説明

触媒材料を再生するためのシステム、方法、及び装置

【課題】燃焼システムの排気経路におけるNO2生成を低減するのに使用され、NO2生成の低減を促進する触媒材料を再生するための熱回収蒸気発生機を提供する。
【解決手段】排気ガスの流れを生成する燃焼装置106の下流に流動連通して連結された蒸気発生機(HRSG)116は、ガスタービンエンジン106から排出された窒素酸化物(NOx)を含む排気ガスを加熱するように構成された加熱装置、及び加熱装置の下流に連結された酸化触媒を含み、酸化触媒は、触媒材料の熱再生温度未満の第1の温度で、また、触媒材料が同時に再生されるように少なくとも熱再生温度にほぼ等しい第2の温度で、酸化触媒中に導かれた排気ガス中のNOxの量の低減を促進する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載されている実施形態は、一般に、排気処理システムに関し、より詳細には、燃焼システムの排気経路におけるNO2生成を低減するのに使用され、NO2生成の低減を促進する触媒材料を再生するための熱回収蒸気発生機に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス及び液体燃料の燃焼中、限定されることはないが一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(UHC)、及び窒素酸化物(NOx)排出物のような汚染物質が形成され、及び/又は周囲の大気中に放出され得る。一般に、CO及びUHCは低めの温度の燃焼条件及び/又は反応を完了させるには不充分な量の時間が利用可能なときの燃焼条件で生成し得る。対照的に、NOxは一般に高めの温度の燃焼条件で生成する。少なくとも幾つかの公知の汚染物質排出源として、産業用のボイラー及び加熱炉、往復運動エンジン、ガスタービンエンジン、及び/又は蒸気発生機がある。
【0003】
現代の空気品質規制では、発電プラントの排気物レベルの低減がますます厳格になり、一方増大した燃料効率も厳しく要求されている。厳格な排出制御基準を満たすために、NOx排気物の生成を抑えることによりNOx排気を制御することが望ましい。窒素の酸化物としては、一酸化窒素(NO)と二酸化窒素(NO2)があり、これは排気筒からの目に見える黄色プルームを生成することが知られており、「酸性雨」の出現の原因とされている。しかし、公知の燃焼制御では限られた排気制御しか得られず、高まった基準及び矛盾することの多いゴールを満たすには不充分であることが分かっており、そのため燃焼後の排気ガス処理システムのさらなる改良が望ましい。
【0004】
排気筒排出物中のNOxを制御するのに使用される公知の1つの技術は選択的触媒還元(SCR)である。SCRシステムにおいて、発電プラントからの排煙ガスは、炭化水素燃料の十分な燃焼を確保するために供給される高い割合酸素に起因して正味の酸化効果を有する。従って、排煙ガス中に存在するNOxは非常に苦労して窒素と水に還元され得る。SCR素子を使用して無水のアンモニアを排煙ガスと混合し得、これらのガスは大気中に放出される前に適切な温度で適切な還元触媒上に通される。しかし、触媒上での反応速度は吸入ガス温度に依存し、排煙ガスが適切な温度に加熱されるまでNOx分解の速度は不充分である。従って、始動段階のような過渡的な段階の間、排煙ガスの温度が低過ぎるので、SCR素子は一般にNOxを所望のレベルに還元しない。
【0005】
NOx除去のもう1つ別のアプローチは、下流の媒体による吸着と、その後のその下流の媒体からのNOxの除去である。例えば、NO2は比較的水溶性であり、そのため排煙ガス脱硫(FGD)ユニットにおいて下流の水溶液を用いて吸着による除去が可能である。しかし、NOはかかる溶液に対してNO2及びその他のNxy化合物より可溶性が低い。従って、発電システムで、酸化触媒を使って、NOを、NO2及びN25のようなより可溶性のNxy成分に酸化することができる。また、NO酸化は一般に低い温度で最も効果的である。