説明

親水性フッ素化防汚性共重合体

付与する撥水性を最小限にしつつ基材に防汚性を付与するための、式I
−[Rf−Q−OC(O)NHC(CH3264C(CH3)CH2−]x−[CH2C(R)(COOH)−]y− (I)
(式中、
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断されている炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合であり、
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数約2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−OCHFCF2(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であり、
各R1は、独立してH又は炭素数1〜約4のアルキルであり、
各nは、独立して1〜約15であり、
各mは、独立して1〜約4であり、
Rは、H又はCH3であり、
xは、正の整数であり、
yは、正の整数である)
の共重合体、およびその使用方法を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に付与する撥水性を最小限にしつつ防汚性を付与するための共重合体、および、このような共重合体で繊維基材を処理する方法に関する。共重合体は、メタクリル酸とある一定のフッ素化アルキル化ベンジルイソシアネートとの重合によって調製される。
【背景技術】
【0002】
様々なフッ素化重合体組成物で繊維基材に撥水性、防汚性および他の効果などの表面効果を付与することができる。典型的には、基材を清浄に保つことを助けるために、様々な水、汚れ、および染みをはじく性質が望ましい。しかし、ある一定の用途では、撥水性がなく良好な防汚性を有することが望ましい。例えば、入口若しくはバスルームで又はその近傍で使用されるカーペットでは、カーペットは依然として汚れをはじく性質が優れているが、水分を吸収することが望ましい。防汚性を付与するフッ素化重合体又は共重合体は、典型的には撥水性も付与する。
【0003】
特開平08−176090号公報は、式CH2=C(CH3)C64−C(CH32−NHC(O)OCH2CH2−(CF26−Fのフッ素化化合物を開示している。このモノマーは、硬化時に、バックシートへの密着性を改善するためにビデオプロジェクターに使用されるレンズ又は透過型スクリーンに有用な樹脂組成物を調製するのに使用される。このモノマー化合物を使用して防汚性を付与するための繊維基材用の処理剤を調製することは、開示又は提案されていない。
【0004】
基材による吸水性の維持を可能にしつつ優れた防汚性を付与する繊維基材用の処理剤を提供することが望ましい。従って、撥水性を付与せず又は付与する撥水性を最小限にしつつ防汚性を付与することが望ましい。本発明は、このような処理剤を提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、式I
−[Rf−Q−OC(O)NHC(CH3264C(CH3)CH2−]x−[CH2C(R)(COOH)−]y− (I)
(式中、
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断されている炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合であり、
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数約2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−OCHFCF2(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であり、
各R1は、独立してH又は炭素数1〜約4のアルキルであり、
各nは、独立して1〜約15であり、
各mは、独立して1〜約4であり、
Rは、H又はCH3であり、
xは、正の整数であり、
yは、正の整数である)
の共重合体を含む。
【0006】
本発明は、更に、繊維基材に前述の式Iの共重合体を接触させることを含む、付与する撥水性を最小限にしつつ繊維基材に防汚性を付与する方法を含む。
【0007】
本発明は、更に、前述の式Iの共重合体を接触させた基材を含む。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書では、商標は全て大文字で示す。
【0009】
本明細書で使用される「最小限の撥水性」の用語は、本明細書に記載の試験方法1、撥水性試験による評価番号が2以下の撥水性を意味する。
【0010】
本発明は、式I
