説明

触媒成分

【課題】本発明は、一般に触媒気相反応を促進するのに有用であり、特に炭化水素又はタール化合物を含有する供給ガスを改質するのに有用な多孔質セラミック体を備えた触媒成分に関する。
【解決手段】本発明の触媒成分は、塩基性酸化物材料、並びに遷移金属化合物及び貴金属化合物から選択される触媒材料を含むコーティングを有する、多数の開孔を含んだ多孔質セラミック体を備えている。
本発明はさらに、タール及び/又は炭化水素化合物をガス流体から除去及び/又は改質する方法に関し、この方法においてガス流体を本発明の触媒成分に接触させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、一般に触媒気相反応を促進するのに有用であり、特に炭化水素又はタール化合物を含有する供給ガスを改質するのに有用な多孔質セラミック体を備えた触媒成分に関する。
【0002】
前述のタイプの触媒成分は、多くの場合、過酷な操作条件、特に700℃以上のような高温、高い流体流速、及び非常に多くの場合、処理されるべきガス流体内の粒子状混入物の相当な負荷のもとで触媒成分を操作する、触媒気相反応において用いられる。
【0003】
NO還元に具体的な焦点を当てた触媒気相反応を促進するための触媒活性多孔質成分が、国際公開第2006/037387A1号パンフレットに開示されている。そのような触媒活性多孔質成分の多孔質体は、繊維及び/又は顆粒状粒子から選択される焼結したセラミック又は金属の一次粒子の多孔質構造成分、前記焼結一次粒子の表面上に堆積された二酸化チタンのナノ粒子の二次構造、並びに二酸化チタンのナノ粒子の表面上に堆積された触媒成分を含む。これらの成分はNO還元及び幾種もの他の触媒気相反応において優れた結果をもたらすが、これらは合成ガス又は未精製天然ガスのような供給ガス中の炭化水素又はタール化合物の改質反応を補助しない。
【0004】
オープンセル構造を有する、触媒成分のための別のタイプの多孔質セラミック体が、米国特許第3090094号明細書で提案されている。この特許で記載されているセラミック体のいくつかは、自動車エンジン排気ガス中の未燃焼炭化水素を酸化するための触媒として試験された。
【0005】
これらのセラミック体は、他のタイプの触媒気相反応、特に供給ガス中のタール化合物又は炭化水素の改質には首尾よく用いられない可能性がある。
【0006】
したがって、本発明の目的は、とりわけ過酷な操作条件下の広範な種類の触媒気相反応において使用することができる多孔質体を備えた触媒成分を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、塩基性酸化物材料並びに遷移金属化合物及び貴金属化合物から選択される触媒材料を含むコーティングを有した、多数の開孔を備える多孔質セラミック体を備えた触媒成分を提供する。
【0008】
驚くべきことに、多孔質体の開孔内に堆積された触媒材料と組み合わせて塩基性酸化物材料を使用すると、様々な用途、とりわけ、高温(すなわち700℃以上)、高流速、硫化水素の相当な濃度、及び最後になったが些細とは言えない、供給ガス中での粒子状物質の相当な混入といった、過酷な操作条件を用いる用途において使用しうる触媒成分の触媒活性が生じることが見出された。
【0009】
本発明の触媒成分は、供給ガスからのタール及び炭化水素化合物を大幅に減少させるための改質及び水素化分解反応に特に有用である。
【0010】
改質反応は、ドライ改質法、水蒸気改質法、又は自己熱改質法として行うことができる。供給ガスは、改質反応によってその質が改善されると見込まれる合成ガスであってもよい。特に、CO及びHのガス含有量が増加する。
【0011】
そのようなタイプの触媒成分は、バイオマスガス化及びバイオマス熱分解の反応器から生じるガス流体の処理に特に有用である。
【0012】
本発明の触媒成分の高温安定性により、それらをバイオマスガス化/熱分解反応器の反応器ハウジング内に置くことさえできる。そのような用途では、ろ過効果を与え、バイオマスガス化/熱分解反応から生じる未精製合成ガスに含まれる粒子状物質を除去するために、触媒成分には多くの場合、触媒成分の上流側表面にろ過層が設けられている。
【0013】
多孔質セラミック体を製造するための典型的なセラミックには、炭化ケイ素、アルミナ、及び/又はシリカが含まれる。
【0014】
多孔質体内の孔径は相当に変動しうる。典型的な孔径は、約50μm〜約1000μmの範囲にある。
【0015】
触媒成分の多孔質セラミック体の開孔をコーティングするのに用いられる塩基性酸化物材料としては、好ましくは塩基性金属酸化物材料が挙げられる。そのような塩基性酸化物材料の典型例は、MgO、CaO、KO、La、及び/又はCeOである。
