説明

解像度を高めたルミネセンス顕微鏡検査

【課題】スリット絞りに付随する深さ解像度の低下なしに、速い撮像を可能にする。
【解決手段】査型レーザ顕微鏡が提供され、この顕微鏡は、照明用放射線源(105)から放出された照明用放射線経路(B)内の照明用放射を試料(103)に向けるビーム・スプリッタ(113)を備えており、ビーム・スプリッタ(113)は、試料(103)で鏡面反射された照明用放射を検出器機構(104)へは通過させず、そのために照明用放射線経路(B)の瞳内に配置されており、かつビーム・スプリッタ面上の、光軸(OA)の突破点を中心とする円上にある少なくとも3つの点で照明用放射のためにミラー・コーティングされたビーム・スプリッタ面(122)を有することによって、部分的にミラー・コーティングされており、これにより、試料(103)一面に周期的に分布する照明スポットの形の干渉パターンが試料(103)内に生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解像度を高めたルミネセンス顕微鏡検査に関し、特に、検査すべきルミネセンスを発する試料を励起用放射で照明し、ルミネセンスが励起された試料の画像を取得する方法に関する。本発明はさらに、試料の解像度を高めたルミネセンス顕微鏡検査を行うための顕微鏡に関し、この顕微鏡は、ルミネセンスを励起するために試料に励起用放射を照射する手段および励起された試料の画像を取得するための手段を有する。
【0002】
本発明はさらに、照明用放射線源および検出用放射線経路を備えた走査型レーザ顕微鏡に関し、この検出用放射線経路は、試料内で励起および/または後方散乱した放射を光軸に沿って検出器機構に導き、この検出用放射線経路内には、照明用放射線源から放出された照明用放射線経路内の照明用放射を試料に向けるビーム・スプリッタが設けられており、その際、ビーム・スプリッタは、試料で鏡面反射された照明用放射を検出器機構へは通過させず、そのために照明用放射線経路の瞳内に配置されており、かつ部分的にミラー・コーティングされている。
【背景技術】
【0003】
生物プレパラートを検査するための、光学顕微鏡検査の従来の適用分野はルミネセンス顕微鏡検査である。その際、細胞の一部などの試料を特異的に標識するために、特定の色素(いわゆるリン光体または蛍光体)を使用する。前述のように、試料を励起用放射で照明し、それにより励起されたルミネセンス光を適切な検出器で捕捉する。このために光学顕微鏡には通常、2色性ビーム・スプリッタがブロック・フィルタと組み合わせて設けられており、それらによって蛍光放射が励起用放射から分離され、別々の観察が可能となる。この措置により、光学顕微鏡において、異なる色に着色された個々の細胞部分の表示が可能になる。もちろん、プレパラートの異なる構造にそれぞれ特異的に沈着する様々な色素で、プレパラートの複数の部分を同時に着色してもよい。この方法をマルチ・ルミネセンスと言う。それ自体が、つまり色素添加なしで、ルミネセンスを発する試料を測定することもできる。
【0004】
ルミネセンスとは、ここでは通例通り、リン光および蛍光の上位概念として理解されており、したがって両方の過程を含んでいる。
さらに、試料検査に走査型レーザ顕微鏡(LSMとも略す)を使用することが知られており、このLSMは、3次元で照らし出された画像から、共焦点検出構成(共焦点LSMのこと)または非線形の試料の相互作用(いわゆる多光子顕微鏡検査)によって、対物レンズの焦点面内にある平面だけを再現する。これにより1つの光学的断面が取得され、引き続き試料の様々な深度での複数の光学的断面を記録すれば、適切なデータ処理装置を用いて、様々な光学的断面から構成される試料の3次元画像を生成することができる。このため走査型レーザ顕微鏡検査は、厚いプレパラートの検査に適している。
【0005】
もちろん、ルミネセンス顕微鏡検査と走査型レーザ顕微鏡検査とを組み合わせたものも使用されており、この場合は、ルミネセンスを発する試料を、様々な深度面において、LSMで結像させる。
【0006】
原理的に、光学顕微鏡およびLSMの光学的解像度は、物理法則により回折によって制限されている。この制限内で最良の解像を得るために、例えば4Pi構成または定在波場による構成のような特殊な照明構成が知られている。それにより解像度は、典型的なLSMに比べて、特に軸方向で、明らかに改善され得る。さらに非線形のデポピュレーション過程により、回折によって制限されている共焦点LSMに比べて解像度を最高で10倍まで高めることができる。
【0007】
図1a/図1bは、例えば米国特許第5866911号に記載されているようなこの方法を示している。その際、解像度を高めるために、2つの波長を有する光放射を作用させる。一方の波長の光放射が、励起光線1として測定試料上に対物レンズで合焦され、そこでルミネセンス、ここでは蛍光を励起する。図1a/図1bには、簡略化のため1次元の場合のみが示されている。位置解像度の向上は、もう一方の波長を有する光線2が、励起光線によって励起された蛍光状態を部分領域でデポピュレートすることによって行われる。そのためこの光線は「デポピュレーション放射」とも呼ばれる。図1aからよく分かるように、この場合、照射は、例えばデポピュレーション光線2の主ピークと励起光線1の主ピークが部分的に重なるように行われる。励起用放射1で照明された領域の縁部にある試料の、この「脱励起」により、図1bからよく分かるように、縮小されたボリューム3しか蛍光を放射しなくなる。したがって、このボリューム縮小によって解像度が首尾よく高められる。
【0008】
図2a〜図2cは、このようなデポピュレーションを起こし得る、3つの可能なメカニズムを示している。図2aには、誘導放出による脱励起(STED)過程が示されている。励起用放射がレベルS1の蛍光体に当たる(矢印A)。このように励起されたレベルS1が、蛍光波長領域内の波長を有する光放射によって、基底レベルS0に向かってデポピュレートされる。矢印SEはこの誘導放出を示しており、その波長は、ルミネセンス(矢印F)の波長にほぼ等しい。したがって励起波長は、デポピュレーション放射よりストークス・シフトの分だけ波長が短い。つまり、この手法に基づいて解像度を高めるには、独国特許発明第4416558号明細書の形態の現況技術も証明しているように、2つの異なる光源が必要となる。
【0009】
図2bは、ルミネセンスを放射できなくなるさらに高いレベルS2への励起(矢印A+)を行うことにより、励起されたレベルS1(矢印A)をデポピュレートするさらなる可能な過程を分かりやすく示している。この引き上げは、英語でExcited State Absorption(励起状態吸収)と呼ばれ、それ故、この措置は略してESAとも呼ばれる。この過程の適切な記述は、例えば米国特許第6633432号明細書に出ている。試料または色素内のエネルギー・レベルの、より高いレベルへの間隔が縮まるので、ESA過程でのデポピュレーションには、より低いエネルギーを、したがってより長い波長を有する光源が励起のために使用される。つまりこの場合も、2つの異なる光源が必要である。
【0010】
さらなるデポピュレーション方法は、蛍光のための、いわゆる可逆的可飽和光学蛍光遷移(Reversible Saturable Optical Fluorescence Transition)であり、これは例えば独国特許出願公開第10325460号明細書に記載されており、図2cに分かりやすく示されている。この手法は、空間的に高解像度の結像のために色素を使用し、この色素は、図2cに分かりやすく示されているように、切替用放射線4によって、蛍光を発する第1の状態5から、色素が蛍光を発しない第2の状態6に、繰り返し移行可能であり、その色素は、第2の状態6から第1の状態5に戻ることができる。色素を含む試料は、部分領域で、切替用放射線4によって第2の状態6に移行し、その際、試料の定義された領域は除外される。次いで、励起用放射線1によって蛍光7が励起され、続いて記録される。その後、予め切替用放射線4を浴びなかった試料ボリュームからだけ蛍光7が発せられる。励起用放射線1と切替用放射線4を適切に重ねることにより、蛍光7が放出されるボリュームは、励起用放射線1の解像度および切替用放射線4の零点の尖鋭度から先験的に可能であるボリュームより小さくなる。
【0011】
つまり、図2a〜図2cに基づく前述の3つの方法のすべてにおいて、蛍光の阻止は、励起用の波長とは異なる波長の光放射を使用することによって行われている。同時にこの光放射は、少なくとも1つの鋭く制限された、放射出力の局所的零点を有していなければならず、この零点によって、検出される蛍光放射の最終的な解像度が決まる。零点が極小より上にしか形成されず、かつ完全には零まで減少しない場合はすぐに、蛍光出力が、したがってこの方法の効率がさらに低下する。このことは、例えば光学構成の収差の際またはプレパラートにおいて生じる。
【0012】
図3は、解像度を高めるための前述の3つの方法の1つ、図3の例ではSTED過程を使用した、既知の装置を示している。励起用放射線源8は、試料10内にエアリー分布を発生させ、これにより、試料が基底レベルS0から励起状態S1に移行する。状態S1のデポピュレーションは、位相板12の使用により試料10内にドーナツ形またはトーラス形の光線分布13を有する、デポピュレーション光源11によって行われる。デポピュレートされていない、つまり脱励起されていない色素分子のルミネセンス放射が、検出器14によって捕捉される。このデポピュレーションにより、顕微鏡の解像度は、エアリー分布から生じる回折限界を超える。このことは、通常の顕微鏡16に比べて縮小された、この高解像顕微鏡の点像分布15によって表されている。
【0013】
解像度を高めるためのさらなる方法は、欧州特許第1157297号明細書で論じられている。この場合、構造化された照明を用いて、非線形過程を利用する。その際、この明細書は、非線形性として蛍光の飽和を挙げている。記載された方法では、構造化された照明により、光学システムの伝達関数に対する対象空間スペクトルの変位を実現する必要がある。スペクトルの変位とは、具体的には、空間周波数V0−Vm(Vmは構造化された照明の周波数)の場合に、対象空間周波数V0が伝達されることを意味する。これにより、このシステムによって最大限に伝達可能な所定の空間周波数の際に、対象物の水平空間周波数の伝達関数の最大周波数より高い変位周波数Vmだけを、遷移することが可能となる。この手法は、画像生成のための再現アルゴリズム、および1つの画像に対する複数の記録の使用を必要とする。
【0014】