−[Rf−Q−OC(O)NHC(CH3264C(CH3)CH2−]x−[CH2C(R)(COOH)−]y− (I)
(式中、
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断されている炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合であり、
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数約2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−OCHFCF2(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であり、
各R1は、独立してH又は炭素数1〜約4のアルキルであり、
各nは、独立して1〜約15であり、
各mは、独立して1〜約4であり、
Rは、H又はCH3であり、
xは、正の整数であり、
yは、正の整数である)
の繰り返し単位を任意の順番で有する共重合体を含む。
【0011】
式Iでは、Rfは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断された炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合、より好ましくは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断された炭素数約2〜約6の、より好ましくは、炭素数約4〜約6の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合である。最も好ましくは、パーフルオロアルキル基は、炭素数6である。典型的にはRfは、1〜5個の酸素原子、好ましくは1〜3個の酸素原子で中断されている。Rは、好ましくはメチルである。
【0012】
式Iでは、xは、好ましくは1〜約10,000、より好ましくは約1〜約5000、より好ましくは約5〜約2000、又はこれらの混合であり;yは、好ましくは0〜約10,000、より好ましくは約1〜約5000、より好ましくは約5〜約2000、又はこれらの混合である。x対yの比は、約0.3〜約1.5、好ましくは約0.4〜約1.3、より好ましくは約0.5〜約1.0である。
【0013】
好ましいQの例としては、−CH2CH2−、CH2CH(OH)CH2−、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2mCH2CH2−、−OCHFCF2CH2CH2−、−CONHCH2CH2−、−CH2CH2O−CONHCH2CH2−、(−CONHCH22CH−、−SO2N(CH3)CH2CH2−、又は−SO2N(C25)CH2CH2−が挙げられる。
【0014】
好ましいR1は、H又はCH3である。好ましいnは、1〜約10、より好ましくは2〜約8である。好ましいmは、1〜約3、より好ましいのは1〜2である。
【0015】
式Iの繰り返し単位を有する共重合体は、メタクリル酸又はアクリル酸を式II:
f−Q−OC(O)NHC(CH3264C(CH3)=CH2 II
(式中、Rfおよびnは、式Iにおけるように定義される)
の化合物と重合させることによって調製される。式Iのフッ素化共重合体は、フリーラジカル開始重合によって、有機溶媒中で調製されるか、又は水中で乳化される。本発明のフッ素化共重合体は、攪拌装置並びに外部加熱および冷却装置を備えた好適な反応容器内で不活性雰囲気下で有機溶媒又は水中で式IIの化合物とメタクリル酸又はアクリル酸を攪拌することによって製造される。フリーラジカル開始剤および連鎖移動剤を添加し、混合物に不活性ガスを約30分間通気(sparge)させる。温度を約20℃から約80℃に上昇させ、数時間維持する。重合開始剤の例としては、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、又は2,2’−アゾビス(イソブチルアミジン)二塩酸塩が挙げられる。このタイプの開始剤は、E.I. du Pont de Nemours and Company(Wilmington, Delaware)によって「VAZO」の名称で市販されている。好適な重合調整剤又は連鎖移動剤の例としては、ドデシルメルカプタンがある。本発明の式Iの共重合体の調製に有用な好適な有機溶媒としては、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルイソブチルケトン、イソプロパノール、酢酸エチル、およびこれらの混合物が挙げられる。イソプロパノールが好ましい。反応は、窒素などの不活性ガス下で酸素を排除して行われる。反応後、ガスクロマトグラフィー又は他の手段で完了を監視することができる。重合体は、任意に沈殿によって単離され、任意に従来の手段、例えば、再結晶で精製される。溶媒は蒸発によって除去されるか、又は、溶液はそのまま保存(retain)され、希釈して基材に塗布される。反応生成物は、式Iのフッ素化共重合体である。
