説明

親水性反射防止膜

【課題】反射防止性と防曇性に優れる反射防止膜を提供すること。
【解決手段】基板上に、光学膜厚が0.38λ〜0.55λ(λは設計波長)の高屈折率層、及び光学膜厚が0.20λ〜0.28λ(λは設計波長)の低屈折率層をこの順に有し、可視域の反射率が1%以下である反射防止膜であって、低屈折率層が、高屈折率層側から、無機化合物を含む無機化合物層と、特定の親水性ポリマーを含む組成物を硬化させたポリマー層とをこの順に有する親水性反射防止膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止性及び防曇性に優れる親水性反射防止膜に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、写真用やテレビ用カメラなどにおいては、レンズ、プリズム、フィルターなどの光学部材が多数配置されている。各光学部材の表面では、光が入射するとその光の一部が反射光となり、該反射光は、例えば放送用カメラでは映像にフレアやゴーストが発生するなどの障害の原因となる。また、最表面(最も物体側の光学部材の物体側の面)における反射光量が多いと、光学系に入射する光量が減じてしまう。このため、通常、各光学部材の表面には反射防止膜が設けられている。
【0003】
一方、写真用やテレビ用カメラの光学部材に限らず、眼鏡、自動車のフロントガラスやミラー、建造物の窓などでは、屋外で使用時の雨などによる水滴の付着や、温湿度変化による曇りにより、画像が乱れたり視界が遮られたりすることがある。写真用やテレビ用カメラにおいては、表面のレンズに限らず、カメラ内部に配置されるレンズにおいても、湿度条件や使用者から伝わる熱により曇りが発生することがある。これらの曇りを防止するために、各部材表面に反射防止性に加えて防曇性を付与する試みがなされてきた。
【0004】
例えば、特許文献1には、「基材/第1吸水性層/高屈折率層/第2吸水性層」の構成の防曇反射防止光学物品が記載されている。ここで、第2吸水性層が、親水性ポリマーと、金属アルコキシドとを含む親水性組成物から形成されるポリマー層であり、反射防止層として機能することが記載されている。特許文献2にも、防汚性、防曇性、耐摩耗性に優れた親水膜が形成可能で、反射防止膜に適用することのできる親水性組成物として、親水性ポリマーとアルコキシド化合物を含む親水性組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献3には、親水基及び反応基を有する有機化合物と、二酸化ケイ素、又は二酸化ケイ素及び酸化アルミニウムとを同時に蒸着した防曇性能を有するハイブリッド薄膜を最外層とした反射防止膜が記載されている。特許文献3の実施例におけるハイブリッド薄膜の水との接触角は4〜5度とされている。
更に、特許文献4には、「基材/第1吸水層/高屈折率層/第2吸水層」の構成で、防曇性能と反射防止性能を有する光学物品が記載され、第2吸水層が吸水性高分子からなり、高屈折率層と第2吸水層が反射防止層として機能することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−222998号公報
【特許文献2】特開2008−225466号公報
【特許文献3】特開2003−255107号公報
【特許文献4】特開2003−161805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のとおり、特許文献1〜4には、反射防止性と防曇性を備える光学物品等が記載されている。特許文献1、2及び4の反射防止膜では、最表層を親水性又は吸水性のポリマーからなるポリマー層とし、特許文献3の反射防止膜では最表層を親水性ポリマーと無機材料とのハイブリッド層とすることで、反射防止性と防曇性を付与している。
本発明者らが検討したところ、特許文献1、2及び4の反射防止膜では、反射率が2〜3%であり、屋外使用のテレビ用カメラなど種々の環境下で用いられることを鑑みると、反射防止性能の更なる向上が求められる。また、特許文献3の反射防止膜では、視感透過率で1%以下の高い反射防止性能が得られているものの、特許文献3に記載の方法では各層をディップコートし(コート物質を含む溶液に浸漬し、所定の速度で引き上げる)、乾燥させる工程が必要であり、各工程に長時間を要して生産性が低い。また、光学膜でありながら、波長オーダーの膜厚制御が難しい。
【0008】
テレビ用カメラにおいては、レンズ、プリズム、フィルターなどからなる、いわゆるレンズ系を保護する光学部材としてカバーガラス(以下、テレビレンズ用カバーガラスともいう)が最表面(最も物体側)に配置される。屋外の天候を問わず用いられるテレビ用カメラにおけるテレビレンズ用カバーガラスには、優れた反射防止性能と防曇性が求められている。
【0009】
以上のような状況に鑑み、本発明の目的は、反射防止性と防曇性に優れた親水性反射防止膜、及び該反射防止膜を備えたテレビレンズ用カバーガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らが検討したところ、所定の光学膜厚を有する高屈折率層と低屈折率層とを有する反射防止膜において、低屈折率層を無機化合物層と特定の親水性ポリマーを含むポリマー層から構成することにより、反射率が1%以下で、反射防止性と防曇性に優れる反射防止膜が得られることを見出した。
【0011】
即ち、前記課題は、以下の手段により解決することができる。
[1]
λを設計波長として、基板上に、基板側から順に、光学膜厚が0.38λ〜0.55λであって屈折率がd線に対して1.70以上2.50以下の高屈折率層、及び光学膜厚が0.20λ〜0.28λであって屈折率がd線に対して1.35以上1.50以下の低屈折率層を積層した反射防止膜であって、
前記低屈折率層が、前記高屈折率層の上に積層された、無機化合物からなる無機化合物層と、前記無機化合物層の上に積層された、下記一般式(I)で表される親水性ポリマーを含む組成物を硬化させたポリマー層とからなる親水性反射防止膜。
【化1】


