説明

触媒床上で液相及び気相の三相反応を実行するための反応器

内部に水平に固定配置された触媒床(F)上における液相(1)と気相(2)を三相反応させるための反応器であって、触媒床(F)の上方で液相(1)及び気相(2)が並流して混合及び分散装置(MD)を経由して反応器(R)を頂点から下方に向かって通過する反応器(R)において、混合及び分散装置(MD)は、槽状通路(C)と、該槽状通路(C)内の出口管(O)と、を有する液相(1)用の槽状ディストリビューター(TD)と、気相(2)導入用の一以上の開口部(P1)と、この気相導入用開口部(P1)の下方に配置された液相(1)導入用の一以上の開口部(P2)と、を備えた垂直ノズル(N)を有し、槽状ディストリビューター(TD)の下方に空間を介して配置された分散基礎部(P)と、を備え、液相(1)導入用開口部(P2)の数及び大きさは、予め決められた液体の送り速度において、分散基礎部(P)上の液面が、気相(2)導入用の開口部(P1)の下方で且つ液相(1)導入用開口部(P2)の上方に設定されるように定められることを特徴とする反応器(R)、を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒床上で液相及び気相の三相反応を行うための反応器に関し、特に、液相及び気相用の混合/分配装置を備えた反応器、三相反応を実行する方法、及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
取り付けられた触媒床上における液相及び気相の三相反応は、化学的な処理技術としてよくあるものである。この三相反応のために、直立型反応器において液相及び気相が通過する一以上の水平配置された触媒床を使用する運転モードが、しばしば使用される。反応器内で発生する反応における変化性及び選択性は、反応速度だけでなく、反応器における流体の力学的性質に依存する。このために、一様な反応の進行が必要である。そして、一様に反応の進行させるためには、気体及び液体、すなわち被反応物を反応器の軸方向及び径方向の両方に最適に且つ極めて一様に分配させる必要がある。このように気体及び液体を一様に分散させることは、特に、大規模な工業用反応器を用いる場合に問題がある。
【0003】
また、三相反応器は、通常、断熱的に運転される。すなわち、外部との熱交換が欠如しているので、変化(反応)の進行にともなう反応熱により温度が減少又は増加するように変化する。このように熱源(hotspot)を発生させずに、該熱源に応じて生じる悪影響(特に、触媒の寿命への悪影響と変化性及び選択性への悪影響)を発生させること無く温度分散を一様化するために、出発材料が(上記気体及び液体と)同様に一様に分散されることが好ましい。
【0004】
上記理由により、化学処理技術においては、取り付けられた触媒床の表面上における液相及び気相の極めて一様な分散状態を確保するために、多くの装置が開発されている。
【0005】
特許文献1には、1分子あたりに2〜20個の炭素原子を有する炭化水素画分の選択的な水素化を、取り付けられた触媒床上で行う方法が開示されている。この方法では、スルザー(Sulzer)社製のSMV又はSMXタイプの静的ミキサーを介して、取り付けられた触媒床に炭化水素流及び水素が供給される。なお、この静的ミキサーは、詳細に記載されていない液体ディストリビューターの上流に配置されることが好ましい。特許文献1には、例えば、直径10cmの反応器でC4画分からブタジエンを1−ブテンに選択的に水素化し、このブタジエンから1−ブテンへの変化において約58%以下の選択性が達成されることが記載されている。しかしながら、スルザー(Sulzer)社製のSMV又はSMXタイプの静的ミキサー、及び詳細には示していない液体ディストリビューターを単に組み合わせた工業用反応器では、アセチレン及びジエン化合物の選択的な水素化について満足の行く選択性が得られない。
【0006】
特許文献2は、触媒床上に少なくとも1種の気相及び少なくとも1種の液相を含む多相混合物用のディストリビューターが開示されている。このディストリビューターは、出口管が配置された分散基礎部として構成されている。そして、この分散基礎部の下端には、篩の形態をとる他のディストリビューター要素が設けられている。
【0007】
特許文献3は、触媒床上に少なくとも1種の気相及び少なくとも1種の液相を含む混合物用のディストリビューターが開示されている。このディストリビューターは、分散基礎部Pを含む。この分散基礎部Pには、複数種の混合装置が設けられるとともに、気体用の上部入り口部を有した複数の出口管が貫設されている。また、分散基礎部Pには、液相用(場合により気相のごく一部用)の側面入り口部が設けられている。そして、このディストリビューターにおいて、篩いの形態をとる他のディストリビューター要素は多孔率が制御可能であり、下部開口の下方で且つ触媒床の上方に配置された上向き壁部を有する。この付加的なディストリビューター要素の配置により、その要素が配置されていない場合と比較して、気相及び液相の触媒床への流れがより一様に確保される。