したがって本発明は第1に、複数の波長に頼らず、または費用のかかる画像再現アルゴリズムなしで、解像度の向上を達成する、ルミネセンス顕微鏡検査方法またはルミネセンス顕微鏡を提案することを課題とする。
【0015】
走査型レーザ顕微鏡では、例えば独国特許出願公開第19702753号明細書で説明したされているように、共焦点結像の走査によって試料を捕捉し、したがって蛍光顕微鏡検査による生物プレパラートの検査に広く用いられている。その際、試料内で蛍光が励起され、それによって、励起用放射に対してスペクトル的にストークス・シフトされた蛍光放射が発生し、次いでこの蛍光放射が、走査型レーザ顕微鏡によって共焦点検出される。共焦点検出の代わりに、例えば多光子励起の場合には遠視野検出を行うこともできる。
【0016】
原理的に、走査型レーザ顕微鏡の場合、大抵は照明用放射および検出用放射が共通の対物レンズを介して導かれ、つまり検出用放射を検出器に導くためにも用いられる対物レンズを介して照明用放射が入射するので、前述の蛍光顕微鏡検査においては励起用放射である照明用放射を、検出すべき放射から分離しなければならないという課題がある。したがって、試料で後方反射された照明用放射を検出器へと通過させないか、またはできるだけ僅かな量しか通過させないようにするビーム・スプリッタを介して、照明用放射をカップリングさせるのが普通である。
【0017】
蛍光顕微鏡検査では、検出用放射と励起用放射の間のストークスに基づく波長シフトを利用しており、ビーム・スプリッタには適切な2色性要素を使用するので、ビーム・スプリッタには、カラー・スプリッタまたは主カラー・スプリッタの概念も取り入れられている。しかしながら照明用放射と検出用放射がスペクトル的に区別されない場合、この手法は役に立たなくなる。2色性ビーム・スプリッタの分離度にも限界があり、このためビーム・スプリッタより後の検出用放射線経路に、試料で後方反射された励起用放射が残り、あるいは検出用放射がビーム・スプリッタを通り抜ける際に不必要に弱められる。
【0018】
独国特許出願公開第10257237号明細書は、スペクトルに依存しない手法を紹介している。そこで説明されている冒頭に挙げた種類の走査型レーザ顕微鏡は、試料から来る放射が一般的にインコヒーレント、つまり試料を指向せずに放出されるのに対し、鏡面反射された励起用放射または照明用放射が指向的に検出用放射線経路にカップリングすることを利用している。したがって独国特許出願公開第10257237号明細書は、照明用放射線経路の瞳内に、光軸の突破点では透過性で、それ以外ではミラー・コーティングされたビーム・スプリッタを挿入することを提案している。それに加え、照明用放射をこの透過性のスポットに正確に合焦させる。したがってその結果として、試料の平面的照明が達成され、同時に試料で鏡面反射された照明用放射は再びビーム・スプリッタのミラー面に達し、このミラー面により検出用放射線経路のそれ以降の部分から外れて上に鏡面反射される。これに対し、試料内で生じた拡散性の検出用放射は、合焦されず、瞳全体を満たし、ほぼ完全に透過される。つまり、照明用放射のデカップリング度として理解されるこのビーム・スプリッタの効率は、透過性のスポットに対する瞳の面積比にのみによって与えられる。この効率は、照明用放射が適切に合焦される場合、90%をはるかに超え得る。このように独国特許出願公開第10257237号明細書によって達成されたビーム・スプリッタによって、スペクトルに依存せず、検出用放射の高い利得が可能となる。
【0019】
既に説明したように、走査型レーザ顕微鏡検査は、特に生物試料の検査に適している。生物試料の場合、当然、撮像に必要な時間が重要な要素であり、生体試料を検査したい場合、または速く進行する経過を分析したい場合は特にそうである。したがって、走査型レーザ顕微鏡検査では常に、撮像速度の向上に努力が払われている。そのために、最近では、試料を点状の光スポットで(つまり共焦点ポイント・スキャナを用いて)走査するのではなく、ライン状の照明および走査(つまり共焦点のスリット絞り)を使用する顕微鏡システムの記述が増えている。これに関しても、独国特許出願公開第10257237号明細書が適切なビーム・スプリッタを提供しており、このビーム・スプリッタでは、細長い長方形のライン状の領域がミラー・コーティングされている。
【0020】
確かにライン走査システムは高い撮像速度を達成するが、スリット絞りによる共焦点結像では、その原理上、スリット絞り方向に沿ってある程度のクロストークが起こるので、深さ解像度はポイント走査システムに比べて低くなる。
【0021】
したがって、本発明は第2に、スリット絞りに付随する深さ解像度の低下なしに、速い撮像が可能であるように、冒頭に挙げた種類の走査型レーザ顕微鏡をさらに発展させることを課題とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
最初に挙げた課題は、本発明によれば、特定のルミネセンス放射を放出させるための励起用放射を照射することによって試料を励起し、ルミネセンスを発する試料の画像を取得する、解像度を高めたルミネセンス顕微鏡検査方法によって解決される。この方法では、ルミネセンスを発する試料は、励起用放射出力を上昇させることにより、特定のルミネセンス放射を放出させるための励起性が、励起用放射出力の閾値にあたる最大値まで上昇した第1のルミネセンス状態から、特定のルミネセンス放射を放出するための試料の励起性が第1の状態に比べて低減された第2のルミネセンス状態に移行可能であり、その際、試料は、閾値より高い励起用放射出力を照射することによって第2の状態に移行可能であり、この試料は、少なくとも1つの閾値より高い出力極大および少なくとも1つの閾値より低い局所的な出力極小を有する励起用放射分布で、励起用放射を照射されることにより、ある部分領域では第1の状態に移され、隣接する部分領域では第2の状態に移され、ルミネセンスを発する試料の画像は、第1の状態にある試料領域および第2の状態にある試料領域を含んでおり、その際、ルミネセンスを発する試料の画像には、主として第1の状態にある試料領域が寄与し、それにより画像は、励起用放射分布より高い空間解像度を有するようになる。
【0023】
第1の課題はさらに、解像度を高めたルミネセンス顕微鏡検査のための顕微鏡によって解決される。この顕微鏡は、励起用放射を試料に照射し、それにより試料内で特定のルミネセンス放射の放出を励起するルミネセンス励起手段と、ルミネセンスを発する試料の画像を取得する手段とを備えており、その際、励起手段が、少なくとも1つの閾値より高い出力極大、および少なくとも1つの閾値より低い局所的な出力極小を有する、特定の励起用放射分布で励起用放射を照射し、その際、その閾値が、試料の2つのルミネセンス領域を分割しており、第1の、励起用放射出力が閾値より低い状態の領域では、励起用放射出力を上昇させることにより、特定のルミネセンス放射を放出させるための励起性が、閾値で達成される最大値まで上昇し、第2の、閾値より高い励起用放射出力の際および/またはそれより後の状態の領域では、試料が特定のルミネセンス放射を放出するための励起性が、第1の領域に比べて低減されており、その際、画像を取得する手段が、閾値より低い励起用放射出力で照射された第1の領域にある試料領域、および閾値より高い励起用放射出力で照射された第2の領域にある試料領域を捕捉し、その際、試料画像には、主として第1の領域にある試料領域が寄与し、それにより画像が、励起用放射分布より高い空間解像度を有するようになる。
【0024】
つまり、ルミネセンスを発する材料が基本的に2つの状態にあり得る試料を使用し、または顕微鏡を対応する試料用に設計する。閾値より低い励起用放射出力を照射した場合に生じ、励起手段によって達成される第1の状態では、材料がルミネセンス放射を放出し、その出力は、一般的に励起用放射出力と共に増加する。閾値より高い励起用放射出力を照射した場合に存在する第2の状態では、ルミネセンスが全く起こらないか、または低減される。第1の状態に比べて変化した吸収特性、および/または第1の状態とは異なる光学特性、例えば異なるスペクトル組成、偏光、もしくは寿命を有するルミネセンス放射の放出を、生じさせてもよい。もちろん、蛍光を発するか、または自発蛍光する多くの分子で構成された試料に関しては、2つの状態の領域が生じる。第1の状態の領域では、分子の多数が第1の状態にあり、第2の状態の領域では、多数が第2の状態にある。本発明によれば、ある試料領域は第1の状態領域(または略して状態)にされ、別の試料領域は第2の状態領域(または略して状態)にされる。第1の状態にされた、つまり閾値より低い励起用放射出力に当たる領域、および第2の状態にある領域、つまり閾値より高い励起用放射出力で照射される領域の付近の場所により、励起用放射分布より解像度を著しく高めることが可能となる。
【0025】
つまり本発明による解決策は、非線形のルミネセンス特性曲線によって解像度の向上を達成し、この特性曲線は、放出されるルミネセンス出力を、励起用放射出力の関数として記述しており、極大を有する。その際、この特性曲線が、極大の両側で比較的急な傾斜を有する場合が有利であるが、絶対に必要というわけではない。励起のために、多光子過程を使用してもよい。
【0026】
本発明による手法の場合、できるだけ第1の状態にある試料領域だけが画像にルミネセンス放射分の寄与をし、かつ第2の状態にある試料領域は、少なくとも比較的僅かな程度にルミネセンスを発するので、試料画像は、励起用放射分布を超える構造を示し、このため解像度の向上が達成される。この強度構造は、第1の状態と第2の状態との間の放出出力の差が明らかであればあるほど明確に現れる。
【0027】
蛍光特性曲線の極大に対応する閾値より高い励起出力を照射することにより、第1の状態より少ない蛍光が励起される。そのために、この顕微鏡では、励起用放射分布が、閾値より高い出力を有する。現況技術でこれまで必要であったような別の波長の放射はもはや必要でない。したがって本発明による顕微鏡、または本発明による方法を実施するための装置は、著しく簡略化されており、特に光源は1つしか必要なく、その解像度が画像の品質に影響を及ぼす。比較的広い波長領域をカバーする必要はないので、励起用放射のカップリングに関する色要件も、現況技術に比べて明らかに簡単になる。
【0028】
照射される励起用放射分布が、伝導の閾値を考慮したものであるので、顕微鏡は試料に同調される。
本発明による手法では、それだけでなく、閾値より高い励起用放射出力で照射した後に永続的にまたは少なくともある程度の期間、励起性が明らかに低下する、または全くなくなる試料を使用する場合、(例えばSTEDまたはESAの手法の際に必要であるように)閾値より高い励起用放射出力で照明する試料領域を、前もって「標準」に励起することは、絶対に必要なわけではない。
