説明

触媒担持用構造体及び触媒コンバータ装置

【課題】触媒担体の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能な触媒コンバータ装置、この触媒コンバータ装置を構成する触媒担持用構造体を得る。
【解決手段】触媒担体14は、排気の流れ方向と直交する断面で見たとき、電極16A、16Bが接触配置された部位では、その幅Wが電極中心16Cへ向かって漸減する漸減幅部14Dが形成される。幅Wは、任意の位置において中心線CLの長さLよりも短くなっている。全体として、触媒担体14の発熱と放熱がバランスされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管に設けられる触媒コンバータ装置と、この触媒コンバータ装置を構成する触媒担持用構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関で生じた排気を浄化するために排気管に設けられる触媒コンバータ装置では、触媒を担持する金属製触媒担体を通電して昇温させ、十分な触媒効果が得られるようにすることが望まれる。たとえば、排気の流れ方向と直交する断面が円形とされた触媒担体(基材)に対し、この触媒担体を挟んで対向する位置に貼着された一対の電極により通電すると、電流の流れ方向の断面積が電極近傍と触媒担体の中央とで大きく異なるため、電流密度にも大きな差が生じ、発熱量のムラが生じやすくなる。
【0003】
これに対し、たとえば、特許文献1に記載されているような、排気の流れ方向と直交する断面が四角形の触媒担体では、電流の流れの断面積が一定になるため、上記した発熱量のムラは生じにくい。しかし、電極からの放熱が多くなると、発熱と放熱のバランスが崩れ、触媒担体内の温度差が大きくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−280086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、触媒担体の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能な触媒コンバータ装置と、この触媒コンバータ装置を構成する触媒担持用構造体を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、通電によって加熱される触媒担体と、前記排気の流れ方向と直交する直交断面で見て前記触媒担体を挟んで対向する位置で触媒担体に接触配置された一対の電極と、前記触媒担体に形成され、前記直交断面で見て前記電極のそれぞれの中心を結ぶ電極中心線と直交する方向の幅が、前記電極が接触された部位において電極中心に向かって漸減する漸減幅部と、前記触媒担体の前記電極が接触されていない部位が、前記直交断面で見て前記漸減幅部よりも幅広とされた幅広部と、を有し、前記幅広部において幅が最大となる最大幅部の幅W1が、前記中心線の長さL1よりも短くされている。
【0007】
この触媒担持用構造体では、触媒担体に接触配置された一対の電極により触媒担体が通電されると、触媒担体は加熱されて昇温される。たとえば、触媒担体に触媒を担持させた場合には、触媒による浄化効果をより早期に発揮させることができる。
【0008】
電極は、排気の流れ方向と直交する直交断面で見て、触媒担体を挟んで対向する位置に設けられているため、電極をこのように対向配置していない構成と比較して、触媒担体を均一に加熱することができる。
【0009】
さらに、触媒担体には、直交断面で見て電極のそれぞれの中心を結ぶ電極中心線と直交する方向の幅を考えると、電極が接触された部位においては、電極中心に向かって幅が漸減する漸減幅部が形成され、さらに、電極が接触されていない部位は、漸減幅部よりも幅広の幅広部とされている。すなわち、漸減幅部は幅広部よりも幅狭になっている。触媒担体は、電極が接触された部位においては電極を通じて触媒担体から放熱されるが、漸減幅部は幅狭なので電流が流れる部分の断面積が小さくなり、電流密度が高くなって発熱量も多くなる。このため、電極からの放熱とバランスされる。
【0010】
また、幅広部では、その幅が最大となる最大幅部の幅W1が、中心線の長さL1よりも短くされている。このように最大幅部の幅W1を制限する(上限を設定する)ことで、電極間での電流の流れの断面積も制限される。すなわち、幅広部において、電流密度の局所的な低下が抑制されるので、触媒担体の各部位での発熱量が均一化される。
【0011】
