができる。
【0012】
特定の実施態様において、吸入システムは、乾燥粉末吸入器、フマリルジケトピペラジンの微粒子を含有する乾燥粉末製剤を含んで提供され、充填されていないFDKP微粒子は、約67m/g未満の比表面積、及び1又は2以上の活性剤を有する。吸入システムのこの実施態様のいくつかの側面において、乾燥粉末製剤は、一単位用量のカートリッジにおいて提供される。あるいは、乾燥粉末製剤は、吸入器においてあらかじめ添加され又は充填され得る。この実施態様において、吸入システムの構造的な配置により、吸入器の細分化機構は、50%以上の吸入性画分を作り出すことができる。それは、吸入器(カートリッジ)に含まれる粉末の半分以上が5.8μm未満の粒子として放出されるということである。一実施態様において、吸入器は、投与の間、容器内に含まれる粉末製剤の85%以上を噴射することができる。ある実施態様において、吸入器は、一回の吸入で含まれる粉末製剤の85%以上を噴射することができる。ある実施態様において、吸入器は、30mgまでの範囲の1回量分で2kPa−5kPaの間の圧力差で3秒間未満にて、カートリッジ含量又は容器含量の90%以上を噴射することができる。
【0013】
本明細書に開示される実施態様はまた、方法を含む。一実施態様において、内分泌腺に関連する疾患又は不調を治療する方法は、約67m/g未満の比表面積を有するFDKP微粒子及び前記疾患又は不調を治療するのに適した薬物を含有する乾燥粉末製剤を必要に応じてヒトに投与することを含む。他の実施態様は、比表面積が約35m/gから約67m/gであるジケトピペラジン微粒子を含む。他の実施態様は、比表面積が約62m/g未満である、活性剤を含有するジケトピペラジン微粒子を含む。一実施態様は、必要に応じてヒトに前述のFDKPの微粒子を含有する乾燥粉末を投与することを含む、インスリン関連疾患を治療する方法を含む。該方法は、前述の範囲のSSAを有するフマリルジケトピペラジンの微粒子を含有する乾燥粉末製剤を対象に投与することを含む。種々の実施態様において、インスリン関連疾患は特に、糖尿病前症、1型糖尿病(ハネムーン期、前ハネムーン期、又は両方)、2型糖尿病、妊娠性糖尿病、低血糖症、高血糖症、インスリン耐性、分泌機能障害、早期のインスリン分泌不調、膵臓β細胞機能の喪失、膵臓β細胞の喪失、及び代謝障害のいずれか又はすべてを含み又は排除し得る。一実施態様において、乾燥粉末は、インスリンを含む。他の実施態様において、乾燥粉末は、グルカゴン、エキセンディン、又はGLP−1を含む。
【0014】
本明細書に開示される他の実施態様は、乾燥粉末として肺投与に適する微粒子を製造する方法を含む。一実施態様において、該方法は、製造コンディションを約52m/gの比表面積を有する微粒子の標的生成に製造コンディションを調節することで、95%信頼限界内で約35m/gから約67m/gの比表面積を有するジケトピペラジン微粒子を形成することを含む。他の実施態様において、調節製造コンディションは、供給溶液においてアンモニア、酢酸、及び/又はジケトピペラジンの温度又は濃度を上げる又は下げることを含む。
【0015】
本明細書に開示される他の実施態様は、FDKPといったジケトピペラジンを含有する乾燥粉末として肺投与に適した微粒子を製造する方法を含む。一実施態様において、該方法は、微粒子が約35m/gから約67m/gの表面積を有するFDKP化合物又は組成物を合成すること、及び標準的な表面積分析機を用いてm/gでの表面積を評価するようにFDKP微粒子の表面積を決定することを含む。他の実施態様において、比表面積は、活性剤添加前の決定の代わりに又はそれに加えて、微粒子への活性剤の吸収後に決定される;SSAは約62m/g未満である。一実施態様において、FDKP合成は、a)FDKP組成物を、塩基性pHを有する溶液に溶解させて、FDKP溶液を形成すること;b)揮発性酸の溶液を提供すること、及びc)高せん断ミキサーでFDKP溶液を揮発性酸の溶液と一緒に混合して微粒子を製造することを含む。
【0016】
特定の実施態様において、約35m/gから約67m/gの範囲の表面積を有するFDKP微粒子を製造する方法は、けん化反応及び再結晶化を含む。一実施態様において、a)FDKP化合物又は組成物を合成すること;b)工程a)のFDKP化合物を、塩基性pHを有する溶液に溶解させて、FDKP溶液を形成すること;c)揮発性酸の溶液を提供すること、及びd)高せん断ミキサーでFDKP溶液を揮発性酸の溶液と一緒に混合して微粒子を製造することを含む、乾燥粉末として肺投与に適する微粒子を製造する方法が開示される。該方法はさらに、粒子形成後に粒子の比表面積を決定する工程を含む。
【0017】
特定の実施態様において、約67m/g未満の比表面積を有するFDKP微粒子を合成する方法は、懸濁液を形成するように0.001−inオリフィスで、2000psiで、Dual−feed SONOLATOR(登録商標)といった高せん断ミキサーで、約14℃から約18℃で、等量の約10.5wt%酢酸及び約2.5wt%FDKP溶液を供給することを含む。該方法はさらに、微粒子を溶液から沈殿させ、並びに等量及び同温で脱イオン水容器において形成された微粒子を収集する工程を含む。この実施態様において、懸濁液は、約0.8%の固形分含量の微粒子を含む。ある実施態様において、該方法はさらに、タンジェント流ろ過を用いて、例えば脱イオン水において微粒子を洗浄することにより、微粒子懸濁液を濃縮することを含む。この及び他の実施態様において、沈殿物をまず約4%の固形分に濃縮し、その後さらに脱イオン水で洗浄し得る。いくつかの実施態様において、懸濁液を典型的には、用いられるFDKP組成物の初期質量に基づき約10%の固形分に濃縮し得る。濃縮された懸濁液については、オーブン乾燥法により固体含量を分析し得る。本明細書に開示される実施態様において、該方法はさらに、粒子の乾燥後に粒子の表面積を決定することを含む。
【0018】
本明細書に開示される組成物及び方法の特定の実施態様において、約67m/g未満の比表面積を有するジケトピペラジン微粒子は、式2,5−ジケト−3,6−ビス(N−X−4−アミノブチル)ピペラジンを有するジケトピペラジンを用い、Xはフマリル、スクシニル、マレイル、及びグルタリルからなる群より選択される。典型的な実施態様において、ジケトピペラジンは、式ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン又は2,5−ジケト−3,6−ビス(N−フマリル−4−アミノ−ブチル)ピペラジンを有する。
【0019】
本明細書に開示される他の実施態様は、約67m/g未満の比表面積を有し、薬物又は活性剤を含有するFDKP微粒子を製造する方法を含み、上記の比表面積は粒子への薬物の添加前に決定される。この実施態様において、該方法は、インスリン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、オキシントモジュリン、ペプチドYY、及び同様物を含むペプチドといった活性剤を含有する溶液を微粒子懸濁液に加えること;アンモニア水を懸濁液に加えて、例えば懸濁液のpHをpH4.5に上げること;反応物をインキュベートすること、及び液体窒素において得られた懸濁液を急速冷凍し、形成されたペレットを凍結乾燥して約67m/g未満の比表面積を有するFDKP微粒子を含有する乾燥粉末を製造することを含む。この実施態様の側面において、微粒子への活性剤の吸収後の微粒子の比表面積は、約62m/g未満である。
【0020】
一実施態様において、患者による乾燥粉末の吸入によって肺の深部に、約62m/g(充填されていない微粒子に基づき67m/g)未満の比表面積を有するジケトピペラジン微粒子を含有する乾燥粉末を投与することを含む、必要に応じて患者にインスリンを送達する方法が開示される。この実施態様の側面において、吸入器システムの特定の特徴が特定される。
【0021】
