説明

視力の普遍的改善のための方法及び装置

【解決手段】視力の「普遍的改善」は、角膜の屈折する前面の形状を理想的な「亀甲」形状に効果的に変更することにより達成され、それには遠視力の矯正を達成するために必須の曲率調節が課される。一実施形態によれば、角膜は、実際角膜手術、好ましくはレーザ切除手術によって亀甲形状に形成される。第2実施形態によれば、所望の遠視力及びその前面に補正された理想的な亀甲形状を備えたコンタクトレンズが、角膜上に置かれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に目の視力を改善する方法及び装置に関し、特に、以下に「普遍的改善」と呼ばれる、全ての距離での視力を改善する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の視力での共通欠陥のほとんどは、目が網膜上の共通の焦点に入射光を集めることができないことによって引き起こされる。例えば、近視は、目が網膜より前に光を集めることに原因があり、遠視は、目が網膜の後に入射光を集めることに原因があり、乱視は、共通の焦点がない目に原因があり得る。人間光学の科学者は、角膜を、直交する長軸及び短軸によって定められた楕円体の一部としてしばしばモデル化する。
【0003】
今日、視力は一般に、レンズが、目の前に置かれるか(例えば、コンタクトレンズ又は眼鏡レンズ)、又は入射光を目に適切に再集束させるために目の中に置かれるか(例えば眼内レンズ)、2つの方法の内の1つで改善される。または、角膜の外部表面の効果的な形状は、角膜の前面形状を変えるための、レーザ切除手術又は他の外科手段等によって変えられる。視力を矯正するためのこのような外科的処置は、典型的には角膜の表面曲率を増加させるか減少させることで進められる。いくつかの処置は、角膜の形状をより球形にするように意図され、他の処置は、角膜の形状を「平均的な」楕円に変えるように意図され、又は最近では、目の「高次収差(higher order aberrations)」のために補正するように意図された技法である波面分析に基づく補正を行うように意図されている。
【0004】
コンタクトレンズ又は眼鏡は、例えば比較的目に近い対象物又は目から遠くに移された対象物等、目から異なる距離で注視する対象物のために視力矯正を提供するために用いられる。この点に関して、レンズの様々なゾーンは、着用者が異なる距離で対象物を見ることができるように、様々なレンズ倍率を備えている。従来の「多焦点の」コンタクトレンズは、倍率差がレンズの表面の様々な領域又はゾーンに位置付けられているコンタクトレンズである。このようなゾーンは、レンズに形成された様々な倍率の球欠及び球状弓形として設計されている。このようなレンズは、一定の距離での視力矯正を提供したが、距離屈折誤差に加えて多重レベルの深さ補正を必要とする目のために自然な視力を回復すべく、十分な普遍的視力改善を提供していない。更に、全ての距離での視力矯正を提供するために、中央光学領域が垂直位置に応じて連続的に変わる曲率で形成されている可変焦点眼鏡レンズが提供されている。しかしながら、着用者は、距離の調節を行うために自身の頭を上げ下げする必要がある。いくつかのコンタクトレンズの設計は、前面に別個の帯状に2つ以上の屈折力ゾーンを設けている。このレンズは、まぶたの位置に応じて所定の位置に平行移動する。この平行移動設計によってはっきりした視力を実現するために、着用者は、見るべき対象物の距離を調節するために、自身の頭を同様に上げ下げする必要がある。そのような調節を着用者に求めることは、最適であるとは言い難い。
【0005】
着用者によるいかなる余分な物理的運動も必要とすることなく、普遍的視力改善を提供することが望ましい。
【特許文献1】米国特許第5807381号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
米国特許第5807381 号明細書に開示された表面のモデル化技術に従った臨床測定の分析を用いて、出願者は、理想的な「亀甲」形状を有する目の角膜は、その表面曲率が不完全な遠視力のためにのみ矯正すべく修正されれば、視力に普遍的改善を示すということを発見した。ここに用いられるように、「亀甲」形状は、鼻に最も近い端部に位置する点で最も水平な表面曲率を示すことが理解され、表面曲率は角膜のその点から中心点までの半経線に沿って定められる。角膜の周囲を上方向に移動して、表面曲率は、角膜の垂直方向の端部で最大値に達するまで、連続的に増加する。その後、表面曲率は、鼻から最も離れている角膜の端部で中間値に達するまで連続的に減少し、角膜の垂直方向に最も低い端部で最大値になるまで連続的に増加し、鼻に最も近い角膜の端部でその最小値に戻るまで、連続的に減少する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、視力の普遍的改善は、角膜の形状を理想的な亀甲形状に効果的に変えることにより達成され、それには離れた注視対象物に対する視力矯正を達成するために必須の曲率調節が課される。一実施形態によれば、角膜は、実際角膜手術、好ましくはレーザ切除手術によって所望の形状に形成される。第2実施形態によれば、所望の遠視力を備え、その前面に調整された理想的な亀甲形状を備えたコンタクトレンズが、角膜上に置かれる。
【0008】
本発明の前述した概要並びに更なる目的、特徴及び利点は、添付図面を参照して、現在好ましい実施形態の以下の詳述から更に完全に理解される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
臨床応用とコンタクトレンズの設計及び製造とのために、角膜切除手術のような最新の角膜処置に関連して、高解像度カメラが、角膜表面の離散的データポイントのデジタル化された配列を得るために用いられる。角膜の写像に利用可能である1つのシステム及びカメラは、PAR ビジョンシステム(PAR Vision Systems)のPAR 角膜トポグラフィシステム(PAR Corneal Topography System)(PAR CTS) である。PAR CTS は、三次元デカルト空間で、つまり深さ(Z) 座標と同様にx 座標及びy 座標に沿って角膜表面トポロジーを写像する。
【0010】
「視線」は、注視点から入射瞳の中心までの直線セグメントである。マンデル(Mandell)著,「ビデオ角膜記録法による角膜照準中心の位置決め"Locating the Corneal Sighting Center From Videokeratography"」,第11版,ジェイ.リフラクティブ サージェリー(J. Refractive Surgery),1995年7/8月,p.253-259 に更に完全に述べられているように、注視点から入射瞳上の点に向けて導かれる光線は、角膜及び眼房水によって屈折され、実際の瞳の対応する点を通過して、最終的に網膜に達する。