【0016】
式IIの化合物は、式III:
(NCO)C(CH3264C(CH3)=CH2 III
の化合物を、式IV
f−Q−OH IV
(式中、RfおよびQは、上記式Iで定義した通りである)
の化合物と反応させることによって調製される。アルコールおよびイソシアネートは、ヘキサンなどの有機溶媒と、攪拌装置並びに外部加熱および冷却装置を備えた好適な反応容器内で不活性雰囲気下で混合される。約−5℃に冷却した後、温度を約0℃未満に維持しながらジラウリン酸ジブチルスズなどの触媒を数分間にわたって添加する。冷却装置を取り外し、反応混合物を数時間攪拌する。反応は、窒素などの不活性ガス下で酸素を排除して行われる。反応後、ガスクロマトグラフィー又は他の手段で完了を監視することができる。式IIの化合物は、任意に溶媒除去、沈殿又は他の従来の手段によって単離され、任意に、例えば、再結晶又はクロマトグラフィーで精製される。溶媒は、典型的には、蒸発によって除去される。
【0017】
式IIIの化合物は、Sigma−Aldrich(Milwaukee, WI)又はCytec Industries(West Patterson, NJ)から市販されている。式IVの化合物は、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington, DE);3M(St.Paul, MN);ダイキン工業株式会社(日本、大阪);旭硝子株式会社(日本、東京);Omnova Solutions Inc.(Fairlawn OG);およびClariant GmbH(Frankfurt, Germany)を含む幾つかの供給元から市販されている。
【0018】
繊維基材に塗布するために、式Iの共重合体は基材に直接塗布されるか、水で希釈されるか、又は溶媒に分散若しくは溶解される。好適な溶媒としては、単純なアルコール又はケトンが挙げられる。あるいは、溶媒を除去し、既知の乳化又は均質化法を使用することにより、式Iの水分散体を調製する。溶媒を含まないエマルションが、本発明で使用するのに好ましい。
【0019】
本発明は、更に、繊維基材に前述の式Iの共重合体を接触させることを含む、繊維基材に付与する撥水性を最小限にしつつ(撥水性をほとんど又は全く付与せずに)防汚性を付与する方法を含む。好適な基材としては、繊維、ヤーン、布帛、混紡布、テキスタイル、不織布、皮革、紙、およびカーペットが挙げられる。好ましいのは、カーペットである。
【0020】
本発明の式Iの溶液又は分散体は、任意の好適な方法で基材に塗布される。このような方法としては、吸尽、泡、フレックスニップ(flex−nip)、ニップ、パッド、キスロール、ベック(beck)、かせ、ウインス、液体注入、オーバーフローフラッド(overflow flood)、ロール、刷毛、ローラー、スプレー、ディッピング、および浸漬等による塗布が挙げられるが、これらに限定されない。それはまたベック染色(beck dyeing)法、連続的染色法、又は紡糸ライン塗布(thread line application)を使用することによって塗付されてもよい。
【0021】
フッ素化(メタ)アクリレート共重合体溶液又は分散体は、基材に、それ自体で、又は他の任意のテキスタイル仕上剤若しくは表面処理剤と組み合わせて塗布される。このような任意の追加の成分としては、追加の表面効果を達成する処理剤若しくは仕上剤、又はこのような処理剤若しくは仕上剤と一緒に通常使用される添加剤が挙げられる。このような追加の成分は、ノーアイロン、アイロン掛けし易さ、収縮抑制、しわ防止、パーマネントプレス、水分調節、柔軟性、強度、スリップ防止、帯電防止、スナッグ防止(anti−snag)、ピリング防止、染みをはじく性質、染み除去性(stain release)、汚れをはじく性質、汚れ除去性、撥水性、撥油性、臭気抑制、抗微生物、耐光性(sun protection)、洗浄性(cleanability)、および類似の効果などの表面効果を付与する化合物又は組成物を含む。このような処理剤又は仕上剤の1つ以上が、式1の共重合体の前、後、又は式1の共重合体と同時に基材に塗布される。例えば、繊維基材では、合成布帛又は木綿布帛を処理するとき、E.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington, DE)から入手可能なALKANOL 6112などの湿潤剤の使用が望ましい可能性がある。木綿又は綿混の布帛を処理するとき、Omnova Solutions(Chester, SC)から入手可能なPERMAFRESH EFCなどの防皺性樹脂を使用することができる。