本明細書において開示される他の実施態様は、患者による乾燥粉末の吸入によって肺の深部に乾燥粉末を投与することを含む、必要に応じて患者に例えばインスリンといった薬物を送達する方法を含む。ここで、乾燥粉末はインスリンを含有するジケトピペラジン微粒子を含み、微粒子はジケトピペラジンから形成され、約35m/gから約67m/gの範囲の表面積を有する。この実施態様の側面において、微粒子への活性剤の吸収後の微粒子の比表面積は、約62m/g未満である。この実施態様の側面において、吸入器システムの特定の特徴が特定される。さらなる実施態様は、必要に応じてヒトに前述の乾燥粉末を投与することを含む、インスリン関連疾患を治療する方法を含む。種々の実施態様において、インスリン関連疾患は特に、糖尿病前症、1型糖尿病(ハネムーン期、前ハネムーン期、又は両方)、2型糖尿病、妊娠性糖尿病、低血糖症、高血糖症、インスリン耐性、分泌機能障害、早期のインスリン分泌不調、膵臓β細胞機能の喪失、膵臓β細胞の喪失、及び代謝障害のいずれか又はすべてを含み又は排除し得る。
【0022】
一実施態様において、内分泌関連疾患又は不調を治療する方法は、約67m/g未満の比表面積を有するFDKP微粒子及び前記疾患又は不調を治療するのに適した薬物を含有する乾燥粉末製剤を必要に応じてヒトに投与することを含む。この実施態様の側面において、微粒子への活性剤の吸収後の微粒子の比表面積は、約62m/g未満である。一実施態様は、前述のFDKPの微粒子を含有する乾燥粉末を必要に応じてヒトに投与することを含む、インスリン関連疾患を治療する方法を含む。該方法は、約67m/g未満の比表面積を有するFDKPの微粒子及びインスリンを含有する乾燥粉末製剤を対象に投与することを含む。この実施態様の側面において、微粒子への活性剤の吸収後の微粒子の比表面積は、約62m/g未満である。種々の実施態様において、インスリン関連疾患は特に、糖尿病前症、1型糖尿病(ハネムーン期、前ハネムーン期、又は両方)、2型糖尿病、妊娠性糖尿病、低血糖症、高血糖症、インスリン耐性、分泌機能障害、早期のインスリン分泌不調、膵臓β細胞機能の喪失、膵臓β細胞の喪失、及び代謝障害のいずれか又はすべてを含み又は排除し得る。一実施態様において、該乾燥粉末は、インスリンを含有する。他の実施態様において、該乾燥粉末は、グルカゴン、エキセンディン、又はGLP−1を含有する。
【0023】
以下の図は、本明細書の一部を形成し、本明細書に開示される実施例のある側面をさらに説明するために含まれる。本開示は、本明細書に記載の特定の実施態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図の1又は2以上を参照することによってより良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1A】大きい比表面積(SSA)を有する微粒子を示す。
【図1B】小さい比表面積(SSA)を有する微粒子を示す。
【図2】一般的な球状形態を有するフマリルジケトピペラジン(FDKP)微粒子を示す図である。
【図3】FDKP製造工程の概略を示す図である。
【図4A】図3で示された概略図に従って製造された微粒子/インスリン粉末の予測SSA及び実際のSSAを示す図である。
【図4B】図3で示された概略図に従って製造された微粒子/インスリン粉末の予測SSA及び実際のSSAを示す図である。
【図5A】RF/fillと供給溶液温度との間の関係を示す図である。
【図5B】RF/fillと(FDKP微粒子の)との間の関係を示す図である。
【図5C】(FDKP微粒子の)SSAと供給溶液温度との間の関係を示す図である。
【図6A】RF/fillと微粒子/インスリン粉末のSSAとの間の関係を示し、SSA>約62m/gの粉末がRF/fill<40%の5%確率を有することを示す図である。
【図6B】供給濃度からSSAを予測することにおける不確実性によるSSAに対する製造ターゲットを示す図である。
【図7】微粒子/インスリン粉末のSSAに応じたRF/fillを示す図である。各ポイントは、微粒子/インスリン粉末の異なる一群を表す。
【図8A】約4%固形分での微粒子懸濁液の見掛け粘度への微粒子/インスリン粉末のSSAの影響を示す図である。
【図8B】懸濁液粘度と粉末パフォーマンスとの間の関係を示す図である。
【図9】FDKP微粒子のSSAに応じた上清におけるインスリン濃度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
上述の通り、肺へのドラッグデリバリーは、多くの利点をもたらす。肺へ薬物を送達することは困難である。しかしながら、それは、均一な容積及び重量を有する薬物が生体の物理的バリアを通過して輸送されることの問題に起因する。本明細書において、ドラッグデリバリー媒体として約67m/g未満の比表面積を有するジケトピペラジン微粒子、微粒子の製造方法、及び微粒子を用いた治療方法が開示される。
【0026】
本明細書で用いられるように、“微粒子”という用語は、特定の外部又は内部構造にかかわらず、約0.5μmから約1000μmの直径を有する粒子を意味する。約0.5μmから約10μmの間の直径を有する粒子は、肺に到達し得、ほとんどの生体バリアを良好に通過する。約10μm未満の直径が気管の曲がり角を進むために必要とされ、約0.5μm又はそれ以上の直径が吐き出されるのを回避するために必要とされる。最も十分な吸収が起こると考えられている肺深部(又は肺胞領域)に到達させるために、“吸入性画分”(RF)に含まれる粒子の割合を最大化することが好ましく、通常約0.5μmから約5.7ミクロンの空気力学径を有する粒子となるように受け入れられ(いくつかの文献はいくらか異なる範囲を用いるが)、例えば、アンダーソンカスケードインパクタによる標準的技術を用いて測定される。NEXT GENERATION IMPACTOR(商標名)(NGI(商標名)、MSP Corporation)といった他のインパクタが、空気力学径を測定するために用いられ得、吸入性画分が例えば<6.4μmの同空気力学径により規定される。いくつかの実施態様において、レーザー回折装置が粒子径を決定するために用いられ、米国特許出願12/727,179号明細書(出願日2010年3月18日)に開示されるレーザー回折装置が例示され(関連技術に対してその全体において本明細書に取り込まれる)、粒子の容積メジアン幾何学径(VMGD)が吸入システムのパフォーマンスを評価するために測定される。例えば、種々の実施態様において、≧80%、≧85%、又は≧90%のカートリッジ排出、及び≦12.5μm、≦7.0μm、又は≦4.8μmの放出された粒子のVMGDは、漸増するより良好な空気力学的パフォーマンスを示唆し得る。本明細書において開示される実施態様は、約67m/g未満の比表面積を有するFDKP微粒子が、改善された空気力学的パフォーマンスといった、肺への薬物の送達に有益な特性を示すことを表す。
【0027】
1回量における吸入性画分(RF/fill)は、肺送達に適するサイズで放出される充填された用量からの粒子の割合であり、微粒子の空気力学的パフォーマンスの測定値である。本明細書に記載されるように、40%又は40%以上のRF/fill値は、許容可能な空気力学的パフォーマンス特性を反映する。本明細書において開示されるある実施態様において、1回量における吸入性画分は、50%以上であり得る。典型的な実施態様において、1回量における吸入性画分は、約80%までであり得、1回量の約80%は、標準的技術を用いて測定される<5.8μmの粒子サイズで放出される。
【0028】
本明細書に用いられるように、“乾燥粉末”の用語は、噴射剤、キャリア、又は他の液体中に懸濁され又は溶解されていない微粒子組成物を意味する。必ずしもすべての水分子の完全な除去を意味するものではない。
【0029】
特定のRF/fill値は、粉末を送達するために用いられる吸入器に依存し得ると理解されるべきである。粉末は通常、凝集する傾向にあり、結晶性のDKP微粒子は、特に凝集性の粉末を形成する。乾燥粉末吸入器の機能の一つは、得られた粒子が吸入器により1回量を送達するのに適した吸入性画分を含むように、粉末を細分化することである。しかしながら、凝集性の粉末の細分化は典型的には、吸入器により送達された吸入性画分を測定する際にみられる粒子サイズ分布が主な粒子のサイズ分布に合致しないように、不完全である。それは、プロファイルが大きな粒子の方にシフトするということである。吸入器のデザインは細分化の効率において変化し、したがって、異なるデザインを用いて観察されるRF/fillの絶対値もまた変化するだろう。しかしながら、比表面積に応じた最適RF/fillは、吸入器間で同じであろう。
