説明

視線誘導標の取付構造

【課題】本体に雌ねじ加工を施すことなく支柱に安定的に取り付け可能な視線誘導標の取付構造を提案する。
【解決手段】再帰反射体を固定させた本体部に、内側に中空部を備え下方へ開口する筒状の取付部14を形成させ、この取付部の筒壁に貫通孔を形成させ、前記中空部内に支柱Sの上端を挿入させ、取付ねじNの雄ねじを前記取付部14の外方から前記貫通孔に挿入させて、前記取付部14の内側に配置させた板形状の雌ねじ部材2に螺入させ、前記支柱Sの外側面を前記雄ねじの先端に押圧させて、前記取付部14を前記支柱Sに取り付ける。視線誘導標の本体部に雌ねじ加工を施すことなく支柱Sに安定的に取り付けることができると共に、前記雌ねじ部材2を板形状に形成するので、これを配置させる前記支柱Sと前記取付部14との間の隙間を小さく設けることができ、前記取付部14を小さく簡単な構造に形成させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路脇等に設置されて、歩行者や車両の運転手などの視線誘導を行うための視線誘導標の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路付近に設置する視線誘導標に関しては従来より様々な製品が用いられている。中でも、立設する支柱の上端に光の再帰反射性を有する再帰反射体を取り付けたものがよく用いられており、これらを支柱に取り付ける方法についても種々の構成が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、支柱パイプ(2)とこの支柱パイプの上端に取付けられた反射器(3)とから構成され、支柱パイプ(2)は、支柱パイプ本体(2A)とこの支柱パイプ本体の上端に取付けられたキャップ(2B)とからなり、かつ、当該キャップの外周縁(2B1)は支柱パイプ本体(2A)の側壁より外方に突出され、反射器(3)は上方に位置する反射体(4)とこの反射体の下面に一体に連結された取付金具(5)とから構成され、取付金具(5)の下面に下方に向け垂下された法面側壁部(5B1)には内方に向け締付けネジ(5B11)が進退自在にねじ込まれていると共に、取付金具(5)の下面に垂下された車道側壁部(5B2)の下面にはキャップの外周縁に係脱する突片(5B21)が連設されていることを特徴とする視線誘導標、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−30217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1には、法面側壁部(5B1)にねじ込んだ締付けネジ(5B11)を進退させて反射器(3)を支柱パイプの上端に固定させるようになされている。しかし、この構成は、法面側壁部(5B1)を備える取付金具(5)を雌ねじ加工可能な金属製にすることが必要であり、同様の構成を合成樹脂製の視線誘導標に用いるのは困難であった。
【0006】
そこで本発明は、視線誘導標に雌ねじ加工を施すことなく支柱に安定的に取り付け可能な視線誘導標の取付構造を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る視線誘導標の取付構造は、光の再帰反射性を有し、立設する支柱へ取り付けられる視線誘導標の取付構造であって、
前記視線誘導標は、本体部と、該本体部に固定された光の再帰反射性を有する再帰反射体とを備え、
前記本体部には内側に中空部を備えて下方へ開口する筒状の取付部が形成され、該取付部の筒壁には貫通孔が形成されており、
前記中空部内に支柱の上端が挿入され、
取付ねじの雄ねじが前記取付部の外方から前記貫通孔に挿入されて、前記取付部の内側に配置された板形状の雌ねじ部材に螺入され、
前記支柱の外側面が前記雄ねじの先端に押圧されると共に、前記取付部の内側面が前記雌ねじ部材の外側面に押圧されて、前記取付部が前記支柱に取り付けられることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る視線誘導標の取付構造によれば、視線誘導標が、本体部と、この本体部に固定された光の再帰反射性を有する再帰反射体とを備え、前記本体部に中空部を内側に備えて下方へ開口する筒状の取付部を形成させ、この取付部の筒壁に貫通孔を形成させ、