しかし、二酸化イオウ(SOx)及びその他の汚染物質は長い間に酸化触媒を汚し得、そのためNO酸化収率が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6900151号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様において、蒸気発生機は、排気ガスの流れを生成する燃焼装置の下流に流動連通して連結されている。蒸気発生機は、窒素酸化物(NOx)を含む排気ガスを加熱するように構成された加熱装置と、加熱装置の下流に連結された酸化触媒とを含んでいる。酸化触媒は、触媒材料の熱再生温度未満の第1の温度で、及び、触媒材料が同時に再生されるように熱再生温度と少なくともほぼ等しい第2の温度で、酸化触媒中に導かれた排気ガス中のNOxの量の低減を促進する。
【0008】
別の態様において、複合サイクル発電プラントは、空気中で燃料を燃焼させて軸動力及び窒素酸化物(NOx)を含む排気ガスの流れを生成するように構成されたガスタービンエンジンと、ガスタービンエンジンに流動連通して連結された熱回収蒸気発生機(HRSG)とを含んでいる。HRSGは、排気ガスを加熱するように構成された加熱装置と、加熱装置の下流に連結された酸化触媒とを含んでおり、この酸化触媒は、触媒材料の熱再生温度未満の第1の温度で、及び、触媒材料が同時に再生されるように熱再生温度と少なくともほぼ等しい第2の温度で、酸化触媒中に導かれた排気ガス中のNOxの量の低減を促進する。
【0009】
もう1つ別の態様において、ガスタービンエンジンにより発生した排気ガスの流れの中の排出物を低減するための方法が提供され、この排気ガスの流れは窒素酸化物(NOx)を含んでいる。この方法は、酸化触媒を第1の温度で機能させて、酸化触媒中に導かれた排気ガス中のNOxの量の低減を促進することを含んでおり、ここで第1の温度は触媒材料の熱再生温度未満である。また、この方法は、第1の温度で酸化触媒の効率を測定し、この酸化触媒の効率を閾値と比較し、この比較に基づいて加熱装置を選択的に始動させて、排気ガスの温度を第2の温度に上昇させて触媒材料の再生を促進することも含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、代表的な複合サイクル発電プラントの簡略化した説明図である。
【図2】図2は、図1に示した複合サイクル発電プラントと共に使用し得る代表的な熱回収蒸気発生機(HRSG)のブロック略図である。
【図3】図3は、図2に示したHRSGの簡略化したブロック図である。
【図4】図4は、図1に示した複合サイクル発電プラント内の排気ガス流中の全NOxの百分率としてNO2の量を図解したグラフである。
【図5】図5は、図1に示した複合サイクル発電プラント内の排気ガス流の温度を制御して連続発電中の酸化触媒の再生を促進する代表的な方法を図解するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は代表的な複合サイクル発電プラント100の簡略化した説明図である。代表的な実施形態では、発電プラント100は、空気を受け入れる空気取り入れ口104を有する圧縮機102を含んでいる。圧縮機102は、1以上の燃焼室108を含むガスタービンエンジン106に連結されている。圧縮機102は、空気取り入れ口104を介して受け入れた空気を圧縮し、この圧縮された空気を燃焼室108中に導き、そこで圧縮された空気が燃料と混合され、点火されて、第1の軸110を駆動する高温の燃焼ガスをガスタービンエンジン106に供給する。第1の軸110は第1の発電機112に連結されており、第1の発電機112に電気を発生させる。また、ガスタービンエンジン106は、例えば、限定されることはないが窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、及び未燃焼炭化水素を含む排気ガスを排気管114中に排出する。
【0012】