一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは、単結合、又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは、繰り返し単位のモル比を表し、それぞれ100〜0であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
[2]
前記ポリマー層が前記反射防止膜の最も外側の最外層であることを特徴とする上記[1]記載の親水性反射防止膜。
[3]
前記基板と前記高屈折率層との間に、更に、等価屈折率が前記高屈折率層より低い反射率調整層を有する上記[1]又は[2]に記載の親水性反射防止膜。
[4]
前記反射率調整層が、屈折率の異なる複数の層を含む上記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
[5]
前記反射率調整層の前記高屈折率層に接する層が、光学膜厚が0.38λ〜0.55λであり、屈折率がd線に対して1.55以上1.85以下であり前記低屈折率層の屈折率よりも高く前記高屈折率層の屈折率よりも低い中間屈折率層である上記[3]又は[4]に記載の親水性反射防止膜。
[6]
前記反射防止膜は可視域の反射率が1%以下であることを特徴とする上記[1]〜[5]のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
[7]
前記無機化合物が、SiO、MgF、及びAlFからなる群から選ばれる少なくとも1つである上記[1]〜[6]のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
[8]
前記高屈折率層が、LaTiO、ZrO、TiO、Ta、Nb、HfO、及びCeOからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む層である上記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
[9]
前記反射率調整層が、Al、PrAlO、La2αAl2β3(α+β)[0<α<1、0<β<1、α+β=1]、GeO、Yからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む層を有する上記[1]〜[8]のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
[10]
前記反射率調整層が、前記基板に最も近い層として、Alを含む層を有する上記[9]に記載の親水性反射防止膜。
[11]
上記[1]〜[10]のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜を有するテレビレンズ用カバーガラス。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反射防止性と防曇性に優れた親水性反射防止膜、及び該反射防止膜を備えたテレビレンズ用カバーガラスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の親水性反射防止膜の一例の概略断面図である。
【図2】本発明の親水性反射防止膜の一例の概略断面図である。
【図3】本発明の親水性反射防止膜の一例の概略断面図である。
【図4】本発明の親水性反射防止膜の一例の概略断面図である。
【図5】実施例1の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図6】実施例2の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図7】実施例3の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図8】実施例4の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図9】実施例5の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図10】実施例6の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図11】実施例7の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図12】実施例8の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図13】実施例9の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図14】実施例10の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図15】実施例11の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図16】実施例12の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図17】実施例13の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図18】実施例14の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図19】実施例15の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図20】実施例16の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図21】実施例17の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図22】実施例18の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図23】実施例19の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図24】実施例20の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図25】実施例21の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図26】実施例22の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図27】実施例23の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図28】実施例24の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図29】実施例25の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図30】実施例26の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図31】実施例27の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図32】比較例1の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図33】比較例2の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図34】比較例3の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図35】比較例4の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図36】実施例28の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図37】実施例29の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【図38】実施例30の反射防止膜の反射率分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の親水性反射防止膜は、基板上に、光学膜厚が0.38λ〜0.55λ(λは設計波長)の高屈折率層、及び光学膜厚が0.20λ〜0.28λ(λは設計波長)の低屈折率層をこの順に有し、可視域の反射率が1%以下である反射防止膜であって、
前記低屈折率層が、前記高屈折率層側から、無機化合物を含む無機化合物層と、下記一般式(I)で表される親水性ポリマーを含む組成物を硬化させたポリマー層とをこの順に有する。
【0016】
【化2】

【0017】
一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは、単結合、又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは、繰り返し単位のモル比を表し、それぞれ100〜0であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0018】
このように、所定の光学膜厚の低屈折率層を、無機化合物を含む無機化合物層と一般式(I)で表される親水性ポリマーを含む組成物を硬化させたポリマー層とを含んで形成することで、可視域の反射率が1%以下の優れた反射防止性と防曇性を得ることができる。
【0019】
[反射防止膜の層構成]
図1に、本発明の親水性反射防止膜の一例の概略断面図を示す。
図1に示す親水性反射防止膜10は、基板100上に、高屈折率層Hと、低屈折率層Lをこの順に有する。低屈折率層Lは、高屈折率層H側から、無機化合物を含む無機化合物層L1と一般式(I)で表される親水性ポリマーを含む組成物を硬化させたポリマー層L2とをこの順に有する。高屈折率層Hと低屈折率層Lの膜厚をそれぞれd、dとしたときに、各層の屈折率n、nとの積である光学膜厚(n×d、n×d)は、高屈折率層Hが0.38λ〜0.55λであって屈折率がd線に対して1.70以上2.50以下であり、低屈折率層Lが0.20λ〜0.28λであって屈折率がd線に対して1.35以上1.50以下である。
ここで、本明細書において、λは設計波長を表し、例えば、550nmである。また、d線はナトリウム原子の輝線スペクトル(587.6nm)である。
低屈折率層Lの屈折率nは、無機化合物層L1とポリマー層L2とを合わせて全体を一層とみなしたときの等価屈折率であり、具体的には、無機化合物層L1とポリマー層L2の屈折率に各層の膜厚を加重して平均した平均屈折率である。本明細書において、上記低屈折率層Lの屈折率nのように複数層からなる層全体の屈折率を言うときは、層全体を一層とみなしたときの等価屈折率を意味する。
なお、本明細書において、「低屈折率」、「高屈折率」とは、層相互の相対的な屈折率の大小関係を示すものである。
【0020】
本発明の親水性反射防止膜は、高屈折率層及び低屈折率層以外の層を設けることができる。
例えば、反射率を調整し反射防止性向上する観点から、基板と高屈折率層の間に、等価屈折率が前記高屈折率層より低い反射率調整層を有することが好ましい。図2〜4に、反射率調整層を有する親水性反射防止膜の一例の概略断面図を示す。なお、図2〜4において、図1の親水性反射防止膜10と同様な機能を有する部位には同じ符号を付し、以下、その説明は省略する。
図2に示す親水性反射防止膜20は、基板100上に、反射率調整層Mと、高屈折率層Hと、低屈折率層Lをこの順に有する。反射率調整層Mの屈折率nは、高屈折率層Hの屈折率nより低い。
【0021】
反射率調整層Mは、可視域の反射率を1%以下に低減できる波長域を広げる観点から、屈折率が異なる複数の層を含んでもよい。この場合、反射率調整層Mの屈折率nは、該複数の層を合わせて全体を一層とみなしたときの等価屈折率を意味し、該等価屈折率が高屈折率層Hの屈折率nより低くなるようにする。より好ましくは、反射率調整層Mの屈折率nは、高屈折率層Hの屈折率nより低く、低屈折率層Lの屈折率よりnより高いことである。
該複数の層の層数、各層の膜厚、及び反射率調整層Mの全体の膜厚は、反射率調整層Mの等価屈折率が上記関係を満たすように設定することができ、特に限定されない。
反射率調整層Mが複数の層を含む態様としては、例えば、図3に示すように、反射率調整層Mが層M1、M2、M3の3層からなる態様が挙げられる。
【0022】
また、反射率調整層Mの別の態様としては、図4に示すように、層M1、M2、M3、M4、M5の5層からなる態様が挙げられる。図4に示す態様の反射率調整層Mは、反射率を下げる観点から、高屈折率層Hに最も近い層M5として、光学膜厚が0.38λ〜0.55λであり、屈折率がd線に対して1.55以上1.85以下であり前記低屈折率層の屈折率よりも高く前記高屈折率層の屈折率よりも低い中間屈折率層を有する。
【0023】
以下、本発明の親水性反射防止膜の各構成層について説明する。
[基板]
本発明の親水性反射防止膜を形成する基板は、特に限定されないが、ガラス、樹脂(プラスチック等)や結晶材料などの透明材料を用いることができる。具体的には、設計波長λに対して1.55以上2.20以下の屈折率を示すものを好適に用いることができる。このような透明材料としては、例えば、S−BSL7(オハラ社)、S−LAH58(オハラ社)、S−LAH79(オハラ社)、S−NPH2(オハラ社)、S−TIH53(オハラ社)、S−TIL26(オハラ社)、S−TIH1(オハラ社)、S−TIH6(オハラ社)、S−TIM3(オハラ社)、SFL6(ショット社)、SFL6(ショット社)、SF14(住田光学ガラス社)、BASF−2(住田光学ガラス社)、LASF−N17(住田光学ガラス社)、L−39(HOYA CANDEO OPTRONICS社)などが挙げられる。
【0024】
[高屈折率層]
高屈折率層は、低屈折率層に対して屈折率が高い層であり、d線に対して屈折率が1.70〜2.50であることが好ましく、1.90〜2.20であることがより好ましく、2.05〜2.15であることが更に好ましい。
高屈折率層の膜厚は光学膜厚として0.38λ〜0.55λである。
高屈折率層としては、特に限定されないが、LaTiO、ZrO、TiO、Ta、Nb、HfO、及びCeOからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む層であることが好ましい。より好ましくはLaTiOを含む層である。
なお、本明細書において「LaTiOを含む層」とは、主にLaTiOから形成された層であることを意味するが、該層がLaTiO以外に他の成分を含んでもよい。LaTiO以外の他の材料及び高屈折率層以外の層についても同様なことを意味する。
【0025】
高屈折率層の形成法については、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法などがあげられる。なかでも真空蒸着法が膜厚のコントロールと膜厚の均一性の点から好ましい。形成条件(例えば、真空度、加熱温度等)で各層の屈折率を調整することもできる。
【0026】
[低屈折率層]
低屈折率層は、高屈折率層に対して屈折率が低い層であり、d線に対して屈折率が1.35〜1.50であることが好ましく、1.40〜1.48であることがより好ましく、1.45〜1.47であることが更に好ましい。
低屈折率層の膜厚は光学膜厚として0.20λ〜0.28λである。
本発明においては、高屈折率層側から無機化合物を含む無機化合物層と一般式(I)で表される親水性ポリマーを含む組成物を硬化させたポリマー層とを含む。低屈折率層を無機化合物層と親水性のポリマー層とを積層させて形成することで、良好な防曇性とともに、反射率が1%以下の優れた反射防止性を得ることができる。
【0027】
(無機化合物層)
無機化合物層は、d線に対して屈折率が1.35〜1.50であることが好ましく、1.38〜1.48であることがより好ましい。
無機化合物層の膜厚は、光学膜厚として、ポリマー層とともに低屈折率層全体の光学膜厚が0.20λ〜0.28λとなれば特に限定されない。
無機化合物層を形成する無機化合物としては、特に限定されないが、SiO、MgF、及びAlFからなる群から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。より好ましくはSiO、MgFである。膜の機械的強度や隣接する層との密着性の観点からは、SiOが更に好ましい。また、より低い屈折率とする場合にはMgFが更に好ましい。
【0028】
無機化合物層の形成法については、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法などがあげられる。なかでも真空蒸着法が膜厚のコントロールと膜厚の均一性の点から好ましい。形成条件(例えば、真空度、加熱温度等)で各層の屈折率を調整することもできる。
本発明の方法では、無機化合物層等を蒸着等の方法で成膜することができるので、工程が短く、波長レベルでの膜厚制御ができる。
【0029】
(ポリマー層)
ポリマー層は、設計波長λにおいて屈折率が1.35〜1.50であることが好ましい。ポリマー層と無機化合物層とは互いに屈折率が異なっていてもよいが、屈折率差が小さいことが好ましい。
ポリマー層の膜厚は、光学膜厚として、無機化合物層とともに低屈折率層全体の光学膜厚が0.20λ〜0.28λとなれば特に限定されない。
【0030】
本発明において、ポリマー層は一般式(I)で表される親水性ポリマーを含む組成物(以下、「親水性組成物」ともいう)を硬化させた層である。
以下、一般式(I)で表される親水性ポリマーについて説明する。一般式(I)で表される親水性ポリマーは、下記一般式(I−a)、(I−b)で示される構造単位を有する。
【0031】
【化3】

