説明

触媒担体、触媒体及びこれらの製造方法

【課題】従来の窪み状のピットを有するアルミニウム基板を用いた触媒体は、ピットが非貫通である為、物質の拡散律速により、ピットの深い部分まで有効に使われない為、性能が十分ではなかった。
【解決手段】本発明の触媒担体は、アルミニウム基板と前記アルミニウム基板を貫通する複数の貫通ピットとからなる。また、前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、陽極酸化処理による皮膜が形成されていることを特徴とする。前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、水和処理による皮膜が形成されていることを特徴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種フィルター、吸着剤または充填材などの用途に有用な酸化物系多孔体である触媒担体、触媒体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面を陽極酸化によりアルミナ皮膜を化成せしめ、これを焼成してアルミナ触媒担体を製造せしめるものとして、引用文献1がある。
【0003】
また、アルミニウム表面に陽極酸化によりアルミナ層を形成せしめ、次に50℃〜350℃で熱水処理した後、又は、熱水処理を行ないながら触媒活性を有する金属を前記アルミナ層に担持させて触媒体を製造して、前記触媒体のBET表面積を増大させるものとして、引用文献2がある。
【0004】
また、陽極酸化された金属表面を、5℃〜45℃の水又は温水で水和処理した後、焼成することにより、細孔半径分布のピークを調整するものとして、引用文献3がある。
【0005】
また、陽極酸化によって形成されたアルミナ層表面を、水和処理、ゾルゲル処理及び触媒担持処理及び焼成処理することにより触媒体を製造するものとして、引用文献4がある。
【0006】
また、陽極酸化によって形成されたアルマイト表面を酸処理して、アルマイト表面の細孔の孔径を拡大し、次いで水和処理、焼成処理してアルマイト触媒担体を製造して、触媒担体のBET比表面積を増大させるものとして、引用文献5がある。
【0007】
また、アルミニウム表面に窪み状のピットを形成した後に、陽極酸化処理によって皮膜を形成し、その皮膜に形成された微細孔に触媒を担持せしめて触媒体を製造して、従来よりも陽極酸化皮膜厚を薄くして、ローコストで、高比表面積を得られるものとして、引用文献6及び引用文献7がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭59−59247号公報
【特許文献2】特開平2−144154号公報
【特許文献3】特開平8−246190公報
【特許文献4】特開平10−73226号公報
【特許文献5】特開2002−119856号公報
【特許文献6】特開2007−237090号公報
【特許文献7】特開2008−126151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記引用文献6及び引用文献7に記載の触媒体は、ピットが非貫通である為、物質の拡散律速により、ピットの深い部分まで有効に使われない為、性能が十分ではなかった。
【0010】
本発明は触媒性能を向上せしめた触媒担体、触媒体を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明においては、アルミニウム基板(アルミニウム箔、アルミニウム合金基板を含む。以下同じ。)に、例えば、エッチング処理により前記アルミニウム基板の一方の面から他方の面まで貫通する複数の貫通ピットを形成せしめ、このアルミニウム基板を陽極酸化処理して、前記アルミニウム基板の表面及び貫通ピットの表面に陽極酸化皮膜(アルマイト皮膜)を形成せしめて触媒担体を作成させめる。また、このアルミニウム基板を水和処理して水酸化アルミニウムの皮膜(水和皮膜)を形成せしめ、これを焼成して触媒担体を作成せしめてもよい。その後、前記触媒担体に触媒を担持して触媒体を形成せしめる。
【0012】
または、アルミニウム基板に、例えば、エッチング処理により前記アルミニウム基板の一方の面から他方の面まで貫通する複数の貫通ピットを形成せしめ、このアルミニウム基板を水和処理して、前記アルミニウム基板の表面と貫通ピットの表面を水和処理して水酸化アルミニウムの皮膜(水和皮膜)を形成せしめ、これを焼成して触媒担体を作成せしめた後に、触媒を担持して触媒体を形成せしめる。
【0013】
前記エッチング処理とは、特に限定されず、電気化学的手法またはサンドブラストや機械加工などの物理的手法等があるが、電気化学的手法が好ましい。
【0014】
前記電気化学的手法は、例えば、図1に示すように、アルミニウム基板1をハロゲンイオンを含んだ溶液(例えば、塩酸)浴2で直流により電解処理して、貫通ピットを発生させた後、中性または酸性溶液中で直流により電解処理せしめて、前記貫通ピットの径を拡大せしめる。
【0015】