【0030】
本明細書で用いられるように、“約”という用語は、値が、値を決定するために用いられる装置又は方法に対する測定値の標準偏差を含む、ということを示唆するために用いられる。
【0031】
ジケトピペラジン
【0032】
薬物の不安定性及び/又は乏しい吸収性といった薬学分野における問題に打ち勝つために用いられてきたドラッグデリバリー媒体の一つのクラスは、2,5−ジケトピペラジンである。2,5−ジケトピペラジンは、下記に示される一般式1の化合物により表され、E及びEは独立してNであり、又はより具体的にはNHである。他の実施態様において、E及び/又はEは独立して酸素原子又は窒素原子であり、E及びEの置換基のひとつが酸素原子であり他方が窒素原子である場合、化学式は置換類似ジケトモルフォリンとなり、E及びEの両方が酸素原子である場合、化学式は置換類似ジケトジオキサンとなる。
【化1】

【0033】
これらの2,5−ジケトピペラジンは、ドラッグデリバリーにおいて有用であることが示されてきた。特に、酸性のR及びR基を有するものであり、例えば、米国特許第5,352,461号(発明の名称“Self Assembling Diketopiperazine Drug Delivery System”);米国特許第5,503,852号(発明の名称“Method For Making Self−Assembling Diketopiperazine Drug Delivery System”);米国特許第6,071,497号(発明の名称“Microparticles For Lung Delivery Comprising Diketopiperazine”);及び米国特許第6,331,318号(発明の名称“Carbon−Substituted Diketopiperazine Delivery System”)に記載される(ジケトピペラジン及びジケトピペラジン介在のドラッグデリバリーに関して教示するすべてに対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)。ジケトピペラジンは、薬物又は微粒子を取り込む微粒子に形成され得、それには薬物が吸収され得る。薬物とジケトピペラジンとの組み合わせは、改善された薬物安定性及び/又は吸収特性をもたらし得る。これらの微粒子は、種々の投与ルートで投与され得る。乾燥粉末として、これらの微粒子は、肺を含む呼吸器系の特定の領域に吸入によって送達され得る。
【0034】
このような微粒子は典型的には、遊離酸(又は遊離塩基)のpHベースの沈殿により得られ、凝集された結晶性プレートからなる自己集合された微粒子となる。粒子の安定性は、DKP溶液中の少量のポリソルベート−80といった界面活性剤により改善され得、粒子が沈殿する(米国特許出願2007/00593873号明細書(発明の名称“Method of drug formulation based on increasing the affinity of crystalline microparticle surfaces for active agents”)(DKP微粒子及び乾燥粉末の形成及び包含に関して教示するすべてに対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)を参照)。最終的には溶媒は除去されて乾燥粉末が得られ得る。溶媒除去の適切な方法は、凍結乾燥及び噴霧乾燥(例えば、米国特許出願2007/0196503号明細書(発明の名称“A method for improving the pharmaceutic properties of microparticles comprising diketopiperazine and an active agent”及び米国特許第6,444,226号(発明の名称“Purification and stabilization of peptide and protein pharmaceutical agents”)(DKP微粒子及び乾燥粉末の形成及び包含に関して教示するすべてに対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)を参照)を含む。本明細書において開示される微粒子は、DKPの塩からなる微粒子とは異なる。このような粒子は典型的には、噴霧乾燥により形成(乾燥されるとは反対である)され、非結晶性塩(遊離酸又は遊離塩基とは反対である)の球体及び/又は崩壊性球体となる。それらは化学的、物理的、及び形態学的に異なるものである。本開示は、遊離酸又は溶解されたアニオンとして理解されるFDKPに言及する。
【0035】
ジケトピペラジンの合成方法は、例えば、Katchalski,et al.,J.Amer.Chem.Soc.68,879−880(1946)、及びKopple,et al.,J.Org.Chem.33(2),862−864(1968)に記載される(それらの全体において参照により本明細書に取り込まれる)。2,5−ジケト−3,6−ジ(アミノブチル)ピペラジン(Katchalski et al、リシン無水物としてこれを参照)はまた、Kopple法と同様に溶融フェノール中のN−ε−P−L−リシンの環状二量化、その後適切な試薬及びコンディションでの保護(P)−基の除去により調製され得る。例えば、CBz保護基は、酢酸中の4.3M HBrを用いて除去され得る。このルートは、好ましいものとされ得る。商業的に入手可能なスターティングマテリアルを用い、製品におけるスターティングマテリアルの立体化学を保つことが報告された反応コンディションを含み、及びすべての工程は製造のために容易にスケールアップされ得るためである。ジケトピペラジンの合成方法はまた、米国特許7,709,639号(発明の名称“Catalysis of Diketopiperazine Synthesis”)に記載される(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)。
【0036】
フマリルジケトピペラジン(ビス−3,6−(N−フマリル−4−アミノブチル)−2,5−ジケトピペラジン;FDKP)は、肺への適用のための一つの好ましいジケトピペラジンである。
【化2】

【0037】
FDKPは、有用な微粒子マトリックスを提供する。酸性では低い溶解性を有するが中性又は塩基性pHでは容易に溶解するためである。これらの特性は、FDKPを結晶化させ、結晶を酸性コンディション下で微粒子を形成するように自己集合させることができる。粒子は、pHが中性である生理学的コンディション下で容易に溶解する。前述の通り、約0.5ミクロンと約10ミクロンとの間の直径を有する微粒子は、肺に到達し得、生体バリアのほとんどを良好に通過する。このサイズ範囲の粒子は、FDKPから容易に調製され得る。
【0038】
前述の通り、約0.5ミクロンと約10ミクロンとの間の直径を有する微粒子は、肺に到達し得、生体バリアのほとんどを良好に通過する。このサイズ範囲の粒子は、FDKP(2,5−ジケト−3,6−ジ(4−X−アミノブチル)ピペラジン(Xはスクシニル、グルタリル、又はマレイルである)といった関連分子も同様である)のカルボキシレート基といった酸性基によりジケトピペラジンから容易に調製され得る。酸沈殿において、結晶板の凝集体からなる自己集合した粒子が得られる。これらの板のサイズは、粒子の比表面積に関連し、同様に粒子の構造、負荷能力、及び空気力学的パフォーマンスに影響を与えている。
【0039】
