説明

観察装置

【課題】高放射線環境により人間がアクセスできない箇所の点検や観察作業を行なう場合に、床面に塵埃が溜まってもスリップが生じず、又、安定した駆動力の供給や台車の円滑な走行を確保して、観察や点検を正確且つ確実に行なうことができるようにした観察装置を提供する。
【解決手段】台車本体1に駆動輪3及び駆動歯車4を設け、駆動歯車4を床側に敷設したラック式のガイドレール5に噛み合わせる。又、駆動輪3の台車走行方向前方において、駆動輪3の前方床面に空気を吹付けて駆動輪3の転動面の塵埃等を除去する空気吹付けノズルを設け、ガイドレール5におけるギア部5aの塵埃等を吸引するための吸引ノズルを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力施設内において高放射線環境により人間がアクセスできない箇所の点検や観察作業には、遠隔操作によって対象箇所付近を走行し、ITVカメラにより点検、観察を行なう自走式の観察装置が用いられている。而して、従来の観察装置は、ケーブルにより外部から供給される電力でモータを駆動し、モータからギヤやチェーン等の動力伝達手段を介し伝達された動力によりゴム製の駆動輪を回転させることにより走行する。
【0003】
観察装置ではないが、自走式の台車装置としては、例えば特許文献1、2がある。特許文献1は、ホイールハウジングに取付けられて駆動モータにより回転駆動される内側車輪及び外側車輪を有し、曲線路を有する走行路に敷設されたガイドレールに転動可能な対をなすガイドローラを、ガイドレールに転動させながら内側車輪及び外側車輪を回転駆動して走行路上を走行可能としたものである。
【0004】
特許文献2は、ガイドレールとガイドローラとの相対的案内構造を有する走行ガイドシステムにおいて、ガイドレールは、案内方向に平行して所要の幅の両側にローラ案内部を有するレール構成部材と、このレール構成部材を組合せて用いられる両側面にギアが形成されたギア部材とで構成され、キャリアには、ガイドレールの両側ローラ案内部に夫々少なくとも2組のガイドローラを当接させ、それらのうちの少なくとも1個のガイドローラ支持軸に、ガイドレールのギア部材のギアと噛み合うピニオンが付されたものである。
【特許文献1】特開2000−318603号公報
【特許文献2】特開平11−129896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の観察装置では、下部プレナム部のステンレス製の床面に溜まった塵埃等により、駆動輪がスリップし、観察や点検作業に支障を来たすことがあるうえ、点検、観察作業の際に操作員がITVカメラのモニタを見ながら遠隔操作により観察装置の走行方向を調整する必要があり、作業が煩わしいという問題がある。
【0006】
特許文献1の走行台車では、台車側に設けられたガイドローラをガイドレールに対し転動させるようにしており、台車の走行は台車側に設けられた車輪の駆動により行なっている。従って、特許文献1ではガイドレールは台車の走行方向の安定に寄与することはできるが、駆動力の安定のためには効果がない。
【0007】
又、特許文献2の走行台車では、台車の走行はガイドレールと噛み合わせたピニオンの駆動により行なわれるが、万一ピニオンの歯が欠けた場合には台車の走行が円滑に行なわれないおそれがある。
【0008】
従って、特許文献1、2の走行台車を高放射線環境により人間がアクセスできない箇所の点検や観察作業にそのままで適用することは好ましくない。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑み、高放射線環境により人間がアクセスできない箇所の点検や観察作業を行なう場合に、床面に塵埃が溜まってもスリップが生じず、又、安定した駆動力の供給や台車の円滑な走行を確保して、観察や点検を正確且つ確実に行なうことができるようにした観察装置を提供することを目的としてなしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1の観察装置は、観察手段を備えた台車本体に、駆動手段により駆動される駆動輪及び駆動歯車を設け、前記駆動輪を床面に対し転動し得るよう構成すると共に、前記駆動歯車を床側に敷設したラック状のガイドレールに転動可能に噛合させたものである。
【0011】
本発明の請求項2の観察装置は、台車本体に、駆動輪の台車走行方向前方において床面に向け気体を吹付けて前記駆動輪の転動面の塵埃等を除去する気体吹付け手段を設けたものであり、本発明の請求項3の観察装置は、台車本体に、駆動歯車の台車走行方向前方においてガイドレールにおけるギア部の塵埃等を吸引して除去する吸引手段を設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1〜3に記載の観察装置によれば、下記のごとき種々の優れた効果を奏し得る。
I)駆動輪が駆動されると共に、駆動歯車はガイドレールに対して転動することができるため、駆動輪が転動する床面に塵埃等があっても、安定して駆動力を伝達でき、その結果、観察装置はスリップすることなく確実に駆動されて円滑に走行でき、従って、高放射線環境により人間がアクセスできない箇所の点検や観察作業を行なう場合に、信頼性の高い作業を行なうことができる。
II)万が一、駆動歯車のギアが欠落しても或はガイドレールのギア部のギアが欠落しても、駆動輪が駆動されるため、観察装置は何等支障なく進行して信頼性の高い作業を行なうことができる。
III)気体吹付け手段からの気体が駆動輪の台車走行方向前方に吹付けられて駆動輪の転動面である床面の塵埃等が除去され、又、ガイドレールのギア部表面の塵埃等は吸引手段により吸引されて除去されるため、より一層確実にスリップすることなく円滑に走行でき、高放射線環境により人間がアクセスできない箇所の点検や観察作業を行なう場合に、作業の信頼性はより一層向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1〜図3は本発明の観察装置を実施する形態の一例であって、図中、1は台車本体、2は台車本体1に搭載されて観察や点検を行なうためのITVカメラ、3は台車本体1の幅方向両側に台車本体1の前後方向へ所定の間隔で配置されたゴム製の駆動輪、4は台車本体1の幅方向中間部に位置し、且つ、前後の駆動輪3,3間に配置された駆動歯車、5はステンレス製の床面に敷設され且つ上面に長手方向へ一定間隔でギア部5aを設けたラック式のガイドレールであり、ガイドレール5のギア部5aには駆動歯車4が噛み合っている。