【0011】
視線が角膜表面と交差する角膜上の点は、角膜の「光学的中心」又は「照準中心(sighting center)」である。その点は、屈折矯正手術のための主要な基準点であり、その手術では、レーザ屈折矯正角膜切除術で切除されるべき領域の中心を通常表わす。視線は、角膜切除手術を管理するために、レーザ制御システムに従来プログラムされている。しかしながら、何人かの外科医は、基準線として瞳孔軸を用いることを好む。他の外科医は、最大の曲率変化を有する角膜上の領域として通常定められる角膜の頂点に関する切除外形を中心におく。経験を積んだ開業医は、照準中心を位置付けるために様々な技術を用いている。1つの技術では、角度ラムダが、瞳孔の「光学」軸に関する照準中心の位置を算出するために用いられている。カッパ角及びラムダ角の詳細な議論を含む上記のマンデルを参照して、その開示は、その全体がここに述べられているかのように、参照によってここに盛り込まれる。
【0012】
LASIK 角膜切除処置の間、角膜表面の一部が反射して、切除が露光面で行なわれる。集められた高さデータは、レーザ等の切除装置を方向づけるために用いられ、それにより角膜表面は、視線に関する適切な半径の球面又は「平均的」楕円又は切除ゾーン内の波面の識別特徴に更に接近するために、選択的に切除され得る。処置のための基準線として視線を使用することにより、近視が低減するか、又は他の場合には、外科手術前の機能障害又は視覚異常が矯正される場合がある。しかしながら、更に不規則に形作られた角膜が生じるかもしれず、現在の乱視を悪化させるか、又は処理された目に乱視又は球面収差を導入するかもしれない。これは、その後行われる必要があるいかなる視力矯正手段をも複雑にする。更に、生み出されるいかなる実質的表面不規則性も、瘢痕組織の成長又は裂傷付着物の局所的蓄積を引き起こす場合があり、そのどちらかも視力に悪影響を及ぼし得る。
【0013】
外科手術のための基準軸として視線又は瞳孔軸を用いることにおいては、角膜が目の半径に沿って延びる軸に関して対称であることが暗黙の前提である。しかしながら、角膜は「非対称的で非球面の」表面である。「非球面」は、任意の角膜の「経線」に沿った曲率半径が一定ではないことを意味する(「経線」は、角膜表面と瞳孔軸を含む面との交差によって形成された曲線と見なされ得る)。実際、角膜曲率は、幾何学的中心から外周へ次第に平らになる傾向がある。「非対称的」は、角膜の経線がそれらの中心に関して対称を示さないことを意味する。角膜が非球面及び/又は非対称である程度は、患者によって異なり、同一人物の左右の目によっても異なる。
【0014】
米国特許第5807381 号明細書の表面のモデル化技術に従った臨床測定の分析は、PAR CTS の基準面から最も離れている角膜の表面の点(以下HIGHポイントと呼ぶ)が、角膜の中心又は瞳孔中心より更に遠い角膜切除及びレンズ設計のために有効な基準点であることを示している。特に、米国特許第5807381 号明細書に実証されているように、HIGHポイントを通過する軸回りのレーザ切除は、瞳孔軸のような目の中心に近い軸回りに行なわれた同一の操作より、更に規則的に形作られた角膜を生み出し、角膜物質をあまり除去しない。
【0015】
その開示が、参照によってその全体がここに盛り込まれる米国特許第5807381 号明細書及び(国際公開第03/101341 号パンフレットとして公表された)国際出願PCT/US03/1763 号の方法に従う臨床測定の分析は、波面分析及びプラシド円盤技術として公知のこのような角膜の分析技術に内在する人間の角膜の構造についての前提に関する問題を提起する。特に、他の光学システムと異なり、角膜の中央部分(例えば中心から直径3mm まで)が、焦点を合わせるその能力において、角膜の更に十分大きな部分(例えば中心から直径7mm まで)より必ずしも光学的に優れていないことが分かった。角膜の中央部分は多くの焦点散乱を示す。すなわち、角膜上の様々な領域は焦点軸の同一の点に焦点を合わせない。実際は、それらは同一軸にさえ焦点を合わせない。この焦点の差は、通常角膜の中央部分において最も顕著であり、中心からの直径が長くなるほど大幅に減少する。
【0016】
国際出願PCT/US03/1763 号のパンフレットに開示されているように、視力は、様々な領域が同一軸に略焦点を合わせるべく、角膜の焦点を調節すること(ここで「直交化」と呼ぶ)により改善されることが可能である。これは、角膜を(例えば切除により)形作ることにより、又は適切な矯正レンズを適用することにより達成でき、効果的に半径方向及び軸方向の焦点散乱を低減する。多くの患者のための直交化の更なる利点は、老眼(近見視力不良)が十分低減されたことである。すなわち、異なる距離で焦点を合わせた構成要素を備えていなかった、直交化コンタクトレンズを取り付けた多くの老眼の患者は、近見視力及び遠視力で同時の改善を達成することができた。しかしながら、非常によくあるように、近見視力に加齢に関連した相当な欠陥を有する最も近視の個人のために普遍的改善を提供することに、遠視力及び近見視力の両方で十分な改善が達成され得なかった。
【0017】
本発明に係る角膜のレーザ切除及びコンタクトレンズ形成を達成するための処理は、図1にブロック図形式で示される。この処理は、角膜画像取込システム610 、高さ分析プログラム620 、コンピュータ支援デザインシステム630 、コマンドプロセッサ640 及び角膜形成システム650 を利用する。角膜画像取込システム610 は、高さ分析プログラム620 と共に、患者の角膜の三次元等高線写像を生成する。コンピュータ支援デザインシステム630 は、表面モデルを生成するために、角膜の等高線データの編集又は修正における支援として用いられ、モデルに関するデータはコマンドプロセッサ640 を介して角膜形成システム650 に送られる。コマンドプロセッサ640 は、角膜/レンズ形成システム650 によって必要とされる一連のコマンド/制御信号を生成するために、コンピュータ支援デザインシステム630 からの形成すべき角膜の表面を記述する等高線データを用いる。角膜/レンズ形成システム650 は、コマンドプロセッサ640 から、角膜、又はコンタクトレンズを製造する機械(例えば旋盤)を形作るために、角膜/レンズ形成システム(例えば、デカルト座標、ラジアル座標又は球座標等、任意の座標系が用いられてもよい)の三次元運動を記述する一連のコマンドを受け取る。
【0018】
