説明

解放可能に装着されている自動締め付け切削ヘッドを有する切削工具

切削工具(10)は、工具用胴部(14)および切削ヘッド812)の雄固定部材(24)と工具用胴部(14)の雌固定部材(88)との間の締り嵌めによって該工具用胴部(14)に弾性的に固定される交換可能な切削ヘッド812)を有する。雄固定部材824)は、弾性スリット828)を有する。切削工具(10)の回転軸に直交し、相補当接領域(100)を貫通する切削工具(10)の各断面において、相補当接領域(100)の断面プロフィールは、弧状区域である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、解放可能に装着されている切削ヘッドを有する切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
解放可能に装着されている切削ヘッドを有するドリルが特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される第1の実施形態において、ドリルは、ワークピースを切削するインサート部分(an insert portion)および胴部分(a shank portion)を有し、インサート部分は、胴部分に分離可能に機械的に接続されている。インサート部分および胴部分は、インサート部分と胴部分との間の接続を形成する相補的に係合する部分およびインサート部分または胴部分のどちらかに形成されているスリットを有する。インサート部分および胴部分は、二つの部分の係合状態においてスリットの対向する面の相互運動での弾性的変形により引き起こされる弾性力を用いて互いに接続され、それにより、インサート部分を胴部部分内に圧入することにより、インサート部分は、胴部分と接続されるかまたは胴部分に固定され得る。接続状態において、インサート部分は、インサート部分の保持される部分の両側部と胴部分の保持する部分の内側端面との間の摩擦力により胴部分に固定される。
【0003】
特許文献1に開示されるドリルは、インサート部分(すなわち、切削部分または切削ヘッド)が胴部分に形成されている対応する平坦な隙間内に収容される2つの対向する平行な平面を持つ概ね平坦な形状を有することを特徴とするスペードドリル(a spade drill)としばしばいわれる。インサート部分および胴部分は、それらがまとめられるとき、2つの構成部分の相対的な軸方向の変位により係合する。インサート部分は、表面が被覆されている超硬合金のような硬質材料から作られ、胴部分は、鋼鉄から作られる。対向する平行な平面の要求精度を保証するために、平面は、研磨され得る。研磨作業は、2度の研磨作業を必要とされる。1つは、一方の平面を研磨するときであり、もう1つは、他方の平面を研磨するときである。2つの研磨作業の間に、インサート部分は、研磨されていない平面を砥石車に向けるために、180°だけ回転する必要がある。このことは、砥石車に対する研磨されていない平面を位置決めするのに不正確さを持ち込むことになり得る。
【0004】
特許文献2には、硬質切削用材料、例えば、炭化タングステン、から作られている工具用ヘッド(a tool head)および高速工具用鋼鉄またはその他の金属材料から作られている工具用胴部(a tool shank)を有する回転切削工具、例えば、ツイストドリル(a twist drill)、が開示されている。工具用ヘッドは、工具の回転軸と同軸で、回転軸を円錐台の軸として工具用胴部に向って先細になっている円錐台形状である固定杭(a fixing peg)を有する。2つの螺旋状ねじれ溝(two spiral flutes)は、固定杭の表面を、本質的に互いに全く正反対にある2つの円錐台形状に生成された表面に分けている。工具用胴部は、工具用胴部から基本的に軸方向に突出している2つの締め付け延長部の向かい合う側面(facing flanks)の間のその保持する端部(its holding end)の適切な位置において交換可能な工具用ヘッドを締め付けている。固定杭の円錐形状に生成された表面は、締め付け位置において、工具用胴部の2つの締め付け延長部の向かい合う側面により押されている。締め付け延長部の互いに向き合っている内側面は、固定杭の凸状の円錐台形状に生成された表面に対応して凹形状にされている。それで、内側面は、固定位置において、固定杭の円錐台形状に生成された表面に対し、内側面の全表面を押しつけている。
【0005】
特許文献2に例示される代表的な実施形態において、工具用胴部の周辺側部からねじ込まれる締め付け固定ネジは、固定杭および適切な位置で該固定杭を締め付けている締め付け延長部を貫通する。締め付け固定ネジは、締め付け延長部と固定杭との間での完全な嵌合接続(a positive-fit connection)を表すばかりでなく、締め付け延長部により杭の円錐台形状に生成された表面に半径方向に加えられる締め付け圧力を増大させる。代表的な実施形態においては、締め付け固定ネジは、回転軸が直径方向に伸びるスロットの内側にあり、スロットは、固定杭の内側で半径方向に伸び、固定杭の先細の端部に向って開いている。締め付け固定ネジの要求は、余分な複雑性を持ち込み、交換可能な工具用ヘッドを工具用胴部に固定する時間をより長くする原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,228,812号明細書
