説明

視覚障害者誘導用突起フィルム及びその敷設方法

【課題】 突起の形状及び配列が正確に施工できると共に、突起に自動車等の荷重がかかる場合においても変形することのない視覚障害者誘導用標示を敷設するのに容易な視覚障害者用突起フィルム及び敷設方法を提供する。
【解決手段】 複数の開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部に、上面、側面、底面及び底面に固定用突起を有する突起の前記固定用突起と底面で開孔部端部を挟み、前記突起をプラスチックフィルムの開孔部に固定した視覚障害者誘導用突起フィルム。道路面に、反応硬化型樹脂層を形成し、前記の視覚障害者誘導用突起フィルムを載置し、反応硬化型樹脂の硬化を進めた後に突起を残しプラスチックフィルムを除去する視覚障害者誘導用突起の敷設方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚障害者を誘導するために、道路面に突起を並べた視覚障害者誘導標示用の視覚障害者誘導用突起フィルムとその敷設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、視覚障害者に対して、道路面での歩行を安全に誘導あるいは警告するために黄色、白色、灰色などの各色の標示ラインが敷設されている。この標示ラインには各種形状の突起が配設され、その形状により視覚障害者へ誘導あるいは警告を発している。
このような視覚障害者誘導用突起を形成する方法としては、特許文献1、特許文献2および特許文献3に示されるものが開示されている。
特許文献1に記載の方法は、多孔質シートに突起を固着させた多孔質シート固着物を製作し、これを道路面に塗料を介して固着し敷設させるものである。
特許文献2に記載の方法は、反応硬化型樹脂で形成した突起物の上面にシートを貼付けたシート貼り突起物を製作し、これを道路面に反応硬化型樹脂塗料を介してシート貼り突起物を接着硬化後に、シート貼り突起物のシートを剥離させるものである。
特許文献3に記載の方法は、棒状支持体により連結された突起形成体を製作し、これを道路面に反応硬化型樹脂塗料を介し突起形成体を接着硬化後、棒状支持体を取り除くものである。
他方、突起を施工時に溶融塗料を専用施工機で施工する方法が、特許文献4に開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平09−078814号公報
【特許文献2】特開2005−113620号公報
【特許文献3】特開2004−176529号公報
【特許文献4】特開平11−166205号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の突起の施工方法において、多孔質シートを用い突起を固着し敷設させるものは多孔質シートへ塗料を含浸させる作業および多孔質シートの凹凸模様による汚染防止のため上塗りが必要であり、作業工程が多く施工時間がかかる点、また表面を開放した状態で自然放置し硬化されることから、硬化時に埃あるいは枯れ葉等のゴミが付着し、その補修のために更に修復時間(工程)を要する問題を有する。
【0005】
また、突起物上部に両面テープにてシートを張り付けたものは、両面テープの粘着力低下により敷設前にシートから突起物が離脱し易く、また塗料面に突起を置いた時シートが宙に浮いた不安定な状態となり固定が困難となる問題を有する。さらにシートが不安定な状態となることより、塗料の硬化前にシートが塗料に触れる部分と触れない部分が散在し硬化後の塗料表面の外観に気泡、光沢ムラが発生する問題を有する。
【0006】
また、棒状支持体を有する敷設方法においては、支持体及び突起形成体が一体成形品であり、路面の若干の段差、不陸、また、主要部分の交差点信号部分のスロープ部分等の道路面への追従性に乏しく、また突起形成体を接着硬化させる時、突起形成体を塗料に押し込むため、塗料硬化後の外観は、突起形成体が剥がれ易い部分および窪み状に塗料中に埋没する部分等発生しバラツキが大きい。このことよりJIS T 9251に定められている突起形成体の高さ5〜6mmが維持できない場合があるなどの問題を有する。また表面を開放した状態で自然放置し硬化させることから、硬化時に埃あるいは枯れ葉等のゴミが付着し、その補修のために更に修復時間(工程)を要する問題を有する。
【0007】
また、溶融塗料を専用施工機で施工する方法においては、車両が通行する部分、また、夏場において突起が熱変形し形状が維持できない等の問題を有していた。
【0008】
本発明は、突起の形状及び配列が正確に施工できると共に、突起に自動車等の荷重がかかる場合においても変形することのない視覚障害者誘導用標示を敷設するのに容易な視覚障害者用突起フィルム及び敷設方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記の従来の問題を解決するものであり、予めプラスチックフィルムに形成した複数の開口部に、複数の突起を固定し、道路面に突起を並べて配設する表示ラインを敷設するのに効率的で、整然と配設することができる視覚障害者誘導用突起フィルムと、それを用いた敷設方法である。
