説明

触媒充填機およびそれを用いた触媒の充填方法

【課題】固定床多管式反応器の反応管への触媒の供給作業時間を短縮し、且つ作業者の労力を軽減し、触媒層圧力損失のばらつきを抑制することができる各反応管に、触媒を充填する触媒充填機およびそれを用いた触媒の充填方法を提供することである。
【解決手段】固体状の触媒を貯留するホッパー1と、該ホッパー1から流下する触媒を載せて搬送する触媒搬送通路(A)と、該触媒搬送通路(A)から搬送される触媒を載せて搬送するベルトコンベア3と、該ベルトコンベアから搬送される触媒を載せて反応管20の上方に搬送供給する触媒搬送通路(B)とを有する触媒充填機100であり、前記触媒搬送通路(B)は、傾斜面に開閉可能な触媒排出口を備える傾斜シュート10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業的規模で使用する固定床多管式反応器の各反応管に触媒を充填する触媒充填機およびそれを用いた触媒の充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工業的規模で使用される固定床多管式反応器は、数百から数万本の反応管を有するものであり、筒状の各反応管の内部に触媒などの固体充填物が充填され、充填された固体充填物の空隙を反応流体が流れる方式であり、石油化学プロセス等で広く採用されている。
このような各反応管に固体状の触媒を充填するのに、従来から触媒充填機が用いられてきた。
【0003】
特許文献1には、ホッパーから流下する触媒をコンベアに載せて複数の反応管に搬送供給するにあたり、コンベア搬送面を反応管ごとに仕切り壁で仕切り、かつ搬送触媒の層厚さを設定する層厚さ調整板定部を設けることにより、一定の供給速度で各反応管に触媒を供給できる触媒充填機について記載されている。
【0004】
特許文献2には、複数の反応管に対応して、触媒が投入される複数のホッパーが設けられ、該ホッパーの下に各ホッパー毎に搬送触媒列が形成されており、各ホッパーから落下した触媒をコンベアに載せて反応管に搬送供給する触媒充填機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−333282号公報
【特許文献2】特開2006−142297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の触媒充填機では、反応管ごとに触媒充填量をそれぞれ計量する必要や、各反応管への触媒充填後にコンベアを停止させる必要があり、作業効率の低下を招くという問題があった。さらに、コンベア停止時には、コンベア上に触媒が残存することとなり、新たに各反応管に触媒を充填する際に、停止したコンベアを再稼動させると、コンベアの搬送速度が直ちに安定しないために、コンベア上に残存した触媒の影響で各反応管における触媒の充填高さが不均一になるという問題があった。
【0007】
従って、本発明の課題は、固定床多管式反応器等の反応管への触媒充填における作業効率を向上させ、さらに各反応管における触媒の充填高さを均一にすることができる触媒充填機およびそれを用いた触媒の充填方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の触媒充填機および触媒の充填方法は、以下の構成を有する。
(1)固体状の触媒を貯留するホッパーと、該ホッパーから流下する触媒を載せて搬送する触媒搬送通路(A)と、該触媒搬送通路(A)から搬送される触媒を載せて搬送するベルトコンベアと、該ベルトコンベアから搬送される触媒を載せて反応管の上方に搬送供給する触媒搬送通路(B)とを有し、前記触媒搬送通路(B)は、傾斜面に開閉可能な触媒排出口を備える傾斜シュートであることを特徴とする触媒充填機。
(2)前記触媒搬送通路(A)は、触媒搬送上流側を支点として、下流端が水平位置よりも上方と下方との間で昇降可能である前記(1)に記載の触媒充填機。
(3)前記ベルトコンベア上で搬送される触媒の層厚さを調整する調整板を備える前記(1)または(2)に記載の触媒充填機。
(4)前記反応管内には、触媒の充填高さを検出する光電センサが設けられており、かつ前記反応管の上方から前記反応管に充填される触媒の充填高さが設定値に到達した時、前記光電センサから出力された検出信号により、前記触媒排出口を開口させる制御機構を有する前記(1)〜(3)のいずれかに記載の触媒充填機。
(5)前記検出信号により、前記触媒搬送通路(A)の触媒搬送上流側を支点として、前記触媒搬送通路(A)の下流端を水平位置よりも上方に上昇させる制御機構を有する前記(4)に記載の触媒充填機。