DKP粒子の比表面積は、平均結晶サイズの測定値であり、結晶核形成及び成長の微粒子特性への相対的貢献を評価するために用いられ得る。比表面積は、微粒子結晶のサイズ及び微粒子マトリックスの密度(ρ)に依存し、結晶の特徴的なサイズLに反比例する。比表面積は、粒子の集団の性質であり、必ずしも個別の粒子の特性ではない。本明細書に開示される実施態様は、約67m/g未満の比表面積を有する微粒子が、米国特許第7,464,706号(発明の名称“Unit Dose Cartridge and Dry Powder Inhaler”)(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるMEDTONE(登録商標)吸入器といった中程度の性能の吸入器を用いて、改善された空気力学的パフォーマンスといった、肺への薬物の送達に有益な特性を示すことを表す。約62m/g未満の比表面積を有する他の実施態様は、粒子の一群が最小の空気力学的パフォーマンスの基準を満たすことの保証の、より高いレベルを提供する。比表面積がまた薬物充填/含有能力に影響を与えるように、種々の実施態様は、改善された薬物吸収能力に対して約35m/g、40m/g、又は45m/gよりも大きい又はそれに等しい比表面積を要する。さらに、比表面積が約35m/gを下回ると、一貫性のないカートリッジ排出が、米国特許出願第12/484,125号(発明の名称“A Dry Powder Inhaler and System for Drug Delivery”、出願日2009年6月12日、及び米国特許出願第12/717,884号(発明の名称“Improved Dry Powder Drug Delivery System”、出願日2010年3月4日)(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるような高性能の吸入器を用いても観察される。
【0040】
比表面積範囲の上限
【0041】
本明細書において規定される比表面積範囲の上限は、微粒子の空気力学的パフォーマンスにより強制的に規定される。本明細書に記載された試験は、比表面積が約50m/gより大きくなると、RF/fill値が小さくなる傾向にあることを示した。さらに、比表面積が増大すると、RF/fillの分布が拡大し、RF/fillの選ばれた基準(例えばRF/fill>40%)の落ち込みの確率が上がる。そのため、いくつかの実施態様において、約67m/gの上限が選択され得る。多くの調製のために収集されたデータに合うカーブに基づいて、この値は、40%のRF/fillをもたらすと予測される。他の実施態様において、約62m/gの上限が選択され得る。62m/gの上限は、95%信頼限界内の許容可能なRF/fill値を有する微粒子をもたらす(図6A)。
【0042】
微粒子の比表面積の上限を強制的に規定する他の理由は、高い比表面積を有する微粒子の懸濁液は、より低い比表面積を有する微粒子の懸濁液よりも桁違いに高い粘性を有する傾向にあるということである。この現象は、より小さい結晶に関連した粒子間引力の増大を反映するらしい。凍結乾燥において、より強い引力は、懸濁液の粘性がRF/fillと負の相関関係にあるように、効率的に細分化されずRF/fillを低下させる可能性のある、凝集を引き起こすかもしれない。
【0043】
微粒子の比表面積は、凍結乾燥されたバルクの粉末から決定され、微粒子の形成コンディションから正確には予測されない。したがって、約52m/gの比表面積をターゲットとすることが望ましいことあり得る。比表面積ターゲットとして設定された約52m/gで、微粒子の5%のみが、62m/gのより保守的な上限を超えることが予想されるだろう(図6B)。62m/gを超え得る微粒子のこの5%内で、さらに5%(0.25%)のみが<40%のRF/fillを示すことが予想されるだろう。したがって、これらの製造コンディションは、99%信頼限界以上の>40%のRF/fillを有する微粒子を提供するだろう。
【0044】
比表面積範囲の下限
【0045】
本明細書において規定される比表面積範囲の下限は、薬物充填の必要性により強制的に規定される。微粒子は、必要とされる薬物量を充填するのに十分な比表面積を有していなければならない。薬物が十分に吸収されないと(すなわち、溶液中に残される)、吸収されなかった薬物が形成された微粒子を“橋渡し(bridge)”し凝集体の形成を引き起こし得る。凝集体は空気力学的特性に悪影響を及ぼし得る。インスリンの場合において、適切な治療用量でインスリンによる橋渡し(bridging)を回避するために、約35m/gのより低い比表面積限界が必要とされる。橋渡し(bridging)はまた、前述のようにカートリッジの低排出をきたす可能性があり、それはより低い比表面積を有する粉末で生じ得る。これらの問題が回避され得、充填が最大化され得ることのより大きな保証を提供するために、さらに高い比表面積の下限(例えば、40m/g又は45m/g)が用いられ得る。あるいは、空気力学的パフォーマンスに影響を与える他のファクターが、より狭い許容範囲内で維持され得る。図1Aは、高い比表面積を有する微粒子の一群を示す。図1Bは、低い比表面積を有する微粒子におけるインスリンによる粒子の“橋渡し(bridging)”を示す。
【0046】
FDKP微粒子形成
【0047】
FDKP微粒子の製造における第一の工程は、FDKPのpH誘導結晶化による微粒子の形成及び一般的な球状形態を有する微粒子へのFDKP結晶の自己集合である(図2)。したがって、微粒子の製造は本質的には、結晶化プロセスである。過剰の溶媒を、繰り返される遠心分離、デカンテーション及び再懸濁、又は透析により懸濁液を洗浄することにより除去し得る。
【0048】
インスリン充填FDKP微粒子を形成するために、FDKP微粒子懸濁液にインスリンストック溶液を加えることにより懸濁させる間(つまり、凍結乾燥の前)、微粒子に直接的にインスリンを吸収させ得る。一実施態様において、pH制御工程はまた、インスリンストック溶液の添加後に行われ得る。この工程は、さらなる処理前の懸濁液において微粒子へのインスリン吸収を促進し得る。懸濁液のpHを約4.5に上昇させることは、粒子マトリックスからのFDKPの過剰な溶解無しで懸濁液における微粒子への完全なインスリン吸収を促進し、また、バルクの薬物生成物におけるインスリンの安定性を向上させる。懸濁液は、液体窒素中で滴下して急速冷凍(すなわち、冷凍ペレット化)され、及び溶媒を除去し乾燥粉末を得るように凍結乾燥され得る。他の実施態様において、懸濁液は、乾燥粉末を得るように噴霧乾燥され得る。図3は、適切な製造プロセスの概略図を提供する。
【0049】
一実施態様において、インスリンを含有するFDKP微粒子を作るための製造プロセスが提供される。要約すると、Dual−feed SONOLATOR(登録商標)といった高せん断ミキサー、又は例えば、米国仮特許出願第61/257,311号(出願日:2009年11月2日)に開示される(それはすべてにおいて参照により本明細書に取り込まれる)高せん断ミキサーを用いて、約16℃±約2℃で等量の約10.5wt%の酢酸と約2.5wt%のFDKP溶液とを(表1及び2)、0.001−inオリフィスで、Dual−feed SONOLATOR(登録商標)により、2000psiで供することができる。沈殿物を約等量及び約同温の脱イオン(DI)水容器に収集し得る。得られた懸濁液は、約0.8%の固形分を含む。沈殿物を濃縮し、タンジェント流ろ過により洗浄し得る。沈殿物をまず約4%の固形分に濃縮し、その後脱イオン水で洗浄し得る。懸濁液を最終的にFDKPの初期質量に基づき約10%の固形分に濃縮し得る。濃縮された懸濁液については、オーブン乾燥法により固体含量を分析し得る。
【0050】
一実施態様において、濃縮されたインスリンのストック液は、インスリン1に対して約2wt%酢酸9を用いて調製され得る。インスリンのストックは、重量測定法で懸濁液に添加されて、約11.4wt%のインスリン濃度のものが得られ得る。インスリン−FDKP懸濁液は、少なくとも約15分間混合され得る。いくつかの実施態様において、混合はより短い時間又はより長い時間をとり得る。インスリン−FDKP懸濁液は、その後、最初のpH約3.5からpH約4.5に約14−約15wt%アンモニア水で調節され得る。懸濁液は、液体窒素中で急速冷凍されてペレット化され、及び凍結乾燥されてバルクのインスリン含有FDKP微粒子を得ることができる。ブランクのFDKP微粒子は、インスリン充填及びpH調節工程を互いに差し引いて製造され得る。一実施態様において、本明細書に記載される微粒子を含有するFDKP−インスリンバルク粉末の密度は、約0.2g/cmから、約0.3g/cmである。
【表1】


【表2】

【0051】
比表面積の制御
【0052】
