説明

視差画像取得装置

【課題】小型な構成で、大幅なコストアップを伴わず、良好な画質の視差画像を取得することのできる、単眼光学系を備えた視差画像取得装置を提供する。
【解決手段】レンズ筐体と、レンズ筐体に設置された複数のレンズを有し、撮像素子上に被写体像を結像する撮像光学系と、撮像光学系の前面に配置される光学面を有し、第1被写体像を与える第1光軸と第2被写体像を与える第2光軸のいずれかを撮像光学系が有するように光学面を調整する光軸可変部材と、を有し、第1被写体像と第2被写体像は、被写体の視差画像となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視差画像取得装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2D映像(2次元画像)よりも3D映像(立体画像)の方が、臨場感が高く、驚きや興奮を増す効果が大きいことから、様々な市場において映像を立体画像で鑑賞したいという強いニーズがある。一方、撮影装置の小型化を図るとともにコストアップを避けるため、単眼レンズで立体像を取得する提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1において、光学系内のレンズをシフトさせて視差画像を取得する方法が提案されている。特許文献1記載のステレオ画像生成方法では、光軸上に複数配置されたレンズのうち、少なくとも1つのレンズを光軸に垂直な平面内でシフトさせて、視差画像を撮影する。
【0004】
また、特許文献2は、鏡枠全体を駆動させて視差画像を取得する方法を提案している。特許文献2記載の立体画像形成装置では、被写体とそれを撮影する撮像部の相対位置を変化させる移動手段を備え、被写体を第1の方向及び第2の方向から撮影し、これら2つの方向から撮影した画像を同一の媒体上に作像する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−41381号公報
【特許文献2】特開平9−171221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のステレオ画像生成方法においては、レンズをシフトすることによる光学性能の低下が考えられ、視差画像が取得できたとしても画質が低下するおそれがある。
また、特許文献2の立体画像形成装置においては、まず、装置が大型化してしまうという問題がある。さらに、鏡枠全体を動かすことから、2つの方向からの撮影に大きな時間ずれが発生するため、デジタルカメラのような観賞用画像を取得する装置には向いていない。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型な構成で、大幅なコストアップを伴わず、良好な画質の視差画像を取得することのできる、単一の光学系で視差画像を取得できる装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る視差画像取得装置は、レンズ筐体と、レンズ筐体に設置された複数のレンズを有し、撮像素子上に被写体像を結像する撮像光学系と、撮像光学系の前面に配置される光学面を有し、第1被写体像を与える第1光軸と第2被写体像を与える第2光軸のいずれかを撮像光学系が有するように光学面を調整する光軸可変部材と、を有し、第1被写体像と第2被写体像は、被写体の視差画像となることを特徴としている。
【0009】
本発明に係る視差画像取得装置において、光軸可変部材は、1つの第1入射平面と1つの第1射出平面をもち、撮像光学系の前面に配置される、第1光学素子と、第1光学素子を駆動する駆動部と、を有し、第1入射平面と第1射出平面は、互いに所定の角度をなしていることが好ましい。
【0010】
本発明に係る視差画像取得装置において、所定の角度は、0.1°以上、3°以下であることが好ましい。
【0011】
本発明に係る視差画像取得装置において、第1光学素子は、光学ガラス部材であることが好ましい。
【0012】
本発明に係る視差画像取得装置において、第1光学素子は、樹脂部材であることが好ましい。
【0013】
本発明に係る視差画像取得装置において、駆動部は、第1被写体像を与えるとき第1光学素子を撮像光学系の前面に挿入して、第2被写体像を与えるとき第1光学素子を撮像光学系の前面から待避させることが好ましい。
【0014】
本発明に係る視差画像取得装置において、光軸可変部材は、1つの第2入射平面と1つの第2射出平面をもち、第1光学素子に隣接して配置される、第2光学素子をさらに有し、駆動部は、第2光学素子をさらに駆動し、第2入射平面と第2射出平面は、互いに所定の角度をなしており、第1光学素子と第2光学素子は、被写体と撮像素子を通る軸に対して対称であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る視差画像取得装置において、駆動部は、第1被写体像が撮られるとき、第1光学素子を撮像光学系の前面に挿入するとともに第2光学素子を撮像光学系の前面から待避させ、第2被写体像が撮られるとき、第1光学素子を撮像光学系の前面から待避させるとともに第2光学素子を撮像光学系の前面に挿入することが好ましい。
