説明

視聴覚の又はインタラクティブなメディア、製品又は活動に対する肯定的又は否定的な反応を生理学的信号を用いて測定し評価する方法及びシステム

誘意性値を計算するシステム及び方法は、個人の脳のアルファ非対称を考慮することにより、メディアに対する個人の肯定的又は否定的な反応を捕捉する。この誘意性値は、個人又は個人のグループに基づいてメディアを比較するために利用できる。メディアのイベントを、誘意性値によって対比及び比較することも可能である。メディアを改善するために統計的な測定が行われ得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
製作者は、個人を肯定的又は否定的な方法で刺激するインタラクティブなメディア、活動及び製品(「メディア」)を設計する。メディアは、しばしば、競争の激しい市場において消費者に販売され、市場では、肯定性(positiveness)又は否定性(negativeness)を刺激する能力が価値を決定する。製作者は、個人をより刺激するようメディアを改善することにより価値を最大化するために、肯定性又は否定性が刺激されたかどうかを知りたがる。メディアの価値が最大化されないと、消費者は、よりよい刺激をもたらす競合製品を購入してしまう。競合製品が売れると、売上が減少して利益が失われる。問題は、インタラクティブなメディア、活動及び製品の刺激への反応に関する正確な情報を提供することにある。反応の測定は、インタラクティブなメディア、活動及び製品の製作者が、目標市場の頭脳に入り込むことを必要とする。
【0002】
人の頭脳に入っていく際、神経生物学、精神生理学、及び心理学の研究者は、脳から発される生理学的信号を発見した。研究者は、脳電図(EEG)を利用し、頭につけられた電極を介して、生理学的信号を記録した。生理学的信号は、30ヘルツより下の4つの主要な部分を有する。1〜4ヘルツの周波数はデルタ(δ)波を有し、4〜8ヘルツの周波数はシータ(θ)波を有し、8〜13ヘルツの周波数はアルファ(α)脳波を有し、13〜20ヘルツの周波数はベータ(β)脳波を有する。研究者は、EEGを用いて頭脳を研究したが、肯定性又は否定性の反応を測定し評価するシステム及び方法は、利用可能にならなかった。メディアが個人を肯定的又は否定的に刺激する量は、依然として不明であった。
【0003】
関連技術の上記の例、及びそれらと関連する限界は、例示であり、限定を意図しない。関連技術の他の限界が、本明細書を閲読し、図面を研究した当業者に明らかになる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
以下の実施の形態及びその態様は、例示及び説明であって特許請求の範囲の限定を意味しないシステム、ツール及び方法に関して説明される。様々な実施の形態において、上記の問題の一つ又はそれ以上が軽減又は除去され、別の実施の形態は、別の改善を目的とする。
【0005】
個人のメディアに対する肯定性又は否定性の反応を、誘意性(valence)値として測定する新技術が提供される。本技術は、脳から発される生理学的信号を用いて、誘意性反応を測定する。誘意性値は、肯定的な誘意性値が肯定性を表し、否定的な誘意性値が否定性を表す、肯定性又は否定性の反応の客観的測定値である。都合のよいことに、誘意性値は0を中心とし、ゼロより大きな値が肯定的であり、ゼロより小さい値が否定的であると容易に識別することができるが、必ずしもそうすることが必要ではなく、他の中心点を用いてもよい。都合のよいことに、誘意性値は、異なるメディアを評価するために利用可能である。これらのメディアは、評価可能なイベントを有する。例えば、ライブのフットボールの試合では、タッチダウンは一般に、得点したチームのファンにとって非常に肯定的なイベントであろう。評価は、第一及び第二のメディアに対する各ユーザの反応の誘意性値を計算し、該二つの誘意性値のいずれが高いかを比較するような単純なものであってもよい。より高い値は、個人において、より肯定的な反応を作り出したメディアと関連する。更に、個人のグループによる誘意性反応を測定し集約(aggregate)して、メディアに対する集団全体の反応を決定することができる。メディアのこの集団視聴は、メディアの評価に利用することができるが、これは、メディアへの反応の生理学的変化の新しい利用方法である。
【0006】
本発明の実施の形態が図面に示される。しかしながら、実施の形態及び図面は、例示であって限定的なものではなく、本発明の例を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、誘意性値を計算する例としてのシステム100の図である。
