説明

触媒反応装置処理方法

フィッシャー・トロプシュ触媒の活性化方法が記載されている。前記方法は、第一の還元工程、酸化工程、フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を導入する工程、及び第二の還元工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒反応装置の操作前における処理の方法に関する。本発明は、特に、しかし排他的でなく、反応物が水素及び一酸化炭素(合成ガス又はシンガス(syngas))を含む、例えばフィッシャー・トロプシュ合成及びメタノール合成、触媒反応装置に適応し得る。本発明はそのような反応装置のシャットイン(shut-in)方法に関し、また、そのような反応装置における触媒の現場(in situ)再生の方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー・トロプシュ合成法は、適切な触媒の存在下で合成ガスを反応させて炭化水素を生産する、周知の方法である。天然ガスは蒸気又は少量の酸素のいずれかと反応して合成ガスを生産し得るため、この方法は、天然ガスを液体又は固体の炭化水素に変換する二段階の方法を形成し得る。フィッシャー・トロプシュ合成を行うための異なる型の反応装置の範囲(range)は知られており、異なる触媒の範囲がフィッシャー・トロプシュ合成に適している。例えば、コバルト、鉄及びニッケルが既知の触媒であり、結果として生じる生成物は異なる特徴を有する。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ反応装置を初めに使用する前に、フィッシャー・トロプシュ触媒が活性化されなければならない。米国特許第4,729,981号明細書に記載されているように、間に酸化工程を挟む二つの還元工程を含む、三工程の方法を使用してフィッシャー・トロプシュ触媒は活性化され得る。例えばWO02/083817号パンフレットにおいて、触媒の活性化は、最高温度がフィッシャー・トロプシュ反応装置の基準操作温度を超えないようにされている現場で実施され得ることが提案されている。活性化方法を構成する三つの反応は全て発熱を伴い、もし活性化が現場での実施を可能にする温度管理内で達成され得るのであれば、活性化はフィッシャー・トロプシュ合成反応を冷却するよう設計された熱交換システムの存在を活かし得る。
【0004】
しかしながら、フィッシャー・トロプシュ反応装置が使用されるいくつかの環境においては、特に沖合いでは、酸化ガスの使用には安全問題が存在し、そのため現場での触媒の活性化が不可能になり得る。
【0005】
操作中、触媒装置の操作を中止することが時折必要となり得、このことはシャットイン方法と呼ばれる。これは予定された中止のこともあれば、予定外のこともある。例えば、これはモジュラー・プラント(modular plant)において必要となり得、そこでは処理されるガスの流速に基づいて、使用中の反応装置の数を変える。前記シャットイン方法は、触媒を損傷することなく、触媒反応が止まった反応装置へのガスの導入を含む。例として、水素が、窒素やアルゴンのような不活性なガスのように、シャットインガスとして用いられる。反応装置の操作がその後再開されるときに、問題が発生し得ることが見出されている。
【0006】
どの金属が触媒として用いられても、触媒の選択性及び活性は、合成反応装置の操作期間のうちに、一般的には低下する。そのため、定期的に触媒を再生できることが望まれている。これは、水素流に曝すことによって触媒を還元することにより行われ、その還元工程は通常、フィッシャー・トロプシュ合成よりも高温で起こる。例として、米国特許第5844005号明細書(Bauman et al/Exxon)には、失活した炭化水素合成触媒を再生させる方法が記載されており、その特許は、従来技術においては、存在するいかなる一酸化炭素も触媒存在下では水素と反応し、水素の浪費となるため、再生ガスは水素を含み、一酸化炭素を含むべきでない、と強調している。バウマン法(Bauman's process)では、再生ガスは合成反応からの廃ガスであり、10モル%未満のCOを含み、水素のCOに対する比は3より大きい。米国特許第7001928号明細書(Raje/Conoco Philips)には、水素ガス又は富水素ガスのような還元ガスを使用し、好ましくは5000ppm以下の濃度で少量の一酸化炭素を供給される、250〜400℃の温度での、懸濁液の形態のフィッシャー・トロプシュ触媒の再生方法が記載されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明によると、水素を含む反応ガス流を用いた操作前の触媒反応装置の処理方法が提供されており、その方法は触媒を少なくとも一種の還元剤を含む処理ガスに接触させることを含み、前記処理ガスが一酸化炭素を含み、処理ガス中の水素に対する一酸化炭素の比は反応ガス流のものよりも大きい。