【0016】
本発明に係る視差画像取得装置において、駆動部は、第1光学素子および第2光学素子を固定する台座部と、台座部に回転運動を付勢する回転付勢部と、を有することが好ましい。
【0017】
本発明に係る視差画像取得装置において、第1被写体像と第2被写体像は、被写体の水平方向の視差画像となることが好ましい。
【0018】
本発明に係る視差画像取得装置において、撮像光学系は共軸光学系であることが好ましい。
【0019】
本発明に係る視差画像取得装置において、撮像光学系は折り曲げ系であることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る視差画像取得装置は、小型で安価な構成で良好な画質の視差画像を取得でき、これにより高品質の立体画像を取得することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】第1実施形態におけるレンズモジュールのレンズ筐体内の構成を示す、光軸Axに沿った断面図である。
【図3】第1実施形態におけるレンズモジュールのレンズ筐体のより具体的な内部構成を側方から見た図である。
【図4】図3を前方から見た図である。
【図5】視差画像を取得するときの第1実施形態に係るデジタルカメラを側面から見た概念図である。
【図6】第1実施形態における視差画像取得方法の流れを示すフローチャートである。
【図7】第2実施形態に係るレンズモジュールのレンズ筐体のより具体的な内部構成を側方から見た図である。
【図8】図7を前方から見た図である。
【図9】第3実施形態に係る視差画像取得装置の光学系の構成を示す断面図である。
【図10】第4実施形態に係る視差画像取得装置の光学系の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明に係る視差画像取得装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
本発明に係る視差画像取得装置では、光学系の前面にくさびプリズムを配置し、このくさびプリズムの屈折作用によって、視差画像を生成している。
【0023】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るデジタルカメラ100の構成を示すブロック図である。
視差画像取得装置としてのデジタルカメラ100は、レンズモジュール110と、このレンズモジュール110が脱着可能なカメラボディ170と、を備える。
レンズモジュール110は、レンズ筐体110a中に、撮像光学系としての複数のレンズ(フォーカスレンズ)111、112、113と、第1光学素子としてのくさびプリズム121と、撮像素子120と、が第1レンズ111、第2レンズ112、及び第3レンズ113の光軸Axに沿って配置された構成を備える。さらに、レンズ筐体110a内には、くさびプリズム121を駆動する駆動部としての部材駆動部155が配置されている。
【0024】
カメラボディ170は、3Dフォーマット変換部142、出力処理部143、記録部144、指示部145、システム制御部150、及び部材制御部154を備える。
【0025】
第1レンズ111、第2レンズ112、及び第3レンズ113は、物体側から像側へ順に配置されており、システム制御部150からの指示信号にしたがって、不図示のレンズ駆動部によって光軸Axに沿って駆動される。
第1レンズ111、第2レンズ112、及び第3レンズ113は、撮像素子120上に被写体像を結像する。撮像素子120は撮像面に結像された被写体像を光電変換し電気的な画像信号を生成する。
【0026】
3Dフォーマット変換部142は、指示部145が3Dモードを選択すると、システム制御部150によって3Dモードに設定される。3Dフォーマット変換部142は、設定されたモードに対応し、3Dフォーマット変換を行い、撮像素子120が取得した視差画像から立体画像を生成する。3Dフォーマット変換としては、例えば、SIDE BY SIDE、LINE BY LINE、ABOVE−BELOW、CHECKERBOARDを用いる。
【0027】
出力処理部143は、画像処理部140により表示用に処理された画像(3Dフォーマット変換された画像を含む)を、TV等の外部表示装置への画像出力を行う。さらに、このデジタルカメラ100の操作に係るメニューの表示などを行う表示デバイスへの画像出力処理も行う。
【0028】