【0032】
一般式(I−a)及び(I−b)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは、単結合、又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは、繰り返し単位のモル比を表し、それぞれ100〜0であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【0033】
〜Rが炭化水素基を表す場合の炭化水素基としては、炭素数8以下の、アルキル基、アリール基などが挙げられ、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
〜Rは、効果および入手容易性の観点から、好ましくは水素原子、メチル基またはエチル基である。R〜Rはより好ましくは水素原子、メチル基であり、更に好ましくは水素原子である。Rは、より好ましくはメチル基、エチル基であり、更に好ましくはエチル基である。
【0034】
これらの炭化水素基は更に置換基を有していてもよい。アルキル基が置換基を有するとき、置換アルキル基は置換基とアルキレン基との結合により構成され、ここで、置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。好ましい例としては、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、Ν−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−リールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイト基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−Ν−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、
【0035】
アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)およびその共役塩基基(以下、スルホナト基と称す)、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基ホスフォノ基(−PO)およびその共役塩基基(以下、ホスフォナト基と称す)、ジアルキルホスフォノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスフォノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスフォノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノ基(−POH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナト基と称す)、モノアリールホスフォノ基(−POH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールホスフォナト基と称す)、ホスフォノオキシ基(−OPO)およびその共役塩基基(以後、ホスフォナトオキシ基と称す)、ジアルキルホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスフォノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスフォノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスフォノオキシ基(−OPOH(alkyl))およびその共役塩基基(以後、アルキルホスフォナトオキシ基と称す)、モノアリールホスフォノオキシ基(−OPOH(aryl))およびその共役塩基基(以後、アリールフォスホナトオキシ基と称す)、モルホルノ基、シアノ基、ニトロ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
【0036】
これらの置換基における、アルキル基の具体例としては、R〜Rにおいて挙げたアルキル基が同様に挙げられ、アリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、クロロメチルフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、フェノキシフェニル基、アセトキシフェニル基、ベンゾイロキシフェニル基、メチルチオフェニル基、フェニルチオフェニル基、メチルアミノフェニル基、ジメチルアミノフェニル基、アセチルアミノフェニル基、カルボキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、エトキシフェニルカルボニル基、フェノキシカルボニルフェニル基、N−フェニルカルバモイルフェニル基、フェニル基、シアノフェニル基、スルホフェニル基、スルホナトフェニル基、ホスフォノフェニル基、ホスフォナトフェニル基等を挙げることができる。また、アルケニル基の例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、シンナミル基、2−クロロ−1−エテニル基等が挙げられ、アルキニル基の例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、トリメチルシリルエチニル基等が挙げられる。アシル基(G1CO−)におけるG1としては、水素原子、ならびに上記のアルキル基、アリール基を挙げることができる。
【0037】
これら置換基のうち、より好ましいものとしてはハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、アルコキシ基、アリーロキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、アシルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカバモイルオキシ基、アシルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、スルホ基、スルホナト基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、ホスフォノ基、ホスフォナト基、ジアルキルホスフォノ基、ジアリールホスフォノ基、モノアルキルホスフォノ基、アルキルホスフォナト基、モノアリールホスフォノ基、アリールホスフォナト基、ホスフォノオキシ基、ホスフォナトオキシ基、アリール基、アルケニル基が挙げられる。
【0038】
一方、置換アルキル基におけるアルキレン基としては前述の炭素数1から20までのアルキル基上の水素原子のいずれか1つを除し、2価の有機残基としたものを挙げることができ、好ましくは炭素原子数1から12までの直鎖状、炭素原子数3から12までの分岐状ならびに炭素原子数5から10までの環状のアルキレン基を挙げることができる。該置換基とアルキレン基を組み合わせる事により得られる置換アルキル基の、好ましい具体例としては、クロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、メトキシエトキシエチル基、アリルオキシメチル基、フェノキシメチル基、メチルチオメチル基、トリルチオメチル基、エチルアミノエチル基、ジエチルアミノプロピル基、モルホリノプロピル基、アセチルオキシメチル基、ベンゾイルオキシメチル基、N−シクロヘキシルカルバモイルオキシエチル基、N−フェニルカルバモイルオキシエチル基、アセチルアミノエチル基、N−メチルベンゾイルアミノプロピル基、2−オキシエチル基、2−オキシプロピル基、カルボキシプロピル基、メトキシカルボニルエチル基、アリルオキシカルボニルブチル基、
【0039】
クロロフェノキシカルボニルメチル基、カルバモイルメチル基、N−メチルカルバモイルエチル基、N,N−ジプロピルカルバモイルメチル基、N−(メトキシフェニル)カルバモイルエチル基、N−メチル−N−(スルホフェニル)カルアバモイルメチル基、スルホブチル基、スルホナトブチル基、スルファモイルブチル基、N−エチルスルファモイルメチル基、N,N−ジプロピルスルファモイルプロピル基、N−トリルスルファモイルプロピル基、N−メチル−N−(ホスフォノフェニル)スルファモイルオクチル基、ホスフォノブチル基、ホスフォナトヘキシル基、ジエチルホスフォノブチル基、ジフェニルホスフォノプロピル基、メチルホスフォノブチル基、メチルホスフォナトブチル基、トリルホスフォノへキシル基、トリルホスフォナトヘキシル基、ホスフォノオキシプロピル基、ホスフォナトオキシブチル基、ベンジル基、フェネチル基、α−メチルベンジル基、1−メチル−1−フェニルエチル基、p−メチルベンジル基、シンナミル基、アリル基、1−プロペニルメチル基、2−ブテニル基、2−メチルアリル基、2−メチルプロペニルメチル基、2−プロピニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基等を挙げることができる。
【0040】
は単結合又は多価の有機連結基を表す。ここで単結合とはポリマーの主鎖とXが連結鎖なしに直接結合していることを表す。さらに、有機連結基とは非金属原子からなる連結基を示し、具体的には、0個から200個までの炭素原子、0個から150個までの窒素原子、0個から200個までの酸素原子、0個から400個までの水素原子、および0個から100個までの硫黄原子から成り立つものである。より具体的な連結基としては下記の構造単位またはこれらが組合わされて構成されるものを挙げることができる。
【0041】
【化4】