【0008】
特許文献4には、触媒床上に流れる気相用及び液相用のさらなる2相ディストリビューターが開示されている。このディストリビューターは、分散基礎部と出口管を有している。また、出口管は2つのグループを有しており、異なる高さにそれぞれ複数の開口部を有している。これにより、処理量が低い場合であっても一様な分散が確保されることとなる。
【0009】
特許文献5には、他の反応器が開示されている。この反応器は、取り付けられた触媒床に気体の出発材料及び液体の出発材料を並流させるための入り口部を備えている。また、分散基礎部は、開口部とこの開口の上流に配置された静的ミキサーを有している。そして、分散基礎部と静的ミキサーを組み合わせることで、アスペクト比h/d、すなわち、反応器の径に対する高さの比を減少させ、5未満の値とすることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】US5817901B
【特許文献2】EP1147809A
【特許文献3】WO03/039733A
【特許文献4】WO95/35159A
【特許文献5】DE102004021128A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、0.5mを上回る径を有する大規模な工業用反応器において公知のディストリビューター装置を使用する場合、三相反応の変化性及び選択性、特に、選択的な水素化については、満足の行くものではなかった。
【0012】
従って、本発明の目的は、反応器の大規模化が可能で、且つ気相及び液相の極めて一様な分散を確保でき、それにより、大規模な工業用反応器であっても高い変化性及び選択性を確保することのできる三相反応器用の混合/分散装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的は、内部に水平に固定配置された触媒床上における液相と気相を三相反応させるための反応器であって、触媒床の上方で液相及び気相が並流して混合及び分散装置を経由し反応器を頂点から下方に向かって通過する反応器において、混合及び分散装置は、槽状通路と、該槽状通路内の出口管と、を有する液相用の槽状ディストリビューターと、気相導入用の一以上の開口部と、この気相導入用開口部の下方に配置された液相導入用の一以上の開口部と、を備えた垂直ノズルを有し、槽状ディストリビューターの下方に空間を介して配置された分散基礎部と、を備え、液相導入用の開口部の数及び大きさは、予め決められた液体の送り速度において、分散基礎部上の液面が、気相導入用の開口部の下方で且つ液相導入用の開口部の上方に設定されるように定められることを特徴とする反応器により達成される。
【0014】
従って、本発明は、液相及び気相用の混合/分散装置を提供する。この装置は、2個の主部分を有する。すなわち、当該装置は、公知の槽状ディストリビューターに類似し、液相用の出口管が取り付けられた槽状通路を備えた液相用ディストリビューターであり、特徴的な点として、出口管が、主ディストリビューターとして機能する分散基礎部の近辺まで延在しており、また、出口管が、分散基礎部上に滞留する液体の中に常に入るように下部に配置されていることである。この目的のために、気相導入用の一以上の開口部と、この開口部の下方に配置された液相導入用の一以上の開口部と、を備えた垂直ノズルが、分散基礎部に取り付けられる。液相導入用の開口部の数及び大きさは、予め決められた液体の送り速度において、分散基礎部における液面が、気相導入用の開口部の下方で且つ液相を入れるための開口部の上方に設定されるように決められる。
【0015】
プレディストリビューターの出口管が、常に、主ディストリビューターとして機能する分散基礎部上の液面下方まで延在している結果として、出口管によりプレディストリビューターとして機能する槽状ディストリビューターから流れ出す液体が、噴出されることも無く、一様に分散基礎部上で滞留している液相に導入される。
【0016】
分散基礎部のノズルにおける液相導入用の開口部の数及び大きさは、液体の送り速度が、前記予め決められた液体の送り速度よりも高い方に20%以下、低い方に50%以下の範囲でずれている場合であっても、分散基礎部上の液面が、気相導入用の開口部の下方で液相導入用の開口部の上方に設定される。
【0017】
本発明によれば、液相及び気相の一様な分散が確保される。特に、0.5から5mの範囲の径、1から4mの範囲の径、又は1.2から3mの範囲の径を有する大型の反応器でも、液相及び気相の一様な分散が確保される。
【0018】
分散基礎部においてノズルが、1m2あたりに規則的に50から200、70から150、より好ましくは90から130個配置されていることが好ましい。