記録部144は、3Dフォーマット変換部142により3Dフォーマットに変換された画像データを不揮発に記憶するものであり、例えばメモリカードなどのデジタルカメラ100の外部に搬出し得るリムーバブルメモリとして構成されている。従って、記録部144は、デジタルカメラ100に固有の構成でなくても構わない。
【0029】
指示部145は、デジタルカメラ100に対する操作入力を行うためのユーザーインタフェースであり、電源のオン/オフを指示するための電源ボタンや撮影開始を指示するための撮影ボタン、3Dモード等を設定するための撮像モード設定ボタン、その他各種の設定ボタンなどを含む。
【0030】
部材駆動部155は、くさびプリズム121が固定された台座部131と、この台座部131を駆動軸132(図4)の周りに回転運動可能とする回転付勢部133と、を備える。
部材制御部154は、システム制御部150からの指示信号にしたがって、部材駆動部155へ制御信号を出力する。この制御信号を受けた部材駆動部155は、くさびプリズム121が光軸Ax上にある位置と光軸Axから外れた位置のいずれかに配置されるように、回転付勢部133を回転駆動する。
ここで、くさびプリズム121及び部材駆動部155は、光軸可変部材を構成する。
【0031】
図2は、レンズモジュール110のレンズ筐体110a内の構成を示す、光軸Axに沿った断面図である。図2は、くさびプリズム121が光軸Ax上に配置された状態を示している。なお、図2においては部材駆動部155の図示を省略している。図3は、レンズモジュール110のレンズ筐体110aのより具体的な内部構成を側方から見た図である。図4は、図3を前方から見た図である。なお、図3は、くさびプリズム121が光軸Ax上にある状態を示している。
【0032】
くさびプリズム121は、屈折率1.5近傍のガラス部材が好ましく、例えば、BK7などの硝材で構成する。このくさびプリズム121は、第1レンズ111の前面側に配置された光学面として、第1入射平面122及び第1射出平面123を有する。第1入射平面122及び第1射出平面123は、光軸Axに沿って前方から順に配置され、互いに所定の角度θをなしている。したがって、光線が空気中からくさびプリズム121へ入射すると屈折作用によって屈折し、さらに、射出面でも屈折作用により屈折するため、入射側と射出側で光線の角度を変えることができる。この角度θは、0.1°以上3°以下であれば、色収差の発生を低減することができるため、この角度範囲が望ましい。また、くさびプリズム121は、物体側から第1レンズ111への入射側に配置されることが望ましい。
ここで、前側は物体側であり、後ろ側は像面側としている。
【0033】
回転付勢部133の回動により、台座部131に支持されたくさびプリズム121は、光軸Ax上にある位置(図4の位置P1)と光軸Axから外れた位置(図4の位置P2)のいずれかに配置される。このため、くさびプリズム121の位置により、物体側から第1レンズ111へ入射する光線の角度を変えることができる。すなわち、部材駆動部155の駆動によって光軸Axに対するくさびプリズム121の光学面の位置を調整することにより、くさびプリズム121が光軸Ax上にあるときは、撮像素子120に対して第1被写体像を与える第1光軸が構成され、くさびプリズム121が光軸Axから外れた位置にあるときは、撮像素子120に対して、第1被写体像とは異なる第2被写体像を与える第2光軸が構成される。前者では、くさびプリズム121に入射した光線L1(図2)は、くさびプリズム121において屈折して射出した後に光軸Axに沿って第1光軸上を進行し、後者では、光線L2(図2)は、撮像素子120に対して垂直な第2光軸に沿って光軸Ax上を進行する。これにより、第1被写体像と第2被写体像では視差が生じるため、これらの被写体像は被写体の視差画像となり、これら2枚の画像を再生することによって立体視が可能となる。ここで得られる視差画像は、くさびプリズム121の形状及び配置方向にしたがって、水平方向(図1〜図3の左右方向)の視差画像となるが、くさびプリズム121の形状及び配置方向を変更することによって水平以外の所望の方向の視差画像を得ることもできる。
【0034】
次に、図5、図6を参照しつつ、デジタルカメラ100を用いた視差画像取得方法について説明する。ここで、図5は、視差画像を取得するときのデジタルカメラ100を側面から見た概念図である。図6は、視差画像取得方法の流れを示すフローチャートである。図5においては、レンズモジュール110に入射する光線は簡略に表示している。
【0035】
ユーザーが指示部145を操作することにより、カメラが起動され、撮影モード(静止画)が設定されると、撮像開始となる。つづいて、既存のカメラと同様のため詳細な説明は省略するが、ユーザーは、撮影環境及び撮影するモードに対応して撮像条件を設定する。撮像条件としては、例えば、絞り、シャッタースピード、ISO感度、焦点距離がある。
