説明

角質除去用次亜塩素酸含有水溶液吐水装置と角質除去用収納容器の保管方法

【課題】
利用者の利便性向上のため、保存した角質除去用次亜塩素酸水溶液を安定して使用できるシステムを提供する。
【解決手段】
本発明では、角質除去の効果と安全性を確実に確保するため、軟質容器内から吐出される水溶液の減少量に応じて容器が追随して変形するようにしているため、液から気相へのガス放出を回避することができ、次亜塩素酸濃度の低下を防止することができる。加えて、紫外線による分解、容器内部の有機物との反応による濃度低下を抑制できる材質や保管方法を組み合わせることで、消費者への安定的な供給を可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、角質除去用の次亜塩素酸水溶液の安定的使用に係り、特に保存時の安定性維持に好適な容器の形態、材質および保管方法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
古くなった角質を除去し、肌の再生を促す化粧品として、特許文献1に示される塩化物水溶液の電気分解によって生成される比較的低濃度域での次亜塩素酸を含む電解酸性水が発見されており、利用する際には、液の安定性が低いため電気分解装置を用いて都度生成して使っている。
【0003】
電解装置を用いて角質除去に適した次亜塩素酸水溶液を生成する場合、食塩等の電解助剤が必要となり、使用者は装置のメンテナンスが必要となり煩わしかった。したがって、角質除去に適した次亜塩素酸水溶液を工場等で生成して、使用者がその次亜塩素酸水溶液を購入する形態が望まれている。ここで、工場で生成した次亜塩素酸水溶液を使用者が購入して使用する場合には、角質除去性能を維持するための保存が必要となる。一般的に次亜塩素酸水溶液は濃度低下が起こり易いため、濃度低下が起きると角質除去性能を失うという問題があった。
【0004】
また、次亜塩素酸を含む電解水溶液としては殺菌用途のものが知られており、この場合に生成される比較的高濃度域での次亜塩素酸を含む電解水の保存方法については、例えば特許文献2のように、各種検討されている。人体に直接触れることのない器物の殺菌用には食塩水を電気分解する装置が市販されており、その生成液は食品添加物としても認められているが、最低でも10ppm以上の濃度で生成され、多くの製品は生成時の濃度として50〜200ppmで使用されている。先の保存性を検討した特許文献2でも28ppmで評価されている上に、結果としては一番良い保存容器材質でも14日で7ppm減少している。
【0005】
実際に器物に使用する場合は、次亜塩素酸が菌などの有機物との反応で人体に触れるまでには減少することを考慮し、より高濃度で生成して、濃度が減少しても殺菌性を確保できるようにしておけば、万が一減少する前に使用しても問題は生じない。しかし、角質除去の用途では肌への影響からできるだけ低い範囲で一定に保つことが望ましい。つまり、生成直後に肌に触れさせても問題なく、且つ長期間保存しても角質除去性能を維持できるように保存することが必要となる。角質除去の効果を得るためには0.5〜2ppm程度がよく、この範囲の低濃度域での次亜塩素酸濃度を一定に維持するような次亜塩素酸の保存について言及した検討はこれまでなかった。
【0006】
また、実際に保存された状態から次亜塩素酸水溶液を使うことを考えた場合、気相中への塩素ガスの放出による次亜塩素酸濃度の低下が生じるため、容器内への外気の置換も考慮する必要があるが、保存性素材としての検討はあっても使用し始めてからの濃度低下への検討はほとんどされていなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平9−124431号公報
【特許文献2】特開平7−215328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、利用者の利便性向上のため、保存した角質除去用次亜塩素酸水溶液を安定して使用できるシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を解決するために、本発明は、角質除去性能を有する次亜塩素酸含有水溶液を収納する収納容器と、前記収納容器内の次亜塩素酸含有水溶液を収納容器外に吐出させるための吐出部とを備え、前記収納容器は、前記吐出部から吐出される前記収納容器内の次亜塩素酸含有水溶液の減少に応じて前記収納容器が追随して変形する軟質材から構成されていることを特徴としている。
このように構成された本発明の角質除去用次亜塩素酸水溶液吐水装置においては、吐出部から吐出される水溶液の減少に追随して収納容器が変形するように形成されているため、液からの気相へのガス放出を回避でき、角質除去用次亜塩素酸水溶液の濃度低下を防止でき、安定して使用することができる。