【図2】図2は、アルファ非対称を考慮することによりメディアによる刺激に反応する個人の誘意性値を計算する方法の例としてのフローチャート200を示す。
【図3】個人が肯定的又は否定的に刺激された量に基きメディアを評価する方法の例としてのフローチャート300を示す。
【図4】図4は、メディアに割り当てられた誘意性値に基づいて複数のメディアを評価する図400を示す。
【図5】図5A〜Cは、頭の上面図500を示す。図4Aは、頭の前面を左前部と右前部とに分けて示す。図4Bは、頭の前部を示す。図4Cは、頭を左右に分けて示す。
【図6】図6は、誘意性値を計算しながらメディアにより個人を刺激する例としての図600を示す。
【図7】図7は、メディアにより複数の個人を刺激し、誘意性値及び関連する値を計算する例としての図700を示す。
【図8】図8は、個人がゲームをするように指示され、結果としての誘意性値が計算され、時間におけるキーポイントが特定される実験の図800を示す。
【図9】図9は、個人が自身が最近プレイしたゲームのビデオを視聴し、該個人の脳波から誘意性値が計算される実験の図900を示す。
【図10】図10は、個人の頭からの信号収集に有用な電極を含むヘッドセットの図1000を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、本発明の実施の形態の十分な理解を提供するために、幾つかの具体的な詳細が示される。しかしながら、当業者は、本発明がそれらの具体的な詳細の一つ又はそれ以上が無くても、又は、他の要素との組み合わせにおいても、実施可能であることを理解する。他の例において、本発明の様々な実施の形態の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の実現態様又は操作は、詳細に示され又は説明されない。
【0009】
インタラクティブなメディア、製品又は活動に対する「誘意性」反応を測定する新しいシステム及び方法が提供される。該技術は、脳から発される生理学的信号を利用して誘意性反応を測定する。処理ユニットは、生理学センサを通して生理学的信号を収集し、個人が肯定的又は否定的に刺激された量に対し、実質的に同時に誘意性値を割り当てる。「実質的に同時に」とは、反応が刺激と同時に、又は非常に近い時間内にあることを意味する。反応には遅延があり得る。そのため、誘意性値は、反応が刺激と全く同時でなかったとしても、すぐその後に起こるだろうという理解によって計算される。
【0010】
幾つかの実施の形態において、誘意性値を計算する例としての方法は、アルファ非対称を考慮することである。誘意性値を計算するための二つの有用な生理学的信号には、アルファ波とシータ波とが含まれる。例としての実施の形態において、この計算は、左右のアルファ値及び/又はシータ値を比較するように設計された公式によって達成される。他の有用な信号は、1〜100ヘルツの範囲内において脳から発せられる。
【0011】
図1は、誘意性値を計算するシステム100の例を示す。この図では、構成要素が機能的に分離して描かれているが、そのような描写は例示に過ぎない。当業者は、この図に描かれた構成要素が任意に組み合わされ、又は別個のソフトウェア、ファームウェア、及び/又はハードウェア要素に分離されても良いことを理解する。更に、そのような構成要素は、どのように組み合わされ又は分離されるかに関わらず、同一のコンピュータ装置又は複数のコンピュータ装置上で実行されることができ、複数のコンピュータ装置は、一つ又はそれ以上のネットワークで接続され得る。
【0012】
図1の例において、システム100は、メディア102、個人104、センサ106及び処理ユニット108を含む。図示された通り、個人104はメディア102によって刺激され、その際に、個人の誘意性(肯定性/否定性)が、センサ106を用いて処理ユニット108によって観察される。ここで、メディアは、映画、ビデオ、テレビ番組、コマーシャル、広告、ビデオ・ゲーム、インタラクティブなオンライン・メディア、印刷物、又は、個人を刺激し得る任意の他のメディアのうちの、一つ又はそれ以上であってよい。センサ106は、加速度計、血液酸素センサ、検流計、脳電図、筋電計、及び任意の他の生理学的センサのうちの一つ又はそれ以上であってよい。
【0013】
図2は、アルファ非対称を考慮することによりメディアによる刺激に反応する個人の誘意性値を計算する方法の例としてのフローチャート200を示す。該方法は、フローチャート200におけるモジュールの連続として構成される。しかしながら、これらのモジュール、又は本明細書に記載される他の方法と関連付けられる他のモジュールは、並列実行のために並べ替えられても、又は、モジュールの異なる順番に並べ替えられてもよいことが理解されるべきである。図2の例において、フローチャート200は、イベントを含むメディアによって個人を刺激するモジュール202から開始する。