【0014】
台車本体1の走行機構は図3に示されている。すなわち、台車本体1には左右2台の駆動輪用モータ6が搭載されており、駆動輪用モータ6により駆動される軸7を介して前後方向中間にある駆動輪3が駆動されるようになっている。又、軸7にはスプロケット8,9が取付けられている。
【0015】
前後の駆動輪3の軸10,11にはスプロケット12,13が取付けらており、スプロケット8,12には無端状のチェーン14が掛渡され、スプロケット9,13には無端状のチェーン15が掛渡されている。
【0016】
又、台車本体1には、駆動歯車用モータ16が搭載されており、駆動歯車用モータ16の軸17にはスプロケット18が取付けられている。更に、駆動歯車4の軸19にはスプロケット20が取付けられており、スプロケット18,20には無端状のチェーン21が掛渡されている。
【0017】
次に、上記した実施の形態の作動を説明する。
本図示例の自走式の観察装置により観察や点検を行なう際には、駆動輪用モータ6及び駆動歯車用モータ16が駆動される。このため、動力はスプロケットやチェーン等の動力伝達機構から中間及び前後の駆動輪3及び駆動歯車4に伝達されて駆動輪3及び駆動歯車4が駆動され、観察装置は床面22に対し転動する駆動輪3と、ガイドレール5に対し転動する駆動歯車4により走行駆動される。
【0018】
このように、駆動歯車4はガイドレール5に対して転動することができるため、駆動輪3が転動する床面に塵埃等があっても、走行用の動力を安定して伝達でき、その結果、観察装置はスリップすることなく確実に駆動されて円滑に走行できる。従って、高放射線環境により人間がアクセスできない箇所の点検や観察作業を行なう場合に、信頼性の高い作業を行なうことができる。又、万が一、駆動歯車4のギアが欠落しても或はガイドレール5のギア部5aのギアが欠落しても、観察装置は何等支障なく進行して作業を行なうことができる。
【0019】
図4、図5は本発明の観察装置の実施の形態の他の例である。而して、本図示例の観察装置の基本構成は、図1〜図3のものと同一であるが、本図示例においては、台車本体1には、走行時に駆動輪3前方において床面22に塵埃等がある場合に、この塵埃等を空気Aにより吹飛ばして除去し得るよう、下端が台車走行方向Dに対し前方の駆動輪3の前方に位置する空気吹付けノズル23が配置されている。空気吹付けノズル23には、図示してないが、配管を介し台車本体1に搭載されたエアブロー装置が接続されている。
【0020】
又、台車本体1には、走行時に駆動歯車4前方においてガイドレール5の上面、すなわち、ギア部5aに塵埃がある場合に、この塵埃を吸引して除去し得るよう、下端が駆動歯車4の台車走行方向Dに対し前方に位置する吸引ノズル24が配置されている。吸引ノズル24には、図示してないが、配管を介し台車本体1に搭載されたバキューム装置が接続されている。
【0021】
本図示例においては、観察装置が自走走行する際には、前記図示例と同様、駆動輪3、駆動歯車4が駆動され、同時にエアブロー装置からの空気Aが駆動輪3の台車走行方向D前方において空気吹付けノズル23から床面22に向い吹付けられて駆動輪3の転動面である床面の塵埃等が除去され、又、ガイドレール5のギア部5a表面の塵埃等は吸引ノズル24により吸引されて除去される。このため、本図示例によれば、観察装置は前記図示例よりもより一層確実にスリップすることなく円滑に走行でき、高放射線環境により人間がアクセスできない箇所の点検や観察作業を行なう場合に、作業の信頼性はより一層向上する。
【0022】
なお、本発明の観察装置においては、駆動輪が転動する床面には空気を吹付ける場合について説明したが、空気以外の気体を使用することも可能であること、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ること、等は勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の観察装置の実施の形態の一例を示す斜視図である。
【図2】図1の観察装置の駆動輪及び駆動歯車の部分の側面図である。
【図3】図1の観察装置の駆動輪及び駆動歯車の駆動機構の平面図である。
【図4】本発明の観察装置の実施の形態の他の例で、空気吹付けノズルの部分の側面図である。
【図5】本発明の観察装置の実施の形態の他の例で、吸引ノズルの部分の側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 台車本体
2 ITVカメラ(観察手段)
3 駆動輪
4 駆動歯車
5 ガイドレール
5a ギア部
6 駆動輪用モータ(駆動手段)
16 駆動歯車用モータ(駆動手段)
22 床面
23 空気吹付けノズル(気体吹付け手段)
24 吸引ノズル(吸引手段)
A 空気(気体)
D 台車走行方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察手段を備えた台車本体に、駆動手段により駆動される駆動輪及び駆動歯車を設け、前記駆動輪を床面に対し転動し得るよう構成すると共に、前記駆動歯車を床側に敷設したラック状のガイドレールに転動可能に噛合させたことを特徴とする観察装置。
【請求項2】
台車本体に、駆動輪の台車走行方向前方において床面に向け気体を吹付けて前記駆動輪の転動面の塵埃等を除去する気体吹付け手段を設けた請求項1に記載の観察装置。
【請求項3】
台車本体に、駆動歯車の台車走行方向前方においてガイドレールにおけるギア部の塵埃等を吸引して除去する吸引手段を設けた請求項1又は2に記載の観察装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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