説明

観察装置および観察方法

【課題】撮影開始後における観察対象の状態変化を観察することができる観察装置および観察方法を提供する。
【解決手段】試料Aの画像を取得する光学顕微鏡観察部20と、光学顕微鏡観察部20により時間間隔をあけて取得された複数の画像を比較して、試料Aの状態変化を判定する細胞状態判定部43と、細胞状態判定部43により状態変化が判定された領域を抽出する領域抽出部44と、領域抽出部44により抽出された領域の画像を、光学顕微鏡観察部20よりも高解像度で取得する走査型顕微鏡観察部30とを備える観察装置1を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば細胞等の生体組織を観察するための観察装置および観察方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーニングを開始する前にCCDで試料全体を撮影して、撮影した画像を解析することで細胞の位置を特定し、細胞が存在している場所のみにレーザ光(励起光)を照射して蛍光画像を取得する走査型顕微鏡システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この走査型顕微鏡システムによれば、細胞の存在しない位置の画像を取得する必要がないため、速やかに細胞の画像を取得できるという効果を奏する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−128086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている走査型顕微鏡システムでは、スクリーニングを開始する前に、CCDで試料全体を撮影して細胞の位置を特定してしまうので、撮影開始後に状態が変化する細胞については画像を取得できないという不都合がある。したがって、例えば、タイムラプス観察中に発現した細胞の核内の微細構造の変化については、観察を行うことができない。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、撮影開始後における観察対象の状態変化を観察することができる観察装置および観察方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明の第1の態様は、試料の画像を取得する第1の画像取得部と、該第1の画像取得部により時間間隔をあけて取得された複数の画像を比較して、前記試料の状態変化を判定する判定部と、該判定部により状態変化が判定された領域を抽出する領域抽出部と、該領域抽出部により抽出された領域の画像を、前記第1の画像取得部よりも高解像度で取得する第2の画像取得部とを備える観察装置である。
【0007】
本発明の第1の態様によれば、第1の画像取得部により試料の画像が時間間隔をあけて複数取得され、判定部によりこれらの画像が比較されて試料の状態変化が判定される。そして、領域抽出部により状態が変化したと判定された領域が抽出され、この領域の画像が、第2の画像取得部により第1の画像取得部よりも高解像度で取得される。
【0008】
このようにすることで、観察中に状態が変化した領域(例えば、細胞核内の微細構造が変化した細胞)を高解像度で撮影することができ、その状態変化の様子を観察することができる。また、観察中に状態が変化しない領域については高解像度で画像を取得する必要性を排除することができ、状態変化が判定された領域の画像のみを速やかに且つ高解像度で取得することができる。
【0009】
上記の第1の態様において、前記試料の状態変化を判定するための基準となるパラメータを入力するパラメータ入力部を備え、前記判定部が、前記パラメータ入力部により入力されたパラメータを用いて前記試料の状態変化を判定することとしてもよい。
このようにすることで、観察を行いたい対象に応じて、試料の状態変化を判定するための基準となるパラメータをパラメータ入力部に入力して、その状態変化を観察することができ、様々な観察対象についての状態変化の観察が可能となる。
【0010】
上記の第1の態様において、前記パラメータが、前記試料の像を構成する画素群の輝度、画素数、色のいずれか、もしくはその組み合わせであることとしてもよい。
試料の状態変化を判定するための基準となるパラメータとして、色を採用した場合には、例えば細胞の周期によって異なる色の蛍光を発する蛍光プローブ(例えばFUCCI)を試料に加えることで、その状態変化、すなわち細胞周期の進行をリアルタイムで観察することができる。また、パラメータとして画素数を採用した場合には、例えば大きさの変化する細胞をリアルタイムで観察することができる。また、パラメータとして輝度を採用した場合には、例えば観察中に新たに発現した細胞の核内の微細構造の変化をリアルタイムで観察することができる。