【0014】
図2の例において、フローチャートは、個人をメディアのイベントで実質的に同時に刺激しながら、右前脳からの第一の信号をサンプリングするモジュール204に続く。信号は、メディアに触れるのと同時にサンプリングされる。反応には遅延があり得るため、信号は、反応が刺激と全く同時でなかったとしても、すぐその後に起こるだろうという理解によってサンプリングされる。従って、サンプリングは刺激と実質的に同時である。サンプリングされた信号は、アルファ波及びシータ波を含む様々な周波数からなる特定の範囲を含む。図2の例において、フローチャートは、個人をメディアのイベントで実質的に同時に刺激しながら、左前脳から第二の信号をサンプリングするモジュール206に続く。信号は、やはり実質的に同時にサンプリングされる。
【0015】
幾つかの実施の形態において、サンプリングされた信号が周波数領域に分解される。分解には、いずれもデジタル信号処理の分野でよく知られている高速フーリエ変換(FFT)又はウェーブレット分析が利用される。FFTは、離散フーリエ変換(DFT)を計算する効果的な方法であり、DFTは、フーリエ分析を計算する他の方法と同様に利用され得る。代替として、周波数成分を別個に考慮することができるように、信号をその様々な周波数成分に分解するウェーブレット分析が利用されてもよい。具体的に、メキシカン・ハット・ウェーブレット、モアレ・ウェーブレット、ドブシー(Daubechies)・ウェーブレット、ベータ(Beta)・ウェーブレット、及びコイフレ(Coiflet)・ウェーブレットが、これを実行するために有用であろう。図2の例において、フローチャートは、RF信号を周波数領域に分解するモジュール208に続く。これは、LF信号と同様の方法で達成される。
【0016】
幾つかの実施の形態において、信号から波が分離されて、ビンに格納される。信号からの周波数を格納する際に、ビンは、周波数領域からサンプリングされた信号を保持する。DFTビンは、nポイントDFTを計算することによって定義される。具体的に、n個の異なるサンプル値が、X(0)からX(n−1)まで作られる。iが0〜n−1の値である場合、X(i)は、関連するサンプル値を保持するビンである。アルファ・ビンは、8〜13ヘルツの任意の値を保持することができるが、必ずしもその範囲内の全ての周波数を含まなくてもよい。シータ・ビンは、4〜8ヘルツの任意の値を保持することができるが、全ての周波数を含まなくてもよい。同様に、デルタ波及びベータ波は、デルタ・ビン及びベータ・ビンに保持されることができる。更に、ホワイト・ノイズやピンク・ノイズといった信号のノイズを除去するために、周波数プロフィールが調整される。
【0017】
図2の例において、フローチャートは、メディアのイベントに対する参照値と比較することにより、誘意性値と参照値との差に基づいてメディアを評価するために、第一の信号からの一つ又はそれ以上の周波数、又は第二の信号からの一つ又はそれ以上の周波数から、アルファ非対称を決定する誘意性値を計算するモジュール208に続く。
【0018】
幾つかの実施の形態において、誘意性値の計算は、左右のアルファ値又はシータ値を比較するよう設計された、以下の公式群から選択される公式によって達成される。αRFは右前頭部アルファを表し、αLFは左前頭部アルファを表し、θLFは左前頭部シータを表し、θRFは右前頭部シータを表し、θLは左シータを表し、θRは左シータを表し、αLは左アルファを表し、αRは右アルファを表す。
【0019】
【数1】

【0020】
これらの公式例は、限定を意図しない。多数の異なる公式が利用可能であり、これらの公式のうちの一つが、特定の応用に合った公式を作成するために、これらの教示の趣旨内において修正され得る。
【0021】
幾つかの実施の形態において、否定性の観点から誘意性が計算される場合に、以下の公式が利用され得る。これらの公式は、アルファ及びシータについて上記と同様の標記を用いる。
【0022】
【数2】

【0023】
これらの公式例は、限定を意図しない。多数の異なる公式が利用可能であり、これらの公式のうちの一つが、特定の応用に合った公式を作成するために、これらの教示の趣旨内において修正され得る。
【0024】