【0016】
代替として、又はさらに、塩基性酸化物材料は混合酸化物を含んでいてもよい。そのような混合酸化物の典型例は、MgO−CaO、MgO−SiO−Fe、CaO−Al、MgO−Al、CeO−ZrO、CeO−TiO、La−TiO、及び/又はMgO−Al−Laである。
【0017】
混合塩基性酸化物の構成成分の重量比は変動しうる。混合酸化物CaO−Alの場合、CaO:Alの重量比は好ましくは約3:7である。
【0018】
混合塩基性酸化物MgO−Al、CaO−TiO、CeO−ZrO、及びCaO−MgOの場合、重量比は好ましくは約1:9〜約9:1の範囲にある。
【0019】
混合塩基性酸化物MgO−SiO−Feの場合、重量比は好ましくは約5:4:0.5〜約5:4:1.5の範囲、例えば5:4:1であり、組成物は鉱物のかんらん石に相当する。
【0020】
塩基性酸化物材料は、多孔質セラミック体の孔内に粒子形態で存在するのが好ましい。
【0021】
多孔質セラミック体の開孔内に施されている、塩基性酸化物材料と触媒材料とを含むコーティングは、必ずしも隙間又は妨害物のない連続的なコーティングの形態である必要はなく、塩基性酸化物材料が孔の表面に堆積されている多数の斑点様領域又は島状部の形態で施されていてもよい。
【0022】
通常、まず最初に触媒成分の多孔質セラミック体を形成し、次いで前記塩基性酸化物材料及び触媒材料を含むコーティングを多数の孔に適用する。
【0023】
本発明の触媒成分の多孔質セラミック体は、互いに焼結して多孔質セラミック体となる一次粒子から形成することができ、前記一次粒子は顆粒状粒子及び/又は繊維状粒子を含んでいてもよい。
【0024】
代替法として、本発明の触媒成分の多孔質セラミック体は、オープンセル型多孔質構造を有するセラミック発泡体材料から形成することもできる。
【0025】
本発明の触媒成分の多孔質セラミック体の基本構造に応じて、異なった塩基性酸化物材料の限界量が推奨される。
【0026】
多孔質セラミック体が、互いに焼結した顆粒状粒子から主にできている場合、多孔質体の孔内でコーティングとして存在する塩基性酸化物材料の充填量は、好ましくはセラミック体の重量基準で約5重量%以下になる。
【0027】
焼結粒子の前記セラミック多孔質体が相当量の繊維状材料、特にセラミック繊維を含有する場合、多孔質体の開孔表面をコーティングするのに用いることができる塩基性酸化物材料の量は、セラミック体の重量基準で約20重量%以下の充填量で存在することができる。
【0028】
多孔質セラミック体がオープンセル型セラミック発泡体から成る場合、塩基性酸化物材料の量は、好ましくはセラミック体の重量基準で約20重量%以下に制限されるべきである。
【0029】
上記の制限は、塩基性酸化物材料を多孔質セラミック体の開孔に過度に充填することを避け、そうしなければこれが通気特性に対して有害となり、圧力降下を過度に増大させる恐れがある。
【0030】
多孔質体用のセラミック発泡体構造か、又は焼結粒子構造かの選択は、触媒成分を使用する予定の操作条件に依存する。
【0031】
焼結粒子構造はセラミック発泡体より高い機械的安定性をもたらすが、セラミック発泡体はより高い孔体積及びより低い通気抵抗をもたらす。
【0032】
焼結一次粒子の多孔質体は、触媒成分の上流側にろ過層を触媒成分に設けようとする場合に好ましい。この理由は、ろ過層、特に薄膜ろ過層は、セラミック発泡材料体より焼結粒子構造上に容易に且つ均一に取り付けられることである。
【0033】
上記で示したように、塩基性酸化物材料は、必ずしも開孔表面に連続的な中断のないコーティングとして存在しなくてもよく、間に孔表面のコーティングされていない空白部分のある、ある種の島状構造を有しうる粒子状の形態で存在してもよい。
【0034】
塩基性酸化物材料が粒子形態で用いられる場合、粒子状塩基性酸化物材料の平均粒径は約10nm〜約500nmの範囲で選択されるのが好ましい。より好ましいのは約20nm〜約300nmの平均粒径である。
【0035】
本発明に従って用いられる触媒材料、すなわち遷移金属化合物及び/又は貴金属化合物は、少なくとも、触媒成分の多孔質体の孔内で粒子状塩基性酸化物材料によってもたらされる粒子構造上に堆積されるのが好ましい。
【0036】
1種又は複数の遷移金属化合物が触媒材料として用いられる場合、そのような化合物は前記塩基性酸化物材料の量を基準として約1重量%〜約400重量%の量で存在する。
【0037】
1種又は複数の遷移金属化合物もまた粒子形態で存在するのが好ましい。
【0038】
