説明

触媒層アッセンブリ

燃料電池用として好適な強化触媒層アッセンブリは、(i)z方向に沿って物質の厚さを通じて延びる細孔を有する多孔性の平面強化材と、(ii)第1触媒物質および第1イオン伝導物質を備える第1触媒とを含み、前記第1触媒は、前記平面強化材内に少なくとも部分的に埋め込まれた、第1表面および第2表面を有する第1触媒層を形成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、平面(平板状)強化材(成分)と、第1触媒(材、成分)とを備えてなる強化触媒層アッセンブリ、その製造方法、およびその電気化学装置(特に、燃料電池)における使用に関する。
【技術分野】
【0002】
燃料電池は、電解質によって分離された2つの電極を備える電池である。水素またはアルコール、メタノールまたはエタノールのような燃料がアノードに提供され、酸素または空気のような酸化剤がカソードに提供される。電気化学的反応が電極で発生し、燃料と酸化剤の化学エネルギーは電気エネルギーと熱に転換される。電極触媒(electrocatalyst)は、アノードにおける燃料の電気化学的酸化と、カソードにおける酸素の電気化学的還元を促進させるために使用される。
【0003】
プロトン交換膜(PEM:Proton Exchange Membrane)燃料電池において、電解質は、固体の高分子膜である。前記膜は、電子的には絶縁体であるが、イオン的には伝導体である。PEM燃料電池において、膜はプロトンを伝導し、アノードで発生したプロトンは、膜を横切ってカソードに伝達され、水を形成するように酸素と結合する。
【0004】
PEM燃料電池の主な要素は、基本的に5つの層からなる膜電極アッセンブリ(MEA:Membrane Electrode Assembly)として知られている。中間層はポリマーイオン伝導性膜である。イオン伝導性膜の両側には、特定の電解反応のために設計された電極触媒を含む電極触媒層が備えられる。最終的に、各電極触媒に隣接してガス拡散層が備えられる。ガス拡散層は、反応物が電極触媒層に到逹するようにし、電気化学的反応により発生する電流を伝導しなければならない。したがって、ガス拡散層は、多孔性で電気伝導性を有していなければならない。
【0005】
通常、MEAは、以下に説明される様々な方法により形成可能である。
【0006】
(i)電極触媒層は、ガス拡散層に塗布され、拡散電極を形成することができる。2つのガス拡散電極がイオン伝導膜の両側に位置し、5つの層のMEAを形成するようにともにラミネートできる。
【0007】
(ii)電極触媒層は、イオン伝導膜の両面に塗布され、触媒コーティングされたイオン伝導膜を形成することができる。次に、ガス拡散層は、触媒コーティングされたイオン伝導膜の両面に塗布される。
【0008】
(iii)MEAは、電極触媒層、電極触媒層に隣接するガス拡散層、およびイオン伝導膜の他側に置かれたガス拡散電極とともに、一側にコーティングされたイオン伝導膜から形成できる。
【0009】
ほとんどの適用において十分な動力を提供するために、一般的に数十または数百のMEAが必要であり、複数のMEAが燃料電池スタックを形成するように接合される。プレートは、反応物をMEAに提供し、生成物を除去し、電気的連結を提供し、物理的支持を提供するといった様々な機能を果たす。
【0010】
PEM燃料電池で使用される従来のイオン伝導膜は、一般的にスルホン化された完全フッ化ポリマー物質(一般的に過フッ化スルホン酸(perfluorinated sulphonic acid、PFSA)アイオノマーとしてよく言及される)から形成できる。このようなアイオノマーから形成された膜は、Nafion(R:商品名)(例えば、E.I.DuPont de Nemours and Co.のNR211またはNR212)、AciplexTM(Asahi Kasei)およびFlemion(R:商品名)(Asahi Glass KK)という商標名で販売される。他のフッ化膜は、Fumapem(R:商品名)F(例えば、FuMA−Tech GmbHのF−930またはF−1030)、Solvay Solexis S.p.AのAquivionTMおよびGolden Energy Fuel Cell Co.,Ltd.のGEFC−10Nシリーズという商標名で販売されるものを含む。
【0011】
過フッ化、および部分フッ化、ポリマー系イオン伝導膜の代わりに、非フッ化スルホン化またはホスホネート(phosphonated)炭化水素ポリマー、および、特にポリアリーレン(polyarylene)ポリマーに基づくイオン伝導膜を使用することが可能である。商業的に使用可能な前記ポリマーは、Solvay Advanced PolymerのUdel(R:商品名)ポリアリーレンスルホン(PSU)とVeradel(R:商品名)ポリアリーレンエーテルスルホン(PES)、およびVictrex plc.のVictrex(R:商品名)ポリアリーレンエーテルエーテルケトン(PEEKTM)を含む。炭化水素ポリマー系膜は、FuMA−Tech GmbH.のFumapem(R:商品名)P、EおよびKタイプ、JSR CorporationのJHYおよびJEM膜、Toyobo Co.,Ltd.のSPNポリマー、およびToray Industries Inc.の向上した膜であり得る。
【0012】
高温(例えば、150℃〜190℃)で作動するように設計されるPEM燃料電池において、膜は、ポリベンズイミダゾール(polybenzimidazole)、またはリン酸で含浸されたポリマーマトリックスのようなポリマーであり得る。このような膜で製造されたMEAの例は、BASF Fuel Cell GmbHのCeltec(R:商品名)−Pシリーズを含む。他のMEAは、ピリジン型構造で結合される芳香性ポリエーテルポリマーに基づくAdvent TPS(R:商品名)シリーズを含み、これは、リン酸で含浸され、Advent Technologies S.A.のポリベンズアゾール(polybenzazole)ポリマーがアリールまたはアルキル置換ポリベンズイミダゾール(例えば、ポリベンズイミダゾール−N−ベンジルスルホネート)、ポリベンズオキサゾールおよびポリベンゾチアゾールのようなものが使用されてもよい。