【特許文献2】米国特許第7,306,410号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すでに述べた欠点をかなり減少させるかまたはこれらの欠点を克服する金属切削作業を実行する切削工具を提供することが本発明の目的である。
【0008】
すでに述べた欠点をかなり減少させるかまたはこれを克服するばかりでなく、改良された性能を提供する金属切削作業を実行する切削工具を提供することが、本発明のさらなる目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態によれば、切削工具がそれを中心として回転方向に回転する回転軸を有する切削工具が提供される。切削工具は、工具用胴部、および切削ヘッドの雄固定部材と工具用胴部の雌固定部材との間の締り嵌めにより、工具用胴部の前端部において該工具用胴部に弾性的に固定される交換可能な自動締め付け切削ヘッド、を備えている。雄および雌固定部材は、それぞれ、当接領域を有するように構成されている。2つの固定部材の当接領域は、互いに相補的に当接する。雄固定部材は、弾性スリットを有し、また、回転軸に直交し、雄および雌固定部材の間の相補当接領域を貫通する切削工具の各断面において、相互当接領域の断面プロフィール(cross sectional profiles)は、相補弧状区域である。いくつかの実施形態によれば、相補弧状区域は、相補円形区域である。
【0010】
いくつかの実施形態によれば、切削ヘッドまたは工具用胴部のどちらか一方が超硬合金から作られ得る。別の実施形態によれば、切削ヘッドおよび工具用胴部の両方が超硬合金から作られ得る。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、切削ヘッドは、切削部分および該切削部分と一体型の単一部品を形成する切削ヘッド連結部分を備えている。切削ヘッド連結部分は、切削部分の後方方向に延在し、切削ヘッド底面で終わっている雄固定部材を備えている。弾性スリットは、雄固定部材を2つの雄固定区分に分割し、2つの雄固定区分は、それぞれ、弾性スリットによって境界が定められる周辺面を形成する切削ヘッドの大きな固定壁を有する。弾性スリットは、側部開口部において切削ヘッドの大きな固定壁に対して開放し、底部開口部において切削ヘッド底面に対して開放している。側部開口部および底部開口部は、底部開口部端部で交わり、底部開口部端部は、それぞれのヘッドのねじれ溝の回転後縁に隣接しているが、該回転後縁とは一致しない。
【0012】
本発明の実施形態によれば、工具用胴部には、その前端部において、工具用胴部底面から前方に向って延在する回転状に相隔たる2つの突出部を有する突出部分が設けられ、切削ヘッド底面は、工具用胴部底面に当接しない。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、伝動部材が、切削ヘッドの回転後面から突出し、該伝動部材は、軸方向前方方向に面している上面、軸方向後方方向に面しているベース面、および通常回転方向とは逆方向に面しており、上面とベース面との間に配置されている切削ヘッドのトルク伝動壁を有している。工具用胴部には、工具用胴部前端部において、工具用胴部底面から前方に向って延在する回転状に相隔たる2つの突出部を有する突出部分が設けられている。各突出部は、下部突出部分および上部突出部分を備え、下部突出部分は、上部突出部分が軸支持面から軸方向前方方向に延在する、軸方向前方に向って面している軸支持面を有している。上部突出部分と下部突出部分は、通常回転方向に面している工具用胴部トルク伝動壁および軸方向に面している軸支持面を備える伝動部材収容凹部を形成している。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、切削ヘッドトルク伝動壁は、工具用胴部トルク伝動壁に当接し、伝動部材のベース表面は、切削ヘッドへの軸支持を提供する軸支持面に当接する。
【0015】
いくつかの実施形態によれば、上部突出部分は、通常軸支持面に面している下面を備え、工具用胴部トルク伝動壁は、下面と軸支持面との間に配置されており、伝動部材の上面は、上部突出部分の下面に当接しない。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、弾性スリットは、雄固定部材を2つの雄固定区分に分割する。各雄固定区分は、切削ヘッドの大きな固定壁を有する。雌固定部材は、2つの工具用胴部固定壁を備え、切削ヘッドの大きな固定壁それぞれは、対応する工具用胴部固定壁に当接する。