(6)前記光電センサが、白画用紙を標準検出物として、90〜1000mmの範囲の検出距離を有する拡散反射型である前記(4)または(5)に記載の触媒充填機。
(7)前記(1)〜(3)のいずれかに記載の触媒充填機を使用して、前記触媒排出口が閉じた状態で、前記ホッパーに貯留された固体状の触媒を前記反応管の上方から前記反応管に充填し、前記反応管内の触媒の充填高さが設定した高さに到達した時、前記触媒排出口を開口させて前記反応管への触媒の充填を停止することを特徴とする触媒の充填方法。
(8)前記(4)〜(6)のいずれかに記載の触媒充填機を使用して、前記触媒排出口が閉じた状態で、前記ホッパーに貯留された固体状の触媒を前記反応管の上方から前記反応管に充填し、前記反応管内の触媒の充填高さが設定値に到達した時、前記触媒排出口を開口させる制御機構により前記触媒排出口を開口させて前記反応管への触媒の充填を停止することを特徴とする触媒の充填方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工業的規模で使用する固定床多管式反応器等の各反応管に触媒を充填するに際して、各反応管における触媒充填高さを所定の高さで一定に設定することができ、より簡便に触媒を充填することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る触媒充填機を示す概略斜視図である。
【図2】(a)は、触媒供給時における触媒充填機の動作を示す概略側面図であり、(b)は、触媒供給停止時における触媒充填機の動作を示す概略側面図である。
【図3】本発明における光電センサの設置状態を示す概略断面図である。
【図4】本発明における光電センサを保護する保護管の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図を用いて本発明を詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る触媒充填機100を示す斜視図である。図2(a)は、触媒供給時における触媒充填機100の動作を示す概略側面図であり、図2(b)は、触媒供給停止時における触媒充填機100の動作を示す概略側面図である。
【0014】
図1、図2に示す触媒充填機100は、互いに独立した複数のホッパー1と、触媒搬送通路4(触媒搬送通路(A))と、ベルトコンベア3と、調整板5と、仕切り壁9と、傾斜シュート10(触媒搬送通路(B))と、反応管導入ホッパー8とを備えている。
【0015】
(ホッパー1)
ホッパー1は、反応管20に充填される固体状の触媒を貯留している。この実施形態におけるホッパー1は、反応管20ごとにそれぞれ独立して形成されている。1台の触媒充填機が有するホッパー1の個数は、特に制限されないが、通常、1〜50個、さらには3〜30個であるのが好ましい。
【0016】
ホッパー1は、後壁11と側壁12と前壁13とから構成され、側壁12と前壁13とは略垂直であり、後壁11と前壁13とは後壁11と前壁13との間隔が下方に向かって順次小さくなるように傾斜している。後壁11の傾斜角度は、触媒の安息角度よりも大きい(急)角度であるのがよい。後壁11と側壁12とは、例えば1枚の金属板を折り曲げて形成され、側壁12と前壁13とは溶接により一体に接合されるので、後壁11と側壁12との境界部に溶接などの継ぎ目がなく、しかも境界部内面が曲面状になる。そのため、触媒自体の重さによってホッパー1内から触媒が円滑に流下する。ホッパー1に触媒を供給する際に、触媒同士がこすれ合って触媒の粉化や破壊による粉塵が発生することがあり、この粉塵が反応管に供給されると各反応管における圧力損失のばらつきの要因となるので、後壁11は、触媒が通過せず、触媒の粉塵が通過する目開きのメッシュ構造としてもよい。後壁11をメッシュ構造とした場合、メッシュを通過して落下した粉塵を回収するための回収箱(図示せず)を取り付けてもよいし、メッシュを通過した粉塵を吸収するための吸引装置(図示せず)を取り付けてもよい。
なお、ホッパーの形状は、前述した形状に限定されず、例えば、円錐型、角錐型などのホッパーを用いてもよい。
【0017】
また、ホッパー1の前壁13の下部には、開閉シャッター2が設けられている。開閉シャッター2の開閉機構は、特に限定されず、例えば、圧縮空気等により開閉駆動する開閉板による開閉機構、上下にスライドするスライド板による開閉機構などが挙げられる。
さらに、ホッパー1は、ホッパー内の触媒を振動させる振動機構を備えていてもよい。
【0018】
(触媒搬送通路4)