【0011】
上記の第1の態様において、前記第1の画像取得部が、2次元撮像素子であることとしてもよい。
第1の画像取得部を、例えばCCD等の2次元撮像素子とすることで、高速で試料の画像を取得することができ、取得した画像を試料の状態変化の判定用の画像として用いることができる。
【0012】
上記の第1の態様において、前記第2の画像取得部が、前記試料上でレーザ光を走査する走査部と、該走査部による走査位置に対応付けて前記試料からの光を検出する光検出部とを有することとしてもよい。
第2の画像取得部をレーザ走査型顕微鏡とすることで、状態が変化した領域の画像を高解像度で取得することができる。また、レーザ光を励起光として試料からの蛍光を光検出部により検出することで、状態変化が判定された領域のみに励起光を照射し、観察中に状態が変化しない領域には励起光を照射しないようにすることができ、状態が変化しない領域の退色を防止することができる。
【0013】
本発明の第2の態様は、時間間隔をあけて試料の画像を複数撮影する第1の画像取得ステップと、該第1の画像取得ステップにより時間間隔をあけて撮影された複数の画像を比較して、前記試料の状態変化を判定する判定ステップと、該判定ステップにより状態変化が判定された領域を抽出する領域抽出ステップと、該領域抽出ステップにより抽出された領域の画像を、前記第1の撮像ステップよりも高解像度で撮影する第2の画像取得ステップとを含む観察方法である。
【0014】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様に、観察中に状態が変化した領域(例えば、細胞核内の微細構造が変化した細胞)を高解像度で撮影することができ、その状態変化の様子を観察することができる。また、観察中に状態が変化しない領域については高解像度で画像を取得する必要性を排除することができ、状態変化が判定された領域の画像のみを速やかに且つ高解像度で取得することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、撮影開始後における観察対象の状態変化を観察することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る観察装置の概略構成図である。
【図2】図1の細胞状態判定部および領域抽出部による処理を説明する図であり、(a)は蛍光が発現した細胞がない状態、(b)は蛍光が発現した細胞が出現した状態を示している。
【図3】図1の観察装置によってタイムラプス観察を行った場合における作用を説明する図であり、(a)から(c)の順に蛍光が発現した細胞が出現していく状態を示している。
【図4】図1の観察装置による試料(ブロックA1)の状態変化を判定する際の処理を説明する図である。
【図5】図1の観察装置による状態変化した領域を抽出する際の処理を説明する図である。
【図6】図1の観察装置による試料(ブロックA2)の状態変化を判定する際の処理を説明する図である。
【図7】図1の観察装置によってタイムラプス観察を行った場合における作用を説明する図であり、(a)から(c)の順に細胞周期が進行し、各細胞の色が変化していく状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る観察装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置1は、生体試料中の細胞を観察する細胞観察装置であり、図1に示すように、顕微鏡本体10と、光学顕微鏡観察部(第1の画像取得部)20と、走査型顕微鏡観察部(第2の画像取得部)30と、PC40とを備えている。
【0018】
顕微鏡本体10は、試料Aを載置する電動ステージ13と、試料Aに対向して配置された対物レンズ14と、光学顕微鏡観察部20からの光と走査型顕微鏡観察部30からの光とを切り替えて対物レンズ14に導く光路切替部16と、対物レンズ14と光路切替部16との間に配置されたミラー15とを備えている。
【0019】
電動ステージ13は、試料Aを載置した状態で対物レンズ14の光軸に直交する方向(XY方向)に動作して、試料Aにおける対物レンズ14の焦点位置をXY方向に移動させるようになっている。