このように、本発明では、触媒担体の発熱と放熱とをバランスさせることで、触媒担体全体で温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能となる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記最大幅部の幅W1が、前記長さL1の93%以下とされている。
【0013】
このように、最大幅部の幅W1を中心線の長さL1に対し93%以下とすることで、電極間での電流の流れの断面積をより均一に近づけることになるので、触媒担体の各部位での発熱を均一化できる。
【0014】
なお、最大幅部の幅W1の下限値は、上記したように発熱を均一化する観点からは特に制限がないが、あまりに幅W1を小さくすると、触媒担体としての強度維持が困難になる。さらには、この触媒コンバータ装置の装着対象である排気管は一般に円筒状(断面が円形)とされているため、幅狭の触媒担体では排気管への搭載性が低下する。これらの観点から、最大幅部の幅W1の下限としては、中心線の長さL1に対し77%とすることが好ましい。
【0015】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記漸減幅部が、前記直交断面で見て前記電極側に凸となる湾曲形状とされている。
【0016】
漸減幅部をこのように湾曲形状とすることで、円筒状に形成された配管に搭載することが容易になる。
【0017】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記触媒担体が、前記直交断面で見て前記中心線を長軸とする楕円形状とされている。
【0018】
触媒担体を直交断面で見て楕円形状とすることで、触媒担体に角部がなくなるので、局所的な放熱を抑制できる。
【0019】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記触媒担体の前記最大幅部が、前記漸減幅部以外の部分の全体に形成されている。
【0020】
すなわち、最大幅部が漸減幅部以外の部位で、中心線の方向に沿って所定の長さで存在していることになるので、触媒担体の発熱をより均一に近づけることが可能となる。
【0021】
請求項6に記載の発明では、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の発明において、前記触媒担体が、前記直交断面で見て前記中心線を中心とする対称形状とされている。
【0022】
請求項7に記載の発明では、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の発明において、前記触媒担体が、前記直交断面で見て前記中心線の垂直二等分線を中心とする対称形状とされている。
【0023】
このように、触媒担体を対称形状とすることで、温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記構成としたので、触媒担体の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置を示し、(A)は排気の流れ方向に沿った断面図、(B)は排気の流れ方向と直交する方向での断面図である。
【図2】比較例の触媒コンバータ装置を排気の流れ方向と直交する断面で示す断面図である。
【図3】触媒コンバータ装置の触媒担体における最大幅W1/長さL1と最大温度差(温度勾配)との関係を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置を排気の流れ方向と直交する断面で示す断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態の触媒コンバータ装置を排気の流れ方向と直交する断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1(A)には、本発明の第1実施形態の触媒コンバータ装置12が示されている。触媒コンバータ装置12は、排気管の途中に装着されるようになっている。排気管内には、エンジンからの排気が流れるが、図1は、この排気の流れ方向と直交する方向の断面(図1(A)のB−B線断面)にて、触媒コンバータ装置12を示したものである。
【0027】
図1に示すように、触媒コンバータ装置12は、導電性及び剛性を有する材料によって形成された触媒担体14を有している。触媒担体14は、たとえばハニカム状とすることで材料の表面積が増大されている。触媒担体14の表面には触媒(白金、パラジウム、ロジウム等)が付着された状態で担持されている。触媒は、排気管内を流れる排気(流れ方向を矢印F1で示す)中の有害物質を浄化する作用を有している。なお、触媒担体14の表面積を増大させる構造は、上記したハニカム状に限定されるものではなく、たとえば波状等であってもよい。但し、構造耐久性の観点からは、ハニカム状のものが好ましい。