【0017】
本発明にいくつかの形態によれば、工具用胴部それぞれの後端には、組み立ての間、切削ヘッドの大きな固定壁と工具用胴部固定壁との間の最初の摩擦接触が各工具用胴部固定壁に沿う周辺の内側の点から開始するように、面取りした部分が設けられている。
【0018】
一般的に、切削ヘッドは、雄固定部材の周辺内で後方方向に延在するヘッドねじれ溝(a head flute)を有し、弾性スリットは、雄固定部材を2つの雄固定区分に分割する。雄固定区分それぞれは、ヘッドねじれ溝により関連する切削ヘッドの小さな固定壁から切り離されている切削ヘッドの大きな固定壁を備える。
【0019】
いくつかの実施形態によれば、切削ヘッドの大きな固定壁は、工具用胴部に当接し、切削ヘッドの小さな固定壁は、工具用胴部に当接しない。
【0020】
本発明のいくつかの応用によれば、所定の雄固定区分においては、切削ヘッドの大きな固定壁は、円周方向において、その関連する切削ヘッドの小さな固定壁よりも大きい。
【0021】
いくつかの形態によれば、弾性スリットは、底部開口部端部で交わる側部開口部および底部開口部を備えている。底部開口部端部は、それぞれのヘッドねじれ溝の回転先端縁に隣接するが、該回転前縁と一致しない。
【0022】
本発明によれば、また、切削部分と該切削部分と一体型の単一部品を形成する切削ヘッド連結部分とを有する自動締め付け切削ヘッドが提供される。切削ヘッド連結部分は、切削部分の後方方向に延在し、切削ヘッド底面で終わっている雄固定部材を備えている。ヘッドねじれ溝は、雄固定部材の周辺内で後方方向に延在し、弾性スリットは、雄固定部材を2つの雄固定区分に分割する。雄固定区分それぞれは、ヘッドねじれ溝の1つにより関連する切削ヘッドの小さな固定壁から切り離されている切削ヘッドの大きな固定壁を備える。
【0023】
いくつかの実施形態によれば、所定の雄固定区分において、切削ヘッドの小さな固定壁ではなくて、切削ヘッドの大きな固定壁が当接領域を有するように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る切削工具の斜視図である。
【図2】図1の切削工具の分解斜視図である。
【図3】図1の切削工具の別の分解斜視図である。
【図4】図1の切削工具のさらに別の分解斜視図である。
【図5】部分的組み立てられた図1の切削工具の斜視図である。
【図6】図1の切削工具の側面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿う切削工具の断面図である。
【図8】図7の断面図と同様であるが、切削工具が工具用胴部に対して中間位置まで回転している状態の切削工具の断面図である。
【図9】図7の断面図と同様であるが、切削工具が工具用胴部に対して90°まで回転している状態の切削工具の断面図である。
【図10】本発明のいくつかの実施形態に係る切削ヘッドの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明を良く理解するために、また、本発明が実際にどのように実行され得るかを示すために、今、添付図面が参照される。
【0026】
当然のことながら、説明を簡明且つ明瞭とするために、図面に示される要素は、必ずしも正確にまたは一定の縮尺で描かれてはいない。例えば、いくつかの要素の寸法は、明瞭化のために、その他の要素に対して誇張されている。あるいは、いくつかの物理的構成要素は、1つの機能的ブロックまたは要素に含まれ得る。さらに、適当であると考えられる場合、参照数字は、対応する要素または類似した要素を示すために、図面の間で繰り返される。
【0027】
以下の説明において、本発明の種々の形態が説明されるであろう。説明の目的で、具体的な構成および詳細が本発明の完全な理解を提供するために示される。しかしながら、当業者にとって、本発明は、本明細書で提供された具体的な詳細なしに実行され得ることが明白であろう。さらに、周知の特徴は、本発明を不明瞭にさせないために、省略または簡略化され得る。
【0028】
本発明の実施形態に係る切削工具10を示す図1を参照する。切削工具10は、ドリルであってもよいし、あるいはその他の回転切削工具であってもよい。切削工具10は、切削ヘッド12とともに工具用胴部14に自動締め付け方法で解放可能に装着されている切削ヘッド12、および切削工具10が回転方向Rに回転する共通の回転軸Lを有する工具用胴部14を含んでいる。切削ヘッド12は、金属切削作業に使用されるようなものであって、したがって、切削ヘッドが金属を切削するために使用され得ることを意味し、必ずしも切削ヘッドが金属から作られることを意味しない金属切削ヘッドとも呼ばれる。いくつかの実施形態によれば、切削ヘッド12は、超硬合金のような硬質の耐摩耗性の材料から作られ、また、工具用胴部14は、鋼鉄またはその他の金属または金属化合物から作られ得る。いくつかの実施形態によれば、切削ヘッド12は、超硬合金のような硬質の耐摩耗性の材料から作られ、また、工具用胴部14も、超硬合金のような硬質の耐摩耗性の材料から作られ得る。工具用胴部14には、1以上の軸方向に延在する胴部ねじれ溝16が設けられている。該胴部ねじれ溝16それぞれは、対応するヘッドねじれ溝18から送り込まれている。胴部ねじれ溝16およびヘッドねじれ溝18は、ワークピースから切り取られた切り屑を連れ去るための工具ねじれ溝を形成するように連結している。