【0042】
また、Lはポリマー又はオリゴマーから形成されていてもよく、具体的には不飽和二重結合系モノマーからなるポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンなどを含むことが好ましく、その他の好ましい例として、ポリ(オキシアルキレン)、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリシロキサン等が挙げられ、好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリビニル、ポリスチレンが挙げられ、より好ましくは、ポリアクリレート、ポリメタクリレートである。
これらポリマー及びオリゴマーに用いられる構造単位は1種類でもよく、2種類以上であってもよい。また、Lがポリマーまたはオリゴマーの場合は構成する元素数に制限は特になく、分子量は1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
は単結合、又はアルキレン基、−CO−、−O−との組合せからなる有機連結基が好ましい。Lは単結合であることが更に好ましい。前記アルキレン基の炭素数としては1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が更に好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0043】
は単結合又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。ここで、単結合とはポリマー主鎖とSi原子が連結基なしに直接結合していることを表す。また、L中に、前記構造は2つ以上存在してもよく、その場合には、互いに同じものでも、異なるものであってもよい。前記構造を1つ以上含むのであれば、他の構造はLで挙げられたものと同様の構造を有することができる。
は、単結合、又は、−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、及び−SO−からなる群より選択される構造と、アルキレン基又は−CO−との組合せからなる有機連結基であることが好ましい。Lは、−CONH−とアルキレン基との組合せからなる基であることが更に好ましい。前記アルキレン基の炭素数としては1〜20が好ましく、1〜10がより好ましく、1〜5が更に好ましく、2又は3が特に好ましい。
【0044】
また、Xは親水基であって、−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、または−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。また、−CON(R)(R)、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SON(R)(R)−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)、−N(R)(R)(R)又は−N(R)(R)(R)(R)についてR〜Rがお互い結合して環を形成していてもよく、また、形成された環は酸素原子、硫黄原子、窒素原子などのヘテロ原子を含むヘテロ環であってもよい。R〜Rはさらに置換基を有していてもよく、ここで導入可能な置換基としては、前記R〜Rがアルキル基の場合に導入可能な置換基として挙げたものを同様に挙げることができる。
Xは、−OH、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−SO、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、−PO(R)(R)が好ましく、−CON(R)(R)、−NHCOR、−SOがより好ましく、−CON(R)(R)が更に好ましい。
【0045】
、R又はRとしては具体的には水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。R、R、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましく、水素原子より好ましい。
としては具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基等が好適に挙げられる。Rはメチル基が好ましい。
、Rとしては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、または、アンモニウム、ヨードニウム、スルホニウムなどのオニウムが挙げられる。R、Rは水素原子、アルカリ金属が好ましく、水素原子、カリウムが好ましい。
としては具体的には、R〜Rで挙げられるアルキル基の他に、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;硝酸アニオン、硫酸アニオン、テトラフルオロホウ酸アニオン、ヘキサフルオロリン酸アニオン等の無機アニオン、メタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、p−トルエンスルホン酸アニオン等の有機アニオンが挙げられる。
また、このようなXとしては具体的には、−CONa、−CONH、−SONa、−SONH、−PO等が好ましく、−CONHがより好ましい。
【0046】
x及びyは、一般式(I)で表される親水性ポリマーにおける、一般式(I−a)で表される構造単位と一般式(I−b)で表される構造単位の重合モル比を表す。x及びyは100〜0であり、x+y=100となる数を表す。重合モル比x:yは、99:1〜10:90の範囲であることが好ましく、99:1〜50:50の範囲であることがさらに好ましい。
なお、ここで、ポリマー鎖を構成する構造単位である(I−a)及び(I−b)は、それぞれすべて同じものであっても、異なる複数の構造単位を含むものであってもよく、その場合、一般式(I−a)に相当する構造単位と一般式(I−b)に相当する構造単位の重合モル比が上記範囲であることが好ましい。
【0047】
一般式(I)で表される親水性ポリマーの分子量としては、1,000〜1,000,000が好ましく、1,000〜500,000がさらに好ましく、1,000〜200,000が最も好ましい。
【0048】
以下に、一般式(I)で表される親水性ポリマーの具体例〔例示化合物(1)〜(50)〕をその質量平均分子量(M.W.)とともに以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す具体例のポリマーは、記載される各構造単位が記載のモル比で含まれるランダム共重合体であることを意味する。
【0049】
【化5】

