説明

触媒、その製造方法、及び触媒を用いる反応

【課題】熱サイクル下における腐食、酸化、ならびにフレーキングやスポーリングに対して耐性を有する担持触媒を備えたマイクロチャネル装置を提供する。
【解決手段】金属製チャネル壁面に直接、あるいは壁面をエッチングにより多孔質化した後、Al、SiO,ZrO,TiO及びこれらの組合せから選択される金属酸化物を含む緩衝層102を蒸着により形成させ、さらに溶液堆積法により金属酸化物を含有する界面層104を形成させ、この界面層の上に触媒層106を堆積させた、マイクロチャネル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質担体、緩衝層及び界面層を有する触媒;該触媒を製造する方法;及び該触媒を用いる触媒法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、参照として本明細書に取り入れられる米国特許出願第09/123,781号の一部継続出願である。
【0003】
例えば水蒸気改質、水性ガス転化反応、メタノール合成及び触媒燃焼を含む水素及び炭化水素の転化反応は、公知である。これらの反応は通常は150℃から1000℃の温度で行う。現在、これらの反応は、高表面積セラミックペレット上に堆積させた活性な触媒金属又は触媒金属酸化物から成る触媒ペレットを用いて工業的に行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】A.N.Pestryakov, A.A.Fyodorov, V.A.Shurov, M.S.Gaisinovich, and LV.Fyodorova, React Kinet Catal.Lett, 53 [2] 347-352 (1994).
【非特許文献2】A.N.Pestryakov, A.A.Fyodorov, M.S.Gaisinovich, V.P.Shurov, l.V.Fyodorova, and T.A.Gubaykulina, React Kinet Catal.Lett., 54 [1] 167-172 (1995).
【非特許文献3】J.R.Kosak. A Novel Fixed Bed Catalyst for the Direct Combination of H2 and O2to H2O2, M.G.Scaros and M.L.Prunier, Eds., Catalysis of Organic Reactions, Marcel Dekker, Inc. (1995), p115-124.
【非特許文献4】O.Y.Podyacheva, A.A.Ketov, Z.R.lsmagilov, V.A.Ushakov, A.Bos and H.J.Veringa, React. Kinet. Catal. Lett., 60 [2] 243-250 (1997).
【非特許文献5】A.N.Leonov, O.L.Smorygo, and V.K.Sheleg, React Kinet Catal.Lett., 60 [2]259-267 (1997).
【非特許文献6】M.V.Twigg and D.E.Webster. Metal and Coated-Metal Catalysts, A Cybulski is and J.A.Moulijn, Eds., Structured Catalysts and Reactors, Marcel Dekker, Inc.(1998), p59-90.
【0005】
[1]に記載されているように、三層、すなわち(1)多孔質担体、(2)界面層、及び(3)触媒金属を有するフォーム触媒又はモノリス触媒は公知である。これらの触媒を製造する場合、界面層は、溶液含浸法を含む様々な方法によって堆積させた。触媒層は、溶液含浸法で堆積させることができる。界面層は、多孔質担体に比べてより大きな表面積を有するが、多孔質担体は、界面層に比べてより強い機械的強度を有する。
