説明

観測装置および観測方法

【課題】可能な限り簡単な構造のナノデバイスから多くの情報量を読み出すことが可能な、高機能、高感度の観測装置を提供する。
【解決手段】金属性カーボンナノチューブ101の両端に電極102、103が接続され、これと平行に接地電極104が形成される。電極102、103は、それぞれプローブ針106、107と接触し、同軸ケーブル108により高周波測定部105と接続している。高周波電源109が、特定範囲の周波数の信号を出力し、反射波・透過波検出回路110が、その反射波および透過波を測定する。制御部111は、高周波電源109からの信号の振幅と反射波・透過波検出回路110の検出結果からSパラメータの周波数依存性を測定し、その結果に基づいて、吸着分子112を同定し、吸着分子112の量を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノデバイスを有する観測装置および観測方法に関し、特には、カーボンナノチューブ等のナノ構造体を有する観測装置および観測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来この種のナノデバイスを有する観測装置は、例えば、特許文献1(特開2003−227808号公報)に記載されたような構造をとっていた。
【0003】
この観測装置(センサー)では、図11に示すように、複数のカーボンナノチューブ1103が、電極1101と電極1102の間に設けられており、電極1101および電極1102には、直流電源1105と電流計1106が接続されている。
【0004】
カーボンナノチューブ1103に、ある吸着分子1104が吸着すると、カーボンナノチューブ1103の電気伝導特性が変化する。この観測装置は、その電気伝導特性の変化を、直流電流の変化として読み出す。
【0005】
また、特許文献2(特開2004−347532号公報)にも、ナノデバイスを有する観測装置(センサー)が記載されている。
【0006】
この観測装置では、図12に示すように、カーボンナノチューブ1203が、電界効果型トランジスタあるいは単一電子型トランジスタのチャネルとして用いられ、ゲート電極1206には、ターゲット分子1204が付着し易いように、高分子プローブ1205が形成されている。また、直流電源1207と電流計1208が、ドレイン電極1201とソース電極1202に接続されている。
【0007】
ターゲット分子1204が高分子プローブ1205に吸着すると、電荷の移動によってゲート電位が変化する。このため、電流計1208は、ターゲット分子1204が高分子プローブ1205に吸着したことを、ドレイン電流の変化として読み出すことができる。
【0008】
なお、非特許文献1(K. Narita and T. Kushta, "An Accurate Experimental Method for Characterizing Transmission Lines Embedded in Multilayer Printed Circuit Boards," IEEE Transactions on Advanced Packaging, Vol.29, No.1, pp.114-121, 2006.)には、長さの異なる2つの伝送線路のパラメータから誤差を取り除く方法が記載されている。
【特許文献1】特開2003−227808号公報
【特許文献2】特開2004−347532号公報
【非特許文献1】K. Narita and T. Kushta, "An Accurate Experimental Method for Characterizing Transmission Lines Embedded in Multilayer Printed Circuit Boards," IEEE Transactions on Advanced Packaging, Vol.29, No.1, pp.114-121, 2006.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来方法においては、ナノ構造体を有するデバイスの状態の変化を直流電流で観測する方法をとっているため、読み出される情報量が少なく、高機能、高感度な観測装置を形成するのが困難であるという課題があった。
【0010】
例えば、図11に示したセンサーは、カーボンナノチューブに分子が吸着した際の電気伝導特性の変化を、直流電流の変化として観測するので、その変化の原因が、吸着分子の量に起因するのか、または、吸着分子の種類に起因するのか、区別がつけにくい。
【0011】
したがって、この観測装置は、あらかじめ吸着分子の種類が分かっている場合に、その量を検知するという用途にしか使用できず、使用用途が限定されてしまうという問題点がある。
【0012】
また、図12に示した観測装置の場合、あるターゲットの分子が吸着したことを判定するためには、あらかじめターゲット分子のみを吸着するプローブ高分子をゲート電極に付着させておく必要がある。そのためには、プローブ分子を特定の方向に配向させてナノ構造体に付着させる技術が必要である。
【0013】
通常、この種の技術は複雑で高度なため、実用上使用するのが困難である場合が多い。さらに、読出しの際の直流電流によって、例えば発熱等によりデバイスの系の状態を大きく乱してしまうため、系の本来の状態を読出すことが困難、つまり高精度の装置を形成できないという課題もある。
【0014】
[発明の目的]
本発明の目的は、簡単な構造のナノデバイスから多くの情報量を読み出すことが可能な、高機能、高感度の観測装置を提供することである。
【0015】