角膜画像取込システム610 及び高さ分析プログラム620 は、好ましくは、PAR ビジョンシステムから利用可能である、PAR (登録商標)角膜トポログラフィシステム(PAR システム)の構成要素である。高さ分析プログラム620 は、例えばIBM (登録商標)互換のPCであるプロセッサによって実行されるソフトウェアプログラムである。プログラム620 は、システム610 によって測定された角膜の表面の複数のサンプルポイント毎に、三次元要素(目の内部の基準面から離れる距離を表すZ 座標)を生成する。各ポイントは、基準面に写像されるようなX-Y 座標によって定められ、そのZ 座標はポイントの光度から決定される。各ポイントの高さ、つまりZ 座標を算出する1つの方法は、患者の角膜14から測定されたX-Y 値及び光度値を、公知の高さ、例えば公知の半径の球体でのある基準面の座標及び光度と比較する方法である。基準値は、予め格納可能である。
【0019】
高さ分析プログラム620 の最終出力データは、角膜14の表面の、ポイントクラウドとして一般に公知である多数のサンプルポイントのためのX-Y-Z 座標である。必要とされる精度で角膜表面のポイントのために位置情報及び高さ情報の両方を提供するX,Y,Z 角膜データを生成することができる任意の方法が用いられ得ることは当業者に明白である。好ましい実施形態では、X-Y 面で見られるように、約1200ポイントがグリッドパターンで間隔を置いて配置されるため、ポイントのX-Y 面への投影は約200 ミクロン間隔である。
【0020】
高さ分析プログラム620 から出力されたX-Y-Z データは、任意の数の公知の機械に特有のフォーマットにフォーマット変換され得る。好ましくは、データは、データのインターアプリケーション転送に典型的に用いられる業界標準フォーマットであるデータ交換ファイル(Data Exchange File)(DXF) フォーマットにフォーマット変換される。DXF ファイルはASCII データファイルであり、ほとんどのコンピュータ支援デザインシステムによって読込むことができる。
【0021】
ここで図2及び3を参照すると、ポイントクラウド100 は、Z 軸に沿った(つまり、X-Y 面に投影されるように)基準面を見ると、現われるように描かれている。各ポイントは、患者の角膜の特定の位置に相当する。データは、角膜の作業領域である略10mmx10mm の制限された領域から通常生成される。従って、50行ものデータポイントがあってもよい。患者の角膜の表面のトポグラフィをモデル化するか一致させる表面108 (図4参照)は、高さ分析プログラムによって生成されたデータポイントからコンピュータ支援デザインシステム630 によって生成される。好ましい実施形態では、コンピュータ支援デザインシステム630 は、アリゾナ州、スコッツデールのマニュファクチャリングコンサルティングサービス(Manufacturing Consulting Services)から入手可能なアンヴィル5000(Anvil5000 )(登録商標)のプログラムである。
【0022】
角膜と一致する表面108 は、好ましくは、まず複数のスプライン102 を生成することにより生み出され、各スプラインは、ポイントクラウド100 の複数のデータポイントによって定められる。複数のデータポイント(つまりノットポイント)と交差するスプラインの生成は、当業者にそれ自体公知であり、一旦入力データが入力されると、アンヴィル5000のプログラムによって達成され得る。表面モデルの生成に関する更なる情報については、米国特許第5807381 号明細書を参照し、その開示は参照によってここに盛り込まれる。好ましい実施形態では、公知の非一様有理B スプライン式が、スプラインを生成するために用いられるが、3次スプライン式又は一様有理B スプライン式のようなスプラインのための他の公知の数式によっても生成され得る。図3に示されるように、好ましい実施形態では、各スプライン102 は、X 軸及びZ 軸と平行な面に位置し、図3ではクラウド100 から1行のポイントを含む。
【0023】
走査された目の角膜表面と一致する表面108 は、その後スプライン102 から生成される。複数のスプライン102 から表面を生成するために用いられてもよい多くの公知の数式がある。好ましい実施形態では、公知のnurb表面方程式がスプライン102 から角膜表面を生成するために用いられる。実施形態では、目の走査された領域が略10mmx10mm であるので、略50のスプライン102 が生成される。図3に示されるように、面で覆われた(skinned)表面セグメント104 が、少数(例えば5)の隣接したスプラインに対して生成される。隣接して面で覆われた(skinned)表面セグメント104 は共通の境界スプラインを共有する。従って、約10の面で覆われた(skinned)表面セグメントは、ポイントクラウドから生成され、その後1つの複合表面108 を生み出すために、当業者に公知であるように、アンヴィル5000のプログラムによって組み合せられる。
【0024】
最初のデータポイントもスプライン102 のノットポイントも、nurb表面方程式を用いるとき、表面の数学的生成に起因して、必ずしも表面108 上に位置しない。しかしながら、表面108 は、予め定義された許容範囲内にそれらのポイントを推定する。
【0025】
生成された角膜と一致する表面108 上のHIGHポイント(つまり最大のZ 値を有するポイント)が決定される。所定の直径のシリンダ106 が、その後Z 軸と平行であり、HIGHポイントを通過する軸に沿って角膜と一致する表面108 上に投影される。シリンダ106 の直径は、好ましくは約3mm 乃至約8mm であり、典型的には約7mm であり、シリンダ106 の表面108 との交差によって形成された閉輪郭線は、X-Y 面で円106'として投影する。一致する表面108 では、この輪郭線が、角膜の作業領域の外側縁26を定める。角膜は、HIGHポイントに関して最も対称であり、球状であるので、この時点で最良の光学を提供する。
【0026】
外側縁26は、ポイントクラウド内に適合する必要があるため、角膜の表面は測定された角膜データに基づいて形成され得る。その後、コンピュータ支援デザインシステム630 は、例えばモニター画面に、ポイントクラウドに対して(X-Y 面で)デフォルト円106'を図示することができるので、オペレータは、円106'がポイントクラウド内に含まれると確信することができる。更に、システム630 は、円106'がポイントクラウド100 内に含まれるかどうかを決定するために設定されることが可能であり、円がポイントクラウド100 内に完全に含まれない場合、ユーザに円を操作する(つまり、中心点を移動する及び/又は円の半径を変更する)ように警報するので、円106'は角膜データのポイントクラウド100 内に位置する。最悪の場合には、不十分なデータが走査された目から利用可能である場合、角膜の作業領域がポイントクラウド内に適切に収まることを保証するために、目は再走査されるべきである。そのほか、ポイントクラウドの領域を更に大きくすることも可能である。