多孔質担体は、金属又はセラミックのフォーム(foam)であることができる。金属フォームは、高度に熱伝導性であり、且つ機械加工し易い。スポンジ様の機械的性質により、機械的接触を介して反応室を簡便にシールすることができる。金属フォームと収容反応室(housing reaction chamber)との間の密接に適合させた熱膨張により、より高温において、多孔質担体のクラッキングが最小になり、また多孔質担体周囲のガスの偏流が最少になる。Pestryakovらは、n−ブタンを酸化するための中間ガンマ・アルミナ層を有する[1]及び有しない[2]金属フォーム担持遷移金属酸化物触媒を調製した。Kosak[3]は、表面をHCl溶液でプレエッチングする、様々な金属フォーム上に貴金属を分散させるためのいくつもの方法を試験し、無電解メッキが、フォーム担体に対して貴金属を最も良好に接着させることを報告した。Podyachevaら[4]も、メタンを酸化するための多孔質アルミナ中間層を有するフォーム金属担持LaCoO3ペロブスカイト触媒を合成した。金属フォーム担持触媒を用いることによるすべての潜在的な利点にもかかわらず、金属フォームは、耐蝕性が低く、その非多孔質及び滑らかなウエッブ表面に起因してセラミック材料に対する接着が不良であり、またこれらの材料は、熱膨張率が適合していないので、熱サイクル後に、界面層がスポーリングする傾向がある。
【0006】
耐蝕性を増大させるために、例えばAl,Cr及びSiとの拡散による合金製造のような方法を用いてフェライト鋼を二次加工してきた。前記方法は、高温炉部材(約1200℃)を製造するために典型的に用いられている[5]。アルミニウム含有フェライト鋼を適当に熱処理すると、アルミニウムが、合金表面へと移行し、酸素拡散に対して耐性があって強力に接着する酸化物フィルムが形成される。そのようなフェライト鋼箔を用いて>10ppi(1インチ当たりの細孔数)を有する金属モノリスを二次加工してきた[6]。しかしながら、触媒用途に適する細孔(<20ppi,好ましくは80ppi)を有する同様な合金フォームに関する研究は実を結ばなかった。それは、より微細なAl・フェライト鋼フォームを製造する方法が未成熟であったこと、また該フォームを製造するための合金前駆物質の欠如の双方とに起因していた。
【0007】
故に、腐蝕又は酸化に対して耐性があって、且つ界面層のクラッキングを抑えるフォームから成る多孔質担体のための担持触媒に関する技術においてニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも3つの層、すなわち(1)多孔質担体、(2)緩衝層、(3)界面層、及び任意に(4)触媒活性層を有する触媒を含む。いくつかの態様では、多孔質層と界面層との間に配置される緩衝層は、少なくとも2つの組成的に異なる副層(sublayer)を含む。緩衝層は、典型的には、多孔質担体から界面層に熱膨張率の遷移を提供し、それによって、触媒が高い運転温度まで加熱され且つ冷却されるときに、熱膨張歪を低減する。また、緩衝層は、多孔質担体の腐蝕及び酸化も低減し、また多孔質担体の表面によって触媒される副反応を最少にする。
【0009】
また、本発明は、多孔質担体、多孔質担体と界面層との間に配置された緩衝層、及び界面層を有する触媒を提供する;その場合、該触媒は、空気中で580℃で2500分間加熱される場合、5%未満だけ重量が増加するような耐酸化性を有する。別法として、該触媒は、熱サイクル中におけるフレーキングに対するその耐性によっても特徴付けられる。
【0010】
更に、本発明は、少なくとも1つの反応体を少なくとも1つの生成物へと転化させる方法を提供する。該方法では、該反応体は、触媒を含む反応室を通過させる。
【0011】
多層触媒(少なくとも3つの層)を製造するための本発明の方法は、(1)多孔質担体を選択する工程、(2)該多孔質担体上に緩衝層を堆積させる工程、(3)その上に界面層を配置する工程、及び任意に(4)該界面層上へと又は該界面層と一体化させて触媒活性層を配置する工程を有し;且つ、その場合、該緩衝層は該多孔質担体と該界面層との間に配置される。緩衝層を蒸着させると、より良い結果を得ることができる。触媒活性層は、界面層の蒸着後及び蒸着中に堆積させることができる。
【0012】
緩衝層と界面層とを有する多孔質担体を含む本発明の利点としては:熱膨張率のより良好な適合及び温度変化に対するより良好な安定性、例えばコーキングのような副反応の減少、所望の金属・酸化物相互作用、高表面積界面層に対する強力な結合、及び下地多孔質担体の保護の強化が挙げられる。
【0013】
本発明の主題は、本明細書の結論部分で特に指摘され且つ明確にクレームされる。しかしながら、同じ参照番号は同じ要素を指している添付の図面に関する以下の説明を参照することによって、本発明の更なる利点及び目的と共に、操作の構成及び方法の双方を、最も良く理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】触媒の拡大横断面図である。
【図2a】図2aは、580℃(破線)における、ステンレス鋼フォーム(頂部線)及びチタニアで被覆されたステンレス鋼フォーム(底部線)に関する、時間に対する(酸化による)重量増加のグラフである。