【0019】
ここで、ノズルが、分散基礎部において三角配列(三角形状)、又は四角配列で配置されている。
【0020】
ノズルが、ディストリビューターの上方において5から75mmの自由径、及び100から600mmの長さを有し、ディストリビューターの下方において20から250mmの長さを有し、液相導入用の開口部が20から45mmの径を有し、この開口部がディストリビューターの上方の10から100mmの間の高さに配置され、気相導入用の開口部が1から30mmの径を有している。
【0021】
ノズルが、ディストリビューターの上方において10から60mmの自由径、及び200から400mmの長さを有し、ディストリビューターの下方において50から200mmの長さを有し、液相導入用の開口部が3から35mmの径を有し、この開口部がディストリビューターの上方の22から75mmの間の高さ位置に配置され、気相導入用の開口部が5から20mmの径を有している。
【0022】
ノズルは、より好ましくはディストリビューターの上方において35から50mmの自由径、及び250から350mmの長さを有し、ディストリビューターの下方において100から150mmの長さを有し、液相導入用の開口部が10から25mmの径を有し、この開口部がディストリビューターの上方の40から60mmの間の高さ位置に配置され、気相導入用の開口部が7から15mmの径を有する。気相を入れるための開口部が、それらの高さ及び傾きについて調節可能であることが好適である。
【0023】
反応器の運転中における反応器への入口及びノズルへの入口の間の気相の圧力低下が、気相の処理量が最も低い場合において、50から500パスカル、好ましくは、75から300パスカル、より好ましくは100から200パスカルとなるように選択されるように、気相を入れるための開口部の数及び大きさが調整されることが好ましい。
【0024】
本発明の反応器は、連続的に運転されることが好ましい。
【0025】
運転の中断の必要がある場合に反応器を空にすることができるように、分散基礎部に、該分散基礎部上で一様に分散されている無負荷穴部を設け、その無負荷穴部の数、及び大きさが、通常運転において、反応器を通過する全液相の最大で5%のみが無負荷穴部を流れ通過するように選択される。
【0026】
無負荷穴部は、10mmから20mmの径を有することが好ましい。
【0027】
プレディストリビューターとして機能する槽状ディストリビューターは、液体用の槽状通路内に出口管を有し、好ましくは槽状通路が主通路、及び2以上の付随通路を含み更に、この主通路及び2以上の付随通路が、該主通路及び付随通路の間に液相が妨げられずに流れるように構成されることが好ましい。
【0028】
特に、主通路及び付随通路は、それらの合計底面積が、反応器の全断面積に対して、30から70%、好ましくは40から60%となるようにそれぞれ構成される。
【0029】
槽状ディストリビューターの槽状通路の高さは、200から600mm、好ましくは250から500mm、より好ましくは300から400mmである。
【0030】
1m3あたりの開口部の数が、30から120、好ましくは40から100、より好ましくは50から80であり、開口部の径は、5から40mm、好ましくは10から35mm、より好ましくは15から25mmであり、この開口部は、槽状通路の底部に設けられ、そして、それぞれの開口部に、15から75mm、好ましくは25から60mm、より好ましくは35から50mmの径を有する出口管が取り付けられることが好ましい。また、出口管の長さは、その下端が分散基礎部(P)から20から200mm、好ましくは25から150mm上方となるように設定されることが好ましい。
【0031】
反応器の好ましい実施の形態により、より改良された一様な分散が達成される。この実施の形態では、液相が、入口管を介して反応器に導入され、開口部を備えたディスク状の衝突板が、液相の反応器に入る場所である入口管の端部で、該入口管から数cm離れた位置に配置される。
【0032】
また、本発明は、反応器の内部に水平に固定配置された触媒床の上方で液相と気相を三相反応させるための方法で、触媒床の上方で液相及び気相を並流させ、混合及び分散装置を介して反応器の頂点から下方に向かって通過させる方法において、液相を、入口管を介して反応器の外から槽状通路と、この槽状通路における出口管を有する槽状ディストリビューターと、に導入する工程、気相を、液相と別に又は共に、分散基礎部の上流に配置されるポートを介して、槽状ディストリビューターと分散基礎部との間の気相空間に導入し、分散基礎部は、槽状ディストリビューターの下方に空間を介して配置されるとともに垂直ノズルが取り付けられている工程、液相を、液体表面の下方でディストリビューターに存在する液相に、槽状ディストリビューターの出口管を介して導入する工程、気相を、気相空間から分散基礎部のノズルに、一以上の開口部を介して導入する工程、及び