【0027】
円106'が、X-Y 面で見られるとき(つまり、Z 軸に沿って見るとき)単なる円であることが理解されるべきである。実際、外周26は略楕円であり、基準面に対して傾いた面に位置する。HIGHポイントを通過するこの傾いた面に垂直な線は、「LOCAL Z-AXIS」又は「傾いた軸」と呼ばれ、基準面に対して傾いた面の傾斜は、角膜の作業領域の傾斜角とみなされる。
【0028】
角膜の厚さは約600 μm である。ほとんどの角膜切除処置では、典型的に用いられるタイプのレーザで傷跡が残る危険が実際上ないので、角膜は100 μm 未満の深さが切除される。100 μm の深さを越えると、傷跡状の欠陥の危険がある。例えば、120 μm の深さの切除が傷跡を引き起こすことは公知である。しかしながら、表面切除のために傷跡が残る危険は、レーザ療法に先立って又は同時に行なわれる薬物療法によって低減される可能性がある。しかしながら、ほとんどの処置がLASIK フラップ(flap)下にあるので、現代のレーザ手術のほとんどは傷跡を引き起こさない。LASIK での懸念は、残された角膜床が250 μm 未満という深さにまで切除し過ぎることである。角膜床がこの量未満である場合、構造上の欠陥が生じ得る。角膜の凹凸の大きさは、丘の頂上から谷の底まで典型的には約15乃至20ミクロンであり、約30ミクロンの場合もあり得る。
【0029】
本発明に従って行なわれた外科処置及び本発明に従って製造された光学レンズは、「屈折検査」で確立された必要な補正に応じて患者の視力を矯正しようと試みる。この検査が行なわれるとき、患者は、「フォロプター(phoropter)」と呼ばれる特別の装置が取り付けられた椅子に座り、装置を介して患者は略20フィート離れた視力検査表を見る。患者がフォロプター(phoropter)の中を見るので、医師は視界に様々な強度のレンズを操作して、その都度、設定された特定のレンズによって患者に検査表がよりはっきりと見えるかどうか尋ねる。実際、医者は、視線に沿ったZ 軸回りの2つの直交軸の回転度と同様に、それらの軸に関して倍率又はジオプトリ補正を変えることができる。医者は、最適な視力を達成するまで、これらの3つのパラメータを修正し続ける。屈折検査の結果は、「a,b,c 」形式で通常与えられ、「a」 は第1軸のジオプトリ補正であり、「b」 は第2直交軸で必要とされる付加的なジオプトリ補正であり、「c」 は水平に対する第1軸の回転角である。この形式の情報は、片目毎に与えられ、眼鏡のための1対のレンズを研ぐのに直ちに役立つ。
【0030】
表面108 の特性曲線を生成するための役立つ技術が以下に説明される。LOCAL Z-AXIS(図4参照)を含む面110 が構築される。面110 と表面108 との間の交差は第1特性曲線112 を定める。その後面110 は、例えば線114 によって表わされるように、反時計回りに5°ずつ増加してLOCAL Z-AXIS回りに回転され、そこでは表面108 とのその交差が、図4に破線として図示される第2特性曲線116 を定める。この処理は、面110 が、完全な一組の特性曲線(経線)、この場合72の特徴曲線(360 °%5 °)を生み出すために、360 °を通過するまで、例えば5°毎に、LOCAL Z-AXIS回りに固定された回転増加量で続ける。
【0031】
その後これらの特性曲線は、夫々最適な球形(円形)の弧によって推定される。これを行う1つの方法は、曲線毎に3つの公知のポイント(例えば、それが輪郭線106'に接するポイント、HIGHポイント、及びlocal Z 軸に沿った投影で見られたとき、これら2ポイント間の中間にあるそのポイント)を通過する円弧を単に選択することである。一旦球形の弧が生成されると、円弧によって表わされる角膜の一部の焦点は、その弧の中心によって推定されることが可能である。球形の弧の中心を位置付けるための技術は公知である。その結果生じる一組の弧の中心は、焦点散乱の表示を提供する。
【0032】
図示の目的のために、前の処置は、20/15 の未矯正の視力を有する患者の角膜モデルで行なわれた。図5は、3.0mm の直径まで外に延びる角膜のその部分のためのLOCAL Z-AXISに沿った焦点散乱図である。この場合、焦点はLOCAL Z-AXISに沿って7.06mmから開始して、更に6.91mm外に延びる。図6は、3mm の直径内の半径方向散乱が1.2mm であることを示す。同様に、図7は、角膜の5mm の直径部分の軸方向焦点散乱が8.99mmで始まり、更に1.69mm延びることを示す。図8に示されるように、角膜の同一部分の半径方向散乱は.49mm である。図9は、7mm での軸方向焦点散乱が8.68mmで始まり、更に0.47mm軸方向に延びることを示し、図10は、対応する半径方向散乱が0.33mmであることを示す。明らかに、焦点散乱は、角膜の中央部分で最も激しく、角膜の更に大きな部分については著しく減少する。それ故、少なくとも角膜の中央部分での焦点散乱を低減又は除去することが明らかに望ましい。これは、少なくとも角膜の一部を「直交させる」ことにより達成され得る。「直交させる」という表現は、LOCAL Z-AXISに向けて角膜を区分的に再集束させるように、表面モデルを再形成することを言う。その後再形成された表面モデルは、必要な焦点散乱補正を達成するように、(例えば切除を介して)角膜に、又はコンタクトレンズ(又は別のタイプの光学レンズ)の後面を形作ることに適用可能である。角膜を直交させることは、半径方向焦点散乱を低減するだけでなく、同時に軸方向焦点散乱をも十分低減し、角膜の直交された部分の曲率半径での更なる均一性を生み出すことが分かった。
【0033】
図11は、直交化の処理を示す。処理は、以下に説明されるように、特性曲線を表わす各弧上で行われる。区分的に再集束させた後、修正される弧は、再集束特性を有する修正された表面モデルに再組立てされる。
【0034】
図11では、130 が、特性曲線に相当する半経線の弧の内の1つを表わす。弧130 は中央点C を有し、その位置は、LOCAL Z-AXISから半径方向に間隔を置かれる焦点を明示するために誇張された。弧130 の直交化は、弧の2つの端部間の弦132 の生成から始まる。弦132 の垂直二等分線134 が構築されてもよく、該垂直二等分線は点C を通過し、点X でLOCAL Z-AXISと交差する。半径として点H (HIGHポイント)から点X までの距離を用いて、新たな弧130'が、弧130 の2つの端点間で描かれることが可能である。弧130'は、LOCAL Z-AXISに焦点を合わせて、弧130 より大きな曲率半径を有する。
【0035】