触媒搬送通路4は、上面が開口した溝形形状を有し、触媒搬送の上流側端部がホッパー1の下部に位置し、下流側の下流端がホッパー1より前方のベルトコンベア3上に位置している。この触媒搬送通路4は、ホッパー1側で支持部材15により、該支持部材15の下部を支点として回転可能に支持されており、そのため触媒搬送通路4の下流端が回転動作により水平位置よりも上方と下方との間で昇降可能に構成されている。
触媒搬送通路4の下流端の昇降は、昇降装置40により行われる。昇降装置40は、図1および図2に示すように、油圧シリンダ42の後端を連結部材41によりホッパー1の前壁13に取り付け、ピストンロッド43の先端を、触媒搬送通路4の下流端付近に連結部材44により取り付けられている。
そのため、図2(a)に示すように、昇降装置40により触媒搬送通路4の下流端を水平位置より下降させると、ホッパー1から流下する触媒を触媒搬送通路4を経てベルトコンベア3へと搬送することができる。
また、図2(b)に示すように、触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上昇させると、ホッパー1から流下する触媒のベルトコンベア3への搬送を止めることができる。
【0019】
なお、触媒搬送通路4は、溝形形状以外にも、例えば筒形形状であってもよい。また、昇降装置40は、上述したような油圧式の昇降装置に限らず、ワイヤー巻上機を使用した電気式の昇降装置など触媒搬送通路4の下流端側を昇降できる他の公知の昇降装置を用いてもよい。
【0020】
(ベルトコンベア3)
ベルトコンベア3は、触媒搬送通路4から搬送された触媒を一定の速度で搬送できるため、触媒同士のこすれ合いを少なくすることができ、触媒の粉化や破壊による粉塵の発生を防止することができるだけでなく、各反応管20への供給量のむらがなくなって、触媒同士が繋がる、いわゆるブリッジが生じにくくなり、各反応管20内における触媒の充填状態を均一とすることができる。
【0021】
ベルトコンベア3の搬送速度は、触媒の充填速度が、通常5〜60g/秒、好ましくは5〜40g/秒となるように適宜調製すればよい。
【0022】
また、ベルトコンベア3の触媒搬送面の上方の搬送空間には、各ホッパー1に対応した搬送幅方向で仕切り壁9が設けられ、各反応管20に対応する一対の仕切り壁9の間隔は、反応管20の内径とほぼ同じに設定されている。このような仕切り壁9を設けることで、一度に多数の触媒を投入してもブリッジの発生を抑制することができる。
また、仕切り壁9で仕切られたレーンごとに独立したモータで駆動する独立したベルトコンベアを用いてもよい。
触媒の搬送により、ベルトコンベア3の表面に触媒の粉塵が付着することがあるので、ベルトコンベア3の表面から該粉塵を除去するためのブラシ(図示せず)や吸引装置(図示せず)などを取り付けてもよい。
【0023】
(調整板5)
ベルトコンベア3の触媒搬送面の上方の搬送空間には、各ホッパー1に対応した調整板5が設置されている。
これにより、例えば、ベルトコンベア3の駆動に伴って、前述した仕切り壁9の作用で各反応管20に対応した送り幅に調整された搬送触媒列の高さが、反応管20に充填する際の適当な高さを越えている場合には、調整板5で搬送触媒列の高さを適当な高さに調整することができるので、ホッパー1の流下量を多くしても、適当な高さの搬送触媒列に調整でき、ベルトコンベア3の搬送速度を適切な速度に設定することで、反応管20に充填される触媒の供給速度を調整することができる。
【0024】
調整板5の高さ調整は、任意の手段にて行なうことができ、例えば、調整板5に縦に長い長孔を設け、この長孔を挿通するボルトを図示しない支持材に螺合させることにより、調整板5を高さ調整自在に支持させることができる。
【0025】
(傾斜シュート10)
傾斜シュート10は、ベルトコンベア3の搬送終端部からの触媒を各反応管20に案内するために、搬送触媒列ごとに設けられており、傾斜シュート10の傾斜面には、開閉可能な触媒排出口6が形成されている。傾斜シュート10の傾斜角度は、触媒の安息角度よりも大きい(急)角度であるのがよい。