また、読出しの際に、デバイスの系の状態に与える擾乱を最小限に抑えることにより、系の本来の状態を正確に読出すことを目的としている。例えば、簡単な構造のカーボンナノチューブデバイスにより、分子の種類と量を同時に高精度で特定できる分子センサー等を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために、本発明の観測装置は、ナノ構造体を有するデバイスと、前記ナノ構造体に直接または絶縁膜を介して接続される複数の端子と、少なくとも1つの前記端子に特定周波数の信号を出力する信号出力部と、前記信号出力部が出力した特定周波数の信号の前記端子による反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って他の端子から出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す検出部と、前記信号出力部が出力する特定周波数の信号の振幅を設定するとともに、前記特定周波数の信号の振幅と、前記検出部が読み出した振幅および位相差と、に基づいて、前記デバイスの状態を検出する制御部と、を含む。
【0017】
また、本発明の観測方法は、ナノ構造体を有するデバイスと、前記ナノ構造体に直接または絶縁膜を介して接続される複数の端子と、を含む観測装置が行う観測方法であって、少なくとも1つの前記端子に特定周波数の信号を出力する信号出力ステップと、前記特定周波数の信号の前記端子による反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って他の端子から出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す検出ステップと、前記特定周波数の信号の振幅を設定するとともに、前記特定周波数の信号の振幅と、前記読み出された振幅および位相差と、に基づいて、前記デバイスの状態を検出する観測ステップと、を含む。
【0018】
上記発明によれば、ナノ構造体を有するデバイスの状態は、ナノ構造体と直接または間接的に接続している端子に出力された特定周波数信号の振幅と、その特定周波数信号の反射波および透過波の両方あるいはどちらか一方の振幅および特定周波数信号との位相差と、に基づいて検出される。
【0019】
端子の個数をnとすると、検出部にて検出されるパラメータ(反射波および透過波)は、最大n×n個あり、それぞれに振幅と位相の情報がある。
【0020】
また、例えば、端子に出力される信号の周波数を、ある周波数範囲で変化させることにより、デバイスの系の周波数応答特性(例えば、挿入損失の周波数応答特性、および、電力損失の周波数特性)が得られる。
【0021】
このため、直流電流による読出しに比べて、はるかに多くの情報が得られる。
【0022】
また、例えば、ナノ構造体に直接接続されていない端子からでも、信号を入出力することが可能なので、観測に起因する系の状態の乱れを最小限に抑えることが可能である。
【0023】
特に、ナノ構造体を用いたデバイスは、サイズが小さく、従来の直接直流電流を与える方法では、デバイスの状態が大きく変化してしまい、高精度で、デバイスの状態を読出すことが困難であるが、上記発明では、信号の振幅を非常に小さくすることで、その問題を回避することができる。
【0024】
なお、前記ナノ構造体は、ナノワイアであることが望ましい。
【0025】
また、前記ナノワイアは、少なくとも1種類以上の分子を吸着し、前記制御部は、前記デバイスの状態の変化に基づいて、前記分子の種類または量を特定することが望ましい。
【0026】
上記発明によれば、分子の種類または量を特定することが可能になる。
【0027】
また、前記デバイスは、前記ナノワイアで形成された伝送線路であり、前記複数の端子は、第1および第2の入出力端子であり、前記伝送路線の一端には前記第1の入出力端子、該伝送路線の他端には前記第2の入出力端子が接続され、前記信号出力部は、前記第1および第2の入出力端子に対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記第1および第2の入出力端子による反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノワイアを通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出すことが望ましい。
【0028】
上記発明によれば、ナノ構造体を有するデバイスとして、伝送線路という簡単な構造のデバイスを用いることができる。
【0029】
また、前記デバイスは、ゲート、ドレインおよびソースを有する電界効果トランジスタであり、前記複数の端子は、前記ゲートと前記ドレインであり、前記ソースに接地端子が接続され、前記ドレインと前記ソースの間に前記ナノ構造体が設けられ、前記ナノ構造体と前記ゲートの間に絶縁膜が設けられ、前記信号出力部は、前記ゲートおよび前記ドレインに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記ゲートおよび前記ドレインによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出すことが望ましい。
【0030】
上記発明によれば、ナノ構造体を有するデバイスとして、電界効果トランジスタという簡単な構造のデバイスを用いることができる。
【0031】
また、前記デバイスは、ゲート、ドレインおよびソースを有する電界効果トランジスタであり、前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、前記ドレインと前記ソースの間に前記ナノ構造体が設けられ、前記ナノ構造体と前記ゲートの間に絶縁膜が設けられ、前記信号出力部は、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出すことが望ましい。
【0032】
上記発明によれば、ナノ構造体を有するデバイスとして、電界効果トランジスタという簡単な構造のデバイスを用いることができる。
【0033】
また、前記デバイスは、ゲート、ドレイン、ソースおよびアイランドを有する単一電子トランジスタであり、前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、前記アイランドは、前記ナノ構造体であり、前記信号出力部は、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出すことが望ましい。
