説明

角形二次電池

【課題】高出力、大容量であり、複数の電池をモジュール化しても信頼性が確保される角形二次電池を提供する。
【解決手段】正極板と負極板とをセパレータを介して巻回した巻回電極体14が、開口を有する有底角筒状の外装体25に収納され、この開口がガス排出弁27を有する封口板23により封止された角形二次電池10であって、巻回電極体14は、巻回電極体14の巻回軸方向が外装体25の底面と平行になるように外装体25内に配置され、巻回電極体14の巻回軸方向の両側の端部と、外装体25における巻回電極体14の巻回軸方向の端部と対向する側面の間に、外装体25を形成する材料の融点よりも高い融点を有する高融点材料30が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻回電極体を備えた角形二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護運動が高まり、二酸化炭素ガス等の温暖化の原因となる排ガスの排出規制が強化されている。そのため、自動車業界では、ガソリン、ディーゼル油、天然ガス等の化石燃料を使用する自動車に換えて、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV、PHEV)の開発が活発に行われている。このようなEV、HEV、PHEV用電池としては、ニッケル−水素二次電池やリチウムイオン二次電池が使用されているが、近年は軽量で、かつ高容量の電池が得られるということから、リチウムイオン二次電池等の非水電解質二次電池が多く用いられるようになってきている。
【0003】
EV、HEV、PHEV用の二次電池は、加速時や登坂時等には大電流、高出力の放電が行われること及び走行距離を長くする必要があるため、多数個を直列及び並列に組み合わせ、高出力、大容量の電池モジュールとして使用されている。この電池モジュールに使用される二次電池としては、角形二次電池及び円筒形二次電池が多く用いられている。
【0004】
円筒形二次電池の場合、特にパーソナルコンピュータ等に汎用されている円筒形二次電池を用いると、大量生産されているために安価に製造できるが、個々の円筒形二次電池の容量が小さいので、所定出力及び所定容量の電池モジュールを得るためには非常に多くの円筒形二次電池が必要となるという課題が存在する。一方、高出力化及び高容量化された円筒形二次電池を使用する場合は、下記特許文献1に示されているように、正極板及び負極板からの集電構造が複雑となるという課題が存在する。
【0005】
この点を説明するため、下記特許文献1に開示されている円筒形二次電池の集電構造について、図6を用いて説明する。なお、図6Aは集電体の斜視断面図であり、図6Bは集電体と円筒状巻回電極体とを接続する前の状態を示す模式断面図である。
【0006】
正極板、負極板及びセパレータ(何れも図示せず)が正極芯体露出部51及び負極芯体露出部52がそれぞれ両端側となるように巻回された巻回電極体50を備えている。正極集電体53及び負極集電体54は、それぞれ中心部に貫通孔53a及び54aが形成され、円環状となされている。そして、正極集電体53及び負極集電体54は、それぞれの貫通孔53a及び54aが巻回電極体50の中空部50aに連通されるように巻回電極体50の両端面に配置されている。
【0007】
このとき、それぞれの極板の複数の芯体露出部51、52の端部は、正極集電体53及び負極集電体54の巻回電極体50側の外周側に複数個形成された第1突起53b、54bと、同じく内周側に複数個形成された第2突起53c、54cとで挟まれ、巻回電極体50の中空部50aを塞ぐことがなくなるようになされている。これにより、正極芯体露出部51及び負極芯体露出部52がそれぞれ正極集電体53及び負極集電体54から露出することを防止できるとともに、巻回電極体50の端面に対して正極集電体53及び負極集電体54を位置決めすることができるようになる。この状態で、正極集電体53及び負極集電体54の主面53d、54dとは反対側の周面に対してエネルギーを照射し、正極集電体53及び負極集電体54を溶融させ、正極集電体53及び負極集電体54をそれぞれ正極芯体露出部51及び負極芯体露出部52の端面と互いに溶接する。
【0008】
これにより、溶接時に正極集電体53及び負極集電体54にスパッタが発生した場合であっても、正極集電体53及び負極集電体54にそれぞれ形成された第1突起53b及び54bによって巻回電極体50の内部へのスパッタの侵入を抑制できると共に、正極集電体53及び負極集電体54を巻回電極体50に強固に接合することができるようになる。しかしながら、正極集電体53及び負極集電体54の構造が複雑となっており、加工が容易ではない。
【0009】
それに対し、角形二次電池の場合では、容易に個々の角形二次電池の容量を大きくすることができるため、所定出力及び所定容量の電池モジュールを得るためには角形二次電池の使用個数が少なくてもすむという利点が存在するが、汎用されている円筒形二次電池に比すると高価となるという課題が存在する。このように、電池モジュールを形成するためには、円筒形二次電池を使用する場合であっても角形二次電池を使用する場合であっても一長一短があり、これらの短所を解決して長所をより活かすべく種々の改良が行われている。
【0010】
しかも、EV、HEV、PHEV用の二次電池は、高出力、大容量が必要とされるために様々な安全手段が設けられており、電池内圧が高くなった場合には電池内部のガスを外部に逃すためのガス排出弁を設けることが行われている。例えば、下記特許文献2には端子部にガス排出弁を設けた円筒形二次電池が、下記特許文献3には封口板にガス排出弁を設けた角形二次電池が、それぞれ示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−110751号公報
【特許文献2】特開2007−194167号公報
【特許文献3】特開2003−187774号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