本発明はこのように、粒子状塩基性酸化物材料をコーティングした触媒成分の孔表面に粒子状触媒材料を堆積することによって、増大した表面積を利用することができる。
【0039】
粒子状遷移金属化合物は、約4nm〜約100nmの範囲の平均粒径を有する。
【0040】
遷移金属化合物から選択される典型的な触媒材料は、NiO、Co、Fe、及びCrである。
【0041】
NiOは広く用いられる本発明による触媒化合物であり、好ましくは塩基性酸化物材料を基準として1重量%〜約400重量%の量で単独で用いられ、又はCo、Fe若しくはCrから選択されるさらなる遷移金属化合物と組み合わせて用いられる。触媒材料の後者の成分もまた、好ましくは塩基性酸化物材料の重量基準で約1重量%〜約400重量%の広い範囲で存在することができる。
【0042】
遷移金属化合物に基づくさらなる好ましい触媒材料には、NiO、Co、及びFeの組み合わせが含まれる。別の好ましい触媒材料は、NiO、Co、及びCrの組み合わせを含む。
【0043】
触媒材料が1種又は複数の貴金属化合物を含む場合、それらは前記塩基性酸化物材料の量を基準として0.001重量%〜約100重量%の総量で存在する。
【0044】
この場合も同様に、前記1種又は複数の貴金属化合物は、触媒成分の多孔質体の孔表面に粒子形態で堆積された塩基性酸化物材料によってもたらされる、特に粒子構造上に堆積された、粒子状の形態で存在してもよい。
【0045】
好ましくは、貴金属化合物の平均粒径は約2nm〜約50nmの範囲にあり、この範囲は、開孔表面上に堆積された塩基性酸化物材料の基本的粒子構造がもたらす大きい表面積を、触媒材料の堆積のために最大限に活用する。
【0046】
単独で、又は互いに組み合わせて用いることができる典型的な貴金属化合物には、RuO、ReO、Rh及び/又はPtOが含まれる。
【0047】
本発明による好ましい触媒成分は、900℃で300分の熱処理後に測定されるBET表面が、約0.1〜約10m/gの範囲にある。
【0048】
本発明の触媒成分の重要ないくつかの用途の1つは、タール及び/又は炭化水素化合物を除去する成分としてのその使用である。
【0049】
本発明の触媒成分は、タール及び/又は炭化水素化合物を含む供給ガスの改質成分として特に有利である。
【0050】
このタイプの供給ガスは多くの場合、バイオマスガス化又はバイオマス熱分解の結果として生じるため、合成ガスを触媒と接触させる前に合成ガスからろ過されるのが好ましい、灰のような相当量の粒子状混入物も含みうる。そのような用途では、本発明の触媒成分は好ましくはその上流側にろ過層を備える。そのような触媒成分は、ろ過成分と触媒成分を組み合わせたものとして用いることができる。
【0051】
触媒成分の上流側に設けられたろ過層は通常、約10μm以下の孔径を有する。
【0052】
さらに、本発明はタール及び/又は炭化水素化合物をガス流体から除去する方法に関し、この方法において、前記ガス流体を上記の本発明による触媒成分と接触させる。
【0053】
本発明の触媒成分を、ガス流体が水蒸気を含むプロセスにおいて用いることができる。
【0054】
本発明はさらに、前記ガス流体が、本発明の触媒成分によって窒素及び水素に分解されるアンモニアを含むプロセスを包含する。
【0055】
本発明の方法において、触媒成分は好ましくは約700℃〜約900℃の操作温度で維持される。この温度範囲は、成分内の触媒プロセスにとって最適の結果をもたらす。典型的な操作温度は約800℃である。
【0056】
本発明の触媒成分を利用する方法は、好ましくは、合成ガスの一部が燃焼して触媒成分を最適操作温度に維持するのに必要なエネルギーを供給する、自己熱法として行うことができる。
【0057】
本発明に従って処理することができるガス流体の典型例は、合成ガス、未精製天然ガス、又は主成分としてメタンを含有する他のガスである。
【発明の詳細な説明】
【0058】
図1は、焼結セラミック粒子又はオープンセル型発泡セラミック構造によって構成されうる多数の開孔を有する多孔質セラミック体12を備えた本発明の触媒成分10を示す。
【0059】
図1において、触媒成分は、内側中央部の空間14、及び中空円筒状の多孔質セラミック体の外周に本体12のコーティングとして設けられたろ過膜16を有する、中空円筒の形態である。
【0060】
図1は中空円筒の形態の本発明の触媒成分を示すが、本発明の触媒成分が、平坦なシート構造、波状構造などを含めた任意の幾何学的形状を有しうることは、先の記述から明らかである。
【0061】
図2は、本発明の触媒成分の多孔質体のミクロ構造に関する概略図を示す。この場合、ミクロ構造は、自身の外周表面上で互いに接触している顆粒状セラミック粒子20から成る。図2は顆粒状粒子としての焼結粒子を示すが、セラミック粒子が繊維の形態であってもよく、或いは繊維及び顆粒状粒子の混合物を使用できることは、本発明の先の記述から理解される。