【0013】
PFSAまたは炭化水素系イオン伝導膜は、一般的に膜内に全体的に形成された強化構造を含み、引裂抵抗の増加および水和と脱水による寸法変化の減少のような改善された機械的性質を提供することができる。好ましい強化構造は、これに限定されるものではないが、US6,254,978、EP0814897およびUS6,110,330に記載されたポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)、またはPEEKまたはポリエチレンのような代替物質といったフルオロポリマーの微細多孔性ウェブまたは繊維に基づくことができる。
【0014】
通常、電極触媒層は、EP0731520に記載されたような公知技術を利用して形成される。触媒層要素は、水性および/または有機溶媒、選択的ポリマーバインダーおよび選択的プロトン伝導ポリマーを含むイルクで製造される。インクは、導電ガス拡散層またはイオン伝導膜上に噴霧、プリンティングおよびドクターブレード法で蒸着可能である。
【0015】
アノードおよびカソードガス拡散層は、好適には、従来のガス拡散基板に基づく。一般的な基板は、炭素繊維と熱硬化性樹脂バインダーのネットワークを含む不織布紙またはウェブ(例えば、日本のToray Industries Inc.,から入手可能な炭素繊維紙のTGP−Hシリーズ、またはドイツのFreudenberg FCCT KGから入手可能なH2315シリーズ、またはドイツのSGL Technologies GmbHから入手可能なSigracet(R:商品名)シリーズ、Ballard Power Systems IncのAvCarb(R:商品名)シリーズ)、または織炭素布を備える。炭素紙、ウェブまたは布は、親水性(hydrophilic)をさらに有するか、疎水性(hydrophobic)をさらに有するように、MEAに結合される前に追加処理を経ることができる。処理の種類は、燃料電池の形態と使用される作動条件によって異なる。基板は、懸濁液(liquid suspension)の含浸による非結晶質カーボンブラックのような物質と結合されることで親水性をさらに有することができるか、基板の気孔構造をPTFEまたはポリフルオロエチレンプロピレンのようなポリマーの懸濁コロイド(colloidal suspension)で含浸し、ポリマーの融点以上で乾燥し加熱することで疎水性をさらに有することができる。PEMFCのような分野において、微細多孔性層がガス拡散基板で電極触媒層と接触する面に適用可能である。微細多孔性層は、一般的にカーボンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のようなポリマーとの混合物を含む。
【0016】
一般的な電極触媒は、(i)白金族金属(白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウム)、(ii)金または銀、(iii)卑金属、または1つ以上の前記金属またはその酸化物を含む合金または混合物から選択される。金属、合金または金属の混合物は、支持されないか、粒子性炭素(particulate carbon)のような適切な支持体に支持され得る。所与の電気化学装置で最も適切な電極触媒は当業者に公知である。
【0017】
これらの要素を使用し、このような方法でMEAを構成することは、ガスクロスオーバーを増加させ、過酸化物の変形をもたらし、それにより、膜の質を低下させる触媒層の亀裂およびMEAによる濡れと乾燥サイクル中の膨脹および収縮により触媒層の膜接触部で発生する膜同士の分離および他の機械的損傷を含む様々な問題を引き起こすことがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、従来のMEA構造に関連する上記の問題を解決する、改善された燃料電池用アッセンブリを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明の第1態様は、燃料電池用として好適な強化触媒層アッセンブリを提供し、前記強化触媒層アッセンブリは、(i)z方向に沿って物質の厚さを通じて(介して、貫通して)延びる細孔を有する多孔性の平面(平板状)強化材と、(ii)第1触媒物質および第1イオン伝導物質を備える第1触媒とを含み、前記第1触媒は、前記平面強化材内に少なくとも部分的に埋め込まれた、第1表面および第2表面を有する第1触媒層を形成することを特徴とする。
【0020】
前記平面強化材は、z方向に沿って物質の厚さを通じて延びる細孔を備える多孔性物質である。一実施形態において、前記細孔は、離散して互いに連結されておらず、他の実施形態では、前記細孔同士で一部が連結される。細孔は、規則的または非規則的な形状を有することができ、各々の細孔は、1mm〜10nmの断面直径を有することができる。前記細孔は、すべて類似の大きさを有するか、多様な大きさを有することができる。前記細孔は、ねじれが少ないか(すなわち、細孔が一面から他面に直に延びる)、あるいは、ねじれが大きくてもよい。前記平面強化材のxおよびy方向での寸法は、前記強化触媒層アッセンブリと結合する最終生成物の大きさに左右され、これは、当業者の能力内で最も適切なxおよびy寸法が決定可能である。z方向における前記平面強化材の寸法は、1μm〜500μm、好適には10μm〜200μmであり得る。正確な寸法は、前記強化触媒層アッセンブリが置かれる最終構造および用途によって左右される。z方向における寸法は、当業者の能力によって適切に決定される。「x方向」、「y方向」および「z方向」という用語は、当業者に公知であり、平面(xおよびy方向)内および平面を通過(z方向)することを意味する。
【0021】
前記平面強化材の空隙率は、30%より大きいことが好適であり、好ましくは50%より大きく、最も好ましくは70%より大きい。空隙率の割合は、公式n=V/V×100によって計算され、ここで、nは空隙率、Vは空き空間の容積、Vは前記平面強化材全体の容積である。前記空き空間の容積と前記平面強化材全体の容積は、当業者に公知の方法により決定可能である。