対物レンズ14は、光学顕微鏡観察部20(光源21)および走査型顕微鏡観察部30(レーザ光源31)から発せられた光を試料Aに照射するとともに、試料Aからの光を集めるようになっている。
【0020】
光路切替部16は、光学顕微鏡観察部20の光軸と走査型顕微鏡観察部30の光軸との交点に配置されたミラー17と、ミラー17を走査型顕微鏡観察部30の光軸に沿う方向に移動させる駆動機構(図示略)とを備えている。このような構成を有することで、光路切替部16は、光学顕微鏡観察部20からの光と走査型顕微鏡観察部30からの光のいずれか一方を試料Aに照射するとともに、試料Aからの光を光学顕微鏡観察部20と走査型顕微鏡観察部30のいずれか一方に導くようになっている。
【0021】
具体的には、光路切替部16は、ミラー17を光学顕微鏡観察部20の光軸と走査型顕微鏡観察部30の光軸との交点上に配置することで、走査型顕微鏡観察部30からの光を対物レンズ14(ミラー15)に向けて反射するとともに、この際の試料Aからの光を走査型顕微鏡観察部30(XYスキャナ33)に向けて反射するようになっている。また、光路切替部16は、ミラー17を光学顕微鏡観察部20の光軸上から外すことで、光学顕微鏡観察部20からの光を対物レンズ14(ミラー15)に向けて通過させるとともに、この際の試料Aからの光を光学顕微鏡観察部20(ダイクロイックミラー24)に向けて通過させるようになっている。
【0022】
光学顕微鏡観察部20は、光源21と、励起フィルタ22と、ミラー23と、ダイクロイックミラー24と、吸収フィルタ25と、CCD(2次元撮像素子)26とを備えており、試料Aの画像を比較的低い解像度で取得するようになっている。
【0023】
光源21は、例えば水銀キセノンランプであり、広帯域な波長の光を射出するようになっている。光源21は、例えば、試料A中の観察対象に特異的に付着または発現する蛍光物質を励起させる励起光を射出するようになっている。
【0024】
励起フィルタ22は、光源21から射出された光から、蛍光物質の励起に必要な波長の光を抽出するようになっている。
ミラー23は、励起フィルタ22を透過してきた光源21からの光をダイクロイックミラー24に向けて反射するようになっている。
【0025】
ダイクロイックミラー24は、光源21からの光を光路切替部16に向けて反射する一方、対物レンズ14により集光された試料Aからの光を透過させるようになっている。これにより、ダイクロイックミラー24は、光源21からの光と、試料Aからの光とを分岐するようになっている。
【0026】
吸収フィルタ25は、ダイクロイックミラー24を透過してきた光のうち、試料Aからの光以外を遮断するようになっている。
CCD(Charge Coupled Device)26は、吸収フィルタ25を透過してきた試料Aからの光を光電変換して、試料Aの画像情報として電気信号をPC40に出力するようになっている。
【0027】
走査型顕微鏡観察部30は、レーザ光源31と、光合成部32と、XYスキャナ(走査部)33と、ミラー34と、吸収フィルタ35と、PMT(光検出部)36と、ダイクロイックミラー37とを備えており、試料Aの画像(後述する領域抽出部44により抽出された領域の画像)を、光学顕微鏡観察部20よりも高解像度で取得するようになっている。
【0028】
レーザ光源31は、互いに異なる波長のレーザ光を射出するレーザ光源31a,31b,31cを有しており、観察対象に応じて、これらレーザ光源からのレーザ光を切り替えて射出するようになっている。レーザ光源31a,31b,31cは、例えば、試料A中の観察対象に特異的に付着または発現する蛍光物質を励起させる励起光をそれぞれ射出するようになっている。
【0029】
光合成部32は、レーザ光源31a,31b,31cからのレーザ光を同一光軸に合成するダイクロイックミラー32a,32b,32cを有している。具体的には、ダイクロイックミラー32aは、レーザ光源31aからのレーザ光をダイクロイックミラー32bに向けて反射するようになっている。ダイクロイックミラー32bは、レーザ光源31aからのレーザ光を透過させる一方、レーザ光源31bからのレーザ光をダイクロイックミラー32cに向けて反射するようになっている。ダイクロイックミラー32cは、レーザ光源31cからのレーザ光をXYスキャナ33に向けて透過させる一方、レーザ光源31aおよびレーザ光源31bからのレーザ光をXYスキャナ33に向けて反射するようになっている。なお、ダイクロイックミラー32aは、レーザ光源31aからのレーザ光を反射すればよいため、通常のミラーとしてもよい。
【0030】