【0062】
焼結セラミック粒子20によりもたらされる開孔において、粒子形態の塩基性酸化物材料(粒子22)が堆積され、これは本発明の触媒成分の多孔質セラミック体の開孔表面に規則的又は不規則的に堆積されてもよい。
【0063】
さらに、図2に示される本発明の触媒成分の孔のコーティングは、粒子状物質24の形態の触媒材料を含む。これは好ましくは塩基性酸化物材料粒子22、及び場合によっては焼結セラミック粒子20の空白の表面25にも堆積されてよい。
【0064】
前駆体化合物をセラミック体の開孔表面、及び開孔内に堆積された塩基性材料に適用した後に、触媒材料をその場で生成することができる。前駆体化合物は、その場で触媒活性種へ変換しうる水溶性化合物であることが好ましい。
【0065】
図3は、本発明による触媒成分を利用するガス化装置30を表す。
【0066】
ガス化装置30は底部34、側壁36、及び上端部38を有する容器32を備える。容器32はその側壁36内にガス化反応器40を収容する。
【0067】
この実施形態において、ガス化反応器40は流動床反応器タイプである。
【0068】
底部34はガス化媒体の注入口42、及びガス化媒体を容器32の断面全体に渡って分配するためのプレナム部44を含む。
【0069】
容器32はさらに、ガス化可能な供給原料のための注入口46を備え、前記注入口は反応器40と流体連通している。
【0070】
容器32の上端部38は、分離プレート54に取り付けられた本発明の複数の触媒成分52を備えるろ過ユニット50を収容するフリーボード48を規定する。分離プレート54はフリーボード48を、反応器40の下流端と直接に流体連通しているろ過ユニット50の上流側部分と、容器32の合成ガス排出口58と直接に流体連通しているろ過ユニット50の下流側部分とに分割している。
【0071】
ガス化装置30の操作中、供給原料はスクリュー型コンベアーを備えていてもよい注入口46を通って反応器40へ供給される。
【0072】
反応器40におけるガス化反応を持続させるために、注入口42を通ってガス化媒体が供給される。
【0073】
反応器40で作り出された合成ガスをフリーボード48に収集し、本発明の触媒成分52を通過させ、その後ガス化装置から精製された合成ガスとして排出口58を通して引き出す。
【0074】
排出される供給原料を、排出ライン56を通して容器32から引き出すことができる。
【0075】
図3に示される配置において、未精製合成ガスから粒子状物質を除去するために、触媒成分52はその上流側表面、すなわち外周表面に堆積されたろ過膜を有するのが好ましい。
【0076】
本発明の触媒成分はガス化装置30のフリーボード48内に置くことができるため、通常は触媒成分を最適操作温度に保つために別個に加熱する必要がない。特に、反応器40から引き出される未精製合成ガスに含まれるタール成分は、なお気化した状態にあり、触媒成分52の外周表面上のろ過膜を閉塞させないと見込まれ、タール成分は触媒成分の多孔質セラミック体の膜を通って入り、その中の開孔のコーティングと接触することができる。触媒成分において、タール成分及び炭化水素化合物をより有益な合成ガス成分へと変換する改質反応が起きる。したがって、精製された純粋な合成ガスをガス化装置30の排出口58から引き出すことができ、ガス化装置30はエネルギー源として直接使用できる。
【0077】
本発明の触媒成分は、図4に概略的に示されるガス化装置のような、従来のガス化装置においても用いることができる。図4は、底部74、側壁76、及び上端部78を有する容器72を備えたガス化装置70を示す。容器72はその側壁76内にガス化反応器80を収容する。ガス化反応器80は流動床反応器タイプである。
【0078】
底部74はガス化媒体の注入口82、及びガス化媒体を容器72の断面全体に渡って分配するためのプレナム部84を含む。
【0079】
容器はさらに、ガス化可能な供給原料(特にバイオマス)のための注入口86を備え、前記注入口は反応器80と流体連通している。容器72の上端部78は、反応器80からの未精製合成ガスが収集され、次いで合成ガス排出口90へと導かれるフリーボード88を規定する。
【0080】