傾斜シュート10は、仕切り壁等で搬送触媒列ごとに仕切られているので、ベルトコンベア3での搬送中に形成された搬送触媒列を維持しながら、触媒を反応管20へ充填することができる。また、傾斜シュート10の傾斜面の触媒排出口6は、図1、図2(a)に示すように、触媒搬送時には蓋61で閉じられており、触媒を反応管20へ搬送する。一方、蓋61を開くと、図2(b)に示すように、触媒は触媒受け7へ落下し、ベルトコンベア3を停止させることなく反応管20への触媒供給を完全に停止させることができ、各反応管20内の触媒充填高さのばらつきを、より少なくすることができる。同時に、昇降装置40により触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上昇させると、ホッパー1から流下する触媒のベルトコンベア3への搬送を止めることができると共に、ベルトコンベア3や傾斜シュート10上に残存する触媒を排出することができる。これにより、ホッパー1に貯留されている触媒量の減少を抑制でき、ホッパー1への触媒供給の頻度が低減され、また、触媒受け7に触媒が落下し続けるのを止めることができ、触媒受け7からの触媒回収の頻度も低減される。さらに、反応管への触媒の充填後に新たな反応管に触媒を充填する際に、仮に、触媒の供給速度等の条件を変更する場合には、ベルトコンベア3や傾斜シュート10上に残存した触媒の影響を受けることなく条件を変更することができるので、新たな反応管への触媒の充填をスムーズに行なうことができる。
なお、触媒受け7へ落下した触媒は、ホッパー1に再供給して、反応管20に充填される触媒として再利用することができる。
【0026】
また、傾斜シュート10は、傾斜面が仕切り壁等で搬送触媒列ごとに仕切られた形状に限定されず、搬送触媒列ごとに溝型形状となっていてもよく、筒型形状となっていてもよい。
【0027】
蓋61は、図2(a)、(b)に示すように、該蓋61の触媒搬送上流端が支点となり回転可能となるように傾斜シュート10の傾斜面に取り付けられており、かつ触媒搬送下流側では、傾斜シュート10の下方に設置された油圧シリンダ51のピストンロッド50の先端が蓋61に固定されている。そのため、油圧シリンダ51を作動させて、ピストンロッド50を引くと、蓋61が下方に回転して開かれる(すなわち、図2(a)に示す状態から同図(b)に示す状態になる)。蓋61を閉じる場合には、上記と逆にピストンロッド50を油圧シリンダ51から押出すようにする。なお、蓋61が閉じた状態の時には、該蓋61の触媒搬送下流端と傾斜シュート10の境界部分は、触媒が引っ掛からないように、段差をなくすことが好ましい。
【0028】
触媒排出口6の形状は、特に限定されないが、触媒排出口6の開放時に確実に触媒を触媒受け7へ落下させる観点から傾斜シュート10の傾斜面の大部分を占める面積を有しているのが好ましい。
また、蓋61を、メッシュ構造とすることで、触媒の粉塵等を触媒受け7へ落下させることができ、反応管20内の触媒層圧力損失のばらつき等を抑制することができる。メッシュの目開きは、用いる触媒の形状や大きさ等によって適宜決定すればよく、例えば、触媒が通過せず、触媒の粉塵が通過する目開きとすればよい。メッシュを通過した粉塵等は、触媒受け7で受けてもよいし、吸引装置を取り付けて吸引させてもよい。なお、傾斜シュート10の傾斜面は、蓋61以外の部分をメッシュ構造としてもよく、その場合、蓋61はメッシュ構造を有するものであってもよいし、有さないものであってもよい。
【0029】
(反応管導入ホッパー8)
傾斜シュート10の下端には、反応管導入ホッパー8が接続され、反応管20内に挿入されている。これにより、傾斜シュート10で搬送される触媒を、確実に反応管20へ供給することができる。反応管導入ホッパー8は、反応管20へ供給される触媒を振動させる振動機構を備えていてもよい。
【0030】
(触媒充填手順)
以下、触媒充填機の操作手順の一例を示す。
(イ)触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上方に上げ、触媒排出口6を閉じて、ホッパー1に触媒を補給する。
(ロ)ベルトコンベア3を駆動させ、搬送速度が安定した後に、触媒搬送通路4の下流端を水平位置より下げ、反応管20への触媒の充填を開始する。
(ハ)反応管20内に所定の触媒充填高さが得られたら、ベルトコンベア3を駆動させたまま触媒排出口6を開く。これにより、反応管20への触媒供給が停止される。適宜、触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上方に上げ、ホッパー1からの触媒流下を停止させる。
(ニ)触媒排出口6を閉じ、触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上げた場合には水平位置より下げ、適宜ホッパー1に触媒を補給し、別の反応管20への触媒の充填を開始する。
【0031】