通常、電池内部で発生したガスは、巻回電極体を用いた場合には巻回軸に沿って移動し、決められた通路を経て、ガス排出弁を作動させて外部に放出される。この現象は、円筒形二次電池の場合であっても角形二次電池であっても同様に生じる。しかも、EV、HEV、PHEV用の二次電池においては、上記特許文献2及び3に示されているようなガス排出弁だけでなく、他にも種々の安全手段が設けられているため、通常の使用状態においては十分な安全性が確保されている。
【0013】
なお、EV、HEV、PHEV用の二次電池として多く使用されている非水電解質二次電池においては、外装体として正極板の芯体と同じ材料であるアルミニウムないしアルミニウム合金が多く使用されている。アルミニウムないしアルミニウム合金は、負極板の芯体である銅ないし銅合金と比すると、溶融温度が低い。
【0014】
一方、釘刺し試験等の過酷な強制内部短絡試験を行うと、電池が熱暴走状態となって電池内部で高温のガスが急激にかつ多量に発生することがある。電池内部で発生した高温のガスは、巻回電極体の巻回軸に沿って移動し、巻回電極体内部から噴出されるが、この高温のガスが決められた通路を経てガス排出弁に達する前に外装体側に向かって噴出されると、外装体の溶融温度が低い場合には、ガス排出弁が作動する前に外装体が溶融してしまい、意図された方向とは異なる方向に高温のガスが排出されてしまう虞が存在する。
【0015】
この現象は、電池の容量が大きければ大きいほど生じ易くなり、特に巻回電極体が有底角筒状の外装体内に巻回電極体の巻回軸方向が外装体の底面と平行になるように配置されている角形二次電池の場合に生じ易い。しかしながら、上記特許文献1に示されているような円筒形二次電池では、巻回電極体の両端が集電体によって閉止されているため、殆ど生じることがなく、また、正極板及び負極板をそれぞれセパレータを介して互いに積層した角形二次電池の場合でも、電池内部で発生した高温のガスは極板に沿って四方へ流れるために、生じ難い。
【0016】
本発明は、上記のような巻回電極体が有底角筒状の外装体内に巻回電極体の巻回軸方向が外装体の底面と平行になるように配置されている角形二次電池の問題点を解決するためになされたものであって、電池内部に何らかの異常が生じて高温のガスが発生した場合でも、この高温のガスが決められた通路を経て外部へ排出されるようになされる角形二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、本発明の角形二次電池は、正極板と負極板とをセパレータを介して巻回した巻回電極体が、開口を有する有底角筒状の外装体に収納され、前記開口がガス排出弁を有する封口板により封止された角形二次電池であって、前記巻回電極体は、前記巻回電極体の巻回軸方向が前記外装体の底面と平行になるように前記外装体内に配置され、前記巻回電極体の巻回軸方向の両側の端部の少なくとも一方と、前記外装体における前記巻回電極体の巻回軸方向の端部と対向する側面の間に、前記外装体を形成する材料の融点よりも高い融点を有する高融点材料が配置されていることを特徴とする。
【0018】
本発明の角形二次電池においては、何らかの要因で電池が熱暴走状態となって電池内部で高温のガスが急激にかつ多量に発生し、高温のガスが巻回電極体の端部から噴出しても、この高温のガスは外装体を形成する材料の融点よりも高い融点を有する高融点材料に向かって噴出するようになる。そのため、本発明の角形二次電池によれば、電池内部で発生した高温のガスは決められた通路を経て封口板に設けられたガス排出弁から排出されるので、意図した方向とは異なる方向に高温のガスが排出されることがなくなるから、複数の電池をモジュール化しても信頼性が確保される角形二次電池が得られる。
【0019】
なお、本発明の角形二次電池においては、高融点材料は必ずしも巻回電極体の端部の両側に配置する必要はなく、少なくとも一方側に設ければそれなりに本発明の効果を奏することができる。ただし、両側に設ける方が信頼性がより向上するので好ましい。
【0020】
本発明の角形二次電池においては、前記高融点材料は、前記外装体における前記巻回電極体の巻回軸方向と垂直な側面の面積の100%以上を覆っていることが好ましい。
【0021】
高温のガスが直接高融点材料が存在していない箇所に向かって噴出すると、その部分から外装体が溶融する可能性が大きくなる。本発明の角形二次電池によれば、高融点材料は、巻回電極体の巻回軸方向と垂直な側面の全てを覆った上で、さらに広い範囲を覆っているので、高温のガスが直接高融点材料が存在していない箇所に向かって噴出することがなくなるので、外装体が溶融する虞が極めて小さくなり、より信頼性が高い角形二次電池が得られる。
【0022】
また、本発明の角形二次電池においては、前記高融点材料は、板状体であり、前記巻回電極体の巻回軸方向に垂直な断面の面積よりも大きく、かつ、前記外装体において前記高融点材料と対向する側面の面積よりも小さい面積を有するものが好ましい。
【0023】
本発明の角形二次電池によれば、高融点材料からなる板状体は、電極体の端面を十分に覆うことができるために本発明の上記効果が良好に奏されるようになり、外装体とは別体であるから、必要な領域に簡単に配置することができ、角形二次電池の組立が容易となる。
【0024】
また、本発明の角形二次電池においては、前記外装体は極性を有していないことが好ましい。
【0025】
EV、HEV、PHEVのような車両用途等に使用される二次電池は、長期間の耐久性が要求される。外装体が極性を有していると、長期間の使用により外装体が腐食し、その耐久性が低下する可能性がある。本発明の角形二次電池によれば、外装体が極性を有していないため、長期間の耐久性に優れた、長期信頼性の高い角形二次電池が得られる。
【0026】
また、本発明の角形二次電池においては、前記巻回電極体は、前記巻回軸方向における一方の端部に積層された正極芯体露出部を有し、前記巻回軸方向における他方の端部に積層された負極芯体露出部を有し、正極集電体が前記積層された正極芯体露出部の積層方向における最外面に接続されており、負極集電体が前記積層された負極芯体露出部の積層方向における最外面に接続されているものに対して適用することが好ましい。
【0027】