前記アルミニウム基板は、電気化学的手法の場合においては、表面における(1,0,0)面の結晶方位占有率が50%以上で、アルミ純度が98%以上の厚さが5〜1000μmであり、好ましくは、表面における(1,0,0)面の結晶方位占有率が95%以上で、アルミ純度が99.9%以上で、厚さが100μm前後である。
【0016】
前記エッチング処理により形成される、アルミニウム基板を貫通する貫通ピットは、アルミニウム基板に対して垂直である以外に斜めであってもよい。
【0017】
また、アルミニウム基板を貫通する貫通ピットのピット径は孔径が細かすぎると、反応物質の流通が律速となり、孔径が大きすぎると、拡面効率が悪くなるため、貫通ピット中、最小のピット径は0.1μm以上で、平均ピット径が0.3〜5μmが好ましいが、特に、最小ピット径が0.3μm以上で、平均ピット径が0.5μm以上が好ましい。
【0018】
なお、図2は貫通ピットを有する酸化物レプリカ(貫通ピットの観察のためにアルミニウム部分を溶解除去した酸化物レプリカ)の断面のSEM写真を示し、図3は貫通ピットを有するアルミニウム基板の一部の模式図を表し、3はアルミニウム基板に形成された貫通ピットである。
【0019】
前記陽極酸化処理は、酸性電解浴で行い、燐酸、硫酸、蓚酸、クロム酸、スルファサリチル酸、ピロリン酸、スルファミン酸、リンモリブデン酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、クエン酸、イタコン酸、リンゴ酸、グリコール酸、硼酸、等一種類以上を溶解した水溶液で行う。
【0020】
前記アルマイト皮膜形成後に、形成された微細孔の孔径を酸浸漬によるポアワイドニング処理により拡大せしめてもよい。
【0021】
なお、図4は陽極酸化後の貫通ピット表面にアルマイト皮膜を有するアルミニウム基板の断面のSEM写真であり、図5はアルマイト皮膜を有するアルミニウム基板の貫通ピット付近の断面のSEM写真であり、図6はその模式図を表し、4はアルミニウム基板の貫通ピット3の表面に形成されたアルマイト皮膜、5はそのアルマイト皮膜4上に多数形成された微細孔である。
【0022】
前記水和処理は、前記アルミニウム基板の表面積を増大するためのもので、水和処理液は特に限定されず、例えば、10〜100℃の水または温水、熱水によって行なわれる。また、反応促進剤として、トリエタノールアミン、アンモニア、ケイ酸ナトリウムなどを添加してもよい。
【0023】
なお、図7は水和皮膜を有するアルミニウム基板の貫通ピット付近の断面のSEM写真を表し、6はアルミニウム基板の貫通ピット3の表面に形成された水和皮膜であり、前記水和皮膜6には微細孔が多数形成されている。
【0024】
前記焼成処理は、前記水和皮膜中の水分を脱水すると共にアルミナ層とすることによりアルミニウム基板の表面積を拡大するもので、焼成温度が300℃未満であるとアルミナの出来方が不十分であり、550℃より高い温度では基体が損傷したり、表面積が低下するので好ましくないため、300〜550℃で5分〜3時間行う。
【0025】
前記触媒担体に担持される触媒活性を有する金属は、特に限定されず、例えば、触媒活性を有する公知の金属、合金または金属化合物が挙げられる。例えば、白金系金属、白金系金属の化合物、パラジウム、ロジウム、インジウム、銀、レニウム、錫、セリウム、ジルコニウム、金、金合金、マンガン、鉄、亜鉛、銅、ニッケル、ニッケル合金、コバルト、コバルト合金、ルテニウム等の中から選択することが望ましい。また、これらの触媒物質を組み合わせてもよい。
【0026】
前記触媒担体に触媒を担持する方法は、例えば、触媒活性を有する金属を前記皮膜に吸着させ、更に触媒反応に用いられる物質と接触しても脱着しない程度固定させる。
【0027】
具体的には、例えば、含浸法、電着法、イオン交換法、共沈法、沈着法、水熱合成法、気相合成法等の公知の方法を用いる。特に、触媒活性を有する金属イオンを含有する水溶液に浸漬させる含浸法が好ましい。含浸法に用いられる水溶液は、触媒活性を有する金属を含む、塩化物、臭化物、アンモニウム化合物、シアン化物、アルカリ金属塩、これらの複合化合物を用いて調整することができる。
【0028】
また、触媒活性を有する金属を固着させるために焼成処理を行うこともできる。
【0029】
また、必要に応じて、前記触媒体のアルミニウム基板面に対して、垂直方向から前記触媒体により分解される物質を供給せしめ、前記物質を前記貫通ピット内に流通せしめて触媒反応せしめる。
【0030】
なお、前記垂直方向から物質を供給する場合の物質流量範囲は、例えば、貫通ピット1本当たり、4.7×10-14mol/s〜1.8×10-19mol/sとする。また、この場合の圧力損失は、特に問題のある範囲ではない。
【発明の効果】
【0031】
本発明においては、アルミニウム基板の表面積を増大することができ、触媒担持量を増やす事ができるので、触媒活性に優れる。また、貫通ピット内に物質を流通できるので、高効率な触媒活性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の貫通ピットを形成するために使用する装置の説明図である。