ガス化装置70はさらに、ガス化装置70のフリーボード88から排出口90を通して未精製合成ガスを受け入れる、遠心分離機又はサイクロン92を含む。サイクロン92において、未精製合成ガスに含まれる粒子状物質を合成ガスのガス成分から分離する。分離された粒子状物質はサイクロン92から排出口94を通して引き出される。粒子が大幅に減少した合成ガスは、排出口96を通ってサイクロン92を出て、本発明による触媒成分100を収容するハウジング98へ入る。ガス化装置70の触媒成分100は、サイクロン92で達成される、未精製合成ガスからの粒子状物質の分離及び減少の度合いに応じて、その外周表面にろ過膜を有しても又は有していなくてもよい。
【0081】
多くの場合に、その外周表面にろ過層を有していない触媒成分100を使用できる。
【0082】
固体を大幅に減じた合成ガスがいったん触媒成分100を通過すると、排出口102を通ってハウジング98を出て、エネルギー源として用いられる準備ができる。
【0083】
触媒成分100はガス化装置70のフリーボード88の外側に位置するので、触媒成分の最適操作条件を維持するために、ハウジング98の断熱材を設ける、及び/又は触媒成分100を加熱することがさらに必要となりうる。
【0084】
幾種もの用途において、粒子除去のためのサイクロンを備えていない、図4に関連して記載される装置の変形物が用いられうる。そのような装置を、図5に関連して説明することにする。
【0085】
図5は、図4の装置70と同一構造のガス化装置70を示す。したがって、参照は図4の対応する説明に合わせて作られている。同一の部品に対して、同一の参照番号が用いられている。
【0086】
図4に関連して説明した通り、反応器80から受け入れられる未精製合成ガスはフリーボード88で収集され、排出ライン90を通って容器72から引き出される。
【0087】
図5の実施形態において、未精製合成ガスは排出ライン90を通って、ハウジング112及び未精製合成ガス注入口114を備えたろ過装置110へ直接供給される。
【0088】
ハウジング112は、その外周表面にろ過層を有する1個又は複数の触媒成分116を収容する。したがって触媒成分116は、未精製合成ガスから粒子状物質を分離し、未精製合成ガスを改質するのに同時に役立つ。固体を大幅に減じ精製された、品質改善された合成ガスは、合成ガス排出口118を通ってハウジング112から引き出される。
【0089】
下記の実施例において、例示的な本発明の触媒成分の製造及び典型的使用法を説明することにする。
【0090】
実施例1:触媒成分の製造
【0091】
本発明の触媒成分10の製造に用いられる多孔質セラミック体は、中空円筒形状であり、外径が60mm、内径が40mm、及び長さが50mmであった。
【0092】
多孔質セラミック体は、2種類の異なる1次粒径の焼結SiC粒状物から成っていた。SiC粒状物の平均径はそれぞれ約250μm及び約150μmであった。セラミック体の平均孔径はおよそ50μmであった。
【0093】
上流側表面として用いられる円筒構造の外側表面には、薄膜ろ過層16が設けられた。ろ過層16は平均でおよそ200μmの厚みを有し、約40μmの平均粒径の焼結ムライト粒から成っていた。ろ過層16の孔径はおよそ10μmであった。
【0094】
薄膜ろ過層16を有するそのような多孔質体12は、Pall Filtersystems GmbH Werk Schumacher Crailsheimより、DIA−SCHUMALITH 10〜20として市販されている。
【0095】
本発明の触媒成分は以下のように製造した。
【0096】
第1の工程において、薄膜ろ過層16に、51〜53℃の範囲の融点を有する市販のパラフィンワックスの保護層を設けた。パラフィンワックスは、薄膜ろ過層16を含浸しコーティングするために液状で用いた。膜ろ過層16の上流側表面が完全にパラフィンワックスに覆われることを確実にするように注意を払い、ろ過層の平均厚みの少なくとも50%程度までろ過層16自体にパラフィンワックスを浸透させた。多孔質セラミック体12がパラフィンワックスと接触することを避けるためにも注意を払った。
【0097】
多孔質体12の孔に塩基性酸化物材料及び触媒材料を含むコーティングを施すために、図6に概略的に示される装置130を用いた。装置130は、含浸する(すなわち、多孔質体12の孔表面をコーティングする)のに用いられるコーティング懸濁液又は溶液(液体134)を入れるための容器132を備えている。液体134は、バルブ138を含む底部排出口136を通って容器132から引き出すことができる。底部排出口136は導管142、三方向バルブ144、及び直立に配置されたチューブ146を介してゴム製ホッパー140と連結されている。導管142は、液体134をチューブ146及びゴム製ホッパー140に供給するためのポンプ148を含む。
【0098】