【0008】
例えば、一酸化炭素に対する水素の比が2.6〜1.9(一酸化炭素の割合27.8%〜34.5%に相当)の範囲内である合成ガスを含む反応ガス流を用いた操作のためのフィッシャー・トロプシュ触媒反応装置の場合には、処理ガスは好ましくは少なくとも40%のCO、より好ましくは少なくとも60%、更により好ましくは少なくとも80%のCOを反応ガスの割合として含む。実際には処理ガスはもっぱら一酸化炭素からなり得る。あるいは、処理ガスはアルゴンや窒素のような不活性ガスを反応ガスとの組み合わせで、例えば10%のCO及び90%の窒素の混合物で、含み得る。
【0009】
処理は、予定通りに又は予定外に、触媒反応を抑制するために、反応装置のシャットインを構成し得る。反応装置はその後、反応ガス流の供給を再開することで、流れに戻される。本発明の方法では、触媒反応が再開されるときの温度の急上昇の危険を減少することが見出された。
【0010】
あるいは、処理は触媒反応装置の触媒の再生を含み得る。再生が必要なところで、関係している触媒によって決まる高温で、例えば250℃超で、例えば350℃超で、行われ得るが、高圧は必要としない。例えば、処理はフィッシャー・トロプシュ反応装置に適用され、0.5MPa未満、好ましくは約100kPa(1bar)で再生し、フィッシャー・トロプシュ反応装置はその後ラインに戻され得る。再生を行うとき、反応ガス流中よりも水素に対してより高い比の一酸化炭素を使用することが依然として有利であるが、反応ガスの割合として50%までの水素を含む処理ガスが、シャットイン操作の実施よりも再生により適している。
【0011】
処理ガスは例えば、必要であれば少なくとも一部の水素を除去する処理をされた、フィッシャー・トロプシュ合成反応からの廃ガスを含み得る。そのような廃ガスはまた、二酸化炭素、エタン及びメタンのような他の成分を含むことが理解されるが、これらの条件下においてこれらは不活性である。
【0012】
再生方法は触媒物質の還元を引き起こし、例えば、酸化コバルトをコバルト金属に変換する。還元工程はまた、触媒物質の最初の生産中、反応装置における最初の使用の前にも実施されることが理解される。この最初の還元工程はまた、再生として上述されている工程を行うことにより、本発明に従って実施され得る。実際には、この最初の還元工程がその工程の間で触媒が酸化される連続する還元工程を含むならば、各還元工程、又は少なくとも最後の還元工程は、再生として上述されている工程を行うことにより、本発明に従って実施され得る。
【0013】
本発明の方法はフィッシャー・トロプシュ合成用の反応装置に有利に適用され、フィッシャー・トロプシュ触媒は、金属基質上の層を形成するセラミックの支持材料中に活性触媒物質を含み、前記金属基質は流れのチャネル(channel)を多数の並列の流れのサブチャネル(sub-channel)に分けるように成形されている。
【0014】
本発明の方法はまた、フィッシャー・トロプシュ合成用の触媒反応装置を操作する方法に組み込まれ得る。本発明の方法による反応装置の処理に続いて、フィッシャー・トロプシュ反応装置が始動され、最初の操作期間中、反応装置は水素の割合の低い合成ガスの供給を受け、最初の操作期間の後に合成ガス中の水素の割合が定常状態の値へ増加され得る。
【0015】
更に、本発明によると、フィッシャー・トロプシュ触媒の活性化方法があり、その方法は、第一の還元工程、酸化工程、フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を導入する工程、及び第二の還元工程、を含む。
【0016】
前記方法は反応ガス流を用いるフィッシャー・トロプシュ反応装置の操作前に実施され得る。この場合、第二の還元工程は一酸化炭素を含む還元ガスを使用して実施され、還元ガス中の水素に対する一酸化炭素の比は反応ガス流中の比よりも大きい。
【0017】