一方、正極集電体及び負極集電体がそれぞれ積層された芯体露出の積層方向の最外面とは異なる位置で溶接接続されている場合、正極集電体及び負極集電体は積層した芯体露出部の端面を覆うように接続されるようになるから、本発明の課題が生じ難くなり、本発明の構成を採用することの技術的意義がなくなる。
【0028】
また、本発明の角形二次電池においては、前記有底角筒状の外装体はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されており、前記高融点材料の融点は700℃以上のものを使用することが好ましい。
【0029】
アルミニウムおよびアルミニウム合金の融点は650℃前後であるから、高融点材料の融点が700℃以上のものを使用すれば、本発明の上記効果が良好に奏されるようになる。
【0030】
また、本発明の角形二次電池においては、前記高融点材料は、二酸化ケイ素、ジルコニア、アルミナ、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素から選択される1種とすることができる。
【0031】
これらの材料は、アルミニウムおよびアルミニウム合金よりも融点が高いセラミック材料であり、しかも実質的に絶縁性の材料であって、電極反応に影響を与え難いため、本発明の上記効果が良好に奏されるようになる。
【0032】
また、本発明の角形二次電池においては、前記高融点材料は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、チタン合金、ステンレススチール、ニッケル合金、銅合金、ケイ素及び炭素繊維から選択される1種としてもよい。また、これらの高融点材料を用いる場合、これらの高融点材料は正極板及び負極板と電気的に絶縁されていることが好ましい。
【0033】
これらの材料は、実質的に電気導電性の材料であるが、アルミニウムおよびアルミニウム合金よりも融点が高い材料であるから、本発明の上記効果が一応良好に奏されるようになる。また、たとえば高融点材料が正極と電気的に接続されていると、正極の貴な電位の影響により高融点材料の溶出や電解液成分の分解等が起こり、電池の安全性、信頼性を下げる結果となる。また、高融点材料が負極と電気的に接続されると、リチウムと合金化しやすい材料ではリチウムとの合金化が起こり、電池の信頼性の低下やサイクル特性の低下を引き起こす可能性がある。本発明で用いられる高融点材料が正極板ないし負極板と電気的に絶縁されていれば、高融点材料が上記のような電極反応に関与することがなくなるから、上記本発明の効果が良好に奏されるようになる。
【0034】
また、本発明の角形二次電池においては、前記高融点材料が導電性の場合、前記巻回電極体と前記外装体の間には絶縁シートが配置されており、前記高融点材料は前記外装体と前記絶縁シートとの間に配置されていることが好ましい。
【0035】
本発明の角形二次電池によれば、導電性の高融点材料の絶縁と同時に巻回電極体と外装体との間の電気的絶縁性が良好となるようにすることができるので、より信頼性の高い角形二次電池が得られる。
【0036】
また、本発明の角形二次電池においては、前記高融点材料は厚みが0.05mm以上0.5mm以下であることが好ましくい。
【0037】
高融点材料の比熱、融点によって適切な厚みは変化するが、高融点材料の厚みが0.05mm未満であると、高融点材料の厚さが薄すぎて、電池内部で発生した高温のガスによる熱が直接外装体に伝導される状態となり、本発明の上記効果が奏され難くなる。また、高融点材料の厚みが0.5mmを越えていると、それに比例して巻回電極体の占める容積が減少して電池のエネルギー密度の低下に繋がるので好ましくない。
【0038】
また、本発明の角形二次電池においては、前記角形二次電池は電池容量が20Ah以上であることが好ましい。
【0039】
本発明の高融点材料を設けずに釘刺し試験等の過酷な強制内部短絡試験を行うと、外装体の側面の溶融は、電池容量が小さい角形二次電池では実質的に認められず、電池容量が大きければ大きいほど生じやすくなり、特に20Ah以上の高容量の角形二次電池の場合に生じるようになる。そのため、本発明は、電池容量が20Ah以上の角形二次電池に対して適用すると、技術的意義が大きくなる。
【0040】
また、本発明の角形二次電池においては、前記正極芯体露出部及び前記負極芯体露出部の少なくとも一方は、2分割されてその間に少なくとも1つの導電性中間部材を保持した樹脂材料製の中間部材が配置され、前記2分割された芯体露出部側の前記集電体は、前記2分割された芯体露出部の最外側の少なくとも一方の面に配置され、前記2分割された芯体露出部と前記中間部材の前記少なくとも1つの導電性中間部材と共に抵抗溶接法によって電気的に接合されていることが好ましい。
【0041】
電池容量が20Ah以上もの大容量の角形二次電池となると、積層される正極芯体露出部ないし負極芯体露出部の枚数が多くなり、それぞれの積層後の厚さも厚くなる。本発明の角形二次電池によれば、積層された正極芯体露出部ないし負極芯体露出部の厚さが厚くても、シリーズ抵抗溶接法によって2分割された側の芯体露出部と導電性中間部材及び集電体との間を一度に溶接することができる。加えて、導電性中間部材を複数個設けた場合には、導電性中間部材は樹脂材料製の中間部材に保持・固定されているから、複数の導電性中間部材間の寸法精度が向上し、しかも、2分割された側の芯体露出部の間に安定な状態で位置決め配置できるため、抵抗溶接部の品質が向上して低抵抗化を実現できる。そのため、本発明の角形二次電池によれば、出力が向上し、しかも、出力のバラツキが低減した角形二次電池が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態の角形非水電解質二次電池の巻回電極体作製時の極板とセパレータの配置関係を示す一部展開図である。
【図2】実施形態の角形非水電解質二次電池を集電体等を省略して現した概略分解斜視図である。
【図3】図3Aは実施形態の非水電解質二次電池の断面図であり、図3Bは図3AのIIIB−IIIB線に沿った断面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】実施形態における芯体露出部と集電体との抵抗溶接状態を示す側部断面図である。