【0010】
本発明において、前記収納容器の最内層は、低吸着性のポリエステル又は無機コーティングされた材質で形成されることを特徴としている。
このように構成された本発明の角質除去用次亜塩素酸水溶液吐水装置においては、容器内部の有機物との反応による濃度低下を抑制できるため角質除去用次亜塩素酸水溶液の濃度低下を防止でき、安定して使用することができる。
【0011】
本発明において、前記収納容器は5℃以下に保管されることを特徴としている。
このような保管方法によって、紫外線による分解を抑制できるため角質除去用次亜塩素酸水溶液の濃度低下を防止でき、安定して使用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚の角質除去用途において、次亜塩素酸の低濃度域での一定した濃度維持が必要な場合も、安定して使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は各種包装材質を用いて、次亜塩素酸水溶液の遊離残留塩素濃度の経時変化を計測したデータであり、図2は各種包装材質を用いて、次亜塩素酸水溶液のpHの経時変化を計測したデータである。図3は次亜塩素酸水溶液の保存ヘッドスペースへの塩素ガス蒸発によって、水溶液中の遊離残留塩素濃度の飽和値を表すデータである。図4は各種包装材質を用いて、次亜塩素酸水溶液を低温保存した際の、遊離残留塩素濃度の経時変化を計測したデータである。
【0014】
本実施例では、塩化ナトリウムなどの塩素化合物の水溶液を電気分解して陽極側に得られた次亜塩素酸を、低吸着性のポリエステルフィルムやダイヤモンドライクカーボンなどの無機コーティングを施したフィルムを内装に用いて4方または3方をラミネートした容器に充填する。
【0015】
充填後は密封し、5℃以下で低温保存する。ヘッドスペースを極力なくして密閉するか、塩素ガスや不活性ガスでヘッドスペースの大気を置換しても良い。
【0016】
軟質容器とすることで、水溶液を使用した際に液の減量分形状変化して追従し、硬質容器の場合のように内部への空気置換が生じないため、塩素ガスに変化しての残留塩素濃度の減少も抑えられる。またポンプを組み合わせて自動吐出やボタン操作での吐出形態とする場合も、硬質容器であれば空気置換なしで容器から水溶液を吸引することは負圧が生じるため難しく、軟質容器なら問題なく可能となる。
【0017】
各種包材にて、次亜塩素酸水溶液の保存性を確認したところ、密閉かつ遮光状態であれば、材質や周囲温度に寄らずpHはほとんど変動しないが、次亜塩素酸や次亜塩素酸イオンの存在を示す有効残留塩素濃度は著しく減少することが分かった。この減少は気中へのガスの気散よりも包装材との反応が大きく影響すると考えられ、材質の選定が重要になる。最適な容器としては、硬質容器の場合はポリエチレンテレフタレートの延伸ブロー成形容器の内層に、プラズマCVDで炭素膜を形成したものを用いる。軟質容器の場合は用途に応じた各種フィルムを貼り合せた最内層に低吸着ポリエステルを用いたものを使い、袋状に周囲を熱溶着して使用する。ガスバリア性や遮光性の観点からアルミフィルムを中間の層に用いることが望ましい。
なお、角質除去の効果を得るためには安全性からも0.5〜2ppmが最適値であり、以下の試験は2ppm近傍の低濃度域にて行われたものである。
【0018】
各種包材での保管試験の結果を図1および図2に示す。図1に示すように内層に無機コーティングや低吸着ポリエステルを用いたものに入れた場合は一般的なポリエチレン容器などに比べ残留塩素の寿命で10倍以上となる。pHは図2に示すように差がない。
【0019】
吸引ポンプと組合せての吐出試験を行ったところ、軟質容器では液の減少に併せて容器が変形し追従しているため一定の量で吐出するが、硬質容器の場合は内部が負圧になるため、エア抜きを設けなければ一般的なモーターポンプでは給液することができなかった。
しかしながら、エア抜きを設けた場合は、図3に示すようにエア置換によって空気層が形成されたヘッドスペースへ塩素ガスが抜けるため、濃度の低下につながる。
【0020】
低温下保存のデータを図4に示す。低温で保存すれば、さらに濃度減少を抑える事ができるため、一般家庭の冷蔵庫を利用して長期的な保存も可能となる。
【実施例】
【0021】
塩化ナトリウムを含む水溶液の電気分解によって、次亜塩素酸水溶液を生成する。塩化ナトリウムは2500ppmとし、無隔膜式の電解槽を用い、電圧12V電流6A近辺で流量を2L/分以下にて電解することで、陽極側にpH2〜3.0、残留塩素濃度2〜4ppmの次亜塩素酸水溶液が得られる。
