説明

触媒用途のためのテクスチャが形成された微粒子フィルター

本発明の対象は、内燃エンジンの燃焼ガス由来の固体粒子およびガス状汚染物の処理のための触媒フィルターであり、相互に連結した粒子の形態の炭化ケイ素またはチタン酸アルミニウムをベースとするか、または、からなる多孔質濾過壁によって隔てられた長手方向の通気路の集まりを形成する多孔質マトリックスを含む。本発明によるフィルターは、上記多孔質濾過壁の上記粒子および粒界は、それらの表面積の少なくとも70%にわたって、テクスチャリング材料で被覆され、上記テクスチャリングは凹凸からなり、その凹凸の大きさは10nmと5ミクロンとの間であり、触媒コーティングまたは薄め塗膜は、上記テクスチャリング材料を少なくとも部分的に被覆しており、所望により上記多孔質濾過壁の粒子を少なくとも部分的に被覆しているように特徴付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質濾過材料の分野に関する。とくに、本発明は、ディーゼルまたはガソリンエンジンの排気ガスの中に含有する固体粒子を濾過するため、さらにNOxの汚染ガス、一酸化炭素COまたは不燃炭化水素HCタイプを一緒に除去できる触媒成分を組み入れるために使用され得る典型的なハニカム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスを処理するための、そして一般にディーゼルエンジン由来のすすの粒子を除去するためのフィルターが先行技術でよく知られている。通例は、これらの構造は、ハニカム構造を有し、その構造の面の1つは、処理されるべき排気ガスの入口になり得、他の面は、処理された排気ガスの出口になり得る。その構造は、通例は、断面が正方形であり、多孔質壁によって分離された相互に平行な軸を有する隣接する通気管または通気路の集まりを、これらの入口面と出口面との間に含む。その通気管は、入口面に入口チャンバー開口部および出口面に出口チャンバー開口部を規定するように、一方または他方のそれらの端で閉鎖されている。ハニカム本体を通るそれらの通路のコースで排気ガスが出口通気路と再結合する前に入口通気路の側壁を通るように強いられるような状態で、その通気路は、相互に閉鎖されている。この点で、微粒子またはすすの粒子はフィルター本体の多孔質壁に堆積され、集められる。
【0003】
本発明によるそのフィルターは、多孔質壁を有する構造をなすことができるように、そして自動車排気ラインの中の微粒子フィルターとしての用途のために許容される熱化学的強度のために選択された無機材料、好ましくはセラミック材料のマトリックスを有する。そのような材料は、炭化ケイ素(SiC)、とくに再結晶された炭化ケイ素を一般にベースとするか、またはアルミチタン酸塩をベースとする。
【0004】
気孔率、とくに平均気孔径の増加は、ガスの触媒濾過処理のための用途にとって一般に望ましい。これは、上記増加は、自動車排気ラインに配置された上述の微粒子フィルターから生じる圧力降下を制限することができるからである。用語「圧力降下」は、フィルターの入口と出口との間に存在するガスの圧力差を意味すると理解される。しかし、とくに、後者が、連続するすすの微粒子の蓄積相および再生相、すなわち、すすの粒子がフィルター内でそれらが燃焼することによって除去されるところの相にさらされる場合、気孔率のこの増加は、フィルターの熱化学強度特性の関連する減少によって制限される。これらの相の再生の間、フィルターは、およそ600〜700℃の平均入口温度に至らせられてもよく、一方、1000℃よりも大きな局所温度に達してもよい。これらの熱点のすべては、フィルターの耐用期間にわたって、その性能を減じさせ、またはその触媒機能を不活性にすることができるという欠点を構成する。非常に高い程度の、たとえば70%よりも大きな気孔率を有する炭化ケイ素フィルターで、熱化学的強度特性が非常に減少することがとくに見られてきた。
【0005】
NOx、COまたはHCタイプの排気ガスの中に含有される汚染ガス相を除去または処理するための追加の要素と微粒子濾過機能とを組み合わせることが望ましい場合、フィルターにより生じる圧力降下と熱化学的強度との間のこの対立がより激しくなる。これらの汚染物を処理するために有効な触媒は、現在非常によく知られているにもかかわらず、微粒子フィルターの中にそれらを組み入れることは、一方では、それらが、フィルターを構成する無機マトリックスの気孔内に存在する場合のそれらの有効性の、他方では、排気ラインの中に組み入れられたフィルターに関連する圧力降下に対するそれらの追加の寄与の問題を明らかに生じさせる。