【図2】本発明の貫通ピットを有する酸化物レプリカの断面のSEM写真である。
【図3】本発明の貫通ピットを有するアルミニウム基板の模式図である。
【図4】本発明の貫通ピット表面にアルマイト皮膜を有するアルミニウム基板の断面のSEM写真である。
【図5】本発明のアルマイト皮膜を有するアルミニウム基板の断面のSEM写真である。
【図6】本発明のアルマイト皮膜を有するアルミニウム基板の模式図である。
【図7】本発明の水和皮膜を有するアルミニウム基板の断面のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の触媒担体は、アルミニウム基板と前記アルミニウム基板を貫通する複数の貫通ピットとからなる。
【0034】
また、本発明の触媒担体は、前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、陽極酸化処理による皮膜が形成されていることを特徴とする。
【0035】
また、本発明の触媒担体は、前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、陽極酸化処理をした後に水和処理をした皮膜が形成されていることを特徴とする。
【0036】
また、本発明の触媒担体は、前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、陽極酸化処理をした後に水和処理をし、その後に焼成した皮膜が形成されていることを特徴とする。
【0037】
また、本発明の触媒担体は、前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、水和処理による皮膜が形成されていることを特徴する。
【0038】
また、本発明の触媒担体は、前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、水和処理をした後に焼成した皮膜が形成されていることを特徴する。
【0039】
本発明の触媒担体の製造方法は、アルミニウム基板に複数の貫通ピットを形成せしめる第一の工程と、前記アルミニウム基板を陽極酸化処理する第二の工程ととよりなることを特徴とする。
【0040】
本発明の触媒担体の製造方法は、アルミニウム基板に複数の貫通ピットを形成せしめる第一の工程と、前記アルミニウム基板を陽極酸化処理する第二の工程と、前記アルミニウム基板を水和処理する第三の工程と、前記アルミニウム基板を焼成する第四の工程とよりなることを特徴とする。
【0041】
本発明の触媒担体の製造方法は、アルミニウム基板に複数の貫通ピットを形成せしめる第一の工程と、前記アルミニウム基板を水和処理する第二の工程と、前記アルミニウム基板を焼成する第三の工程とよりなることを特徴とする。
【0042】
本発明の触媒体は、前記触媒担体に、触媒を担持せしめる。
【0043】
また、本発明の触媒体は、触媒体により分解される物質の供給方向に対して、前記アルミニウム基板面が垂直になるよう前記アルミニウム基板を設置せしめる手段を更に有することを特徴とする。
【0044】
本発明の物質の分解方法は、前記触媒体のアルミニウム基板面に対して、垂直方向から前記触媒体により分解される物質を供給せしめる工程を更に有することを特徴とする。
【0045】
前記アルミニウム基板の厚さが5〜1000μmであることを特徴とする。
【0046】
前記貫通ピットの最小のピット径が0.1μm以上であることを特徴とする。
【0047】
前記貫通ピットの平均ピット径が0.3〜5μmであることを特徴とする。
【0048】
前記貫通ピットはエッチング処理によって形成されたことを特徴とする。
【0049】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0050】
(比較例1)
アルミニウム箔に陽極酸化皮膜を浴温20℃蓚酸濃度7wt%の水溶液中で直流40Vにより12時間陽極酸化を行った。その結果、陽極酸化皮膜厚さが片面約50μm、微細孔径が30nm程度である皮膜が生成していることを確認した。その後、この陽極酸化処理したアルミニウム箔を80℃のイオン交換水中にて1時間水和処理を行った。そのアルミニウム箔を銅、亜鉛イオンの溶解する液に浸漬し、銅、亜鉛を担持して触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、5g/m2であった。
【0051】
(比較例2)
(1,0,0)面占有率が99%以上で、アルミニウム純度が99.99%以上の100μm厚のアルミニウム箔をエッチング浴温80℃、5wt%塩酸+20wt%硫酸の浴で電流密度0.20A/cm2で50秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で500秒間、いずれも直流で電解した。その場合のエッチング深さは、片面約30μm、ピット径の平均は1.0μmのアルミニウム箔を得た。その後、このエッチング処理したアルミニウム箔を浴温20℃蓚酸濃度7wt%の水溶液中で直流40Vにより2時間陽極酸化を行った。その後同浴に8時間浸漬し、孔径拡大処理を行なった。その結果、陽極酸化皮膜厚さが約0.8μm、微細孔径が30nm程度である皮膜が生成していることを確認した。その後、このエッチング処理したアルミニウム箔を80℃のイオン交換水中にて1時間水和処理を行った。このアルミニウム箔を銅、亜鉛イオンの溶解する液に浸漬し、銅、亜鉛を担持して触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、5g/m2であった。