【0022】
多数の他の構造タイプが平面強化材として使用できるが、前記細孔は、閉鎖されたものよりは連結されたものでなければならない。
【0023】
(i)微細多孔性構造:前記細孔がランダムな大きさおよび形状を有し、z方向に沿って構造を通じて延びる。このような物質の例としては、逆相間隔離法(inverse phase segregation method)により製造された多孔性ポリマー(例えば、DSMの超高分子量ポリエチレン(UHMWPE))、発泡PTFEなど、ウェットまたはドライレイド法(laid method)により多方向配向繊維のアッセンブリから製造された不織布構造がある。フィルタの製造に用いられる他の方法のように、ポリマーの電気放射により適切に高い多孔性シートが製造できる。
【0024】
(ii)セル型構造(celluar structure):離散したセルを含み、各セルの壁が物質の厚さにわたって延び、セル同士の相互連結がない。このような物質の例としては、押出またはスライシングまたはストリップの部分的ラミネイションと連続する張力下の膨脹(例えば、DuPontのNomex(R:商品名)またはTyvec(R:商品名))、または他の方法により製造されるセル型構造、織メッシュ、連続シートにスリットを切断し引張応力を加えることにより製造されたエキスパンドメッシュ(expanded mesh))、シートの厚さにわたってパンチされるか切断(例えば、レーザによって)された穴を有する平板型シート、および物質を鋳造することにより製造された多孔性シートがある。
【0025】
前記平面強化材は、強化触媒層アッセンブリの必要な強度を提供可能な物質および形態で製造できる。前記強化要素の材料となり得る適切な物質は、金属、炭素、セラミックおよびポリマーを含むが、本発明は、これに限定されるものではない。多くの実施形態において、物質は、電気絶縁体であることが好ましいが、他の実施形態では、弱い電気伝導体でなければならず、場合によっては、物質の伝導性の有無とは関係がない。好ましくは、前記物質は、燃料電池環境において安定的で、前記強化触媒層アッセンブリと結合された最終生成物においていずれのポリマー要素とも強く結合可能である。
【0026】
ある実施形態において、前記平面強化材の壁または支柱も微細な規模で多孔性である。このような細孔は、前記MEAの構造物質により貫通しない程度に十分に微細であり、水が細孔を満たすように十分に親水性を有する。したがって、水が存在する適切な燃料電池において、このような細孔は、水を、厚さを通るか、前記強化構造の面を通るように移動させることができる。
【0027】
好ましくは、前記平面強化材は、予め形成された物質が使用できるが、その例としては、Sefar AG社製品(例えば、FLUORTEX)のようなフルオロポリマーとして知られるフッ素含有ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)またはパーフルオロアルコキシエチレン(PFA)で製造された織ウェブ、およびTetratexとして知られるDonaldson Company社製品のようなエキスパンドポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)の微細多孔性ウェブ構造がある。他のフルオロポリマー構造としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、パーフルオロアルコキシ(メチルビニルエーテル)(MFA)、FEP(フッ化エチレンプロピレン)を含むものと、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとの共重合体が使用可能である。
【0028】
前記平面強化材は、予め形成された物質が使用できるが、その例としては、Sefar AG社製品(例えば、PEEKTEX、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK))のようなポリアリールエーテルケトンポリマーの群から製造された織ウェブがある。ポリエーテルケトン(PEK)、ポリアリールエーテル、ポリアリールエーテルケトンまたはポリエーテルケトンエーテルケトンケトンを含む他のポリエーテルケトンポリマー構造が使用可能である。ポリマー構造に基づく使用可能な他の炭化水素は、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリベンズイミダゾールを含むもの、Toray Industries Inc.とTicona UK Ltd.から提供するポリ(p−phenylene sulphide)(PPS)のようなポリマー含有硫黄、ポリフェニレンオキサイド(PPO)のようなポリエーテルまたは硫黄微細多孔性ウェブフィルム(Solupor microporous web film)として知られるDSM N.V.とLydall Inc.の微細多孔性超高分子量ポリエチレンウェブフィルムのようなポリオレフィンである。
【0029】
あるいは、前記平面強化材は、所望の構造を生成するために、底粘度ポリマー拡散または溶液またはモノマー/オリゴマーを使用するインクジェットプリンティングまたはグラビアプリンティングのような方法を用いてインサイチューで形成できる。蒸着された物質は、(化学的またはイオン化放射、UVなどを用いて)架橋結合または重合可能である。前記平面強化材をインサイチューで製造する他の方法としては、オープンナノ繊維構造を生成する電気放射技術を利用するものがある。
【0030】