【0036】
次に、システム制御部150は、ユーザーが選択したモードが3Dモードであるか否かを判断する(ステップS101)。選択されたのが2D(2次元)モードであれば(ステップS101でN)、立体撮像せずに、既存の2Dカメラのように撮像する(ステップS201)。
【0037】
これに対して、3Dモードが選択された場合(ステップS101でY)、立体撮像可能な状態に移行する。
AE(自動露出)、AF(オートフォーカス)、及びAWB(オートホワイトバランス)の処理は、既存の方式で実行し、スルー画表示を行う(ステップS102)。
ここで、AE、AF、AWBについては、既存の方式で行うため、説明を省略している。
【0038】
つづいて、システム制御部150は、レリーズボタンが半押しされたかどうかを判断する(ステップS103)。レリーズボタンが半押しされない間(ステップS103でN)は、AE、AF、及びAWBの処理(ステップS102)を繰り返し実行して、処理結果を順次更新する。
【0039】
レリーズボタンが半押しされた場合(ステップS103でY)は、AE、AF、及びAWBの処理を実行する(ステップS104)。この処理は、ステップS102と同様に既存の方式で実行し、記録部144に格納する。
【0040】
以上のステップS102〜S104までの処理は、レリーズボタンが全押しされるまでの間(ステップS105でNである間)、繰り返される。
ユーザーによってレリーズボタンが全押しされると(ステップS105でY)、システム制御部150は、立体撮像の第1の画像の取得(第1の撮影)を実行する(ステップS106)。ここで、第1の画像は、くさびプリズム121を光軸Ax上から外れた位置に配置した状態で取得する上記第2被写体像としている。また、第1の撮影は、くさびプリズム121を介さずに第1レンズ111に光線が入射するため、通常の2D撮影と同様の画像が得られる。
【0041】
第1の撮影が終了すると、システム制御部150は、光線制御部材として部材駆動部155を駆動させてくさびプリズム121を光軸Ax上に配置(ステップS107)し、立体撮像の第2の画像の取得(第2の撮影)を実行する(ステップS108)。ここで、第2の画像は、くさびプリズム121が光軸Ax上にある状態で取得する上記第1被写体像としている。
【0042】
第2の撮影(ステップS108)が終了すると、システム制御部150は、部材駆動部155を駆動させてくさびプリズム121を光軸Ax上から外れた位置に移動させるように、部材制御部154へ指示信号を送出する(ステップS111)。
また、システム制御部150は、3Dフォーマット変換部142に、第1の撮影及び第2の撮影で取得した画像について3Dフォーマット変換を実行させる(ステップS109)。変換されたデータは記録部144に記録される(ステップS110)。
【0043】
以上のように保存された、視差のある画像(第1被写体像及び第2被写体像)を出力処理部143から外部表示装置へ出力して再生させると、立体視することが可能となる。デジタルカメラ100においては、台座部131に支持されたくさびプリズム121を第1レンズ111、第2レンズ112、及び第3レンズ113の光軸Ax上に出し入れすることにより、2つの光軸を切り替える構成であり、光軸Axに沿った光軸が共通する共軸光学系であるため、装置が大型化することがなく、かつ、良質な画質の視差画像を取得することができる。
【0044】
(第2実施形態)
図7、図8を参照しつつ第2実施形態に係る視差画像取得装置について説明する。
第2実施形態に係る視差画像取得装置においては、2つの光軸可変部材を用いている点が第1実施形態に係る視差画像取得装置と異なる。その他の構成は第1実施形態に係る視差画像取得装置と同様であって、同じ部材については同じ参照符号を使用し、その詳細な説明は省略する。
【0045】
図7は、第2実施形態に係るレンズモジュール210のレンズ筐体210aのより具体的な内部構成を側方から見た図である。図8は、図7を前方から見た図である。なお、図7は、第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222が第1レンズ111、第2レンズ112、及び第3レンズ113の光軸Ax上にある状態を示している。
【0046】
レンズモジュール210は、レンズ筐体210a中に、撮像光学系としての複数のレンズ(フォーカスレンズ)111、112、113と、第1光学素子としての第1くさびプリズム221と、第2光学素子としての第2くさびプリズム222と、撮像素子120と、が第1レンズ111、第2レンズ112、及び第3レンズ113の光軸Axに沿って配置された構成を備える。なお、図7、図8においては、撮像素子120の図示を省略している。