【0029】
図2〜4において、切削工具10は、分解されて示されている。切削ヘッド12と工具用胴部14が互いに切り離されてはいるが、組み立てに備えて回転軸Lに沿って整列されている状態にある。回転軸Lは、切削ヘッド12が工具用胴部14の軸方向前端部に配置されることで、前後方向を画定している。切削ヘッド12は、切削部分20および切削部分20と一体型の単一部品を形成する切削ヘッド連結部分22を備えている。
【0030】
切削ヘッド連結部分22は、切削部分20の後方方向に延在し、切削ヘッド底面26で終わる雄固定部材24を備えている。弾性スリット28は、雄固定部材24を2つの雄固定区分30に分割している。雄固定区分30それぞれは、壁32、32’に対して窪まされているヘッドねじれ溝18によって関連する切削ヘッドの小さな固定壁32’から切り離されている切削ヘッドの大きな固定壁32を有する。いくつかの実施形態によれば、組み立てられた工具において、各雄固定区分30の切削ヘッドの大きな固定壁32は、工具用胴部に当接するのに対して、切削ヘッドの小さな固定壁32’は、工具用胴部に当接しない。一般的に言えば、切削ヘッドの大きな固定壁32は、円周方向において、関連する切削ヘッドの小さな固定壁32’より大きい。所定の雄固定区分30に対し、切削ヘッドの大きな固定壁32は、弾性スリット28によって境界を定められる周辺面を形成する。弾性スリット28は、切削ヘッドの大きな固定壁32および切削ヘッドの小さな固定壁32’に対して側部開口部34において開放し、切削ヘッド底面26に対して底部開口部36において開放している。側部開口部34および底部開口部36は、底部開口部の端部38において交わっている。
【0031】
いくつかの実施形態によれば、切削部分20は、回転状に相隔たる2つのヘッド区分40を備えている。ヘッド区分40それぞれは、頂面42、回転方向Rに面している回転誘導面44、および回転後面46を有し、回転誘導面44および回転後面46それぞれは、頂面42に接続している。頂面42および誘導面44は、切削刃48において交わる。伝動部材50が回転後面46から突出している。該伝動部材50は、軸方向前方方向に面している上面52、軸方向後方方向に面しているベース面54、上面52とベース面54との間に延在し、外側に向って面している周辺面56、および通常回転方向Rと逆方向に面しており、上面52およびベース面54との間に配置される切削ヘッドトルク伝動壁58を有している。
【0032】
工具用胴部14は、切削ヘッド12が解放可能に装着される工具用胴部前端部60を有している。いくつかの実施形態によれば、工具用胴部前端部60において、工具用胴部14には、工具用胴部底面66から前方に向って延在する2つの回転状に相隔てられた突出部64を有する突出部分62が設けられている。突出部64それぞれは、下部突出部分68および上部突出部分70を備えている。下部突出部分68は、そこから上部突出部分70が軸方向前方方向に延在する、軸方向前方に向って面している軸支持面72を有している。上部突出部分70は、通常、フック形状に形成されており(hook-shaped)、回転方向Rに逆方向に面している第1の面74、第1の面74に合流し、通常軸方向前方方向に面している第2の面76、第2の面76に合流し、通常回転方向Rに面している第3の面78、第3の面78に合流し、通常軸支持面72に面している下面80、および通常回転方向Rに面しており、下面80と軸支持面72との間に配置される工具用胴部のトルク伝動壁82により境界を定められている。下面80、工具用胴部トルク伝動壁82および軸支持面72は、それらの間に、伝動部材収容凹部84を画定する開口を形成している。
【0033】
工具用胴部連結部分86は、工具用胴部前端部60に配置されている。工具用胴部連結部分86は、下部突出部分68の内側周辺面であり、工具用胴部周辺開口部94により切り離されている2つの工具用胴部固定壁92によって境界を定められている工具用胴部ポケット状凹部(a tool shank pocket recess)90の形状をしている雌固定部材88を備えている。工具用胴部固定壁92は、工具用胴部底面66から離れて延在している。
【0034】