代表的な実施形態では、発電プラント100はまた、ガスタービンエンジン106に流動連通して連結された熱回収蒸気発生機(HRSG)116も含んでいる。具体的には、HRSG116は排気管114を介してガスタービンエンジン106に連結されていて、ガスタービンエンジン106から排出された排気ガスをHRSG116が受け入れるようになっている。代表的な実施形態では、HRSG116は1以上の熱交換器118及び排出物処理装置120を含んでいる。熱交換器118は排気ガスから熱を引き出し、この熱が蒸気を発生するために使用される。排出物処理装置120は排気ガスを処理し、この処理された排気ガスはその後排気筒122を介して大気中に放出される。
【0013】
蒸気タービン124がHRSG116に連結されていて、熱交換器118により発生した蒸気が蒸気タービン124中に導かれて第2の軸126の回転を駆動するのに使用されるようになっている。第2の軸126はまた第2の発電機128にも連結されており、第2の発電機128に電気を発生させる。使用済みの蒸気は次に、複数の管束132を含む凝縮器130中に導かれる。管束132を通って流れる冷却水が蒸気を冷却することで、蒸気が凝縮して水になる。この水は次に熱交換器118に戻される。
【0014】
図2はHRSG116のブロック略図である。代表的な実施形態では、HRSG116は、ガスタービンエンジン106(図1に示されている)から排出された排気ガスの流れを排気管114(図1に示されている)を介して受け入れる。さらに、代表的な実施形態では、熱交換器118は複数の過熱式熱交換器202、複数の再加熱型熱交換器204、及び複数の節約熱交換器206を含んでいる。HRSG116はまた高圧蒸発器208、中圧蒸発器210、及び低圧蒸発器212も含んでおり、これらは各々が排気ガス中に含まれる熱を利用して蒸気を生成する。各蒸発器208、210、及び212はそれぞれの圧力ドラムに連結されている。代表的な実施形態では、高圧蒸発器208は高圧ドラム214に連結され、中圧蒸発器210は中圧ドラム216に連結され、低圧蒸発器212は低圧ドラム218に連結されている。HRSG116はまた、排気ガス流中に熱を供給して蒸気生産出力を高める少なくとも1つのダクトバーナー220も含んでいる。従って、代表的な実施形態では、HRSG116は高圧ドラム214、中圧ドラム216、及び低圧ドラム218を用いて複数の異なる圧力の蒸気を発生する。また、代表的な実施形態では、各圧力ドラム214、216、及び218は加圧蒸気を異なる蒸気タービン(図には示してない)に送る。代わりの実施形態では、各圧力ドラム214、216、及び218は蒸気タービン124(図1に示されている)のような単一の蒸気タービンに加圧蒸気を導く。代表的な実施形態では、排出物処理装置120(図1に示されている)が熱交換器202、204、及び206、蒸発器208、210、及び212、並びにダクトバーナー220に連結されていて、排気ガスの流れの中に混入している汚染物質の量の低減を促進する。代わりの実施形態では、排出物処理装置120は熱交換器118の下流で排気ガスの流れの中に配置される。
【0015】
図3はHRSG116に対する簡略化したブロック図及び代表的な排出物プロフィールである。図3に示されているように、HRSG116は、排気ガスがガスタービンエンジン106から排気管114(図1に示されている)を介して排出された後排気ガスの温度を上げるダクトバーナー302を含んでいる。高圧蒸発器208がダクトバーナー302の下流に流動連通して連結され、同様に排気ガスの温度を上げる。例えば、一実施形態では、ダクトバーナー302及び高圧蒸発器208は約華氏1200°(°F)の温度で排気ガスを受け入れる。この例において、ダクトバーナー302及び高圧蒸発器208は排気ガスを約1200°Fを超える温度に加熱する。さらに、代表的な実施形態では、高圧熱交換器304は高圧蒸発器208の下流に流動連通して連結されていて、排気ガスを約400°F〜約650°Fに冷却するのを促進する。
【0016】