【0047】
さらに、レンズ筐体210a内には、第1くさびプリズム221を駆動する第1部材駆動部255と、第2くさびプリズム222を駆動する第2部材駆動部256と、が配置されている。
第1部材駆動部255は、第1くさびプリズム221が固定された第1台座部231と、この第1台座部231を第1駆動軸232の周りに回転運動可能とする第1回転付勢部233と、を備える。第2部材駆動部256は、第2くさびプリズム222が固定された第2台座部241と、この第2台座部241を第2駆動軸242の周りに回転運動可能とする第2回転付勢部243と、を備える。
【0048】
第1部材駆動部255及び第2部材駆動部256は、部材制御部154(図1)から制御信号を受けて第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222をそれぞれ、光軸Ax上に配置し、又は、光軸Ax上から退避させる駆動部である。第1部材駆動部255及び第2部材駆動部256は、第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222をそれぞれ回動させる別個の駆動部としてもよいし、第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222の回動に共通の駆動部としてもよい。
ここで、第1くさびプリズム221及び第1部材駆動部255、並びに、第2くさびプリズム222及び第2部材駆動部256は、それぞれが光軸可変部材を構成する。
【0049】
第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222はそれぞれ、屈折率1.5近傍のガラス部材が好ましく、例えば、BK7などの硝材で構成する。
第1くさびプリズム221は、第1レンズ111の前面側に配置された光学面として、第1入射平面221a及び第1射出平面221bを有する。第1入射平面221a及び第1射出平面221bは、光軸Axに沿って前方から順に配置され、互いに所定の角度θをなしている。
また、第2くさびプリズム222は、第1レンズ111の前面側に配置された光学面として、第2入射平面222a及び第2射出平面222bを有する。第2入射平面222a及び第2射出平面222bは、光軸Axに沿って前方から順に配置され、互いに所定の角度θをなしている。
【0050】
第2くさびプリズム222は、第1くさびプリズム221よりも前側に配置されている。第1くさびプリズム221と第2くさびプリズム222は、ともに光軸Ax上に配置したときにくさび形状が互い違いになるように配置されている。また、第1くさびプリズム221と第2くさびプリズム222は、被写体と撮像素子120を通る軸である光軸Axに対して対称となるように配置される。
【0051】
第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222においては、それぞれ、空気中から入射した光線は屈折作用によって屈折し、さらに、射出面でも屈折作用によりそれぞれ屈折するため、入射側と射出側で光線の角度を変えることができる。角度θは、0.1°以上3°以下であれば、色収差の発生を低減することができるため、この角度範囲が望ましい。また、第1くさびプリズム221、第2くさびプリズム222は、物体側から第1レンズ111への入射側に配置されることが望ましい。
【0052】
第1回転付勢部233は、部材制御部154からの制御信号にしたがって、第1駆動軸232の周りを回動するように駆動される。この第1回転付勢部233の回動により、第1台座部231に支持された第1くさびプリズム221は、光軸Ax上にある位置(図8の位置P11)と光軸Axから外れた位置(図8の位置P12)のいずれかに配置される。また、第2回転付勢部243は、部材制御部154からの制御信号にしたがって、第2駆動軸242の周りを回動するように駆動される。この第2回転付勢部243の回動により、第2台座部241に支持された第2くさびプリズム222は、光軸Ax上にある位置(図8の位置P21)と光軸Axから外れた位置(図8の位置P22)のいずれかに配置される。
【0053】