前記第1触媒は、第1触媒物質と、第1イオン伝導物質、好適にはプロトン伝導アイオノマーとを含む。イオン伝導性物質の例が当業者に公知であるが、適切な液体にイオン伝導性物質の拡散物として提供され、その例は、パーフルオロスルホン酸アイオノマー(例えば、Nafion(R:商品名)(E.I.DuPont de Nemours and Co.)、Aciplex(R:商品名)(Asahi Kasei)、AquivionTM(Solvay Solexis SpA)、Flemion(R:商品名)(Asahi Glass Co.)、Fumion(R:商品名)F−シリーズ(FuMA−Tech GmbH))、または炭化水素ポリマーで製造されたアイオノマー(例えば、ポリアリーレンスルホン酸に基づくFumion(R:商品名)P−シリーズ(FuMA−Tech GmbH)またはポリベンズイミダゾールに含浸されたリン酸(例えば、PBIをジメチルアセトアミドに溶かして前記触媒物質と混合し、PBI含浸物にリン酸を追加することによる)を含む。
【0031】
適切な第1触媒物質は、(i)白金族金属(白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウム)、(ii)金または銀、(iii)卑金属、(「一次金属」)または1つ以上の一次金属を含む合金またはその混合物から選択される。前記一次金属、合金または合金の混合物は、支持されないか、適切な支持体(例えば、粒子性炭素または導電性粒子性酸化物)に支持できる。当業者であれば、所与の電気化学的装置に対して最も適切な第1触媒物質は公知である。前記第1触媒内の前記第1触媒物質の前記一次金属の適切な荷重は、最終的な使用によって左右され、当業者に公知であるが、好適には、荷重は、4mg/cmより小さく、好ましくは2mg/cmより小さい。
【0032】
本発明の強化触媒層アッセンブリにおいて、第1触媒は、前記平面強化材内に少なくとも部分的に埋め込まれた、第1触媒層が形成される。「触媒層」に関連し、これは、x/y方向の寸法がz方向の寸法に比べてはるかに大きく、触媒層が平板型として認識できることを意味する。第1触媒層は、膜電極アッセンブリに結合される時にイオン伝導性物質と面するのに適した第1表面と、膜電極アッセンブリに結合された時にガス拡散層と面するのに適した第2表面とを備える。
【0033】
一実施形態において、第1触媒は、前記平面強化材内に完全に埋め込まれる。前記平面強化材および前記第1触媒層のz寸法は等しいか、前記平面強化材のz寸法は前記第1触媒層より大きくてもよく、この場合、前記平面強化材は、前記第1触媒層の第1および第2表面の一方または両方において前記第1触媒層を通って延びるようになる。仮に、前記平面強化材は、前記第1触媒層の第2表面を通って延びると、これは、第2表面を通って50μmを超えては延びないことが好適である。
【0034】
あるいは、前記平面強化材のz寸法は触媒層のz寸法より小さく、前記触媒層は、前記平面強化材の一方または両方の表面においてz方向に平面強化材を通って延びる。
【0035】
第1触媒層のxおよびy方向(「面積」)は、好適には、前記平面強化材のxおよびy方向(「面積」)と等しいか、これより大きいか小さい。本発明の一実施形態において、前記平面強化材と前記第1触媒層の面積は等しく、前記平面強化材と第1触媒層が同時にわたるようになる。本発明の第2実施形態において、第1触媒層の面積は平面強化材より小さく、強化要素周辺部の周囲領域(「第1エッジ領域」)に第1触媒層が存在しない。第1エッジ領域は、イオン非伝導性物質で少なくとも部分的に満たされ得る。
【0036】
他の実施形態において、前記平面強化材は、前記第1触媒層の中心に延びず、第1触媒層の外領域のみが強化され、内部領域は強化されない状態で残ることができる。
【0037】
本発明の前記強化触媒層は、前記第1触媒をインク形態で基板(例えば、転写基板)に塗布し、インクがまだ濡れた状態で前記平面強化材を塗布することにより製造され、前記第1触媒は含浸され、前記平面強化材内に内蔵できる。次に、第1触媒が乾燥し、前記平面強化材内で少なくとも部分的に埋め込まれた第1触媒層を形成し、基板は、本発明の強化触媒層アッセンブリが露出するように除去される。濡れたインクフィルムの厚さを変化させることにより、触媒層の上面は、平面強化材の上面の下または上にまたは同時にわたるように置かれる。あるいは、第1触媒はインク形態で平面強化材内に噴霧可能であり、これは、転写構造上に存在するか、インクが両面に噴霧されて液滴が平面強化材の細孔内で合わされる。追加されたインクの量は、乾燥した触媒層の表面が一側または両側に前記平面強化材が形成されるか、一側または両側とも前記強化要素内に置かれるように調整できる。
【0038】
第1触媒は、適切なレオロジー改質剤(rheology modifier)を用いるか、第1触媒内で高せん断ブレンディング(high shear blending)によるPTFEフィブリル化を行うことにより、生地の形態で製造できる。次に、前記生地は、第1触媒の最も大きい粒子が平面強化材内の最も小さい細孔より小さければ、平面強化材と結合できる。前記触媒生地の前記平面強化材への含浸は、共押出、カレンダリング(calendaring)またはプレッシングによって達成可能である。仮に、前記生地を、前記平面強化材内に力を加える工具の面が適切な圧縮率を有すると、第1触媒の表面は、一側または両側とも平面強化材の下に置かれることが可能である。
【0039】
追加の第1触媒が乾燥粉末の形態で製造され、ドライ噴霧蒸着、静電噴霧または他の静電方法によりコピー機で用いられるように塗布可能であり、平面強化材は、転写基板上に維持されるか、両側からすべて接近可能になる。
【0040】
第1触媒が強化要素内に全体的に埋め込まれているように第1触媒を平面強化材内に結合させるために、第1触媒は一側または両側からインク形態で強化要素内に蒸着できる。乾燥により、溶媒の損失は収縮をもたらし、第1触媒の両表面は強化要素内に引き込まれる。あるいは、加熱分解できるか、昇華できるか、溶解できる物質が追加され、強化要素の細孔を部分的に満たし、触媒要素が追加される前に、好ましくは基板上に残り、強化要素を完全に満たさないか、乾燥中に収縮する。一旦、触媒要素が乾燥すると、ブラインディング物質は、加熱分解、昇華または洗浄により除去可能である。
【0041】