図3は、個人が肯定的又は否定的に刺激される量に基づいてメディアを評価する方法の例としてのフローチャート300を示す。本方法は、フローチャート300内のモジュールの連続として構成される。しかしながら、これらのモジュール、及び本明細書に説明された他の方法と関連付けられたモジュールは、並列実行のために並べ替えられても、又は、モジュールの異なる順番に並べ替えられてもよいことが理解されるべきである。図3の例において、フローチャートは、メディアのイベントに対する個人の誘意性値を計算するモジュール302から開始する。
【0025】
図3の例において、フローチャートは、個人がメディアにより肯定的又は否定的に刺激される量と、該メディアの参照値との差を決定するために、誘意性値と参照値とを比較するモジュール304に続く。これも、また、図3について説明される方法によって得られる。
【0026】
図3の例において、フローチャートは、メディアのイベントの評価を決定する測定値として比較を保存するモジュール306に続く。これは、左右の脳のアルファ非対称を比較する公式を利用する。図3の例において、フローチャートは、個人の脳におけるアルファ非対称を考慮することにより、第二の信号から第二の誘意性値を計算するモジュール308に続く。
【0027】
幾つかの実施の形態において、メディアは、その誘意性値に基づいて評価される。メディアは、どちらがより高い誘意性値を持つか、例えば、どちらがより肯定的な反応を作り出し、より肯定的に「好まれる」かを決定するために、互いに比較される。都合のよいことに、複数のメディアが、一人の個人について互いに評価されることができる。更に、メディアの各イベントは、例えば、一つの映画の中の最も肯定的な場面を取り出したり、又は逆に、カットされ得るように映画の中のより否定的な場面を取り出したりできるよう、互いに相対的に評価されることができる。誘意性値は客観的数値であるため、この技術に基づいて、例えば一個人について、テレビ広告の肯定的反応値をチェスのようなボード・ゲームと比較するような、様々な特徴を有するメディアを評価するシステムを構築することができる。更に、メディアは、グループがメディアを他のメディアよりも肯定的に捕らえているかどうかを決定する際に、特定のグループに基づいて比較されることができる。
【0028】
図4は、メディアに割り当てられた誘意性値に基づいて複数のメディアを評価する図400を示す。図400は、ゲーム402、スポーツ404、広告406、映画408、評価ユニット409、評価された映画410、評価されたスポーツ412、評価されたゲーム414、及び評価された広告416を含む。図4の例において、未評価のメディアであるゲーム402、スポーツ404、広告406、及び映画408は、後に、個人の脳におけるアルファ非対称と関連付けられて、それらが肯定性又は否定性を刺激する能力の順番に評価付けされる。都合の良いことに、n個の複数の異なるメディアを評価することができる。異なるメディアの相対評価は、個人又はグループについての比較によって達成され、個別のアプリケーションに合った評価を決定するために、様々な統計手法が利用され得る。
【0029】
図5A〜Cは、頭の前部を示し、該頭の前部を左前部と右前部とに分割する、頭の上面図500を示す。図5Aは、左前脳502及び右前脳505を含む。図5Bは、前脳506を含む。図5Cは、左脳508及び右脳510を含む。図5A〜Cの例において、脳の分割は、個人の脳波から個人の誘意性値を計算するために用いられる公式の理解に関係する。具体的には、信号が収集される脳の部位が示されている。例において、右前頭部アルファαRFは、右前脳505から収集される。左前頭部アルファαLFは、左前脳502から収集される。右前頭部シータθRFは、右前脳505から収集される。左前頭部シータθLFは、左前脳502から収集される。右シータθRは、右脳510から収集される。左シータθLは、左脳508から収集される。左アルファαLは、左脳508から収集される。右アルファαRは、右脳510から収集される。
【0030】
図6は、アルファ非対称に基づいて個人のメディアに対する反応に関する誘意性値を計算しながら、個人をメディアで刺激する例としての図600を示す。図600は、メディア602、ヘッドセット603、個人604、処理ユニット606及び誘意性ベクトル608を含む。図6の例において、個人603は、処理ユニット606により誘意性レベルを観察された状態で、例えばテレビ番組であるメディア602を視聴する。個人の頭部から、ヘッドセット603を介して信号が収集される。これらの信号は、誘意性値に処理されるために、処理ユニット606に転送される。
【0031】
幾つかの実施の形態において、生理学的反応から引き出された多数の個人の誘意性値の集約が作成され、メディアへの集団反応が決定される。集約は、多数の個人に対する平均反応によってなされても、より高次の近似によってなされてもよい。
【0032】