【0034】
上記発明によれば、高感度化が可能となる。
【0035】
また、前記ナノワイアは、カーボンナノチューブであることが望ましい。
【0036】
また、前記デバイスは、チャネルとなる伝導分子、ゲート、ドレインおよびソースを有する分子トランジスタであり、前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、
前記伝導分子は、前記ナノ構造体であり、前記信号出力部は、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出すことが望ましい。
【0037】
上記発明によれば、更なる高感度化が可能となる。例えば、分子1個の検出が可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、簡単な構造のナノデバイスから多くの情報量を読み出すことにより、高機能、高感度の観測装置を得ることができる。また読出しの際にデバイスの系の状態に与える擾乱を最小限に抑えることにより、系の本来の状態を高精度で読出すことが可能となる。例えば分子種の同定が容易に可能で、検出感度が非常に高い分子センサーを、特殊な製造方法を用いずに形成できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0040】
図1は、本発明の一実施形態の観測装置を模式的に示した模式図である。図2は、測定した挿入損失と周波数の関係、図3は、電力損失と周波数の関係を表した説明図である。
【0041】
図1において、観測装置は、金属性カーボンナノチューブ101と、電極102と、電極103と、接地電極104と、高周波測定部105と、プローブ針106と、プローブ針107と、同軸ケーブル108とを含む。高周波測定部105は、高周波電源109と、反射波・透過波検出回路110と、制御部111とを含む。
【0042】
金属性カーボンナノチューブ101は、ナノ構造体およびナノワイアの一例であり、また、伝送線路であるデバイスの一例である。金属性カーボンナノチューブ101は、吸着分子112が吸着すると、電気伝導特性が変化する。なお、金属性カーボンナノチューブ101は、少なくとも1種類以上の分子を吸着する。
【0043】
金属性カーボンナノチューブ101の一端には、電極102が接続されており、金属性カーボンナノチューブ101の他端には、電極103が接続されており、また、金属性カーボンナノチューブ101と平行に、接地電極104が形成されている。
【0044】
電極102および電極103は、入出力端子の一例であり、それぞれプローブ針106およびプローブ針107と接触し、同軸ケーブル108を介して、高周波測定部105につながれている。
【0045】
高周波測定部105は、高周波信号(例えば、100MHzから20GHzの信号)を用いて、金属性カーボンナノチューブ101の状態を検出する。
【0046】
高周波電源109は、信号出力部の一例であり、少なくとも電極102または電極103に特定周波数(例えば、100MHzから20GHz)の高周波信号を出力する。
【0047】
本実施形態では、高周波電源109は、電極102に高周波信号a1を提供し、その後、電極103に高周波信号a2を提供する。なお、高周波電源109は、まず、電極103に高周波信号a2を提供し、その後、電極102に高周波信号a1を提供してもよい。
【0048】
反射波・透過波検出回路110は、検出部の一例であり、高周波電源109から出力された高周波信号の電極102および電極103による反射波と、高周波信号が金属性カーボンナノチューブ101を通って電極103および電極102から出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、高周波信号との位相差を読み出す。
【0049】
なお、金属性カーボンナノチューブ101は、吸着している分子112の種類および量に応じて電気導電特性が変化し、その特性の変化が、反射波と透過波の振幅および位相に影響を与える。
【0050】
反射波・透過波検出回路110は、例えば、振幅検出部(不図示)と位相差検出部(不図示)を含む。
【0051】
振幅検出部は、反射波と透過波の振幅を検出する。
【0052】
位相差検出部は、高周波信号a1とその反射波b1との位相差、高周波信号a1とその透過波b2との位相差、高周波信号a2とその反射波b2との位相差、および、高周波信号a2とその透過波b1との位相差を検出する。
【0053】
制御部111は、例えばCPUであり、高周波電源109が出力する高周波信号の振幅を設定するとともに、その高周波信号の振幅と、反射波・透過波検出回路110が読み出した振幅および位相差と、に基づいて、金属性カーボンナノチューブ101の状態を検出する。
【0054】
ここで、高周波信号a1、高周波信号a2、反射波または透過波b1、および、透過波または反射波b2は、振幅と位相を含む複素数で表される。
【0055】
制御部111は、高周波信号の振幅と、反射波・透過波検出回路110が読み出した振幅および位相差と、に基づいて、高周波信号a1、高周波信号a2、反射波または透過波b1、および、透過波または反射波b2を複素数で表す。
【0056】
制御部111は、それらa1、a2、b1およびb2を用いて、S11=b1/a1、S21=b2/a1、S12=b1/a2、S22=b2/a2で定義されるSij(i,j=1,2)を演算する。
【0057】
Sijは、通常、Sパラメータと呼ばれ、S11、S22は反射のパラメータであり、S21、S12は透過のパラメータである。
【0058】
制御部111は、ユーザの指示に基づいて、高周波電源109が出力する高周波信号の周波数を特定範囲内で変更していき、Sパラメータの周波数依存性を測定する。