本発明の特徴は、上面、側面及び底面を有する突起の底面に固定用突部を有し、この固定用突部を利用してプラスチックフィルムの開口部周辺端部を底面と固定用突部を変形させて挟み込んで固定したものである。プラスチックフィルムの開口部周辺端部に突起を挟んでいるため、道路面に、反応硬化型樹脂層を形成し、本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムを載置し、突起の底面と反応硬化型樹脂の硬化接着を進めた後に、プラスチックフィルムを持ち上げるなどして除去することで、反応硬化型樹脂層と接着した突起からプラスチックフィルムを簡単に除去することができる。また、突起がプラスチックフィルムのほとんど上面側にあるためプラスチックフィルムを緊張させることができ、突起の配列を整然とさせることができるので、従来のようにフィルムが撓むことで配列が乱れ、乱れたままで固定する事がなく整然と配列することができる。
【0010】
本発明は、[1]複数の開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部に、上面、側面、底面及び底面に固定用突部を有する突起の前記固定用突部と底面で開孔部端部を挟み、前記突起をプラスチックフィルムの開孔部に固定した視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[2]突起のプラスチックフィルムの開孔部への固定が、固定用突部を加熱変形するものである上記[1]に記載の視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[3]複数の開孔を有するプラスチックフィルムの複数の開孔以外のプラスチックフィルムに、直径0.1〜10.0mmの穴を、1,000〜250,000個/mの密度に設けることを特徴とする上記[1]または上記[2]に記載の視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[4]突起の上面と底面を貫通する直径0.1〜3.0mmの小孔が形成されていることを特徴とする上記[1]ないし上記[3]のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[5]突起の底面の一部に窪みを設け、窪み部分に凸起を設けたことを特徴とする上記[1]ないし上記[4]のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[6]突起の底面に溝を設けたことを特徴とする上記[1]ないし上記[4]のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[7]突起の上面に凹凸を設けたことを特徴とする上記[1]ないし上記[6]のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[8]突起が点状突起、線状突起またはその他形状突起であることを特徴とする上記[1]ないし上記[7]のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[9]突起の高さが、2〜15mmである上記[1]ないし上記[8]のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルムである。
【0011】
また、本発明は、[10]上面、側面及び底面を有する突起の側面に予め形成された溝に開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部の端部を嵌挿し固定した複数の突起を設けた視覚障害者用突起フィルムである。
また、本発明は、[11]上面、側面、底面及び底面に固定用突部を有する突起の前記固定用突部にプラスチックフィルムの開孔部の端部を挿入し、さらにその端部に液状樹脂を塗布し硬化させることにより複数の突起を設けた視覚障害者誘導用突起フィルムである。
また、本発明は、[12]道路面に、反応硬化型樹脂層を形成し、上記[1]ないし上記[11]のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルムを載置し、反応硬化型樹脂の硬化を進めた後に突起を残しプラスチックフィルムを除去する視覚障害者誘導用突起の敷設方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の視覚障害者用突起フィルムとそれを用いた施工方法は、以下の効果を有する。
施工する突起が、予め製作されたものを使用することができるので、均一で正確な形状を有する。また、予め製作することができるので、突起の材質を種々選択することが可能となる。施工方法では、道路面に設ける帯状ラインの材質(素材)を、反応硬化型樹脂とすることにより、夏場の路面温度が高温になったり、走行する自動車のタイヤとの摩擦熱等により、軟化せず、自動車が走行した場合でも、変形、移動、損傷することが無くなる。更に、帯状ラインに反応硬化型樹脂を使用することにより、突起を載置した帯状ラインの硬化に水等で冷却する必要がなく、また、気温及び路面温度に応じて硬化速度(時間)を調整できるので、施工時間の自由度が高くカーブやスロープ状の坂道の手間のかかる施工も硬化速度の調整で容易となる。