本発明の第2態様は、上述した強化触媒層アッセンブリに加え、第1表面および第2表面を有するイオン伝導性層を形成する第1触媒層の第1表面に塗布されたイオン伝導性材(成分)をさらに含み、前記第1表面は、前記第1触媒層の前記第1表面と接触する。前記イオン伝導性材(成分)は、前記平面強化材内に少なくとも部分的に埋め込まれているか、平面強化材内に全体的に埋め込まれた、平面強化材は、z方向に沿ってイオン伝導性材(成分)を通って延びることができる。
【0042】
一実施形態において、前記第1触媒層と前記イオン伝導性材(成分)との間に重なる部分があり、傾斜組成物の相間層が形成できる。これは、触媒層とイオン伝導性材(成分)との間に組成物が変化し続ける、限定された厚さの領域があることを意味する。
【0043】
イオン伝導性材(成分)は層を形成し、この層は、平面強化材と類似の面積(xおよびy寸法)を形成し、2つは基本的に同時にわたるようになる。あるいは、平面強化材は、イオン伝導性層より広く、強化触媒層アッセンブリ周辺部の周囲領域(「第2エッジ領域」)が形成され、ここにはイオン伝導性材(成分)が存在しない。第2エッジ領域は、イオン非伝導性物質で少なくとも部分的に満たされ得る。
【0044】
イオン伝導性材(成分)は、アイオノマー(例えば、上述したパーフルオロスルホン酸アイオノマーまたは炭化水素アイオノマー)または電解質(例えば、リン酸または硫酸)で含浸されるか含浸可能なポリマーマトリックスである。選択されたイオン伝導性材(成分)は、強化触媒要素アッセンブリの最終使用により決定され、当業者によって最も適切な物質が選択可能である。
【0045】
イオン伝導性材(成分)は、適切な液体で分散したものであって、例えば、スクリーンプリンティング、回転スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、噴霧、ペインティング、イマージョン(immersion)またはディッピング(dipping)、バーコーティング、パッドコーティング、グラビア、ナイフまたはドクターブレードオーバーロール(基板に塗布後、ナイフと支持ローラとの間のスプリットを介して通過する)のようなギャップコーティング、エアナイフコーティング(基板に塗布され、超過量はエアナイフからの強いジェットによって吹き飛ぶ)、スロットダイ(スロット、圧縮)コーティング(重力によって、または圧力を受けて基板上のスロットを介して搾り出される)、メイヤーバー(Meyer bar)およびグラビアコーティングとともに、メタリングロッド塗布(metering rod application)のように、当該分野における公知技術により第1触媒層に塗布できる。好適には、イオン伝導性材(成分)は、液体を除去し、イオン伝導性材(成分)の固体フィルムを形成するために乾燥する。
【0046】
あるいは、イオン伝導性材(成分)は、予め形成されたポリマーフィルムであり得、プレスまたは高温カレンダーロール内で高温プレッシングすることにより、固体形態で第1触媒層に塗布可能である。
【0047】
本発明のさらに他の態様において、前記強化触媒層アッセンブリは、上述したものであって、イオン伝導性層を含み、第2触媒(材、成分)と、第2イオン伝導性物質とを備え、イオン伝導性層の第2表面に塗布される第2触媒をさらに含み、前記第2触媒は、第1表面および第2表面を備える第2触媒層を形成し、前記第1表面は、前記イオン伝導性層の第2表面と接触する。「触媒層」について、x/y方向での寸法がz方向での寸法よりはるかに大きく、触媒層は平板型であると考えられる。
【0048】
第2触媒は、第2触媒物質と、第2イオン伝導性物質、好適にはプロトン伝導性アイオノマーとを含む。適切なイオン伝導性物質の例が当業者に公知であるが、一般的に適切な液体にイオン伝導性物質の拡散物として提供され、その例は、パーフルオロスルホン酸アイオノマー(例えば、Nafion(R:商品名)(E.I.DuPont de Nemours and Co.)、Aciplex(R:商品名)(Asahi Kasei)、AquivionTM(Solvay Solexis SpA)、Flemion(R:商品名)(Asahi Glass Co.)、Fumion(R:商品名)F−シリーズ(FuMA−Tech GmbH))、または炭化水素ポリマーで製造されたアイオノマー(例えば、ポリアリーレンスルホン酸に基づくFumion(R:商品名)P−シリーズ(FuMA−Tech GmbH)またはポリベンズイミダゾールに含浸されたリン酸(例えば、PBIをジメチルアセトアミドに溶かして前記触媒物質と混合し、PBI含浸物にリン酸を追加することによる)を含む。
【0049】
適切な第2触媒物質は、(i)白金族金属(白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウムおよびオスミウム)、(ii)金または銀、(iii)卑金属、(「一次金属」)または1つ以上の一次金属を含む合金またはその混合物から選択される。前記一次金属、合金または合金の混合物は、支持されないか、適切な支持体(例えば、粒子性炭素)に支持され得る。当業者であれば、所与の電気化学的装置に対して最も適切な第2触媒物質は公知である。前記第2触媒内の前記第2触媒物質の前記一次金属の適切な荷重は、最終的な使用によって左右され、当業者に公知であるが、好適には、荷重は、4mg/cmより小さく、好ましくは2mg/cmより小さい。第2触媒は、第1触媒と同一でも異なってもよい。
【0050】
第2触媒は、前記平面強化材内に埋め込まれていないか、前記平面強化材内に少なくとも部分的に埋め込まれているか、前記平面強化材内に全体的に埋め込まれている。仮に、前記平面強化材に全体的に埋め込まれていると、前記平面強化材は、z方向に沿って第2触媒層の第2表面を通って延びることができるが、好適には50ミクロンを超えない。
【0051】
前記第2触媒層は、平面強化材と類似の面積(xおよびy寸法)を有し、両者は本質的に同時にわたるようになる。あるいは、平面強化材は、第2触媒層より大きい面積を有し、強化触媒層アッセンブリ周辺部の周囲領域(「第3エッジ領域」)が形成され、この領域には第2触媒層が存在しない。第3エッジ領域は、少なくとも部分的にイオン非伝導性ポリマーで満たされ得る。あるいは、第2触媒層の領域は、平面強化材の領域より大きくてもよい。