【0029】
閾値より高い励起用放射出力では、ルミネセンスを発せず、かつ/または特定のルミネセンス放射とは異なる特性を有するルミネセンス放射を放出し、かつ/または励起用放射に対し、変更された、ルミネセンスの減少をもたらす吸収特性を有する、試料または色素を使用することが好ましい。
【0030】
したがって本発明によれば、閾値より高い励起用放射強度で照明される試料領域からは、全くまたは僅かしか、ルミネセンス放射が画像生成に寄与しないことによって、解像度の向上が達成される。第2の状態にある試料が示す、つまり閾値より高い励起用放射出力の場合および/またはそれより後で、試料が示すルミネセンス特性によっては、画像へのこの寄与の低減が、異なる方法で行われる。試料が全くルミネセンスを示さない場合、第2の状態にある試料領域からは、もはやルミネセンス放射は検出されない。これに対し第2の状態にある試料が、光学特性が変化したルミネセンス放射を示す場合は、遮蔽のために、例えばスペクトル組成または偏光に関する適切な光学フィルタリングを行う。励起されたルミネセンス状態の寿命が変化している場合は、時間フィルタリングによって遮蔽を達成する。
【0031】
第1の状態にある試料領域をさらに限定するため、またはこの試料領域の幾つかを選択するために、共焦点検出を行うことが好ましい。その場合、ルミネセンスのために励起されたボリュームを本発明に従って回折限界より縮小することによって、標準的な共焦点検出に勝る位置解像度が達成される。
【0032】
基本的に、励起用放射で照明された領域の全てがルミネセンス画像に寄与するのではなく、閾値より高い励起用放射出力で照明された試料領域は、画像に全くまたはより少ししか含まれず、それによりルミネセンスを発する試料のボリュームが、励起された試料のボリュームに比べて空間的に縮小されるので、自動的に、励起用放射の照射に比べて解像度が高くなる。画像中には、励起用放射分布には存在しなかった光学的構造が認められる。つまり画像の解像度は、励起用放射カップリングの解像度より高くなっている。
【0033】
特に有利な方法では、励起用放射とは異なる光学特性を有するリセット用放射を照射することにより、第2の状態から再び(元の)第1の状態に戻すことのできる試料または色素を使用し、あるいは本発明による顕微鏡をこの試料または色素に同調させる。顕微鏡は、そのために適切な手段を有している。これは、第2の状態が、少なくともほぼ可逆的な状態にあることを意味する。閾値より高い励起用放射出力を照射することによってルミネセンス画像から遮蔽された領域は、次いでリセット用放射を照射した後に、再び第1の状態での標準のルミネセンスに励起することができる。このように、さらに発展された方法または、このように形成された顕微鏡は、試料の様々な領域を何度も結像させる適用例に適している。したがって、これは、第2の状態で、つまり閾値より高い励起用放射で照明した後に、励起用放射に対する感受性の低下を示す試料または色素を使用する適用例に好ましく、その際、励起用放射とは異なる光学特性を有するリセット用放射を照射することにより、感受性の低下が、少なくとも部分的に戻される(かつ第1の状態が回復される)。少なくとも閾値より高い励起用放射出力で照明された試料領域が、リセット用放射で照射される。その際、試料を再び第1の状態に移すリセット用放射が、解像度向上の達成に全く寄与せず、つまり、非常に大まかにしか構造化されず、または全く構造化されずに、試料にカップリングさせることもできることが重要である。
【0034】
本発明の特に有利な変更形態では、ルミネセンス特性に関し再び第1の状態に戻し得る試料により、走査による画像生成が可能となる。その際、試料は、例えばスキャナ機構によって、例えばスポット領域、ライン領域、またはマルチ・スポット領域で走査することができる。その場合、新たなスキャン・ステップの際に、その都度新たに閾値より高いおよび低い励起用放射を照射できるように、2つのスキャン・ステップの合間にその都度リセット用放射が照射される。それにより各スキャン・ステップで解像度の向上が達成され、これは全体として、明らかに解像度が改善された画像を提供する。
【0035】
つまり励起用放射分布の照射は、蛍光放射の局部的構造を発生させる。これは大抵、励起用放射分布に関して対称的である。特定の蛍光を発する例えば点などの面形状を所望する場合、蛍光を発する試料の一部分を遮蔽するのが有利である。隣接する蛍光を発する領域同士の間には十分な間隔をおくことができるので、これは所望の面形状の解像度に影響を及ぼさずに可能である。
【0036】
閾値より高くまたは低く試料を励起するために、原則的に2つの変形形態が可能である。第1の変形形態では、原理的に回折によって制限される照明が行われ、その照明は、点状であってもよく、または径方向に対称的であってもよく、または既知のエアリー関数のように中心に極大を有することもできるが、しかし、かならずしもそうする必要はない。この励起分布の形状では、励起用放射分布が回折によって制限されていることが好ましい。
【0037】
回折によって制限される励起用放射分布の場合、特に有利なことは、トーラス形の分布を使用することができ、この分布は、トーラス形の分布の核となる領域では閾値より高い励起用放射出力を有し、周縁領域では閾値より低い励起用放射出力を有する。その場合、トーラスによって画定される中心部では、回折によって制限されるエアリーの円盤よりも明らかに小さい点状のルミネセンス分布が達成される。もちろん、前述の対称の理由から、トーラスの外縁部にある試料領域も、閾値より低い励起用放射出力で照明されるので、そこでもルミネセンス放射が励起される。点状の蛍光画像を生成するためには、この領域を、例えばトーラスによって画定される中心部で発生するルミネセンス放射だけを通過させる共焦点検出によって遮蔽するのが実用的である。それでもなお、この場合、ルミネセンスを発する中心部は、共焦点検出自体の(回折によって制限される)解像度によって可能になるものより小さい。もちろん、別のやり方で遮蔽を達成することも可能である。例えば、外側領域のルミネセンス励起性を狙い通りに消すか、または画定された中心部の励起性を狙い通りに発生させることが可能である。したがって、本発明による方法または顕微鏡により、蛍光を発する領域の形状に同時に作用する場合、物理的な回折限界を超えた解像度が可能となる。
【0038】
第2の変形形態では、平面的構造を有する照明を使用し、その際、この平面は、一方向において回折によって制限される1本または複数本の線として形成することもできる。照明された平面のうち、ある部分領域は閾値より高い励起用放射出力を有し、別の部分領域は閾値より低い励起用放射出力を有する。このような平面的な照明により、比較的大きな試料を、特に速く走査することが可能となる。もちろん、同じことが、マルチ・スポット構成にも当てはまり、このマルチ・スポット構成では、回折によって制限される複数の照明スポットが試料に当たり、これらのスポットは、明確に別々に検出できるほど、空間的に互いに離れている。平面的構造を有する試料照明としては、特に縞格子または十字格子が考慮される。
【0039】
試料によっては、第2の状態にある試料領域がなおある程度の残余ルミネセンスを示すことがある。これは、試料自体によって、または例えば拡散によって異なる照明がなされた試料領域の間を、ルミネセンスを発する材料が移動することによって、引き起こされている可能性がある。例えば試料自体が邪魔な自発蛍光をしているか、または第2の可逆的な状態に移り得ない別の色素を含んでいる可能性がある。その結果、閾値より高い励起用放射出力で照明された領域内に、残余ルミネセンス放射が存在することになる。原理的にこの残余ルミネセンスは、検出時に適切な閾値によって抑えることができる。
【0040】
画像信号が改善される場合、それ自体既知のロック・イン技術を使用することで、背後の放射が抑えられる。このために、第2の状態に移される試料領域、または第1の状態に留まる試料領域への励起用放射を、基準周波数に基づいて強度変調し、ルミネセンス放射の検出の際、ロック・イン技術の過程で、この基準周波数を使用する。そのためにこの顕微鏡は、変調器と、ルミネセンス検出器の後に接続されたロック・イン増幅器とを有する。このロック・イン増幅器は、変調された信号を分離し、変調されていない信号を抑え、これにより前述の残余ルミネセンスの場合にも、利用信号のピーク・レベルを下げずに、高解像度の検出が可能になる。これにより変調された信号の全てが高解像の画像に寄与する。
【0041】
残余ルミネセンスを抑えるための可能な代替方法は、2つの画像を互いに差し引く差分法である。第1の画像は閾値より低い励起用放射出力で記録され、第2の画像は閾値より高い励起用放射出力で記録される。両方の画像の差が、残余ルミネセンスの分離を引き起こす。残余ルミネセンスを抑えるための可能な別の手法は、本発明の変形形態で使用される試料または色素のさらなる特性、例えば第1または第2の状態での異なるルミネセンス寿命の評価、第1または第2の状態でのルミネセンス放射の異なる光学特性の利用などを活用するものである。
【0042】
さらに、有利な実施形態では、焦点深度を高めるために、検出すべき焦点面の外にある試料部分を遮蔽する。これにより同時に、軸方向の解像度が、横方向の解像度からデカップリングされる。そのためにまず試料を、構造化せずに第2の状態に移し、次いで焦点面内だけを戻す。同じことが、焦点面内に極小を有する、励起用放射強度の適切な深さ構造化によって達成される。そのために、独国特許出願公開第102 57 423号明細書の原理に基づく構成を、適切に改変することができる。
【0043】
冒頭に挙げた本発明による顕微鏡は、有利な実施形態では、上に挙げたさらなる形態の1つまたは複数を実施している。励起用放射は、ルミネセンスを励起するためにも、ルミネセンスを阻止または低減するためにも使用されるので、有利なことに励起用放射を放出する励起用放射源を1つしか備えなくてよく、この励起放射源の後には、ビーム・プロフィルに極小を好ましくは可変の深さで形成する機構が配置されており、その際、極小の出力は閾値より低い。
【0044】