前記中空部内に支柱の上端を挿入させ、取付ねじの雄ねじを前記取付部の外方から前記貫通孔に挿入させて、前記取付部の内側に配置された雌ねじ部材に螺入させ、前記支柱の外側面に前記雄ねじの先端を押圧させると共に、前記取付部の内側面に前記雌ねじ部材の外側面を押圧させて、前記取付部を前記支柱に取り付けるので、視線誘導標の本体に雌ねじ加工を施すことなく支柱に安定的に取り付けることができる。
また、前記雌ねじ部材を板形状に形成するので、これを配置させる前記支柱と前記取付部との間の隙間を小さく設けることができ、前記取付部を小さく簡単な構造に形成させることができる。
また、前記取付部の内側面に前記雌ねじ部材の外側面を押圧させるので、前記取付部の貫通穴付近でその押圧の力が部分的に集中することなく分散され、前記取付部を金属より合成の低い合成樹脂等の材料で形成させても、貫通穴付近の取付部の筒壁に前記雌ねじ部材の押圧による変形や破損が生じることが抑制される。
【0009】
また、前記雌ねじ部材に板形状の板部と、この板部に形成させたねじ部とを設け、
前記板部に裏面から表面へ貫通する丸穴を形成させ、この丸穴をバーリング加工によって形成させて周囲の縁部を全周に亘って前記板部の表面側へ折り曲げると共に、前記縁部の内側面に雌ねじ加工を施して前記ねじ部を形成させれば、既存のナットなどを用いる場合と比較して、前記雌ねじ部材の厚みを小さく形成できると共に、前記ねじ部の幅を前記板部の厚みより大きく設けて前記取付ねじをより強固に締結できるので、好ましい。
また、前記板部の裏面側を前記視線誘導標の取付部の内側面に当接させて、前記支柱と前記取付部との間に前記雌ねじ部材を配置させれば、雌ねじ部材のねじ部に螺入させた取付ねじの先端が前記板部の縁部から突出して支柱の外側面に当接するので、前記縁部が支柱の外側面等に接触すること等がなく前記取付部の中空部内に収納され、縁部へ他の部材が接触して変形することによるねじ部の損傷が抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る視線誘導標の取付構造によれば、視線誘導標に雌ねじ加工を施すことなく支柱に安定的に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る視線誘導標の取付構造により支柱に取り付けられた視線誘導標の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】図1の視線誘導標を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図であり、(ニ)は底面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明に係る視線誘導標の取付構造に用いる雌ねじ部材の実施の一形態を示す図である。
【図5】図4の雌ねじ部材を配置させた図1の視線誘導標の取付部の横断面図である。
【図6】図5の取付部に支柱を挿入させた状態を示す図である。
【図7】図6の取付部を取付ねじによって支柱に取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において1は視線誘導標である。
視線誘導標1は照射された光を光源方向へ再帰反射させる再帰反射体11を備えており、立設された円筒形状の支柱Sの上端に取り付けられて道路脇などに並設され、道路の線形などを車両のドライバー等に示すようになされている。
【0013】
図2は図1の視線誘導標1を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図であり、(ニ)は底面図であり、図3は図2のA−A断面図である。
視線誘導標1は円盤形状の再帰反射体11と、これを固定する本体部12とから設けられ、再帰反射体11は本体部12の前面側と後面側にそれぞれ1枚づつ合計2枚が固定されている。
具体的には、本体部12には前方と後方に開口して円形に窪む凹部13がそれぞれ設けられ、再帰反射体11は凹部13の開口部分に嵌め込まれるようにして固定されている。
尚、前記の各再帰反射体11は、道路に沿って設置された際に走行する車両から視認されやすいように、前方向及び後方向より若干横へその再帰反射性の板面を向けるように本体1に固定されている。