ゴム製ホッパー140は、図6に示すように成分10の一方の端部を受けるのに役立つ。成分10がいったんゴム製ホッパー140上に適切に配置されると、三方向バルブ144は導管142とチューブ146を連結するようにセットされる。バルブ138を開きポンプ148を操作して、液体134の液面が成分10の上端(解放端)18まで上昇するまで、導管142、三方向バルブ144、及びチューブ146を通して液体134をゴム製ホッパー140へ、及び成分10の内側空間14へ供給する。
【0099】
液体134を成分10の多孔質体12の全空隙容積中に浸透させるために、液体134を成分10の内側14の中に一定時間とどめておく。その後、三方向バルブ144を操作して、成分10の内側14の中の液体134を、チューブ146及びさらなるチューブ150を経由して、使用済み液体134を回収する容器152へ排出させる。
【0100】
触媒化合物の前駆体液を含む全ての所望のコーティング成分を堆積させるために、この一連の手順が用いられることになる。
【0101】
MgO−Al前駆体懸濁液の調製のため、MgO及びAlを70:30のMgO:Al質量比で含有する市販の炭酸水酸化マグネシウムアルミニウム60gを、酢酸を分散添加剤として用いて250gのエタノールに分散させた。
【0102】
安定な沈殿しない懸濁液を調製するために、遊星ボールミルを用いて分散物を粉砕した。
【0103】
得られた安定な懸濁液をさらにエタノールで希釈して、6重量%のMgO−Al固体含有量に調整し、液体134とした。
【0104】
上流側(外側)表面をパラフィン保護層で保護した成分10を、解放端の一方がゴム製ホッパー140上になるように取り付けて、焼結一次粒子の多孔質体12をMgO−Al前駆体懸濁液で完全に湿らせるために、安定化したMgO−Al前駆体懸濁液をホッパー140を通して成分10の内側14にポンプで押し出した。その後、懸濁液を成分10の内側に15秒間とどめた。続いて、残った懸濁液を排出させた。
【0105】
ここで得られた含浸された成分10を、水平に回転させ空気流を用いながら乾燥させて、炭酸水酸化マグネシウムアルミニウムをコーティングした管状のろ過成分を得た。乾燥工程の間、温度を一定に保った。
【0106】
完全に乾燥した後、コーティングした成分10を熱処理して、炭酸水酸化マグネシウムアルミニウムのコーティングを固定及び脱水させ、同時に保護パラフィンワックスコーティングを除去した。
【0107】
次の触媒の堆積の間ろ過膜を保護するため、薄膜層16のパラフィンワックスコーティングを上記のように施した。
【0108】
パラフィンワックス保護及び炭酸水酸化マグネシウムアルミニウムコーティングされたろ過成分10を触媒活性化するために、180gの脱イオン水に溶解した56gの硝酸ニッケル六水和物を含有する含浸水溶液を液体134として用いた。炭酸水酸化マグネシウムアルミニウム懸濁液による含浸の場合と同じ方法で、含浸を行った。15秒間の保持時間の後、完全に湿らせた成分10の内側14から、残った含浸溶液を排出させた。炭酸水酸化マグネシウムアルミニウム含浸工程の乾燥手順とは対照的に、充填した触媒含浸溶液の最初の質量に対して重量で35%の質量損失に至るまで、管状成分10を部分的にのみ乾燥させた。
【0109】
この乾燥手順の後、管状成分10を900℃まで加熱し、空気中で900℃で300分維持し、電気加熱した炉内で室温まで冷却することによって試料を直接熱処理して、多孔質体の重量基準で0.9重量%のMgO−Alを充填した触媒ろ過成分を得た。堆積されたMgO−Al一次粒子の平均粒径はおよそ100nmであった。
【0110】
この触媒フィルター中のNiO充填は、塩基性混合酸化物MgO−Alの重量基準で約120重量%であった。NiO一次粒子の平均粒径は約50nmであった。
【0111】
BET表面は総計0.7m/gに達した。
【0112】
このようにして得られた触媒ろ過成分10は、25℃で、上記の目的とする用途での典型的範囲内にある面速度90m/hにおいて、22.5mbarの差圧を示した。
【0113】
実施例2:タール除去における本発明の触媒成分の使用
【0114】
実施例1に従って調製された触媒ろ過成分10を、この実施例で使用した。
【0115】
触媒ろ過成分10のタール除去性能を、触媒ろ過成分10から切り取られ、アルミナ管反応器中に固定された円形切片を用いて、700〜900℃の温度範囲にて試験した。50容量%のN、12容量%のCO、10容量%のH、11容量%のCO、5容量%のCH、及び12容量%のHOから成り、タールのモデル化合物として5g/Nmのナフタレンを含む、バイオマスガス化のモデルガスを用いた。
【0116】
全ての温度設定において、90m/hの一定の面速度に調整し、HSの非存在下及び存在下でナフタレン転化率を測定した。調製及び測定の絶対誤差は±10%であった。結果を表Iに報告する。