第2の課題は、本発明によれば、照明用放射線源および検出用放射線経路を備えており、この検出用放射線経路が、試料内で励起および/または後方散乱された放射を、光軸に沿って検出器機構に導き、この検出用放射線経路内に、照明用放射線源から放出された照明用放射線経路内の照明用放射を試料上に向けるビーム・スプリッタが備えられており、ビーム・スプリッタが、試料で鏡面反射された照明用放射を検出器機構へは通過させず、そのために照明用放射線経路の瞳内に配置されており、かつ部分的にミラー・コーティングされている走査型レーザ顕微鏡であって、ビーム・スプリッタが、検出用放射線経路内にあるビーム・スプリッタ面を有しており、このビーム・スプリッタ面が、ビーム・スプリッタ面の光軸突破点を中心とした円上にある3つの点でミラー・コーティングされており、照明用放射線源が、点の数に対応する数の部分放射線を発生させ、この部分放射線を、試料一面に周期的に分布する照明スポットの形の干渉パターンが試料内に生じるように、ビーム・スプリッタの点上に合焦させる、走査型レーザ顕微鏡によって解決される。
【0045】
もちろん、本発明による解決策は、逆にビーム・スプリッタが検出用放射を外に鏡面反射し、鏡面反射された照明用放射を通過させることも可能である。そのために、照明用放射線源および検出用放射線経路を備えており、検出用放射線経路が、試料内で励起および/または後方散乱された放射を光軸に沿って検出器機構に導き、この検出用放射線経路内に、照明用放射線源から放出された照明用放射線経路内の照明用放射を試料上に向けるビーム・スプリッタが備えられており、ビーム・スプリッタが、試料で鏡面反射された照明用放射を検出器機構へは通過させず、そのために照明用放射線経路の瞳内に配置されており、かつ部分的にミラー・コーティングされている、走査型レーザ顕微鏡であって、ビーム・スプリッタが、検出用放射線経路内にある反射性のビーム・スプリッタ面を有しており、このビーム・スプリッタ面が、ビーム・スプリッタ面上の、光軸突破点を中心とする円上にある少なくとも3つの点で、照明用放射のためにミラー・コーティングされておらず、照明用放射線源が、点の数に対応する数の部分放射線を発生させ、この部分放射線を、試料一面に周期的に分布する照明スポットの形の干渉パターンが試料内に生じるように、ビーム・スプリッタの3つの点上に合焦させる、走査型レーザ顕微鏡が提供される。
【0046】
本発明は、簡単な構成を用いて効率の高い点群生成を達成する。
本発明によれば、ビーム・スプリッタは、干渉によって生じたパターンの形の点群で試料を照明するように形成される。これにより、照明されたスポットで検出器機構が多点検出を行う場合、複数の点の並行照明およびこの同時に照明された点の並行走査が可能となる。その結果、深さ解像度を損なわずに、一点照明に比べて点の数だけ倍増された走査速度が得られる。規則的な点群パターンによる試料の照明(蛍光顕微鏡検査においては励起)は、本発明によれば、干渉効果を活用して行われ、そのため、照明源が準備する照明用放射線の数は、規則的なパターン内の照明スポットの数よりかなり少ない。干渉効果のためには、ビーム・スプリッタに少なくとも3つの反射性の点/透過性の孔があればよく、この点/孔に照明用放射が合焦されるので、少なくとも3つの照明用放射線が、ビーム・スプリッタでカップリングされる。この数の照明用放射線(本明細書での「放射線」の概念は、対応する放射線束と同義に使用される)は簡単に生成可能である。例えば出力放射線の場合は、2つのスプリッタ要素しか必要でない。したがって照明用放射線源は、レーザ放射線を放出するレーザと、レーザ放射線を少なくとも3つの部分放射線に分け、光学系機構によって点/孔上に合焦させるスプリッタ機構とを有することが好ましい。
【0047】
反射性または透過性の点の数は、3つに限定されているわけではない。より多くの点を使用してもよく、この点は、円上に対称的に、または円の線に沿ってできるだけ整った分布または等間隔であるべきで、但し分離していなければならない。4つの点の場合、これらの点は、例えば中心に突破点がある正方形の角にあってもよい。
【0048】
干渉を活用して照明をもたらすビーム・スプリッタを備えた本発明による顕微鏡は、既に説明したように、照明および場合によっては検出を並行に行うことによって、高い走査速度を達成する。これに加え有利な実施形態では、画像平面の走査は、周期的な点群パターンの周期内だけの変位を実施すればよいので、走査に必要な走査メカニズムに対する要件を大幅に下げることができる。つまり、例えば放射線経路内で作動する光学スキャナとして走査機構が形成されている場合、比較的小さい偏角を達成すればよい。このことは、機器の簡略化と同様に、走査速度に影響を及ぼす。したがって、一変更形態では、照明方向においてビーム・スプリッタの後方に走査機構が配置されることが好ましく、この走査機構は、試料全体の点群パターンの変位を、点群パターンの周期内で行う。その際、放射線を偏向するように作用する走査機構だけでなく、もちろん、例えばいわゆる卓上スキャナによる試料の移動を使用してもよい。
【0049】
照明の点群パターンを干渉に基づき生成することで、光スポットの周りの暗い領域に対する光スポットの明るさを簡単に調節でき、つまり、それぞれ対角線上で向かい合って合焦された部分放射線の強度を変化させることによって調節を行うことができる。したがって本発明の一変更形態では、変化させるための適切な手段を備えており、この手段は、照明方向においてビーム・スプリッタの前に配置されており、例えば調整可能な減衰要素の形で形成されている。
【0050】
照明用放射線経路において、基本的に、ビーム・スプリッタが中に配置された瞳の結像が試料上で行われる場合、点群パターン内の明るいスポットの数は、専ら試料上の照らし出された領域に依存する。試料の照明された領域、つまり試料点の数は、ビーム・スプリッタと試料との間の結像の焦点距離を変化させる手段によって簡単に作用され得る。言い換えれば、光学結像によって捕捉される画像面積を変化させる手段により、自動的に、干渉によって試料上に生じる照明点の数が変化する。
【0051】
既に説明したように、試料上で同時に照明されたスポットを並行検出すると、撮像速度が高まる。検出用放射線経路が、マトリクス検出器内で終端する場合、そのような並行走査を特に簡単に達成することができ、この検出器の前には、任意で、照明パターンに同調させたピンホール・マスクを配置してもよい。しかしもちろん、マトリクス検出器の空間解像要素も、ピンホール・マスクの機能を引き受けることができる。
【0052】
ビーム・スプリッタの反射性要素は、照明用放射だけを反射しなければならず、検出用放射は反射しない。つまりビーム・スプリッタは2色性に形成してもよい。
点群パターン内の点の間隔は、ビーム・スプリッタでの焦点の間隔を介し、つまり円半径を介して調整し得る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】a及びbは現況技術の方法に関する位置依存性の出力分布図。
【図2】a−cは現況技術に基づく解像度向上のための方法を示す概略図。
【図3】現況技術に基づき解像度を高めた蛍光顕微鏡を示す図。
【図4】試料の蛍光特性曲線を示す図。
【図5】本発明による解像度向上を示す概略図。
【図6a】第1の方法形態に基づき解像度を高めた際に生じる1次元または2次元の出力分布図。
【図6b】第2の方法形態に基づき解像度を高めた際に生じる1次元または2次元の出力分布図。
【図7】第3の方法形態を示す図6a/bと同様の図。
【図8a】第4の方法形態を示す図6a/bと同様の図。
【図8b】第5の方法形態を示す図6a/bと同様の図。
【図9a】第1の解像度を高めた顕微鏡を示す概略図。
【図9b】第1の解像度を高めた顕微鏡を示す概略図。
【図10】図9の顕微鏡の作用方法を明らかにするための図6aと同様の出力分布図。
【図11a】特性曲線を示す図4と同様の図。
【図11b】第2の解像度を高めた顕微鏡を明らかにするための出力分布図。
【図12】第2の顕微鏡の概略図。
【図13】第3の解像度を高めた顕微鏡の概略図。
【図14】第3の顕微鏡の機能方法を示す概略図。
【図15a】第4の顕微鏡の一部の概略図。
【図15b】第4の顕微鏡の一部の概略図。
【図16a】第4の顕微鏡の瞳内の励起用放射またはリセット用放射の分布図。
【図16b】第4の顕微鏡によって実現されるマルチ・スポット分布図。
【図17】第4の顕微鏡の場合の蛍光分布図。
【図18】第4の顕微鏡の一変形形態の瞳内の励起用放射またはリセット用放射の分布図。
【図19】走査型レーザ顕微鏡の概略図。
【図20】図19の顕微鏡のための照明源の代替実施形態を示す図。
【図21】図19の顕微鏡のビーム・スプリッタの俯瞰図。
【図22】図19の顕微鏡によってもたらされる試料上の照明パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下に本発明を、図を参照しながら具体的に、より詳細に説明する。
以下では、方法技術に関する説明および顕微鏡の説明において、解像度を高めたルミネセンス顕微鏡検査のための様々な実施形態を示す。これは純粋に例として、様々な蛍光顕微鏡または蛍光顕微鏡検査方法に基づき行われる。もちろん、以下に説明する例示的実施形態、つまり方法形態および顕微鏡は、それとは別のルミネセンスを発する物質、例えばリン光を発する試料または色素にも使用可能である。以下で色素について説明する場合、これも例としてのみ理解されなければならない。もちろん、試料のプレパラート作成に使用可能な色素の代わりに、直接蛍光を発する(またはリン光を発する)物質も、試料として成立可能であり、それにより色素添加をしなくて済む。別の特性を示し、第2の状態に移せないような、追加の色素も使用可能である。さらに個々の方法形態または顕微鏡に対して説明した特徴は、説明した別の方法形態または顕微鏡にも使用可能であるので、ここでは説明していない組合せも可能である。
【0055】
図4は、本発明により使用される色素に関する蛍光特性曲線17を例として示している。この蛍光特性曲線17は、放出された蛍光放射Fの出力Lを、励起用放射Aの出力Lの関数として表している。図から分かるように特性曲線17は、極大18まではほぼ線形に、少なくとも単調に上昇し、その後、励起用放射出力に関する閾値19の先では再び下降する。それぞれ閾値19または極大18の左と右にある2つの状態の領域が認められる。閾値19より低い励起用放射出力が照射される場合、色素は、主に第1の状態5にある。第1の状態の色素は、蛍光放射を放出し得る。励起用放射出力が閾値19より高くなると、第2の状態6への色素分子の変化が起こる。第2の状態6の色素分子は、蛍光を発することができず、かつ/または光学特性が変化した蛍光放射を放出し、かつ/または第1の状態5に対して変化した吸収特性を有する。蛍光の放出または吸収に関して変化する光学特性は、蛍光放射のスペクトル組成および/または偏光および/または寿命であり得る。結果として、第2の状態の領域では、第1の状態5で放出される蛍光放射の種類に比べて、蛍光放射Fの出力が再び減少する。