液相を、液体表面の下方の一以上の開口部を介して分散基礎部のノズルに供給し、気相を、取り付けられた触媒床にノズルを介して供給する工程、を有することを特徴とする方法を提供する。
【0033】
更に、本発明は、炭化水素画分の選択的な水素化を実行するための上述の反応器の使用又は上述の方法を提供する。好ましくは、炭化水素画分が、C2、C3、又はC4炭化水素画分、又は熱分解ガスである。
【0034】
炭化水素画分は、C4炭化水素画分であり、このC4画分におけるブタジエンを選択的に水素化してn−ブテンとすることが特に好ましい。プレディストリビューター及び主ディストリビューターについて特別な構成を有する本発明の反応器を使用することにより、現実的な量で1,3−ブタジエンをn−ブテンに水素化することが可能となり、ブテンへの過剰の水素化を避けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】液相及び気相が図示しない各ポートを介して上方から導入される反応器の縦断面を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を図面及び実施例により説明する。
【0037】
1つの図である図1は、液相1及び気相2が図示しない各ポートを介して上方から導入される反応器Rの縦断面を概略的に示している。
【0038】
反応器Rにおいて、混合/分散装置MDは、出口管Oが底部に配置された槽状ディストリビューターTDとして構成されるプレディストリビューターを有している。また、この槽状ディストリビューターTDの下流に設置されており主ディストリビューターとして機能する分散基礎部Pは、触媒床Fの上方に配置される。分散基礎部Pの上方及び下方から反応器R内部に突出するノズルNは、分散基礎部Pに取り付けられる。分散基礎部Pの上方におけるノズルNの領域では、気相2導入用の開口部P1が分散基礎部P上の液面の上方に設けられ、そして、液相1導入用の開口部P2が分散基礎部P上の液面の下方に設けられている。
【実施例】
【0039】
図1に概略的に示されている混合/分散装置MDを、1.7mの径を有する反応器Rに構成した。槽状ディストリビューターは、400mmの高さを有する主通路及び6個の付随通路を含んでおり、主通路と付随通路の底面積の合計を反応器の全断面積の60%とした。槽状通路の底部に1m2あたりに62個の開口部(径は27mm)を配置し、48mmの径を有する出口管を各開口部に取り付けた。また、分散基礎部の上方で出口管の下端長さが150mmとなるように、出口管の長さを選択した。
【0040】
分散基礎部に、1m2あたり100本のノズルを三角配列で設けた。このノズルは、41.9mの自由径を有し、分散基礎部の上方における長さが320mmで分散基礎部の下方における長さが150mmであった。各ノズルにおいて、分散基礎部の上方に、50mmの高さ及び24mmの径を有する液相を入れるための開口部を設け、ノズル上端の近傍に、15mmの径を有する気相を入れるための開口部を設けた。
【0041】
ディストリビューターの動作を評価するために、混合/分散装置に水を供給した。水の処理量は、100m3/hから540m3/hの範囲で変化した。
【0042】
上述の全流量範囲に亘って、混合/分散装置の液体の噴射はほとんどなかった。液体は、ノズルの上部領域における気体導入用の開口部を通過して流れることはなかった。
【0043】
更に、分散基礎部の各ノズルを通過して流れる水の量を測定した。流量範囲における基準誤差が5%未満でも液体の分散性は非常に高くなるが、300から540m3/hの流量範囲で流れる水の量は、両ノズルでほとんど差がなく、流量300m3/h以下でいくらか変化が大きくなった。
【0044】
上述の反応混合装置を備えた反応器を、C4画分における1,3−ブタジエンからn−ブテンへの選択的な水素化に使用した。
【0045】
先行技術に記載されている反応器における方法を実行する場合と比較して、1,3−ブタジエンの変化量が1%増加し、1,3−ブタジエンからn−ブテンへの水素化の選択性が3%増加した。
【符号の説明】
【0046】
1 液体
2 気体
F 触媒床
P1 気相導入用開口部
P2 液相導入用開口部
R 反応器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒床(F)上方において液相(1)と気相(2)を三相反応させるための反応器であって、触媒床(F)は、反応器(R)内に水平に配置され、液相(1)及び気相(2)が並流状態で、触媒床(F)の上方に設けられた混合及び分散装置(MD)を経由し反応器(R)を頂点から下方に向かって案内される反応器(R)において、
混合及び分散装置(MD)は、
槽状通路(C)と、該槽状通路(C)内の出口管(O)と、を有する液相(1)用の槽状ディストリビューター(TD)と、