【0013】
本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムを用いることにより、所定数の突起を帯状ライン上の所定の位置に正確に載置でき、更にフィルム厚みを最適化することでフィルム自体の柔軟性から、路面の若干の段差(不陸)に対し追従できる。特に反応硬化型樹脂の硬化時(養生時)には表面をほこり、ごみ等の付着による表面汚染から保護することができ、また、視覚障害者誘導用突起フィルムは、透明とすることができるため硬化状態が確認し易くなる。
また、本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムは、固定用突部と底面でフィルム開口部端部を挟み込む(仮固定)構造としているため、道路面に設けた反応硬化型樹脂の硬化が進み突起の底面と接着した後に、突起を残し、フィルム部分を容易に引きはがして、容易、簡単に除去できる。
【0014】
また、道路面に設ける反応硬化型樹脂は、フィルムが介在することで突起の側面より上に、流出できない構造であるため突起は、安定した高さを保持できる。このことよりJIS T 9251に定められている突起の高さ5〜6mmまたはその他形状突起の指定の高さが容易に保持できる。
また、視覚障害者誘導用突起フィルムを横断歩道端部や曲面に敷設させる場合は、その敷設(施工)面積に対応させるため視覚障害者誘導用突起フィルムを切断し、面積に応じて容易に敷設することができる。
【0015】
本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムには、所定形状の開孔部以外に、直径0.1〜10.0mmの穴を1,000〜250,000個/mの密度に設けることで道路面に設けた反応硬化型樹脂層表面とフィルムとの間に発生し得る残留気泡を除去することができ、気泡痕を形成することが無く外観が向上し、また、穴形状が樹脂層表面に転写されることで微小な凹凸ができ、滑り止めの効果が増進する。
また、突起には、上面と底面を貫通する直径0.1〜3.0mmの小孔を形成することで、道路面の帯状ライン上に塗布した反応硬化型樹脂と突起底面内に入り込んだ空気を小孔を通じて外部に逃し出し、突起の浮きを防止すると共に反応樹脂から発生する揮発性(残留)溶剤成分を外部に逃し出せ、空気等による気泡を無くして接触面の確保ができ気泡による接着性の低下を防止できる。
また、突起の底面に溝を設けることにより、突起底部に残存する空気を外部に逃がして反応硬化型樹脂層を底面全体と接触させ、また溝部分の面積増加により接着性を向上できる。
また、突起の底面の一部に窪みを設け、更に、窪み部分に凸起を設けることで凸起の周囲に樹脂を満遍なくゆきわたらせることができ、良好な付着性が得られ、凸起により道路面の反応硬化型樹脂層に強固かつ仕上がり外観も良く、固定させることができる。
【0016】
また、突起の上面に、凹凸を設けた場合、すべり抵抗が向上し、特に雨天時に歩行者がすべりにくい構造とすることができる。
【0017】
また、本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムは、上面、側面及び底面を有する突起の側面に予め形成された溝に開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部の端部を嵌め込み固定した構造とすることができるので、プラスチックフィルムへの突起の固定が容易で、簡便となる。上記のように突起の底面に固定用突部を形成しなくても良く、突起が敷設前にフィルムから離脱した場合でも、再度固定することもできる。
【0018】
また、本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムは、上面、側面、底面及び底面に固定用突部を有する突起の前記固定用突部にプラスチックフィルムの開孔部の端部を挿入し、さらにその端部に液状樹脂を塗布し硬化させることにより突起を固定した構造とすることができるので、プラスチックフィルムへの突起の固定が容易で簡便となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明は、複数の開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部に、上面、側面、底面及び底面に固定用突部を有する突起の前記固定用突部と底面で開孔部端部を挟み、前記突起をプラスチックフィルムの開孔部に固定した視覚障害者誘導用突起フィルムに関する。
本発明で使用する突起は、上面、側面、底面及び底面に固定用突部を有し、固定用突部と底面でプラスチックフィルム開孔部の端部を挟み、前記突起をプラスチックフィルムの開孔部に固定するものである。
そして、複数の開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部に突起の固定用突部と底面で開孔部端部を挟み、前記突起を固定した視覚障害者誘導用突起フィルムを路面に載置し、反応硬化型樹脂塗料の硬化を進めた後、突起を残し、プラスチックフィルム部分のみを除去する施工方法である。