【0059】
次に、動作を説明する。
【0060】
制御部111は、所定振幅の高周波信号a1の周波数を特定範囲(例えば、100MHzから20GHz)内で周期的に変更しながら出力する動作を、高周波電源109に実行させる。
【0061】
反射波・透過波検出回路110は、高周波信号a1の周波数の変更周期に合わせて、反射波b1および透過波b2を検出する。なお、反射波・透過波検出回路110は、高周波信号a1の周波数の変更周期を、制御部111から取得してもよいし、ユーザから受け付けてもよい。
【0062】
反射波・透過波検出回路110は、周波数ごとに、反射波b1および透過波b2の振幅と、高周波信号a1と反射波b1との位相差と、高周波信号a1と透過波b2との位相差と、を検出し、周波数ごとに、その検出結果を制御部111に提供する。
【0063】
制御部111は、反射波・透過波検出回路110から検出結果を受け付けると、周波数ごとに、高周波信号a1、反射波b1および透過波b2を、振幅と位相にて規定される複素数に変換する。このとき、制御部111は、例えば、高周波信号a1の位相を基準位相として、高周波信号a1、反射波b1および透過波b2の位相を確定する。
【0064】
制御部111は、複素数で表された高周波信号a1、反射波b1および透過波b2を用いて、周波数ごとに、S11およびS21を演算する。
【0065】
続いて、制御部111は、所定振幅の高周波信号a2の周波数を特定範囲(例えば、100MHzから20GHz)内で周期的に変更しながら出力する動作を、高周波電源109に実行させる。
【0066】
反射波・透過波検出回路110は、高周波信号a2の周波数の変更周期に合わせて、反射波b2および透過波b1を検出する。なお、反射波・透過波検出回路110は、高周波信号a2の周波数の変更周期を、制御部111から取得してもよいし、ユーザから受け付けてもよい。
【0067】
反射波・透過波検出回路110は、周波数ごとに、反射波b2および透過波b1の振幅と、高周波信号a2と反射波b2との位相差と、高周波信号a2と透過波b1との位相差と、を検出し、周波数ごとに、その検出結果を制御部111に提供する。
【0068】
制御部111は、反射波・透過波検出回路110から検出結果を受け付けると、周波数ごとに、高周波信号a2、反射波b2および透過波b1を、振幅と位相にて規定される複素数に変換する。このとき、制御部111は、例えば、高周波信号a2の位相を基準位相として、高周波信号a2、反射波b2および透過波b1の位相を確定する。
【0069】
制御部111は、複素数で表された高周波信号a2、反射波b2および透過波b1を用いて、周波数ごとに、S12およびS22を演算する。
【0070】
図2は、制御部111が得たSパラメータのうち、S21の絶対値を、周波数の関数として示した説明図である。S21の絶対値は、電極102から電極103に伝送する波の挿入損失を示す。なお、S21の絶対値は、制御部111にて算出される。
【0071】
図2の実線は、カーボンナノチューブ101に吸着分子112が無い場合の挿入損失の周波数依存性を表す。この場合、挿入損失は、周波数の増加に伴い単調に減少、つまり損失が単調に増加する。
【0072】
図2の点線は、カーボンナノチューブ101に吸着分子112が吸着した場合の挿入損失の周波数依存性を表す。この場合、周波数の変化に伴うカーボンナノチューブ101の電気伝導特性の変化分に加え、吸着分子112に特有の周波数、この場合にはf1とf2において、特に損失が増加した特性が得られる。例えば、水分子がカーボンナノチューブ101に吸着された場合、2.5GHzおよび10GHz付近の損失が増加する。
【0073】
図3は、電力損失(1−|S212−|S112)の周波数依存性を示した説明図である。なお、電力損失は、制御部111にて算出される。
【0074】
図3を参照すると、図2の点線で示した特性がさらに明確になる。つまり、f1とf2において、電力損失のピーク(共鳴周波数)が観測され、このピークの存在が分子の吸着に相当することが分かる。
【0075】
このため、あらかじめ種類が分かっている種々の分子をカーボンナノチューブ101に吸着させて共鳴周波数を調べておき、その分子名と共振周波数とを関連づけたデータベースを制御部111内に作成しておくことにより、制御部111は、そのデータベースを参照することによって、電力損失のピーク(共鳴周波数)、すなわち、カーボンナノチューブ101の状態の変化から、吸着分子105の同定を行うことが可能となる。
【0076】
さらに、各ピークのQ値、つまり、Q1=f1/Δf1、Q2=f2/Δf2から、吸着されている分子の量に関する情報が得られる。具体的には、Q値と吸着された分子の量の間には、Q値が大きくなるにつれて、吸着された分子の量が多くなるという関係がある。
【0077】
よって、制御部111は、Q値(カーボンナノチューブ101の状態の変化)を算出することによって、吸着された分子の量を求めることが可能となる。
【0078】
本実施形態では、高周波信号の振幅が0.1V以下であっても、高精度で、デバイス(金属性カーボンナノチューブ101)の状態を検出することが可能である。
【0079】
その理由は、以下のとおりである。高周波の場合、反射波・透過波検出回路110は、受信周波数を高周波電源109からの高周波信号に同調させて、反射波および透過波を受信することにより、余分な周波数成分のノイズを容易にキャンセルでき、高周波信号の振幅が0.1V以下であっても、高感度で反射波および透過波を受信できるからである。
【0080】
このため、金属性カーボンナノチューブ101に流れる電流を抑えることで発熱によるデバイスの特性の変化を最小限に抑えることができる。
【0081】
また、接地電極104が設けられているので、金属性カーボンナノチューブ101と接地電極104とでコプレーナ型の伝送線路が形成され、伝送線路の特性インピーダンスを伝送線路の場所によらず均一にでき、外部からのノイズを防止することが可能になる。
【0082】