より一般的には、第二の還元工程は、合成ガス、天然ガス、メタノール又はアンモニアを含む還元ガスを使用して実施され得る。あるいは、第二の還元工程は、フィッシャー・トロプシュ合成反応からの富水素(hydrogen-rich)廃ガスを含む還元ガスを使用して実施され得る。それを使用して第二の還元工程を行う前に、廃ガスは少なくとも一部の水素を除去する処理を受け得る。
【0018】
第一の還元工程及び酸化工程は、粉末形態の触媒上で実施され得る。
【0019】
フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を導入する工程は、フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を担う基質を挿入する前に基質上に触媒をコーティングする工程を含み得る。支持された触媒は挿入のために反応装置へ運ばれ得る。この方法においては、担体への触媒の適用は、フィッシャー・トロプシュ反応装置から離れた場所で実施され、担体上の還元及び酸化された触媒は挿入及びその後の還元による活性化のために反応装置へ運ばれる。基質は、ホイル、ワイヤーメッシュ、フェルトシート又はペッレトコアの形態の金属基質であり得る。
【0020】
あるいは、フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を導入する工程は、ウォッシュコート中に触媒粉末を懸濁させ、前記ウォッシュコートを反応装置に流して反応装置の内表面の一部を触媒で覆うことを含み得る。
【0021】
本発明はここで、例のみとして、更に且つより具体的に記載される。
【0022】
本発明は、小型触媒反応装置中のフィッシャー・トロプシュ触媒の処理に特に適しており、前記小型触媒反応装置は、ストランテッド(stranded)ガス又は随伴ガスの処理のためのプラントの一部として、沖合いの場所を含む遠隔地へ配置され得る。沖合いの装置におけるある酸化ガスの使用には安全問題が存在し、そのためもっぱら現場での活性化方法の達成は実用的ではない。そのような反応装置は、国内の関係においてさえ(even in a domestic context)、インフラ基盤の制限された、又は小規模の、離れた陸地に配置され得る。
【0023】
反応装置の場所へ運ぶ触媒を調製するために、触媒は還元され、そして酸化され、ワックスカプセル化のような不動態化の必要無しに輸送可能な安定した触媒を生じる。
【0024】
触媒が輸送され、反応装置へ導入されるとすぐに、現場で還元される。還元工程は、触媒を還元するのに十分な温度まで反応装置を加熱することを含む。前記温度は、水素、一酸化炭素、シンガス又は他の富水素ガスであり得る還元ガスによって決まる。触媒の還元の程度は、還元操作の持続時間よりはむしろ、主に還元温度に関連している。例えば、75%超又は85%までもの還元の程度を得ることが望まれると、還元ガスが5% v/vの水素ならば、温度は350℃〜380℃の範囲内又はそれより高くなり得る。選択した値に約4時間還元温度を維持すると、触媒の還元には十分であり、平衡程度の還元が達成される。
【0025】
一度還元された触媒の活性は、還元が実施された温度に関連する。温度が低すぎるならば、触媒はフィッシャー・トロプシュ合成に最初に使用されたときに過度に活性が高く、そのため360℃超の還元温度が好ましい。温度が高すぎるならば、触媒は低い活性を有する。このため、還元温度は450℃を超えるべきではなく、410℃より低く保つのが好ましい。
【0026】
還元ガスがシンガスである場合、触媒の還元は、既に還元されている触媒を使用して実施されるフィッシャー・トロプシュ合成の程度を最小限に抑えるために、大気圧付近で実施されるのが好ましい。触媒の活性が還元工程中に増大するため、還元温度はフィッシャー・トロプシュ反応速度を抑えるために下げられる。このため、還元温度は、望ましい還元の程度とその温度で起こるフィッシャー・トロプシュ合成の制御可能な速度との間のバランスである。
【0027】
一度還元された触媒の活性の均一は、少なくともある程度は、触媒の還元の間に触媒の長さに沿って均一な温度が維持されることによって決まる。現場において触媒を還元することによって、触媒の温度は、反応装置の使用中に冷却のために用いられる隣接したチャネルを用いて制御され得る。このことは、隣接する冷却チャネルが温度勾配を減じる助けをし、温度勾配はそうでなければ挿入された触媒の長さに沿って増大するので、温度が触媒に沿って均一になることを確実にする。