【0052】
他の実施形態において、平面強化材は、第2触媒層の中心に延びず、第2触媒層の外領域のみが強化され、内部領域は強化されなくてもよい。
【0053】
液体インク形態の第2触媒は、例えば、スクリーンプリンティング、回転スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、噴霧、ペインティング、イマージョンまたはディッピング、バーコーティング、パッドコーティング、グラビア、ナイフまたはドクターブレードオーバーロール(基板に塗布後、ナイフと支持ローラとの間のスプリットを介して通過する)のようなギャップコーティング、エアナイフコーティング(基板に適用され、超過量はエアナイフからの強いジェットによって吹き飛ぶ)、スロットダイ(スロット、圧縮)コーティング(重力によって、または圧力を受けて基板上のスロットを介して搾り出される)、メイヤーバー(Meyer bar)およびグラビアコーティングとともに、メタリングロッド塗布のように、当該分野における公知技術によりイオン伝導性層に直に塗布できる。あるいは、第2触媒は、先にインク形態で基板(例えば、転写基板)に塗布されてもよく、インクがまだ濡れている間にイオン伝導性側に塗布され乾燥して基板が除去されてもよい。
【0054】
第2触媒は、適切なレオロジー改質剤を用いるか、第1触媒内で高せん断ブレンディングによるPTFEフィブリル化を行うことにより、生地の形態で製造できる。このような生地は、共押出、カレンダリングまたはプレッシングによりイオン伝導性層に塗布可能である。
【0055】
追加の第2触媒が乾燥粉末の形態で製造され、ドライ噴霧蒸着、静電噴霧またはコピー機で用いられるような他の静電方法で塗布可能である。
【0056】
本発明のさらに他の態様において、強化触媒層アッセンブリは、上述したものに加え、前記第1触媒層の第2表面上に存在する第2微細多孔性層および/または前記第2触媒層の第2表面に存在する第2微細多孔性層をさらに含む。前記第1および/または第2微細多孔性層は、平面強化材内で少なくとも部分的に独立して埋め込まれているか、埋め込まれていなくてもよい。前記平面強化材は、前記第1および/または第2微細多孔性層の露出した表面を通って延びない。前記第1および/または第2微細多孔性層は、粒子性物質(例えば、カーボンブラック、疎水性ポリマーのようなポリマー)を独立に含む。適切なポリマーの例としては、PTFEがあるが、好適には、PTFEが炭素上で予備発火し(pre−fired)、PTFEと炭素との混合物が第1および/または第2触媒層アッセンブリに、乾燥粉末として、または適切な分散剤(例えば、メチルセルロースによって濃くなった水または1−メトキシ2−プロパノール(1−methoxy2−propanol)のような有機分散剤)内で分散させることにより塗布される。
【0057】
第1および第2微細多孔性層は、例えば、スクリーンプリンティング、回転スクリーンプリンティング、インクジェットプリンティング、噴霧、ペインティング、イマージョンまたはディッピング、バーコーティング、パッドコーティング、グラビア、ナイフまたはドクターブレードオーバーロール(基板に塗布後、ナイフと支持ローラとの間のスプリットを介して通過する)のようなギャップコーティング、エアナイフコーティング(基板に塗布され、超過量はエアナイフからの強いジェットによって吹き飛ぶ)、スロットダイ(スロット、圧縮)コーティング(重力によって、または圧力を受けて基板上のスロットを介して搾り出される)、メイヤーバー(Meyer bar)およびグラビアコーティングとともに、メタリングロッド塗布のように、当該分野における公知技術により第1および第2触媒層の各々に塗布可能である。
【0058】
あるいは、本発明の強化触媒層アッセンブリが最初に作られる基板は、その上に既に第1微細多孔性層を有するガス拡散層であり得る。第1微細多孔性層が平面強化材内に少なくとも部分的に埋め込まれたか否かによって、第1微細多孔性層がガス拡散基板に塗布され、(i)平面強化材がウェット第1微細多孔性層に塗布され、第1微細多孔性層が平面強化材内で少なくとも部分的に埋め込まれた、微細多孔性層が乾燥して第1触媒層が微細多孔性層に形成され、平板型強化層内に埋め込まれたて第1触媒層が乾燥するか、(ii)微細多孔性層が乾燥し、第1触媒層が微細多孔性層に形成されてまだ濡れた状態で、平面強化材が第1触媒層に形成され、第1触媒層が平板型強化層内に少なくとも部分的に埋め込まれた、第1触媒層が乾燥する。
【0059】
本発明のさらに他の態様によれば、各々が、平面強化材と、第1触媒層とを備える2つの強化触媒層アッセンブリを含む強化触媒層アッセンブリが提供され、少なくとも1つの強化触媒層は、イオン伝導性層をさらに含む。仮に、2つのアッセンブリの1つのみがイオン伝導性層を含む場合、イオン伝導性層を含むアッセンブリ内のイオン伝導性層が他のアッセンブリの第1触媒層と接触するようにアッセンブリが結合される。仮に、2つのアッセンブリがすべてイオン伝導性層を含む場合、2つのアッセンブリは、2つのイオン伝導性層が互いに接触するように結合される。
【0060】
前記触媒層アッセンブリは、イオン伝導性材(成分)の種類に適した方法で結合できる。例えば、イオン伝導性材(成分)がアイオノマーの場合には、結合がプレスでの熱間プレッシング、ホットカレンダーロールまたは溶媒または水性分散剤のような液体イオン伝導性ポリマーによるボンディング、またはプレッシングまたはカレンダリングによる固体イオン伝導性ポリマーの分離シートを用いた熱間ボンディングにより実施できる。液体イオン伝導性ポリマーまたはイオン伝導性ポリマーの分離シートのようなボンディング剤は、触媒層アッセンブリ内のイオン伝導性材(成分)とは異なる組成物であり得る。例えば、炭化水素アイオノマーがPFSAアイオノマーよりも低いガス侵透性を有するため、炭化水素イオン伝導性ボンディング剤がガスクロスオーバーの量を減らすために、PFSAイオン伝導性層の間で使用可能である。