本実施形態によれば、金属性カーボンナノチューブ101(ナノ構造体)を有する伝送線路(デバイス)の状態は、高周波電源109が出力した高周波信号の振幅と、その高周波信号の反射波および透過波の両方あるいはどちらか一方の振幅および高周波信号との位相差と、に基づいて検出される。
【0083】
反射波・透過波検出回路110にて検出される反射波および透過波には、振幅と位相の情報がある。
【0084】
また、高周波信号の周波数を、ある周波数範囲で変化させることにより、デバイスの系の周波数応答特性(例えば、挿入損失の周波数応答特性、および、電力損失の周波数特性)が得られる。
【0085】
このため、直流電流による読出しに比べて、はるかに多くの情報が得られる。
【0086】
特に、ナノ構造体を用いたデバイスは、サイズが小さく、従来の直接直流電流を与える方法では、デバイスの状態が大きく変化してしまい、高精度で、デバイスの状態を読出すことが困難であるが、本実施形態では、高周波信号の振幅を非常に小さくすることで、その問題を回避することができる。
【0087】
(発明の他の実施の形態)
図4は、本発明の他の実施形態の観測装置を模式的に示した模式図である。図4において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0088】
図4に示した観測装置が、図1に示した観測装置と異なる点は、金属性カーボンナノチューブ101に、電極102、電極103および電極401の3つの電極が設けられている点である。以下、図1に示した観測装置と異なる点を中心に、図4に示した観測装置を説明する。
【0089】
図4において、電極102と電極103の間のカーボンナノチューブ101の長さがL1、電極103と電極401の間のカーボンナノチューブ101の長さがL2となっている。
【0090】
まず、電極102と電極103にそれぞれプローブ針106とプローブ針107を接触させた状態で、高周波測定部105が、上記と同様にSパラメータ(S11、S22、S21およびS12)を演算する。これらのSパラメータをSパラメータセット1と称する。
【0091】
次に、電極103と電極401にそれぞれプローブ針106とプローブ針107を接触させた状態で、高周波測定部105が、上記と同様にSパラメータ(S11、S22、S21およびS12)を演算する。これらのSパラメータをSパラメータセット2と称する。
【0092】
この実施形態の利点は、制御部111が、Sパラメータセット1および2から、極めて正確にカーボンナノチューブ101の損失を抽出できることである。
【0093】
例えば、制御部111が、長さの異なる伝送線路のSパラメータから、その誤差を取り除き、伝送線路部分の挿入損失を抽出する方法として、上述した非特許文献1に記載の方法を使えばよい。
【0094】
つまり、カーボンナノチューブ101と、電極102、電極103および電極401との接触抵抗や、プローブ針106およびプローブ針107と、電極102、電極103および電極401との接触抵抗など、測定値のSパラメータには寄生誤差が含まれるために、挿入損失および電力損失に誤差が含まれ、吸着分子による損失が見えにくくなってしまうことがある。
【0095】
しかしながら、上記の方法で寄生誤差をとりのぞくことにより、高感度で吸着分子を検出できるようになる。
【0096】
(実施例1)
図5は、本発明の実施例1の観測装置を示した模式図、図6はその断面図である。図5および図6において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0097】
図5および図6は、伝送線路として使用される金属性カーボンナノチューブ101を、高濃度シリコン基板501上に形成した例を示している。
【0098】
金属性カーボンナノチューブ101を高濃度シリコン基板501上に形成する方法は、以下の通りである。
【0099】
まず、基板501上に、酸化シリコン膜504が形成される。その後、金属性カーボンナノチューブ101が、酸化シリコン膜504上にCVD法あるいは塗布法により形成される。その後、金属端子502および503が形成される。その後、金属性カーボンナノチューブ101下の酸化シリコン膜504が、エッチングにより除去され、カーボンナノチューブ101と高濃度シリコン基板501からなる伝送線路(デバイス)が形成される。
【0100】
金属電極502および金属電極503は、同軸ケーブル108により、高周波測定部105に接続され、高周波測定部105によって、Sパラメータの周波数依存性が測定される。
【0101】
本実施例によれば、ナノ構造体を有するデバイスとして、伝送線路という簡単な構造のデバイスを用いることができる。
【0102】
また、金属性カーボンナノチューブ101が架橋型に形成されるため、金属性カーボンナノチューブ101とその下の絶縁物との相互作用がなくなり、ノイズを減少でき、感度を向上することが可能となる。
【0103】
(実施例2)
図7は、本発明の実施例2の観測装置を示した模式図である。図7において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0104】
実施例2の観測装置では、半導体カーボンナノチューブ701を有するバックゲート型電界効果トランジスタ(デバイス)が、高濃度シリコン基板702に形成されている。
【0105】
高濃度シリコン基板702に、半導体カーボンナノチューブ701を有するバックゲート型電界効果トランジスタを形成する方法は、以下の通りである。
【0106】
まず、高濃度シリコン基板上702に、酸化シリコン膜703が形成される。その後、半導体カーボンナノチューブ701が、酸化シリコン膜703上にCVD法あるいは塗布法により形成される。その後、金属電極704および金属電極705が形成され、金属電極704はソース電極として、金属電極705はドレイン電極として用いられる。
【0107】