【図6】図6Aは従来例の集電体の斜視断面図であり、図6Bは従来例の集電体と円筒状巻回電極体とを接続する前の状態を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下に示す各実施形態は、本発明の技術思想を理解するために例示するものであって、本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この明細書における説明のために用いられた各図面においては、各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に適宜縮尺を異ならせて表示しており、必ずしも実際の寸法に比例して表示されているものではない。
【0044】
[実施形態]
最初に、実施形態の角形二次電池の例として角形非水電解質二次電池を図1〜図4を用いて説明する。なお、図1は角形非水電解質二次電池の巻回電極体作製時の極板とセパレータの配置関係を示す一部展開図である。図2は角形非水電解質二次電池の集電体等を省略して現した概略分解斜視図である。図3Aは実施形態の非水電解質二次電池の断面図であり、図3Bは図3AのIIIB−IIIB線に沿った断面図である。図4は図3のIV−IV線に沿った断面図である。
【0045】
この角形非水電解質二次電池10は、正極板11と負極板12とがセパレータ13を介して巻回された偏平状の巻回電極体14を有している。正極板11は、アルミニウム箔からなる正極芯体の両面に正極活物質合剤11aを塗布し、乾燥及び圧延した後、アルミニウム箔が帯状に露出するようにスリットすることにより作製されている。また、負極板12は、銅箔からなる負極芯体の両面に負極活物質合剤12aを塗布し、乾燥及び圧延した後、銅箔が帯状に露出するようにスリットすることによって作製されている。
【0046】
そして、上述のようにして得られた正極板11及び負極板12を、正極板11のアルミニウム箔露出部と負極板12の銅箔露出部とがそれぞれ対向する電極の活物質合剤11a、12aとそれぞれ重ならないようにずらして、ポリオレフィン製多孔質セパレータ13を介して巻回することで、巻回軸方向の一方の端には複数枚重なった正極芯体露出部15を備え、他方の端には複数枚重なった負極芯体露出部16を備えた偏平状の巻回電極体14が作製されている。
【0047】
複数枚積層された正極芯体露出部15は正極集電体17を介して正極端子18に接続され、同じく複数枚積層された負極芯体露出部16は負極集電体19を介して負極端子20に接続されている。なお、ここでは、正極集電体17及び負極集電体19がそれぞれ直接正極端子18及び負極端子20に接続されている例を示したが、この正極集電体17及び負極集電体19はそれぞれ別途導電部材を経て正極端子18及び負極端子20に接続されているようにしてもよい。
【0048】
また、正極端子18、負極端子20はそれぞれ絶縁部材21、22を介して封口板23に固定されている。この実施形態の角形非水電解質二次電池10は、上述のようにして作製された偏平状の巻回電極体14の封口板23側を除く周囲に樹脂製の絶縁シート24を介在させて角形の外装体25内に挿入した後、封口板23を外装体25の開口部にレーザ溶接し、その後、電解液注液孔26から非水電解液を注液し、この電解液注液孔26を密閉することにより作製されている。なお、封口板23には安全手段としてのガス排出弁27が形成されている。
【0049】
偏平状の巻回電極体14は、正極板11側では、積層された複数枚の正極芯体露出部15が2分割されて、その間に正極中間部材28が配置されている(図3B参照)。正極中間部材28は、樹脂材料からなる絶縁性中間部材28Aに導電性中間部材28Bが複数個、ここでは2個が配置されている。各導電性中間部材28Bは、それぞれ積層された正極芯体露出部15と対向する側に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起28Cが形成されている。
【0050】
同じく負極板12側では、積層された複数枚の負極芯体露出部16が2分割され、その間に負極中間部材29が配置されている(図3B及び図4参照)。負極中間部材29は、樹脂材料からなる絶縁性中間部材29Aに導電性中間部材29Bが複数個、ここでは2個が配置されている。各導電性中間部材29Bは、それぞれ積層された負極芯体露出部16と対向する側に、プロジェクションとして作用する円錐台状の突起29Cが形成されている。
【0051】
また、正極中間部材28の両側に位置する正極芯体露出部15の最外側の両側の表面にはそれぞれ正極集電体17が配置されており、負極中間部材29の両側に位置する負極芯体露出部16の最外側の両側の表面にはそれぞれ負極集電体19が配置されている。
【0052】
なお、正極中間部材28を構成する導電性中間部材28Bは正極芯体と同じ材料であるアルミニウム製であり、負極中間部材29を構成する導電性中間部材29Bは負極芯体と同じ材料である銅製であるが、それぞれの形状は同じであっても異なっていてもよい。また、正極中間部材28を構成する絶縁性中間部材28A及び負極中間部材29を構成する絶縁性中間部材29Aとして使用し得る材料としては、たとえばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアセタール(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)などが挙げられる。
【0053】
また、実施形態の角形非水電解質二次電池10においては、正極中間部材28及び負極中間部材29として、それぞれ樹脂材料からなる絶縁性中間部材28A、29Aに2個の導電性中間部材28B、29Bを用いた例を示したが、これらの導電性中間部材28B、29Bからなる組は、要求される電池の出力等に応じて1個でもよく、あるいは3個以上としてもよい。2個以上用いる構成であれば、1個の樹脂材料からなる絶縁性中間部材28A、29Aに2個以上の導電性中間部材28B、29Bが配置されているので、それぞれの組の導電性中間部材28B、29Bを2分割された側の芯体露出部の間に安定な状態で位置決め配置できるようになる。