【0028】
触媒担体14を構成する材料としては、導電性セラミック、導電性樹脂や金属等を適用可能であるが、本実施形態では特に導電性セラミックとしている。触媒担体14を構成する材料として、たとえば、少なくとも炭化珪素を含むようにすれば、高い強度や耐熱性が得られるので好ましい。気孔率の調整の容易さから、少なくとも炭化珪素と金属珪素とが含まれた材料が最も好ましい。さらに、電気抵抗率としては、10〜200Ω・cmとすれば、後述するように通電したときに、担持した触媒を効率的に温度上昇させることができるので好ましい。触媒担体の気孔率としては、30〜60%の範囲とすることが好ましい。気孔率を30%以上とすると、必要な表面積を確保して多くの触媒を担持可能となる。また、気孔率を60%以下とすることで、触媒担体14として求められる強度を維持することが可能となる。
【0029】
触媒担体14には、2枚の電極16A、16Bが貼着され、さらに電極16A、16Bの中心にはそれぞれ端子18A、18Bが接続されている。電極16A、16Bは、触媒担体14の外周面に沿って所定の広がりをもった範囲で触媒担体14に接触配置されており、端子18A、18Bから電極16A、16Bを通じて触媒担体14に通電することで、触媒担体14を加熱できる。そして、この加熱により、触媒担体14に担持された触媒を昇温させることで、触媒が有する排気の浄化作用をより高く発揮させることができるようになっている。
【0030】
本実施形態では、図1(B)から分かるように、排気の流れ方向と直交する断面で見て、触媒担体14を楕円形状としている。そして、この楕円の長軸LA上に、電極16A、16Bのそれぞれの中心部分(電極中心16C)が位置するように、触媒担体14を挟んで対向する位置で電極16A、16Bを配置している。
【0031】
ここで、電極16A、16Bの電極中心16Cを結ぶ線分として中心線CLを設定し、この中心線と直交する方向で測った触媒担体14の長さとして幅Wを定義する。このとき、中心線CLが、楕円形状とされた触媒担体14の長軸LAと一致している。また、中心線CLの垂直二等分線VDが、触媒担体14の短軸SAと一致している。
【0032】
触媒担体14は、中心線CL(長軸LA)を中心として、図1(B)において左右対称の形状となっている。さらに、触媒担体14は、垂直二等分線VD(短軸SA)を中心として、同じく図1(B)において上下対称の形状となっている。触媒担体14の幅Wは、電極16A、16Bが接触配置された部位では、触媒担体14の中心14C(長軸LAと短軸SAの交点)側から電極16A、16Bの電極中心16Cへ向かうにしたがって漸減しており、本発明に係る漸減幅部14Dが形成されている。特に、本実施形態では、電極16A、16Bが貼着された部分は、触媒担体14の表面が断面で見て楕円形状の一部であり、電極16Aまたは電極16Bに向かって凸に湾曲する曲面部14Bとなっている。これに対し、電極16A、16Bが接触配置されていない部位は、電極16A、16Bが接触配置された部位と比較して全体的に幅広となっており、本発明に係る幅広部14Wとなっている。
【0033】
さらに、本実施形態の触媒担体14は楕円形状とされているため、幅Wは、任意の位置において、中心線CL(長軸LA)の長さL1よりも短くなっている。そして、触媒担体14の短軸SAにおいて、幅Wが最大(この最大幅をW1とする)となり、本発明に係る最大幅部14Mが構成されている。
【0034】
本実施形態では、電極中心16Cの間の長さ(長軸LAの長さ)L1に対し、最大幅(短軸SAの長さ)W1が、77%〜93%、好ましくは77%〜85%の範囲となるように触媒担体14の形状が決められている。
【0035】
触媒担体14の外周には、絶縁性材料によって円筒状に形成された保持部材24が配置されている。さらに、保持部材24の外周には、ステンレス等の金属で円筒状に成形されたケース筒体28が配置されている。すなわち、円筒状のケース筒体28の内部に、触媒担体14が収容されると共に、ケース筒体28と触媒担体14との間に配置された保持部材24により、触媒担体14がケース筒体28の内部に隙間なく保持されている。そして、絶縁性を有する保持部材24が触媒担体14とケース筒体28との間に配置されているので、触媒担体14からケース筒体28への電気の流れが阻止されている。
このような構成とされた触媒コンバータ装置12において触媒担体14に触媒が担持されていない状態のものが、本発明の触媒担持用構造体13となっている。換言すれば、触媒担持用構造体13の触媒担体14に触媒を担持させたものが、触媒コンバータ装置12である。
【0036】
次に、本実施形態の触媒コンバータ装置12の作用を説明する。