いくつかの実施形態によれば、切削ヘッドの大きな固定壁32と工具用胴部固定壁92は、弧状を呈している。いくつかの実施形態によれば、切削ヘッドの大きな固定壁32と工具用胴部固定壁92の少なくとも一方または両方は、円柱面上にある。
【0035】
図5においては、切削工具は、切削ヘッド12と工具用胴部14が図2に示される相対的位置から回転軸Lに沿って一緒にまとめられた状態で、部分的に組み立てられている。したがって、図5においては、切削ヘッド12と工具用胴部14は、回転軸Lを中心として図2に示されると同じ回転位置にあるが、雄固定部材24は、雌固定部材88内に配置されている。
【0036】
図6では、切削工具10は、切削ヘッド12が工具用胴部14内にしっかりと締め付けられている組み立てられた状態で示されている。組み立てられた切削工具10は、図5に示される部分的に組み立てられている相対的配置から、伝動部材50が伝動部材収容凹部84に配置されている状態にある工具用胴部14に対して、切削ヘッドトルク伝動壁58が工具用胴部トルク伝動壁82に当接するまで、切削ヘッド12を回転方向Rと逆の方向に回転させることにより、獲得される。組み立てられた配置において、切削ヘッドトルク伝動壁58が工具用胴部トルク伝動壁82に当接することに加えて、伝動部材50のベース面54が切削ヘッド12に対する軸方向の支持を提供する軸支持面72に当接する。いくつかの実施形態によれば、切削ヘッド底面26は、工具用胴部底面66に当接せず、また、伝動部材50の上面52は、上部突出部分70の下面80に当接しない。
【0037】
ここで、工具用胴部連結部分86の下部突出部分68において回転軸Lに直交し、その結果として切削ヘッド12の雄固定部材部材24を貫通する切削工具10の断面を示す図7に注目する。いくつかの実施形態においては、そのような断面において、切削ヘッドの大きな固定壁32それぞれは、長さS1のヘッド固定壁弧状区域96を有し、工具用胴部固定壁92それぞれは、長さS2の工具用胴部固定壁の弧状区域98を有する。いくつかの実施形態において、長さS2は、長さS1より大きい。
【0038】
いくつかの実施形態においては、所定の断面において、切削ヘッドの大きな固定壁32それぞれは、所定の長さの円形区域を有し得る。いくつかの実施形態においては、弧状区域または円形区域それぞれの所定の長さは、異なる断面において、異なっていてもよい。いくつかの実施形態においては、所定の断面において、切削ヘッドの大きな固定壁32それぞれの全長が、弧状区域又は円形区域であってもよい。同様に、いくつかの実施形態においては、特定の断面において、工具用胴部固定壁92それぞれは、特定の長さの弧状区域または円形区域を有していてもよい。いくつかの実施形態においては、弧状区域または円形区域の特定の長さは、異なる断面において異なっていてもよい。いくつかの実施形態において、特定の断面において、工具用胴部固定壁92それぞれの全長が、弧状区域又は円形区域であってもよい。
【0039】
図7に示されるように、雄固定部材24と雌固定部材88は、組み立てられた工具において、相補当接領域100でそれらが互いに当接するように構成される。いくつかの実施形態においては、雄固定部材上の、切削ヘッドの小さな固定壁32’ではなくて、切削ヘッドの大きな固定壁32のみが、当接領域を有するように構成される。いくつかの実施形態においては、所定の切削ヘッドの大きな固定壁32は、唯一の相補当接領域100において、対応する工具用胴部固定壁92に当接する。しかしながら、回転軸Lに沿うそのような相補当接領域100の軸方向の範囲は、切削ヘッドの大きな固定壁32の全長に沿って延在する必要はないことが理解される。回転軸Lに直交し、相補当接領域100を貫通する切削工具10の各断面において、相補当接領域100の断面プロフィールは、相補弧状区域であってもよい。いくつかの実施形態においては、相補弧状区域は、円形区域であってもよい。
【0040】
雄固定部材24および雌固定部材88は、組み立てられた相対的配置(図6および7)において、雄固定部材24が雌固定部材88にしっかりと保持されるように、それらの間での締り嵌めを有するように設計される。雄固定部材24と雌固定部材88との間のそのような締り嵌めは、雄固定部材24の直径が相補当接領域100の少なくともいくつかの点において雌固定部材88の直径より大きくなるように、雄固定部材24および雌固定部材88を設計することにより達成される。弾性スリット28は、雄固定部材24に柔軟性を与え、雄固定部材24の直径(すなわち、回転軸Lに直交し、弾性スリット28を貫通する雄固定部材の断面における直径)を、弾性スリット28に直交する力が加えられることにより小さくさせることができる。
【0041】
そのような力が加えられると、2つの雄固定区分30は、互いにより接近するように移動し、雄固定区分30をその元の位置に向って離れるように付勢する弾性力を雄固定部材24に誘発する。加えられた力が弾性スリット28に直交していない場合、直径方向の所定の縮小を引き起こすのに必要とされる力はより大きくなるだろう。
