説明

角速度センサ

【課題】本発明は、電荷増幅器からの出力信号にどのようなノイズ成分がのっている場合でも、確実にノイズ成分を除去することができる角速度センサを提供することを目的とするものである。
【解決手段】本発明の角速度センサは、検出回路37における第1の電荷増幅器38と第2の電荷増幅器39とから出力される出力信号の差値を増幅する差動増幅器40にコンデンサ45および抵抗46を並列に接続したローパスフィルタ47を設け、出力信号からノイズ成分を除去する構成としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、航空機、自動車、ロボット、船舶、車両等の移動体の姿勢制御やナビゲーション、カメラの手振れ補正、等に利用できる角速度センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の角速度センサは、図6〜図8に示すような構成となっていた。
【0003】
図6は従来の角速度センサの模式図、図7は同角速度センサにおける検出回路を示すブロック図、図8は同角速度センサの検出回路における差動増幅器である。
【0004】
図6〜図8において、1は振動子で、この振動子1は駆動電極振動体2と、検出電極振動体3と接続部4とにより構成されている。そして前記駆動電極振動体2には、駆動電極5が設けられている。そしてまた前記検出電極振動体3には、側面に第1の検出電極6および第2の検出電極7が設けられている。8は駆動回路で、この駆動回路8は前記振動子1における駆動電極5に電荷を入力する増幅器9およびAGC回路10を設けている。
【0005】
11は検出回路で、この検出回路11は、前記振動子1における第1の検出電極6にコリオリ力により発生する電荷を電圧に変換する第1の電荷増幅器12と、第2の検出電極7にコリオリ力により発生する電荷を電圧に変換する第2の電荷増幅器13と、図8に示すように、前記第1の電荷増幅器12および第2の電荷増幅器13との出力信号を入力するとともに両者の差値を増幅して出力する差動増幅器14と、この差動増幅器14の出力信号を入力する感度調整回路15と、この感度調整回路15の出力信号を入力するオフセット調整回路16と、このオフセット調整回路の出力信号を入力する同期検波器17とにより構成されている。
【0006】
以上のように構成された従来の角速度センサについて、次にその動作を説明する。
【0007】
駆動電極振動体2における駆動電極5に駆動交流電圧を印加して、振動子1の固有振動数で励振し、振動子1を振動させた状態で、この振動子1の軸心方向Zを中心とする角速度Ωが振動子1に印加されると、コリオリ力が生じ、これが検出電極振動体3における第1の検出電極6および第2の検出電極7によって電荷として検出され、各々、第1の電荷増幅器12および第2の電荷増幅器13とにより出力信号に変換される。そして、第1の電荷増幅器12および第2の電荷増幅器13の出力信号を差動増幅器14に入力するとともに、差動をとることにより、差動増幅器14から出力信号を出力する。さらに、感度調整回路15およびオフセット調整回路16を介して同期検波器17に入力し、前記駆動回路8の振動の周期で位相検波させることにより、出力信号を角速度の信号として、相手側のコンピュータ(図示せず)等に入力し、角速度を検出するものである。
【0008】
ここで、角速度センサを相手側基板(図示せず)に実装する場合を考えると、角速度センサの近傍にコイル(図示せず)等を配置する場合が多々あるものであった。
【0009】
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−327945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の構成では、角速度センサを実装するユーザ用基板(図示せず)に予め実装されたコイル(図示せず)に、DC/DCコンバータ(図示せず)より電気信号が発生し、コイル(図示せず)が振動することとなり、これにより、検出回路11からの出力信号が共振し、図9に示すように、ノイズが発生し、正確な角速度を検出することができなくなってしまうという課題を有していた。
【0012】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、角速度センサの近くにコイル等が配置されることにより、出力信号にノイズ成分がのっている場合でも、確実にノイズ成分を除去することができる角速度センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有するものである。
【0014】
本発明の請求項1に記載の発明は、一対の検出電極を設けた振動子と、この振動子を所定の振幅および周波数で振動駆動する駆動回路と、前記振動子に角速度が負荷された際にコリオリ力により振動子における一方の検出電極に発生する電荷を増幅するとともに電圧に変換する第1の電荷増幅器と、他方の検出電極に発生する電荷を増幅するとともに電圧に変換する第2の電荷増幅器と、前記第1の電荷増幅器と第2の電荷増幅器とから出力される出力信号の差値を増幅する差動増幅器と、この差動増幅器からの出力信号を前記駆動回路からの出力信号に同期検波させる同期検波器と、この同期検波器の出力信号を平滑化する平滑回路とからなる検出回路とを備え、前記検出回路における差動増幅器にコンデンサおよび抵抗を並列に接続したローパスフィルタを設けたもので、この構成によれば、検出回路における差動増幅器にコンデンサおよび抵抗を並列に接続したローパスフィルタを設けることにより、出力信号からノイズ成分を除去することができるという作用効果を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