【0050】
【化6】

【0051】
【化7】

【0052】
【化8】

【0053】
【化9】

【0054】
一般式(I)で表される親水性ポリマーを合成する前記各化合物は、市販されおり、また容易に合成することもできる。
一般式(I)で表される親水性ポリマーを合成するためのラジカル重合法としては、従来公知の方法の何れをも使用することができる。具体的には、一般的なラジカル重合法は、例えば、新高分子実験学3、高分子の合成と反応1(高分子学会編、共立出版)、新実験化学講座19、高分子化学(I)(日本化学会編、丸善)、物質工学講座、高分子合成化学(東京電気大学出版局) 等に記載されており、これらを適用することができる。
【0055】
また、一般式(I)で表される親水性ポリマーは、他のモノマーとの共重合体であってもよい。用いられる他のモノマーとしては、例えば、アクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、ビニルエステル類、スチレン類、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、無水マレイン酸、マレイン酸イミド等の公知のモノマーも挙げられる。このようなモノマー類を共重合させることで、製膜性、膜強度、親水性、疎水性、溶解性、反応性、安定性等の諸物性を改善することができる。
【0056】
共重合体の合成に使用されるこれらの他のモノマーの割合は、諸物性の改良に十分な量
である必要があるが、親水性膜としての機能が十分であり、一般式(I)で表される親水性ポリマーを添加する利点を十分得るために、割合は大きすぎないほうが好ましい。従って、一般式(I)で表される親水性ポリマー中の他のモノマーの好ましい総割合は80質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは50質量%以下である。
【0057】
本発明に係る一般式(I)で表される親水性ポリマーは、親水性組成物の不揮発性成分に対して、硬化性と親水性の観点から、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは15〜90質量%、最も好ましくは20〜85質量%の範囲で含有される。これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。ここで、不揮発成分とは、揮発する溶媒を除いた成分をいう。
【0058】
〔アルコキシド化合物〕
本発明に係る親水性組成物には、Si、Ti、Zr、及びAlから選択される元素のアルコキシド化合物を含ませることができる。該アルコキシド化合物は、その構造中に重合性の官能基を有し、架橋剤としての機能を果たす加水分解重合性化合物であり、(一般式(I)で表される親水性ポリマーと縮重合することで、架橋構造を有する強固な膜を形成する。
前記アルコキシド化合物は、下記一般式(II)で表される化合物であることが好ましく、膜を硬化させるために、架橋構造を形成するにあたっては、前記一般式(I)で表される親水性ポリマー、下記一般式(II)で表される特定アルコキシド化合物を混合した後、塗布し、加熱、乾燥することが好ましい。
【0059】
【化10】