【0006】
ガス状汚染物の触媒処理の性能を改善する目的を有する現在もっとも研究されている解決策は、一般的に含浸によってフィルターの体積当たりに堆積される触媒溶液の量を増加させることからなる。
【0007】
したがって、自動車排気ラインの用途のための許容値で圧力降下を維持するため、これらの構造における必要な傾向は、もっとも高い気孔率へ向かっている。上記で説明したように、それは、上記用途のためのフィルターの熱化学特性の非常に大きな下落の原因と必ずなるので、そのような傾向は、非常に急速に限界になる。
【0008】
さらに、触媒の装填のこの増加のため、他の問題が生じる。触媒層の厚みが増加すると、とくに、すすの燃焼熱を無機マトリックスに移動させるための現在の触媒組成物の乏しい能力により層が再生する間、すでに述べた局所的熱点問題が実質的に大きくなる。
【0009】
最後に、触媒コーティングの厚みが大きくなると、米国特許出願公開第2007/0049492号明細書、段落[005]で述べられているように、触媒能力が小さくなるかもしれない。それは、処理されるべきガスに接近しづらくする、活性点、すなわち触媒反応が生じる部位の悪い分布に起因する。これは、触媒反応のライトオフ(light-off)温度およびその結果による触媒フィルターの活性化時間、すなわち冷めたフィルターを汚染物の有効な処理を可能にする温度に到達させるために必要な時間で、重要なインパクトを有する。
【0010】
さらに、フィルター中の触媒のより高い装填へのこの傾向は、結果として常に濃縮したコーティング懸濁液になり、その結果、生産性の問題が生ずる。その後、コーティングは何回かの含浸サイクルで堆積される。また、これらの懸濁液の高い粘度のため、実行可能性の問題が生じる。これは、含浸に使用される触媒溶液の化学的性質によって決まる上記特定の粘度を超えると、効果的に多孔質基材にしみ込ませる従来の生産方法ではもはや可能ではないという理由である。
【0011】
また、とくに圧力降下の増加に関連した上述の困難性に加えて、微粒子フィルターの中への触媒組成物の組み入れは、次の問題を引き起こす。:
− 含浸溶液の多孔質基材への付着は、できる限り均一かつ均質でなければならないが、また、大量の触媒溶液が固定されるようにしなければならない。この問題は、相互に連結した粒子の形態をなし、比較的平滑および/または凸面の表面を有するマトリックス、とくにSiCベースのマトリックスにおいて、ますますより重大である。そして、
− とくに出願EP 1 669 580 A1号明細書に記載されている意味で、触媒のエージング(aging)の問題を緩和するために、フィルターの内壁の孔の中に堆積された触媒コーティングは、時間が経っても十分に安定でなければならない。すなわち、触媒活性は、フィルターの寿命の全体にわたって、現在のおよび将来の汚染制御基準を満たすのに耐えられ続けなければならない。
【0012】
出願JP2006/341201号公報に記載されているように、現時点で、フィルターの寿命の全体にわたって、許容できる触媒の性能を保証するために、採用される解決策は、大量の触媒溶液をしみ込ませること、したがって、時間の経過により失われる触媒活性を補償するように大量の貴金属をしみ込ませることである。この解決策は、上述したように圧力降下を増加させる結果になるのみならず、貴金属の使用が必然的により多くなるため、プロセスのコストがかかる。したがって、現時点として、その問題は、確実に性能を安定させるために触媒の経年変化をいかに制限するかということに、依然として残っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、上述の問題のすべてに対する解決策を改善することである。
【0014】
さらに、とくに、本発明の目的の1つは、連続するすすの蓄積および燃焼相にさらされ、より高い能力の触媒構成要素を有する自動車排気ライン内の微粒子フィルターとしての用途に好適な多孔質フィルターを提供することである。
【0015】
さらに、とくに、同じ気孔率に関して、本発明による触媒フィルターは、従来のフィルターに比べて実質的に大きな触媒装填量を有していてもよい。別の可能な態様によれば、本発明による触媒フィルターは、より均質であってもよい、すなわち、多孔質マトリックス内の触媒の装填量のより均一な分布を有していてもよい。