【0054】
これらの正極集電体17と2分割された正極芯体露出部15の最外面との間、各正極芯体露出部15の間、正極中間部材28の導電性中間部材28Bと2分割された正極芯体露出部15の内面との間は、抵抗溶接されており、同じく、負極集電体19と2分割された負極芯体露出部16の最外面との間、各負極芯体露出部16の間、負極中間部材29を構成する導電性中間部材29Bと2分割された負極芯体露出部16の内面との間も、抵抗溶接されている。
【0055】
以下、偏平状の巻回電極体14の具体的製造方法、並びに、正極芯体露出部15、正極集電体17、導電性中間部材28Bを有する正極中間部材28を用いた抵抗溶接方法、及び、負極芯体露出部16、負極集電体19、導電性中間部材29Bを有する負極中間部材29を用いた抵抗溶接方法を図5を用いて詳細に説明する。なお、図5は実施形態における芯体露出部と集電体との抵抗溶接状態を示す側部断面図である。しかしながら、実施形態においては、正極中間部材28の形状及び負極中間部材29の形状は実質的に同一とすることができ、しかも、それぞれの抵抗溶接方法も実質的に同様であるので、以下においては負極板12側のものに代表させて説明することとする。
【0056】
まず、正極板11及び負極板12を、図1に示したように、正極板11の正極芯体(アルミニウム箔)露出部15と負極板12の負極芯体(銅箔)露出部16とがそれぞれ対向する電極の活物質合剤11a、12aと重ならないようにずらして、ポリオレフィン製多孔質セパレータ13を介して巻回して得られた偏平状の巻回電極体14を作製した。次いで、負極芯体露出部16を、巻回中央部分から両側に2分割し、電極体厚みの1/4を中心として負極芯体露出部16を集結させた。ここで、集結させた銅箔の厚さは片側約350μmであり、総積層数は片側44枚(両側で88枚)である。
【0057】
また、負極集電体19は厚さ0.6mmの銅板を打ち抜き、曲げ加工等にて製作した。なお、この負極集電体19は銅板から鋳造等にて製作してもよい。ここで使用した負極集電体19は、抵抗溶接箇所から負極端子20まで延在している本体部19Aと、溶接箇所において本体部19Aから略垂直方向に伸びるリブ19Bとを有しており、負極端子20を中心として対称な構造となるように一体に形成されている。
【0058】
そして、2分割された負極芯体露出部16の最外面の両面に負極集電体19を配置し、2分割された負極芯体露出部16の内面に負極中間部材29が導電性中間部材29Bの両側の円錐台状の突起29Cがそれぞれ2分割された負極芯体露出部16の内面と当接するように挿入する。負極中間部材29の導電性中間部材29Bは、例えば円柱状をしており、両端部にそれぞれ円錐台状の突起29Cが形成されている。なお、円錐台状の突起29C内には、抵抗溶接時に電流が円錐台状の突起29Cの周辺部に集中するようにして良好な溶接痕(ナゲット)が形成されるようにするため、それぞれ開口が形成されていてもよい。円錐台状の突起29Cの高さは、抵抗溶接部材に一般的に形成されている突起(プロジェクション)と同程度、すなわち、数mm程度であればよい。
【0059】
また、負極中間部材29を構成する導電性中間部材29Bの径及び長さは、偏平状の巻回電極体14や外装体25(図2及び図3参照)の大きさによっても変化するが、3mm〜数10mm程度であればよい。なお、ここでは負極中間部材29を構成する導電性中間部材29Bの形状は円柱状のものとして説明したが、角柱状、楕円柱状等、金属製のブロック状のものであれば任意の形状のものを使用することができる。
【0060】
実施形態の負極中間部材29は、導電性中間部材29Bが2個、樹脂材料からなる絶縁性中間部材29Aにそれぞれ一体に保持されている。この場合、それぞれの導電性中間部材29Bは互いに並行になるように保持されており、かつ、導電性中間部材29Bの両端面、すなわち円錐台状の突起29Cが形成されている側がそれぞれ2分割された負極芯体露出部16の内面に位置するように配置されている。この負極中間部材29を構成する樹脂材料からなる絶縁性中間部材29Aの形状は角柱状、円柱状等任意の形状をとることができるが、2分割した負極芯体露出部16間で安定的に位置決めして固定されるようにするために、ここでは角柱状とされている。
【0061】
そして、負極中間部材29の長さは、角形非水電解質二次電池のサイズによっても変化するが、20mm〜数十mmとすることができ、その幅は、負極中間部材29の近傍において、抵抗溶接を行った後に樹脂材料からなる絶縁性中間部材29Aの側面が2分割された負極芯体露出部16の内面と接するような状態となるように設定することが好ましいが、他の部分では、例えば抵抗溶接時のガス抜きが良好となるようにするために、外周部に溝を形成しても、内部に空洞を形成してもよい。
【0062】
次いで、図5に示したように、上下に配置された一対の抵抗溶接用電極棒31及び32間に偏平状の巻回電極体14を配置し、負極集電体19のリブ19Bが形成されている箇所の本体部19Aが、導電性中間部材29Bの両側に形成されている円錐台状の突起29Cとそれぞれ2分割された負極芯体露出部16を介して互いに対向するように配置し、一対の抵抗溶接用電極棒31及び32をそれぞれ負極集電体19の本体部19Aに当接させる。
【0063】
なお、負極集電体19を負極芯体露出部16の最外面の両面に配置する時期は、2分割された負極芯体露出部16間に負極中間部材29を配置する前であっても後であってもよい。また、負極集電体19を負極端子20に接続するのは負極集電体19を負極芯体露出部16に抵抗溶接する前であっても抵抗溶接した後であってもよい。しかしながら、予め負極集電体19を負極端子20に接続した後に負極集電体19を負極芯体露出部16に抵抗溶接するようした方が、抵抗溶接時の位置決めが容易となるので、製造効率が向上する。
【0064】