【0037】
触媒コンバータ装置12は、そのケース筒体28が排気管の途中に取り付けられており、触媒担体14の内部を排気が矢印F1方向に通過する。このとき、触媒担体14に担持された触媒により、排気中の有害物質が浄化される。本実施形態の触媒コンバータ装置12では、端子18A、18B及び電極16A、16Bによって触媒担体14に通電し、触媒担体14を加熱することで、触媒担体14に担持された触媒を昇温させ、浄化作用をより高く発揮させることができる。たとえば、エンジンの始動直後等、排気の温度が低い場合には、あらかじめ触媒担体14への通電加熱を行うことで、エンジン始動初期における触媒の浄化性能を確保できる。
【0038】
本実施形態の触媒コンバータ装置12では、触媒担体14が、排気の流れ方向と直交する断面で見て楕円形状とされており、電極16A、16Bの電極中心16C間の長さL1よりも、最大幅W1が短くされている。
【0039】
ここで、図2に示すように、排気の流れ方向と直交する断面で見て円形とされた触媒担体114を有する第1比較例の触媒コンバータ装置112を想定する。この第1比較例の触媒コンバータ装置112では、触媒担体114の断面形状が円形なので、電極16A、16Bの電極中心16Cを結ぶ中心線CLの長さL1と、最大幅部114Mにおける最大幅W1とが一致している。
【0040】
したがって、第1比較例の触媒コンバータ装置112では、電極16A、16Bの近傍における幅W(特にW2として示す)と、最大幅部114Mにおける幅W(最大幅W1)との差が大きくなっている。電極16A、16B間の電流が矢印ECのように流れることを考慮すると、電流の流れに対する断面積が、電極16A、16Bの近傍では相対的に狭くなり、最大幅部114Mでは相対的に広くなる。すなわち、最大幅部114Mでは、電極16A、16Bの近傍と比較して電流密度が相対的に小さくなるため、最大幅部114Mでの発熱量も、電極16A、16Bの近傍と比較して相対的に小さくなる。したがって、第1比較例の触媒コンバータ装置12では、最大幅部114Mの温度が、電極16A、16Bの近傍と比較して、より低くなりやすい傾向がある。
【0041】
これに対し、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、触媒担体14が断面で見て楕円形状とされており、最大幅W1が中心線CLの長さL1よりも短くなっている。したがって、第1比較例の触媒コンバータ装置112と比較して、最大幅部14Mにおける電流の流れの断面積の減少量が少なくなり、電流密度の低下量も少なくなっている。このため、第1実施形態の触媒コンバータ装置12では、第1比較例の触媒コンバータ装置112と比較して、触媒担体14における発熱量の均一化が図られていることになる。
【0042】
図3には、触媒担体14の中心線CLの長さL1に対する最大幅W1の比(W1/L1)と、触媒担体14内での最大温度差との関係が示されている。この最大温度差とは、図1(B)に示す断面で見て、触媒担体14の加熱時の最高温度部位と最低温度部位との温度差を、これらの部位の距離で割ったもの(温度勾配)である。したがって、この数値が小さい程、触媒担体14の温度の均一化が図られていることになる。
【0043】
ここで、一般に、触媒担体14の内部の温度の均一化の観点からは、最大温度差を60℃/cm以下、さらに40℃/cm以下とすることが好ましい。そして、この図3のグラフから、最大幅W1/長さL1の値を93%以下にすれば、上記した最大温度差が60℃/cm以下を、さらに85%にすれば40℃/cm以下を実現できることが分かる。
【0044】
なお、かかる観点からは、最大幅W1/長さL1に下限値はないが、あまりの幅W1を小さくすると、触媒担体14としての強度維持が困難になるおそれがある。また、触媒コンバータ装置12の装着対象である排気管は一般に円筒状とされ、これに合わせてケース筒体28も円筒状とされるため、最大幅W1が小さいと、ケース筒体28と触媒担体14との隙間が大きくなる。この隙間を埋めるべく、実際には保持部材24を厚肉にしたり、ケース筒体28の形状を一部変更したりする必要が生じ、排気管への搭載性(搭載のしやすさ)が低下する。かかる観点から、最大幅W1/長さL1の値は77%以上とすることが好ましい。
【0045】