この時点で、弧130'は修正された表面モデル108'を定める弧として採用され得る。しかしながら、角膜の厚さのあまりにも大きな変化は回避することが望ましい。従って、ある閾値(例えば0.0075mm)が定められ、弧130'の任意の部分が表面108 の内部又は外部の距離を越える場合、弧130'は修正された表面モデルでの使用のために採用されない。代わりに、点x は、超過分の半分(弧130'が移動される必要がある方向に応じて)LOCAL Z-AXIS上で上方又は下方に移動させることができる。その後弧130'は、閾値に対して再描画及び再検査されることが可能である。採用可能な弧130'が見つけられるまで、この再調整及び再検査は続く。その後次の弧が直交される。全ての弧が直交された後、新たな表面モデル108'が全ての弧に基づいて生成される。
【0036】
上に説明されたように、直交化処理は角膜切除処置に適用可能である。処置に先立って、補正された角膜表面モデルが生成され、表面モデルは、(上記に挙げた特許に述べられているように)黄斑変性の軽減及び視力試験によって確立された屈折の補正を提供するために形作られ、弧は全て直交される。補正された角膜表面モデルは、その後未修正の角膜表面モデルに合わされて、補正された表面が未修正の表面とぴったり接するまで、補正された表面は未修正の表面に向けて移動される。始めの接触点が補正された表面の中心にある場合、補正された表面の外周が計画された切除処置の直径で未補正の表面とぴったり接するまで、補正された表面は未補正の表面に向けて移動される。始めの接触点が補正された表面の外周にある場合、補正された表面の中心が未補正の表面とちょうど接するまで、補正された表面は未補正の表面に向けて移動される。その後、補正された表面は、少なくとも部分的に角膜の範囲内にあるように置き換えられ、角膜は、置き換えられた補正表面がその新たな表面になるまで、切除される。
【0037】
網膜の中央領域は斑と呼ばれ、小窩と呼ばれる斑の最中心は最も敏感である。斑の直径は典型的には6 乃至7 ミリメートルの範囲内であるが、中央の小窩の直径は典型的には約0.35mmである。完全な直交化により、角膜のサブ部分全てが、斑の中心、小窩に焦点が再集束される。LOCAL Z-AXIS上にサブ領域の全てを再集束することにより直交化が行なわれるとき、直交化は完全ではない。
【0038】
本発明の一態様によれば、角膜のサブ部分は、それらの焦点を、LOCAL Z-AXISからの制御された横方向距離で小窩の外側であるが斑内に置くように再集束されてもよい。斑は、球体のキャップ状セグメントの形状を実質的に有しており、通常その直径が6 ミリメートル乃至7 ミリメートルであり、その深さが略0.88ミリメートルである。
【0039】
焦点はずれの導入と本発明の偏心した焦点との間にある違いに留意すべきである。眼科医は、矯正レンズを処方する際、焦点距離が焦点はずれを介して低減されることができ、近見視力での利点が生じ得ることを長く知っていた。本発明によれば、焦点はずれはない。角膜のサブ部分は全て完全に焦点を合わせたままであるが、焦点はLOCAL Z から離れる。
【0040】
図12は、偏心直交化の概念を示す。弧130 は散乱された焦点X を有する角膜のサブ部分である。図11に示されるような通常の直交化は、焦点X をLOCAL Z-AXIS, LZに移動させる。完全な直交化は、焦点を斑M 上の小窩F に移動させる。偏心直交化は、小窩から予め定義された半径r にある点X'で焦点を合わせる新たな弧130'’’を生成する。軸Z'は、LOCAL Z-AXISと平行であり、点X を通過する。推定の目的のために、斑は、軸LZと軸Z'との間の領域で水平であるとみなされ得る。
【0041】
偏心直交化を行なう好ましい方法は、図4に関して説明された技術を利用する。具体的には、角膜の前面は、回転的に5 °の間隔を置いた72の弧に分割され、各弧は偏心直交化を受ける。生じた72の焦点は、好ましくは0.07ミリメートル未満の直径を有する小窩の作業領域W’に適切に分散配置されるべきである。図13は、小窩の表面に螺旋パターンに分散配置された72の点P を示す小窩の平面図である。
【0042】
点に関する更に好ましい構成が図14に示される。このパターンは極方程式R=aycos2yによって表され、R は小窩から点の二次元半径であり、a は全体の作業領域M'上に点を適切に分散させるために選択された定数であり、y は角膜上の特定の弧の回転角度である。作業領域M'の全ての四分円が小窩から全範囲の距離に焦点を有するので、このパターンは螺旋よりも好まれる。
【0043】
焦点のための別の好ましいパターンが図14に示される。この場合、パターンは大きなパターン150 及び小さなパターン150'である2つの重ねられたローズパターンから形成され、小さなパターンはパターン150 から45°オフセットされる。各ローズパターンの1枚の花びらだけが点を有するように示されているが、他の花びらも夫々同様に点を備えているものとする。点は、パターン150 と150'との間で均一に共有される。しかしながら、パターン150 は最も外側の点を備え、その最も外側の3 分の2 の上に分散配置された点を有する。パターン150'は最も内側の点を備え、その点は均一に分散配置されている。その結果、図14でのパターンは、小窩の近く及び小窩から離れて点を適切に分散配置している。
【0044】
これまでに示された全ての焦点パターンには、ほとんどの例で、点が曲線に沿って均一に間隔が置かれていることが認識されるべきである。しかしながら、当業者は、特定領域(例えば、作業領域の中心又は最も外側の領域)に点を更に集中するように、点が不均一に間隔が置かれ得ることを認識する。
【0045】
本発明の更なる実施形態を定める更なる方法が、いくつかの例で、普遍的改善を向上させるために、以前に説明された全ての技術に好ましいとされる偏心直交化のために展開されている。この方法は「オフセット」分散直交化と呼ばれる。この方法は、一旦弧130'が再形成されたとき、弧が、点X 、弧の軸の端点を、local z-axisを横切って図11の左側に移動するように時計回りに傾けられるため、弧が予め選択された距離に位置する又はlocal z-axisからオフセットされる点を除いて、まさに図11に示すように進む。約0.01mm 以下の値の偏りが現在意図されており、約0.0025mm の偏りが好ましい。しかしながら、約0.0025mm乃至約0.01mm の範囲の距離が依然として有効である。
【0046】
図16は、理想化された亀甲形状を表すのに役立つ3つの波形を示す。各波形は、回転位置の関数として(ジオプトリという単位で表される)曲率の極図表である。例えば、波形A は、近視、乱視及び加齢に関連した老眼を示す実際の患者の角膜を表わす。極角は、面が鼻に最も近い位置で角膜の基部と交差する基準位置に対する(傾けられたlocal z axis回りの)local z axisを含む面の回動角度である。曲率は、それが特定の回転配向を有するとき、角膜の表面と面との間の交差によって生成された半経線の弧に最も接近する円弧の半径をジオプトリ値で表したものである。以下の公知の式は、弧の半径に対するジオプトリ値に関する。