【0022】
また、任意に、界面活性剤、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、ワックスエクステンダ、および当業者に既知の他の添加剤などの、一般にこのような処理剤又は仕上剤と一緒に使用される他の添加剤が存在する。好適な界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性、N−オキサイド、および両性界面活性剤が挙げられる。好ましいのは、DUPONOL WAQE若しくはSUPRALATE WAQEとしてWitco Corporation(Greenwich, CT)から、又は、SUPRALATE WAQEとしてWitco(Houston, TX)から入手可能なラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤である。このような添加剤の例としては、加工助剤、発泡剤、潤滑剤、および耐汚染剤(anti−stains)等が挙げられる。組成物は、製造設備で、小売業者の場所で、又は敷設および使用の前に、又は消費者の場所で塗布される。
【0023】
任意に、耐久性を更に促進するブロックイソシアネートを式Iの共重合体と一緒に添加する(即ち、ブレンドされた組成物として)。本発明に使用するのに好適なブロックイソシアネートの例は、Ciba Specialty Chemicals(High Point NJ)から入手可能なHYDROPHOBOL XANである。他の市販のブロックイソシアネートも本明細書で使用するのに好適である。ブロックイソシアネートの添加の必要性は、共重合体の特定の用途に依存する。現在考えられている用途のほとんどでは、それは、鎖間の十分な架橋、又は基材に対する結合を達成するために存在する必要はない。ブレンドされたイソシアネートとして添加されるとき、約20重量%以下の量を添加する。
【0024】
任意に、フッ素効率を更に増加させる可能性がある非フッ素化エクステンダー組成物も塗布組成物中に含まれる。このような任意の追加のエクステンダー重合体組成物の例としては、アクリレート、メタクリレート、又はこれらの混合物の炭化水素共重合体が挙げられる。このような共重合体は、また、塩化ビニリデン、塩化ビニル、又は酢酸ビニル、又はこれらの混合物も含み得る。
【0025】
所与の基材の最適な処理は、(1)フッ素化共重合体の特性、(2)基材の表面の特性、(3)表面に塗布されるフッ素化共重合体の量、(4)表面へのフッ素化共重合体の塗布方法、および他の多くの要因に依存する。幾つかのフッ素化共重合体撥水撥油剤(repellents)は多くの異なる基材上で良好に機能し、油、水、および他の様々な液体をはじく性質がある。他のフッ素化共重合体撥水撥油剤は、幾つかの基材上でより優れた撥水撥油性を示すか、又はより高い添加レベルを必要とする。
【0026】
典型的には、繊維基材を塗布装置に通して、本発明の組成物を含有する浴などの単一の塗布媒体から基材上に式Iの共重合体を吸尽又は堆積させる。本発明は、浴又は他の処理媒体中に、式Iの共重合体と任意に他の添加剤との混合物を使用することを含む。組成物は、吸尽などのプロセス、例えば、ベック若しくはウインス法で、又は当該技術分野で既知の他の従来の塗布方法を使用して、繊維基材に塗布される。これらには、フレックスニップ、パッド、スプレー、又は泡塗布などの連続的方法が挙げられるが、これらに限定されない。連続的塗布方法は、本発明の組成物の塗布後に蒸気処理することを含むことができる。任意に、前述のように、pHを調節する化学物質(例えば、硫酸尿素(urea sulfate)又は他の酸)、金属イオン封鎖剤(エチレンジアミン四酢酸など)、他の界面活性剤、およびレベリング剤等の他の従来の添加剤を組成物又は処理媒体に添加してもよい。
【0027】
接触媒体に従来の浴条件を使用することができる。例えば、吸尽塗布では、約5分〜約30分、好ましくは約20分の塗布時間が使用される。浴対繊維の重量比は、約40:1〜約2:1である。浴pHは、約1〜約9、好ましくは約1.5〜約5.0、より好ましくは約1.8〜約3.0である。浴の温度は、約60°F〜約200°F(約16℃〜約93℃)、より好ましくは約80°F〜約200°F(約27℃〜約93℃)、より好ましくは約190°F(約88℃)である。より低いpHおよびより高い温度では吸尽効率が向上するが、より極端な条件は装置に悪影響を及ぼす可能性がある。これらの条件は、運転および維持費用とのバランスが取られる。本発明の組成物を基材に塗布した後、従来どおり繊維基材をすすぎ、乾燥させる。
【0028】
吸尽塗布の他に、スプレー又は泡塗布法および装置で、繊維基材の製造中、又は繊維基材の敷設後に式Iの共重合体を繊維基材上に直接堆積させることができる。任意に、前述した他の従来の添加剤を組成物又は処理媒体に添加することができる。従来のスプレー又は泡塗布では、浴対繊維の重量比は、約1:30〜約1:4である。