【0042】
図7に示されるような組み立てられた相対的配置から、切削ヘッド12を工具用胴部から取り外すために、切削ヘッド12を、工具用胴部14に対して、図8に示される中間位置を経由して、図5に示される相対的配置に等しい図9に示される部分的に組み立てられた相対的配置まで、回転方向Rに90°だけ回転させる。図9に示される部分的に組み立てられている相対的配置において、切削ヘッド12は、切削ヘッド12および工具用胴部14を回転軸Lに沿って離れるように移動させることにより、工具用胴部14から取り外され、図2に示される分解された配置に達することができる。
【0043】
切削ヘッド12を工具用胴部14に装着し、該切削ヘッド12を該工具用胴部14にしっかりと取り付けるために、上述したことと逆の一連の動作が実行される。すなわち、切削ヘッド12と工具用胴部14が互いから離されてはいるが回転軸Lに沿って整列されている状態にある図2に示される分解された配置から始まり、雄固定部材24が図9に示されるように、雌固定部材88内に配置されるまで、切削ヘッド12と工具用胴部14が回転軸Lに沿って一緒にまとめられる。次に、図8に示される中間位置を経由して図7に示される組み立てられた配置に至るまで、工具用胴部14に対して、回転方向Rと逆の方向に90°だけ、切削ヘッド12を回転させる。
【0044】
いくつかの実施形態においては、図8に示される中間位置は、切削工具10の組み立て中における切削ヘッド12と工具用胴部14との間の最初の接触位置である。そのような実施形態においては、切削工具10の組み立て中における切削ヘッドの大きな固定壁32と工具用胴部固定壁92との間の最初の接触点は、切削ヘッドの大きな固定壁32それぞれの先端104と工具用胴部固定壁92それぞれの関連する後端106との間ではなくて、切削ヘッドの大きな固定壁32それぞれの先端104と関連する工具用胴部固定壁92それぞれの内側の点108との間である。いくつかの実施形態において、このことは、工具用胴部固定壁92それぞれの後端106近傍で面取り部分110を形成することにより達成される。結果として、組み立ての間、雄固定部材24と雌固定部材88との間の最初の摩擦接触は、ヘッドと工具用胴部の固定壁弧状区域(または、いくつかの実施形態における円形区域)96、98に沿ってなされ、該接触は、(所定の断面図における)工具用胴部固定壁92それぞれの円周上の内側の点108において開始するが、面取り部分110では回避される。
【0045】
雄固定部材24が、切削ヘッド12を工具用胴部24に対して回転方向Rと逆方向に回転させることにより、部分的に組み立てられた配置から回転すると、雄固定部材24の直径が、最初、雌固定部材88の直径より大きく、弾性力が雄固定部材24に誘発されるので、雄固定区分30は、互いに向って押しやられる。結果として、切削ヘッド12を工具用胴部14に対して回転させるために、切削ヘッド12と工具用胴部14との間に作用する摩擦力に打ち勝つように、力が加えられる必要がある。
【0046】
いくつかの実施形態によれば、弾性スリット28は、切削ヘッドの大きな固定壁32それぞれの先端104と関連する工具用胴部固定壁92それぞれの内側の点108との間の初期における接触の間、弾性力に打ち勝つべく雄固定部材24に作用する力Fが、弾性スリット28に略直交し(図8参照)、それにより、切削ヘッド12を工具用胴部14に対して回転させるのに必要とされる力が、雄固定部材24に作用する力が弾性スリット28に略直交しなかった場合より小さくなるように方向付けられている。さらに、弾性スリット28が図に示されるように方向付けられている場合、弾性スリット28は、ヘッドねじれ溝18に対して開放しておらず、したがって、図1に示されるように、切削工具10の組み立てられた配置においては、ワークピースから切り出される切り屑は、弾性スリット28には入り得ない。
【0047】
ここで、本発明のいくつかの実施形態に係る弾性スリット28の位置を示す切削ヘッド12の底面図を示す図10に注目する。いくつかの実施形態によれば、底部開口部端部38は、各ヘッドねじれ溝18の回転後縁112に隣接しているがそれとは一致しない。
【0048】
本発明が1以上の具体的な実施形態を参照して記載されてきたが、該記載は、総体的に説明することを意図しており、本発明を示された実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。本明細書には明確には示されていないけれども、それでも本発明の範囲内にある種々の変更が当業者にとって見出されることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削工具(10)がその周るに回転方向(R)に回転する回転軸(L)を有する切削工具(10)であって、
雌固定部材(88)が設けられている前端部(60)を有する工具用胴部(14)、および