【図2b】図2bは、500℃における、ニッケルフォーム(頂部線)及びチタニアで被覆されたニッケルフォームに関する、時間に対する(酸化による)重量増加のグラフである。
【図3】チタニア緩衝層とアルミナ薄め被覆とを有するステンレス鋼フォーム(左)及びアルミナ薄め被覆を有するステンレス鋼フォーム(緩衝層無し、右)に関する熱サイクルの効果を比較している一対の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
多孔質担体100、緩衝層102、界面層104、及び任意に触媒層106を有する本発明の触媒が、図1に掲げてある。いずれの層も、スポット若しくはドットの形態で、又はギャップ若しくはホールを有する層の形態で、連続又は非連続であることができる。
多孔質担体100は多孔質セラミック又は金属の形態であることができる。本発明での使用に適する他の多孔質担体としては、炭化物、窒化物、及び複合材料が挙げられる。層を堆積させる前、多孔質担体は、水銀圧入法によって測定した場合、少なくとも5%の多孔度を有し、また光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡によって測定した場合、1μmから1000μmの平均細孔サイズ(孔径の合計/細孔数)を有する。多孔質担体は、好ましくは約30%から約99%の多孔度、更に好ましくは70%から98%の多孔度を有する。多孔質担体の好ましい形態は、フォーム、フェルト、ワッド(wad)及びそれらの組合わせである。フォームは、構造全体にわたって細孔を画定している連続壁を有する構造である。フェルトは、それらの間に隙間空間を有する繊維の構造である。ワッドは、スチールウールのような絡み合ったストランドの構造である。好ましさは劣るが、多孔質担体としては、上記の多孔度及び細孔サイズの特性を有するという条件付で、他の多孔質媒体、例えばペレット及びハニカムも挙げることかできる。金属フォームの連続気泡(open cells)は、好ましくは1インチ当たり細孔の個数が約20(ppi)から約3000ppi、更に好ましくは約40から約120ppiである。PPIは、1インチ当たりの細孔の最大個数と規定される(等方性材料では、測定方向は無関係であるが;異方性材料では、測定は細孔数が最大になる方向で行う)。本発明では、ppiは走査電子顕微鏡で測定する。多孔質担体は、低い圧力低下、従来のセラミックペレット担体を超える向上した熱伝導性、及び化学反応器におけるロード/アンロードのし易さを含む本発明におけるいくつもの利点を提供することを発見した。
【0016】
緩衝層102は、担体と界面層の双方に比べて異なる組成及び/又は密度を有し、好ましくは、多孔質担体と界面層の中間の熱膨張率を有する。好ましくは、緩衝層は金属酸化物の金属炭化物である。本出願人は、蒸着層が、いくつもの熱サイクルの後でも、より良好な接着を示し、またフレーキングに対して抵抗することを発見した。更に好ましくは、緩衝層は、Al,TiO,SiO及びZrO又はそれらの組合わせである。更に詳しくは、Alはα−Al,γ−Al及びそれらの組合わせである。α−Alは、その優れた酸素拡散に対する耐性の故に更に好ましい。而して、高温酸化に対する耐性を、多孔質担体100上に被覆されたアルミナによって向上できることが予期される。緩衝層は、2つ以上の組成的に異なる副層から作製することもできる。多孔質担体100が、金属、例えばステンレス鋼フォームであるとき、好ましい態様は、2つの組成的に異なる副層から形成される緩衝層102を有する(図示されていない)。第一副層(多孔質担体100と接触している)は、多孔質担体100に対して良好な接着を示すことから、好ましくはTiOである。好ましくは、第二副層は、TiO上に配置されるα−Alである。好ましい態様では、α−Al副層は、下地金属表面に対して卓越した保護を提供する高密度層である。次に、より密度低い高表面積アルミナ界面層を、触媒活性層のための担体として堆積させることができる。
【0017】