【0029】
基材に接触する本発明の組成物の量は、繊維の重量に対して固形分約0.01%〜約3%、好ましくは繊維の重量に対して固形分約0.1%〜約3%、より好ましくは繊維の重量に対して固形分約0.5%〜約3%、より好ましくは繊維の重量に対して固形分約0.5%〜約2%である。
【0030】
本発明は、更に、上記で開示した本発明の組成物で処理された基材を含む。ほとんどどの繊維基材も、本発明の組成物および方法による処理に適している。このような基材としては、繊維、ヤーン、布帛、混紡布、テキスタイル、カーペット、ラグ、不織布、皮革および紙が挙げられる。「繊維」の用語は、様々な組成と形状を有する紡糸の前後の繊維およびヤーンを含み、また、着色された繊維および着色されたヤーンを含む。「布帛」とは、木綿、レーヨン、シルク、ウール、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ナイロン、および、アラミド(「NOMEX」および「KEVLAR」など)などの繊維からなる天然又は合成の布帛、又はこれらの混紡を意味する。「混紡布」とは、2種類以上の異なる繊維からなる布帛を意味する。典型的には、これらの混紡布は少なくとも1種類の天然繊維と少なくとも1種類の合成繊維の組み合わせであるが、2種類以上の天然繊維の混紡および/又は2種類以上の合成繊維の混紡であってもよい。好ましい基材はカーペットである。カーペットは、例えば、木綿、ウール、シルク、ナイロン、アクリル系樹脂、芳香族ポリアミド、ポリエステル、ジュート、サイザル麻、および他のセルロース系材料で製造されていてもよい。本発明の処理された基材は、優れた防汚性を有するが、水分を吸収する能力を維持し、従って撥水性は最小限である。
【0031】
本発明の共重合体および方法は、高レベルの撥水性を付与することなく防汚性を付与するように、繊維基材を処理するのに有用である。従って、本発明の処置された基材は、高レベルの防汚性を有しながら吸収性を維持する。このような特性は、防汚性と吸水性を兼ね備えることが望ましい衣類、又は、入口およびバスルーム若しくはその近傍で使用される敷物材料等の、吸水性が望ましい用途にとりわけ有用である。このような表面特性は、表面の清浄さを維持するのに役立つと同時に使用中の水分吸収を可能にする。
【0032】
試験方法
本明細書の実施例では、以下の試験方法を使用した。
【0033】
試験方法1−撥水性試験
処理された基材の撥水性をAATCC標準試験方法第193−2004およびTEFLON Global Specifications and Quality Control Tests information packetに概要が記載されているDuPont Technical Laboratory Methodに従って測定した。試験は、水性液体による濡れに対する処理された基材の耐性を決定する。様々な表面張力の水−アルコール混合物の液滴を基材につけて、表面の濡れの程度を視覚的に決定する。
【0034】
撥水性試験液の組成を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
試験液1を3滴、処理された基材につける。10秒後、真空吸引を使用して液滴を除去する。液体の浸透又は部分的吸収が観察されない(基材に濡れて色の濃くなった斑点が現れない)場合、試験液2で試験を繰り返す。液体の浸透が観察される(基材に濡れて色の濃くなった斑点が現れる)まで、試験液3および順次それより大きい試験液番号で試験を繰り返す。試験結果は、基材に浸透しない最も大きい試験液番号である。スコアが高いほど撥水性が大きいことを示す。
【0037】
試験方法2−促進汚れ試験(Accelerated Soiling Test)
ドラムミル(ローラー上の)を使用し、カーペットサンプルに合成汚れを回転付着させた。合成汚れは、AATCC Test Method 123−2000, Section 8に記載のように調製した。汚れでコーティングされたビーズは次のように調製した。合成汚れ3gと清浄なナイロン樹脂ビーズ[SURLYNアイオノマー樹脂ビーズ、直径1/8〜3/16インチ(0.32〜0.48cm)]1リットルを清浄な空のキャニスタに入れた。SURLYNは、E.I.du Pont de Nemours and Co.(Wilmington, DE)から入手可能なエチレン/メタクリル酸共重合体である。キャニスタの蓋を閉じ、ダクトテープで密封し、キャニスタをローラー上で5分間回転させた。汚れでコーティングされたビーズをキャニスタから取り出した。カーペットサンプルは、次のように調製した。