337.5/弧の半径=ジオプトリ値
【0047】
(視力の最良の普遍的改善のために)理想的には、波形A は略文字「M」のように形成されるべきであり、そのために波形がここでは角膜の「M 波(M-wave)」と呼ばれる。波形は、本例では多少歪曲されたM である。
【0048】
普遍的視力改善を示すために角膜の形状を再設計する始めのステップとして、理想化されたM 波が角膜のために生成される。波形A のような、特定の角膜表面の自然な半経線の弧に沿った表面曲率を示す患者の角膜の極表示から始めて、理想化された波形が生成される。この波形は、最も低いジオプトリ値が好ましくは2つの波形で略同一であることを除いて、波形A と関係がないが、波形B は好ましくはある基準を満たす。しかしながら、いくつかの例では、波形B の基線を波形A より1.5 ジオプトリ高くすることにより、向上された視力の成果が得られることもある。第一に、波形の頂点間ジオプトリ値の変化は、略3ジオプトリに、好ましくは約2.875 ジオプトリに調節される。このジオプトリ範囲が約2ジオプトリ以下に低下するか、約4ジオプトリを超える場合、近見視力補正に相当な悪化があることが分かった。更に、M 波での下降D は、M 波の頂点間振幅の略40%と60%との間に位置するように調節される。好ましくは、下降は略50%である。その後、全体波形が、値の間に滑らかに移行するように調節される。好ましくは、頂点が、滑らかな曲線を生み出しながら、約90°と270 °で生じ、下降が略180 °で生じる。その結果、患者の角膜を表わすために理想的なM 波となる。この波は図16に波形B によって表わされる。
【0049】
実際問題として、全てのレンズは、例えば屈折検査によって定められたように、角膜の最も水平な曲率(K 値)を一致させるための調節と必要な遠視力補正とを除いて、同一のM 波形状を有する。K 値及び屈折は、レンズに適合するとき眼科ケア専門家によって通常とられる測定値であり、通常これが利用される。患者のためにM 波をカスタマイズするためには、その人のK 値に相当する波形のための基線を選び、遠視力の補正に必要なジオプトリを提供するために波形を垂直に移すことのみが必要である。これは、その患者のための注文レンズのレンズ形状を定める。
【0050】
波形B が、(波形B で鼻に最も近い角膜の端部に対応する点)0 °で最も水平な表面曲率を示すことが認識される。極角を増加すると、表面曲率は、(角膜の垂直に最も高い端部に対応する)約90°で最大値に達するまで連続的に増加する。その後表面曲率は、(鼻から最も離れている角膜の端部に対応する)約180 °で中間値に達するまで連続的に減少し、表面極率は(角膜の垂直に最も低い端部に対応する)約270 °で最大値に達するまで連続的に増加し、最小値に戻る0 °に達するまで連続的に減少する。従って、このM 波によって表された表面は前に述べた理想化された亀甲形状を有する。
【0051】
前の段落では、患者の右眼のためのM 波が考慮されていると仮定されていた。基準角すなわち0 °の角度が、鼻に最も近い点として選択され、極角が時計回りに増加した。左眼のためのM 波も同一であり得る(つまり、0 °が鼻から最も遠い点で、極角が時計回りに増加する)か、又は左眼のためのM 波は右眼の鏡像であり得る(つまり、0 °が鼻に最も近いが、極角が反時計回りに増加する)。同一のレンズが両眼に用いられるので、前の方法は製造を単純化し、コストを低減する。
【0052】
いくつかの例では、波形B によって表わされる表面モデルは追加の1つの調整が行われれば、視力のよりよい普遍的改善が達成される。すなわち、オフセットの場合であれば、偏心直交化は、local z axisから略0.005mm 未満のオフセットで表面モデルに行なわれる。最も好ましくは、オフセットは約0.0025mmである。実験結果は遠視力又は近見視力での相当な悪化がその値で達することを示したので、オフセットの上限は0.005mm が選択された。オフセットが更に増加されると、遠視力は著しく低下し続ける。
【0053】
一実施形態では、波形B によって表わされる表面モデルは、患者により使用されるコンタクトレンズの後面の形状を表わす。本発明によれば、レンズの前面の形状は、患者の遠視力を矯正するために必要であると判断された波形B に沿ったジオプトリ調整を行うことにより導き出される。典型的には、このようなジオプトリ補正は従来の屈折検査から定められる。各角度で、前面ジオプトリ値Da及び半径Raはツァイスレンズ(Zeiss lens)式によって定められる。

Da = (-P Dp)/(1-(((T/1000)/Na)*Dp))
Ra = (NL-NA)*1000/Da
但し、Daが、前弧のジオプトリ値である。
Dpが、後弧のジオプトリ値である。
NLが、レンズが作られた物質の屈折率である。
NAが、空気の屈折率である。
P が、倍率調整係数である。
T が、レンズの厚さである。

このジオプトリ調整に続いて、波形C が生じる。
【0054】
当業者は、コンタクトレンズの後面が波形B によって定められるように形作られる必要がないことを認識する。事実、コンタクトレンズの後面は、球面又は楕円面のような、患者の角膜に一般に一致するために算出された任意の形状であり得る。理想化されたM 波は、球形ではなく楕円形でもなく、亀甲形状であり、好ましくは角膜と同一の最小曲率を有することを除いて、普遍的であり、患者の生来の角膜との関係を有していない。更に、角膜の最も水平な曲率との一致は視力矯正と関係がないが、レンズがより快適に装着されることを保証するために行われる。
【0055】
レンズが目の上に置かれるとき、レンズ、角膜及びそれらの間の涙液膜は略同一の屈折率を有する。従って、空気とレンズの前面との間の界面だけが、視力改善に重要な影響がある。レンズの後面のために波形B によって定められた表面形状を用いることは、ある種のひずみを導入する可能性のあるレンズの不必要な厚さの変動を最小化する。
【0056】
当業者は、波形C によって表わされる表面モデルが、外科処置後の角膜の所望の形状を定めるために用いられ得ることを認識する。外科処置は角膜の実際の再形成を構成する一方、コンタクトレンズの使用が効果的な再形成を構成する。
【0057】