雄固定部材(24)が設けられている交換可能な自動締め付け切削ヘッド(12)、
を備え、
前記雄固定部材(24)は、弾性スリット(28)を有し、
前記交換可能な切削ヘッドは、相補当接領域(100)における雄固定部材(24)と雌固定部材(88)との間の締り嵌めにより前記工具用胴部(14)の前記前端部(60)に弾性的に固定され、そして
前記回転軸(L)に直交し、前記相補当接領域(100)を貫通する断面において、前記相補当接領域(100)の断面プロフィールは、相補弧状区域を備えることを特徴とする切削工具。
【請求項2】
前記切削ヘッド(12)は、超硬合金から作られていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記工具用胴部(14)は、超硬合金から作られていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項4】
前記切削ヘッド(12)および前記工具用胴部(14)は、超硬合金から作られていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項5】
前記相補弧状区域は、相補円形区域であることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項6】
前記切削ヘッド(12)は、切削部分(20)および前記切削部分(20)と一体型の単一部品を形成する切削ヘッド連結部分(22)を備え、
前記切削ヘッド連結部分(22)は、前記切削部分(20)の後方方向に延在し、切削ヘッド底面(26)で終わっている雄固定部材(24)を備え、
前記弾性スリット(28)は、雄固定部材(24)を、それぞれが前記弾性スリット(28)によって境界が定められる周辺面を形成する切削ヘッドの大きな固定壁(32)を有する2つの雄固定区分(3)に分割し、そして
前記弾性スリット(28)は、側部開口部(34)において前記切削ヘッドの大きな固定壁(32)に対して開放し、底部開口部(36)において前記切削ヘッド底面(26)に対して開放していることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項7】
前記側部開口部(34)と前記底部開口部(36)は、底部開口部端部(38)において交わっており、そして
前記底部開口部端部(38)は、それぞれのヘッドねじれ溝(18)の回転後縁(112)に隣接しているが、該回転後縁とは一致しないことを特徴とする請求項6に記載の切削工具。
【請求項8】
前記工具用胴部(14)には、前記工具用胴部前端部(60)において、工具用胴部底面(66)から前方に向って延在する、回転的に相隔てられている2つの突出部(64)を有する突出部分(62)が設けられており、そして
前記切削ヘッド底面(26)は、前記工具用胴部底面(66)に当接しないことを特徴とする請求項6に記載の切削工具。
【請求項9】
伝動部材(50)が、前記切削ヘッド(12)の回転後面(46)から突出し、
前記伝動部材(50)は、軸方向前方方向に面している上面(52)、軸方向後方方向に面しているベース面(54)、および通常前記回転方向(R)とは逆方向に面しており、前記上面(52)と前記ベース面(54)との間に配置される切削ヘッドトルク伝動壁(58)を有していることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項10】
前記工具用胴部(14)には、前記工具用胴部前端部(60)において、工具用胴部底面(66)から前方に向って延在する、回転的に相隔てられている2つの突出部(64)を有する突出部分(62)が設けられており、
前記突出部(64)それぞれは、下部突出部分(68)および上部突出部分(70)を備え、
前記下部突出部分(68)は、前記上部突出部分(70)がそこから軸方向前方方向に延在する、軸方向前方に向って面している軸支持面(72)を有し、
前記上部突出部分(70)と前記下部突出部分(68)は、通常前記回転方向(R)に面している工具用胴部トルク伝動壁(82)及び軸方向に面している軸支持面(72)を備える伝動部材収容凹部(84)を形成し、
前記切削ヘッドトルク伝動壁(58)は、前記工具用胴部トルク伝動壁(82)に当接し、そして
前記伝動部材(50)の前記ベース面(54)は、前記切削ヘッド(12)に対する軸支持を提供する前記軸支持面(72)に当接することを特徴とする請求項9に記載の切削工具。
【請求項11】
前記上部突出部分(70)は、通常前記軸支持面(72)に面している下面(80)を備え、
前記工具用胴部トルク伝動壁(82)は、前記下面(80)と前記軸支持面(72)との間に配置され、そして
前記伝動部材(50)の前記上面(52)は、前記上部突出部分(70)の前記下面(80)に当接しないことを特徴とする請求項10に記載の切削工具。
【請求項12】