図7は、複数の個人をメディアで刺激し、メディアによって刺激された関連する誘意性値を計算する例としての図700を示す。図700は、「メディア1」702、「メディア2」704、個人707、708及び710、処理ユニット711、合計反応ベクトル712、平均誘意性714、最高誘意性717、及び好ましいメディア718を含む。図7の例において、複数の個人707、708及び710は、メディアによって刺激され、彼らの集団としての誘意性レベルが、アルファ非対称に基づいて分析される。メディアを考慮するためにグループが用いられる場合、合計反応ベクトル712は、メディアを比較する際に有用な値であり得る。ここで、個人のグループは一定の値であり、彼らの平均誘意性は、提示される様々なメディアごとに異なり得る。合計反応ベクトル712は、何人の人がメディアに対し誘意性をもって反応したかを決定する際に有用であり得る。
【0033】
幾つかの実施の形態において、誘意性値は、特定の時刻に起きたイベントを当該特定の時刻の誘意性値と関連付けることにより、メディアに整合付けられる。誘意性値のメディアへの整合付けは、誘意性値の文脈、及び、なぜ特定の誘意性値が高い又は低いのかに関する有用な情報を提供する。メディアの刺激に対する個人の反応は、時系列におけるイベントに分解され得る。非限定的な例において、試合は、誤審で反則の合図を出す審判によって識別されるイベントを含み得る。試合を見ながら誘意性値を観察される個人は、「どうして審判は反則の合図を出したんだろう」と不思議がる間に、誘意性の増加を観察されるかもしれない。誘意性値をメディアに関連付けることにより、刺激が肯定性又は否定性にリンクされることができる。都合の良いことに、この情報は、メディアを変更することによってメディアを改善するために利用できる。
【0034】
幾つかの実施の形態において、イベントは、イベントを他のイベントと比較する数学的変換を用いることにより、特定種別のイベントとして分類される。そのような数学的変換には、平均、一次微分、二次微分、多項式近似、平均値からの標準偏差、平均値からの微分係数の標準偏差、並びに、中間におけるピーク形成、開始時のスパイキング(spiking)、及び平坦等のうちの一つ又はそれ以上を考慮する畳み込み又は他の方法によって実現され得る生理学的反応のプロフィールが含まれ得るが、それらに限定されるものではない。
【0035】
幾つかの実施の形態において、イベントに対するユーザの誘意性反応と、該イベントの所定の誘意性値とを比較するために、参照値が利用される。参照値は、ユーザの誘意性値とイベントとの間の差を決定する比較値を提供する目的で作成される任意のものであってよい。メディアの作成者は、彼ら自身の参照値を作り出し得る。参照値は、理想値、即ち所望の目標であってもよい。参照値は、他の個人を比較する参照値を開発する目的のためだけに計算された、多数の異なるユーザの誘意性値の平均であってもよい。
【0036】
図8は、個人がゲームをするよう指示され、結果としての誘意性値が計算される実験800の図を示す。図800は、ゲーム802、ヘッドセット804、個人806、及び処理ユニット808を含む。図8の例において、個人806はゲーム802をし、彼の脳波を含む信号がヘッドセット804を介して収集され、処理ユニット808に転送される。処理ユニット808は、次いで、誘意性値を計算し、結果としてのグラフは、時間期間に渡る誘意性の変化を示す。ポイントA、BおよびCにおいて、時間期間に渡る誘意性の顕著な落下が見られる。これらは、ゲームの否定的なポイントと関連付けられる。
【0037】
幾つかの実施の形態では、時間期間に渡る誘意性の変化を見るために、或る時点における誘意性値の微分係数が計算される。この値は、当該時点と同時に、又は当該時点の直前に発生する特定のイベントが、誘意性の変化に関連付けられるか否かを測定するために利用できる。人が好きなメディアのイベントを経験する際、微分係数は、少なくとも一時的に正の値になり、イベントに対する次第に高まる肯定的な反応を示す。これは、メディアの製作者が、例えばフットボール試合のタッチダウンのような、肯定的反応を作り出すために望ましいメディアのイベントを識別することを可能とするため、好都合である。同様に、誘意性ベクトルの負の微分係数が、例えばゲームの敗北であるメディアのイベントと関連付けられた場合に、同様に識別され得る。例としてのイベントは、明らかな方法でイベントの肯定的又は否定的な反応とリンク付けられるが、例えば個人が教育セミナーの授業、又は映画の場面に適用される新しく開発された映画技術に対して持ち得る反応などのように、そこまで明らかではない他のイベントが存在する。
【0038】