【0014】
また、本体部12の下部には、下方へ開口する円筒形の取付部14が形成されている。具体的には、取付部14は、その内側の中空部15の内径が前記支柱Sの外径より若干大きく形成されており、視線誘導標1は前記支柱Sの上端を中空部15内に収納させて支柱Sに取り付け可能に形成されている。
本体部12の材質は、ポリエチレンやアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂(ABS)、ポリスチレン、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合樹脂(AAS又はASA)、ポリプロピレン、メタクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン、熱可塑性ポリエステル等の熱可塑性合成樹脂、FRP、フエノール樹脂等の熱硬化性合成樹脂、アルミニウム合金や鋼等の金属、等を適宜用いて形成することができ、本実施形態の本体部12はASA樹脂を用いて形成されている。
【0015】
前記取付部14は、その筒壁の内側面に溝部16が形成されている。本実施形態の溝部16は上下方向に沿って形成されており、その底面が取付部14の筒壁の形状に対応した曲面形状に形成されている。
また、本実施形態の溝部16は、取付部14の周方向へ等間隔に3個並設されている。
そして、各溝部16には、その底面から取付部14の外側面に至る円形の貫通穴17がそれぞれ1個づつ合計3個形成されている。
【0016】
図4は本発明に係る視線誘導標の取付構造に用いる雌ねじ部材の実施の一形態を示す図である。
雌ねじ部材2は、長方形の板部21を備えている。具体的には、板部21の幅と長さは、それぞれ前記溝部16の幅と長さに対応する形状に形成されており、前記溝部16の底面の曲面に対応したアールに曲げ加工されている。
【0017】
また、板部21には、裏面から表面に貫通する丸穴22が形成されている。具体的には、丸穴22はバーリング加工によって形成されており、その周囲の縁部23が全周に亘って板部21の表面側へ折り曲げられている。
そして、縁部23には、その内側面に雌ねじ加工が施されて、ねじ部24が形成されている。
【0018】
図5は図4の雌ねじ部材2を配置させた図1の視線誘導標1の取付部14の横断面図である。
本実施形態の雌ねじ部材2は、取付部14の溝部16に収納されて配置されるようになされている。このとき、雌ねじ部材2は、その裏面側を溝部16の底面に当接させ、縁部23が突出する表面側を内側の中空部15へ向けるように配置される。
また、雌ねじ部材2の丸穴22は、前記貫通穴17に対応した位置に形成されており、溝部16に雌ねじ部材2が収納されたときに、貫通穴17と丸穴22のそれぞれの位置が一致するように設けられている。
【0019】
図6は図5の取付部14に支柱Sを挿入させた状態を示す図である。
図6において、前記雌ねじ部材2が取付部14の各溝部16にそれぞれ収納された状態で、取付部14内の中空部15に支柱Sの上端が挿入されている。
このとき、縁部23が取付部14の内側面より内側へ突出せずに溝部16内に収納されるように設けられることで、支柱Sの挿入の際にその外側面が縁部23に当接して、縁部23やねじ部24に変形や損傷などが生じないようにできる。
【0020】
図7は図6の取付部14を取付ねじNによって支柱に取り付けた状態を示す図である。
図7において、取付ねじNの雄ねじが取付部14の外側から貫通穴17へ挿入され、その内側へ配置された雌ねじ部材2のねじ部24に螺入され、その雄ねじの先端が支柱Sの外側面に当接されるようにねじ込まれている。
更に、この取付ねじNがねじ込まれることで、支柱Sの外側面がこの雄ねじの先端に押圧されると共に、取付部14の溝部16の底面が雌ねじ部材2の裏面に押圧され、前記雄ねじ先端の押圧による摩擦力によって視線誘導標1の取付部14が支柱Sに取り付けられるようになされる。
【0021】
視線誘導標1の取付部14を上記のように構成させることで、取付ねじNの雄ねじを螺入させる雌ねじを取付部14に直接形成させることなく視線誘導標1を支柱Sに取り付けできるので、合成樹脂などで形成させた視線誘導標1の本体部12を支柱Sに強固に取り付けることができる。