XYスキャナ33は、例えば銀コートされた一対のガルバノミラー(図示略)を有しており、これらガルバノミラーの揺動角度を変化させ、ラスタスキャン方式で駆動されるようになっている。これにより、レーザ光源31からのレーザ光を試料A上において2次元的に走査させることができるようになっている。
【0031】
ダイクロイックミラー37は、レーザ光源31からのレーザ光を透過する一方、対物レンズ14により集光された試料Aからの光をミラー34に向けて反射するようになっている。これにより、ダイクロイックミラー37は、レーザ光源31からのレーザ光と、試料Aからの光とを分岐するようになっている。
【0032】
ミラー34は、ダイクロイックミラー37により反射された試料Aからの光を吸収フィルタ35に向けて反射するようになっている。
吸収フィルタ35は、ダイクロイックミラー37により反射された光のうち、試料Aからの光以外を遮断するようになっている。
【0033】
PMT(Photomultiplier Tube:光電子増倍管)36は、吸収フィルタ35を透過してきた試料Aからの光を光電変換して、試料Aの画像情報として電気信号をPC40に出力するようになっている。
【0034】
PC40は、パーソナルコンピュータであり、パラメータ入力部41と、細胞検出部42と、細胞状態判定部(判定部)43と、領域抽出部44とを機能として備えており、光学顕微鏡観察部20(CCD26)および走査型顕微鏡観察部30(PMT36)から出力された画像情報から画像を生成するようになっている。
【0035】
パラメータ入力部41は、例えばタッチパネルやキーボードやマウス等の入力装置であり、後述する試料A内の細胞を検出するための閾値や、試料Aの状態変化を判定するための基準となるパラメータが入力されるようになっている。
【0036】
ここで、試料Aの状態変化を判定するための基準となるパラメータは、例えば、試料Aの像を構成する画素群の輝度、画素数、色のいずれか、もしくはその組み合わせである。ここでは、パラメータ入力部41に、試料Aの状態変化を判定するための基準となるパラメータとして、試料Aの像を構成する画素群の輝度が入力されたものとして説明する。
【0037】
細胞検出部42は、光学顕微鏡観察部20(CCD26)により取得された試料Aの画像から、細胞を検出するようになっている。具体的には、細胞検出部42は、光学顕微鏡観察部20(CCD26)により取得された試料Aの画像のうち、予め設定された閾値以上の輝度値を有する画素のブロックを細胞として検出する。この際、画素のブロックが、所定の大きさ以上の場合にのみ、細胞として検出することとしてもよい。
【0038】
細胞状態判定部43は、光学顕微鏡観察部20(CCD26)により時間間隔をあけて取得された複数の画像を比較して、試料Aの状態変化を判定するようになっている。
具体的には、細胞状態判定部43は、光学顕微鏡観察部20(CCD26)により時間間隔をあけて取得された複数の画像について比較し、細胞検出部42により細胞として検出された領域に変化が生じている場合には、試料Aの状態が変化したと判定する。この際、細胞状態判定部43は、パラメータ入力部41に入力されたパラメータを用いて試料Aの状態変化を判定する。
【0039】
領域抽出部44は、細胞状態判定部43により状態変化が判定された領域を抽出するようになっている。
PC40は、領域抽出部44により抽出した領域の情報を走査型顕微鏡観察部30に出力し、この抽出した領域の画像を、走査型顕微鏡観察部30により高解像度で取得させるようになっている。
【0040】
上記の処理について、図2(a)および図2(b)に示す具体例を用いて以下に説明する。図2(a)および図2(b)は、タイムラプス観察を行った場合における試料A(ブロックA1)の画像を示しており、図2(a)は蛍光の発現した細胞がない状態、図2(b)は蛍光が発現した細胞が出現した状態を示している。
【0041】
図2(a)に示す状態においては、細胞状態判定部43により、試料Aの状態が変化したとは判断されないため、領域抽出部44により抽出される領域がない。その結果、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)により高解像度で取得させる画像はない。
【0042】
この図2(a)に示す状態から図2(b)に示す状態にとなった場合、細胞状態判定部43により、試料Aの状態が変化したと判断され、領域抽出部44により、状態変化が判定された領域、すなわち、新たに蛍光が発現した細胞B1,B2の領域が抽出される。そして、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)により、上記のように抽出された細胞B1,B2の領域の画像が高解像度で取得される。