【実施例1】
【0052】
(1,0,0)面占有率が99%以上で、アルミニウム純度が99.99%以上の100μm厚のアルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.20A/cm2で100秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で500秒間、いずれも直流で電解した。その場合のエッチングピットは、反対面に伸びて貫通しており、貫通ピットの占有率は95%であり、ピット径の平均は1.5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、このエッチング処理したアルミニウム箔を浴温20℃蓚酸濃度7wt%の水溶液中で直流40Vにより2時間陽極酸化を行った。その後同浴に8時間浸漬し、孔径拡大処理を行なった。その結果、陽極酸化皮膜厚さが片面約0.8μm、微細孔径が30nm程度である皮膜が生成していることを確認した。その後、エッチング処理したアルミニウム箔を80℃のイオン交換水中にて1時間水和処理を行った。このアルミニウム箔を銅、亜鉛イオンの溶解する液に浸漬し、銅、亜鉛を担持して触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、5g/m2であった。
【0053】
なお、貫通ピットの占有率とは、アルミニウム基板に形成された貫通ピット及び非貫通ピットの全体数に対する、貫通ピット数の割合を示し、「貫通ピットの占有率(%)=(貫通しているピットの本数)/(全てのピットの本数)×100」で表される。
【実施例2】
【0054】
実施例1と同じである。
【実施例3】
【0055】
実施例1において、(1,0,0)面占有率を80%にして、その後の処理を同様に行った。その結果、形成された貫通ピットの占有率が50%程度で、ピット径の平均が2.0μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、2.5g/m2であった。
【実施例4】
【0056】
実施例1において、(1,0,0)面占有率を95%にして、その後の処理を同様に行った。その結果、形成された貫通ピットの占有率が70%程度で、ピット径の平均が1.5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、3.0g/m2であった。
【実施例5】
【0057】
実施例1において、アルミニウム純度を99.0%にし、(1,0,0)面占有率を45%にして、その後の処理を同様に行った。その結果、形成された貫通ピットの占有率が30%程度で、ピット径の平均が2.5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、2.0g/m2であった。
【実施例6】
【0058】
実施例1において、箔厚を5μm厚にして、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.10A/cm2で20秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で50秒間、いずれも直流で電解した。その後の処理を同様に行った。その結果、形成された貫通ピットの占有率が95%程度で、ピット径の平均が1.5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、0.3g/m2であった。
【実施例7】
【0059】
実施例1において、箔厚を70μm厚にして、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.20A/cm2で75秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で500秒間、いずれも直流で電解した。その後の処理を同様に行った。その結果、形成された貫通ピットの占有率が95%程度で、ピット径の平均が1.5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、4g/m2であった。
【実施例8】
【0060】
実施例1において、箔厚を180μm厚にして、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.20A/cm2で150秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で750秒間、いずれも直流で電解した。その後の処理を同様に行った。その結果、形成された貫通ピットの占有率が95%程度で、ピット径の平均が1.5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、8g/m2であった。