直ぐ上に記述されたコンタクトレンズが注文設計されたコンタクトであることが認識されるべきである。しかしながら、M 波レンズが、現在大量生産されているレンズのように、既存の処方で提供され得ることが考えられる。例えば、レンズがM 波後面を有する場合、レンズは異なる基礎曲率変化又は「サイズ」(例えば、比較的水平な角膜のための大きなベースカーブ、中間又は平均的曲率の角膜のための中間ベースカーブ、及び比較的急勾配に形成された角膜のための小さなベースカーブ)で提供され得る。全ての場合に、M 波は、以前に述べられた理想化された形状を有するため、サイズの差のみが始めの曲率の実効値である。各サイズが、異なる距離屈折誤差を矯正するために、必要なジオプトリ調整を有するサブセットのレンズを含むように、各セットの後部曲線は、異なる前部曲線を有するサブセットのレンズを含む。患者は、正確な処方を得るために2つの検眼検査のみを必要とする。まず、検眼士は、遠視力に必要なジオプトリ補正を定めるために従来の屈折検査を行なう。次に、視力検査医又はレンズ調整士は、初めての訪問の間、更に、角膜の最も水平な部分及び最も急勾配な部分のためのジオプトリ値を与える従来の角膜測定器による検査を行なうことができる。角膜測定器による検査の最も水平な曲率は、患者が(最良の装着感を得るために)小さな、中間の又は大きな後面ベースカーブを有するレンズを必要とするかどうかを決定し、屈折検査は必要な距離補正を確立する。この処方を与えられると、眼科ケア専門家は、普遍的視力改善を提供する最も快適なM 波レンズを患者に容易に装着させることができる。
【0058】
本発明の好ましい実施形態は例示の目的のために示されたが、当業者は、多くの追加、修正及び置換が本発明の範囲及び趣旨から外れることなく可能であることを認識する。例えば、本発明は、角膜切除及びコンタクトレンズだけでなく、白内障レンズ、有水晶体(phakic)レンズ、眼内レンズ、角膜内レンズ及び眼鏡レンズを含む任意の他の種類のレンズにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】角膜のレーザ切除又は適切に形作られた矯正レンズのいずれかを介して、本発明に係る視力矯正を達成する方法を示すブロック図である。
【図2】角膜画像取込システムで得られるようなポイントクラウドを示す概略平面図である。
【図3】複数のスプラインがポイントクラウドのデータポイントを介してどのように接続されるかを示す、図2と同様の概略平面図である。
【図4】特性曲線がどのように構築されるかを示す角膜と一致する表面の斜視図である。
【図5】3ミリメートルの直径で角膜の軸方向焦点散乱を例示する図である。
【図6】図5に対応する半径方向焦点散乱を示す図である。
【図7】5ミリメートルの直径で角膜の軸方向焦点散乱を例示する図である。
【図8】図7に対応する半径方向焦点散乱を示す図である。
【図9】7ミリメートルの直径で角膜の軸方向焦点散乱を例示する図である。
【図10】図9に対応する半径方向焦点散乱を示す図である。
【図11】中心軸に直交させることにより角膜モデルを修正する方法を示す図である。
【図12】偏心直交化の概念を示す図である。
【図13】斑の前面にスパイラルパターンに分散配置された72の焦点P を示す斑の平面視である。
【図14】斑の前面にローズパターンに分散配置された72の焦点P を示す斑の平面視である。
【図15】斑の前面にデュアルローズパターンに分散配置された72の焦点P を示す斑の平面視である。
【図16】普遍的視力改善を提供する角膜に理想的な亀甲形状の調節を表すのに役立つ3つの波形を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面及び後面を有し、前記前面に光学中心を備える光学レンズにおいて、
前記前面は、前記光学中心を通過する曲線に沿って測定された表面曲率が、前記光学中心回りの角度方向に関連付けて略滑らかな文字Mのように変わるように、M波形状を有し、角度方向0 °が、レンズが着用されたとき、実質上鼻に最も近い点であり、Mの中央下降が、レンズが着用されたとき、実質上鼻から最も離れた点で、180 °方向に対応して生じ、Mの最大値が、レンズが着用されたとき、レンズの実質上垂直に最も高い端部及び最も低い端部で夫々90°及び270 °の方向にあることを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記M波の基線が、レンズを着用する患者の目のK値によって定められた値で生じることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記M波は、患者のために必要な遠視力矯正に関連した前記基線に関して垂直移動を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のレンズ。
【請求項4】
前記後面はM波形状を示すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズ。
【請求項5】
前記後面はM波形状以外の形状を示すことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズ。
【請求項6】
前記M波の振幅は、略2ジオプトリ乃至4ジオプトリの曲率に相当することを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項7】
前記M波の振幅は、略3ジオプトリの曲率に相当することを特徴とする請求項6に記載のレンズ。
【請求項8】
前記M波の振幅は、略2.85ジオプトリの曲率に相当することを特徴とする請求項7に記載のレンズ。
【請求項9】
前記M波の振幅での下降は、M波の頂点間振幅の略40%乃至60%であることを特徴とする請求項6に記載のレンズ。
【請求項10】
前記M波の振幅での下降は、M波の頂点間振幅の略50%であることを特徴とする請求項9に記載のレンズ。
【請求項11】
前記M波の振幅での下降は、M波の頂点間振幅の略40%乃至60%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のレンズ。
【請求項12】
前記M波の振幅での下降は、M波の頂点間振幅の略50%であることを特徴とする請求項10に記載のレンズ。
【請求項13】
視力の普遍的矯正を達成するために、表示装置を含むコンピュータシステムを用いて、目の角膜に対する必要な形状変更を定める方法において、
光学中心を通過する曲線に沿って測定された表面曲率が、前記光学中心回りの角度方向に関連付けて略滑らかな文字Mのように変わり、角度方向0 °が、レンズが着用されたとき、実質上鼻に最も近い点であり、Mの中央下降が、レンズが着用されたとき、実質上鼻から最も離れた点で、180 °方向に対応して生じ、Mの最大値が、レンズが着用されたとき、レンズの実質上垂直に最も高い端部及び最も低い端部で夫々90°及び270 °の方向にあるようなM波形状を削って表面モデルとして、角膜の後面をモデル化するステップを備え、