このような第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222の動きにより、物体側から第1レンズ111へ入射する光線の角度を変えることができる。すなわち、第1部材駆動部255及び第2部材駆動部256の駆動によって、光軸Axに対する第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222の光学面の位置を調整することにより、例えば、第1くさびプリズム221が光軸Ax上にあり、かつ、第2くさびプリズム222が光軸Ax上から退避しているときは、撮像素子120に対して第1被写体像を与える第1光軸が構成され、第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222が光軸Ax上にあるときは、撮像素子120に対して、第1被写体像とは異なる第2被写体像を与える第2光軸が構成される。前者では、第1くさびプリズム221に入射した光線は、撮像素子120の撮像面に対して垂直ではない第1光軸に沿って、第1くさびプリズム221において屈折して射出した後に撮像素子120へ向けて進行し、後者では、光線は、撮像素子120に対して垂直な第2光軸に沿って光軸Ax上を進行する。これにより、第1被写体像と第2被写体像では視差が生じるため、これら2枚の画像を再生することによって立体視が可能となる。
なお、第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222の光軸Axに対する位置は、上述した例に限定されず、第1光軸及び第2光軸は第1くさびプリズム221及び第2くさびプリズム222の位置にしたがって任意に定めることができる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0054】
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る視差画像取得装置の光学系の構成を示す断面図である。
第3実施形態に係る視差画像取得装置においては、光学系として折り曲げ光学系を用いている点が第1実施形態に係る視差画像取得装置と異なる。その他の構成は第1実施形態に係る視差画像取得装置と同様であって、同じ部材についてはその詳細な説明は省略する。
【0055】
図9に示すように、第3実施形態における第1光学素子としてのくさびプリズム321(光軸可変部材)は、第1実施形態のくさびプリズム121と同様の構成であって、折り曲げ光学系301の最も物体側の面の前側に配置されている。このくさびプリズム321は、第1実施形態のくさびプリズム121と同様に台座部131によって支持されており、部材駆動部155が駆動されることにより、くさびプリズム321は折り曲げ光学系301の光軸Ax2上の位置、又は光軸Ax2から外れた位置に配置される。これにより、くさびプリズム321が光軸Ax2上にあるときは、撮像素子120に対して第1被写体像を与える第1光軸が構成され、くさびプリズム321が光軸Axから外れた位置にあるときは、撮像素子120に対して、第1被写体像とは異なる第2被写体像を与える第2光軸が構成される。第1被写体像と第2被写体像では視差が生じるため、これら2枚の画像を再生することによって立体視が可能となる。
【0056】
ここで、第2実施形態と同様に、第2光学素子としてのくさびプリズムを追加して、2つのくさびプリズムを用いて第1光軸及び第2光軸を構成してもよい。
また、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【0057】
(第4実施形態)
図10は、第4実施形態に係る視差画像取得装置の光学系の構成を示す断面図である。
第4実施形態に係る視差画像取得装置においては、第1光学素子としてDOE(Diffractive optical element)を用いる点が第1実施形態に係る視差画像取得装置と異なる。その他の構成は第1実施形態に係る視差画像取得装置と同様であって、同じ部材についてはその詳細な説明は省略する。
【0058】
DOE421は、第1レンズ111、第2レンズ112、及び第3レンズ113の光軸Axに垂直な方向に沿って複数の溝が互いに平行になるように形成された回折格子である。DOE421は、第1レンズ111の前面側に配置されており、光の回折現象を利用して入射する光線を制御する。入射した光線は次数に応じて回折する角度が違うが、溝の形状により、特定次数の回折効率を高めることができる。すなわち、入射した光線の角度を特定の角度に偏向することが可能となる。したがって、図10のように、光学系の前面にDOE421を配置することで、光軸の角度を制御し、視差画像を取得することが可能となる。
なお、その他の構成、作用、効果については、第1実施形態と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明に係る視差画像取得装置は、小型な構成で、大幅なコストアップを伴わずに良好な画質の視差画像を取得する面で有用である。
【符号の説明】
【0060】
100 デジタルカメラ
110 レンズモジュール
110a レンズ筐体
111 第1レンズ
112 第2レンズ
113 第3レンズ
120 撮像素子
121 くさびプリズム
122 第1入射平面
123 第1射出平面
131 台座部
132 駆動軸
133 回転付勢部
140 画像処理部
142 3Dフォーマット変換部