【0056】
本発明は、励起用放射Aの照射が、試料のある部分だけを第1の状態領域(または略して第1の状態)5にし、しかし試料の別の部分は第2の状態領域(または略して第2の状態)6にするために、特性曲線17を使用する。そのため閾値19より高い励起用放射出力で照明された/される領域は、特定の蛍光放射を減少させてしか放出しない。その際、第2の状態6が可逆的な状態である場合が有利である。これは少なくともある程度の時間の後または積極的な作用によって、一度、閾値19より高い励起用放射出力で照射された色素が、再び第1の状態5の特性を示すことを意味する。発明者が、図4に基づく特性曲線を示すものとして認識している色素の例は、出版物 R.アンドウ他(R.Ando et al.)「Regulated fast nucleocytoplasmic
shuttling observed by reversible protein highlighting」、Science 2004年11月19日、第306巻、1370〜1373ページに記載されているドロンパ(Dronpa)という名称の物質である。この色素は、アマルガム社(Amalgaam)[米国マサチューセッツ州ウォバーン(Woburn)所在]が、ドロンパ・グリーン(Dronpa−Green)、コード番号AM−V0071の名称で提供されており、これまでは細胞膜を通る輸送特性が検査される分子の蛍光標識に関連して知られている。この色素ドロンパは、488nmの波長で励起させることができ、第2の状態6に励起された後は、405nmの波長での放射によって再び第1の状態5に戻し得る。
【0057】
試料を照明する際に、適切な励起用放射分布と組み合わせることにより、図4の特性曲線または対応する特性曲線を有する色素の使用が解像度を明らかに向上させる。その際、現況技術とは違い、1つの波長の放射だけを照射し、この放射だけが解像度に寄与する。色素が自発的に第1の状態5に戻らない実施形態では、リセット用放射を照射することによりリセットを達成し得るが、しかし、このリセットは解像度の向上のためには顧慮されない。
【0058】
励起用放射Aにより、基底レベルから第1の励起レベル(第1の状態5)への色素分子の励起と共に、蛍光の阻止またはデポピュレーション(第2の状態6)も達成される。デポピュレーションの場合は、第1の状態から第2の状態への色素分子の遷移が行われる。両方の状態は、互いに異なる光学的な蛍光特性を有している。励起用放射Aで励起するとすぐに、高解像の蛍光画像が取得可能であり、その際、励起用放射Aの光学解像度に関して解像度が高くなる。色素が第2の状態から自発的に第1の状態に戻らない場合、積極的に、例えば励起用放射Aとは異なる光学特性を有するリセット用放射Rによってリセットを達成する。対応する概略図が図5に示されている。
【0059】
例えば検査する試料Pは、元々、蛍光放射Fの出力が励起用放射Aの出力によって上昇する第1の状態5にある。励起用放射Aの照射は、個々の試料領域B2では、励起用放射出力が閾値19より高くなるように行われる。別の領域B1では、励起用放射出力は閾値より低い。そのため励起用放射の出力が閾値19より高いか低いかに応じて、幾つかの試料領域は第1の状態5にあり、別の領域は第2の状態6にある。図5は、励起用放射Aの照射による、第1の状態5にある試料領域B1(図5の下半分の右側の部分)および第2の状態6にある試料領域B2(左側の部分)への試料の遷移を概略的に示している。第2の状態6にある試料領域B2は、とりわけ閾値19より明らかに高い励起用放射出力が使用された場合、効率よく蛍光を発することができなくなる。その際、「蛍光を発する」という概念は、特定の特性を有する蛍光放射に関する。それはつまり、第2の状態6でも蛍光放射を放出することは完全に可能であるが、但し第1の状態5での蛍光放射とは異なる特性を有する。つまり第2の状態では、試料の吸収特性または/および蛍光特性が変化している。
【0060】
第1の状態5のままである試料領域B1は、励起用放射Aの照射後も、同じ蛍光放射Fを放出する。リセット用放射Rの照射(図5に、この工程が、対応する矢印によって分かりやすく示されている)は、試料P全体を、再び第1の状態5に持っていき、つまり異なる蛍光を発する2つの試料領域B1およびB2への分割が元に戻る。
【0061】
第1の状態5にある試料領域B1および第2の状態6にある試料領域B2への試料の分割により、蛍光放射Fの放出を、励起用放射Aで照明された試料Pの元々のボリュームより小さく制限することが可能となる。つまりこのため、蛍光を発する画像に、元々の励起用放射分布には存在しなかった構造が達成され得る。これは特性曲線17の非線形性を巧みに利用することによって起こる。
【0062】
図6aおよび図6bは、解像度を高めるための励起用放射分布を推測できるように、2つの方法形態を示している。両方の図は、左に励起用放射分布または蛍光放射分布の1次元断面を示す。右はそれぞれ、上から見た蛍光放射分布の2次元画像である。
【0063】
図6aでは、点状に分布された励起用放射Aが照射される。この分布は、この場合、回折に制限されたエアリー分布である。これにより色素では、蛍光放射Fが、楕円形のドーナツ分布で励起され、この分布は、横方向の2次元画像において、蛍光を発する円形リングとして示されている。試料領域B1だけが蛍光を発する。軸方向には、蛍光を発する楕円形のリングが現れる。この試料領域B1は、励起用放射の回折限界が許容される程に小さい。
【0064】
これに対し図6bに示したように、同様に回折に制限されたドーナツ形の分布で励起用放射Aを照射した場合、リング形の蛍光を発する領域に囲まれており、かつ縮小されたエアリー分布に対応する放出性の試料領域B1が生じる。このため断面図では、蛍光放射Fの分布内に3つのピークが試料領域B1として示されている。ここでも点像分布16は、回折限界が許容される程に小さい。標準の点像分布を介した解像度の改善は、主に特性曲線17および励起用放射Aの出力分布からの組合せに依存する。
【0065】
リング形の外側の領域を遮蔽するため、さらに共焦点検出ボリュームDを適切に調整することで、真ん中のピークを選び出す共焦点検出を実施し得る。これは第3の方法形態として概略的に図7に示されている。検出もされた、蛍光を発する試料領域B1は、真ん中のピークから成る。全体として、例えば画像を生成するボリュームB(図7の右の図における点線)が達成されており、このボリュームは、通常の点像分布の2.5分の1の細さ、それどころか共焦点の点像分布の1.7分の1の細さである。図6bまたは図7の右の図に引かれたカーブが示すように、ドーナツ形の励起分布の場合、画像を生成するボリュームBの結果として生じる分布または図6bの点像分布の真ん中のピークは、放射方向に対称的である。照明スポットを2つ使用する場合、スポットの極大を結ぶ線に沿って、解像度が最大に高められる。
【0066】
代替として、図6bにおける蛍光を発する外側のリングは、共焦点検出ボリュームDの領域内で、色素を第2の状態6から第1の状態5に狙い通りにリセットすることにより遮蔽される。この措置/原理は以下の通りである。まず励起用放射で、検査する試料区間が完全に第2の状態に達するように励起される。続いてリセット用放射Rを、共焦点検出ボリュームDに適切な分布で照射し、これにより、ある試料部分がリセットされる。図7に基づく励起用放射分布Aで再び励起すると、この試料部分にある画像を形成する領域Bだけが第1の状態に達し、図7の変形形態でも残っているような真ん中のピークの形において、蛍光放射Fを放出する。リング形の外側の領域は第2の状態に留まり、蛍光を発しない。
【0067】
第4の方法形態では、例えば図8aに示されているような構造化された平面的な照明が行われる。x方向に正弦状に分布した励起用放射Aは、正弦状の出力分布の谷で蛍光放射Fを発する。蛍光を発する試料領域B1は縞状である。しかしながら、この縞は、励起用放射Aの正弦状の分布の縞より明らかに細い。これに関し、励起用放射Aの正弦状の分布は、極小として零点を有していない、または有する必要がないことが有利となる。結果として生じる蛍光放射Fの分布は、その高さについては、励起極小の出力に依存するが、しかし幅については依存しない。つまり正弦状の励起用放射分布の極小の深さは、縞の幅には関係なく、そのため解像度にも関係ない。例では、励起用放射Aの正弦状の縞の分布の周期は、その解像度の限界周波数に調整されている。検出器には、例えばマトリクス検出器を使用する。縞の幅、したがって解像度は、この解像度の限界周波数に対して6倍だけ改善されている。解像度の高い画像は、この縞パターンの変位によって取得される。
【0068】
代替として、縞状の遠視野照明の代わりに、焦線状の照明を使用してもよく、その際、この線は、その長手軸に沿って(例えば正弦状に)変調されており、そのため、出力が閾値より高い線区間および閾値より低い線区間がある。走査運動は、線に対し垂直に、および線に沿って行われる。検出器は、適切に高く解像するライン検出器である。
【0069】
図8bは、図8aの第4の方法形態のさらなる形態を示している。この第5の方法形態では、解像度放射Aの分布の構造化が、両方の横方向の軸において、つまり試料平面において行われ、そのためマトリクス状の照明スポット分布が得られる。これが図8bの左半分の断面図において1次元で示されている。明るい励起スポットから成るマトリクスが、光軸に対し垂直に、試料上に結像されている。各照明スポットに1つの検出器が割り当てられている。試料に対しスポット・パターンを変位させることで、点の間の隙間を同様に測定することができる。マトリクス状のパターンの変位を行わなければならない領域は、図8bに、領域G1として示されている。例えば通常の走査型レーザ顕微鏡によって既知のような、スポット・マトリクスの走査により、全体として、個々の領域G1から全ての領域G2が構成される。この並行化により、非常に高い走査速度が達成される。同時に解像度は、断面図での蛍光放射Fの細いピークが示すように、励起用放射分布の解像度を超えて高められている。
【0070】
ここまでは横方向の解像度だけを説明してきたが、これらの実施形態に関して、軸方向の解像度も改善されている。