【0020】
また、本発明では前記突起として各種形状突起が適用できるが、円錐形突起(点状突起)、方形突起(線状突起)等の形状とするのが好ましい。この円錐形突起(点状突起)、方形突起(線状突起)の形状としては、JIS規格のJIS T 9251に標準規格が定められておりこの規格にそった形状が良く、また突起の高さも5〜6mmが好ましい。
【0021】
以下、本発明の実施につき、最良の形態を説明する。図1及び図2は、本発明の視覚障害者用突起フィルム(1)を用いた敷設方法の実施例を示す。
突起(2)と気泡抜き穴(4)を散在させたプラスチックフィルム(3)より構成される視覚障害者誘導用突起フィルム(1)を路面(5)に塗布した反応硬化型樹脂(帯状ライン)(6)の上に載置し、反応硬化型樹脂が硬化した後プラスチックフィルム(3)のみを除去し、突起(2)が反応硬化型樹脂(帯状ライン)(6)の上に接着し固定された状態となる。
ここで、使用する視覚障害者誘導用突起フィルム(1)を側面から見た状態を図3に示す。
本発明の施工方法においては、先ず図1、図2、図3に示す突起(2)を予め製作する。円錐形突起(2)を上面、側面、底面側から見た状態を図4、図5、図6に示す。この突起(2)は、小孔(7)と突起上面の凹凸(8)を有し、その突起の形状が掘り込まれた金型を使用し成形材料等を注入したり、射出成型することにより製作できる。
各種突起(2)の構造例として、断面構造及び底面側から見た構造を図7、図8に示す。また、突起(2)は、上面(9)、側面(10)、底面(11)及び底面にフィルム固定用突部(12)を有する構造で、底面(11)と底面部のフィルム固定用突部(12)でプラスチックフィルム(3)の開口部を挟む構造であれば、図9に示すように任意に変形したものを用いることができる。
突起(2)には、基本的に円錐形突起または方形突起があり、例えば円錐形突起は、直径 23mmで、高さは5〜6mmのものがある。また、例えば方形突起は、縦284mm、横28mmで、高さは5〜6mmのものがある。
底面(11)と底面部のフィルム固定用突部(12)でプラスチックフィルム(3)の開口部を挟む構造とするには、図10に示すように、突起(2)をプラスチックフィルム(3)の開孔部に挿入し、底面のフィルム固定用突部(12)を加熱軟化させ、底面と加熱軟化し変形させた固定用突部の間にプラスチックフィルム(3)を挟みこむ。具体的には、加熱した治具をフィルム固定用突部(12)に押し当て、加熱して軟化した状態となったら、そのまま押して突起(2)の底面(11)と加熱変形させたフィルム固定用突部(12)でプラスチックフィルム(3)開口部の周辺を挟み込みプラスチックフィルム(3)に突起(2)を固定する。加熱温度は、突起(2)の材料が、軟化する温度付近であれば良く、フィルム固定用突部(12)を変形させた際にクラックが入り込まない程度とすることが好ましいが、突起(2)を固定できる範囲であればこれに制限されない。また、フィルム固定用突部(12)を溶融流動しても良い。フィルム固定用突部(12)は図8に示すように、突起底面(11)の全周に渡って設けても良く、散在させて設けても良く、突起(2)を固定できる範囲とする。底面部のフィルム固定用突部(12)部分の長さは、外周へ熱変形させたとき、底面外周と同一、または若干外周方向へ長くなることが好ましいが特に制限はしない。底面のフィルム固定用突部(12)の幅(厚み)は、外周へ熱変形させる条件から、0.2〜3.0mm程度が好ましい。
また、本発明の突起をプラスチックフィルムの開孔部へ固定する方法として、その突起の形状が掘り込まれた金型を使用し、複数の開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部を突起が掘り込まれた金型と一致させて金型で挟み込み、一方の金型から射出成型することによっても製作できる。
【0022】
突起(2)は、図9、図10に示すように、その側面に溝を設け、この溝にプラスチックフィルム(3)の開孔部を嵌挿し固定しても良い。この場合、プラスチックフィルム(3)の開口部を突起(2)の直径(方形突起の場合、幅)よりわずかに狭くして溝にプラスチックフィルム(3)開孔部端面を挿入しやすくしたり、突起側面の溝より下側に側面の径(幅)より大きくした部分を設けてプラスチックフィルム(3)が挿入し易いようにすることもできる(図11)。
前記は、主に円錐形突起で説明したが、上面、側面、底面及び底面に固定用突部を有する方形突起についても同様である。
【0023】
本発明で使用するプラスチックフィルム(3)は、熱硬化性プラスチックあるいは熱可塑性プラスチックが用いられ、反応硬化型樹脂との離型性が良い、ポリプロピレンフィルム、ポリエステルフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリ四フッ化エチレンフィルム、また、ポリプロピレン/ポリエステル/ポリプロピレンなどのラミネートフィルムも用いることができる。反応硬化型樹脂との離型性を向上させるためにこれらの表面にシリコーン等による各種離型処理したプラスチックフィルム(3)を用いることができる。