代表的な実施形態では、加熱装置306が高圧熱交換器304の下流に流動連通して連結されていて、排気ガスの温度を選択的に上昇させて、酸化触媒の再生を促進する。より具体的には、一実施形態では、加熱装置306は、排気ガスの温度を約700°F〜約1250°Fに加熱して所望の時間枠内で酸化触媒の再生を可能にする第2のダクトバーナーである。例えば、排気ガスを約700°F〜約1250°Fの温度に加熱すると、約2時間以内での酸化触媒の再生が容易になる。また、第2のダクトバーナー306は、排気ガスを約400°F〜約650°Fの温度に加熱してNO酸化を促進するように構成し得る。第2のダクトバーナーは、ガスタービンエンジン106(図1に示されている)及び/又はHRSG116(図1−3に示されている)の過渡的作動の間低速度及び/又は低負荷の作動を容易にする任意の適切なダクトバーナーであり得る。例えば、一実施形態では、第2のダクトバーナーは、燃料源に連結された燃料入口を画定する実質的に円形のハウジングを含んでいる。第2のダクトバーナーはまた、燃料入口に流動連通して連結された複数の燃料回路、並びにハウジングから外へ延びて第2のダクトバーナーの下の排気ガス流の流れを容易にする上部及び底部フランジも含んでいる。上部及び底部フランジは各々が、第2のダクトバーナーにより所望の量の時間出される火炎に曝露される排気ガスの流れを促進する所望の速度で第2のダクトバーナーの上下の排気ガスの流れを高めるように配置されている。
【0017】
代わりの実施形態では、加熱装置306は、高圧熱交換器304の下流に流動連通して連結されて排気ガスの温度を選択的に上昇させる蒸気に基づく加熱素子である。例えば、蒸気に基づく加熱素子は、パネルを形成するように配置された複数の超伝導伝熱管を含み得る。代表的な伝熱管としては、限定されることはないが単なる一例として、New Qu Energy Ltd.,Hong Kong,Chinaから市販されているQu Tubesがある。また、蒸気源(図には示してない)が、蒸気から熱エネルギーを吸収する伝熱管を越えて蒸気を流す。ガスタービンエンジン106(図1に示されている)からの排気ガスは伝熱管を通って導かれ、そこで排気ガスは伝熱管から熱エネルギーの少なくとも一部分を吸収する。代表的な蒸気源としては、限定されることはないが、例として、蒸気タービン124(図1に示されている)、補足ボイラー(図には示してない)、圧力ドラム、例えば高圧ドラム214、中圧ドラム216、及び/又は低圧ドラム218(各々図2に示されている)、又はその他蒸気に基づく加熱素子に充分な熱エネルギーを有する蒸気を提供することができるあらゆる適切な蒸気源がある。
【0018】
代表的な実施形態では、酸化触媒308は第2のダクトバーナー306の下流に流動連通して連結されて、排気ガス流内の酸化触媒308の位置における局部的な排気ガス温度で一酸化窒素(NO)がNO2の平衡濃度に酸化されるのを促進する。また、酸化触媒308は局部的な排気ガス温度におけるNOの1以上のより高次のNxyガスへの追加の酸化を促進する。より具体的には、酸化触媒308は、酸化触媒308により使用される触媒材料の熱再生温度未満の第1の温度でNOを酸化するように構成されている。Nxyガス分子は酸化触媒308の下流で水性吸収又は反応によって除去される。例えば、Nxyガス分子は水に可溶性であり、排気筒122内に備えられているか又は排出物処理装置122(図1に示されている)内に独立の構成要素として備えられた1以上の噴霧ノズル(図には示してない)のような水注入装置を用いて水を利用することによって排気ガス流から除去することができる。幾つかの実施形態では、排気ガス流中の水蒸気を凝縮させてNxyガスを含む水の除去を容易にする水収集器が備えられている。或いは、Nxyガスは、排気ガス流を水溶液に曝露して、Nxyガスと溶液との化学反応により排気ガス流からのNxyガスの除去が容易になるようにすることによって除去してもよい。また、水注入装置はHRSG116内に、又はHRSG116の下流に、例えば排煙ガス脱硫(FGD)ユニット(図には示してない)内に位置していてもよい。酸化触媒308は約400°F〜約650°FでNxyガスの生産及び収率の増強された速度を促進する。しかし、Nxyガスの生産中、酸化触媒は、SOxのような排気ガス汚染物(これは高温で酸化触媒から追い出し得る)により汚されるために再生が必要となり得る。酸化触媒の再生に使用される温度の典型的な範囲は約700°F〜約1250°Fである。再生中、ガスタービンエンジン106は、エネルギーを発生させるために、再生中除去すべき汚染物質を低い濃度で有する燃料のような第2の燃料を使用する。