【0016】
触媒装填量の上記増加および/またはより良好な均質性は、フィルターに生じる圧力降下を付随して増加させることなく、汚染物質ガスの処理のとくに性能を実質的に改善するのを可能にする。
【0017】
したがって、本発明は、用途に関して許容される熱化学特性およびフィルターの寿命の全体にわたって実質的に改善された触媒性能を有する多孔質構造とくに得ることを可能にする。
【0018】
本発明の別の目的は、上述した意味の範囲内で、より良好な耐エージング性を有する触媒フィルターを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明は、内燃エンジンの燃焼ガス由来の固体粒子およびガス状汚染物の処理のための触媒フィルターに関する。その触媒フィルターは、相互に連結した粒子の形態の炭化ケイ素またはチタン酸アルミニウムをベースとするか、または、からなる多孔質濾過壁によって隔てられた長手方向の通気路の集まりを形成する多孔質マトリックスを含む。そのフィルターは以下のように特徴付けられる。:
− 上記多孔質濾過壁の上記粒子および粒界は、それらの表面積の少なくとも70%にわたって、テクスチャリング(texturing)材料で被覆され、上記テクスチャリングは凹凸(irregularities)からなり、その凹凸の大きさは10nmと5ミクロンとの間である。そして、
− 触媒コーティングまたは薄め塗膜(washcoat)は、上記テクスチャリング材料を少なくとも部分的に被覆しており、所望により上記多孔質濾過壁の粒子を少なくとも部分的に被覆している。
【0020】
テクスチャリング材料は、多孔質濾過壁の粒子および粒界の全表面積の少なくとも80%または90%、さらに95%を好都合に被覆している。この非常に高い被覆率および粒子の表面と粒界の表面との間のこのより良好な分布は、さらに、それによりフィルターの圧力降下を損なうことなく、触媒性能を改善するのに役に立つ。また、広い範囲に対するこのより大きな被覆率は、フィルターの使用に伴う熱サイクル、とくに再生サイクルの間、テクスチャリング材料が濾過壁の表面から分離するのを防止する。
【0021】
連結層(tie layer)は、好都合に、テクスチャリング材料と濾過壁の粒子および粒界との間の界面に形成される。
【0022】
この連結層は、好ましくは、1つまたは2つ以上の以下の有利な特徴を有する。:
− 連結層は、濾過壁の粒子および粒界の組成ならびにテクスチャリング材料の組成と異なる化学組成を好ましくは有している。連結層は、濾過壁の粒子および粒界の組成とテクスチャリング材料との間に組成的勾配をとくに有してもよい。
− 連結層は、900℃と1500℃との間の、とくに1000℃と1400℃との間の、さらに好ましくは1100℃と1300℃との間の温度での酸化雰囲気における、とくに酸化熱処理による酸化化学反応によって、好ましくは得られる。この酸化熱処理は、テキストの中でより詳細に記載されるであろう。そして、
− 連結層は、少なくとも25重量%、とくに50重量%、さらに80重量%のシリカを好ましくは含む。それは、テクスチャリング材料との化学反応で所望により結合されたSiC粒子の酸化反応によって、たとえば得られるであろう。
【0023】
この連結層の存在は、一方の粒子および粒界と他方のテクスチャリング材料との間の接合の改善に役に立つ。したがって、フィルターの寿命の間におけるテクスチャリング材料のいずれかの分離を避けることができる。
【0024】
好ましくは、多孔質壁は、解放気孔率が30%と70%との間で、かつ平均ポアー直径が5μmと40μmとの間であるように、粒子間に孔を備えるように相互に連結した粒子から形成される。
【0025】
テクスチャリング材料は、一般に無機の性質がある。それは、完全にもしくは部分的に結晶からなってもよいし、または完全にもしくは部分的にガラスからなってもよい。それは、セラミックで好ましくは作られる。その熱的安定性は、一般的に触媒コーティングの主要成分であるアルミナと好ましくは少なくとも等しい。
【0026】
テクスチャリング材料は、アルミノシリケートによって好ましくは形成される。これらのアルミノシリケートは、完全な結晶性化合物に規定され得るが、通例は様々な結晶相(ムライトなど)とガラス相、しばしばケイ酸含有相との混合物である。好ましくは、テクスチャリング材料は、主に非晶質ケイ酸を含有する相の中のムライト微結晶からなるか形成される。ムライトは、炭化ケイ素の熱膨張係数に近い熱膨張係数を有する点で有利である。