ゲート電位の直流電圧Vgは、高濃度シリコン基板702に与えられ、ドレイン電位Vdは、バイアス・ティー706を介してドレイン電極705に与える。バイアス・ティー706は、高周波信号に影響を与えずに直流電圧を印加するデバイスである。
【0108】
図7に示すように、半導体カーボンナノチューブ701は、金属電極704および金属電極705の間に設けられ、半導体カーボンナノチューブ701とゲート(高濃度シリコン基板702)の間に酸化シリコン膜(絶縁膜)703が設けられている。
【0109】
金属電極704および金属電極705は、同軸ケーブル108により、高周波測定部105に接続され、高周波測定部105によって、Sパラメータの周波数依存性が上記と同様に測定される。
【0110】
本実施例によれば、ナノ構造体を有するデバイスとして、電界効果トランジスタという簡単な構造のデバイスを用いることができる。
【0111】
また、バックゲート型のため、構造が単純で、金属によるゲート電極を形成する工程を省略することができる。
【0112】
(実施例3)
図8は、本発明の実施例3の観測装置を示した模式図である。図8において、図1および図7に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0113】
実施例3の観測装置では、半導体カーボンナノチューブ701を有する電界効果トランジスタ(デバイス)が、シリコン基板801上に作成されている。
【0114】
シリコン基板801に、半導体カーボンナノチューブ701を有する電界効果トランジスタを形成する方法は、以下の通りである。
【0115】
シリコン基板801上に、酸化シリコン膜802が形成される。その後、ゲート電極803とゲート絶縁膜804が形成される。次に、半導体カーボンナノチューブ701が、ゲート絶縁膜804上にCVD法あるいは塗布法により形成される。その後、金属電極805および金属電極806が形成され、金属電極805がソース電極として、金属電極806がドレイン電極として用いられる。
【0116】
直流電圧のゲート電位Vgは、バイアス・ティー807を介して、ゲート電極803に与えられ、直流電圧のドレイン電位Vdは、バイアス・ティー808を介して、ドレイン電極806に与えられる。バイアス・ティー807およびバイアス・ティー808は、高周波信号に影響を与えずに直流電圧を印加するデバイスである。金属電極805は接地される。
【0117】
図8に示したように、半導体カーボンナノチューブ701は、金属電極805および金属電極806の間に設けられ、半導体カーボンナノチューブ701とゲート電極803の間にゲート絶縁膜804が設けられている。
【0118】
ゲート電極803とドレイン電極806は、同軸ケーブル108により高周波測定部105に接続され、高周波測定部105によって、Sパラメータの周波数依存性が上記と同意ように測定される。
【0119】
本実施例によれば、ナノ構造体を有するデバイスとして、電界効果トランジスタという簡単な構造のデバイスを用いることができる。
【0120】
また、ゲート電極803を設ける必要があるが、バックゲート型(数GHzまで)と異なり、高い周波数(100GHzまで)までの測定となる。
【0121】
また、ナノ構造体に直接接続されていない端子からでも、高周波信号を入出力することが可能なので、観測に起因する系の状態の乱れを最小限に抑えることが可能である。
【0122】
(実施例4)
図9は、本発明の実施例4の観測装置を示した模式図である。図9において、図1および図7に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0123】
実施例4の観測装置では、半導体カーボンナノチューブ701を有する単一電子トランジスタ(デバイス)が、高濃度シリコン基板901上に形成されている。
【0124】
高濃度シリコン基板901に、半導体カーボンナノチューブ701を有する単一電子トランジスタを形成する方法は、以下の通りである。
【0125】
高濃度シリコン基板901上に、酸化シリコン膜902が形成される。その後、半導体カーボンナノチューブ701が、アイランドとして、酸化シリコン膜902上にCVD法あるいは塗布法により形成される。その後、トンネル絶縁膜903が形成される。その後、金属電極904および金属電極905が形成され、金属電極904がソース電極として、金属電極905がドレイン電極として用いられる。
【0126】
ゲート電位の直流電圧Vgは、高濃度シリコン基板901に与えられ、ドレイン電位Vdは、バイアス・ティー906を介して、ドレイン電極905に与える。バイアス・ティー906は、高周波信号に影響を与えずに直流電圧を印加するデバイスである。
【0127】
金属電極904および金属電極905は、同軸ケーブル108により高周波測定部105に接続され、高周波測定部105によって、Sパラメータの周波数依存性が上記と同様に測定される。
【0128】
本実施例によれば、単一電子トランジスタ構造を採用しているので、高感度化が可能となる。
【0129】
(実施例5)
図10は、本発明の実施例5の観測装置を示した模式図である。図10において、図1に示したものと同一のものには同一符号を付してある。
【0130】
実施例5の観測装置では、分子トランジスタ(デバイス)が、高濃度シリコン基板1001上に形成されている。
【0131】
高濃度シリコン基板1001に、分子トランジスタを形成する方法は、以下の通りである。
【0132】
高濃度シリコン基板1001上に、酸化シリコン膜1002が形成される。その後、分子トランジスタのチャネルとなる伝導分子1003が、酸化シリコン膜1002上に形成される。なお、伝導分子1003は、ナノ構造体(カーボンナノチューブ)である。その後、金属電極1004および金属電極1005が形成され、金属電極1004がソース電極として、金属電極1005がドレイン電極として用いられる。
【0133】