【0019】
さらにまた、代表的な実施形態では、HRSG116は酸化触媒308の下流に流動連通して連結された低圧熱交換器310を含んでいる。さらに、代表的な実施形態では、低圧熱交換器310は排気ガスを冷却して、水性吸収又は反応による排気ガス流からのNxyガスの除去を促進する。幾つかの実施形態では、水注入装置を低圧熱交換器310内に配置して、排気ガス流からのNxyガス分子の除去を促進し得る。
【0020】
代表的な実施形態では、制御装置312が、例えばHRSG116に連結されている。制御装置312は加熱素子306の起動及び/又は実行を制御する。例えば、複合サイクル発電プラント100(図1に示されている)の始動中、制御装置312は加熱素子306を始動させ、排気ガスの流れを加熱して、排気ガスが排気筒122を介して大気中に放出される前にNOxが例えばNO及びNO2に還元されるのを促進する。プラント100の始動は高温始動、温暖始動、又は低温始動のいずれでもよい。加熱素子306はガスタービン始動のパージ段階中に作動することができる。幾つかの実施形態では、制御装置312は、過渡的作動段階又は負荷又は低速度中、加熱素子306に、排気ガスの流れを加熱させて、NOxが所望の排出物レベルに低減するのに充分な温度に排気ガスを加熱することによりNOxの増大した還元を促進する。
【0021】
さらに、そして代表的な実施形態では、制御装置312は、酸化触媒308が排気ガス流内のNOxを酸化する効率を検出する1以上のセンサー(図には示してない)に連結される。例えば、正常な作動中、ガスタービンエンジン106は高いイオウ含量を有する燃料を使用し、酸化触媒308の入口における排気ガス流の温度は約400°F〜約650°Fである。また、制御装置312は、酸化触媒308の入口及び/又は排気筒122の入口における排気ガス流中のNOxの濃度を表す信号を受領する。測定された濃度に基づいて、制御装置312は、酸化触媒308に使用される触媒材料が、少なくとも最低のレベルのNOx排出物還元を維持するために再生する必要があるときを決定し得る。制御装置312は、例えば測定されたNOx排出物低減を閾値と比較することによって、触媒材料が再生する必要があるときを決定し得る。閾値は、局地的な基準又は規制に基づくNOx排出物の下限値であり得る。或いは、制御装置312は、測定されたNOx排出物低減が閾値の所定の割合内のときに加熱装置306を始動させえるか、又は予測されたNO排出物を基準にしたNxy発生の変化に基づいて加熱装置306を始動させ得る。触媒材料の再生を容易にするために、制御装置312は、ガスタービンエンジン106に、高いイオウ含量の燃料の使用を停止させ、燃料に含まれる窒素が低いレベルで低いイオウ含量の燃料源に切り替えさせる。また、制御装置312は、熱源306に、排気ガス流の温度を約700°F〜約1250°Fに上げさせる。触媒材料が実質的に下限値を超えるレベルに再生されたとき、制御装置312は加熱装置306を停止させ、ガスタービンエンジン106に、元の高いイオウ含量の燃料を使用させるように戻させる。
【0022】
幾つかの実施形態では、用語「制御装置」は、一般に、コンピューター、システム、マイクロコントローラー、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、プログラマブルロジック回路(PLC)、及びその他本明細書に記載されている機能を実行することができるあらゆる回路又はプロセッサーを含めて任意のプログラム可能なシステムを指す。以上の例は単なる代表例であり、従っていかなる意味でも用語「制御装置」の定義及び/又は意味を制限するものではない。
【0023】
代表的な発電システム環境と関連して本発明を記載しているが、本発明の実施形態は他の多数の汎用目的又は特殊目的の発電システム環境又は構成で作動可能である。発電システム環境は本発明いずれかの態様の用途又は機能性の範囲に対していかなる限定も示差するものではない。さらに、発電システム環境は、代表的な作動環境において例証された構成要素のいずれか1つ又は組合せに関する何らかの依存性又は要件を有するものと解釈してはならない。