使用したカーペット材料は、市販のレベルループ(LL)1245デニール、1/10ゲージ(0.1インチ又は2.5mmのタフト間隔)、26oz/yd2(0.88kg/m2)で、淡黄色に染色されたものであり、Invista Inc.(Wilmington DE)から入手可能であった。これらの試験では、全カーペットサンプルサイズは8×25インチ(20.3×63.5cm)であった。1つの試験サンプルと1つの対照サンプルを同時に試験した。全てのサンプルのカーペットのパイルを同じ方向になるように置いた。各カーペットサンプルの短辺を機械方向に(タフト列に関して)切断した。強力接着テープをカーペット片の裏側に付け、それらを一緒に保持した。カーペットサンプルを、タフトがドラムの中心を向くようにして清浄な空のドラムミルに入れた。カーペットを剛性のワイヤでドラムミル内の所定の位置に保持した。汚れでコーティングされた樹脂ビーズ250ccとボールベアリング(直径5/16インチ、0.79cm)250ccをドラムミルに入れた。ドラムミルの蓋を閉じ、ダクトテープで密封した。ドラムをローラー上で2分半、105rpmで回転させた。ローラーを停止させ、ドラムミルの方向を逆にした。ドラムをローラー上で更に2分半、105rpmで回転させた。カーペットサンプルを取り出し、余分な汚れを除去するため均一に真空吸引した。汚れでコーティングされた樹脂ビーズを廃棄した。
【0038】
元の汚れていないカーペットと比較した、汚れたカーペットのΔE色差を試験品および対照品について測定した。各カーペットの色測定を、促進汚れ試験の後のカーペットで行った。各対照サンプルおよび試験サンプルについて、カーペットの色を測定し、サンプルを汚し、汚れたカーペットの色を測定した。ΔEは、汚れたサンプルと汚れていないサンプルの色の差であり、正の数として表される。Minolta Chroma Meter CR−310を使用して、各品で色差を測定した。カーペットサンプルの5つの異なる領域で色を読み取り、平均ΔEを記録した。各試験品の対照カーペットは、試験品と同じ色および構造であったが、本発明の組成物で処理されなかった。対照カーペットは、全くフルオロケミカルで処理されていなかった。
【0039】
防汚性および/又は汚れ除去性を含むカーペットに対する表面効果を、防止された汚れのパーセンテージで測定する。ドラム汚れ後の防止された汚れのパーセンテージを「未処理より清浄である%」として、次の計算で計算した:
【0040】
【数1】

【0041】
この値を使用することによって、異なるカーペットの色および構造に対して補正がなされ、データセット間の有意味な比較が可能である。パーセンテージが高いほど、防汚性が大きいことを示す。
【実施例】
【0042】
実施例1
冷却器、窒素入口−出口、磁気攪拌子および攪拌機、並びに温度プローブを備えた多口フラスコ内で1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロオクタン−1−オール(6.4グラム、18ミリモル)、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI、3.6グラム、18ミリモル)、および無水ヘキサン50mLを混合した。−5℃に冷却した後、温度を0℃未満に維持しながら、ジラウリン酸ジブチルスズ(0.09g)を15分間にわたって添加した。冷却浴を取り外し、反応混合物を室温(約15℃)で1日攪拌した。−20℃に冷却すると、無色の固体7.5グラム(理論収量の75%)が得られ、これは1Hおよび13C NMRにより、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル−2−(3−(プロプ−1−エン−2−イル)フェニル)プロパン−イルカルバメートであることが確認された。
【0043】
冷却器、窒素入口−出口、機械的攪拌機、および温度プローブを備えた多口フラスコ内で3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル−2−(3−(プロプ−1−エン−2−イル)フェニル)プロパン−イルカルバメート(5.0グラム、9.6ミリモル)、メタクリル酸(0.70グラム、8.1ミリモル)、ドデシルメルカプタン0.30グラム、VAZO67、0.75グラム、および2−プロパノール100mLを混合した。30分間室温で攪拌し、窒素パージ/通気した後、成分は全て溶解した。窒素ブランケット下で温度を70℃に上昇させ、70℃+/−5℃で16時間維持した。反応混合物のガスクロマトグラフィー分析から、5%未満のモノマーが残留することが分かった。反応混合物を室温に2時間にわたって冷却し、脱イオン水200mLを添加した。水酸化ナトリウム水溶液でpHを約8.5に調整した。減圧蒸留で2−プロパノール溶媒を留去した。更に水を添加して、合計約200mLのアニオン性フッ素化重合体水溶液とした。