図9は、個人が、自身が最近やったゲームのビデオを視聴し、彼の脳波から誘意性値が計算される実験の図900を示す。図9は、個人902、ビデオ・ゲームの録画904、処理ユニット906、及びグラフ908を含む。図9の例において、個人902は、彼が以前にやったゲームの録画されたビデオを視聴し、ゲームの経験を追体験する。同時に、彼の脳波が記録され、時間期間に渡る誘意性のグラフ908を生成する処理ユニット906により処理される。増加された誘意性の特定のポイントA〜Dは、肯定的な誘意性によって示されるように、ゲーム内の肯定的なイベントと関連付けられる。実際の実験において、個人は、これらがゲームにおける肯定的なポイントであったことを認めた。追加情報を提供するために、図1に関連して記載された微分変数が用いられてもよい。微分係数は、数学的に、曲線上の点に対する接線を提供するため、肯定性の増加又は否定性の減少の方向を示す線を提供するのに非常に適している。ポイントA〜Dには、正の微分係数を示す線が引かれており、時間に対する誘意性値の増加を示している。
【0039】
幾つかの実施の形態において、視聴者がメディアのイベントを視聴している間に彼/彼女の生理学的データを測定するために、統合されたヘッドセットが視聴者の頭に装着され得る。データはコンピュータのプログラムに記録され、それにより、視聴者が、ヘッドセットを装着しながらメディアと相互作用することが可能となる。
【0040】
図10は、個人の頭部からの信号収集に有用な電極を含むヘッドセット1000を示す。ヘッドセット1000は、処理装置1001、三軸加速度計1102、シリコン製安定化ストリップ1003、右EEG電極1004、心拍数センサ1005、左EEG電極1006、電池モジュール1007、及び調節ストラップ1008を含む。処理装置1001は、生理学的データをデジタル化し、該データを、思考、関与、没頭、肉体的関与、誘意性、生気及びその他を含むがそれらに限定されない生理学的応答に処理可能なマイクロプロセッサである。三軸加速度計1002は、頭部の動きを感知する。シリコン製安定化ストリップ1003は、ヘッドセットの固定により動きを最小化し、更にしっかりした感知を可能とする。右EEG電極1004及び左EEG電極1006は、使用のために準備を必要としない、前額骨の前に置かれるドライ電極である。電極と肌とが接触していることが必要だが、過度な圧力は必要ない。心拍数センサ1005は、額の中心付近に置かれる堅牢な血液量脈波(blood volume pulse)センサであり、充電又は交換可能な電池モジュール1007が片耳の上に置かれる。裏側の調節可能ストラップ1008は、様々なサイズの頭に対してヘッドセットを心地よい圧力設定に調節するために利用される。
【0041】
上記の例及び実施の形態は例示であり、本発明の範囲を限定しないことが、当業者に理解される。本明細書を閲読し図面を研究した当業者にとって明らかな本発明の全ての置換、改善、均等物、及び改良は、本発明の真の趣旨及び範囲内であることが意図される。そのため、以下の特許請求の範囲は、そのような修正、置換、及び均等物の全てを、本発明の真の趣旨及び範囲内にあるものとして、含むものであることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
102 メディア、104 個人、106 センサ、108 処理ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メディア評価に利用する誘意性反応を感知する方法であって、
イベントを含むメディアにより個人を刺激するステップと、
前記個人を前記メディアのイベントで実質的に同時に刺激しながら、前記個人の右前脳からの第一の信号をサンプリングするステップと、
前記個人を前記メディアのイベントで実質的に同時に刺激しながら、前記個人の左前脳からの第ニの信号をサンプリングするステップと、
前記メディアのイベントに対する参照値と比較して、前記誘意性値と前記参照値との差に基づいてメディアを評価するために、前記第一の信号からの一つ又はそれ以上の周波数、及び前記第二の信号からの一つ又はそれ以上の周波数から、アルファ非対称を決定する誘意性値を計算するステップと、