【実施例9】
【0061】
実施例1において、箔厚を1000μm厚にして、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.60A/cm2で500秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.20A/cm2で1000秒間、いずれも直流で電解した。その後の処理を同様に行った。その結果、形成された貫通ピットの占有率が95%程度で、ピット径の平均が1.5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、50g/m2であった。
【実施例10】
【0062】
実施例1において、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.20A/cm2で100秒間電解した。その場合のエッチングピットは、反対面に伸び貫通しており、貫通ピットの占有率は95%であり、最小ピット径は0.1μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、4g/m2であった。
【実施例11】
【0063】
実施例1において、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.20A/cm2で100秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で100秒間、いずれも直流で電解した。その場合のエッチングピットは、反対面に伸び貫通しており、貫通ピットの占有率は95%であり、最小ピット径は0.3μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、5g/m2であった。
【実施例12】
【0064】
実施例1において、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.20A/cm2で100秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で1000秒間、いずれも直流で電解した。その場合のエッチングピットは、反対面に伸び貫通しており、貫通ピットの占有率は95%であり、ピット径の平均は3μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、7g/m2であった。
【実施例13】
【0065】
実施例1において、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.20A/cm2で100秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で3000秒間、いずれも直流で電解した。その場合のエッチングピットは、反対面に伸び貫通しており、貫通ピットの占有率は95%であり、ピット径の平均は5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、陽極酸化処理、水和処理、触媒担持処理については、実施例1と同様に行い、触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、6g/m2であった。
【実施例14】
【0066】
実施例1において、アルミニウム箔をエッチング浴温80℃、10wt%塩酸の浴で電流密度0.20A/cm2で100秒間電解し、次に、エッチング浴温80℃、5wt%硝酸浴で電流密度0.10A/cm2で500秒間、いずれも直流で電解した。その場合のエッチングピットは、反対面に伸び貫通しており、貫通ピットの占有率は95%であり、ピット径の平均は1.5μmであるアルミニウム箔を得た。その後、このエッチング処理したアルミニウム箔を80℃のイオン交換水中にて1時間水和処理を行った。このアルミニウム箔を銅、亜鉛イオンの溶解する液に浸漬し、銅、亜鉛を担持して触媒体を得た。
この場合の触媒担持量は、4g/m2であった。
【0067】
前記比較例、実施例のデータを表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
本発明は、非常に高比表面積であり、厚さが薄いため、小型素子への応用が期待される。そこで、今後伸張が期待される携帯電子機器の燃料電池用小型改質器への応用を視野に入れ、メタノールの水蒸気改質を行い、比較例及び実施例のメタノール分解率の評価を行った。また、比較例及び実施例2については、物質の供給を箔に対して並行に行い、その他については、箔の貫通ピットに物質を流通させ反応を行った。
【0070】
その分解測定データを表2に示す。
【0071】
【表2】

【0072】
その結果、本発明の貫通ピットを有するエッチング箔を用いた触媒体は優れた性能であることが判明した。
【符号の説明】
【0073】
1 アルミニウム基板
2 浴