この実施例1の生成物を、中くらいの黄色に染色され、Invista(Kennesaw, GA)から入手可能なスチレン−ブタジエンゴムラテックスで裏打ちされた1平方ヤード当たり28オンス(0.95kg/m2)のレベルループのANTRON LEGACY業務用カーペットに塗布した。8インチ(20.3cm)四方のカーペットを、乾燥したカーペット繊維の重量の25%に等しい量の水で、即ち、乾燥カーペット繊維に対する水のウェットピックアップが25%となる量の水で、スプレー塗布を使用して均一に濡らした。実施例1の生成物44.4グラムおよび水55.6グラムの塗布浴を調製し、約25%のウェットピックアップが達成されるまで、この浴10.2グラムを8インチ(20.3cm)四方のカーペットに均一にスプレー塗布した。処理された8インチ四方のカーペットを250°F(121℃)の強制通風炉内で30分間乾燥させた。試験方法1および2を使用して、処理されたカーペットの撥水性および防汚性を試験した。得られたデータを表2に記載する。
【0044】
実施例2
冷却器、窒素入口−出口、機械的攪拌機、および温度プローブを備えた多口フラスコ内で、実施例1におけるように調製された3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル−2−(3−(プロプ−1−エン−2−イル)フェニル)プロパン−イルカルバメート(5.0グラム、9.6ミリモル)、メタクリル酸(1.6グラム、19ミリモル)、ドデシルメルカプタン0.30グラム、Vazo67、0.75グラム、および2−プロパノール100mLを混合した。30分間室温で攪拌し、窒素パージ/通気した後、成分は全て溶解した。窒素ブランケット下で温度を70℃に上昇させ、70℃+/−5℃で16時間維持した。反応混合物のガスクロマトグラフィー分析から、5%未満のモノマーが残留することが分かった。反応混合物を室温に2時間にわたって冷却し、脱イオン水200mLを添加した。水酸化ナトリウム水溶液でpHを約8.5に調整した。減圧蒸留で2−プロパノール溶媒を留去した。更に水を添加して、合計約200mLのアニオン性フッ素化重合体水溶液とした。実施例1に記載のように実施例2の共重合体でカーペットを処理したが、実施例2の共重合体26.7グラムと水73.3グラムからなる塗布浴10.4グラムを塗布した。試験方法1および2を使用して、実施例2の共重合体で処理されたカーペットの撥水性および防汚性を試験した。得られたデータを表2に記載する。
【0045】
実施例3
冷却器、窒素入口−出口、磁気攪拌子および攪拌機、および温度プローブを備えた、多口フラスコ内で1,1,2,2−テトラヒドロパーフルオロへキサン−1−オール(17.0グラム、64ミリモル)、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(TMI、13.0グラム、64ミリモル)、および無水ヘキサン50mLを混合した。−5℃に冷却した後、温度を0℃未満に維持しながら、ジラウリン酸ジブチルスズ(0.33g)を15分間にわたって添加した。冷却浴を取り外し、反応混合物を室温(約15℃)で3日間攪拌した。ヘキサン中15重量%の酢酸エチルを使用し、シリカを用いたフラッシュクロマトグラフィーによって、無色の油状物25.2グラム(理論収量の84%)が得られ、これは1Hおよび13C NMRにより、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル−2−(3−(プロプ−1−エン−2−イル)フェニル)プロパン−イルカルバメートであることが確認された。
【0046】
冷却器、窒素入口−出口、機械的攪拌機、および温度プローブを備えた多口フラスコ内で、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル−2−(3−(プロプ−1−エン−2−イル)フェニル)プロパン−イルカルバメート(6.7グラム、16ミリモル)、メタクリル酸(1.2グラム、14ミリモル)、ドデシルメルカプタン0.30グラム、VAZO67、0.75グラム、および2−プロパノール100mLを混合した。30分間室温で攪拌し、窒素パージ/通気した後、成分は全て溶解した。窒素ブランケット下で温度を70℃に上昇させ、70℃+/−5℃で16時間維持した。反応混合物のガスクロマトグラフィー分析から、5%未満のモノマーが残留することが分かった。反応混合物を室温に2時間にわたって冷却し、脱イオン水200mLを添加した。水酸化ナトリウム水溶液でpHを約8.5に調整した。減圧蒸留で2−プロパノール溶媒を留去した。更に水を添加して、合計約200mLのアニオン性フッ素化重合体水溶液とした。実施例1におけるようにこの実施例3の共重合体でカーペットを処理したが、実施例3の共重合体38.8グラムと水61.2グラムからなる塗布浴10.8グラムを塗布した。試験方法1および2を使用して、処理されたカーペットの撥水性および防汚性を試験した。得られたデータを表2に記載する。