【0061】
本発明にかかる強化触媒層アッセンブリは、添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤は、前記複数層の間の1つ以上の界面および/または1つ以上の前記層に存在することができる。
【0062】
前記添加剤は、水素過酸化物分解触媒、ラジカル消去剤、自由ラジカル分解触媒、自己再生抗酸化剤、水素ドナー(H−donor)一次抗酸化剤、自由ラジカル消去剤二次抗酸化剤、酸素吸収剤(酸素消去剤)からなる群より1つ以上が選択可能である。
【0063】
本発明の好ましい実施形態において、強化触媒層アッセンブリは、燃料電池、特にPEM燃料電池に用いられる。
【0064】
したがって、本発明のさらなる態様によれば、ガス拡散層と、本発明にかかる強化触媒層アッセンブリとを含むガス拡散電極が提供される。前記ガス拡散層は、本技術分野において一般的に使用され、上述したような従来のガス拡散層であり得る。
【0065】
本発明のさらなる態様によれば、本発明の強化触媒層アッセンブリと、イオン伝導性膜とを含む強化触媒層膜アッセンブリが提供される。イオン伝導性膜は、予め形成された膜であり、本技術分野において使用され、上述したような従来の膜であり得る。強化触媒層膜アッセンブリは、本発明の第2強化触媒層アッセンブリを備えることができ、前記イオン伝導性膜は、2つの強化触媒層アッセンブリの間に挟まれる。
【0066】
本発明のさらに他の態様によれば、強化触媒層アッセンブリ、ガス拡散電極、または本発明の強化触媒層膜アッセンブリを含む膜電極アッセンブリが提供される。
【0067】
膜電極アッセンブリは、密封および/または、例えば、WO2005/020356に記載されたような、膜電極アッセンブリのエッジ領域を密封および/または強化する要素をさらに含むことができる。前記MEAは、上述したように、当業者に公知の従来の方法により結合される。
【0068】
本発明のさらに他の態様によれば、上述したような強化触媒層アッセンブリ、ガス拡散電極、強化触媒層膜アッセンブリ、または膜電極アッセンブリを含む燃料電池が提供される。
【0069】
本発明の強化触媒層アッセンブリとは異なる要素は、最新製品を超えていくつかの改善点を提供する。xy平面およびz平面での変形が減少し、層の亀裂が減少し、それにより、クロスオーバーが減少する。また、強化触媒層アッセンブリと結合された最終生成物の膨脹および収縮が強化構造の効果によって最小化されるため、機械的損傷は減少する。また、多くの最新製品で現れる界面での剥離(delamination)は減少し、それ以上問題にならない。
【0070】
本発明は、PEM燃料電池を主に参照して説明されるが、本発明は、他のタイプの燃料電池または電気化学的装置に変更なくまたは若干の変更を加えるだけで同様に使用可能である。例えば、リン酸燃料電池(PAFC)において、2つの電極が38%を超える空隙率を有するポリエーテルスルホンと結合されたシリコン炭化物のような粒子性物質のマトリックスによって分離される(P.Stonehart and D.Wheeler、電気化学の現代的側面、No.38、編集B.E.Conwayら、Kluwer Academic/Plenum出版社、ニューヨーク、2005、第400頁以下参照)。本発明によれば、シリコン炭化物、ポリエーテルスルホン、PEEK、低伝導性炭素繊維および適正な安定性を示す他の物質のような、高温のリン酸に適切に抵抗し、リン酸による湿潤性物質が使用されると、前記マトリックスが多孔性強化物質に代替できる。
【0071】
アルカリ型燃料電池において、電解質は、一般的に強い水酸化ナトリウムまたはカリウムであり、電極は、PAFCで説明されたのと類似の方式でマトリックスによって分離される。前記多孔性強化要素が安定的でアルカリ型電解質による湿潤性を有すると、本発明は、アルカリ型燃料電池として使用されるMEAに好適である。
【0072】
PEM用として説明されたすべての実施形態は、PEM電解槽用MEAに同様に適用される。このようなPEM電解槽において、電圧が膜電極アッセンブリに印加され、装置に提供された水は、カソードとアノードでそれぞれ水素と酸素に分解される。MEAは、アノードでIrおよびRu系物質のように、PEM燃料電池とは異なる触媒要素を必要とすることもあるが、その他では、燃料電池として使用されるMEAと非常に類似している。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、従来のMEAと、本発明にかかる強化触媒層を備えるMEAに対する分極曲線(正方形=従来のMEA、三角形=本発明のMEA)を示す。
【図2】図2は、従来のMEAと、本発明にかかる強化触媒層を備えるMEAに対する電流遮断法により測定されたオーム抵抗曲線(正方形=従来のMEA、三角形=本発明のMEA)を示す。
【図3】図3は、実施例2の構造の概略的を図示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明は、図示する以下の実施例を参照してより詳細に説明されるが、本発明はこれらに限定されない。
【0075】
実施例1:強化触媒層膜電極アッセンブリが、30ミクロン厚のPFSA膜(Asahi GlassのSH−30)を、58%の開放領域(空隙率)を有する50ミクロン厚の織物PEEK(Sefar)強化構造で、2分間、150℃、1600psiで熱間プレッシングする第1段階によって製造される。厚さの差によって、アイオノマー要素は、非含浸織物物質の約20ミクロンを残し、強化層の一側に位置する。触媒層は、PTFE転写基板上に支持された乾燥触媒層をアイオノマー含浸された強化構造の両側に、150℃、800psiで、2分間、熱間プレッシングすることにより追加された。それにより、アッセンブリは、イオン伝導性材(成分)によって分離された強化触媒層を有するようになった。
【0076】