前記表面モデルを表示装置で見るステップ、
レンズの後面がM波形状を有するようにコンタクトレンズを形作るために、別の装置を制御するために構成された第1信号を生成するステップ、又は
前記M波形状をその表面に与えるように、角膜のレーザ切除のためのレーザ装置を制御するために構成された第2信号を生成するステップの内の1つを備えることを特徴とする方法。
【請求項14】
前記M波の基線は、レンズを着用するか又は外科手術を受ける患者の目のK値によって定められた値で生じることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記M波は、患者のために必要な遠視力矯正に関連した前記基線に対する垂直移動を含むことを特徴とする請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記第1制御信号は、M波形状を示す後面を有するレンズを作るために構成されていることを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第1制御信号は、M波形状以外の形状を示す後面を有するレンズを作るために構成されていることを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記M波の振幅は、略2ジオプトリ乃至4ジオプトリの曲率に相当することを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記M波の振幅は、略3ジオプトリの曲率に相当することを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記M波の振幅は、略2.85ジオプトリの曲率に相当することを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記M波の振幅での下降は、M波の頂点間振幅の略40%乃至60%であることを特徴とする請求項18乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記M波の振幅での下降は、M波の頂点間振幅の略50%であることを特徴とする請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記M波の振幅での下降は、M波の頂点間振幅の略40%乃至60%であることを特徴とする請求項13乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記M波の振幅での下降は、M波の頂点間振幅の略50%であることを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
目の視力を改善するか、又は目の視力の改善を計画する方法において、
目の角膜の表面モデルで、該表面モデルの様々な位置に関して焦点ポイントを定めるステップと、
焦点ポイントを共通点に強いることなく、予め定義された基準軸に対して所定の位置に焦点ポイントを移すように前記モデルを修正するステップとを備え、
前記修正されたモデルは、角膜の所望の再構成を表すことを特徴とする方法。
【請求項26】
前記修正するステップは、その形状を物理的に変更するか、又は屈折誤差を補正すべく意図された光学レンズを目に適用することにより、角膜を効果的に再形成することを特徴とする請求項25に記載の方法。
【請求項27】
物理的変更は、目の角膜での意図された角膜切除を含むことを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記基準軸がHIGHポイントを通過することを特徴とする請求項25乃至27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記基準軸がLOCALZ-AXISであることを特徴とする請求項25乃至27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
角膜の表面モデルを生成するコンピュータープログラムを用いて行なわれ、前記表面モデルは、滑らかな自由形状面として三次元で少なくとも角膜の表面の一部分を詳細に表し、前記修正するステップは、修正された表面モデルを生成するために、前記モデルの少なくとも一部分の形状の変更を含むことを特徴とする請求項25乃至27のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
複数の焦点ポイントが、目の網膜に予め定義されたパターンを形成するように移されることを特徴とする請求項25乃至27のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記予め定義されたパターンは、円、螺旋、ローズパターン及びデュアルローズパターンの内の1つであることを特徴とする請求項31に記載の方法。
【請求項33】
目の視力を改善するための光学レンズにおいて、
該レンズの表面に、目の角膜表面の様々な位置に対応する焦点の領域を備え、
焦点の各領域は、各領域の焦点を共通点に強いることなく、角膜の対応する位置の焦点を、目で予め定義された基準軸に対する所定の位置に移すために形作られていることを特徴とするレンズ。
【請求項34】
前記レンズが、白内障レンズ、有水晶体(phakic)レンズ、眼内レンズ、角膜内レンズ及び眼鏡レンズの内の1つを備えることを特徴とする請求項33に記載のレンズ。
【請求項35】
前記基準軸がHIGHポイントを通過することを特徴とする請求項33又は34に記載のレンズ。
【請求項36】
前記基準軸がLOCALZ-AXISであることを特徴とする請求項33乃至35のいずれかに記載のレンズ。
【請求項37】
複数の焦点ポイントが、目の網膜に予め定義されたパターンを形成するように移されることを特徴とする請求項33乃至35のいずれかに記載のレンズ。
【請求項38】
前記予め定義されたパターンが円、螺旋、ローズパターン及びデュアルローズパターンの内の1つであることを特徴とする請求項37に記載のレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−529376(P2009−529376A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558533(P2008−558533)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/063572
【国際公開番号】WO2007/104013
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(501094199)サイエンティフィック オプティクス, インク. (3)
【Fターム(参考)】