【0028】
本発明の方法が適用され得る模範的なプラントにおいて、前記プラントは一つより多い反応装置を含んでおり、それぞれの反応装置はプレートのスタック(stack)から成り、前記プレートのスタックはその中に交互に並べられた合成流路及び冷却液流路を特徴づける。それぞれの反応装置の中で、第一及び第二の流路は、スタックとして並べられたプレート内の溝によって、又はスタック内の一定の間隔を置いた通路(strip)及びプレートによって特徴づけられ、スタックは一緒に繋げられる。あるいは、前記流路は、城郭風であり、平たいシートと交互に積み重ねられた薄い金属シートによって特徴づけられ、流路の端はシール・ストリップによって特徴づけられる。反応装置を形成する前記プレートのスタックは、例えば拡散接合、蝋着、熱間等静圧圧縮形成によって、一緒に繋げられる。
【0029】
合成反応と冷却液流との間の、必要な良好な熱の接触を確実にするために、第一及び第二の流路は10mm〜2mmの高さ(切断面にいて)であり得、それぞれの経路は3mm〜25mmの幅であり得る。例として、前記プレートは(平面図において)、0.05m〜1mの範囲の幅、0.2m〜2の範囲の長さであり得、前記流路は好ましくは1mm〜20mmの高さである。例えば、プレートは幅0.5m、長さ0.8mであり、例えば高さ7mmで幅6mm、又は高さ3mmで幅10mm、又は高さ10mmで幅5mmのチャネルによって特徴づけられる。触媒構築物は合成反応のためにチャネルに挿入され、必要であれば交換のために除去され、反応装置に強度を提供しないので、操作中あらゆる圧力及び熱応力に耐えるために反応装置はそれ自体が十分に強くなければならない。いくつかの場合、チャネル内に、端から端に並べられた、2つ以上の触媒構築物があり得る。
【0030】
好ましくはそのような触媒構築物のそれぞれが、流路を多数の並行する副流路へ細分するよう成形される。好ましくはそれぞれの触媒構築物は、触媒に支持を提供する、金属基質上のセラミック支持材料のコーティングを含む。セラミック支持は好ましくは金属基質上のコーティングの形態であり、例えば、それぞれの金属表面上の厚さ100μmのコーティングである。前記金属基質は触媒構築物に強度を提供し、伝導によって熱輸送を促進する。好ましくは金属基質は、加熱されたときに酸化アルミニウムの付着性の表面コーティングを形成する合金鋼、例えばアルミニウムを組み込んだフェライト合金鋼(例えばフェクラロイ(Fecralloy (TM))、であるが、ステンレス鋼のような他の材料もまた適切であり得る。前記基質はホイル、ワイヤーメッシュ又はフェルトシートであり得、波形をつけられ、へこまされ又はひだをつけられている。好ましい基質は薄い金属ホイル、例えば厚さ200μm未満、であり、波形をつけられて縦のサブチャネルを特徴づける。触媒成分は、例えば、単独の成形されたホイルを含み、例えば厚さ50μmの波形をつけられたホイルであり、これはチャネルの最も狭い寸法が約3mm未満であれば特に適切であるが、より大きなチャネルにもまた適用できる。あるいは、特にチャネルの深さ又は幅が約2mmより大きいところで、触媒構築物は、実質的に平らなホイルによって分けられた多数のそのような成形されたホイルを含み得る。活性触媒材料はセラミックコーティング内に組み込まれる。
【0031】
あるいは、前記触媒は小球状にされ得る。小球には金属基質又はセラミック支持材料を有するコアのいずれかが与えられ、又は小球は金属基質を有さない圧縮粉末小球であり得る。
【0032】
本発明はまた、添付図面において説明されていないが、流動床反応装置である更に模範的なプラントに適用され得る。一般的に、流動床は、触媒の低い活性を補填する上述のミニチャネル反応装置よりも、高い触媒残留量を有する。シンガスを使用する還元は、還元中に反応装置内で触媒が動き得るので、この型の反応装置に特に適切である。このことにより触媒の全体に渡る実質的に均質な活性を生じ、その結果、触媒が部分的に活性化されてフィッシャー・トロプシュ合成が起き、触媒の一部はまだ還元されていないという状況を回避する。
【0033】