以上のような操作手順により、ホッパー1から触媒が流下してベルトコンベア3に載り、ベルトコンベア3の駆動に伴って、搬送触媒列が仕切り壁9の作用で各反応管20に対応した送り幅に設定されるとともに、調整板5により所定の高さに調整され、その状態で反応管20に供給される。そして、充填する触媒量を計量することなく、かつ、ベルトコンベア3を停止させることなく、反応管20内に供給された触媒充填高さを判断基準として、反応管20への触媒供給を停止することができる。そして、触媒供給が終わると位置変更機構(図示せず)の作動により触媒充填機100の位置を変更させて、別の複数の反応管20に触媒を供給し、この作業を繰り返す。
【0032】
(光電センサ60および制御機構)
触媒充填機100には、反応管20内の触媒充填高さを検出する光電センサ60が設けられてもよい。光電センサ60は、図示しない制御機構と電気的に接続されており、光電センサ60から出力された検出信号により、少なくとも傾斜シュート10の触媒排出口6の開閉を制御しており、好ましくは、触媒搬送通路4の下流端の昇降および傾斜シュート10の触媒排出口6の開閉を制御するのがよい。即ち、上述の触媒充填機の操作手順(ハ)において、光電センサ60を設けることにより、反応管20内の触媒の充填高さが設定値に到達した時、触媒排出口6を開口させる制御機構により触媒排出口6を開口させ、適宜、触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上方に上げる制御機構により触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上方に上げることができる。
【0033】
このような制御機構を用いることで、充填する触媒量の計量や触媒充填高さの人為的な調整を行うことなく、触媒を自動的に充填できるので、作業者の労力を軽減でき、反応管20への触媒の供給作業時間を短縮できるだけでなく、複数の反応管20の触媒充填高さを高い精度で均一に制御することもできる。
【0034】
光電センサ60は、図3に示すように、反応管導入ホッパー8を通って、反応管20の内部に上方から挿入もしくは設置されるのが好ましい。反応管導入ホッパー8から反応管20内に投入される触媒が、あらかじめ設定された触媒の充填高さHに到達した時、前記した制御機構により触媒の充填を停止させる。
【0035】
光電センサ60は、可視光線、赤外線などの光を光源とし、これを検出部(投光部)から信号光として発射し、検出物体から反射する光を受光部で検出する、いわゆる拡散反射型の光電センサであるのが好ましい。
このような光電センサ60を用いることにより、触媒に接触せずに検出が行なえるため、触媒も光電センサ60自体も傷めることがない。また、触媒への表面反射によって検出するため、触媒の充填高さを正確に検出できる。
【0036】
光電センサ60においては、この光電センサ60から投光した検出光が検出物(触媒)の表面で反射して光電センサ60の受光部に戻ってくる光量(受光量)は数値化される。この数値は受光量の増減により増減し、光電センサ60と検出物との距離を検出できる。すなわち、光電センサ60と検出物の距離が遠いときは、受光量が少ないため、小さな数値で示され、光電センサ60と検出物の距離が近づくにつれ、受光部に戻ってくる光量が増加するので、数値はしだいに大きくなる。受光量の数値に対する光電センサ60と検出物との実際の距離の関係を予め測定しておくことで、受光量の数値から光電センサ60と検出物との距離を検出することができる。
そして、光電センサ60の受光量の数値にしきい値を設定することで、触媒の充填において、触媒の充填高さを調整することができる。すなわち、触媒の充填開始前に光電センサ60の挿入位置(L1)を定め、目標とする触媒の充填高さHにおける触媒と光電センサ60との距離から光電センサ60の受光量の数値にしきい値を設定する。その後、触媒の充填を開始すると、光電センサ60の受光量の数値により触媒の充填高さHを検出し、触媒の充填高さHが設定値に到達したときに、触媒の充填を停止させることで、触媒の充填高さを調整することができる。しきい値は触媒の充填高さに応じて任意に設定することができる。
【0037】
光電センサ60において、前記した触媒の充填高さに応じて、所定のしきい値を超えると、光電センサ60から信号を出力させることができる。この信号によって、例えば、ライトの点滅や警告音を発することにより、作業者に触媒の充填完了を知らせて、手動にて触媒の充填を停止させてもよいし、光電センサ60から制御機構(手段)に信号を送り、傾斜シュート10の触媒排出口6を開口させ、好ましくは触媒を搬送する触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上方に上昇させ、且つ傾斜シュート10の触媒排出口6を開口させて、充填を停止させるようにする。