アッセンブリは、微細多孔性層でコーティングされたガス拡散層と結合させ、50cmの活性領域のテストセル内に密封されて燃料電池内でテストされた。100kpaゲージの圧力で、水素はアノード側に、酸素はカソード側に提供され、両気体とも完全に加湿された。図1に示すように分極曲線が決定され、図2に示すように電流遮断法を用いてアッセンブリのオーム抵抗が決定された。強化触媒層アッセンブリを含むMEAのセル電圧は、基本的にオーム(iR)損失で訂正された時、従来のMEAと同一である。オーム損失は、強化構造の約50%の開放領域に一致し、約2つの要素による強化MEAによってさらに高かった。
【0077】
実施例2:強化膜電極アッセンブリは、まず、バーコーターを用いてスカイブ(skive)PTFEに薄い電極触媒インクをコーティングし、次に、105℃でオーブン乾燥して製作された。電極触媒の二次層が既存の乾燥層上にキャストされ、ウェットにより、15〜20ミクロン厚の膨脹されたPTFEウェブが二次インク層内に形成される。インクがe−PTFEマトリックス内に侵透するのが可視的に観察された。中間アッセンブリは、105℃でさらにオーブン乾燥した。この段階において、e−PTFE強化物質は、一表面に触媒層として残った。次に、イオン伝導性層は、3つのアイオノマー層をe−PTFEの残る触媒層の表面上にキャスティングすることにより形成され、各層が塗布された後にオーブン乾燥する。膜電極アッセンブリを完成するために、電極触媒インクの追加の2回のコーティングが (各段階でオーブン乾燥で)アッセンブリに塗布され、第2触媒層が形成される。最終生成物において、e−PTFE強化物質が最終電極触媒層によって全体的に覆われた。それにより、アッセンブリが製造され、その電極(アノードおよびカソード)、アイオノマーおよびMEAの電極/アイオノマー界面が連続するe−PTFE構造(図3参照)によって強化された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池用として好適な、強化触媒層アッセンブリであって、
(i)z方向に沿って多孔性物質の厚さを通じて延びる細孔を有する前記多孔性物質からなる平面強化材と、
(ii)第1触媒物質と、および第1イオン伝導物質とを備えてなる第1触媒とを備えてなり、
前記第1触媒が、前記平面強化材内に少なくとも部分的に埋め込まれてなり、第1表面と、および第2表面を有する第1触媒層を形成してなることを特徴とするものである、強化触媒層アッセンブリ。
【請求項2】
第1表面および第2表面を備えるイオン伝導層を形成する前記第1触媒層の前記第1表面に塗布されるイオン伝導性材をさらに備えてなり、
前記イオン伝導層の前記第1表面が、前記第1触媒層の第1表面と接触してなる、請求項1に記載の強化触媒層アッセンブリ。
【請求項3】
前記イオン伝導性成分が、前記平面強化材内に少なくとも部分的に埋め込まれてなる、請求項2に記載の強化触媒層アッセンブリ。
【請求項4】
第2触媒をさらに備えてなり、
前記第2触媒が、第2触媒物質と、および第2イオン伝導物質とを備えてなり、前記イオン伝導層に塗布されてなるものであり、
前記第2触媒が、第1表面と、および第2表面を有する第2触媒層を形成してなるものであり、
前記第1表面が、前記イオン伝導層の前記第2表面と接触してなる、請求項2または3に記載の強化触媒層アッセンブリ。
【請求項5】
前記平面強化材が、発泡物質、織物または不織布、或いは、金属、炭素、セラミックまたはポリマー物質で製造された多数のセルを備えるセル型強化物質で形成されてなる、請求項1〜4の何れか一項に記載の強化触媒層アッセンブリ。
【請求項6】
前記平面強化材が、非電気的伝導性物質で製造されてなる、請求項5に記載の強化触媒層アッセンブリ。
【請求項7】
第2微細多孔性層が、前記第2触媒層の前記第2表面に存在する、請求項1〜6の何れか一項に記載の強化触媒層アッセンブリ。
【請求項8】
第2微細多孔性層が、前記第2触媒層の前記第2表面に存在する、請求項4〜7の何れか一項に記載の強化触媒層アッセンブリ。
【請求項9】
請求項1〜3、5〜7の何れか一項に記載の第1強化触媒層アッセンブリと、請求項2、3、5〜7の何れか一項に記載の第2強化触媒層アッセンブリとを備えてなり、
前記二つの強化触媒層アッセンブリが組み合わされて、一の又は両者のイオン伝導層がアッセンブリの中間にある、強化触媒層アッセンブリ。
【請求項10】
ガス拡散層と、請求項1〜9の何れか一項に記載の強化触媒層アッセンブリとを備えてなる、ガス拡散電極。
【請求項11】
請求項1〜3および5〜7の何れか一項に記載の強化触媒層アッセンブリと、イオン伝導膜とを備えてなる、強化触媒層膜アッセンブリ。
【請求項12】
請求項1〜3および5〜7の何れか一項に記載の第2強化触媒層アッセンブリをさらに備えてなり、
前記イオン伝導膜は、前記2つの強化触媒層アッセンブリの間に挟まれてなる、請求項11に記載の強化触媒層膜アッセンブリ。
【請求項13】
請求項1〜8の何れか一項に記載の強化触媒層アッセンブリを備えてなる、膜電極アッセンブリ。
【請求項14】
請求項10に記載のガス拡散電極を備えてなる、膜電極アッセンブリ。
【請求項15】
請求項11または12に記載の強化触媒層膜アッセンブリを備えてなる、膜電極アッセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−514618(P2013−514618A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543905(P2012−543905)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【国際出願番号】PCT/GB2010/052092
【国際公開番号】WO2011/073652
【国際公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【出願人】(512269535)ジョンソン、マッセイ、フュエル、セルズ、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY FUEL CELLS LIMITED
【Fターム(参考)】