そして、一対の抵抗溶接用電極棒31及び32間に適度の押圧力を印加し、予め定められた条件で抵抗溶接を行うと、抵抗溶接用電流は、例えば抵抗溶接用電極棒31から、上側の負極集電体19の本体部19A、2分割された負極芯体露出部16、導電性中間部材29B、2分割された負極芯体露出部16、下側の負極集電体19の本体部19A、抵抗溶接用電極棒32へと流れる。これにより、上側の負極集電体19の本体部19Aと2分割された負極芯体露出部16と導電性中間部材29Bの一方の端面との間、導電性中間部材29Bの他方の端面と2分割された負極芯体露出部16と下側の負極集電体19の本体部19Aとの間に、それぞれ抵抗溶接部分が形成される。
【0065】
このとき、負極集電体19は、負極端子20を中心として対称な構造となるように一体に形成されているため、上側の本体部19Aから下側の本体部19Aまで短絡されている形になり、無効電流が流れるが、抵抗溶接電流が大きいために,一対の抵抗溶接用電極棒31、32間の押圧力を適切に維持することにより、有効に抵抗溶接を行うことができる。しかも、この抵抗溶接時には、負極中間部材29は2分割された負極芯体露出部16の間に安定的に位置決めされた状態で配置されているので、正確にかつ安定した状態で抵抗溶接することが可能となり、溶接強度がばらつくことが抑制され、溶接部の低抵抗化を実現でき、大電流充放電が可能な角形非水電解質二次電池を製造することができるようになる。
【0066】
なお、上記実施形態では、負極中間部材29を形成する導電性中間部材29Bとして両端側に円錐台状の突起29Cが形成されているものを用いた例を示したが、これらの円錐台状の突起29Cを設けることは必ずしも必要な構成要件ではなく、形成しなくてもよい。また、ここでは円錐台状の突起29Cを形成した例を示したが、三角錐台状のものや四角錐台状のものやさらに多角錐台状のものも使用することができ、さらには突起の先端部に開口(窪み)が形成されているものを用いてもよい。突起に開口が形成されていない場合、突起の作用は従来の抵抗溶接時のプロジェクションと同様になるが、突起の先端側に開口を設けると、抵抗溶接時にこの開口の周囲に電流が集中するので、発熱状態が良好となり、より良好に抵抗溶接を行うことができるようになる。
【0067】
このようにして、実施形態の角形非水電解質二次電池10で使用するための巻回電極体14が作製される。なお、この巻回電極体14では、巻回軸方向における一方の端部に積層された正極芯体露出部15を有し、巻回軸方向における他方の端部に積層された負極芯体露出部16を有し、正極集電体17が積層された正極芯体露出部15の積層方向における最外面に溶接接続されており、負極集電体19が積層された負極芯体露出部16の積層方向における最外面に溶接接続されている。
【0068】
また、実施形態の角形非水電解質二次電池10では、正極板11側も負極板12側の場合と同様にして、2分割された正極芯体露出部15の内側に絶縁性中間部材28A、導電性中間部材28B及び円錐台状の突起28Cを備えた正極中間部材28を配置し、正極芯体露出部15の最外面に本体部17A及びリブ17Bが形成された正極集電体17を配置し、抵抗溶接している例を示している。
【0069】
なお、正極集電体17及び負極集電体19にそれぞれ形成されたリブ17B、19Bは、それぞれの本体部17A、19Aと一体に形成されており、正極集電体17及び負極集電体19のそれぞれの一部を本体部17A、19Aの境界部分で略垂直となるように折り返すことにより形成されたものである。なお、折り返す角度は正確に垂直でなくても、実質的に垂直に近ければよく、±10°程度ずれていてもかまわない。このリブ17B、19Bは、抵抗用溶接時に抵抗溶接用電極棒31ないし32と正極集電体17ないし負極集電体19の本体部17A、19Aとの間から発生したスパッタが偏平状の巻回電極体14側に飛散することを抑制する効果と、正極集電体17及び負極集電体19の抵抗溶接部以外の部分の溶融を防止するための放熱フィンとしての効果を奏する。
【0070】
加えて、リブ17B、19Bを巻回電極体14よりも外装体25側(外側)に僅かに突出しているように形成すると、抵抗用溶接時に抵抗溶接用電極棒31ないし32と正極集電体17及び負極集電体19の本体部17A、19Aとの間から発生したスパッタが偏平状の巻回電極体14側に飛散することを抑制する効果が大きくなるとともに、図3Bに示したように、リブ17B、19Bが絶縁シート24を介して外装体25と接触するようになるため、偏平状の巻回電極体14が外装体25内で動くことを防止できるようになる。
【0071】
なお,上記実施形態では、2分割された正極芯体露出部15の間及び負極芯体露出部16の間にそれぞれ正極中間部材28及び負極中間部材29を配置した例を示した。しかしながら、これらの正極中間部材28及び負極中間部材29は、必ずしも必要な構成ではなく、正極芯体露出部15及び負極芯体露出部16の何れか一方に設けてもよく、さらには、正極中間部材28及び負極中間部材29を用いることなく、すなわち正極芯体露出部15及び負極芯体露出部16をそれぞれ2分割することなく、それぞれに正極集電体17及び負極集電体19を抵抗溶接することによって取り付けてもよい。しかしながら、本発明の作用効果は、角形二次電池の容量が大きければ大きいほど、例えば20Ah以上の場合に、有効に奏されるようになるので、電池の内部抵抗を小さくして高出力の角形二次電池が得られるようにするためには、上記実施形態に示したような構成を採用することが好ましい。
【0072】
そして、このように正極集電体17及び負極集電体19が取り付けられた偏平状の巻回電極体14の周囲を絶縁シート24によって被覆する。次いで、角形の外装体25として、図2〜図4に示したように、アルミニウム又はアルミニウム合金製の外装体25における巻回電極体14の巻回軸方向の端部と対向する側面の内面に、アルミニウム又はアルミニウム合金の融点(約650℃)よりも高い融点を有する板状の高融点材料30を配置する。この高融点材料30は、例えば釘刺し試験のような過酷な内部試験の際等、何らかの要因で角形非水電解質二次電池10が熱暴走状態となって電池内部で高温のガスが急激にかつ多量に発生し、高温のガスが巻回電極体14の端部から噴出しても、高融点材料30に向かって噴出するようにして、外装体25が溶融し難くなるようにするものである。そのため、この高融点材料30としては、融点が700℃以上のものであれば、絶縁性の材料であっても、導電性の材料であってもよい。
【0073】