典型的には、多孔質担体100の熱膨張率は、界面層104のそれとは異なる。而して、高温触媒のためには(T>150℃)、緩衝層102は、2つの熱膨張率の間を遷移する必要がある。緩衝層の熱膨張率は、多孔質担体及び界面層の熱膨張率と適合する熱膨張率を得るために、緩衝層の組成を調節することによって、調整することができる。緩衝層102の別の利点は、剥き出しの金属フォーム表面によって引き起こされる副反応、例えばコーキング又はクラッキングに対する耐性を提供する点である。大表面積の担体を必要としない化学反応、例えば触媒燃焼のために、緩衝層102は、強力な金属対金属酸化物の相互作用によって触媒金属を安定化させる。大表面積の担体を必要とする化学反応では、緩衝層102は、高表面積界面層104に対してより強い結合を提供する。好ましくは、緩衝層には孔及びピンホールが無く、それにより、下地担体に対して優れた保護が提供される。更に好ましくは、緩衝層は非多孔質である。また、緩衝層は、多孔質担体の平均細孔サイズの1/2未満の厚さを有する。好ましくは、緩衝層は、約0.05μmから約10μm、更に好ましくは5μm未満の厚さを有する。緩衝層は、高温において、熱安定性及び化学安定性を示すべきである。
【0018】
界面層104は、窒化物、炭化物、硫化物、ハロゲン化物、金属酸化物、炭素及びそれらの組合わせを含むことができる。界面層は、高表面積を提供し、及び/又は担持触媒のための望ましい触媒担体相互作用を提供する。界面層は、触媒担体として従来用いられている任意の材料を含むことができる。好ましくは、界面層は金属酸化物である。金属酸化物としては、例えば、γ−Al,SiO,ZrO,TiO,酸化タングステン、酸化マグネシウム、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ニッケル、酸化コバルト、酸化銅、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化錫、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、ランタン系列酸化物(1種又は複数種)、ゼオライト(1種又は複数種)、及びそれらの組合わせが挙げられるが、これらに限定されない。界面層104は、その上に堆積される更なる触媒活性材料を有しない触媒活性層として役立つことができる。しかしながら、通常は、界面層104は、触媒活性層106と組合わせて用いる。また、界面層は、2つ以上の組成的に異なる副層から作製することもできる。界面層は、多孔質担体の平均細孔サイズの1/2未満の厚さを有する。好ましくは、界面層の厚さは、約0.5μmから約100μm、更に好ましくは約1から約50μmである。界面層は、結晶質又は非晶質であることができ、好ましくは少なくとも1m2/gのBET表面積を有する。
【0019】
触媒活性層106(存在するとき)は、界面層104上に堆積させることができる。別法として、触媒活性材料を、界面層と一緒に同時に堆積させることができる。触媒活性層(存在するとき)は、典型的には、界面層上に密接に分散させる。触媒活性層を界面層上に「配置」又は「堆積」させるということは、顕微鏡的な触媒活性粒子が:担体層(すなわち、界面層)表面上に、担体層における間隙中に、及び担体層における開放気孔中に分散されるという従来の理解を含む。触媒活性層としては:触媒金属、例えば貴金属、遷移金属及びそれらの組合わせ;金属酸化物、例えばアルカリ元素、アルカリ土類元素、硼素、ガリウム、ゲルマニウム、砒素、セレン、テルル、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウム、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛、ジルコニウム、モリブデン、錫、カルシウム、アルミニウム、珪素、ランタン系列元素(1種又は複数種)の酸化物、及びそれらの組合わせ;複合材料;ゼオライト(1種又は複数種);窒化物;炭化物;硫化物;ハロゲン化物;ホスフェート;及び前記のいずれかの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
好ましくは、触媒(多孔質担体、緩衝層、界面層及び存在する場合は触媒活性層を含む)は、反応室内に適合する大きさにする。触媒は、分子が触媒中を拡散できるような連続的な多孔性を有することが好ましい。この好ましい態様では、ガスが、触媒の周囲ではなく、実質的に触媒中に流れるように、触媒を反応室中に配置することができる。好ましい態様では、触媒の断面積は、反応室の断面積の少なくとも80%、更に好ましくは少なくとも95%を占める。好ましい態様では、触媒中を通る反応体が、触媒中の通過流路に沿ってどこででも反応できるように、触媒活性材料を、触媒全体の表面上に分散させる;それは、ペレットの内部において未利用空間又は触媒が有効に活用されない空間が大きな容積で存在するペレットタイプの触媒を超える有意な利点である。また、本発明の触媒は、充填された粉末は厳しい圧力低下を引き起こし得るので、粉末に比べても優れている。
【0021】