前記弾性スリット(28)は、前記雄固定部材(24)を、それぞれが切削ヘッドの大きな固定壁(32)を有する2つの雄固定区分(30)に分割し、
前記雌固定部材(88)は、2つの工具用胴部固定壁(92)を備え、そして
前記切削ヘッドの大きな固定壁(32)それぞれは、対応する工具用胴部固定壁(92)に当接することを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項13】
前記工具用胴部固定壁(92)の後端(106)には、組み立ての間、前記切削ヘッドの大きな固定壁(32)と前記工具用胴部固定壁(92)との間の最初の接触が前記工業胴部固定壁(92)の周辺の内側の点(108)から開始するように、面取り部分(110)が設けられていることを特徴とする請求項12に記載の切削工具。
【請求項14】
前記切削ヘッド(12)は、前記雄固定部材(24)の周辺内で後方方向に延在するヘッドねじれ溝(18)を有し、
前記弾性スリット(28)は、前記雄固定部材(24)を2つの雄固定区分(30)に分割し、
前記雄固定区分(30)それぞれは、ヘッドねじれ溝(18)により関連する切削ヘッドの小さな固定壁(32’)から切り離されている切削ヘッドの大きな固定壁(32)を備えていることを特徴とする請求項1に記載の切削工具。
【請求項15】
前記切削ヘッドの大きな固定壁(32)は、前記工具用胴部(14)に当接し、そして 前記切削ヘッドの小さな固定壁(32’)は、工具用胴部(14)に当接しないことを特徴とする請求項14に記載の切削工具。
【請求項16】
所定の雄固定区分(30)において、前記切削ヘッドの大きな固定壁(32)は、円周方向において、それに関連する切削ヘッドの小さな固定壁(32’)より大きいことを特徴とする請求項14に記載の切削工具。
【請求項17】
前記弾性スリット(28)は、底部開口部端部(38)で交わる側部開口部(34)および底部開口部(36)を備え、そして
前記底部開口部端部(38)は、それぞれの前記ヘッドねじれ溝(81)の回転先端縁(112)に隣接しているが、それと一致しないことを特徴とする請求項14に記載の切削工具。
【請求項18】
自動締め付け切削ヘッド(12)であって、
切削部分(20)、
前記切削部分(20)と一体型の単一部品を形成する切削ヘッド連結部分(22)であって、前記切削部分(20)の後方方向に延在し、切削ヘッド底面(26)で終わっている雄固定部材(24)を備えている切削連結ヘッド(22)、
前記雄固定部材(24)の周辺内で後方方向に延在しているヘッドねじれ溝(18)、そして
前記雄固定部材(24)を2つの雄固定区分(30)に分割している弾性スリット(28)、
を備え、
前記雄固定区分(30)それぞれは、前記ヘッドねじれ溝(18)のうちの1つにより関連する切削ヘッドの小さな固定壁(32’)から切り離されている切削ヘッドの大きな固定壁(32)を備えていることを特徴とする自動締め付け切削ヘッド。
【請求項19】
所定の雄固定区分(30)において、前記切削ヘッドの小さな固定壁(32’)ではなくて前記切削ヘッドの大きな固定壁(32)は、当接領域を有するように構成されていることを特徴とする請求項18に記載の自動締め付け切削ヘッド。
【請求項20】
所定の雄固定区分(30)において、前記切削ヘッドの大きな固定壁(32)は、円周方向において、その関連する切削ヘッドの小さな固定壁(32’)より大きいことを特徴とする請求項18に記載の自動締め付け切削ヘッド。
【請求項21】
前記弾性スリット(28)は、底部開口部端部(38)において交わる側部開口部(34)および底部開口部(36)を備え、そして
前記底部開口部端部(38)は、前記ヘッドねじれ溝(18)それぞれの回転先端縁(112)に隣接するが、それと一致しないことを特徴とする請求項18に記載の自動締め付け切削ヘッド。
【請求項22】
前記弾性スリット(28)は、底部開口部端部(38)において交わる側部開口部(34)および底部開口部(36)を備え、そして。
前記底部開口部端部(38)は、前記ヘッドねじれ溝(18)それぞれの回転先端縁(112)に隣接するが、それと一致しないことを特徴とする請求項18に記載の自動締め付け切削ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−511436(P2012−511436A)
【公表日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539171(P2011−539171)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際出願番号】PCT/IL2009/001093
【国際公開番号】WO2010/067349
【国際公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(306037920)イスカーリミテッド (93)
【Fターム(参考)】