【0043】
上記構成を有する観察装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る観察装置1においてタイムラプス観察を開始する場合には、まず、光路切替部16によりミラー17が、光学顕微鏡観察部20の光軸上から外される。これにより、光学顕微鏡観察部20(光源21)からの光を対物レンズ14(ミラー15)に向けて通過させる。
【0044】
この状態において、光源21から光が射出され、射出された光は、励起フィルタ22、ミラー23、ダイクロイックミラー24、光路切替部16、ミラー15を介して、対物レンズ14により試料A上に照射される。試料Aでは、観察対象である細胞に特異的に付着または発現する蛍光物質が励起され、発生した蛍光が対物レンズ14により集められる。
【0045】
この蛍光は、ミラー15、光路切替部16、ダイクロイックミラー24、吸収フィルタ25を介してCCD26に入射する。CCD26は、試料Aの画像を比較的低い解像度で取得するようになっており、試料Aからの蛍光を光電変換して、試料Aの画像情報として電気信号をPC40に出力する(第1の画像取得ステップ)。
【0046】
次に、細胞検出部42により、光学顕微鏡観察部20(CCD26)により取得された試料Aの画像から、細胞が検出される。
次に、細胞状態判定部43により、光学顕微鏡観察部20(CCD26)により時間間隔をあけて取得された複数の画像が比較され、試料Aの状態変化が判定される(判定ステップ)。具体的には、細胞状態判定部43により、時間間隔をあけて取得された複数の画像について比較され、細胞検出部42により細胞として検出された領域に変化が生じている場合には、試料Aの状態が変化したと判定される。
【0047】
次に、領域抽出部44により、細胞状態判定部43により状態変化が判定された領域が抽出される(領域抽出ステップ)。このように抽出された領域の情報は、走査型顕微鏡観察部30に出力され、この抽出された領域の画像が、走査型顕微鏡観察部30により高解像度で取得される(第2の画像取得ステップ)。
【0048】
この場合には、光路切替部16によりミラー17が、光学顕微鏡観察部20の光軸上に配置される。これにより、走査型顕微鏡観察部30からのレーザ光を対物レンズ14(ミラー15)に向けて反射させる。この状態において、レーザ光源31からレーザ光が射出され、射出されたレーザ光は、XYスキャナ33により2次元走査され、領域抽出部43により抽出された領域、すなわち細胞状態判定部42により状態変化が判定された領域に対して照射される。
【0049】
このように走査されたレーザ光は、光路切替部16(ミラー17)、ミラー15を介して、対物レンズ14により試料A上に照射される。試料Aでは、観察対象(細胞B)に特異的に付着または発現する蛍光物質が励起され、発生した蛍光が対物レンズ14により集められる。
【0050】
この蛍光は、ミラー15、光路切替部16(ミラー17)、XYスキャナ33、ダイクロイックミラー37、ミラー34、吸収フィルタ35を介してPMT36に入射する。PMT36は、試料Aの画像を高い解像度で取得するようになっており、試料Aからの蛍光を光電変換して、試料Aの画像情報として電気信号をPC40に出力する。PC40では、XYスキャナ33による試料A上の走査位置とPMT36から出力された画像情報とから、状態の変化した領域が高解像度で撮影された試料Aの画像が生成される。
【0051】
上記の処理について、図3から図6に示す具体例を用いて以下に説明する。
図4に示すように、例えばブロックA1について、光学顕微鏡観察部20(CCD26)により低解像度で画像を取得し、このブロックA1に状態の変化した細胞があるか否かを判定する。この際、例えば蛍光強度等の状態が変化した細胞B1,B2が検出された場合には、図5に示すように、細胞B1,B2の領域が、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)により高解像度で撮影される。
【0052】
具体的には、図3(a)から図3(c)に示すように、試料Aの状態の変化に応じて撮影が行われる。図3(a)から図3(c)は、タイムラプス観察を行った場合における試料A(ブロックA1)の画像を示しており、図3(a)から図3(c)に従って蛍光が発現した細胞が出現していく状態を示している。
【0053】