また、本発明の触媒は、それらが示す特性によって特徴付けることもできる。調節することによってこれらの特性に影響を与えることができる因子としては:多孔質担体、緩衝層、界面層、及び触媒活性層の選択;熱膨張率の段階的変化、結晶化度、金属・担体相互作用、堆積法、及び本発明で説明から明らかな他の因子が挙げられる。これらの因子を用いる定型の試験と組合わせて緩衝層を用いると、様々な化学反応を触媒する触媒を製造することができる。本発明の触媒の好ましい態様は、次の特性:すなわち、(1)接着−空気中における3回の熱サイクルの後、触媒は、SEM(走査電子顕微鏡)分析によって観察すると、2%(面積基準)未満のフレーキングを示す;(2)耐酸化性の1つ以上を示す。空気中において580℃で2500分間加熱すると、触媒の重量は、5%未満だけ、更に好ましくは3%未満増加し;なお更に好ましくは、空気中において750℃で1500分間加熱すると、0.5%未満だけ増加する。重量増加は、熱重量分析(TGA)によって測定する。各熱サイクルは、空気中において、10℃/分の加熱速度で室温から600℃まで加熱し、600℃で3000分間保ち、10℃/分の速度で冷却する工程から成る。触媒は、好ましくは、BETで測定した場合に、約0.5m/g超、更に好ましくは約2.0m/g超の表面積を有する。
【0022】
更に、本発明は、少なくとも1つの反応体を本発明の触媒を含む反応室中に通す工程、該少なくとも1つの反応体を少なくとも1つの生成物へと転化させる工程、及び該反応室から該生成物を取り出す工程を含む触媒法を提供する。好ましい態様では、該触媒法は、マイクロチャネルを有する装置で行う。適当なマイクロチャネル装置及び様々な方法に関連のある因子は、例えば米国特許第5,611,214号、第5,811,062号、第5,534,328号及び米国特許出願第08/883,643号、第08/938,228号、第09/375,610号、第09/123,779号、同時出願された米国特許出願第09/492,246号(代理人整理番号E−1666B−CIP)、09/375,614(1999年8月17日出願)及び09/265,227(1999年3月8日出願)に記載されている。前記の特許及び特許出願は、あたかも以下で完全に複製されているかのような参照として本明細書に取り入れられている。別の好ましい態様では、触媒は、モノリス、すなわち単一の隣接多孔質触媒片、又は反応室へと容易に挿入することができ且つ反応室から容易に取り出すことができる一緒に積み重ねられているいくつもの隣接片である(充填された粉末床又はペレット又はマイクロチャネル壁上の被覆ではない)。触媒片の一片又はスタックは、好ましくは0.1mmから約2cmの幅を有し、好ましい厚さは1cm未満であり、更に好ましくは約1mmから約3mmである。本発明の触媒は、触媒法に対して多くの利点:例えば、化学安定性、繰り返される熱サイクルに対する安定性、熱安定性、触媒の効率的なロード/アンロード、高速な熱移動及び物質移動、及び所望の触媒活性の維持を提供することができる。
【0023】
マイクロチャネル装置内の金属表面は、緩衝層及び界面層のいずれか又は両方で被覆することができる。それは、本明細書で説明する方法のいずれかを用いて、好ましくは蒸着によって行うことができる。好ましい被覆材料は、チタン及び5%〜10%SiO/Alを含む。反応室及び熱交換器の内面及びマイクロチャネル装置の他の表面を被覆することができる。いくつかの態様では、反応室の壁は、任意の緩衝層、界面層、及び触媒活性材料で、典型的には触媒活性材料と界面層との組合せで被覆して、担持触媒を作製することができる。また、被覆は、マイクロチャネル装置に対する接続又はマイクロチャネル装置内における接続を形成するチューブ及びパイプにおける金属壁に対して施用できる。
【0024】
本発明の触媒法としては:アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、水素化脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、芳香族化、アリル化、自熱式改質、カルボニル化、脱カルボニル、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、縮合、分解、水素化分解、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、二量体化、エポキシ化、エステル化、交換、フィッシャー・トロプシュ、ハロゲン化、水素化ハロゲン化(hydrohalogenation)、ホモログ化、水和、脱水、水素化、脱水素、