ゲート電位の直流電圧Vgは、高濃度シリコン基板1001に与えられ、ドレイン電位Vdは、バイアス・ティー1006を介して、ドレイン電極1005に与えられる。バイアス・ティー1006は、高周波信号に影響を与えずに直流電圧を印加するデバイスである。
【0134】
金属電極1004および金属電極1005は、同軸ケーブル108により高周波測定部105に接続され、高周波測定部105によって、Sパラメータの周波数依存性が上記と同様に測定される。
【0135】
本実施例によれば、デバイスとして、分子トランジスタが用いられているため、極めて高感度の観測装置を提供できる。例えば、分子1個の検出が可能となる。
[産業上の利用可能性]
本発明の活用例として、微量の物質のセンシング、物質の同定が可能なことから、ガスセンサー、危険物質の検知器、人工臭覚器等に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の一実施形態の観測装置を示した説明図である。
【図2】本発明の観測装置の読出し結果(挿入損失の周波数依存性)の一例を示した説明図である。
【図3】本発明の観測装置の読出し結果(電力損失の周波数依存性)の一例を示した説明うである。
【図4】本発明の他の実施形態の観測装置を示した説明図である。
【図5】本発明の実施例1の観測装置を示した模式図である。
【図6】本発明の実施例1の観測装置の断面図である。
【図7】本発明の実施例2の観測装置を示した模式図である。
【図8】本発明の実施例3の観測装置を示した模式図である。
【図9】本発明の実施例4の観測装置を示した模式図である。
【図10】本発明の実施例5の観測装置を示した模式図である。
【図11】従来のカーボンナノチューブを用いたセンサーを示した模式図である。
【図12】従来のカーボンナノチューブを用いたセンサーを示した模式図である。
【符号の説明】
【0137】
101、701 カーボンナノチューブ
102、103、401、502、503、704、705、803、805、806、904、905 電極
104 接地電極
105 高周波測定部
106、107 プローブ針
108 同軸ケーブル
109 高周波電源
110 反射波・透過波検出回路
111 制御部
112 吸着分子
501、702、801、901、1001 シリコン基板
504、703、802、902、1002 酸化シリコン膜
706、807、808、906、1006 バイアス・ティー
804 ゲート絶縁膜
903 トンネル絶縁膜
1003 伝導分子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造体を有するデバイスと、
前記ナノ構造体に直接または絶縁膜を介して接続される複数の端子と、
少なくとも1つの前記端子に特定周波数の信号を出力する信号出力部と、
前記信号出力部が出力した特定周波数の信号の前記端子による反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って他の端子から出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す検出部と、
前記信号出力部が出力する特定周波数の信号の振幅を設定するとともに、前記特定周波数の信号の振幅と、前記検出部が読み出した振幅および位相差と、に基づいて、前記デバイスの状態を検出する制御部と、を含む観測装置。
【請求項2】
前記ナノ構造体は、ナノワイアである、請求項1に記載の観測装置。
【請求項3】
前記ナノワイアは、少なくとも1種類以上の分子を吸着し、
前記制御部は、前記デバイスの状態の変化に基づいて、前記分子の種類または量を特定する、請求項2に記載の観測装置。
【請求項4】
前記デバイスは、前記ナノワイアで形成された伝送線路であり、
前記複数の端子は、第1および第2の入出力端子であり、
前記伝送路線の一端には前記第1の入出力端子、該伝送路線の他端には前記第2の入出力端子が接続され、
前記信号出力部は、前記第1および第2の入出力端子に対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記第1および第2の入出力端子による反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノワイアを通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項2に記載の観測装置。
【請求項5】
前記デバイスは、ゲート、ドレインおよびソースを有する電界効果トランジスタであり、
前記複数の端子は、前記ゲートと前記ドレインであり、
前記ソースに接地端子が接続され、
前記ドレインと前記ソースの間に前記ナノ構造体が設けられ、
前記ナノ構造体と前記ゲートの間に絶縁膜が設けられ、
前記信号出力部は、前記ゲートおよび前記ドレインに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記ゲートおよび前記ドレインによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項1に記載の観測装置。
【請求項6】
前記デバイスは、ゲート、ドレインおよびソースを有する電界効果トランジスタであり、
前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、
前記ドレインと前記ソースの間に前記ナノ構造体が設けられ、
前記ナノ構造体と前記ゲートの間に絶縁膜が設けられ、
前記信号出力部は、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項1に記載の観測装置。
【請求項7】
前記デバイスは、ゲート、ドレイン、ソースおよびアイランドを有する単一電子トランジスタであり、
前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、
前記アイランドは、前記ナノ構造体であり、
前記信号出力部は、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項1に記載の観測装置。