【0060】
一般式(II)中、Rは水素原子、アルキル基又はアリール基を表し、R10はアルキル基又はアリール基を表し、YはSi、Al、Ti又はZrを表し、kは0〜2の整数を表す。R及びR10がアルキル基を表す場合の炭素数は好ましくは1から4である。アルキル基又はアリール基は置換基を有していてもよく、導入可能な置換基としては、ハロゲン原子、アミノ基、メルカプト基などが挙げられる。なお、この化合物は低分子化合物であり、分子量1000以下であることが好ましい。
【0061】
以下に、一般式(II)で表されるアルコキシド化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。YがSiの場合、即ち、アルコキシド化合物中にケイ素を含むものとしては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、γ−クロロプリピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。これらのうち特に好ましいものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトルイメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン等を挙げることができる。
【0062】
YがAlである場合、即ち、アルコキシド化合物中にアルミニウムを含むものとしては、例えば、トリメトキシアルミネート、トリエトキシアルミネート、トリプロポキシアルミネート、テトラエトキシアルミネート等を挙げることができる。
YがTiである場合、即ち、アルコキシド化合物中にチタンを含むものとしては、例えば、トリメトキシチタネート、テトラメトキシチタネート、トリエトキシチタネート、テトラエトキシチタネート、テトラプロポキシチタネート、クロロトリメトキシチタネート、クロロトリエトキシチタネート、エチルトリメトキシチタネート、メチルトリエトキシチタネート、エチルトリエトキシチタネート、ジエチルジエトキシチタネート、フェニルトリメトキシチタネート、フェニルトリエトキシチタネート等を挙げることができる。
YがZrである場合、即ち、ジルコニウムを含むものとしては、例えば、前記チタンを含むものとして例示した化合物に対応するジルコネートを挙げることができる。
これらの中でも、YがSiであるアルコキシド化合物が塗布性の観点から好ましい。
【0063】
本発明に係るアルコキシド化合物は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
前記アルコキシド化合物は、本発明に係る親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは10〜70質量%の範囲で使用される。
前記アルコキシド化合物は市販品が容易に入手できるし、公知の合成方法、たとえば各金属塩化物とアルコールとの反応によっても得られる。
【0064】
〔触媒〕
本発明に係る親水性組成物においては、一般式(I)で表される親水性ポリマー、アルコキシド化合物などの架橋成分を溶媒に溶解し、よく攪拌することで、これらの成分が加水分解、重縮合し、有機−無機複合体ゾル液を形成し、このゾル溶液によって、高い親水性と高い膜強度を有するポリマー層を形成することが好ましい。有機無機複合体ゾル液の調製において、加水分解及び重縮合反応を促進するために、酸性触媒または塩基性触媒を併用することが好ましく、実用上好ましい反応効率を得ようとする場合、このような触媒を含有させることが好ましい。
【0065】
本発明で用いられる触媒としては、前記アルコキシド化合物を加水分解、重縮合し、一般式(I)で表される親水性ポリマーと結合を生起させる反応を促進する触媒が選択され、酸、あるいは塩基性化合物をそのまま用いるか、又は、酸、あるいは塩基性化合物を水またはアルコールなどの溶媒に溶解させた状態のもの(以下、これらを包括してそれぞれ酸性触媒、塩基性触媒とも称する)を用いる。酸、あるいは塩基性化合物を溶媒に溶解させる際の濃度については特に限定はなく、用いる酸、或いは塩基性化合物の特性、触媒の所望の含有量などに応じて適宜選択すればよい。ここで、触媒を構成する酸或いは塩基性化合物の濃度が高い場合は、加水分解、重縮合速度が速くなる傾向がある。但し、濃度の高い塩基性触媒を用いると、ゾル溶液中で沈殿物が生成する場合があるため、塩基性触媒を用いる場合、その濃度は水溶液での濃度換算で1N以下であることが望ましい。
具体的には、特開2008−222998号公報の[0078]〜[0085]に記載のものが挙げられる。
前記触媒は、本発明に係る親水性組成物中に、不揮発性成分に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜25質量%の範囲で使用される。また、触媒は、単独で用いても2種以上併用してもよい。
【0066】
本発明に係る親水性組成物には、一般式(I)で表される親水性ポリマーに加えて、所望により併用される前記アルコキシド化合物及び触媒に加え、目的に応じて種々の添加剤を、本発明の効果を損なわない限りにおいて併用することができる。
【0067】
〔親水性組成物の調液〕
親水性組成物の調製は、一般式(I)で表される親水性ポリマー、更に好ましくはアルコキシド化合物、触媒をエタノールなどの溶媒に溶解後、攪拌することで実施できる。反応温度は室温〜80℃であり、反応時間、即ち攪拌を継続する時間は1〜72時間の範囲であることが好ましく、この攪拌により両成分の加水分解・重縮合を進行させて、有機無機複合体ゾル液を得ることができる。
【0068】
一般式(I)で表される親水性ポリマーを含有する親水性組成物を調製する際に用いる溶媒としては、これらを均一に、溶解、分散し得るものであれば特に制限はないが、例えば、メタノール、エタノール、水等の水系溶媒が好ましい。
【0069】
以上述べたように、本発明に係る親水性組成物によりポリマー層を形成するための有機無機複合体ゾル液(親水性組成物)の調製は、ゾルゲル法を利用している。ゾルゲル法については、作花済夫「ゾル−ゲル法の科学」(株)アグネ承風社(刊)(1988年)、平島硯「最新ゾル−ゲル法による機能性薄膜作成技術」総合技術センター(刊)(1992年)等の成書等に詳細に記述され、それらに記載の方法を本発明において親水性組成物の調製に適用することができる。
このような本発明に係る親水性組成物を含む溶液を、スピンコート法等で塗布、乾燥することで、ポリマー層を成膜ことができる。
ポリマー層の形成において、親水性組成物を含む溶液を塗布した後の加熱、乾燥条件としては、高密度の架橋構造を効率よく形成するといった観点からは、50〜200℃の温度範囲において、2分〜1時間程度行うことが好ましく、80〜160℃の温度範囲で、5〜30分間乾燥することがより好ましい。また、加熱手段としては、公知の手段、例えば、温度調整機能を有する乾燥機などを用いることが好ましい。
【0070】
[反射率調整層]
反射率調整層は、等価屈折率が前記高屈折率層より低い層であれば特に限定されないが、等価屈折率がd線に対して1.55〜1.85であることが好ましい。
反射率調整層は、前述の通り、複数の層を含むことができる。反射率調整層の構成層としては、Al、PrAlO、La2αAl2β3(α+β)[0<α<1、0<β<1、α+β=1]、GeO、Yからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む層が挙げられる。ここで、La2αAl2β3(α+β)としては、例えばLa・3.3Alで表されるような化合物であってもよい。特に、基板との密着性の観点から、反射率調整層は、基板に最も近い層として、Alを含む層を有することが好ましい。
また、反射率を1%以下に低減できる波長域を広げる観点から、反射率調整層は、LaTiO、ZrO、TiO、Ta、Nb、HfO、及びCeOからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む層を含むことも好ましい。
また、前述のとおり、屈折率調整層は、反射率を下げる観点から、高屈折率層に最も近い層として光学膜厚が0.38λ〜0.55λの中間屈折率層を有することも好ましい。
【0071】
反射率調整層の形成法については、特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法などがあげられる。なかでも真空蒸着法が膜厚のコントロールと膜厚の均一性の点から好ましい。形成条件(例えば、真空度、加熱温度等)で各層の屈折率を調整することもできる。
【0072】
本発明の親水性反射防止膜は、前述の高屈折率層、低屈折率層、反射率調整層以外の層を設けてもよい。
【0073】
[反射率]
本発明の親水性反射防止膜の反射率は、可視域で1%以下である。より具体的には、450〜650nmの波長域で1%以下の反射率であることが好ましく、400〜700nmの波長域で1%以下の反射率であることが更に好ましく、400〜800nmの波長域で1%以下の反射率であることが特に好ましい。各波長域での反射率は0.7%以下であることが更に好ましい。
【0074】
[親水性]
本発明の親水性反射防止膜は、基板に対して低屈折率層側の表面が親水性を有し、具体的には水に対する接触角が10度以下であることが好ましく、5度以下であることが更に好ましい。
【0075】
[テレビレンズ用カバーガラス]
本発明の親水性反射防止膜は、種々のレンズ、プリズム、ミラー等の光学部品、自動車のフロントガラス等、種々の物品に適用することができる。
なかでも、本発明の親水性反射防止膜をテレビレンズ用カバーガラスに適用し、該水滴付着による画像の乱れの少ないテレビ用カメラを提供することができる。
本発明に係るテレビレンズ用カバーガラスは、基板の少なくとも片側に本発明の親水性反射防止膜を有する。基板としては、前述の基板を用いることができる。なかでも、L−39(HOYA CANDEO OPTRONICS社)が好ましい。
また、基板の片側に本発明の親水性反射防止膜を設け、その反対側に他の反射防止膜を設けることができる。そのような反射防止膜としては、本発明の親水性反射防止膜においてポリマー層を設けない構成、即ち低屈折率層を無機化合物層のみの構成とした反射防止膜が挙げられる。
本発明のテレビレンズ用カバーガラスは、本発明の親水性反射防止膜を設けた側をカメラの外側に向けて該カメラに備えることが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
表1に記載のとおり、基板上に各材料を表1に記載の膜厚で順次成膜し、反射防止膜を作製した。
ここで、ポリマーからなる層(第6層)以外は、真空蒸着法により成膜した。ポリマーからなる層については、以下のように成膜した。
【0078】
〔親水性ゾルゲル液〕
エチルアルコール2g、触媒としてチタンアセチルアセトナート0.2g、アセチルアセトン0.1g、オルトチタン酸テトラエチル0.1g、精製水100g中に、下記の親水性ポリマー(1)10gを混合し、室温で2時間撹拌して、調製した。
【0079】
【化11】