【0027】
凹凸は、多孔質壁の粒子および粒界の表面上の焼成または焼結された材料の微結晶または微結晶のクラスターによって形成されてもよい。
【0028】
凹凸は、本質的に、アルミナ、シリカ、マグネシアまたは酸化鉄などの酸化物のビード(bead)によって、たとえば形成される。
【0029】
また、凹凸は、シリカまたはアルミナなどの材料の中にくぼみを形成するクラスターの形態をなしてもよい。その材料は、多孔質マトリックスの粒子の表面上で焼成または焼結される。
【0030】
テクスチャリングを形成する凹凸は、1つまたは2つ以上の次の有利な特徴を好ましくは有する。:
− 凹凸は、棒または針状もしくは球状構造、くぼみまたはクラスターの形態を形成する。上記凹凸は、約10nmと約5ミクロンとの間、とくに100nmと2.5ミクロンとの間の平均相当直径dおよび/または約10nmと約5ミクロンとの間、とくに100nmと2.5ミクロンとの間の平均高さhもしくは平均深さpを好ましくは有する。;
− 凹凸の平均相当直径dおよび/または平均高さhもしくは平均深さpは、マトリックスを構成する無機材料の粒子の平均粒径に比べて、1/2と1/1000との間、とくに1/5と1/100との間で好ましくは小さい。;そして、
− 凹凸は、少なくとも80%の大きさが平均の大きさの半分以上であり、かつこの平均の大きさの2倍以下であるような大きさ(相当直径、高さまたは深さ)分布を好ましくは有する。このテクスチャの均質性は注目すべきであり、その結果、より均質な触媒コーティングが形成され、その結果、触媒活性度がより高くなる。
【0031】
用語「相当直径d」は、本明細書の意味の中で、凹凸の平均直径であると理解される。これらは、凹凸が上に配置されている粒子または粒界の表面に対する接線面からそれぞれ規定される。用語「平均高さh」は、本明細書の意味の中で、テクスチャリングによって形成される起伏の頂点と前述の面との間の平均距離であると理解される。用語「平均深さp」は、本明細書の意味の中で、一方、テクスチャリングのくぼみ(impression)、たとえばへこみ(hollow)またはクレーター(crater)によって形成されるもっとも深い地点と、他方、前述の面との間の平均距離であると理解される。
【0032】
本発明の別の目的は、本発明によるフィルターを得るためにとくに設計されたプロセスである。
【0033】
第1の方法の実施によれば、本プロセスは、次のステップを含む。:
− セラミック粒子および粉末を含むペーストを作製すること、;
− ペーストで成形し、次いで乾燥し、焼成すること、;
− 多孔質濾過壁の少なくとも一部の粒子および粒界の表面に、テクスチャリング材料または少なくとも1種のその前駆物質を堆積させること、;
− 酸化雰囲気、とくに空気の中で、1100℃と1500℃との間の温度での酸化熱処理、そして、
− ガス状汚染種の処理のための触媒または触媒の前駆物質を含む溶液を使用した、テクスチャが形成されたハニカム構造の含浸。
【発明を実施するための形態】
【0034】
テクスチャリング材料は、上記テクスチャリング材料の懸濁液またはその前駆物質の懸濁液を粒子および粒界の表面上に適用することによって、とくに堆積されてもよい。焼成または焼結熱処理が次に来てもよいし来なくてもよい。懸濁液は、水などの液体の中に粉末または粉末ブレンドを含むスリップ(slip)であってもよい。その粉末は、一般に無機種であり、好ましくはセラミックである。それらは、酸化ケイ素および酸化アルミニウムを好ましくは含み、たとえば、アンダルーサイト(たとえば、ケルファライト(kerphalite)またはプルサイト(purusite)タイプ)などの合成または天然のいずれかのアルミナシリケート、とくにアルミノシリケート、藍晶石(仮焼されたまたはされないかのいずれか)、またはことによると珪線石、またはその他にこれらの様々な鉱物の混合物であってもよい。
【0035】
また、テクスチャリング材料は、無機粒子の形態のフィラーをとくに含むゾルまたはゲル(ゾル−ゲル溶液)を適用し、次いで、仮焼熱処理を行うことによって、または、他に、有機ビーズもしくは粒子の形態のフィラーをゾルまたはゲル(ゾル−ゲル溶液)を適用し、次いで、仮焼熱処理を行うことによって堆積されてもよい。
【0036】