【0038】
光電センサ60と検出物の間の検出距離とは、光電センサ60の検出部を検出物へと近づけていき、検出した時、すなわち受光量が増加し始めた時の距離を示すものである。
検出物として、標準検出物を用いた場合の光電センサ60による検出距離は、90〜1000mmであるのが好ましく、より好ましくは100〜500mm、さらに好ましくは100〜300mmであるのがよい。標準検出物としては、例えば白画用紙を用いることができる。
【0039】
前述した拡散反射型の光電センサ60としては、例えばオムロン(株)製の光ファイバ形の光電センサ(E32シリーズ)や、(株)キーエンス製の光電センサ(PS/PZシリーズ)等を適宜選択して使用すればよい。なお、光電センサはアンプ内蔵型、アンプ分離型のどちらでもよい。
【0040】
(光電センサ60の保護管63)
図4に示すように、光電センサ60は、必要に応じて、保護管63に挿入して使用してもよい。このように使用することで、触媒の充填時に起こる粉塵から光電センサ60を保護し、光電センサ60の検出精度を守ると同時に、長期に渡りメンテナンスフリーで光電センサ60を使用することが可能になる。例えば、さらに保護管63の側面から分岐した管62から保護管63の下方、すなわち光電センサ60に向かって、乾燥空気、不活性ガス、またはこれらの混合ガスを送ることで、光電センサ60の検出精度をより高めることができる。
不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、アルゴン等が挙げられる。
保護管63の形状は、特に制限はされず、例えば、管62が設けられていない円筒状などであってもよい。
保護管63の材質は、特に制限されず、例えばステンレス管、プラスチック管、アルミニウム管、ゴム管等が挙げられる。また、保護管63の寸法も、特に制限されないが、その内径は、保護管63に光電センサ60を挿入した際に、乾燥空気、不活性ガス、またはこれらの混合ガスが流通する程度に光電センサとの間隙を有し、かつ、その外径は触媒の充填を阻害しないよう、反応管の内径に対して小さいものが好ましい。
【0041】
保護管63の設置方法は、特に限定されないが、例えば、保護管63に光電センサ60を内包した状態で、反応管20に挿入または設置するのが好ましい。
【0042】
なお、特に限定はされないが、検出光および受光部の精度を保つため、光電センサ60は反応管20に接触させないで反応管20の上方から挿入するのがよい。
【0043】
(触媒)
反応管20に充填される触媒としては、固定床多管式反応器を使用して行われる反応の触媒であれば特に制限はない。例えば、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒、不飽和カルボン酸製造用触媒、不飽和ニトリル製造用触媒、及び水素化処理触媒、塩素製造用触媒等が挙げられる。中でも、不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒や不飽和カルボン酸製造用触媒が好ましい。
不飽和アルデヒド及び不飽和カルボン酸製造用触媒としては、例えば、プロピレンを分子状酸素により気相接触酸化してアクロレイン及びアクリル酸を製造するための触媒や、イソブチレンやターシャリーブチルアルコールを分子状酸素により気相接触酸化してメタクロレイン及びメタクリル酸を製造するための触媒等が挙げられる。
不飽和カルボン酸製造用触媒としては、例えば、プロパンを分子状酸素により気相接触酸化してアクリル酸を製造するための触媒や、アクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してアクリル酸を製造するための触媒や、メタクロレインを分子状酸素により気相接触酸化してメタクリル酸を製造するための触媒等が挙げられる。
不飽和ニトリル製造用触媒としては、例えば、プロピレン又はプロパンを分子状酸素とアンモニアにより気相接触アンモ酸化してアクリロニトリルを製造するための触媒や、イソブチレンやターシャリーブチルアルコールを分子状酸素とアンモニアにより気相接触アンモ酸化してメタクリロニトリルを製造するための触媒等が挙げられる。
水素化処理触媒としては、例えば、石油留分中に含まれる硫黄化合物及び/又は窒素化合物を水素と反応させ、製品中の硫黄化合物及び/又は窒素化合物を除去又は低濃度化する触媒及び/又は重質油の軽質化のための水素化分解触媒等が挙げられる。