【0080】
上記構造式中、数値「70」及び「30」は繰り返し単位のモル比を表す。
【0081】
〔親水性組成物〕
前記親水性ゾルゲル液120gに下記のアニオン系界面活性剤の5質量%水溶液2.5gを混合し、親水性組成物とした。
【0082】
【化12】

【0083】
〔ポリマー層形成の方法〕
ポリマー層下層(第5層)まで成膜後、該ポリマー層下層上に前記親水性組成物をスピンコート塗布し、100℃、10分でオーブン乾燥して、乾燥塗布量0.1g/mのポリマー層を形成した。
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図5に示す。400〜700nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。
【0084】
〔防曇性の評価〕
得られた親水性反射防止膜に、昼間、室内の蛍光灯下で、1分間水蒸気を当て、水蒸気から離した後、25℃、RH10%の環境下に配置し、前記と同様の照射条件の蛍光灯下において曇り具合及びその変化を観察した。
【0085】
【表1】

【0086】
表中、S−LAH79は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。
【0087】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図5に示す。400〜720nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0088】
[実施例2]
表2に記載のとおり、基板上に各材料を表2に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0089】
【表2】

【0090】
表中、S−NPH2は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0091】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図6に示す。400〜720nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0092】
[実施例3]
表3に記載のとおり、基板上に各材料を表3に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0093】
【表3】

【0094】
表中、S−LAH58は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率蒸着材料である。
【0095】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図7に示す。420〜670nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0096】
[実施例4]
表4に記載のとおり、基板上に各材料を表4に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0097】
【表4】

【0098】
表中、S−LAH58は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0099】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図8に示す。400〜720nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0100】
[実施例5]
表5に記載のとおり、基板上に各材料を表5に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0101】
【表5】

【0102】
表中、S−LAH58は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0103】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図9に示す。400〜720nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0104】
[実施例6]
表6に記載のとおり、基板上に各材料を表6に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0105】
【表6】

【0106】
表中、S−TIH53は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0107】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図10に示す。410〜680nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0108】
[実施例7]
表7に記載のとおり、基板上に各材料を表7に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0109】
【表7】

【0110】
表中、S−TIH6は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0111】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図11に示す。400〜730nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0112】
[実施例8]
表8に記載のとおり、基板上に各材料を表8に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0113】
【表8】

【0114】
表中、S−TIH1は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0115】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図12に示す。400〜730nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0116】
[実施例9]
表9に記載のとおり、基板上に各材料を表9に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0117】
【表9】

【0118】
表中、S−TIM3は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0119】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図13に示す。400〜730nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0120】
[実施例10]
表10に記載のとおり、基板上に各材料を表10に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0121】
【表10】

【0122】
表中、S−TIL26は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0123】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図14に示す。410〜680nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0124】
[実施例11]
表11に記載のとおり、基板上に各材料を表11に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0125】
【表11】

【0126】
表中、S−TIL26は透明材料(オハラ社)である。SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4である。
【0127】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図15に示す。400〜730nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0128】
[実施例12]
表12に記載のとおり、基板上に各材料を表12に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0129】
【表12】

【0130】
表中、S−TIL26は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0131】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図16に示す。400〜730nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0132】
[実施例13]
表13に記載のとおり、基板上に各材料を表13に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0133】
【表13】

【0134】
表中、S−BSL7は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0135】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図17に示す。390〜730nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0136】
[実施例14]
表14に記載のとおり、基板上に各材料を表14に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0137】
【表14】

【0138】
表中、S−NPH2は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0139】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図18に示す。390〜760nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0140】
[実施例15]
表15に記載のとおり、基板上に各材料を表15に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0141】
【表15】

【0142】
表中、S−LAH58は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0143】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図19に示す。390〜760nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0144】
[実施例16]
表16に記載のとおり、基板上に各材料を表16に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0145】
【表16】

【0146】
表中、S−TIH6は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0147】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図20に示す。390〜750nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0148】
[実施例17]
表17に記載のとおり、基板上に各材料を表17に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0149】
【表17】

【0150】
表中、S−TIH1は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0151】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図21に示す。400〜740nmまでの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0152】
[実施例18]
表18に記載のとおり、基板上に各材料を表18に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0153】
【表18】

【0154】
表中、S−TIH3は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0155】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図22に示す。400〜730nmを超えるまでの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0156】
[実施例19]
表19に記載のとおり、基板上に各材料を表19に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0157】
【表19】

【0158】
表中、S−TIL26は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0159】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図23に示す。400〜740nmまでの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0160】
[実施例20]
表20に記載のとおり、基板上に各材料を表20に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0161】
【表20】

【0162】
表中、S−BSL7は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0163】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図24に示す。390〜740nmまでの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0164】
実施例14〜20の親水性反射防止膜では、実施例1〜13に比べて反射率調整層(実施例14〜17及び19〜20の第1〜5層、実施例18の第1〜3層)の層数が同等又は増やしたことにより、反射率が1%以下の波長域が広がっていることが分かる。また、反射率調整層の最も基板側の層としてAlを含む層を設けたことで、基板と膜との密着性に優れる。
【0165】
[実施例21]
表21に記載のとおり、基板上に各材料を表21に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0166】
【表21】

【0167】
表中、S−LAH58は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0168】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図25に示す。390nm〜810nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0169】
[実施例22]
表22に記載のとおり、基板上に各材料を表22に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0170】
【表22】

【0171】
表中、S−LAH58は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0172】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図26に示す。390〜810nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0173】
[実施例23]
表23に記載のとおり、基板上に各材料を表23に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0174】
【表23】

【0175】
表中、S−TIH6は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0176】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図27に示す。390〜810nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
また、基板と膜との密着も良好であった。
【0177】
[実施例24]
表24に記載のとおり、基板上に各材料を表24に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0178】
【表24】

【0179】
表中、S−TIH1は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0180】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図28に示す。390〜810nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0181】
[実施例25]
表25に記載のとおり、基板上に各材料を表25に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0182】
【表25】

【0183】
表中、S−TIM3は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0184】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図29に示す。390〜810nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0185】
[実施例26]
表26に記載のとおり、基板上に各材料を表26に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0186】
【表26】