【請求項8】
前記ナノワイアは、カーボンナノチューブである、請求項2に記載の観測装置。
【請求項9】
前記デバイスは、チャネルとなる伝導分子、ゲート、ドレインおよびソースを有する分子トランジスタであり、
前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、
前記伝導分子は、前記ナノ構造体であり、
前記信号出力部は、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出部は、前記信号出力部から出力された特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項1に記載の観測装置。
【請求項10】
ナノ構造体を有するデバイスと、前記ナノ構造体に直接または絶縁膜を介して接続される複数の端子と、を含む観測装置が行う観測方法であって、
少なくとも1つの前記端子に特定周波数の信号を出力する信号出力ステップと、
前記特定周波数の信号の前記端子による反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って他の端子から出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す検出ステップと、
前記特定周波数の信号の振幅を設定するとともに、前記特定周波数の信号の振幅と、前記読み出された振幅および位相差と、に基づいて、前記デバイスの状態を検出する観測ステップと、を含む観測方法。
【請求項11】
前記ナノ構造体は、ナノワイアである、請求項10に記載の観測方法。
【請求項12】
前記ナノワイアは、少なくとも1種類以上の分子を吸着し、
前記観測ステップでは、前記デバイスの状態の変化に基づいて、前記分子の種類または量を特定する、請求項11に記載の観測方法。
【請求項13】
前記デバイスは、前記ナノワイアで形成された伝送線路であり、
前記複数の端子は、第1および第2の入出力端子であり、
前記伝送路線の一端には前記第1の入出力端子、該伝送路線の他端には前記第2の入出力端子が接続され、
前記信号出力ステップでは、前記第1および第2の入出力端子に対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出ステップでは、前記特定周波数の信号の前記第1および第2の入出力端子による反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノワイアを通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項11に記載の観測方法。
【請求項14】
前記デバイスは、ゲート、ドレインおよびソースを有する電界効果トランジスタであり、
前記複数の端子は、前記ゲートと前記ドレインであり、
前記ソースに接地端子が接続され、
前記ドレインと前記ソースの間に前記ナノ構造体が設けられ、
前記ナノ構造体と前記ゲートの間に絶縁膜が設けられ、
前記信号出力ステップでは、前記ゲートおよび前記ドレインに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出ステップでは、前記特定周波数の信号の前記ゲートおよび前記ドレインによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項10に記載の観測方法。
【請求項15】
前記デバイスは、ゲート、ドレインおよびソースを有する電界効果トランジスタであり、
前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、
前記ドレインと前記ソースの間に前記ナノ構造体が設けられ、
前記ナノ構造体と前記ゲートの間に絶縁膜が設けられ、
前記信号出力ステップでは、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出ステップでは、前記特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項10に記載の観測方法。
【請求項16】
前記デバイスは、ゲート、ドレイン、ソースおよびアイランドを有する単一電子トランジスタであり、
前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、
前記アイランドは、前記ナノ構造体であり、
前記信号出力ステップでは、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出ステップでは、前記特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項10に記載の観測方法。
【請求項17】
前記ナノワイアは、カーボンナノチューブである、請求項11に記載の観測方法。
【請求項18】
前記デバイスは、チャネルとなる伝導分子、ゲート、ドレインおよびソースを有する分子トランジスタであり、
前記複数の端子は、前記ドレインと前記ソースであり、
前記伝導分子は、前記ナノ構造体であり、
前記信号出力ステップでは、前記ドレインおよび前記ソースに対して、順番に、前記特定周波数の信号を出力し、
前記検出ステップでは、前記特定周波数の信号の前記ドレインおよび前記ソースによる反射波と、該特定周波数の信号が前記ナノ構造体を通って出てきた透過波と、の両方あるいはどちらか一方について、振幅と、前記特定周波数の信号との位相差と、を読み出す、請求項10に記載の観測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−116356(P2008−116356A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300621(P2006−300621)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】