【0024】
これらのプラスチックフィルム(3)には、突起(2)を固定する開孔部とともに、直径0.1〜10.0mmの気泡抜き穴(4)が1,000〜250,000個/mあることが好ましく、特に直径0.5〜1.5mmの穴径が好ましい。また、穴形状としては、スリット状、角型、長方形型、星型等があり制限するものではないが、特に丸型にすることが好ましい。これらの穴は、穿孔、パンチ、レーザー加工などで作製することができるが、これらに制限するものではない。
【0025】
また、前記のプラスチックフィルム(3)には、厚さ0.01〜1.0mmのフィルムが好ましく、特に路面への追従(柔軟)性また、フィルム自体の強度、剥離作業性から0.02〜0.20mmが好ましい。
【0026】
本発明で使用する突起の材質としては、熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂を用いることができ、特にポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びABS(アクリルニトリル・ブタジエン・スチレン)、AES(アクリルニトリル・ブタジエン・エチレン)を用いることが好ましい。また材料中にはガラス繊維、各種繊維形状の補強材、無機粉体、各種充填材を配合することができる。
【0027】
上記のように突起(2)をプラスチックフィルム(3)の開孔部に固定し、実際に施工する配列にセットし、視覚障害者誘導用突起フィルム(1)を製作する。
次に施工する路面(5)に厚さ0.5〜6mmの反応硬化型樹脂(帯状ライン)(6)を施工する。
本発明で使用する反応硬化型樹脂(6)は、反応硬化型樹脂すべてが適用できる。好ましくは常温(20〜30℃)で液状の樹脂液に硬化剤を混合することにより硬化反応する2液混合型樹脂が使用できる。例えば樹脂液としては、アクリル樹脂、アクリル酸−2−エチルへキシル、フタル酸ジ−n−オクチル等の樹脂成分約20〜30重量%、これに炭酸カルシウム、珪砂粉等の骨材50〜57重量%と少量の顔料と添加剤を加えたものである。また、硬化剤としては有機過酸化物(例えば、日本油脂株式会社のナイパーFFKなど)が使用される。
【0028】
前記反応硬化型樹脂(帯状ライン)(6)の施工(塗りつけ)が完了したら、それが硬化する前に、視覚障害者誘導用突起フィルム(1)の突起のフィルム固定用突部(12)側を下にして反応硬化型樹脂(帯状ライン)(6)上に載置し反応硬化型樹脂が硬化し誘導用突起フィルムの突起(2)と反応硬化型樹脂(6)が接着したことを確認した後に、プラスチックフィルム(3)のみ除去し完了する。
【0029】
実施例の反応硬化型樹脂は、2液を混合して初めて硬化反応するものである。その樹脂液としては、前記のように、その成分がアクリル樹脂、アクリル酸−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−n−オクチルであり、これに骨材、充填剤、顔料、添加剤を混合したものである。この樹脂液に硬化剤を1〜3重量%加えて混合することにより、樹脂液が反応硬化するものである。この反応硬化時間は季節、路面温度等で調整可能であり、目安として、約10〜30分位が好ましい。
【0030】
尚、突起(2)の形状は円錐形の点状突起あるいは方形の線状突起がJIS規格の標準に合致していると好ましいが、他の形状にすることもできる。
また、突起(2)の摩耗や損傷防止、耐久性向上の手段としては、骨材、充填剤を混ぜるとよい。
この充填剤としては、小粒硅石、炭素繊維、硅石粉等が使用される。更に突起(2)は、通常黄色に着色され、その顔料としては酸化チタン、黄鉛、有機顔料等が使用される。更に、突起(2)で、特に線状突起(方形突起)のものに対しては、可塑剤を添加することにより、柔軟性が付与され路面の凸凹に対しての密着性が良く施工も容易となる。
【0031】
視覚障害者誘導用突起フィルム(1)は短尺寸法のものをつなぎ合わせて使用するか、あるいは長尺のものを用意し、それを施工時に敷設長さ、幅に応じて切断して使用する。
【0032】
また、プラスチックフィルム(3)は透明、半透明(着色)、あるいは一部直線状のマーキング、ストライプ状の線をつけることで直進(施工)性が容易となる。
【0033】
本発明の視覚障害者誘導用突起フィルム(1)は、施工する突起(2)が予め製作されたものであることから均一で、正確な形状になり、帯状ライン(6)の素材も反応硬化型樹脂(6)を使用したことにより、夏場の路面(5)温度が高温になったり、走行する自動車のタイヤとの摩擦熱等により、軟化せず、自動車が走行した場合、変形、移動、損傷することもない。更に帯状ライン(6)が反応硬化性樹脂(6)を使用したことにより突起(2)を載置した帯状ライン(6)の硬化に水等で冷却する必要がなく、また、気温及び路面温度に応じて硬化速度(時間)を調整できるので、カーブやスロープ状の坂道の手間のかかる部分の施工時間も硬化速度の調整により容易となる。