図9aは、説明した方法形態のそれぞれを実現可能な走査型レーザ顕微鏡を示している。方法形態1〜方法形態3用の走査型レーザ顕微鏡20は、例えば一点走査型顕微鏡として形成される。この顕微鏡は、励起モジュール21と、顕微鏡モジュール22と、検出器モジュール23とを有している。顕微鏡モジュール22では、試料24が対物レンズ25の焦点内にあり、この対物レンズの照明方向における手前に、鏡筒レンズ26が接続されている。この光学系の前には走査光学系27があり、この走査光学系によりスキャナ28と共に、試料上での焦点の変位による試料24の走査が可能となる。主カラー・スプリッタ29は、励起用放射モジュール21から顕微鏡モジュール22へと放射をカップリングさせ、試料24に受け止められた放射を、顕微鏡モジュール22から検出器モジュール23へと分離する。
【0071】
励起モジュール21は光源30を備えており、この光源の放射は、主カラー・スプリッタ29を介して、試料24内の焦点に集束される。試料24の焦点内で励起された蛍光放射Fは、対物レンズ25によって集められ、主カラー・スプリッタ29で、励起用放射Aに対し変化したスペクトル特性に基づき、ピンホール光学系31へとデカップリングされ、このピンホール光学系の後方には、ピンホール32および(任意で)ブロック・フィルタ33が接続されている。点検出器34が、焦点での蛍光放射Fの出力を捕捉する。この捕捉は、追加としてスペクトル分解、偏光分解、および/または時間分解で行われる。検出器34の信号は、走査型レーザ顕微鏡20の稼働全体を制御する制御装置35によって読み取られる。
【0072】
解像度を高めるため、特定の出力分布で、焦点24内への励起用放射Aの照射を行う。励起モジュール21内には、この出力分布を予め定め、かつ調整するために適切な構成が備えられている。図9aの設計は、光源30の放射線出力の50%をデカップリングさせるビーム・スプリッタ36を有している。実施形態においてビーム・スプリッタ36は、偏光ビーム・スプリッタである。この方法で分けられた部分放射線は、その後、さらなるビーム・スプリッタ40を介し、再び同じ放射線へと合わせられ、その際、部分放射線の強度および位相は前もって適切に調整される。追加として、片方の部分放射線内に位相要素39が置かれ、この位相要素は、固定的な位相要素または可変に調整可能な位相要素として形成され得る。位相要素39は、例えば位相が変化する領域44および位相が中立な領域49を有しているので、放射線内にドーナツ形の出力分布を生じさせる。ビーム・スプリッタ40以降で、両方の部分放射線を重ね合わせることにより、図10に基づく励起用放射Aが得られる。位相要素39の構成が、具体例として図9bに示されている。重ね合わせる前の両方の部分放射線の出力割合を調整するため、各部分放射線内にはさらに、可変の減衰器37または38が置かれている。
【0073】
結果として、光軸に対し垂直に走るx軸に沿った断面図として図10に示されているような、励起用放射Aの出力分布が得られる。この分布は極小45を有しており、その深さは、例えば制御装置35で、減衰器38または37を調整することにより、つまり両方の部分放射線の相対的な出力を変化させることにより、可変に調整可能である。極小45を適合させることで、同様に図10に記された蛍光放射Fの強度を、最適に調整することができる。
【0074】
可変に調整可能な位相要素を使用することで、部分放射線を形成せずに、極小45の深さを調整することも可能である。このような位相要素として液晶から成るマトリクスが考慮されており、その場合、個々のピクセルのそれぞれの位相を調整可能である。もちろん、調整可能な極小45を有するドーナツ形の放射線分布を生成するための、別の機構でもよい。
【0075】
試料領域B2を第2の状態6から第1の状態5に任意でリセットするため、リセット用放射源41を装備可能であり、このリセット用放射源は、第3のスプリッタ42を介して、励起モジュール21の励起用放射線経路内に組み込まれている。しかしながら、この設計は任意であるので、図9aではこの要素を破線でも表示している。リセット用放射源41は、試料24の色素が自発的に再び第1の状態に戻らず、光学的なリセット用放射Rによる積極的なリセットを必要とする場合だけ必要である。しかし、リセット用放射は、他の方法で試料24上に施してもよく、例えば走査型レーザ顕微鏡の脇に取り付けたリセット用放射線源により、対物レンズ25の光軸に対し斜めに照射することによって施すことができる。
【0076】
図9aの顕微鏡は、最初に説明した方法形態を実施可能である。その際、第3の方法形態は、検出器モジュール23内のピンホール32およびピンホール光学系31を使用する必要がある。共焦点検出を必要としない場合は常に、そのために必要な構造(31、32)をなくすことができる。
【0077】
図11aは、本発明による解決手段のさらなる改善の可能性を示している。部分領域B2内の試料の第1の状態から第2の状態6への移行が、完全には行われない可能性がある。それは、例えば、蛍光特性曲線17が、最大値18の後、つまり閾値19より高い励起用放射Aの出力に関し、十分に急に減少しない場合である。図11aの例で特性曲線17は、高い励起用放射出力の場合も零までは戻らない。減少分46が最大値18に対応していないので、これは、第2の状態6にある試料領域B2での残余蛍光47を引き起こす。その後、図9aに基づく顕微鏡で、例えば第3の方法形態を実施して蛍光放射Fを測定した場合、画像を形成するボリュームBは、解像度の低い土台部Sおよび解像度の高い分布Vから構成されるだろう。これは図11bに概略的に、土台部Sを斜線で、および解像度の高い分布Vを黒で示している。
【0078】
同じ作用が、試料内の蛍光を発する材料、例えば色素分子の多くが、強い拡散性を示す場合に生じ得る。この場合も、試料領域B2内で残余蛍光47が生じるが、比較的ゆるやかに下降する特性曲線17ではなく、蛍光を発する材料の拡散に基づいている。
【0079】
適切な撮像によって、土台部Sを抑えることが可能である。これを実現する第2の走査型レーザ顕微鏡20の実施形態の具体例が、図12に示されている。図9aの設計と一致するコンポーネントには同じ符号を付しているので、その再度の説明は省略し得る。
【0080】
図9aの設計とは異なり、検出器34がロック・イン増幅器48と接続されており、その接続は、図12では、単に具体例として、制御装置35を介して実現されている。もちろん、直接の接続も可能である。またロック・イン増幅器48を制御装置35に一体化させてもよい。ロック・イン増幅器48は、極小45をその振幅において変調する周波数発生器49と接続されている。これに関し、両方の部分放射線の片方の出力が、励起モジュール21内で適切に変調され、それは例えば両方の減衰器37または38の片方を制御することによって行う。図12では、減衰器38の制御回路が、その任意性を示唆するため破線で示されている。もちろん、減衰器の制御は、周波数発生器49の信号を適切に評価する制御装置35で行ってもよい。既に説明したように、ロック・イン増幅器48および/または周波数発生器49は、制御装置35の構成部材であってもよい。
【0081】
周波数発生器49により、極小を変調させるために準備された周波数は、ロック・イン増幅器48にも送られる。極小45の変調によって、第1の状態5にある試料領域からの信号が変化し、それに引き換え、土台部Sからの信号はそのまま変わらない。ロック・イン増幅器48は変調された信号を取り出し、土台部Sからの信号を抑える。結果として、土台部Sから分布Vが分離され、第2の状態6への移行が不完全な場合にも、高解像度の検出が達成される。
【0082】
追加として、同じままの信号の部分を狙い通りに使用する場合、解像度の高くない画像データが得られる。この画像データは、例えば、異なる仕方で蛍光を発する試料領域/試料特性に関する。高解像度および低解像度のものを、随意にコード化し(例えばカラー・コード化し)重ね合わせて示してもよい。
【0083】
このロック・イン検出の代替または追加として、2つの画像を記録することも可能である。第1の画像は極小45を有する励起用放射分布によって記録し、第2の画像は極小45なしで記録する。土台部Sから高解像の分布Vを分離するには、これらの画像が互いに差し引かれるだけでよい(第1の画像−第2の画像)。結果の画像には、高解像の分布Vによるデータしか含まれていない。低解像の土台部を抑えるためのさらなる可能な手段として、両方の状態の寿命が異なる場合など、第1の状態5および第2の状態6の異なる光学特性を利用し得る。また第1の状態5と第2の状態6との間の放出スペクトルの異なる特性または吸収スペクトルの異なる特性を使用してもよい。
【0084】
図13は、線状の照明による方法形態の1つを実現するための、図9aの走査型レーザ顕微鏡20の別の1つの変形形態を示している。ここでも図9aと一致する要素には同じ符号が付されているので、その説明は再び省略し得る。さらに、中央の放射線だけが記されている。
【0085】
コヒーレントな光源30は、その放射を、2つの1次回折oおよびo、ならびに1つの0次回折を発生させる格子50を通して放出する。この格子の後方には、ここではアナモフィック要素のための例であるシリンダ・レンズ50aが配置されている。試料には、光軸に対し垂直な線が合焦される。
【0086】
これらの回折次数が、合焦時にかすりながら互いに差し込み合い、試料内で干渉に達する。タルボット効果によって、いわゆるタルボット格子が光軸OAに沿って現れる。これは、図14の上半分に概略的に示されている。+1次と、0次と、−1次とが異なる角度で、試料24内で差し込み、干渉が、当業者に既知のタルボット構造を生成する。
【0087】
試料内の作用は図14の下半分に示されており、この図は、試料の深さ断面(x、z面)を示している。強度が高い位置(黒い領域B2)では、試料は第2の状態6に達し、つまり色素分子の切替えにより、励起状態のデポピュレーションが達成されている。強度が低い領域B1では、試料は第1の状態5のままである(斜線領域および白い領域)。
【0088】
検出はライン検出器34によって行われ、この検出器は、図13の設計では、具体例として制御装置35と一体化されて示されている。ライン検出器34の前に、再び(任意で)ブロック・フィルタ33が置かれている。さらに、必要な深さの平面を共焦点選択するため、およびそれにより斜線領域だけを検出するため、ライン検出器34の前に、(図13では、ライン検出器34に直接取り付けられているので図示されていない)x軸に沿ったスリット絞りが配置されている。
【0089】