気相(2)導入用の一以上の開口部(P1)と、この気相導入用開口部(P1)の下方に配置された液相(1)導入用の一以上の開口部(P2)と、を備えた垂直ノズル(N)を有し、槽状ディストリビューター(TD)の下方に空間を介して配置された分散基礎部(P)と、
を備え、
液相(1)導入用開口部(P2)の数及び大きさは、
予め決められた液体の送り速度において、分散基礎部(P)上の液面が、気相(2)導入用の開口部(P1)の下方で且つ液相(1)導入用開口部(P2)の上方に設定されるように定められることを特徴とする反応器(R)。
【請求項2】
分散基礎部(P)のノズル(N)における液相(1)導入用開口部(P2)の数及び大きさは、
液体の送り速度が、前記予め決められた液体の送り速度よりも高い方に20%以下、低い方に50%以下の範囲でずれている場合であっても、分散基礎部(P)上の液面が、気相(2)導入用の開口部(P1)の下方で液相(1)導入用開口部(P2)の上方に設定されることを特徴とする請求項1に記載の反応器(R)。
【請求項3】
0.5から5mの範囲、好ましくは1から4mの範囲、より好ましくは1.2から3mの範囲の径を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の反応器(R)。
【請求項4】
ノズル(N)が、分散基礎部(P)に規則的に配置され、
配置されるノズル(N)の個数は、1m2あたりに50から200、70から150、より好ましくは90から130個であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項5】
ノズル(N)が、
分散基礎部(P)において三角配列、又は四角配列で配置されていることを特徴とする請求項4に記載の反応器(R)。
【請求項6】
ノズル(N)が、5から75mmの自由径、及び分散基礎部(P)の上方において100から600mm且つ分散基礎部(P)の下方において20から250mmとなる長さを有し、
液相(1)導入用開口部(P2)が20から45mmの径を有し、この開口部(P2)が分散基礎部(P)の上方の10から100mmの間の高さに配置され、
気相(2)導入用の開口部(P1)が1から30mmの径を有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項7】
ノズル(N)が、10から60mmの自由径、及び分散基礎部(P)の上方において200から400mm且つ分散基礎部(P)の下方において50から200mmとなる長さを有し、
液相(1)導入用開口部(P2)が3から35mmの径を有し、この開口部(P2)が分散基礎部(P)の上方の22から75mmの間の高さ位置に配置され、
気相(2)導入用の開口部(P1)が5から20mmの径を有することを特徴とする請求項6に記載の反応器(R)。
【請求項8】
ノズル(N)が、分散基礎部(P)の上方において35から50mmの自由径、及び250から350mmの長さを有し、分散基礎部(P)の下方において100から150mmの長さを有し、
液相(1)導入用開口部(P2)が10から25mmの径を有し、この開口部(P2)が分散基礎部(P)の上方の40から60mmの間の高さ位置に配置され、
気相(2)導入用の開口部(P1)が7から15mmの径を有することを特徴とする請求項7に記載の反応器(R)。
【請求項9】
気相(2)導入用の開口部(P1)が、
それらの高さ及び傾きについて調節可能であることを特徴とする請求項1〜8の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項10】
気相(2)導入用の開口部(P1)の数及び大きさは、
反応器の運転中における反応器(R)への入口及びノズル(N)への入口の間の気相(2)の圧力低下が、気相の処理量が最も低い場合において、50から500パスカル、好ましくは、75から300パスカル、より好ましくは100から200パスカルとなるように選択されることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項11】
分散基礎部(P)には、分散基礎部(P)上に一様に分布する無負荷穴部が設けられ、
反応器の通常運転において、反応器(R)を通過する全液相(1)の最大で5%のみが前記無負荷穴部を流れ通過するように、無負荷穴部の数、及び大きさが選択されることを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項12】
前記無負荷穴部が、
10mmから20mmの径を有することを特徴とする請求項11に記載の反応器(R)。
【請求項13】
トラフディストリビューター(TD)が、
ノズル(N)の上端の上方に10から300mm、好ましくは20から200mmに亘って配置されることを特徴とする請求項1〜12の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項14】