を備える方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記メディアのイベントと関連付けられた複数の個人からの複数の誘意性値が、前記イベントに対する誘意性反応を形成するために集約される方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法であって、更に、前記第一の信号から左前頭部シータ波(θL)及び右前頭部シータ波(θRF)を分離するステップと、前記第二の信号から左前頭部アルファ波(αLF)及び右前頭部アルファ波(αRF)を分離するステップとを備える方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法であって、前記誘意性値が、αRF−αLF、θLF−θRF、(θL/αL)−(θR/αR)、又は([θL−αL]/[θL+αL])/([θR−αR]/[θR+αR])を含む公式を用いて計算される方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法であって、前記誘意性値が、αLF−αRF、θRF−θLF、(θR/αR)−(θL/αL)、又は([θR−αR]/[θR+αR])/([θL−αL]/[θL+αL])を含む公式を用いて、否定性を計算するように、逆数として計算される方法。
【請求項6】
請求項1記載の方法であって、前記第一の信号及び前記第二の信号が、それぞれ、高速フーリエ変換又はウェーブレット分析を用いて周波数領域に分解される方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法であって、前記ウェーブレット分析が、メキシカン・ハット・ウェーブレット、モアレ・ウェーブレット、ドブシー・ウェーブレット、ベータ・ウェーブレット、及びコイフレ・ウェーブレットから選択されるウェーブレットを用いて達成される方法。
【請求項8】
請求項1記載の方法であって、更に、時間期間に渡る誘意性の変化を示す微分係数を計算するステップを備える方法。
【請求項9】
請求項1記載の方法であって、前記メディアが、テレビ、ビデオ・ゲーム、視聴覚広告、ボード・ゲーム、カード・ゲーム、ライブの活動イベント、印刷広告、及びウェブ広告から選択される方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法であって、更に、メディアに対するグループの誘意性反応を決定するために、合計反応ベクトルを作成するステップを備える方法。
【請求項11】
請求項1記載の方法であって、更に、或る時点における誘意性値を該時点におけるイベントと関連付けることにより、整合付けられた誘意性値を作成するために、前記誘意性値を前記メディアに整合付けるステップを備える方法。
【請求項12】
個人が肯定的又は否定的に刺激される量に基づいてメディアを評価する方法であって、
メディアのイベントに対する前記個人の誘意性値を計算するステップと、
前記個人が前記メディアにより肯定的又は否定的に刺激される量と、該メディアの参照値との間の差を決定するために、前記誘意性値を前記参照値と比較するステップと、
前記メディアのイベントの評価を決定する測定値として、前記比較を保存するステップと、
を備える方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法であって、前記参照値が前記メディアの開発者によって提供される方法。
【請求項14】
請求項12記載の方法であって、前記参照値が、他の個人の予め計算された多数の誘意性値の平均値である方法。
【請求項15】
請求項12記載の方法であって、前記誘意性値が、αRF−αLF、θLF−θRF、(θL/αL)−(θR/αR)、又は([θL−αL]/[θL+αL])/([θR−αR]/[θR+αR])を含む公式を用いて計算される方法。
【請求項16】
請求項12記載の方法であって、前記誘意性値が、αLF−αRF、θRF−θLF、(θR/αR)−(θL/αL)、又は([θR−αR]/[θR+αR])/([θL−αL]/[θL+αL])を含む公式を用いて、否定性を計算するように、逆数として計算される方法。
【請求項17】
請求項12記載の方法であって、前記第一のメディアが、テレビ、ビデオ・ゲーム、視聴覚広告、ボード・ゲーム、カード・ゲーム、ライブの活動イベント、印刷広告、及びウェブ広告から選択される方法。
【請求項18】
メディア評価に利用する誘意性反応を感知する、コンピュータ読み取り可能媒体に体現されたプログラムであって、実行された際に、システムを、
イベントを含むメディアにより個人を刺激し、
前記個人を前記メディアのイベントで実質的に同時に刺激しながら、右前脳から第一の信号をサンプリングし、
前記個人を前記メディアのイベントで実質的に同時に刺激しながら、左前脳から第ニの信号をサンプリングし、
前記メディアのイベントに対する参照値と比較して、前記誘意性値と前記参照値との差に基づいてメディアを評価するために、前記第一の信号からの一つ又はそれ以上の周波数、及び前記第二の信号からの一つ又はそれ以上の周波数から、アルファ非対称を決定する誘意性値を計算する、