【0022】
また、雌ねじ部材2を板形状に形成させることで、取付部14との接触面積が大きくなされ、板部21の押圧による取付部14の部分的な変形が抑制されて、視線誘導標の損傷などが抑制できる。
【0023】
また、雌ねじ部材2を板形状に形成させることで、その厚み方向の大きさを小さく形成できるので、これを収納させるための溝部16の深さを浅く設けて、取付部14の筒壁を薄く設けることができる。
また、本実施形態の取付部14には雌ねじ部材2を収納させる溝部16を設けているが、これを設けない場合でも、雌ねじ部材2を厚み方向の大きさの小さな板形状に形成させることで、これを配置させる支柱Sと取付部14との間の隙間を小さく設けることができるので、支柱Sに取り付けられる際の取付部14のがたつきを抑えたり、この隙間に異物が挟まる等の問題の発生を抑制できる。
【0024】
また、雌ねじ部材2を板形状に形成させ、その板部21にバーリング加工によって形成させた丸穴22にねじ部24を設けることで、取付ねじNを螺入させるねじ部24のねじの長さを板部21の板厚より大きく設けることができるので、取付ねじNをより強いトルクでねじ込めるように設けることができる。
【0025】
また、本実施形態の視線誘導標1の取付構造において、取付部14と支柱Sとの間に配置させる本実施形態の雌ねじ部材2は、その板部21の裏面側を取付部14の筒壁に当接させ、縁部23の突出する板部21の表面側を支柱Sに向けて配置されている。このように構成させることで、図7に示すように、視線誘導標1を支柱Sに取り付けるための取付ねじNは、その雄ねじ部分を雌ねじ部材2に螺入させて、縁部23より突出し、その先端を支柱Sに当接させて押圧するようになされる。このため、雌ねじ部材2の縁部23と支柱Sの外側面との間には、螺入された取付ねじNの雄ねじによって隙間が設けられるようになされるので、支柱Sに取り付けられた視線誘導標1に車両などが接触等して強い衝撃が与えられても、縁部23が支柱Sの外側面に接触せず、これによって縁部23が変形などしてねじ部24が損傷するなどの問題が抑制される。
【符号の説明】
【0026】
1 視線誘導標
11 再帰反射体
12 本体部
13 凹部
14 取付部
15 貫通穴
16 溝部
17 貫通穴
2 雌ねじ部材
21 板部
22 丸穴
23 縁部
24 ねじ部
N 取付ねじ
S 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光の再帰反射性を有し、立設する支柱へ取り付けられる視線誘導標の取付構造であって、
前記視線誘導標は、本体部と、該本体部に固定された光の再帰反射性を有する再帰反射体とを備え、
前記本体部には内側に中空部を備えて下方へ開口する筒状の取付部が形成され、該取付部の筒壁には貫通孔が形成されており、
前記中空部内に支柱の上端が挿入され、
取付ねじの雄ねじが前記取付部の外方から前記貫通孔に挿入されて、前記取付部の内側に配置された板形状の雌ねじ部材に螺入され、
前記支柱の外側面が前記雄ねじの先端に押圧されると共に、前記取付部の内側面が前記雌ねじ部材の外側面に押圧されて、前記取付部が前記支柱に取り付けられることを特徴とする視線誘導標の取付構造。
【請求項2】
前記雌ねじ部材は板形状の板部と、該板部に形成されたねじ部とを備え、
前記板部には裏面から表面へ貫通する丸穴が形成され、
該丸穴はバーリング加工によって形成されて周囲の縁部が全周に亘って前記板部の表面側へ折り曲げられると共に、前記縁部の内側面が雌ねじ加工されて前記ねじ部が形成されており、
前記雌ねじ部材は、板部の裏面側が前記視線誘導標の取付部の内側面に当接されるように、前記支柱と前記取付部との間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の視線誘導標の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−136847(P2012−136847A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288905(P2010−288905)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】