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化(hydrometallation)、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理法、水素化脱硫/水素化脱窒素(HDS/HDN)、異性化、メタノール合成、メチル化、脱メチル化、メタセシス、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、蒸気改質及び二酸化炭素改質、スルホン化、テロメリゼーション、エステル交換反応、三量体化、水性ガス転化(WGS)、及び逆水性ガス転化(RWGS)が挙げられる。
【0025】
本発明の触媒を製造する方法は、多孔質担体100を選択する工程、該多孔質担体100上に緩衝層102を堆積させる工程及びその上に界面層104を堆積させる工程を有する。任意に、触媒層106を、界面層104上へと堆積させることができ、又は界面層及び触媒層の両方を、緩衝層102上に同時に堆積させることができる。
【0026】
金属は、非多孔質で滑らかなウェブ表面を有するので、緩衝層の堆積は妨げられるかもしれない。この問題を緩和する1つの方法は、化学的エッチングによって金属表面を粗くする方法である。鉱酸溶液、例えば0.1Mから1MのHClを用いる化学的エッチングによって金属フォームを粗くすると、金属フォームに対する高表面積ガンマ・アルミナ担持金属触媒の接着は有意に向上する。粗くされたウェブ表面は、熱サイクル下において触媒層のスポーリングに対して向上した耐性も示す。金属フォームを多孔質担体100として用いる好ましい態様では、緩衝層102を蒸着する前に金属フォームをエッチングする。エッチングは、好ましくは、酸、例えばHClによって行う。
【0027】
緩衝層102の堆積は、好ましくは、限定するものではないが、化学蒸着、物理蒸着、又はそれらの組合わせを含む蒸着によって行う。驚くべきことに、典型的には高温で行われる蒸着では、多孔質担体の表面に対して緩衝層を良好に接着させる多結晶質又は非晶質の相が生成することを見出した。該方法は、金属酸化物緩衝層を金属多孔質担体に対して接着させるのに特に都合が良い。別法として、緩衝層102は、溶液被覆(solution coating)によって得ることができる。例えば、溶液被覆は、金属表面を水蒸気に曝して表面ヒドロキシルを生成させることによって金属表面を官能化し、次に、表面反応させ、且つアルコキシドを加水分解して、金属酸化物の被覆を得る工程を有する。この溶液被覆は、緩衝層102を堆積させるより低コストの方法として好ましいかもしれない。
【0028】
界面層104は、好ましくは、これらの技術において公知の前駆物質を用いて蒸着又は溶液堆積(solution deposition)によって作製する。適当な前駆物質としては、有機金属化合物、ハロゲン化物、カルボニル、アセトネート、アセテート、金属、金属酸化物のコロイド分散液、硝酸塩類、スラリーなどが挙げられる。例えば、多孔質アルミナ界面層は、PQアルミナ(マサチューセッツ州アシュランドにあるNyacol Products)コロイド分散液で洗浄被覆し、次に真空中で一晩乾燥させ、500℃で2時間焼成することができる。
【0029】
触媒活性材料は、任意の適当な方法で蒸着させることができる。例えば、触媒前駆物質を、コロイド金属酸化物粒子上に堆積させ、緩衝被覆した多孔質担体上にスラリー被覆し、次に乾燥させ還元することができる。
【0030】
実施例1
実験を行って、本発明の緩衝層の確かな利点を証明した。
エッチングされていないステンレス鋼フォーム(オハイオ州ンシナティにあるAstromet)を、化学蒸着法によって、1000ÅのTiOで被覆した。チタンイソプロポキシド(マサチューセッツ州ニューバリーポートにあるStrem Chemical)を、0.1トルから100トルの圧力で250℃から800℃の温度において、蒸着させた。600℃の堆積温度及び3トルの反応器圧において、該フォームに対して優れた接着を有するチタン被覆が得られた。
【0031】
SEM(走査電子顕微鏡)分析によると、TiOを有するステンレス鋼フォーム担持ガンマ・アルミナは、室温から600℃までの数回(3回)の熱サイクル後において、スポーリングを示さなかったことが分かった。TiO緩衝層を有していないガンマ・アルミナで被覆されたステンレス鋼フォーム担体を用いた対照実験では、同じ試験条件下において、厳しいフレーキング又はスポーリングが観察された。高温酸化に対する耐性は、図2a及び2bに示されている。図2aにおいて認められるように、被覆されていないステンレス鋼フォームは急速に酸化される(重量増加値、すなわち熱重量値によって示されている)が、チタン被覆されたステンレス鋼は比較的ゆっくりと酸化される。図2bにおいて認められるように、被覆されていないニッケルフォームは酸化したが、同じ条件下で、チタニアで被覆されたニッケルフォームはゼロ酸化(すなわち、検出不可能なレベルの酸化)であった。