触媒の第一の還元及びその後の酸化は、触媒が基質に適用される前に行われる。この場合、還元及び酸化が起こるときに触媒はまだ粉末形態であり、これらの工程は触媒の製造工程の一部として起こり、その結果、時間の消費及び還元と酸化のための支持された触媒の加熱炉への労働集約的な積み込みを回避する。更に、担体への適用の前に触媒を還元及び酸化することにより、還元及び酸化の条件を選択するときに担体の性質を考慮に入れる必要がなくなる。還元及び酸化された触媒は安定であり、適切な触媒担体に適用され、支持された触媒は更なる処理をすることなく反応装置へ運ばれ得る。これは、安全に運ぶことができる前に、例えばワックス内でカプセルに包むことにより、不動態化されなければならない活性触媒を運ぶのとは相当な違いがある。
【0034】
多数の反応装置が並行して提供されているプラントでは、計画されたメンテナンスのようなプラントの完全な閉鎖の間に、新たな触媒が供給され得る。あるいは、プラント全体として継続的なサービスを提供するために、多数の反応装置のただ一つがいずれの一時期にも閉鎖され得る。後者の場合、前もって還元及び酸化された触媒の反応装置への導入は、酸化流と活性化工程流との間の交差汚染の危険を無くすことを確実にする。
【0035】
本発明は、合成反応のためのチャネル内の触媒構築物が反応装置のシャットインの間に保護されることを可能にする。本発明はまた、触媒構築物が現場で、すなわちチャネルから触媒構築物を除去することなしに再生されることも可能にする。この状況において、合成過程の間及び再生過程の間の両方で、触媒構築物の表面上に蝋の炭化水素液体の薄いコーティングがあるが、触媒構築物はガス相と接触することが理解できる。懸濁液反応装置中の状況と異なり、そのような反応装置のチャネル内の触媒構造物は液体に浸されていない。
【0036】
本発明は天然ガス(主にメタン)をより長鎖の炭化水素に変換する化学的方法に関する。この方法の第一段階は合成ガスを生産することであり、好ましくは水蒸気改質、すなわち次の反応
H2O + CH4 → CO + 3H2
を含む。この反応は吸熱を伴い、第一のガス流チャネルにおいてロジウム又は白金/ロジウム触媒によって触媒作用を受け得る。この反応を引き起こすのに必要な熱は、メタン、又は他の短鎖炭水化物(例えばエタン、プロパン、ブタン)、一酸化炭素、水素、又はそのようなガスの混合物、のような燃料ガスの燃焼によって提供され、その燃焼は発熱を伴い、隣接した第二のガス流チャネルにおいてパラジウム/白金触媒によって触媒作用を受け得る。あるいは、前記合成ガスは、よく知られている方法である部分的酸化方法又は自熱方法(an autothermal process)によって生産され、これらはわずかに異なる組成の合成ガスを生産する。
【0037】
前記合成ガス混合物はフィッシャー・トロプシュ合成を行うために使用され、より長鎖の炭化水素を生成する、すなわち、
n CO + 2n H2 → (CH2)n + n H20
という発熱反応であり、一般的に190℃〜280℃の高い温度及び一般的に1.8Mpa〜2.8Mpa(絶対値)の高い圧力で、鉄、コバルト又は融解マグネタイトのような触媒の存在下で起こる。フィッシャー・トロプシュ合成に好ましい触媒は、140〜230m2/gの特定表面領域の、γ−アルミナと、約10〜40%のコバルト(アルミナと比較した質量で)と、コバルトの質量の10%未満のルテニウム、白金又はガドリニウムのようなプロモーター及び酸化ランタンのような塩基度プロモーター(basicity promoter)とのコーティングを含む。他の適切なセラミック支持材料はチタニア、ジルコニア又はシリカである。好ましい反応条件は200℃〜240℃の温度、1.5MPa〜4.0MPaの範囲内の圧力、例えば2.1MPa〜2.7MPa、例えば2.6MPa、である。
【0038】
触媒の活性及び選択性は、担体上のコバルト金属の分散度合いによって決まり、コバルトの分散の最適なレベルは一般的に0.1〜0.2の範囲内であり、10%〜20%のコバルト金属原子が表面に存在する。分散度合いが大きくなると、明らかにコバルト金属結晶サイズは小さくなければならず、一般的には5〜15nmの範囲内である。そのようなサイズのコバルト粒子は高いレベルの触媒活性を提供するが、水蒸気の存在下において酸化され、このことはその触媒活性の劇的な減少を引き起す。この酸化の程度は、触媒粒子に隣接する水素及び水蒸気の割合及びその温度にもより、高い温度及び高い水蒸気の割合は共に酸化の程度を増大する。再生工程の間、この小さなコバルト粒子の酸化は逆になり、金属に転換されることが理解される。
【0039】