スキャナ28により、励起用放射分布が、光軸に対し垂直に、つまりx軸およびy軸に沿って、試料24全体を移動することが可能となる。任意で、図5に分かりやすく示されているように色素を第2の状態6から第1の状態5に切り替えさせ得るリセット用放射源41によって、例えば試料24内のx軸に沿った均質な線を生成し得る。この線は、第2の状態6にある試料領域B2に適合する照明パターンを有することも可能である。この理由は、この領域しかリセットする必要がないためである。
【0090】
つまり、図13に基づく走査型レーザ顕微鏡は、図8aに基づく方法形態を実現する。極小45の深さは、格子の質または各次数の個々の減衰によって生じ得る。
図15aは、図8bに基づく方法形態を実現するための構成を示しており、この場合、走査型レーザ顕微鏡20のうち、その他の顕微鏡モジュール22は既に説明した構成を有しているので、ここでは励起モジュール21だけが示されている。光源30から、第1のビーム・スプリッタ53により、2つの部分放射線が生成され、ここでは図の面に対し垂直方向に間隔をあけている。第2のビーム・スプリッタ52は、全部で4つの平行に走る部分放射線を生成させる。図15bは、90°回転させた構成の断面を示している。全体として、同じ強度の4つの部分放射線54、55(中央の放射線が描かれている)が存在している。それぞれの図で、2つの部分放射線が同じ経路を取っているため遮られて見えていない。
【0091】
部分放射線は、レンズを介して顕微鏡モジュール22の瞳内へ合焦され、これにより、図16aに示された瞳の境界線56内に点分布が生じる。4つの部分放射線55、54が正方形の角を占めている。試料24内で部分放射線が干渉に達することにより、試料24上に、光軸に対し垂直に、図16bに基づくマルチ・スポット・パターン58が生じる。このマルチ・スポット・パターン58の零点の深さは、例えば、それぞれ対角線上で向かい合った放射線54、55の強度を変えることで変化させ得る。これに関し、調整可能な適切な減衰器(不図示)が、部分放射線のために備えられている。
【0092】
試料24は、図16bのマルチ・スポット・パターン58内の強度の高い位置(明るい領域B2)で第2の状態6に達している。蛍光放射Fは、強度の低い領域B1(暗い領域)で発生する。蛍光放射Fはその後、通常通り主カラー・スプリッタ29で分離される。検出器54は、スポット・パターンに適合させたマトリクス検出器であり、任意で、ピンホール・マスクが前に接続される。検出器要素は、領域B1に位置合わせされている。ここでも、スキャナ28により、励起用放射分布を、x方向および/またはy方向において試料24全体に変位させることが可能となる。図17は、下側の画像にマルチ・スポット・パターン58を示し、それによって励起された蛍光パターン59をその上に示している。
【0093】
リセット光源41によって、さらなる放射線57を瞳内に合焦可能であり、それによりこの放射線は、試料24内で均質な面を照らし出す。これにより、既に説明したように2つの走査工程の合間、および場合によっては1つの走査工程内にも、第2の状態6から第1の状態5への蛍光分子のリセットが行われる。
【0094】
しかし領域B2だけをリセットすればよいため、リセット用放射線47は、領域B2に対応する照明パターンを有していてもよい。これに関し、放射線47は、部分放射線54、55に従い、同様に4つの部分放射線に分光され、瞳内に結像されるので、瞳の境界線56内に、例えば図18に示された分布を生じさせる。これに加え、リセット用放射Rの部分放射線57の光軸は、励起用放射Aの光軸に対して、試料内に生じる励起用放射Aのマルチ・スポット・パターン58の極小が、マルチ・スポット・リセット・パターンの極大と重なるように角度調節されている。図18の変形形態における図15aに基づく実施形態は、リセット用放射を適切に構造化することにより、領域B2内だけで、試料または色素を傷めないリセットを行うための具体例である。
【0095】
励起用放射Aを適切に照射することによって、試料を、第1の状態にある領域B1および第2の状態にある領域B2に分けることが重要である。そのため、試料領域の第2の状態への移行を、試料平面の深さ選択のために使用することも可能であり(図14参照)、これにより、試料領域B1は、隣接する検出器要素/検出器領域のクロストークに寄与し得ない。
【0096】
前出の様々な変形形態の中で説明した方法または顕微鏡のために、励起用放射Aの位置分布を特に考慮し、試料の蛍光特性に応じて、励起用放射Aの出力を調整することが重要である。特に、その分布の励起用放射の1つまたは複数の極小45の深さおよび対応する極大の高さが、達成可能な解像度の向上度を決定する。励起用放射Aの位置的な出力分布の調整の最適化は、2つのやり方で実現し得る。最適化のために、例えば制御装置35が適切に使用可能である/になる特性曲線17が認識されている場合、所定の位置的な励起分布のために最適な出力レベルを算出し、例えば規定値の出力によって、または、それどころか励起モジュール21を直接制御することによって、適切に調整する。
【0097】
代替または追加として、検査する試料のテスト・プレパラートまたは参照箇所で実際の解像度を確定し、所定の励起分布での最適な出力レベルを、反復工程において確定し、その後、試料24の結像のために使用することも可能である。
【0098】
もちろん、出力スケーリングだけの代わりに、例えば位相要素39を適切に調整することによる分布変更も可能である。
試料24の蛍光特性、例えば色素の蛍光特性は既に、後の画像取得条件下での、テスト・プレパラートまたは試料の参照箇所の検査によって確定可能である。これに関し、検出される蛍光放射Fの出力は、試料のある点または領域での励起用放射Aの出力に応じて確定される。特に優れた調整のために有利なのは、(放出される蛍光放射Fの出力とは異なり)蛍光特性、つまり特性曲線17が、色素などの蛍光を発する材料の濃度に依存しない場合である。これにより、走査型顕微鏡20の制御装置35は、確定された曲線17、もしくは供給またはメモリ内に格納された曲線17から、最適な出力を自動的に確定し、適切に調整することができる。
【0099】
蛍光特性の試料依存性が強く、および蛍光特性を確定するための試料の参照箇所が存在する、または見つけられない場合は常に、反復決定が有利である。この場合は、関心のある試料エリアの中または外の限定された領域、もしくは結像する試料エリア全体での画像形成に基づき、出力の最適化を行うか、または制御装置35によって実施させる。解像度の質の基準(選択された箇所でのコントラストまたはフーリエ空間で画像内において伝達される周波数域の拡大など)に基づき、励起出力を最適化する。その際、一般的には、励起分布の極小での出力または空間的に広く分布した基礎出力を適合させれば十分である。
【0100】
励起用放射Aおよびリセット用放射Rは、1つの放射源から生成し得る。この放射源は、直接的に切替え可能であるか、または後方に選択構成を配置させることができる。
図19は、走査型レーザ顕微鏡100を概略的に示しており、この顕微鏡は、これまでに説明したコンセプトに依存せずに使用可能である。実線は、照明用放射線経路Bを示しており、破線は、検出用放射線経路102を示している。この走査型レーザ顕微鏡は、試料103を走査しながら検出器104に結像し、その際、試料を照明源105によって照明する。
【0101】
検出用放射線経路102は、光軸OAに沿って試料103から検出器104の方向に、対物レンズ106および鏡筒レンズ107を備えており、それらの後に走査対物レンズ108aが続き、その後にスキャナ109がある。放射は、リレー光学系108b、110、およびピンホール光学系111の後に、ビーム・スプリッタ113を通過して、検出器104に達し、この場合、検出器はマトリクス検出器として形成されており、この検出器の前には、照明用放射の最終分をブロックするためにフィルタ112が配置されている。もちろん、検出用放射線経路102の別の実施形態も可能であり、例えばフィルタ112、ならびに図20の設計では要素108aと107の間にある破線で示された中間像をなくしてもよい。
【0102】
図19に示された顕微鏡100では、スキャナ109およびさらに説明するビーム・スプリッタ113を中に有する瞳面は、互いに対し、ならびに要素106と107の間に実線で記された対物レンズ106の後方の焦点面に対し、共役である。
【0103】
照明源105はレーザ114を有しており、このレーザは、さらに詳しく説明するスプリッタ機構116によって、図19では中央の放射線だけが記されている4つの部分放射線Sa、Sb、Sc、Sdを生成する。スプリッタ機構116は、図19の概略図では2つしか見えない(他の2つは図の面に対し垂直に重なっている)4つの部分放射線Sa〜dを、ビーム・スプリッタ113に合焦させる。
【0104】
詳細には、スプリッタ機構116は2つのスプリッタ117および118、ならびに偏向ミラー119を有しており、これらが、レーザ114によって放出された放射線Sから、平行な4つの部分放射線Sa、SbおよびSc、Sdを生成する。図19では、部分放射線SaおよびSbが重なっており、部分放射線ScおよびSdも同様に重なっている。スプリッタ機構116内のレンズ120および121は、部分放射線Sa〜cが、ビーム・スプリッタ113の面上の4つの点に合焦されるように、合焦を行う。
【0105】
もちろん、4つの部分放射線Sa〜cの生成は、異なる形成がなされたスプリッタ機構116によって行われてもよく、または4つのレーザ114を使用するなど、根本的に異なるやり方で行ってもよい。スプリッタ機構116のためのさらなる可能な実施形態が、図20に示されており、この場合、スプリッタ118およびミラー119と、スプリッタ117が逆になっている。
【0106】
図21は、ビーム・スプリッタ113を、そのビーム・スプリッタ面122を上から見た図として示している。ビーム・スプリッタ面122の上には、反射性の4つのミラー面要素123a、123b、123c、および123dが配置されており、このミラー面要素は仮想正方形124の角の点にあり、その中心が光軸OAの突破点125になっている。ビーム・スプリッタ面125は、ミラー面要素でだけ反射性であり、他の部分では、少なくとも検出用放射に対して透過性である。
【0107】
照明源105は、4つの部分放射線Sa〜dを、4つのミラー面要素123a〜dに合焦させる。このように瞳内に合焦されて、反射された部分放射線は、試料103内で干渉に達し、それにより図22に示されたマルチ・スポット・パターン128を試料内に生じさせる。このマルチ・スポット・パターン128は、暗い領域127に囲まれた光スポット126の規則的な構成である。光スポット126と暗い領域127の間の強度差、つまり零点の深さは、それぞれ向かい合う部分放射線Sa、SdおよびSb、Scの強度を変えることによって変化させ得る。その際、(光軸に対して)対角線上で向かい合う部分放射線、または、それぞれ間にある部分放射線に隔てられた部分放射線を、同じ様に調整することが好ましい。部分放射線が3つの場合は、1つの部分放射線が、2つの部分放射線に対して異なって調節される(またはその逆)。