以上のように本発明の角速度センサは、一対の検出電極を設けた振動子と、この振動子を所定の振幅および周波数で振動駆動する駆動回路と、前記振動子に角速度が負荷された際にコリオリ力により振動子における一方の検出電極に発生する電荷を増幅するとともに電圧に変換する第1の電荷増幅器と、他方の検出電極に発生する電荷を増幅するとともに電圧に変換する第2の電荷増幅器と、前記第1の電荷増幅器と第2の電荷増幅器とから出力される出力信号の差値を増幅する差動増幅器と、この差動増幅器からの出力信号を前記駆動回路からの出力信号に同期検波させる同期検波器と、この同期検波器の出力信号を平滑化する平滑回路とからなる検出回路とを備え、前記検出回路における差動増幅器にコンデンサおよび抵抗を並列に接続したローパスフィルタを設けたもので、この構成によれば、検出回路における差動増幅器にコンデンサおよび抵抗を並列に接続したローパスフィルタを設けることにより、出力信号からノイズ成分を除去する角速度センサを提供することができるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態における角速度センサの斜視図
【図2】同角速度センサの駆動回路および検出回路を示すブロック図
【図3】同角速度センサの検出回路における差動増幅器を示す図
【図4】(a)〜(h)同角速度センサの動作状態における出力信号を示す波形図
【図5】本発明の一実施の形態における角速度センサにおける出力信号から検出回路の差動増幅器におけるローパスフィルタにより、ノイズ信号を除去した状態を示す図
【図6】従来の角速度センサの模式図
【図7】従来の角速度センサの回路ブロック図
【図8】従来の角速度センサの検出回路における差動増幅器を示す図
【図9】従来の角速度センサにおける出力信号からノイズ信号が発生する状態を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施の形態における角速度センサについて、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は本発明の一実施の形態における角速度センサの斜視図、図2は同角速度センサの駆動回路および検出回路を示すブロック図である。
【0019】
図1、図2において、21は振動子で、この振動子21は四角柱状の水晶製の駆動電極振動体22と、四角柱状の水晶製の検出電極振動体23と、水晶製の接続部24とにより構成されている。そして前記駆動電極振動体22には、4つの側面に金からなる駆動電極25aおよび駆動電極25bが設けられている。また前記検出電極振動体23は駆動電極振動体22と平行に設けられているもので、その表面および裏面には金からなるモニタ電極26が設けられている。そしてまた前記検出電極振動体23には、内側の側面に金からなるGND電極27が設けられ、かつ外側の側面に金からなる第1の検出電極28aおよび第2の検出電極28bが設けられている。29は駆動回路で、この駆動回路29は前記振動子21のモニタ電極26の電荷を入力する増幅器30と、この増幅器30の出力信号を入力するバンドパスフィルタ31と、このバンドパスフィルタ31の出力信号を入力する整流器32と、この整流器32の出力信号を入力する平滑回路33とにより構成されている。34はAGC回路で、このAGC回路34は前記駆動回路29における平滑回路33の出力信号を入力し、前記平滑回路33の出力信号を増幅あるいは減衰させるものである。35は駆動制御回路で、この駆動制御回路35は前記AGC回路34の出力信号を入力するとともに、前記振動子21における駆動電極25aに駆動信号を入力するものである。36は反転アンプで、この反転アンプ36は前記駆動制御回路35の出力信号を入力するとともに、前記振動子21における駆動電極25bに駆動制御回路35の出力信号を反転させた駆動信号を入力するものである。
【0020】
37は検出回路で、この検出回路37は、前記振動子21における第1の検出電極28aにコリオリ力により発生する電荷を電圧に変換する第1の電荷増幅器38と、第2の検出電極28bにコリオリ力により発生する電荷を電圧に変換する第2の電荷増幅器39と、前記第1の電荷増幅器38および第2の電荷増幅器39との出力信号を入力するとともに両者の差値を増幅して出力する差動増幅器40と、この差動増幅器40の出力信号を入力する位相器41と、この位相器41の出力信号を入力する同期検波器42と、この同期検波器42の出力信号を入力する平滑回路43と、この平滑回路43の出力信号を入力するとともに、増幅して角速度信号を出力する直流アンプ44とにより構成されている。そして、前記検出回路37における差動増幅器40には、図3に示すように、コンデンサ45および抵抗46からなるローパスフィルタ47を設けている。
【0021】
以上のように構成された本発明の一実施の形態における角速度センサについて、次にその動作を説明する。
【0022】