【0032】
結語 本発明の好ましい態様を示し説明してきたが、本発明のより広い面において、本発明から逸脱せずに、多くの変更及び改良が可能であることは当業者には明らかである。而して、添付の請求の範囲は、本発明の真の精神及び範囲内にあるすべての変更及び改良をカバーすることを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質担体、緩衝層、界面層、及び表面上に触媒活性層を含む触媒であって;該緩衝層が、該多孔質担体と該界面層との間に配置されていて、且つ該界面層が、該触媒活性層と該緩衝層との間に配置されている前記触媒。
【請求項2】
多孔質担体、緩衝層、及び界面層を含む触媒であって;該緩衝層が、少なくとも2つの組成的に異なる副層を含み、且つ該緩衝層が、該多孔質担体と該界面層との間に配置されている前記触媒。
【請求項3】
前記界面層上に触媒活性層を更に含む請求項2記載の触媒。
【請求項4】
多孔質担体、緩衝層、及び界面層を含む触媒であって;該緩衝層が、該多孔質担体と該界面層との間に配置されていて;且つ該触媒が空気中で3回の熱サイクルに曝された場合に、該触媒が2%未満のフレーキングを示すように、該触媒が熱サイクル安定性を有する前記触媒。
【請求項5】
前記多孔質担体が金属であって;且つ更に、前記触媒が空気中で580℃において2500分間加熱される場合に、該触媒が5%未満だけ重量が増加するように、該触媒が耐酸化性を有する請求項4記載の触媒。
【請求項6】
以下の工程:すなわち、 多孔質担体を選択する工程;
該多孔質担体上に緩衝層を蒸着させる工程;
該緩衝層上に界面層を堆積させる工程を含む触媒を製造する方法。
【請求項7】
少なくとも1つの反応体を反応室中へと通す工程;
その場合、該反応室は請求項1記載の触媒を含む;
該少なくとも1つの反応体を少なくとも1つの生成物へと転化させる工程;及び
該生成物を該反応室から外に出す工程を含む、少なくとも1つの反応体を少なくとも1つの生成物へと転化させる方法。
【請求項8】
少なくとも1つの反応体を反応室中へと通す工程;
その場合、該反応室は請求項2記載の触媒を含む;
該少なくとも1つの反応体を少なくとも1つの生成物へと転化させる工程;及び
該生成物を該反応室から外に出す工程を含む、少なくとも1つの反応体を少なくとも1つの生成物へと転化させる方法。
【請求項9】
少なくとも1つの反応体を反応室中へと通す工程;
その場合、該反応室は請求項3記載の触媒を含む;
該少なくとも1つの反応体を少なくとも1つの生成物へと転化させる工程;及び
該生成物を該反応室から外に出す工程を含む、少なくとも1つの反応体を少なくとも1つの生成物へと転化させる方法。
【請求項10】
前記方法を:アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、水素化脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、芳香族化、アリル化、自熱式改質、カルボニル化、脱カルボニル化、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、縮合、分解、水素化分解、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、二量体化、エポキシ化、エステル化、交換、フィッシャー・トロプシュ、ハロゲン化、水素化ハロゲン化、ホモログ化、水和、脱水、水素化、脱水素、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理法、水素化脱硫/水素化脱窒素(HDS/HDN)、異性化、メタノール合成、メチル化、脱メチル化、メタセシス、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、水蒸気改質及び二酸化炭素改質、スルホン化、テロメリゼーション、エステル交換反応、三量体化、水性ガス転化(WGS)、及び逆水性ガス転化(RWGS)から成る群より選択する請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記方法を:アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、水素化脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、芳香族化、アリル化、自熱式改質、カルボニル化、脱カルボニル化、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、縮合、分解、水素化分解、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、二量体化、エポキシ化、エステル化、交換、フィッシャー・トロプシュ、ハロゲン化、水素化ハロゲン化、ホモログ化、水和、脱水、水素化、脱水素、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理法、水素化脱硫/水素化脱窒素(HDS/HDN)、異性化、メタノール合成、メチル化、脱メチル化、メタセシス、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、水蒸気改質及び二酸化炭素改質、スルホン化、テロメリゼーション、エステル交換反応、三量体化、水性ガス転化(WGS)、及び逆水性ガス転化(RWGS)から成る群より選択する請求項7記載の方法。
【請求項12】
前記方法を:アセチル化、付加反応、アルキル化、脱アルキル化、水素化脱アルキル化、還元的アルキル化、アミノ化、芳香族化、アリル化、自熱式改質、カルボニル化、脱カルボニル化、還元的カルボニル化、カルボキシル化、還元的カルボキシル化、還元的カップリング、縮合、分解、水素化分解、環化、シクロオリゴマー化、脱ハロゲン化、二量体化、エポキシ化、エステル化、交換、フィッシャー・トロプシュ、ハロゲン化、水素化ハロゲン化、ホモログ化、水和、脱水、水素化、脱水素、ヒドロカルボキシル化、ヒドロホルミル化、水素化分解、ヒドロメタル化、ヒドロシリル化、加水分解、水素処理法、水素化脱硫/水素化脱窒素(HDS/HDN)、異性化、メタノール合成、メチル化、脱メチル化、メタセシス、ニトロ化、酸化、部分酸化、重合、還元、水蒸気改質及び二酸化炭素改質、スルホン化、テロメリゼーション、エステル交換反応、三量体化、水性ガス転化(WGS)、及び逆水性ガス転化(RWGS)から成る群より選択する請求項8記載の方法。
【請求項13】
装置の内壁の少なくとも1つを、緩衝層で被覆したマイクロチャネル装置。
【請求項14】
前記緩衝層上に配置された界面層を更に含む請求項13記載のマイクロチャネル装置。
【請求項15】
前記緩衝層を蒸着させた請求項13記載のマイクロチャネル装置。
【請求項16】
前記壁が、該反応室の少なくとも1つの壁を含み、且つ該界面層上に配置された触媒活性材料を更に含む請求項14記載のマイクロチャネル装置。
【請求項17】
前記緩衝層が、チタニアである請求項6記載の方法。
【請求項18】
前記触媒が空気中で3回の熱サイクルに曝された場合に、該触媒が2%未満のフレーキングを示すように、該触媒が熱サイクル安定性を有する請求項1記載の触媒。
【請求項19】
前記触媒が空気中で580℃において2500分間加熱される場合に、該触媒が5%未満だけ重量が増加するように、該触媒が耐酸化性を有する請求項1記載の触媒。
【請求項20】
前記反応室が壁を有し、且つ該壁の少なくとも1つに対して、その上に:
緩衝層;
界面層;及び
触媒活性層が配置されている請求項7記載の方法。
【請求項21】
前記触媒が空気中で750℃において1500分間加熱される場合に、該触媒が0.5%未満だけ重量が増加するように、該触媒が耐酸化性を有する請求項1記載の触媒。
【請求項22】
前記多孔質担体が金属であり、且つ前記触媒活性層が、該触媒を通過する反応体が該触媒を通る流路に沿って至る所で反応できるように、該触媒全体の表面上に分散される請求項1記載の触媒。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−110894(P2012−110894A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−5341(P2012−5341)
【出願日】平成24年1月13日(2012.1.13)
【分割の表示】特願2001−554787(P2001−554787)の分割
【原出願日】平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願人】(500037481)バッテル・メモリアル・インスティチュート (18)
【Fターム(参考)】