サイズ分布及びFDKP結晶の形は、新しい結晶の核生成と既存の結晶の成長との間のバランスにより影響を受ける。両現象は、溶液における濃度及び過飽和に強く依存する。FDKP結晶の特徴的なサイズは、核生成と成長との相対的比率の示唆となる。核生成が優性である場合、多くの結晶が形成されるが、それらは相対的に小さい。それらはすべて溶液においてFDKPと競合するためである。成長が優性である場合、結晶との競合はより少なくなり、結晶の特徴的なサイズはより大きくなる。
【0053】
結晶化は過飽和に強く依存し、それは同様に供給ストリームにおける成分の濃度に強く依存する。より高い過飽和は、多くの小さな結晶の形成に関連し;より低い過飽和は、より少なくより大きな結晶を作り出す。過飽和の観点から:1)FDKP濃度の上昇は過飽和を増大させ;2)アンモニアの濃度の上昇は、pH約4.5のようなより高いpHにシステムをシフトさせ、平衡溶解度を増大させ、及び過飽和を低減させ;3)酢酸濃度の上昇は、エンドポイントを、平衡溶解度がより低い、より低いpHにシフトさせることにより過飽和を増大させる。これらの成分の濃度の低減は、反対の作用を引き起こす。
【0054】
温度は、FDKP溶解度並びにFDKP結晶核生成及び成長の動力学への影響を介してFDKP微粒子形成に影響を及ぼす。低温では、小さい結晶が高い比表面積で形成される。これらの粒子の懸濁液は、強い粒子間引力を示す高い粘性を示す。約12℃から約26℃の温度範囲は、95%信頼レベルでRF/fill>40%をもたらす。温度と比表面積との間の関係を説明することにより、約13℃から約23℃の、わずかにより狭いが内面的には一貫した温度範囲が用いられ得る。
【0055】
最後に、微粒子の表面への活性剤の吸収が比表面積を低減する傾向にあることが認識されるべきである。活性剤の吸収は、粒子を形成する結晶板間のより狭いスペースのいくらかを満たし又は塞ぎ得、その結果、比表面積が低減する。さらに、活性剤の吸収は、粒子の直径(サイズ)に実質的に影響を与えることなく、粒子に質量を加える。比表面積が微粒子の質量に反比例するように、比表面積の低減が生じるだろう。
【0056】
活性剤の選定及び取り込み
【0057】
本明細書で記載される微粒子が約67m/g未満の所望の比表面積を維持する限り、それらは肺への送達及び/又は薬物吸収に有利である他の付加的な特性をもたらし得る。米国特許第6,428,771号(発明の名称“Method for Drug Delivery to the Pulmonary System”)は、肺へのDKP粒子送達を開示し、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。米国特許第6,444,226号(発明の名称“Purification and Stabilization of Peptide and Protein Pharmaceutical Agents”)は、微粒子表面に薬物を吸収する有利な方法を開示し、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。米国特許出願第11/532,063号(発明の名称“Method of Drug Formulation based on Increasing the Affinity of Crystalline Microparticle Surfaces for Active Agents”)(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるように、微粒子表面の特性は、所望の特性を得るためにコントロールされ得る。米国特許出願第11/532,065号(発明の名称“Method of Drug Formation based on Increasing the Affinity of Active Agents for Crystalline Microparticle Surfaces”)は、微粒子への活性剤の吸収を促進させるための方法を開示する。米国特許出願第11/532,065号は、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。
【0058】
本明細書に記載される微粒子は、1又は2以上の活性剤を含み得る。本明細書において用いられるように、“活性剤”(“薬物”と同義で用いられる)は、薬学的物質を意味し、低分子薬物、生物学的及び生物活性的薬剤を含む。活性剤は、自然発生的なもの、リコンビナント、又は合成起源のものでもよく、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、核酸、有機高分子、合成有機化合物、ポリサッカライド、その他の糖、脂肪酸、脂質、抗体、及びそれらのフラグメントを含み、限定されることなく、ヒト化若しくはキメラ抗体、F(ab)、F(ab)、単独の単鎖抗体若しくは他のポリペプチドに結合している単鎖抗体、癌抗原に対する治療的若しくは診断的モノクローナル抗体を含む。活性剤は、血管作動剤、神経活性剤、ホルモン、抗凝固剤、免疫調節剤、細胞毒性剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、抗原、感染性因子、炎症性メディエータ、ホルモン、及び細胞表面抗原といった、種々の生物学的活性及びクラスに属し得る。より具体的には、活性剤は、限定されることなく、サイトカイン、リポカイン、エンケファリン、アルキン、シクロスポリン、抗−IL−8抗体、ABX−IL−8を含むIL−8アンタゴニスト、PG−12を含むプロスタグランディン、LY29311を含むLTB受容体ブロッカー、BIIL284及びCP105696、スマトリプタン及びパルミトオレエートといったトリプタン、インスリン及びその類似体、成長ホルモン及びその類似体、副甲状腺ホルモン(PTH)及びその類似体、副甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)、グレリン、オベスタチン、エンテロスタチン、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、アミリン、アミリン類似体、グルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)、クロピドグレル、PPACK(D−フェニルアラニル−L−プロリル−L−アルギニンクロロメチルケトン)、オキシントモジュリン(OXM)、ペプチドYY(3−36)(PYY)、アディポネクチン、コレシストキニン(CCK)、セクレチン、ガストリン、グルカゴン、モチリン、ソマトスタチン、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、IGF−1、成長ホルモン放出因子(GHRF)、インテグリンβ−4前駆体(ITB4)受容体アンタゴニスト、ノシセプチン、ノシスタチン、オルファニンFQ2、カルシトニン、CGRP、アンジオテンシン、サブスタンスP、ニューロキニンA、膵臓ポリペプチド、ニューロペプチドY、デルタ睡眠誘発ペプチド、並びに血管作用性小腸ペプチドを含み得る。微粒子はまた、他の薬剤(例えば、テキサスレッドといった造影剤)を送達するために用いられ得る。
【0059】
約67m/g未満の比表面積を有するFDKPから形成される微粒子において送達される薬物含量は、典型的には0.01%以上である。一実施態様において、前述の比表面積を有する微粒子で送達される薬物含量は、約0.01%から約20%の範囲であり得、それは典型的にはインスリンといったペプチドである。例えば、薬物がインスリンである場合、本微粒子は典型的には3−4U/mg(およそ10−15%)のインスリンを含む。ある実施態様において、微粒子の薬物含量は、送達される薬物の形態及びサイズに依存して変化し得る。
【0060】