【0117】
【表1】

【0118】
800℃でHSの非存在下において、約98%のほぼ完全なナフタレン転化率が見られた。これは開発された触媒ろ過成分10の高いタール除去性能を示している。HSによる触媒材料の不活性化はNi触媒の既知の特徴であり、実施例3で示されるように触媒組成物を改変することにより減少させることができる。
【0119】
実施例3:タール除去に対する本発明の別の触媒成分の使用
【0120】
この実施例において、約60重量%のNiOを充填した触媒ろ過成分10を使用した。実施例1で調製したように、塩基性酸化物材料をコーティングした触媒ろ過成分の孔表面に触媒材料を堆積させるために、上記した全ての他の調製パラメーターに従いながら、脱イオン水180g中の硝酸ニッケル六水和物28gの溶液を使用した。
【0121】
得られた触媒ろ過成分10を、実施例2で報告したのと同じ条件下で試験した。120重量%のNiOを充填した触媒ろ過成分についての44.9%と比較して、100ppmVのHS存在下で800℃において57.8%の改善されたナフタレン転化率が観測された(比較として表I及び表IIを参照のこと)。
【0122】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】本発明の触媒成分の概略図である。
【図2】本発明の好ましい触媒成分の微細構造の概略図である。
【図3】本発明の触媒成分を備えるバイオマスガス化反応器を示す図である。
【図4】図3の反応器のデザインに対する代替デザインのバイオマスガス化装置の概略図である。
【図5】図3及び図4のデザインに対する代替デザインのバイオマスガス化装置の概略図である。
【図6】本発明によるコーティングを多孔質体に施すための装置の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩基性酸化物材料と遷移金属化合物及び貴金属化合物から選択される触媒材料とを含むコーティングを有する、多数の開孔を含む多孔質セラミック体を備えた、触媒成分。
【請求項2】
前記塩基性酸化物材料が、塩基性金属酸化物材料を含む、請求項1に記載の成分。
【請求項3】
塩基性酸化物材料が、MgO、CaO、KO、La及び/又はCeOを含む、請求項2に記載の成分。
【請求項4】
前記塩基性金属酸化物材料が混合酸化物を含む、請求項2又は3に記載の成分。
【請求項5】
前記混合金属酸化物が、MgO−CaO、MgO−SiO−Fe、CaO−Al、MgO−Al、CeO−ZrO、CeO−TiO、La−TiO及び/又はMgO−Al−Laから選択される、請求項4に記載の成分。
【請求項6】
前記塩基性酸化物材料が孔の表面領域上に規則的に分布している、請求項1〜5のいずれか一項に記載の成分。
【請求項7】
前記多孔質体が焼結セラミック一次粒子を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成分。
【請求項8】
前記一次粒子が顆粒状粒子を含む、請求項7に記載の成分。
【請求項9】
前記塩基性酸化物材料がセラミック体の重量基準で約5重量%以下の充填量で存在する、請求項8に記載の成分。
【請求項10】
前記一次粒子がセラミック繊維を含む、請求項7に記載の成分。
【請求項11】
前記塩基性酸化物材料がセラミック体の重量基準で約20重量%以下の充填量で存在する、請求項10に記載の成分。
【請求項12】
前記多孔質体がセラミック発泡体でできている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の成分。
【請求項13】
前記塩基性酸化物材料がセラミック体の重量基準で約20重量%以下の量で存在する、請求項12に記載の成分。
【請求項14】
塩基性酸化物材料が粒子形態で存在する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の成分。
【請求項15】
粒子状塩基性酸化物材料の平均粒径が約10nm〜約500nmの範囲にある、請求項14に記載の成分。
【請求項16】
粒子状塩基性酸化物材料の平均粒径が約20nm〜約300nmの範囲にある、請求項15に記載の成分。
【請求項17】
前記触媒材料が、前記塩基性酸化物材料の量を基準として約1〜約400重量%の総量で存在する1種又は複数の遷移金属化合物を含む、請求項1〜16のいずれか一項に記載の成分。
【請求項18】
1種又は複数の遷移金属化合物が粒子形態で存在する、請求項17に記載の成分。
【請求項19】
粒子状遷移金属化合物の平均粒径が約4nm〜約100nmの範囲にある、請求項18に記載の成分。
【請求項20】