図3(a)に示す状態においては、細胞状態判定部43により、状態変化が判定された領域、すなわち、蛍光が発現した細胞B1,B2の領域が抽出される。そして、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)により、上記のように抽出された細胞B1,B2の領域の画像が高解像度で取得される。
【0054】
図3(b)に示す状態においては、細胞状態判定部43により、状態変化が判定された領域、すなわち、細胞B1,B2の領域に加えて、新たに蛍光が発現した細胞B3,B4の領域が抽出される。そして、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)により、上記のように抽出された細胞B1,B2,B3,B4の領域の画像が高解像度で取得される。
【0055】
図3(c)に示す状態においては、細胞状態判定部43により、状態変化が判定された領域、すなわち、細胞B1,B2,B3,B4の領域に加えて、新たに蛍光が発現した細胞B5,B6,B7の領域が抽出される。そして、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)により、上記のように抽出された細胞B1,B2,B3,B4,B5,B6,B7の領域の画像が高解像度で取得される。
【0056】
次に、図6に示すように、試料AのブロックA2についても、ブロックA1と同様の処理が行われ、状態の変化が検出されない場合には、高解像度での撮影を行わない。以降、同様に試料Aの他のブロックについても、ブロックA1,A2と同様の処理が順次行われ、試料A全体について状態の変化した領域が高解像度で撮影される。
【0057】
以上のように、本実施形態に係る観察装置1によれば、光学顕微鏡観察部20により試料Aの画像が時間間隔をあけて複数取得され、細胞状態判定部43によりこれらの画像が比較されて試料Aの状態変化が判定される。そして、領域抽出部44により状態変化が判定された領域が抽出され、この領域の画像が、走査型顕微鏡観察部30により光学顕微鏡観察部20よりも高解像度で取得される。
【0058】
このようにすることで、観察中に状態が変化した領域(例えば、細胞核内の微細構造が変化した細胞)を高解像度で撮影することができ、その状態変化の様子を観察することができる。また、観察中に状態が変化しない領域については高解像度で画像を取得する必要性を排除することができ、状態変化が判定された領域の画像のみを速やかに且つ高解像度で取得することができる。
【0059】
また、細胞状態判定部43が、パラメータ入力部41により入力されたパラメータを用いて試料Aの状態変化を判定することで、観察を行いたい対象に応じて、試料Aの状態変化を判定するための基準となるパラメータをパラメータ入力部41に入力して、その状態変化を観察することができ、様々な観察対象についての状態変化の観察が可能となる。なお、このパラメータは、図示しないメモリに予め記憶させておくこととしてもよい。
【0060】
また、光学顕微鏡観察部20を、例えばCCD等の2次元撮像素子とすることで、高速で試料Aの画像を取得することができ、取得した画像を試料Aの状態変化の判定用の画像として用いることができる。
【0061】
また、走査型顕微鏡観察部30をレーザ走査型顕微鏡とすることで、状態が変化した領域の画像を高解像度で取得することができる。また、レーザ光を励起光として試料Aからの蛍光をPMT36により検出することで、状態変化が判定された領域のみに励起光を照射し、観察中に状態が変化しない領域には励起光を照射しないようにすることができ、状態が変化しない領域の退色を防止することができる。
【0062】
なお、本実施形態において、試料Aの状態変化を判定するための基準となるパラメータとして、試料Aの像を構成する画素群の輝度を例に挙げて説明したが、これに代えて、試料Aの像を構成する画素群の輝度、画素数、色のいずれか、もしくはその組み合わせでよい。
【0063】
以下に、試料Aの状態変化を判定するための基準となるパラメータとして、色を採用した場合について説明する。
この場合には、例えば細胞の周期によって異なる色の蛍光を発する蛍光プローブ(例えばFUCCI)を試料Aに加え、図7(a)から図7(c)に示すように、試料Aの状態の変化、すなわち色の変化に応じて撮影が行われる。
【0064】
図7(a)から図7(c)は、タイムラプス観察を行った場合における試料A(ブロックA1)の画像を示しており、図7(a)から図7(c)に従って細胞周期が進行し、各細胞の色が変化していく状態を示している。ここでは、緑蛍光(S,G2,M期)の細胞を撮影対象とした例を説明する。