また、触媒担体14には、図1(B)から分かるように、電極16A、16Bが接触配置された部位が、電極中心16Cに向かって幅Wが漸減する漸減幅部14Dとされ、電極16A、16Bが接触配置されていない部位では、漸減幅部14Dよりも幅広の幅広部14Wとされている。電極16A、16Bが接触配置された部位では、触媒担体14の熱が、電極16A、16B、さらには端子18A、18Bを介して放熱されることがあり、この放熱は、触媒担体14の局所的な(電極16A、16Bの近傍部位での)温度低下の要因となり得る。しかし、本実施形態の触媒コンバータ装置12では、電極16A、16Bが接触配置された部位である漸減幅部14Dが、電極16A、16Bが接触配置されていない部位である幅広部14Wよりも幅狭となっており、漸減幅部14Dにおける電流密度が幅広部14Wの電流密度よりも相対的に高くなっている。すなわち、漸減幅部14Dでは、発熱量が多くなり、電極16A、16Bからの放熱量の一部を補うことになる。このため、電極16A、16Bが接触配置された部位においても、放熱と発熱とがバランスされ、温度の均一化が図られている。
【0046】
特に、本実施形態では、漸減幅部14Dが幅広部14Wに対し単に幅狭とされているだけでなく、電極中心16Cに向かって幅が漸減する形状とされている。電極中心16Cの位置には、電極16A、16Bのそれぞれに対応して端子18A、18Bが接続されているので、端子18A、18Bを介しての放熱も発生し、触媒担体14の温度が低下しやすい。すなわち、放熱による温度低下が著しいと想定される部位(電極中心16C)に向かって触媒担体14の幅Wが狭くなっており、電流密度をより高くすることになるので、放熱と発熱とを、さらに効果的にバランスさせることができる。
【0047】
このように、本実施形態では、電極16A、16Bが接触配置された部位及び接触配置されていない部位のいずれにおいても、触媒担体14の温度ムラを少なくして均一な温度分布に近づけることが可能となる。
【0048】
図4には、本発明の第2実施形態の触媒コンバータ装置42が示されている。以下において、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と同様の構成要素、部材等については同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0049】
第2実施形態に係る触媒担体44は、排気の流れ方向と直交する断面で見て、幅広部44Wが直線状に形成されている。すなわち、幅広部44Wは、中心線CLと平行とされており、幅広部44Wの全体が、本発明の最大幅部44Mとなっている。換言すれば、最大幅部44Mが、漸減幅部14D以外の部分の全体において、中心線CLに沿った方向に所定の範囲(広がり)で形成されていることになる。
なお、第2実施形態の触媒コンバータ装置42においても、触媒担体44に触媒が担持されていない状態のものが、本発明の触媒担持用構造体43となっている。
【0050】
このような構成とされた第2実施形態の触媒コンバータ装置42においても、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と同様に、最大幅部44Mの最大幅W1が中心線CLの長さL1よりも短くなっており、最大幅部44Mにおける電流密度の低下量も少なくなっている。このため、第1比較例の触媒コンバータ装置112と比較して、第2実施形態の触媒コンバータ装置42では、触媒担体44の幅広部44Wにおける発熱量の均一化が図られている。特に第2実施形態では、最大幅部44Mが中心線CLに沿った方向に所定の範囲で形成されているので、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と比較して、より広い範囲で電流密度の均一化を図り、発熱を均一化することが可能である。
【0051】
また、漸減幅部14Dでは発熱量が多くなり、電極16A、16Bからの放熱量の一部を補うことになる。このため、電極16A、16Bが接触配置された部位においても、放熱と発熱とをバランスさせることができる。
【0052】
なお、このような形状の第2実施形態の触媒担体44と比較すると、第1実施形態の触媒担体14では、触媒担体14の外周面が図1(B)に示す断面において全体的に滑らかな曲線(実際には曲面)で構成されており、外周面に角部が存在しない。したがって、第1実施形態の触媒担体14では、このような角部からの放熱を抑制できる。
【0053】
また、第1実施形態の触媒担体14は、全体として楕円形状とされており、より円に近い形状となっている。したがって、排気管への搭載性は、第2実施形態の触媒コンバータ装置42よりも第1実施形態の触媒コンバータ装置12のほうが優れることが多い。
【0054】
なお、かかる観点から、図5に示す第3実施形態の触媒コンバータ装置52のように、上記各実施形態の触媒担体14、44とは異なる幅広部54Wの形状を持つ触媒担体54を用いてもよい。
第2実施形態の触媒コンバータ装置52においても、触媒担体54に触媒が担持されていない状態のものが、本発明の触媒担持用構造体53となっている。