【0024】
図4は、ガスタービンエンジン106(図1に示されている)のような代表的なガスタービンエンジンに対する排気ガス流中の全NOxの平衡NO2百分率を図解するグラフ400である。図4に示されているように、より低い排気ガス温度が平衡時のNOx中のNO2のより高い割合を促進する。約650°Fの排気ガス温度では、NO2は全NOxのほぼ80%を構成する。しかし、約1100°Fを超える排気ガス温度で、NO2は全NOxのほぼ10%を構成する。
【0025】
図5は、ガスタービンエンジン106(図1に示されている)により発生した排気ガスの流れ中の排出物を低減するための代表的な方法を図解するフローチャート500である。代表的な実施形態では、酸化触媒308(図3に示されている)を第1の温度で作動させて(502)、酸化触媒308中に導かれた排気ガス中のNOxの量の低減を促進する。ここで、第1の温度は触媒材料の熱再生温度未満である。さらに、制御装置312(図3に示されている)で、第1の温度における酸化触媒308の効率を測定する(504)。代表的な実施形態では、第1の温度は約400°F〜約650°Fである。また、制御装置312で、NO酸化変換の量を測定して、再活性化の有効性及び触媒材料の再生に必要な時間を決定する。代表的な実施形態では、制御装置312で、酸化触媒308の効率を閾値と比較する(506)。或いは、制御装置312で、酸化触媒308の効率を閾値の所定の割合以内の値と比較する。この比較に基づいて、制御装置312が、加熱装置306(図3に示されている)を選択的に始動させて(508)、排気ガスの温度を第2の温度に上昇させて、触媒材料の再生を促進する。より具体的には、触媒材料の再生を促進するために、制御装置312は、ガスタービンエンジン106に、高いイオウ含有量の燃料の使用を停止させ、燃料に含まれる窒素のレベルが低い低いイオウ含有量の燃料源と切り替えさせる(510)。また、制御装置312は、熱源306に、排気ガス流の温度を約700°F〜約1250°Fに上げさせる。触媒材料が下限値を実質的に超えるレベルに再生されたら、制御装置312が加熱装置306を停止させ(512)、ガスタービンエンジン106に、元の高いイオウ含有量の燃料を使用するように戻らせる(514)。
【0026】
NOx排出物のような排出物を低減するのに使用されるシステム、方法、及び装置の代表的な実施形態が本明細書に記載されている。本明細書に記載されている実施形態は、ダクトバーナーを使用することによりガスタービンエンジンからの排気ガスの温度の上昇を促進して、排気筒を介する大気中への排出を防止するべくその後の吸着のために排気ガスのNOの濃度を低減する酸化触媒の能力を高める。上記実施形態はNOx低減と関連して記載されているが、処理後ガスタービン、ボイラー、及び往復運動エンジンに使用される排出物軽減触媒からイオウの酸化物(SOx)のようなある種の汚染物質を除去するために同じアプローチにより他の触媒システムを再生することができるものと理解されたい。
【0027】
システム、方法、及び装置の代表的な実施形態が上で詳細に記載されている。システム、方法、及び装置は本明細書に記載されている具体的な実施形態に限定されることはなく、むしろ、方法の実施及び/又はシステム及び/又は装置の構成要素は本明細書に記載されている他の実施及び/又は構成要素と独立に、そして別々に利用し得る。さらに、記載されている実施及び/又は構成要素はまた他のシステム、方法、及び/又は装置においても規定され得、又はそれらと組み合わせて使用し得、本明細書に記載されているシステム、方法、及び記憶媒体のみでの実施に限定されない。
【0028】