よう動作させるプログラム。
【請求項19】
請求項18記載のプログラムであって、複数の個人からの複数の誘意性値が、前記メディアに誘意性をもって反応した人数を示す合計反応ベクトルに含まれるプログラム。
【請求項20】
請求項18記載のプログラムであって、前記誘意性値が前記メディアの多数のイベントと関連付けられるプログラム。
【請求項21】
請求項18記載のプログラムであって、更に、前記第一の信号から左前頭部シータ波(θLF)及び右前頭部シータ波(θRF)を分離することと、前記第二の信号から左前頭部アルファ波(αLF)及び右前頭部アルファ波(αRF)を分離することとを備えるプログラム。
【請求項22】
請求項18記載のプログラムであって、前記誘意性値が、αRF−αLF、θLF−θRF、(θL/αL)−(θR/αR)、又は([θL−αL]/[θL+αL])/([θR−αR]/[θR+αR])を含む公式を用いて計算されるプログラム。
【請求項23】
請求項18記載のプログラムであって、前記誘意性値が、αLF−αRF、θRF−θLF、(θR/αR)−(θL/αL)、又は([θR−αR]/[θR+αR])/([θL−αL]/[θL+αL])を含む公式を用いて、否定性を計算するように、逆数として計算される方法。
【請求項24】
請求項18記載のプログラムであって、更に、時間期間に渡る肯定性又は否定性の変化を示す前記誘意性値の微分係数を計算することを備えるプログラム。
【請求項25】
請求項18記載のプログラムであって、前記メディアが、テレビ、ビデオ・ゲーム、視聴覚広告、ボード・ゲーム、カード・ゲーム、ライブの活動イベント、印刷広告、及びウェブ広告から選択されるプログラム。
【請求項26】
請求項18記載のプログラムであって、前記第一及び第二の信号が、時間において第二のイベントに対応する第二の整合された誘意性値と比較され得る、時間において第一のイベントに対応する第一の整合された誘意性値を生成するように、前記メディアに対して整合付けられるプログラム。
【請求項27】
メディア評価に利用する誘意性反応を感知するシステムであって、
前記個人から第一の信号をサンプリングするよう動作可能な一つ又はそれ以上のセンサと、
前記一つ又はそれ以上のセンサと結合された処理ユニットであって、
前記個人を前記メディアのイベントで実質的に同時に刺激しながら、右前脳からの第一の信号をサンプリングし、
前記個人を前記メディアのイベントで実質的に同時に刺激しながら、左前脳からの第ニの信号をサンプリングし、
前記メディアのイベントに対する参照値と比較して、前記誘意性値と前記参照値との差に基づいてメディアを評価するために、前記第一の信号からの一つ又はそれ以上の周波数、及び前記第二の信号からの一つ又はそれ以上の周波数から、アルファ非対称を決定する誘意性値を計算する、
よう動作可能な処理ユニットと、
を備えるシステム。
【請求項28】
請求項27記載のシステムであって、前記一つ又はそれ以上のセンサが、前記メディアによって刺激された前記個人からの信号を測定するよう動作可能な統合センサ・ヘッドセットに組み込まれるシステム。
【請求項29】
メディア評価に利用する誘意性反応を感知するシステムであって、
メディアのイベントにより刺激された個人から第一の信号をサンプリングする手段と、
前記メディアのイベントにより刺激された個人から第ニの信号をサンプリングする手段と、
前記第一の信号及び前記第二の信号を周波数領域に分解する手段と、
前記信号から一つ又はそれ以上の周波数を分離する手段と、
前記メディアのイベントに対する参照値と比較して、前記誘意性値と前記参照値との差に基づいてメディアを評価するために、前記第一の信号からの一つ又はそれ以上の周波数、及び前記第二の信号からの一つ又はそれ以上の周波数から、アルファ非対称を決定する誘意性値を計算する手段と、
を備えるシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−520018(P2010−520018A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552660(P2009−552660)
【出願日】平成19年9月24日(2007.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/020713
【国際公開番号】WO2008/108814
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(508059085)エムセンス コーポレイション (10)
【Fターム(参考)】