【0055】
第3実施形態に係る触媒担体54では、幅広部54Wが所定の曲率で外側に向かって湾曲しており、垂直二等分線VD上に最大幅部54Mが位置する形状とされている。この幅広部54Wの曲率は、第1実施形態に係る幅広部14Wの曲率よりも小さくなっているが、第2実施形態に係る幅広部44Wのように直線状(平面状)でもない形状とされている。したがって、第3実施形態の触媒コンバータ装置52では、第1実施形態の触媒コンバータ装置12と比較すると、触媒担体54の幅広部54Wにおける発熱量の均一化を図ることができる。また、第2実施形態の触媒コンバータ装置42と比較すると、円に近い形状なので、排気管への搭載性に優れる。
【0056】
上記したいずれの実施形態においても、触媒担体14、44、54は、中心線CLを中心として左右対称形状とされており、且つ、中心線CLの垂直二等分線VDを中心として上下対称形状とされている。このように、対称形状とすることで、対称形状でないものと比較して、触媒担体14、44、54はより均一な温度分布となる。
【0057】
また、本発明に係る漸減幅部の形状として、上記各実施形態では、排気の流れ方向と直交する断面で略円弧状に湾曲する曲面部14Bを挙げているが、断面で直線状あるいは階段状に形成されて、電極中心16Cに向かって触媒担体の幅が漸減する形状でもよい。
【符号の説明】
【0058】
12 触媒コンバータ装置
13 触媒担持用構造体
14 触媒担体
14D 漸減幅部
14W 幅広部
14M 最大幅部
14C 触媒担体の中心
16A、16B 電極
16C 電極中心
18A、18B 端子
42 触媒コンバータ装置
43 触媒担持用構造体
44 触媒担体
44W 幅広部
52 触媒コンバータ装置
53 触媒担持用構造体
54 触媒担体
54W 幅広部
CL 中心線
VD 垂直二等分線
LA 長軸
SA 短軸
W1 最大幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電によって加熱される触媒担体と、
前記排気の流れ方向と直交する直交断面で見て前記触媒担体を挟んで対向する位置で触媒担体に接触配置された一対の電極と、
前記触媒担体に形成され、前記直交断面で見て前記電極のそれぞれの中心を結ぶ電極中心線と直交する方向の幅が、前記電極が接触された部位において電極中心に向かって漸減する漸減幅部と、
前記触媒担体の前記電極が接触されていない部位が、前記直交断面で見て前記漸減幅部よりも幅広とされた幅広部と、
を有し、
前記幅広部において幅が最大となる最大幅部の幅W1が、前記中心線の長さL1よりも短くされている触媒担持用構造体。
【請求項2】
前記最大幅部の幅W1が、前記長さL1の93%以下とされている請求項1に記載の触媒担持用構造体。
【請求項3】
前記漸減幅部が、前記直交断面で見て前記電極側に凸となる湾曲形状とされている請求項1又は請求項2に記載の触媒担持用構造体。
【請求項4】
前記触媒担体が、前記直交断面で見て前記中心線を長軸とする楕円形状とされている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の触媒担持用構造体。
【請求項5】
前記触媒担体の前記最大幅部が、前記漸減幅部以外の部分の全体に形成されている請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の触媒担持用構造体。
【請求項6】
前記触媒担体が、前記直交断面で見て前記中心線を中心とする対称形状とされている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の触媒担持用構造体。
【請求項7】
前記触媒担体が、前記直交断面で見て前記中心線の垂直二等分線を中心とする対称形状とされている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の触媒担持用構造体。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の触媒担持用構造体と、
前記触媒担持用構造体の前記触媒担体に担持され、内燃機関から排出される排気を浄化するための触媒と、
を有する触媒コンバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−200621(P2012−200621A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64610(P2011−64610)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】