本明細書で記載される微粒子が所望の比表面積を維持する限り、それらは肺への送達及び/又は薬物吸収に有利である他の付加的な特性を採用し得る。米国特許第6,428,771号(発明の名称“Method for Drug Delivery to the Pulmonary System”)は、肺へのDKP粒子送達を開示し、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。米国特許第6,444,226号(発明の名称“Purification and Stabilization of Peptide and Protein Pharmaceutical Agents”)は、微粒子表面に薬物を吸収する有利な方法を開示し、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。米国特許出願第11/532,063号(発明の名称“Method of Drug Formulation based on Increasing the Affinity of Crystalline Microparticle Surfaces for Active Agents”)(同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるように、微粒子表面の特性は、所望の特性を得るためにコントロールされ得る。米国特許出願第11/532,065号(発明の名称“Method of Drug Formation based on Increasing the Affinity of Active Agents for Crystalline Microparticle Surfaces”)は、微粒子への活性剤の吸収を促進させるための方法を開示する。米国特許出願第11/532,065号は、同様のことに関して教示する事項に対して全体において参照により本明細書に取り込まれる。
【実施例】
【0061】
下記の実施例は、開示された微粒子の実施態様を説明するために含まれる。本技術分野における当業者により、下記の実施例に開示される技術が、本開示の実施において良好に機能するように発明者により発見された技術を表し、したがってその実施のために好ましい形態を構成するように考慮され得ることが理解されるべきである。しかしながら、本技術分野における当業者であれば、本開示を踏まえて、多くの変更が開示された特定の実施態様において作られ得ることを理解し、さらに、同様又は類似の結果を得るべきである。
【0062】
(実施例1)
I.製造手順
【0063】
A.FDKP/インスリン微粒子生成のための一般的な製造手順
【0064】
微粒子は、フマリルジケトピペラジン(FDKP)及びインスリンから製造された。溶液を形成するためにFDKPをNHOH水に溶解した。この溶液の供給ストリームは、微粒子の水性懸濁液を形成するために高せん断ミキサーにおいて酢酸水(HOAc)溶液の供給ストリームと組み合わされた。
【0065】
FDKP供給溶液は、約2.5wt%FDKP、約1.6wt%濃縮NHOH(約28−約30wt%NH)、及び約0.05wt%ポリソルベート80により調製された。酢酸供給溶液は、約10.5wt%氷酢酸及び約0.05wt%ポリソルベート80で調製された。両方の供給溶液は、使用前に約0.2μmの膜を用いてろ過した。
【0066】
図3は、インスリンを含有するFDKP微粒子を作るための製造プロセスの概略図を示す。この実施態様において、高せん断ミキサー(例えば、Dual−feed SONOLATOR(登録商標))又は米国仮特許出願第61/257,311号(出願日2009年11月2日)(全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるようなものを用いて、等量(質量による)の各供給溶液を、#5オリフィス(0.0011sq.inch)を備えたDual−Feed SONOLATOR(登録商標)で汲み上げた。負圧ポンプを各供給ストリームの同じ流速に対して50%で設定し、供給圧力は約2000psiであった。受容管は、各々の供給溶液の質量と同量のDI水を含んでいた(例えば、4kgのFDKP供給溶液及び4kgのHOAc供給溶液が、SONOLATOR(登録商標)で4kgのDI水を含む受容管に汲み上げられるだろう)。
【0067】
得られた懸濁液を濃縮し、0.2mPES(ポリエーテルスルホン)膜を用いてタンジェント流ろ過により洗浄した。懸濁液をまず約4%の固形分に濃縮し、その後DI水で透析ろ過し、最後に約16%の固形分に濃縮した。洗浄された懸濁液の実際の固形分割合は、“乾燥減量”により決定した。他の方法が懸濁液中の固形分割合を測定するために用いられ得、例えば、米国仮特許出願第61/332,292号(発明の名称“Determining Percent Solids in Suspension Using Raman Spectroscopy”、出願日2010年5月7日)(教示するすべてに対して全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示される。
【0068】
DI水中に約2wt%HOAcを含む溶媒において約10wt%インスリン(未処理)を含有するインスリンストック溶液を調製し、滅菌ろ過した。懸濁液の固体含量に基づき、適切な量のストック溶液を混合された懸濁液に加えた。得られた微粒子/インスリン懸濁液をその後、アンモニア溶液を用いてpH約3.6からpH約4.5の懸濁液のpHに制御することで調節した。
【0069】
インスリンを含むFDKP微粒子を含有する懸濁液を、例えば米国仮出願第61/257,385号(出願日2009年11月2日)(全体において参照により本明細書に取り込まれる)に開示されるような冷凍製粒器/ペレタイザーに移し、液体窒素中で急速冷凍することでペレット化した。アイスペレットを凍結乾燥させ、乾燥粉末を製造した。
【0070】
B.5%及び10%試験において用いられたFDKP/インスリン微粒子生成の製造手順
【0071】
5%及び10%試験において、比表面積及び粉末空気力学への供給濃度の影響を試験した。5%試験において、実験は、3つのファクター、すなわち、FDKP、アンモニア、及び酢酸の濃度の影響を決定するためにデザインされ、3×3要因実験において試験され、高レベル及び低レベルがコントロールコンディションから5%であった。10%試験において、FDKP、アンモニア、及び酢酸の濃度もまた3×3要因実験において試験されたが、高レベル及び低レベルがコントロールコンディションから10%であった。
【表3】

【0072】
C.最終測定値
【0073】
バルク粉末の1回量における吸入性画分(RF/fill)は、空気力学的性能及び微粒子サイズ分布の測定値であり、アンダーソンカスケードインパクタで試験することにより決定される。RF/fill値を得るためには、カートリッジをバルク粉末で充填し、30L/minでMEDTONE(登録商標)吸入器で噴射する。各々の吸入器ステージで収集された粉末の重量を測定し、収集されたトータルの粉末をカートリッジに充填されたトータル量に標準化する。したがって、RF/fillは、カートリッジに充填された粉末により分割された吸入性画分を表すインパクタのステージにおいて収集された粉末である。
【0074】
微粒子の比表面積(SSA)は、窒素の吸収により決定され、比表面積分析器(MICROMERITICS(登録商標)TriStar 3000 Surface Area及びPorosity Analyzer)を用いてBET(Brunauer−Emmett−Teller)表面積の観点から報告された。比表面積は、結晶のサイズ及び微粒子マトリックスの密度(ρ)に依存し、FDKP結晶の特徴的なサイズLに反比例する。
【数1】

【0075】
II.比表面積における供給コンディションの影響
【0076】
比表面積は、5%及び10%試験において調製されたすべての粉末において測定された。比表面積は、線形回帰方程式により予測された(図3を参照)。予測値の標準偏差は、5%試験で±2m/gであり、10%試験で±5.6m/gであった。これらの結果は、理論的予想に沿う結果であった:より高いFDKP濃度、より高いHOAc濃度又はより低いアンモニア濃度は、結晶核生成を促進することにより比表面積を増大させた(より小さい結晶を生成した)。
【0077】
III.温度の影響
【0078】
粒子特性における温度の影響は、一連の試験において調査され、それにおいては温度を除く供給溶液特性が制御コンディションで設定された。供給溶液の温度は、4−32℃の範囲であった。微粒子粉末の比表面積及び得られた微粒子粉末のRF/fillは、両方決定された。
【0079】