143 出力処理部
144 記録部
145 指示部
150 システム制御部
154 部材制御部
155 部材駆動部
170 カメラボディ
210 レンズモジュール
210a レンズ筐体
221 第1くさびプリズム
221a 第1入射平面
221b 第1射出平面
222 第2くさびプリズム
222a 第2入射平面
222b 第2射出平面
231 第1台座部
232 第1駆動軸
233 第1回転付勢部
241 第2台座部
242 第2駆動軸
243 第2回転付勢部
255 第1部材駆動部
256 第2部材駆動部
301 折り曲げ光学系
321 くさびプリズム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズ筐体と、
前記レンズ筐体に設置された複数のレンズを有し、撮像素子上に被写体像を結像する撮像光学系と、
前記撮像光学系の前面に配置される光学面を有し、第1被写体像を与える第1光軸と第2被写体像を与える第2光軸のいずれかを前記撮像光学系が有するように前記光学面を調整する光軸可変部材と、
を有し、
前記第1被写体像と前記第2被写体像は、前記被写体の視差画像となることを特徴とする視差画像取得装置。
【請求項2】
前記光軸可変部材は、
1つの第1入射平面と1つの第1射出平面をもち、前記撮像光学系の前面に配置される、第1光学素子と、
前記第1光学素子を駆動する駆動部と、
を有し、
前記第1入射平面と前記第1射出平面は、互いに所定の角度をなしていることを特徴とする請求項1に記載の視差画像取得装置。
【請求項3】
前記所定の角度は、0.1°以上、3°以下であることを特徴とする請求項2に記載の視差画像取得装置。
【請求項4】
前記第1光学素子は、光学ガラス部材であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の視差画像取得装置。
【請求項5】
前記第1光学素子は、樹脂部材であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の視差画像取得装置。
【請求項6】
前記駆動部は、前記第1被写体像を与えるとき前記第1光学素子を前記撮像光学系の前面に挿入して、前記第2被写体像を与えるとき前記第1光学素子を前記撮像光学系の前面から待避させることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の視差画像取得装置。
【請求項7】
前記光軸可変部材は、1つの第2入射平面と1つの第2射出平面をもち、前記第1光学素子に隣接して配置される、第2光学素子をさらに有し、
前記駆動部は、前記第2光学素子をさらに駆動し、
前記第2入射平面と前記第2射出平面は、互いに前記所定の角度をなしており、
前記第1光学素子と前記第2光学素子は、前記被写体と前記撮像素子を通る軸に対して対称であることを特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1項に記載の視差画像取得装置。
【請求項8】
前記駆動部は、前記第1被写体像が撮られるとき、前記第1光学素子を前記撮像光学系の前面に挿入するとともに前記第2光学素子を前記撮像光学系の前面から待避させ、前記第2被写体像が撮られるとき、前記第1光学素子を前記撮像光学系の前面から待避させるとともに前記第2光学素子を前記撮像光学系の前面に挿入することを特徴とする請求項7に記載の視差画像取得装置。
【請求項9】
前記駆動部は、前記第1光学素子および前記第2光学素子を固定する台座部と、前記台座部に回転運動を付勢する回転付勢部と、を有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の視差画像取得装置。
【請求項10】
前記第1被写体像と前記第2被写体像は、前記被写体の水平方向の視差画像となることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の視差画像取得装置。
【請求項11】
前記撮像光学系は共軸光学系であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の視差画像取得装置。
【請求項12】
前記撮像光学系は折り曲げ系であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の視差画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−20051(P2013−20051A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152642(P2011−152642)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】