本明細書に記載されているもののような制御装置は、少なくとも1つのプロセッサー又は処理装置とシステムメモリーを含んでいる。制御装置は通例少なくともある形態のコンピューターで読み取り可能な媒体を含む。限定ではなく一例として、コンピューターで読み取り可能な媒体はコンピューター記憶媒体と通信媒体を含む。コンピューター記憶媒体は、コンピューターで読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータのような情報の記憶のための何らかの方法又は技術で実行される揮発性及び不揮発性、取り外し可能及び取り外しできない媒体を含む。通信媒体は通例、搬送波又はその他の搬送機構のようなモジュレートされたデータ信号内にコンピューターで読み取り可能な命令、データ構造、プログラムモジュール、又はその他のデータを具体化し、あらゆる情報配送媒体を含む。当業者はモジュレートされたデータ信号に精通しており、この信号はその特性セットの1以上を有するか又はその信号内に情報をコード化するように変化されている。以上のいずれかの組合せもコンピューターで読み取り可能な媒体の範囲内に含まれる。
【0029】
本明細書に例示し説明した本発明の実施形態における作業の遂行又は実行の順序は、特に明記しない限り必須ではない。すなわち、作業は特に明記しない限り任意の順序で実行し得、本発明の実施形態は本明細書に開示したものに追加の、又はそれより少ない作業を含み得る。例えば、特定の作業を別の作業の前に、又はそれと同時に、又はその後に履行又は実行することは本発明の態様の範囲内であると考えられる。
【0030】
本発明の態様又はその実施形態の要素を導入する際、単数形はその要素が1以上あることを意味している。用語「からなる」、「含む」及び「有する」は包括的であって、記載した要素以外の追加の要素があり得ることを意味している。
【0031】
本明細書では、最良の態様を含めて本発明を開示するために、また、当業者が本発明を実施する、例えばあらゆる装置又はシステムを作成し使用し、また組み込まれているあらゆる方法を実行することができるように、例を使用している。本発明の特許可能な範囲は特許請求の範囲に定義されており、当業者には自明の他の例を含み得る。かかる他の例は、特許請求の範囲の文言と異ならない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の文言と実質的に異ならない等価な構造要素を含む場合、特許請求の範囲内に入るものである。
【符号の説明】
【0032】
100 複合サイクル発電プラント
102 圧縮機
104 空気取り入れ口
106 ガスタービンエンジン
108 燃焼室
110 第1の軸
112 第1の発電機
114 排気管
116 熱回収蒸気発生機
118 熱交換器
120 排出物処理装置
122 排気筒
124 蒸気タービン
126 第2の軸
128 第2の発電機
130 凝縮器
132 管束
202 過熱式熱交換器
204 再加熱型熱交換器
206 節約熱交換器
208 高圧蒸発器
210 中圧蒸発器
212 低圧蒸発器
214 高圧ドラム
216 中圧ドラム
218 低圧ドラム
220 ダクトバーナー
302 ダクトバーナー
304 高圧熱交換器
306 加熱装置
308 酸化触媒
310 低圧熱交換器
312 制御装置
400 グラフ
500 フローチャート
502 第1の温度で酸化触媒を作用させる
504 酸化触媒の効率を測定する
506 効率を閾値と比較する
508 加熱装置を始動させて触媒材料の再生を開始する
510 第1の燃料から第2の燃料に切り替える
512 触媒材料が実質的に再生されたときに加熱装置を停止する
514 第1の燃料の使用に戻す

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスの流れを生成する燃焼装置(106)の下流に流動連通して連結された蒸気発生機(116)であって、当該蒸気発生機(116)が、
窒素酸化物(NOx)を含む排気ガスを加熱するように構成された加熱装置(306)と

加熱装置(306)の下流に連結された酸化触媒(308)と
を備えており、酸化触媒(308)が、触媒材料の熱再生温度未満の第1の温度で、また触媒材料が同時に再生されるように少なくとも熱再生温度とほぼ等しい第2の温度で、酸化触媒(308)中に導かれた排気ガス中のNOxの量の低減を促進する、蒸気発生機(116)。
【請求項2】