RF/fill、比表面積、及び温度が図5においてクロスプロットされた(RF/fillはインスリン含有微粒子で決定された;プロットされた比表面積はインスリンの吸収前に粒子に対して決定されたものである)。微粒子粉末のRF/fillは、約18℃から約19℃近傍で最大化された(図5A)。破線の曲線は、予測値の片側95%下側信頼限界である(すなわち、該曲線より高い値は、95%確率で予測される)。約12℃から約26℃の温度範囲は、95%信頼レベルでRF/fill>40%をもたらすだろう。RF/fillがブランク(薬物無し)微粒子粉末の比表面積に対抗してプロットされると(図5B)、得られる曲線は、温度のそれと類似する。しかしながら、ポイントの順序は逆であった(例えば、サンプル“A”は軸の右端にあり、一方でサンプル“B”は左にある)。26−67m/gの比表面積を有する微粒子は、95%信頼レベルでRF/fill>40%をもたらす。温度と比表面積との間の関係を説明することにより(図5C)、約13℃から約23℃のわずかに狭いが内面的には一貫した温度範囲が粒子形成に対して特定された。
【0080】
IV.RF/fillにおける比表面積の影響
【0081】
約50m/g以上の比表面積の値で、より低いRF/fillの値となる傾向がある(図6A)。約62m/gの上限が、適切なRF/fillの値(それは、>40%である;図6B)における95%信頼限界をさらに維持する間、用いられ得る。
【0082】
図7は、比表面積が上限で増大すると、RF/fillの分布が広がり、及びRF/fill>40%の選択された基準を満たさない可能性が高くなることを示す。図8Aは、例えば約67m/gの高い比表面積を有する微粒子の懸濁液では、Brookfield Viscometer(Brookfield Engineering Laboratories,Inc.,Middleboro,MA)により測定すると、例えば<約14m/gのより低い比表面積を有する微粒子の懸濁液よりも、粘性が桁違いに高い傾向にあることを示す。図8Bは、懸濁液の粘性がRF/fillと負の相関関係にあることを示す。
【0083】
V.比表面積及びインスリン吸収
【0084】
比表面積とインスリン吸収との関係が調査された。
【0085】
微粒子の懸濁液は5%及び10%試験の群に対して前述されたように調製され、約11.4%のインスリンを充填した。さらに、制御供給濃度で形成された微粒子のみならず約4℃から約32℃の範囲の供給溶液温度もまた、評価された。滴下された懸濁液は、14wt%アンモニアの単一液滴の一連の添加により約pH3.6から約pH4.5に上げられた懸濁液のpHを有していた。滴下された懸濁液及び上清のサンプルで、インスリン濃度を評価した。すべての懸濁液(滴下された又は滴下されていない)を凍結乾燥させ、乾燥粉末を作った。MICROMERITICS(登録商標)TriStar 3000を用いて粉末の比表面積を評価した。
【0086】
低い比表面積では、非結合のインスリン量と比表面積との間に直線関係がある(図9)。インスリンの少なくとも95%の吸収は、比表面積が約35m/g以上のときに生じる。インスリン吸収の程度は、約40m/gまでの比表面積で増大し続ける。この比表面積以上では、微粒子はインスリンのほとんどすべてを吸収した。
【0087】
これらの試験の結果は、約35m/gから約62m/gの微粒子の比表面積に対する有用な下限及び上限を示唆する。微粒子の80%以上、90%以上、又は95%以上がこの範囲での比表面積を有する微粒子を提供することは、有利なRF/fillを有する微粒子及び95%信頼限界内の薬物吸収特性をもたらす。
【0088】
(実施例2)
容積メジアン幾何学径(VMGD)特性による放出された製剤の幾何学的粒子サイズ分析
【0089】
乾燥粉末吸入器から放出された乾燥粉末製剤のレーザー回折は、粉末に関する細分化のレベルを特徴づけるために用いられる通常の方法である。該方法は、工業的に標準的なインパクション方法においてもたらされる空気力学径よりもむしろ幾何学径の測定値を示唆する。典型的には、放出された粉末の幾何学的サイズは、メジアン粒子サイズ、VMGDにより特徴づけられた容積分布を含む。重要なことには、放出された粒子の幾何学的サイズは、インパクション法により提供される空気力学的サイズに比して、高い分解能で観察される。より小さいサイズが望ましく、肺の管に送達された個々の粒子の、より大きな可能性をもたらす。したがって、吸入器の細分化における違い及び最終的なパフォーマンスは、回折によりより容易に改善され得る。これらの実験において、吸入器は、現実の患者の呼吸能力に類似した圧力にてレーザー回折で試験され、粉末製剤を細分化する吸入システムの効率を決定する。特に、製剤は、成分を付与された活性インスリンを含む及び含まない粘着性のジケトピペラジン粉末を含んでいた。これらの粉末製剤は、特徴的な表面積、異性体比、及びCarr指数を有していた。表4では、VMGD、及び試験の間の容器の放出効率を報告している。FDKP粉末は、およそ50のCarr指数を有し、TI粉末はおよそ40のCarr指数を有している。
【表4】

【0090】
表4のデータは、MEDTONE(登録商標)吸入器システムにおいてDPI2として特定された吸入器における粉末細分化の改善を示す。14−56m/gの範囲の表面積を有するジケトピペラジン製剤は、85%を超える放出効率及び7ミクロン未満のVMGDを示した。同様に、45−66%のトランスの範囲の異性体比を有する製剤は、従前装置(predicate device)を超えた改善されたパフォーマンスを示した。しかしながら、<15m/gでより効率的な吸入器を用いた場合でも、本明細書にて開示される範囲から外れたトランス異性体含量の通り、空気力学的パフォーマンスの落ち込み(減少)を示す、カートリッジ放出の減少がみられた、といういうことは注目するものに値する。最後に、Carr指数40−50で特徴づけられる製剤での吸入器システムのパフォーマンスは、同様に従前装置(predicate device)を超えた改善を示した。すべての場合において、報告されたVMGD値は、7ミクロン未満であった。
【0091】
他に示唆のない限り、本明細書及び特許請求の範囲において用いられた成分の量、分子量といった特性、反応条件等を表現するすべての数字は、すべての場合において、用語“約”により変形されるように理解されるべきである。したがって、反対に示唆されない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲において用いられた数字のパラメータは、本発明により得られようとされる所望の特性に基づき変化し得る近似値である。少なくとも及び特許請求の範囲の範囲への均等物の適用を制限しようとすることなく、各々の数字のパラメータは少なくとも、報告される有効数字の数字を考慮して、及び通常の四捨五入の技術を適用することにより、理解されるべきである。本発明の広い範囲に記載された数字の範囲及びパラメータが近似値であるにもかかわらず、特定の実施例において記載された数値は、可能な限り正確に報告される。しかしながら、いかなる数値も本質的には、各々の試験測定において見出される標準偏差に起因する誤差を必然的に含む。
【0092】
本発明を記述する文脈において(特に、特許請求の範囲の文脈において)用いられる“ひとつの(a)”、“ひとつの(an)”、“該(the)”、及び同様の指示語は、本明細書において他に示唆のない限り、又は文脈により明確に否定されない限り、単数及び複数をカバーするように理解されるべきである。本明細書における値の範囲の記述は、単に範囲に含まれる各々の独立した値を個別に参照する省略方法として提供されるように意図されたにすぎない。本明細書において他に示唆のない限り、各々の個々の値は、それがまるで本明細書において個々に列挙されるように、本明細書に包含される。本明細書に記載されるすべての方法は、本明細書において他に示唆のない限り、又は文脈により明確に否定されない限り、適切ないかなる方法においても行われ得る。本明細書において提供されるいずれかの及びすべての実施例、又は典型的な言語(例えば、“といった(such as)”)の使用は、単に本発明の理解を容易にするようにしたにすぎず、他にクレームされた本発明の範囲における限定をもたらさない。本明細書におけるいかなる言語も、本発明の実施に本質的であるクレームされていないいかなる要素をも示唆するように理解されるべきではない。
【0093】