塩素製造用触媒としては、例えば、塩化水素および酸素から塩素を製造するための触媒等が挙げられる。
【0044】
触媒の形状については、特に制限はなく、例えば、粉状、粒状、円柱状、球状、リング状、成形後に粉砕分級した顆粒状等が挙げられる。
触媒の大きさは、反応管に収まる限り特に制限されないが、径が10mm以下であるのが好ましく、触媒径が10mmを超えると、活性が低下するおそれがある。また、触媒径が過度に小さくなると、反応管内の圧力損失が大きくなるため、通常は触媒径が0.1mm以上であるのがよい。また、触媒のかさ密度は、通常0.8〜1.5g/mlであり、好ましくは0.8〜1.3g/mlであるのがよい。
また、触媒は、上記の触媒反応に対して不活性な不活性充填材とともに用いてもよい。また、触媒を複数の触媒層に分けて反応管内に充填してもよく、その場合には触媒層同士の間に不活性充填材層を介在させてもよい。
【0045】
(反応管20)
反応管20は、工業的に使用される一般的な固定床多管式のものであり、通常、数千〜数万本の反応管を有するものである。
各反応管20の外径は、通常10〜60mm程度であり、反応管の肉厚は、通常1〜5mm程度であり、反応管の長さは、通常0.3〜10m程度である。
各反応管20は、通常、実質的に同一形状の金属管である。ここで「実質的に同一形状」とは、反応管の外径、肉厚および長さが設計誤差の範囲にあることを意味する。なお、設計誤差は通常±2.5%以内、好ましくは±0.5%以内が許容される。なお、反応管の内径は触媒径の4倍以上となるように、反応管の内径と触媒径とを決定するのが好ましいが、特に制限されるものではない。
【0046】
反応管は内面が平滑であることが必要であり、具体的には表面粗さが小さいことが必要である。これにより、各反応管での触媒充填密度を高くすることができる。このような反応管としては、例えば継ぎ目のないシームレス管が挙げられる。
【0047】
使用する反応管20はコイル状であってもよいが、通常は直線状の直管が使用される。該直管は、通常、垂直方向に配置され、原料化合物を垂直方向に通過させる縦型である。
【実施例】
【0048】
(参考例)
<触媒の製造>
触媒として、特開2004−188231号公報に記載の方法に基づいて、リン、モリブデン及びバナジウムを含むケギン型へテロポリ酸の酸性塩(直径5mm、高さ5mmの円柱状の押出成形品)を計20回製造した。これらを製造ロットごとに、触媒のかさ密度を測定したところ、かさ密度の平均値は1.15g/ml、最大値は1.20g/ml、最小値は1.09g/mlであった。
【0049】
なお、かさ密度は以下の方法にて測定した。すなわち、触媒を約190ml秤量し、このときの重量をW(g)とした。次いで、秤量した触媒を内径31mm、容積200mlのガラス製メスシリンダーに充填した後、該メスシリンダーを厚さ2.5mmのゴム製マット上で20mmの高さから40回タッピングして、触媒の充填体積を0.5mlの精度で読み取り、これをV(ml)とした。かさ密度(g/ml)は、W(g)をV(ml)で除することにより導出した。
【0050】
(実施例1)
触媒充填機として3個のホッパー1を有する3レーンにし、光電センサ60を備えた他は触媒充填機100と同様の構成からなる触媒充填機を使用して、参考例で得られた触媒について、反応管20への充填を行った。なお、参考例で得られた触媒のホッパー1への供給は、ホッパー1ごとに、20ロットの内の異なる1ロットの触媒が貯留されるように行った。
充填条件は以下の通りである。
反応管長さ :2.5m
反応管内径 :29.6mmΦ
光電センサ60:拡散反射型の「E32−D32L」(オムロン(株)製、反射形:特殊ビームタイプ、白画用紙を標準検出物とした時の標準モードにおける検出距離:150mm)
光電センサ60のアンプユニット:「E3X−DA21−S」(オムロン(株)製)
光電センサ60の測定モード:標準モード
しきい値 :1500
ディレイタイマ:200ms
光電センサ60の挿入長(L1):350mm
【0051】
なお、実施例で用いる光電センサ60は、高速モード、標準モード、高精度モードの3つのモードがあり、いずれかのモードで測定を行うことができる。この時、光入力の断続から、制御出力が動作または復帰するまでの遅れ時間を、応答時間と呼ぶ。該応答時間はそれぞれのモードで異なり、高速モードでは250μs、標準モードでは1ms、高精度モードでは4msとなる。また、実施例で用いる光電センサ60は、ディレイタイマを設定することにより、一定時間以上受光量がしきい値を超えないとセンサが作動しないようにすることができる。