加熱装置(306)が、排気ガス中のNOxの量を低減する酸化触媒(308)の効率に基づいて選択的に始動するように構成されている、請求項1記載のHRSG(116)。
【請求項3】
さらに、加熱装置(306)に連通して連結された制御装置(312)を含んでおり、制御装置(312)が、酸化触媒(308)の効率を表す信号を受領し、その信号に基づいて加熱装置(306)を始動させるように構成されている、請求項2記載のHRSG(116)。
【請求項4】
制御装置(312)が、さらに、酸化触媒(308)の効率を閾値と比較し、酸化触媒(308)の効率が閾値未満であるとき加熱装置(306)を始動させるように構成されている、請求項3記載のHRSG(116)。
【請求項5】
制御装置(312)が、さらに、酸化触媒(308)の効率を閾値と比較し、酸化触媒(308)の効率が閾値の所定の割合内であるとき加熱装置(306)を始動させるように構成されている、請求項3記載のHRSG(116)。
【請求項6】
加熱装置(306)がダクトバーナーからなる、請求項1記載のHRSG(116)。
【請求項7】
加熱装置(306)が蒸気に基づく加熱素子からなる、請求項1記載のHRSG(116)。
【請求項8】
加熱装置(306)が、第1の温度が約400°F〜約650°Fになるまで排気ガスを加熱するように構成されている、請求項1記載のHRSG(116)。
【請求項9】
加熱装置(306)が、第2の温度が約700°F〜1250°Fになるまで排気ガスを加熱するように構成されている、請求項1記載のHRSG(116)。
【請求項10】
空気中で燃料を燃焼させて、軸動力及び窒素酸化物(NOx)を含む排気ガスの流れを生成するように構成されたガスタービンエンジン(106)と、
ガスタービンエンジン(106)に流動連通して連結された熱回収蒸気発生機(HRSG)(116)と
を含んでなり、HRSG(116)が、排気ガスを加熱するように構成された加熱装置(306)、及び、加熱装置(306)の下流に連結された酸化触媒(308)を含み、酸化触媒(308)が、触媒材料の熱再生温度未満の第1の温度で、また、触媒材料が同時に再生されるように少なくとも熱再生温度にほぼ等しい第2の温度で、酸化触媒(308)中に導かれた排気ガス中のNOxの量の低減を促進する、複合サイクル発電プラント(100)。
【請求項11】
さらに、加熱装置(306)に連通して連結された制御装置(312)を含んでおり、制御装置(312)が、酸化触媒(308)の効率を表す信号を受領し、その信号に基づいて加熱装置(306)を選択的に始動させるように構成されている、請求項10記載の複合サイクル発電プラント(100)。
【請求項12】
制御装置(312)が、さらに、酸化触媒(308)の効率を閾値と比較し、酸化触媒(308)の効率が閾値未満であるとき加熱装置(306)を始動させるように構成されている、請求項11記載の複合サイクル発電プラント(100)。
【請求項13】
制御装置(312)が、さらに、酸化触媒(308)の効率を閾値と比較し、酸化触媒(308)の効率が閾値の所定の割合内であるとき加熱装置(306)を始動させるように構成されている、請求項11記載の複合サイクル発電プラント(100)。
【請求項14】
制御装置(312)が、さらに、ガスタービンエンジン(106)の第1の燃料の燃焼を停止させ、酸化触媒(308)の効率が閾値未満であるとき第2の燃料の燃焼を開始させるように構成されており、第2の燃料が、第1の燃料より低いレベルの、酸化触媒(308)から除去すべき汚染物質を含有する、請求項11記載の複合サイクル発電プラント(100)。
【請求項15】
加熱装置(306)がダクトバーナー及び蒸気に基づく加熱素子の1つからなる、請求項10記載の複合サイクル発電プラント(100)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−97735(P2012−97735A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232356(P2011−232356)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】