槽状ディストリビューターの槽状通路(C)が、主通路(MC)、及び2以上の付随通路(SC)を含み、
主通路(MC)及び2以上の付随通路(SC)は、該主通路(MC)及び付随通路(SC)の間で液相(1)の流れが妨げられないように構成されていることを特徴とする請求項1〜13の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項15】
主通路(MC)及び付随通路(SC)の合計底面積が、
反応器(R)の全断面積に対して、30から70%、好ましくは40から60%であることを特徴とする請求項1〜14の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項16】
槽状通路(C)の高さは、
200から600mm、好ましくは250から500mm、より好ましくは300から400mmであることを特徴とする請求項1〜15の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項17】
1m3あたりに30から120個、好ましくは40から100個、より好ましくは50から80個形成され、その径が、5から40mm、好ましくは10から35mm、より好ましくは15から25mmである開口部が、槽状通路(C)の底部に設けられ、
15から75mm、好ましくは25から60mm、より好ましくは35から50mmの径を有する出口管(O)が、それぞれの開口部に取り付けられており、
前記出口管(O)の長さは、その下端が分散基礎部(P)から20から200mm、好ましくは25から150mm上方となるように設定されることを特徴とする請求項1〜16の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項18】
液相(1)が、入口管(I)を介して反応器(R)に導入され、
液相(1)の反応器(R)内への導入場所である入口管(I)の端部において、開口部を備えたディスク状の衝突板が入口管(I)から数cm離れた位置に配置されることを特徴とする請求項1〜17の何れか1項に記載の反応器(R)。
【請求項19】
反応器(R)の内部に水平に固定配置された触媒床(F)の上方で液相(1)と気相(2)を三相反応させるための方法で、触媒床(F)の上方で液相(1)及び気相(2)を並流させ、混合及び分散装置(MD)を介して反応器(R)の頂点から下方に向かって通過させる方法において、
液相(1)を、入口管(I)を介して反応器(R)の外から槽状通路(C)と、この槽状通路(C)における出口管(O)を有する槽状ディストリビューター(TD)と、に導入する工程、
気相(2)を、液相(1)と別に又は共に、分散基礎部(P)の上流に配置されるポートを介して、槽状ディストリビューター(TD)と分散基礎部(P)との間の気相空間(G)に導入し、分散基礎部(P)は、槽状ディストリビューター(TD)の下方に空間を介して配置されるとともに垂直ノズル(N)が取り付けられている工程、
液相(1)を、液体表面の下方で分散基礎部(P)に存在する液相に、槽状ディストリビューター(TD)の出口管(O)を介して導入する工程、
気相(2)を、気相空間(G)から分散基礎部(P)のノズル(N)に、一以上の開口部(P1)を介して導入する工程、及び
液相(1)を、液体表面の下方の一以上の開口部(P2)を介して分散基礎部(P)のノズル(N)に供給し、気相(2)を、取り付けられた触媒床(F)にノズル(N)を介して供給する工程、
を有することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項1〜18の何れか1項に記載の反応器、又は請求項19に記載の方法を、炭化水素画分の選択的水素化を実行するための使用。
【請求項21】
前記炭化水素画分が、
C2、C3、又はC4炭化水素画分、又は熱分解ガスであることを特徴とする請求項20に記載の使用。
【請求項22】
前記炭化水素画分が、C4画分であり、
該C4画分におけるブタジエンを選択的に水素化しn−ブテンとすることを特徴とする請求項21に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−530804(P2010−530804A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512698(P2010−512698)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【国際出願番号】PCT/EP2008/057832
【国際公開番号】WO2008/155399
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】