前記触媒材料がNiO及び/又はCo及び/又はFe及び/又はCrを含む、請求項1〜19のいずれか一項に記載の成分。
【請求項21】
前記触媒材料が、前記塩基性酸化物材料の量を基準として約0.001〜約100重量%の総量で存在する1種又は複数の貴金属化合物を含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載の成分。
【請求項22】
1種又は複数の貴金属化合物が粒子形態で存在する、請求項21に記載の成分。
【請求項23】
貴金属化合物の平均粒径が約2nm〜約50nmの範囲にある、請求項22に記載の成分。
【請求項24】
前記触媒がRuO、ReO、Rh、及び/又はPtOを含む、請求項1〜23のいずれか一項に記載の成分。
【請求項25】
900℃で300分間の熱処理後に約0.1〜約10m/gの範囲のBET表面を有する、請求項1〜24のいずれか一項に記載の成分。
【請求項26】
タール及び/又は炭化水素化合物の除去成分として設計されている、請求項1〜25のいずれか一項に記載の成分。
【請求項27】
タール及び/又は炭化水素化合物を含む供給ガスの改質成分として設計されている、請求項1〜25のいずれか一項に記載の成分。
【請求項28】
前記成分がその上流側にろ過層を備える、請求項1〜27のいずれか一項に記載の成分。
【請求項29】
前記ろ過層が約10μm以下の孔径を有する、請求項28に記載の成分。
【請求項30】
ガス流体を請求項1〜29のいずれか一項に記載の触媒成分と接触させる、タール及び/又は炭化水素化合物をガス流体から除去及び/又は改質する方法。
【請求項31】
前記ガス流体が水蒸気を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記ガス流体が、窒素及び水素に分解されるアンモニアを含む、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
成分が約700℃〜約900℃の操作温度で維持される、請求項30〜32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ガス流体が合成ガスである、請求項30〜33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
ガス流体が反応器から生じる、請求項30〜34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記反応器がバイオマスガス化又はバイオマス熱分解反応器である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
反応器及び触媒成分が共通のハウジング内に収容され、前記触媒成分がその上流側表面にろ過層を備える、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
触媒成分及び反応器が別々のハウジング内に収容される、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項39】
前記触媒成分がその上流側表面にろ過層を備え、ガス流体を反応器から直接受け入れる、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
ガス流体が触媒成分と接触する前に沈降装置を通過する、請求項35、36、又は38に記載の方法。
【請求項41】
沈降分離装置がサイクロンである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記ガス流体がメタンを主成分として含有する、請求項30〜41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記ガス流体が未精製天然ガスである、請求項30〜33のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−50847(P2009−50847A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−188955(P2008−188955)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【出願人】(596064112)ポール・コーポレーション (70)
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
【住所又は居所原語表記】2200 Northern Boulevard East Hills, New York
【Fターム(参考)】