本発明の視覚障害者誘導用突起フィルム(1)を用いることにより、所定数の突起(2)を帯状ライン(6)上の所定の位置に正確に載置でき、更にプラスチックフィルム(3)の厚みを調整することでプラスチックフィルム(3)自体の柔軟性から、路面(5)の若干の段差(不陸)に対し追従でき、施工しやすくなる。特に反応硬化型樹脂(6)の硬化時(養生時)には表面を埃、ごみ等の付着による表面汚染から保護することができ、また視覚障害者誘導用突起フィルム(1)は透明であるため硬化状態を確認し易くなる。
また、本発明の視覚障害者誘導用突起フィルム(1)は、フィルム固定用突部(12)と底面(11)でプラスチックフィルム(3)開口部端部を挟み込む(仮固定)構造としているため反応硬化型樹脂(6)が硬化を進めた後に、突起(2)を残し、プラスチックフィルム(3)を容易に除去でき、極めて簡便に敷設することができる。
また、反応硬化型樹脂は、プラスチックフィルム(3)が介在することで突起(2)の側面より上には、反応硬化型樹脂(6)が、流出せず、また、突起(2)が浮き出したりしない構造としているため突起(2)は、安定した高さを保持することができる。このことよりJIS T 9251に定められている突起の高さ5〜6mmが保持できる。
【0034】
また、視覚障害者誘導用突起フィルム(1)を横断歩道端部や曲面に敷設させる場合は、その敷設(施工)面積に対応させるため視覚障害者誘導用突起フィルム(1)を切断し、容易に敷設できる。
また、視覚障害者誘導用突起フィルム(1)には、所定形状の開孔部以外に直径0.1〜10.0mmの穴を1,000〜250,000個/m設けることで反応硬化型樹脂(6)の硬化時(養生時)にプラスチックフィルム(3)との間に発生する残留気泡を穴から逃がすことで、気泡を残さず、外観を良好に施工でき、穴の跡が付与され微細な凹凸となることから滑り止めの機能を果すことができる。
【0035】
また、突起(2)には、図4、5に示すように上面と底面を貫通する小孔(7)を形成することで、帯状ライン(6)上に塗布した反応硬化型樹脂と突起(2)内に入り込んだ空気を前記小孔(7)を通じて外部に逃し出し、突起の浮きを防止すると共に反応硬化型樹脂(6)から発生する揮発性(残留)溶剤成分を外部に逃し出せる構造とすることで、接着界面に気泡等を含まず接触面積を確保でき、接着性が各突起(2)で均一となり、接着性能を維持できる。
【0036】
また、本発明では、突起(2)の底面の一部に溝(13)を設けることができ、前記溝(13)の深さは、反応硬化型樹脂(6)との接着性を考慮し0.3〜4.0mm程度が好ましい。
また、図5、6に示すように突起の底面の一部に窪み(16)を設け、窪み部分に凸起(14)を設けることで突起の溝(13)に樹脂をゆきわたらせることができ良好な接着性が得られ、突起(2)を歩行面に強固かつ仕上がり外観も良く、固定させることができる。
【0037】
また、突起上面(9)には、図4に示すように、凹凸(8)を設けることができ、その凹凸(8)によりすべり抵抗が向上し、特に雨天時に歩行者がすべりにくい構造とすることができる。
【0038】
また、本発明では、図9に示すように、上面(9)、側面(10)及び底面(11)を有する突起(2)の側面(10)に形成された溝に開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部を嵌挿することにより突起の固定は、簡便にできる。
図12に、突起の固定用突部にプラスチックフィルムの開孔部の端部を挿入し、さらにその端部に液状樹脂を塗布し硬化させることにより複数の突起を設けた視覚障害者誘導用突起フィルムを示した。
図13、14には、突起が線状突起である場合の、フィルム固定用突部(12)の形状を示した。
図15には、突起がその他形状突起である場合の一例を示した。
【0039】
本発明の視覚障害者誘導用突起フィルム(1)及びそれを用いた視覚障害者誘導用突起の施工方法は、視覚障害者用標示ラインの施工に使用でき、視覚障害者を誘導あるいは警告するための突起(2)を路面(5)等に形成する手段としては有用な施工方法である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の視覚障害者誘導用突起(点状突起)の敷設方法の実施例を示す説明図である(上段 斜視図、下段 上面図)。
【図2】本発明の視覚障害者誘導用突起(線状突起)の敷設方法の実施例を示す説明図である(上段 斜視図、下段 上面図)。
【図3】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの側面図である。
【図4】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起の上面図である。
【図5】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起の側面断面図である(底面の一部に窪みを設け、窪み部分に凸起を設けた例)。
【図6】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起の底面図である。
【図7】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起の側面図である。