【0108】
パターン128の空間的な拡張は、試料内の、パターン128に覆われた画像エリアを変更することによる、顕微鏡の拡大倍率の変化(例えば110および108bでの焦点距離の変化)によって適合させ得る。代替として、このためにレンズ110、121の焦点距離を調整してもよい。
【0109】
ビーム・スプリッタ113の作用は、以下の通りである。
ミラー面要素123a〜dの幾何学的な構成およびそこに合焦された部分放射線Sa〜dによって、試料103上に、規則的に配置された光スポット126による点パターン128が生じる。そのため、蛍光顕微鏡検査における適用では、光スポット126で蛍光が励起される。これは、空間的にインコヒーレントに生じるので、顕微鏡106の後方の焦点面(要素106と107の間に実線で記された)を均質に満たす。これに類するものとしては、同様に画像取得のために用い得る拡散反射がある。
【0110】
後方の焦点面は、ビーム・スプリッタ113が中に配置されている瞳と共役なので、検出するインコヒーレントな放射は、ビーム・スプリッタ113が中に配置されている瞳全体をも満たし、そのためビーム・スプリッタ面122全体を照らし出す。これに対し、鏡面反射された照明用放射は、ミラー面要素123a〜dに合焦されるので、照明源105に返される。
【0111】
結果として、空間的にインコヒーレント、つまり非指向性に、試料103内で生じた検出すべき放射だけがビーム・スプリッタ113を通過する。このためビーム・スプリッタ113は、色彩の調整を行わなくても、検出用放射と鏡面反射された照明用放射の分離を引き起こす。これは、より高い利得が達成されるだけでなく、ビーム・スプリッタ113が、非常に様々な照明波長および検出波長に対して使用可能であるという利点を有する。通常、カラー・スプリッタに設けられている交換メカニズムまたは変調器は必要ない。
【0112】
(図19に瞳放射線経路が破線で示されている)検出は、例としてマトリクス検出器として形成された検出器104によって行われ、この検出器の前には、任意でピンホール・マスクを配置してもよい。その際、照明されたスポットが共焦点結像される。このマスクは、検出器の前の観察放射線経路の中間像面内に設置可能であり、または代替として、(110と108bの間の)リレー光学系内に設置可能である。後者は照明側でもビーム・プロフィルを改善する。
【0113】
試料103の走査はスキャナ109の作用によって行われる。その際、試料103上で照明された光スポットを、一点スキャナの場合に必要であるより非常に極僅かに変位させるだけでよい。光スポットは干渉によって試料内に現れるので、個々の光スポット126はスキャナ109によって同時に変位される。このためスキャナ109による移動は、隣接する光スポット126同士の間の暗い領域127が走査される移動で十分である。つまり光スポットの、走査しながらの変位は、周期的で規則的なパターン128の周期長内だけで行われることが好ましい。
【0114】
図19に示された構成は、ビーム・スプリッタ113以降の検出用放射線経路と照明源105を交換するという趣旨で逆にすることもできる。そうすると、ビーム・スプリッタ113は、ミラー・コーティングに関し、図21に示された設計と反転し、つまりミラー面要素123a〜dが、ミラー面における孔になる。
【0115】
ビーム・スプリッタ113は、スキャナとしてのニポウ・ディスクと組み合わせてもよく、またはスキャナを一体化させてもよい。
さらに、図19〜図22に基づく実施形態は、図4〜図18に基づく設計または方法とも組み合わせ得ることが特に有利であり、その際、特徴を1つだけ(例えばビーム・スプリッタ113を)組み合わせてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明用放射線源(105)および検出用放射線経路(102)を備えており、該検出用放射線経路が、試料(103)内で励起および/または後方散乱された放射を、光軸(OA)に沿って検出器機構(104)へ導き、該検出用放射線経路内に、該照明用放射線源(105)から放出された照明用放射線経路(B)内の照明用放射を、該試料(103)上に向けるビーム・スプリッタ(113)が備えられており、該ビーム・スプリッタ(113)が、該試料(103)で鏡面反射された照明用放射を該検出器機構(104)へは通過させず、そのために該照明用放射線経路(B)の瞳内に配置されており、かつ部分的にミラー・コーティングされている、走査型レーザ顕微鏡において、該ビーム・スプリッタ(113)が、該検出用放射線経路(102)内にあるビーム・スプリッタ面(122)を有しており、該ビーム・スプリッタ面(122)が、該ビーム・スプリッタ面(122)上の、該光軸(OA)の突破点(125)を中心とする円上にある少なくとも3つの点(123a〜d)で該照明用放射のためにミラー・コーティングされており、該照明用放射線源(105)が、該点の数に対応する数の部分放射線(Sa〜d)を発生させ、該部分放射線を、該試料(113)一面に周期的に分布する照明スポット(126)の形の干渉パターン(128)が該試料(103)内に生じるように、該ビーム・スプリッタ(113)の該3つの点(123a〜d)上に合焦させることを特徴とする走査型レーザ顕微鏡。
【請求項2】
照明用放射線源(105)および検出用放射線経路(102)を備えており、該検出用放射線経路が、試料(103)内で励起および/または後方散乱された放射を、光軸(OA)に沿って検出器機構(104)へ導き、該検出用放射線経路内に、該照明用放射線源(105)から放出された照明用放射線経路(B)内の照明用放射を、該試料(103)上に向けるビーム・スプリッタ(113)が備えられており、該ビーム・スプリッタ(113)が、該試料(103)で鏡面反射された照明用放射を該検出器機構(104)へは通過させず、そのために該照明用放射線経路(B)の瞳内に配置されており、かつ部分的にミラー・コーティングされている、走査型レーザ顕微鏡において、該ビーム・スプリッタ(113)が、該検出用放射線経路(102)内にある反射性のビーム・スプリッタ面(122)を有しており、該ビーム・スプリッタ面(122)が、該ビーム・スプリッタ面(122)の、該光軸(OA)の突破点(125)を中心とする円上にある少なくとも3つの点(123a〜d)で該照明用放射のためにミラー・コーティングされておらず、該照明用放射線源(105)が、該点の数に対応する数の部分放射線(Sa〜d)を発生させ、該部分放射線を、該試料(113)一面に周期的に分布する照明スポット(126)の形の干渉パターン(128)が該試料(103)内に生じるように、該ビーム・スプリッタ(113)の該3つの点(123a〜d)上に合焦させることを特徴とする走査型レーザ顕微鏡。
【請求項3】
前記照明用放射線源(105)が、レーザ放射線(S)を放出するレーザ(114)と、該レーザ放射線(S)を前記部分放射線(Sa〜d)に分け、光学系機構(120、121)を用いて前記点(123a〜d)上に合焦させるスプリッタ機構(116)とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の顕微鏡。
【請求項4】
照明方向において前記ビーム・スプリッタ(113)の後方に配置されており、前記試料(103)上での前記干渉パターン(128)の変位によって走査を行い、該変位が、周期的に分布する前記照明スポット(126)の周期内で行われる走査機構(108)を特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項5】
それぞれ対角線上で向かい合って合焦される部分放射線(Sa、Sc;Sb、Sd)の強度を変更する手段を特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項6】
前記検出用放射線経路が、マトリクス検出器(104)内で終端することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の顕微鏡。
【請求項7】
ビーム・スプリッタ(113)と試料(103)との間の焦点距離変更手段(110、108a、108b)を特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10】
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【図11a】
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【図11b】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15a】
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【図15b】
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【図16a】
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【図16b】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−19908(P2013−19908A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−228003(P2012−228003)
【出願日】平成24年10月15日(2012.10.15)
【分割の表示】特願2008−521906(P2008−521906)の分割
【原出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【出願人】(506151659)カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー (71)
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
【出願人】(597141922)カール ツァイス イェナ ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】