【0187】
表中、S−TIL26は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0188】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図30に示す。390〜810nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0189】
[実施例27]
表27に記載のとおり、基板上に各材料を表27に記載の膜厚で順次成膜し、親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0190】
【表27】

【0191】
表中、S−BSL7は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0192】
得られた親水性反射防止膜の反射率分布を図31に示す。390〜810nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、良好な防曇性が得られていることが分かった。
【0193】
実施例21〜27の親水性反射防止膜では、反射率調整層の最も高屈折率層(実施例21及び25の第6層、実施例22及び23の第8層、実施例24、26及び27の第7層)側に、光学膜厚が0.38λ〜0.55λの層を含む。更に、実施例1〜20に比べて中間屈折率層(実施例14〜17及び19〜20の第1〜5層、実施例18の第1〜3層)の層数を増やしている。この結果、反射率が1%以下の波長域が400nmから800nmを超える範囲まで広がり、全体の反射率も低下していることが分かる。
【0194】
[比較例1〜4]
表28〜31に記載のとおり、基板上に各材料を表28〜31に記載の膜厚で順次成膜し、比較例1〜4の反射防止膜を作製した。
【0195】
【表28】

【0196】
表中、S−LAH58は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0197】
【表29】

【0198】
表中、S−TIH1は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0199】
【表30】

【0200】
表中、S−TIL26は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0201】
【表31】

【0202】
表中、S−TIL26は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0203】
得られた比較例1〜4の反射防止膜の反射率分布を図32〜35に示す。
比較例1〜3では、390nm〜810nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。
比較例4では、410nm〜680nmの波長域で反射率が1%以下の良好な反射防止性能が得られた。
比較例1と実施例22、比較例2と実施例24、比較例3と実施例26、比較例4と実施例10をそれぞれ比較すると、比較例、実施例ともに、同等の反射防止性能が得られていることが分かる。
比較例1〜4の反射防止膜について、実施例1と同様に防曇性を評価したところ、曇りが発生し、10秒経過しても曇りが解消せず、防曇性が劣ることが分かった。
【0204】
[実施例28〜30]
表32〜34に記載のとおり、基板上に各材料を表32〜34に記載の膜厚で順次成膜し、実施例28〜38の親水性反射防止膜を作製した。ポリマー層については、実施例1と同様に形成した。
【0205】
【表32】

【0206】
表中、S−LAH58は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0207】
【表33】

【0208】
表中、S−TIH6は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0209】
【表34】

【0210】
表中、S−TIL26は透明材料(オハラ社)である。また、SUB−M2はメルク社製サブスタンス−M2であり、La2αAl2β3(α+β)(但し、α=1/4.3、β=3.3/4.3)を主体とする中屈折率材料である。SUB−H4はメルク社製サブスタンス−H4であり、LaTiOを主体とする高屈折率材料である。
【0211】
得られた実施例28〜30の親水性反射防止膜の反射率分布を図36〜38に示す。
実施例28〜30の親水性反射防止膜は、それぞれ、実施例5、16及び26の低屈折率無機化合物層の材料であるSiOをMgFに置き換えて、膜厚を調整したものであるが、実施例5、16及び26と同等の反射防止性能が得られた。
また、防曇性について実施例1と同様に評価したところ、実施例28〜30のいずれも良好な防曇性が得られていることが分かった。
【符号の説明】
【0212】
10、20、30、40 反射防止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
λを設計波長として、基板上に、基板側から順に、光学膜厚が0.38λ〜0.55λであって屈折率がd線に対して1.70以上2.50以下の高屈折率層、及び光学膜厚が0.20λ〜0.28λであって屈折率がd線に対して1.35以上1.50以下の低屈折率層を積層した反射防止膜であって、
前記低屈折率層が、前記高屈折率層の上に積層された、無機化合物からなる無機化合物層と、前記無機化合物層の上に積層された、下記一般式(I)で表される親水性ポリマーを含む組成物を硬化させたポリマー層とからなる親水性反射防止膜。
【化1】


一般式(I)中、R〜Rはそれぞれ独立に水素原子又は炭素数8以下の炭化水素基を表す。Lは単結合又は多価の有機連結基を表す。Lは、単結合、又は−CONH−、−NHCONH−、−OCONH−、−SONH−、及び−SO−からなる群より選択される構造を1つ以上有する多価の有機連結基を表す。mは1〜3の整数を表す。x、yは、繰り返し単位のモル比を表し、それぞれ100〜0であり、x+y=100となる数を表す。Xは−OH、−OR、−COR、−CO、−CON(R)(R)、−N(R)(R)、−NHCOR、−NHCO、−OCON(R)(R)、−NHCON(R)(R)、−SO、−OSO、−SO、−NHSO、−SON(R)(R)、−N(R)(R)(R)、−N(R)(R)(Rc)(R)、−PO(R)(R)、−OPO(R)(R)、又は−PO(R)(R)を表す。ここで、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基を表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐又は環状のアルキル基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、アルカリ金属、アルカリ土類金属、又はオニウムを表し、Rは、炭素数1〜8の直鎖、分岐若しくは環状のアルキル基、ハロゲン原子、無機アニオン、又は有機アニオンを表す。
【請求項2】
前記ポリマー層が前記反射防止膜の最も外側の最外層であることを特徴とする請求項1記載の親水性反射防止膜。
【請求項3】
前記基板と前記高屈折率層との間に、更に、等価屈折率が前記高屈折率層より低い反射率調整層を有する請求項1又は2に記載の親水性反射防止膜。
【請求項4】
前記反射率調整層が、屈折率の異なる複数の層を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
【請求項5】
前記反射率調整層の前記高屈折率層に接する層が、光学膜厚が0.38λ〜0.55λであり、屈折率がd線に対して1.55以上1.85以下であり前記低屈折率層の屈折率よりも高く前記高屈折率層の屈折率よりも低い中間屈折率層である請求項3又は4に記載の親水性反射防止膜。
【請求項6】
前記反射防止膜は可視域の反射率が1%以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
【請求項7】
前記無機化合物が、SiO、MgF、及びAlFからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜6のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
【請求項8】
前記高屈折率層が、LaTiO、ZrO、TiO、Ta、Nb、HfO、及びCeOからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む層である請求項1〜7のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
【請求項9】
前記反射率調整層が、Al、PrAlO、La2αAl2β3(α+β)[0<α<1、0<β<1、α+β=1]、GeO、Yからなる群から選ばれる少なくとも1つを含む層を有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜。
【請求項10】
前記反射率調整層が、前記基板に最も近い層として、Alを含む層を有する請求項9に記載の親水性反射防止膜。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の親水性反射防止膜を有するテレビレンズ用カバーガラス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−203150(P2012−203150A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66804(P2011−66804)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】