絶縁性の材料であれば、二酸化ケイ素、ジルコニア、アルミナ、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素等から選択される1種を採用することができる。導電性の材料であれば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、チタン合金、ステンレススチール、ニッケル合金、銅合金、ケイ素及び炭素繊維から選択される1種を採用することができる。
【0074】
この高融点材料30の厚みは、0.05mm以上0.5mm以下とすることが好ましく、0.1mm〜0.5mmとすることがより好ましい。高融点材料30の適切な厚みは、高融点材料30の比熱、融点によって変化するが、高融点材料30の厚みが0.05mm未満であると、高融点材料30の厚さが薄すぎて、電池内部で発生した高温のガスによる熱が直接外装体25に伝導される状態となり、外装体25が溶融してしまう虞が大きくなる。また、高融点材料30の厚みが0.5mmを越えていると、それに比例して巻回電極体14の占める容積が減少して電池のエネルギー密度の低下に繋がる。
【0075】
なお、高温のガスが直接高融点材料30の存在していない箇所に向かって噴出すると、その部分から外装体が溶融する可能性が大きくなる。そのため、高融点材料30は、巻回電極体14の巻回軸方向と垂直な側面の全てを覆った上で、さらに広い範囲を覆っているようにすることが好ましい。
【0076】
次いで、図2及び図3に示したように、高融点材料30が絶縁シート24と外装体25との間に位置するようにして、正極集電体17、負極集電体19がそれぞれ取り付けられた巻回電極体14を角形の外装体25内に挿入した後、封口板23を外装体25の開口部にレーザ溶接し、その後、電解液注液孔26から非水電解液を注液し、この電解液注液孔26を密閉することにより実施形態の角形非水電解質二次電池10が完成される。
【0077】
この実施形態の角形非水電解質二次電池10によれば、何らかの要因で電池が熱暴走状態となって電池内部で高温のガスが急激にかつ多量に発生し、高温のガスが巻回電極体14の端部から噴出しても、この高温のガスは外装体25を形成する材料の融点よりも高い融点を有する高融点材料30に向かって噴出するようになる。そのため、電池内部で発生した高温のガスは、決められた通路を経て封口板23に設けられたガス排出弁27から排出されるので、意図した方向とは異なる方向に高温のガスが排出されることがなくなり、信頼性の高い角形非水電解質二次電池10が得られる。
【0078】
なお、高融点材料30からなる板状体は、巻回電極体14の巻回軸方向に垂直な断面の面積よりも大きく、かつ、外装体25において高融点材料30と対向する側面の面積よりも小さい面積を有するようにすると、電極体の端面を十分に覆うことができるため、高温のガスが直接外装体25に向かって噴出することがなくなり、容易に信頼性の高い角形非水電解質二次電池10が得られる。さらに、外装体25は、正極極板及び負極極板の何れとも電気的に接続されておらず、極性を有しないようにすると、腐食され難くなるので、長期間の耐久性に優れた、長期信頼性の高い角形二次電池10が得られる。
【0079】
また、本発明は、電池容量が少なくとも20Ah以上の大容量の角形非水電解質二次電池に適用した際に良好な効果が奏される。その理由は、電池容量が小さい角形非水電解質二次電池は、たとえ釘刺し試験等の過酷な内部短絡試験を行っても、高温のガスの発生量が少ないので外装体が溶融することが少ないためである。
【0080】
[実施例及び比較例]
本発明の効果を確認するために、以下に示すような実施例に対応する角形二次電池と、比較例に対応する角形二次電池とを作製し、釘刺し試験を行った。まず、従来例の角形非水電解質二次電池の場合と同様にして、アルミニウム芯体に正極活物質合剤11aを塗布し、乾燥、圧延後、帯状のアルミニウム箔が露出するようにスリットした実施例及び比較例で共通して使用する正極板11と、銅芯体に負極活物質合剤12aを塗布し、乾燥、圧延後、帯状の銅箔が露出するようにスリットした実施例及び比較例で共通して使用する負極板12を作製した。ここで、正極活物質としてはコバルト酸リチウムを用い、負極活物質としては黒鉛を用いた。
【0081】
上述のようにして得られた正極板のアルミニウム箔からなる正極芯体露出部15と銅箔からなる負極芯体露出部16とが、図1に示したように、それぞれ対向する電極の活物質合剤11a、12aと重ならないようにずらして、ポリオレフィン製多孔質セパレータ13を介して巻回し、両側端にそれぞれ複数の正極芯体露出部15と複数の負極芯体露出部16が形成され、巻回された円筒状の電極群を作製し、プレス成型することにより偏平状の巻回電極体14を作製した。なお、この巻回電極体14の巻き軸方向と垂直な側面のサイズは約23mm×82mmである。
【0082】
次いで、複数枚積層された正極芯体露出部15は正極集電体17を介して正極端子18に接続され、同じく複数枚積層された負極芯体露出部16は負極用集電体19を介して負極端子20に接続されている。なお、正極端子18、負極端子20はそれぞれ絶縁部材21、22を介して封口板23に固定されている。
【0083】
上述のようにして作製された偏平状の巻回電極体14を絶縁シート24で覆い、外装体25の側面に当たる部分の正極板11側及び負極板12側ともに高融点材料として銅板(85mm×25mm×0.2mm)を絶縁シート(絶縁シートの外側)にテープで固定し、外装体25の内側に挿入し、封口板23を外装体25の開口部にレーザ溶接し、その後、電解液注液孔26から非水電解液を注液し、この電解液注液孔26を密閉することにより実施例に対応する角形非水電解質二次電池10を作製した。
【0084】
また、比較例の角形二次電池としては、実施例の場合と同様に作製した巻回電極体を絶縁シートで覆い、高融点材料を配置せず、外装体の内側に挿入し、封口体を外装体開口部にレーザ溶接し、その後電解液注液孔から非水電解液を注液し、この電解液注液孔を密閉することにより作製した。
【0085】