振動子21の駆動電極25aおよび25bに交流電圧を加えると、振動子21が共振し、そしてこの振動子21のモニタ電極26に電荷が発生する。このモニタ電極26に発生した電荷は、駆動回路29における増幅器30に入力され、正弦波形の出力電圧として出力される。そしてこのモニタ電極26の出力電圧を前記バンドパスフィルタ31に入力し、振動子21の共振周波数のみを抽出し、ノイズ成分を除去して、図4(a)に示すような正弦波形を出力する。そしてまた前記バンドパスフィルタ31の出力信号を整流器32に入力することにより、負電圧成分を正電圧に変換した後、平滑回路33に入力することにより、直流電圧信号に変換する。そしてAGC回路34は前記平滑回路33の直流電圧信号が大の場合には前記バンドパスフィルタ31の出力信号を減衰させるような信号を、一方、前記平滑回路33の直流電圧信号が小の場合には前記バンドパスフィルタ31の出力信号を増幅させるような信号を駆動制御回路35に入力し、前記振動子21の振動を一定振幅になるように調整するものである。
【0023】
ここで、振動子21の駆動電極振動体22が振動方向に速度vで屈曲振動している状態において、前記振動子21の長手方向の中心軸周りに前記振動子21が角速度ωで回転すると、この振動子21の検出電極振動体23にF=2mV×ωのコリオリ力が発生する。このコリオリ力により前記検出電極振動体23の第1の検出電極28aに図4(b)に示すような電荷が発生するとともに、第2の検出電極28bに図4(c)に示すような電荷が発生する。そしてこの第1の検出電極28aに発生する電荷はコリオリ力により発生するため、前記モニタ電極26に発生する信号より、第1の検出電極28aに生じる電荷の位相が90度進むとともに、第2の検出電極28bに生じる電荷の位相が270度進んでいる。そして前記第1の電荷増幅器38により、第1の検出電極28aから発生する電荷を図4(d)に示すような出力電圧に変換する。第2の電荷増幅器39は、第2の検出電極28bから発生する電荷を増幅し、図4(e)に示すような出力電圧に変換する。
【0024】
そして、第1の電荷増幅器38および第2の電荷増幅器39の出力信号を差動増幅器40に入力するとともに、差値をとることにより、差動増幅器40が差値からなる出力信号を出力する。さらに位相器41により、前記差動増幅器40の出力電圧を90度遅らせて図4(f)に示すような出力電圧に変換する。そしてこの位相器41の出力信号を同期検波器42に入力し、前記駆動回路29におけるバンドパスフィルタ31の振動の周期で位相検波させるとともに、前記位相器41の出力電圧の負電圧成分を正電圧に変換し、図4(g)に示すような出力信号を得る。そしてこの同期検波器42の出力電圧を前記平滑回路43および直流アンプ44により平滑化するとともに、増幅し、図4(h)に示すような出力信号を得る。そして直流アンプ44の出力信号を角速度の信号として、相手側のコンピュータ(図示せず)等に入力し、角速度を検出するものである。
【0025】
ここで、角速度センサを実装するユーザ用基板(図示せず)に予め実装されたコイル(図示せず)に、DC/DCコンバータ(図示せず)より電気信号が発生し、コイル(図示せず)が振動する場合を考える。
【0026】
本発明の一実施の形態における角速度センサにおいては、検出回路37における差動増幅器40にコンデンサ45および抵抗46を並列に接続したため、コンデンサ45および抵抗46を並列に接続したローパスフィルタ47により、図5に示すように、出力信号からノイズ成分を除去することができるという作用効果を有するものである。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明に係る角速度センサは、電荷増幅器からの出力信号にどのようなノイズ成分がのっている場合でも、確実にノイズ成分を除去することができるという効果を有するものであり、特に、航空機、自動車、ロボット、船舶、車両等の移動体の姿勢制御やナビゲーション等に使用される角速度センサとして有用なものである。
【符号の説明】
【0028】
21 振動子
28a 第1の検出電極
28b 第2の検出電極
29 駆動回路
37 検出回路
38 第1の電荷増幅器
39 第2の電荷増幅器
40 差動増幅器
42 同期検波器
43 平滑回路
45 コンデンサ
46 抵抗
47 ローパスフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の検出電極を設けた振動子と、この振動子を所定の振幅および周波数で振動駆動する駆動回路と、前記振動子に角速度が負荷された際にコリオリ力により振動子における一方の検出電極に発生する電荷を増幅するとともに電圧に変換する第1の電荷増幅器と、他方の検出電極に発生する電荷を増幅するとともに電圧に変換する第2の電荷増幅器と、前記第1の電荷増幅器と第2の電荷増幅器とから出力される出力信号の差値を増幅する差動増幅器と、この差動増幅器からの出力信号を前記駆動回路からの出力信号に同期検波させる同期検波器と、この同期検波器の出力信号を平滑化する平滑回路とからなる検出回路とを備え、前記検出回路における差動増幅器にコンデンサおよび抵抗を並列に接続したローパスフィルタを設けた角速度センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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