【0047】
【表2】

【0048】
表2のデータから、未処理のカーペットと比較して本発明の実施例は防汚性のレベルが高く、撥水性のレベルが最小限であることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
−[Rf−Q−OC(O)NHC(CH3264C(CH3)CH2−]x−[CH2C(R)(COOH)−]y− (I)
(式中、
fは、任意に少なくとも1個の酸素原子で中断されている炭素数約2〜約8の直鎖又は分岐鎖パーフルオロアルキル基、又はその混合であり、
Qは、炭素数1〜約15のアルキレン、炭素数約2〜約15のヒドロキシアルキレン、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2m(CH2n−、−OCHFCF2(CH2n−、−CONR1(Cn2n)−、−(Cn2n)OCONR1(Cn2n)−、(−CONR1CH22CH−、−SO2N(R1)(Cn2n)−、又は−(Cn2n)SO2N(R1)(Cn2n)−であり、
各R1は、独立してH又は炭素数1〜約4のアルキルであり、
各nは、独立して1〜約15であり、
各mは、独立して1〜約4であり、
Rは、H又はCH3であり、
xは、正の整数であり、
yは、正の整数である)
の共重合体。
【請求項2】
fが、C37、C49、C613、C817、又はC37OCF2CF2である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項3】
RがCH3である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項4】
Qが、−CH2CH2−、CH2CH(OH)CH2−、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2mCH2CH2−、−OCHFCF2CH2CH2−、−CONHCH2CH2−、−CH2CH2O−CONHCH2CH2−、(−CONHCH22CH−、−SO2N(CH3)CH2CH2−、又は−SO2N(C25)CH2CH2−である、請求項2に記載の共重合体。
【請求項5】
x対yの比が、約0.3〜約1.5である、請求項1に記載の共重合体。
【請求項6】
基材に請求項1に記載の共重合体を接触させることを含む、付与する撥水性を最小限にしつつ繊維基材に防汚性を付与する方法。
【請求項7】
fが、C37、C49、C613、C817、又はC37OCF2CF2である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Qが、−CH2CH2−、CH2CH(OH)CH2−、−O(Cn2n)−、−(CH2CF2mCH2CH2−、−OCHFCF2CH2CH2−、−CONHCH2CH2−、−CH2CH2O−CONHCH2CH2−、(−CONHCH22CH−、−SO2N(CH3)CH2CH2−、又は−SO2N(C25)CH2CH2−である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記共重合体が、A)ノーアイロン、アイロン掛けし易さ、収縮抑制、しわ防止、パーマネントプレス、水分調節、柔軟性、強度、スリップ防止、帯電防止、スナッグ防止、ピリング防止、染みをはじく性質、染み除去性、汚れをはじく性質、汚れ除去性、撥水性、撥油性、臭気抑制、抗微生物、耐光性、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される表面効果を付与する少なくとも1つの薬剤、又はB)界面活性剤、酸化防止剤、耐光剤(light fastness agent)、耐変色剤(color fastness agent)、水、pH調整剤、架橋剤、湿潤剤、エクステンダー、発泡剤、加工助剤、潤滑剤、ブロックイソシアネート、非フッ素化エクステンダー、又はこれらの組み合わせの少なくとも1つ、の存在下で塗布される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の共重合体を接触させた繊維基材。

【公表番号】特表2011−500949(P2011−500949A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531239(P2010−531239)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際出願番号】PCT/US2008/080947
【国際公開番号】WO2009/055561
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】