触媒の特性はシャットインの間、有意には変わらないことが重要である。シャットインは、触媒の酸化の危険が無いことを確実にする、水素のようなガスを使用して行われ得るが、触媒反応が再開されるときに温度が急上昇する可能性があることが見出されている。これは、水素が既に触媒の表面上に存在するならば、反応が再開するときに長鎖分子に優先してメタンが生産されるために起こると考えられる。このメタン産生は長鎖分子の産生よりも多くの熱を発生させる。
【0040】
シャットインに一酸化炭素が多い処理ガス、例えば純粋な一酸化炭素又は窒素及び一酸化炭素の混合物、を使用することで、これらの問題は回避されることが見出されている。例として、そのような混合物は、窒素と共に10%〜90%のCOを含み得る。操作が再開するとき、長鎖分子の産生が増加し、温度の急上昇の危険が抑制される。
【0041】
フィッシャー・トロプシュ合成を行うプラントは並行して操作される多数のフィッシャー・トロプシュ合成反応装置を含み、それぞれの反応装置にはカットオフバルブ(cut-off valves)があり、プラントから接続を断つことができる。このようにしてカットオフされた反応装置は、月並みに不活性ガスを流されて、更なる反応が抑えられる。本発明によると、上述のように、反応装置は代わりにCO、又はCOを含むガス混合物を流され、この状態でシャットインされる。反応装置がオンライン(online)に戻されると、定常状態の操作が達成される前の最初の据え付け(bedding-in)状態の間のメタン形成の減少があることが見出されている。このことはCOを用いるシャットインの明らかな利益である。
【0042】
一般的に、触媒の生産性は一定期間にわたって(一般的に数ヶ月にわたって)減少することが見出されている。触媒を交換することで反応装置は最初の状態に戻され得るが、触媒交換は現場で行うのが難しいため、このことは相当な中断時間を含む。このため操作期間の後に現場で触媒を再生するのは有利である。しかしながら、慣習的な再生では、反応装置が再生された後にはライン(line)に徐々に戻すことしかできないという問題が生じる。
【0043】
このモジュール(module)での触媒の再生が必要であるならば、これは反応装置の温度を例えば350℃に上げることで実施し得、大部分が又はもっぱら一酸化炭素からなる還元ガス混合物である処理ガスが触媒を含むチャネルに沿って流れるようにする。この場合、好ましい処理ガスは、例えば、70%のCO及び30%の水素、又は80%のCO及び20%の水素(随意的に他の反応しないガスを含む)を含む。処理ガスは好ましくは基質上に継続的に流れるように用意され、好ましくは少なくとも3000/時、より好ましくは約4000/時の空間速度(space velocity)を有する。これはホットスポット(hot-spots)の発生を防ぎ、またあらゆる水蒸気(水素が存在するならば、還元工程により形成される)を除去して、セラミックがアルミナを含むならば、アルミン酸塩、酸化物及び担体の熱水経時変化を抑制する利益を有する。前記空間速度は、本件明細書においては、セラミック担体を含む試験槽に供給されるガスの体積流量率として定義され(STPで測定)、試験槽の空隙容量で割られる。圧力は好ましくは100kPaである。
【0044】
前記処理ガスは、必要であれば水素を除去する処理を受けた、フィッシャー・トロプシュ合成反応からの廃ガスであり得る。水素除去は膜を使用して、又は圧力スイング吸着法によって成され得る。従って、上記のように、反応成分の割合として、40%未満の水素及び少なくとも60%のCOを含むガス組成物が得られ、そのようなガス組成物は再生過程において処理ガスとしての使用に適している。
【0045】
既知の触媒再生方法は水素を還元ガスとして使用してきた。これは触媒を再生するには効率的であるが、触媒がその後ラインに戻されるときに、より長鎖の分子に優先してメタンが生産され、より長鎖の分子の形成と共に安定状態の操作が達成される前に重大な時間遅延(一般的に数日の操作)となることが見出されている。この問題は、本発明により、一酸化炭素を還元ガスとして使用することで回避される。
【0046】
フィッシャー・トロプシュ触媒の再生の後、反応装置は要望どおりにラインへ戻され得る。据え付け工程の間、反応装置は好ましくは比較的低い割合の水素、例えば水素:COの比が1.5:1、を含む合成ガスを供給される。これはメタンの形成を抑制し、炭化水素中間体は触媒表面で徐々に形成される。例えば200時間の操作の据え付け期間の後、触媒はその定常状態に至っていることが想定され、より長鎖の炭化水素の選択性を維持しながら、合成ガス組成物は高価値(higher value)(水素:CO比が1.8〜3.0:1、例えば1.9:1)に戻され得る。これは、炭化水素中間体が触媒表面を覆うため、及び/又はこの段階の触媒は蝋状の(waxy)炭化水素の薄い膜で覆われているためであり、この間合成ガスの水素及び一酸化炭素は反応するために拡散されていなければならず、その結果反応が抑えられる。