【0052】
なお、光電センサ60はステンレス鋼(SUS304)の保護管63(外径8mm、内径6mm)に挿入され、光電センサと保護管の内壁との間隙には、保護管の上部から光電センサの先端の検出部に向かって乾燥空気を50ml/minの流量で吹き込んだ。
そして、触媒搬送通路4の下流端を水平位置より上方に上げた状態で、参考例で得られた触媒をホッパー1に供給し、1レーンあたりの触媒供給速度が23〜30g/sとなるように搬送速度を調整したベルトコンベア3を駆動させた後、調整板5の高さを調整し、触媒搬送通路4の下流端を水平位置より下げ、ベルトコンベア3に触媒を流下させ、傾斜シュート10及び反応管導入ホッパー8により反応管20の上方から触媒を落下させて触媒充填を開始し、しきい値を超えて光電センサ60から出力された信号で触媒排出口6を開口し、触媒供給が停止した時の反応管20の開口部から充填された触媒までの距離L2(図3参照)、光電センサと充填された触媒の距離(L2−L1)、および触媒充填開始から触媒供給停止までの時間(充填時間)を測定した。計6本の反応管への触媒充填を行った結果を表1に示す。なお、充填量は、触媒充填完了後に反応管から触媒を全量抜出すことにより計量された。
【0053】
【表1】

【符号の説明】
【0054】
100 触媒充填機
1 ホッパー
2 開閉シャッター
3 ベルトコンベア
4 触媒搬送通路
5 調整板
6 触媒排出口
7 触媒受け
8 反応管導入ホッパー
9 仕切り壁
10 傾斜シュート
20 反応管
40 昇降装置
60 光電センサ
61 蓋
62 保護管の側面から分岐した管
63 保護管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体状の触媒を貯留するホッパーと、
該ホッパーから流下する触媒を載せて搬送する触媒搬送通路(A)と、
該触媒搬送通路(A)から搬送される触媒を載せて搬送するベルトコンベアと、
該ベルトコンベアから搬送される触媒を載せて反応管の上方に搬送供給する触媒搬送通路(B)とを有し、
前記触媒搬送通路(B)は、傾斜面に開閉可能な触媒排出口を備える傾斜シュートであることを特徴とする触媒充填機。
【請求項2】
前記触媒搬送通路(A)は、触媒搬送上流側を支点として、下流端が水平位置よりも上方と下方との間で昇降可能である請求項1に記載の触媒充填機。
【請求項3】
前記ベルトコンベア上で搬送される触媒の層厚さを調整する調整板を備える請求項1または2に記載の触媒充填機。
【請求項4】
前記反応管内には、触媒の充填高さを検出する光電センサが設けられており、かつ前記反応管の上方から前記反応管に充填される触媒の充填高さが設定値に到達した時、前記光電センサから出力された検出信号により、前記触媒排出口を開口させる制御機構を有する請求項1〜3のいずれかに記載の触媒充填機。
【請求項5】
前記検出信号により、前記触媒搬送通路(A)の触媒搬送上流側を支点として、前記触媒搬送通路(A)の下流端を水平位置よりも上方に上昇させる制御機構を有する請求項4に記載の触媒充填機。
【請求項6】
前記光電センサが、白画用紙を標準検出物として、90〜1000mmの範囲の検出距離を有する拡散反射型である請求項4または5に記載の触媒充填機。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の触媒充填機を使用して、前記触媒排出口が閉じた状態で、前記ホッパーに貯留された固体状の触媒を前記反応管の上方から前記反応管に充填し、前記反応管内の触媒の充填高さが設定した高さに到達した時、前記触媒排出口を開口させて前記反応管への触媒の充填を停止することを特徴とする触媒の充填方法。
【請求項8】
請求項4〜6のいずれかに記載の触媒充填機を使用して、前記触媒排出口が閉じた状態で、前記ホッパーに貯留された固体状の触媒を前記反応管の上方から前記反応管に充填し、前記反応管内の触媒の充填高さが設定値に到達した時、前記触媒排出口を開口させる制御機構により前記触媒排出口を開口させて前記反応管への触媒の充填を停止することを特徴とする触媒の充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−101189(P2012−101189A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252640(P2010−252640)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】