【0065】
図7(a)に示す状態においては、細胞B1〜B7のうち、緑蛍光を発する細胞は存在しないため、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)による撮影は行われない。
図7(b)に示す状態においては、細胞B3から緑蛍光が発生しており、この状態変化が細胞状態判定部43により判定され、細胞B3の領域が領域抽出部44により抽出される。そして、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)により、このように抽出された細胞B3の領域の画像が高解像度で取得される。
【0066】
図7(c)に示す状態においては、細胞B2,B3,B5,B6,B7から緑蛍光が発生しており、この状態変化が細胞状態判定部43により判定され、細胞B2,B3,B5,B6,B7の領域が領域抽出部44により抽出される。そして、走査型顕微鏡観察部30(PMT36)により、このように抽出された細胞B2,B3,B5,B6,B7の領域の画像が高解像度で取得される。
【0067】
上記のように、試料Aの状態変化を判定するための基準となるパラメータとして、色を採用した場合には、例えば細胞の周期によって異なる色の蛍光を発する蛍光プローブを試料Aに加えることで、その状態変化、すなわち細胞周期の進行をリアルタイムで観察することができる。
また、パラメータとして画素数を採用した場合には、例えば大きさの変化する細胞をリアルタイムで観察することができる。
【0068】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【符号の説明】
【0069】
A 試料
1 観察装置
10 顕微鏡本体
13 電動ステージ
14 対物レンズ
16 光路切替部
20 光学顕微鏡観察部(第1の画像取得部)
21 光源
24 ダイクロイックミラー
26 CCD(2次元撮像素子)
30 走査型顕微鏡観察部(第2の画像取得部)
31 レーザ光源
32 光合成部
33 XYスキャナ(走査部)
36 PMT(光検出部)
40 PC
41 パラメータ入力部
42 細胞検出部
43 細胞状態判定部(判定部)
44 領域抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料の画像を取得する第1の画像取得部と、
該第1の画像取得部により時間間隔をあけて取得された複数の画像を比較して、前記試料の状態変化を判定する判定部と、
該判定部により状態変化が判定された領域を抽出する領域抽出部と、
該領域抽出部により抽出された領域の画像を、前記第1の画像取得部よりも高解像度で取得する第2の画像取得部とを備える観察装置。
【請求項2】
前記試料の状態変化を判定するための基準となるパラメータを入力するパラメータ入力部を備え、
前記判定部が、前記パラメータ入力部により入力されたパラメータを用いて前記試料の状態変化を判定する請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
前記パラメータが、前記試料の像を構成する画素群の輝度、画素数、色のいずれか、もしくはその組み合わせである請求項2に記載の観察装置。
【請求項4】
前記第1の画像取得部が、2次元撮像素子である請求項1に記載の観察装置。
【請求項5】
前記第2の画像取得部が、
前記試料上でレーザ光を走査する走査部と、
該走査部による走査位置に対応付けて前記試料からの光を検出する光検出部とを有する請求項1に記載の観察装置。
【請求項6】
時間間隔をあけて試料の画像を複数撮影する第1の画像取得ステップと、
該第1の画像取得ステップにより時間間隔をあけて撮影された複数の画像を比較して、前記試料の状態変化を判定する判定ステップと、
該判定ステップにより状態変化が判定された領域を抽出する領域抽出ステップと、
該領域抽出ステップにより抽出された領域の画像を、前記第1の撮像ステップよりも高解像度で撮影する第2の画像取得ステップとを含む観察方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−118126(P2012−118126A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265441(P2010−265441)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】