【0047】
本発明の方法はフィッシャー・トロプシュ反応装置との関係で上述されているが、メタノール形成反応装置のような異なる反応装置の範囲に対して同様に適用し得ることが理解される。本発明の方法は中で触媒が波形のホイル上に支持される反応装置に関して記載されてきたが、触媒がチャネル壁に塗られている反応装置や、流動化された小球床反応装置に対しても同様に適用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィッシャー・トロプシュ触媒の活性化方法であって、
第一の還元工程、
酸化工程、
フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を導入する工程、及び、
第二の還元工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記方法が、反応ガス流によるフィッシャー・トロプシュ反応装置の操作に先立って実施され、前記第二の還元工程が一酸化炭素を含む還元ガスを用いて実施され、還元ガスにおける水素に対する一酸化炭素の比が反応ガス流におけるものよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二の還元工程が、合成ガス、天然ガス、メタノール又はアンモニアを含む還元ガスを使用して実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第二の還元工程が、フィッシャー・トロプシュ合成反応からの富水素廃ガスを含む還元ガスを使用して実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記廃ガスに少なくとも一部の水素を除去する処理をし、その後に前記第二の還元工程を行うために前記廃ガスを使用する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第一の還元工程及び前記酸化工程が、粉末形態の触媒上で実施される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を導入する工程が、基質上に触媒をコーティングし、その後フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を担持する基質を挿入する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を導入する工程が、更に、基質上の触媒をフィッシャー・トロプシュ反応装置へ運び、その後フィッシャー・トロプシュ反応装置へ基質を挿入する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記基質が、ホイル、ワイヤーメッシュ、フェルトシート又はペレットコアの形態の金属基質である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記フィッシャー・トロプシュ反応装置へ触媒を導入する工程が、ウォッシュコート中に触媒粉末を懸濁させ、前記ウォッシュコートを反応装置に通して流して反応装置の内表面の一部を触媒で覆うことを含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2013−517923(P2013−517923A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−549423(P2012−549423)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【国際出願番号】PCT/GB2011/050105
【国際公開番号】WO2011/089440
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(511140725)コンパクトジーティーエル パブリック リミテッド カンパニー (4)
【Fターム(参考)】