次いで、満充電時の電池の内部短絡を模擬した試験(充電条件は1It=25Aでの定電流で電池電圧が4.1Vに達するまで充電し、その後4.1Vの定電圧で1時間半保持して充電終了)として、室温での釘刺し試験を実施した。釘の形状はφ3mmを用い、実施例及び比較例の角形二次電池の厚さ26.5mmで定位拘束後、釘を電池の長辺側腹部の中心位置に速度80mm/minで突き刺し、突き刺し後の外観を確認した。なお、用いた実施例及び比較例の角形二次電池は1/3C放電で放電容量25.1Ah、体積エネルギー密度が253.6Wh/Lである。結果は表1に示すとおりであった。
【0086】
【表1】

【0087】
以上の結果より、本発明の角形二次電池によれば、電池の内部短絡時に外装体の開裂による、意図しない方向からのガス排出を防ぐことが可能となるので、多数の角形二次電池を直並列に接続してモジュールを形成したときのガスダクト設計が容易になり、モジュールとしての信頼性を高めることのできる角形二次電池を提供することができるようになる。
【符号の説明】
【0088】
10…角形非水電解質二次電池 11…正極板 11a…正極活物質合剤 12…負極板 12a…負極活物質合剤 13…セパレータ 14…巻回電極体 15…正極芯体露出部 16…負極芯体露出部 17…正極集電体 17A…本体部 17B…リブ 18…正極端子 18B…リブ 19…負極集電体 19A…本体部 19B…リブ 20…負極端子 21、22…絶縁部材 23…封口板 24…絶縁シート 25…外装体 26…電解液注液孔 27…ガス排出弁 28…正極中間部材 28A…絶縁性中間部材 28B…導電性中間部材 28C…突起 29…負極中間部材 29A…絶縁性中間部材 29B…導電性中間部材 29C…突起 30…高融点材料
31、32…抵抗溶接用電極棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極板と負極板とをセパレータを介して巻回した巻回電極体が、開口を有する有底角筒状の外装体に収納され、前記開口がガス排出弁を有する封口板により封止された角形二次電池であって、
前記巻回電極体は、前記巻回電極体の巻回軸方向が前記外装体の底面と平行になるように前記外装体内に配置され、
前記巻回電極体の巻回軸方向の両側の端部の少なくとも一方と、前記外装体における前記巻回電極体の巻回軸方向の端部と対向する側面の間に、前記外装体を形成する材料の融点よりも高い融点を有する高融点材料が配置されていることを特徴とする角形二次電池。
【請求項2】
前記高融点材料は、前記外装体における前記巻回電極体の巻回軸方向と垂直な側面の面積の100%以上を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の角形二次電池。
【請求項3】
前記高融点材料は、板状体であり、前記巻回電極体の巻回軸方向に垂直な断面の面積よりも大きく、かつ、前記外装体において前記高融点材料と対向する側面の面積よりも小さい面積を有することを特徴とする請求項1に記載の角形二次電池。
【請求項4】
前記外装体は極性を有していないことを特徴とする請求項1に記載の角形二次電池。
【請求項5】
前記巻回電極体は、前記巻回軸方向における一方の端部に積層された正極芯体露出部を有し、前記巻回軸方向における他方の端部に積層された負極芯体露出部を有し、
正極集電体が前記積層された正極芯体露出部の積層方向における最外面に接続されており、負極集電体が前記積層された負極芯体露出部の積層方向における最外面に接続されていることを特徴とする請求項1に記載の角形二次電池。
【請求項6】
前記有底角筒状の外装体はアルミニウム又はアルミニウム合金で形成されており、
前記高融点材料の融点は700℃以上であることを特徴とする請求項1に記載の角形二次電池。
【請求項7】
前記高融点材料は、二酸化ケイ素、ジルコニア、アルミナ、チタニア、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素から選択される1種であることを特徴とする請求項6に記載の角形二次電池。
【請求項8】
前記高融点材料は、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、チタン合金、ステンレススチール、ニッケル合金、銅合金、ケイ素及び炭素繊維から選択される1種であることを特徴とする請求項6に記載の角形二次電池。
【請求項9】
前記高融点材料は、前記正極板及び前記負極板と電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項8に記載の角形二次電池。
【請求項10】
前記巻回電極体と前記外装体の間には絶縁シートが配置されており、前記高融点材料は前記外装体と前記絶縁シートとの間に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の角形二次電池。
【請求項11】
前記高融点材料は厚みが0.05mm以上0.5mm以下であることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の角形二次電池。
【請求項12】
前記角形二次電池は電池容量が20Ah以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の角形二次電池。
【請求項13】
前記正極芯体露出部及び前記負極芯体露出部の少なくとも一方は、2分割されてその間に少なくとも1つの導電性中間部材を保持した樹脂材料製の中間部材が配置され、
前記2分割された芯体露出部側の前記集電体は、前記2分割された芯体露出部の最外側の少なくとも一方の面に配置され、
前記2分割された芯体露出部と前記中間部材の前記少なくとも1つの導電性中間部材と共に抵抗溶接法によって電気的に接合されていることを特徴とする請求項12に記載の角形二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−54821(P2013−54821A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−189977(P2011−189977)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】