【0022】
生成ラインでは、内装にポリエステル製のフィルム、中間層の一つにガス透過性を高めるアルミニウムフィルム、外装に印刷用のポリエチレンフィルムから構成される包装用フィルムを積層し、切断後折り曲げて端面を熱溶着した包装容器が用意され、生成した液を充填した後、充填口を密閉した後、5℃以下で冷蔵保存される。
【0023】
販売店や消費者への出荷時は冷蔵輸送され、販売店舗を経由する際は販売店での冷蔵庫保存、使用者の自宅においても、未使用時や長時間使用しない場合は冷蔵庫で冷蔵保管する形で提供されるため、安定した濃度で使用することができる。
【0024】
消費者が使用する際には、この容器をポンプを内蔵した吐出装置に嵌着する。ポンプの吸入口は嵌着の際に容器の内部と貫通、ポンプを動作すると、水溶液が吐出されるが、内部の圧力減少を打ち消す形で容器は変形していくため、内部にガス置換を起こさず、安定的に吐出することができる。
【0025】
次に、装置の構造について説明する。収納容器内の角質除去用次亜塩素酸水溶液は給液部によって噴霧部に移送される。ここで、給液部は、自重での滴下、毛細管現象、ポンプによる圧送などの液供給手段を用いて、水溶液を収納容器から噴霧部へ供給する。
噴霧部は圧電素子を共振させた超音波振動子と上記給液部の容器側でない末端となる給液端によって構成され、振動板に水溶液が接触すると超音波振動によって霧状に噴霧される。超音波振動子による噴霧には各種方式があるが、顔を濡らす用途で使用する場合は、振動子の一端に固定した薄板に微細な孔を設け、その孔を通して噴霧する形態が粒径の点で望ましい。すなわち、振動子は圧電素子と薄板部材で構成されており、薄板部材の基端部は圧電素子の先端部の上面に固定され、圧電素子は上面と下面にそれぞれ電極を有し、交流電圧を供給する制御回路から電極に印加される電圧の変動周波数に応じて振動し、これにより薄板部材が振動する。そして薄板部材は多数の孔を形成しており、振動することにより給液端から供給された液体を霧化する方式である。
【0026】
使用者が動作を開始させるため操作基板を操作すると、制御基板から圧電素子への電圧印加が開始される。電圧は振動子の共振周波数によって決まり、あらかじめ設定した所定の周波数で印加されている。モーターポンプへの電流出力も開始される。モーターポンプが動作すると、収納容器から水溶液が吸い出され、モーターポンプを介して噴霧部の薄板部材の孔の近傍に押し出される。押し出された水溶液は、圧電素子の振動によって孔を通って噴霧される。薄板部材の孔径は水溶液の平均噴霧粒径が20μmになるように設計されている。またモーターポンプ2bの給液量が15ml/minとなるよう電流が設定されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】各種包装材質を用いて、次亜塩素酸水溶液の遊離残留塩素濃度の経時変化を計測したデータである。
【図2】各種包装材質を用いて、次亜塩素酸水溶液のpHの経時変化を計測したデータである。
【図3】次亜塩素酸水溶液の保存ヘッドスペースへの塩素ガス蒸発によって、水溶液中の遊離残留塩素濃度の飽和値を表すデータである。
【図4】各種包装材質を用いて、次亜塩素酸水溶液を低温保存した際の、遊離残留塩素濃度の経時変化を計測したデータである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
角質除去性能を有する次亜塩素酸含有水溶液を収納する収納容器と、前記収納容器内の次亜塩素酸含有水溶液を収納容器外に吐出させるための吐出部とを備え、前記収納容器は、前記吐出部から吐出される前記収納容器内の次亜塩素酸含有水溶液の減少に応じて前記収納容器が追随して変形する軟質材から構成されていることを特徴とする角質除去用次亜塩素酸含有水溶液吐水装置。
【請求項2】
前記収納容器の最内層は、低吸着性のポリエステル又は無機コーティングされた材質で形成されることを特徴とする請求項1記載の角質除去用次亜塩素酸含有水溶液吐水装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の収納容器の保管方法であって、前記収納容器は5℃以下に保管されることを特徴とする角質除去用収納容器の保管方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−130249(P2007−130249A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−326390(P2005−326390)
【出願日】平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】