【図8】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起底面の固定用突起の形状を示す底面図である。
【図9】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起の側面の溝を説明する側面断面図である。
【図10】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムを製作する工程を示す側面断面図である。
【図11】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムを製作する工程を示す側面断面図である。
【図12】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムを製作する工程を示す側面断面図である。
【図13】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起(線状突起)の底面図である。
【図14】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起(線状突起)の固定用突起の形状を示す底面図である。
【図15】本発明の視覚障害者誘導用突起フィルムの突起の各種形状の例を示す底面図である。
【符号の説明】
【0041】
1.突起フィルム
2.突起
3.プラスチックフィルム
4.気泡抜き穴(穴)
5.路面
6.反応硬化型樹脂(帯状ライン)
7.小孔
8.突起上面の凸凹
9.突起上面
10.突起側面
11.突起底面
12.フィルム固定用突部
13.突起底面溝
14.突起底面凸起
15.液状樹脂硬化物
16.窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部に、上面、側面、底面及び底面に固定用突部を有する突起の前記固定用突部と底面で開孔部端部を挟み、前記突起をプラスチックフィルムの開孔部に固定した視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項2】
突起のプラスチックフィルムの開孔部への固定が、固定用突部を加熱変形するものである請求項1に記載の視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項3】
複数の開孔を有するプラスチックフィルムの複数の開孔以外のプラスチックフィルムに、直径0.1〜10.0mmの穴を、1,000〜250,000個/mの密度に設けることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項4】
突起の上面と底面を貫通する直径0.1〜3.0mmの小孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項5】
突起の底面の一部に窪みを設け、窪み部分に凸起を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項6】
突起の底面に溝を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項7】
突起の上面に凹凸を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項8】
突起が点状突起、線状突起またはその他形状突起であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項9】
突起の高さが、2〜15mmである請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項10】
上面、側面及び底面を有する突起の側面に予め形成された溝に開孔を有するプラスチックフィルムの開孔部の端部を嵌挿し固定した複数の突起を設けた視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項11】
上面、側面、底面及び底面に固定用突部を有する突起の前記固定用突部にプラスチックフィルムの開孔部の端部を挿入し、さらにその端部に液状樹脂を塗布し硬化させることにより複数の突起を設けた視覚障害者誘導用突起フィルム。
【請求項12】
道路面に、反応硬化型樹脂層を形成し、請求項1ないし請求項11のいずれかに記載の視覚障害者誘導用突起フィルムを載置し、反応硬化型樹脂の硬化を進めた後に突起を残しプラスチックフィルムを除去する視覚障害者誘導用突起の敷設方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−299276(P2009−299276A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−151674(P2008−151674)
【出願日】平成20年6月10日(2008.6.10)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【出願人】(594179797)日立化成工材株式会社 (12)
【Fターム(参考)】