特許請求の範囲において用いられる“又は(or)”は、本明細書において他のもののみを言及するように明確に示唆されない限り、又は他のものが互いに排他的でない限り、開示が他のもの及び“及び/又は(and/or)”のみに言及する定義を支持するものではあるが、“及び/又は(and/or)”を意味するように用いられる。
【0094】
本明細書に開示される本発明の代替要素又は態様の集団は、限定されて理解されるべきではない。各々の集団要素は、個々に又は該集団の他の要素若しくは本明細書においてみられる他の要素との組み合わせにて言及され及びクレームされ得る。集団の1若しくは2以上の要素は、利便性及び/若しくは特許性を理由に集団に包含され得、又は集団から削除され得ることが予測される。こうした包含又は削除が生じる場合、本明細書は、変形された集団を含むと考えられ、その結果、添付された特許請求の範囲において用いられるすべてのマーカッシュの集団の明細書を充足する。
【0095】
本発明の好ましい態様は、本発明を実施するために本発明者らに知られたベストモードを含んで本明細書に記載される。むろん、これらの好ましい態様における変形は、前述の記載を読むことにおいて本技術分野の当業者に明白となるだろう。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのような変形を用いることを期待し、本発明者らは、本発明に対して本明細書に具体的に記載されたものよりもむしろ他の方法で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用法律により許容されるように本明細書に添付された特許請求の範囲において列挙される対象物のすべての変形物及び均等物を含む。さらに、すべての可能性のある変形における上述の要素のいかなる組み合わせも、本明細書において他に示唆のない限り、又は文脈により明確に否定されない限り、本発明により包含される。
【0096】
本明細書に開示される特定の態様は、言語からなる又は本質的に言語からなる特許請求の範囲においてさらに限定され得る。特許請求の範囲において用いられる場合、補正ごとにファイルされ又は加えられるとしても、推移(transition)の表現である“〜からなる(consisting of)”は、特許請求の範囲に特定されていない要素、工程、又は成分を排除する。推移(transition)の表現である“本質的に〜からなる(consisting essentially of)”は、特許請求の範囲の範囲を、特定されたマテリアル又は工程及び基本的かつ新しい特徴に実質的に影響を与えないものに限定する。クレームされた本発明の態様は、本明細書において本質的に又は明確に記載され及び可能にされる。
【0097】
さらに、この明細書の至るところに特許及び刊行物が多数参照されてきた。上述の参照及び刊行物の各々は、それらの全体において本明細書に個々に包含される。
【0098】
さらに、本明細書において開示される本発明の態様は、本発明の原理の実例となるということが理解されるべきである。用いられ得る他の変形は、本発明の範囲内にある。このように、実施例により、限定されることなく、本発明の他の構成が、本明細書における教示に従って用いられ得る。したがって、本発明は、正確に示され及び記載されるものに限定されない。
【0099】
(関連する出願)
本出願は、米国仮特許出願61/186,773(出願日2009年6月12日)に基づき、35USC§119(e)に基づく優先権主張の利益を有する。これらの出願各々の全体の内容は、本明細書に参照により取り込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
約67m/g未満の比表面積を有する、ジケトピペラジン微粒子。
【請求項2】
前記比表面積は、約35m/gから約67m/gである、請求項1に記載のジケトピペラジン微粒子。
【請求項3】
前記微粒子は、薬物又は活性剤を含有する、
ことを特徴とする請求項1に記載のジケトピペラジン微粒子。
【請求項4】
前記比表面積は、約62m/g未満である、
ことを特徴とする請求項3に記載のジケトピペラジン微粒子。
【請求項5】
前記薬物又は活性剤は、ペプチド又はタンパク質である、
ことを特徴とする請求項4に記載のジケトピペラジン微粒子。
【請求項6】
前記ペプチドは、内分泌ホルモンである、
ことを特徴とする請求項5に記載のジケトピペラジン微粒子。
【請求項7】
前記内分泌ホルモンは、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、オキシントモジュリン、前記内分泌ホルモンの類似体又は活性フラグメントである、
ことを特徴とする請求項6に記載のジケトピペラジン微粒子。
【請求項8】
前記ジケトピペラジンは、フマリルジケトピペラジンである、
ことを特徴とする請求項1に記載のジケトピペラジン微粒子。
【請求項9】
請求項7に記載のジケトピペラジン微粒子を含有する、乾燥粉末。
【請求項10】
a)水性の溶液にジケトピペラジンを溶解することと、
b)混合物を形成するように酸性溶液を水性の溶液に加えることと、
c)約52m/gの比表面積を有する標的生成微粒子に製造コンディションを調節することと、
d)アンモニア水を微粒子懸濁液に加えることにより前記溶液から形成されたジケトピペラジン微粒子を沈殿させることと、
e)脱イオン水で数回の洗浄後、沈殿物を収集することと、
を含み、
沈殿物は、約35m/gから約67m/gの比表面積を有するFDKP微粒子を含有する、
こと特徴とする、95%信頼限界内で約35m/gから約67m/gの比表面積を有するジケトピペラジン微粒子を形成する方法。
【請求項11】
約14℃から約18℃の温度で懸濁液をインキュベートする工程をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
高せん断ミキサーで約14℃から約18℃で、等量の約10.5wt%酢酸及び約2.5wt%フマリルジケトピペラジンの溶液を供給することを含む、95%信頼限界内で約35m/gから約67m/gの比表面積を有するフマリルジケトピペラジン微粒子を形成する方法。
【請求項13】
アンモニア水溶液でpH4.5にジケトピペラジン微粒子の懸濁液を調節することを含む反応のpHを上げることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記調節は、pH約3.5からpH約4.5のpHになるように懸濁液においてアンモニアの濃度を上げることを含む、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
必要に応じて患者に活性剤を送達する方法であり、請求項5に記載の微粒子を含有する乾燥粉末を、前記患者による前記乾燥粉末の吸入によって投与することを含む方法。
【請求項16】
活性剤は、インスリン、副甲状腺ホルモン、カルシトニン、グルカゴン、グルカゴン様ペプチド−1、オキシントモジュリン、内分泌ホルモンの類似体又は活性フラグメントからなる群より選択される内分泌ホルモンである、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
患者は、糖尿病と診断された、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
吸気により作動する吸入器及び請求項5に記載の微粒子を含有する乾燥粉末を含む、吸入システム。

【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−530064(P2012−530064A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515179(P2012−515179)
【出願日】平成22年6月11日(2010.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/038298
【国際公開番号】WO2010/144789
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(507302829)マンカインド コーポレ−ション (16)
【Fターム(参考)】