3 貫通ピット
4 アルマイト皮膜
5 微細孔
6 水和皮膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム基板と前記アルミニウム基板を貫通する複数の貫通ピットとからなる触媒担体。
【請求項2】
前記アルミニウム基板の厚さが5〜1000μmであることを特徴とする請求項1記載の触媒担体。
【請求項3】
前記貫通ピットの最小のピット径が0.1μm以上であることを特徴とする請求項1または2記載の触媒担体。
【請求項4】
前記貫通ピットの平均ピット径が0.3〜5μmであることを特徴とする請求項1、2または3記載の触媒担体。
【請求項5】
前記貫通ピットはエッチング処理によって形成されたことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の触媒担体。
【請求項6】
前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、陽極酸化処理による皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1、2,3、4または5記載の触媒担体。
【請求項7】
前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、陽極酸化処理をした後に水和処理をした皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の触媒担体。
【請求項8】
前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、陽極酸化処理をした後に水和処理をし、その後に焼成した皮膜が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の触媒担体。
【請求項9】
前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、水和処理による皮膜が形成されていることを特徴する請求項1、2、3、4または5記載の触媒担体。
【請求項10】
前記アルミニウム基板表面及び貫通ピット表面に、水和処理をした後に焼成した皮膜が形成されていることを特徴する請求項1、2、3、4または5記載の触媒担体。
【請求項11】
請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の何れかに記載された触媒担体に、触媒を担持せしめた触媒体。
【請求項12】
触媒体により分解される物質の供給方向に対して、前記アルミニウム基板面が垂直になるよう前記アルミニウム基板を設置せしめる手段を更に有することを特徴とする請求項11記載の触媒体。
【請求項13】
アルミニウム基板に前記アルミニウム基板を貫通する複数の貫通ピットを形成せしめる第一の工程と、
前記アルミニウム基板を陽極酸化処理する第二の工程と
とよりなることを特徴とする触媒担体の製造方法。
【請求項14】
アルミニウム基板に前記アルミニウム基板を貫通する複数の貫通ピットを形成せしめる第一の工程と、
前記アルミニウム基板を陽極酸化処理する第二の工程と、
前記アルミニウム基板を水和処理する第三の工程と、
前記アルミニウム基板を焼成する第四の工程と
よりなることを特徴とする触媒担体の製造方法。
【請求項15】
アルミニウム基板に前記アルミニウム基板を貫通する複数の貫通ピットを形成せしめる第一の工程と、
前記アルミニウム基板を水和処理する第二の工程と、
前記アルミニウム基板を焼成する第三の工程と
よりなることを特徴とする触媒担体の製造方法。
【請求項16】
前記貫通ピットの最小のピット径が0.1μm以上であることを特徴とする請求項13、14または15記載の触媒担体の製造方法。
【請求項17】
前記貫通ピットの平均ピット径が0.3〜5μmであることを特徴とする請求項13、14、15または16記載の触媒担体の製造方法。
【請求項18】
前記貫通ピットはエッチング処理により形成されたことを特徴とする請求項13、14、15、16または17記載の触媒担体の製造方法。
【請求項19】
請求項13、14、15、16、17または18の何れかに記載された触媒担体に、触媒を担持せしめる工程を更に有することを特徴とする触媒体の製造方法。
【請求項20】
請求項19に記載された触媒体のアルミニウム基板面に対して、垂直方向から前記触媒体により分解される物質を供給せしめる工程を更に有することを特徴とする物質の分解方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−55855(P2012−55855A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203244(P2010−203244)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【出願人】(390033385)日本蓄電器工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】