ゾル−ゲル溶液は、たとえば、シリカおよび/またはアルミナのゾル、好ましくはアルミナゾルであってのよい。ゾル、とくにアルミナゾルは、酸化鉄または酸化マグネシウムまたはアルミナシリケートなどの酸化物粒子の形態のフィラーを含んでもよい。アルミナシリケートは、とくに、合成または天然の、アンダルーサイト(たとえば、ケルファライトまたはプルサイトタイプ)などのアルミノシリケート、藍晶石(仮焼されたまたはされないかのいずれか)、またはことによると珪線石、またはこれらの様々な鉱物の混合物であってもよい。
【0037】
懸濁液、ゾルまたはゲルは、少なくとも1種の分散剤(たとえば、アクリル樹脂またはアミン誘導体)、少なくとも1種の有機天然バインダー(たとえば、アクリル樹脂またはセルロース誘導体)さらにまた鉱物種(粘土)、少なくとも1種の湿潤または塗膜形成剤(たとえば、ポリビニルアルコールPVA)、少なくとも1種の増孔剤(たとえば、ラテックスまたはポリメチルメタクリレートなどのポリマー)、これらの機能のいくつかをことによると組み合わせたこれらの添加剤のいくつかから選択される添加剤をさらに含んでもよい。粉末または前駆物質の形態および粒径および懸濁液の性質とちょうど同じように、これらの添加材料の性質および量は、ミクロテクスチャリングの大きさならびに粒子および粒界上のその位置にインパクトを有するであろう。
【0038】
酸化熱処理は、1100℃と1400℃との間、とくに1100℃と1300℃との間の温度で、好ましくは実行される。
【0039】
この酸化熱処理は、テクスチャリング材料によって覆われる表面積および後者の均質性がかなり増加されるのを可能にする。さらに、好都合なことに、それは、濾過壁の粒子および粒界とテクスチャリング材料との間の界面で連結層が形成されるのを可能にする。得られた、テクスチャが形成された表面は、粒子および粒界の表面のほとんどにわたって大きな凹凸を有する。したがって、濾過壁とテクスチャリング材料との間の接着と同じようにフィルターの触媒活性は改善される。
【0040】
酸化熱処理温度が低すぎると、テクスチャリング材料による被覆率が不十分になる。しかし、高すぎる温度では、結晶シリカ相、とくにクリストバライトが現れるかもしれず、フィルターの耐熱衝撃性を減少させる。酸化熱処理は、実際の処理温度での温度の保持に続く温度の上昇を一般に含む。温度保持の持続期間は、好ましくは0.5時間と10時間との間である。処理温度に達する前の温度上昇の速度は、概して20℃/時間と500℃/時間との間である。
【0041】
実施の第2の方法によれば、プロセスは次のステップを含む。:
− セラミック粒子および粉末ならびにテクスチャリング材料の少なくとも1種の前駆物質を含むペーストの作製;
− ペーストを成形し、次いで乾燥し、焼成し;
− 酸化雰囲気、とくに空気の中での900℃と1500℃との間の温度での熱処理;および
− ガス状汚染種の処理のための触媒または触媒の前駆物質を含んだ溶液を使用した、テクスチャが形成されたハニカム構造の含浸。
【0042】
ペーストは、セラミック粉末、とくに炭化ケイ素のブレンドと水とを混合することによって、知られている方法で一般に得られる。混合した後、押し出しによってペーストが形成される。焼成が、不活性雰囲気の中で(炭化ケイ素の場合)、2000℃を超える温度で一般に行われると、フィルターができる。
【0043】
好ましくは、テクスチャリング材料の前駆物質は、金属、酸化物、窒化物またはオキシニトライドの形態、それらの混合物のいずれか1つで、または固溶体、または合金で、アルミニウムおよび/またはケイ素を含む。たとえば、SiAlONタイプのケイ素アルミオキシナイトライドまたはSiAl合金が挙げられる。また、それは、所望により水和したアルミナまたは窒化アルミでもよい。
【0044】
また、テクスチャリング材料の前駆物質は、アンダルーサイト(とくにケルファライトまたはプルサイトタイプ)、藍晶石(仮焼されたまたはされない)、もしくはことによると珪線石またはこれらの様々な鉱物を含む混合物などの、合成または天然のいずれかのアルミナシリケートであってもよい。
【0045】
テクスチャリング材料の前駆物質は、0.01ミクロンと5ミクロンとの間、とくに0.05ミクロンと3ミクロンとの間の平均粒径を好ましくは有する。
【0046】
炭化ケイ素の場合のように、一般に2000℃を越える非常に高い温度で不活性雰囲気で行われる場合、焼成は、前駆物質の存在を示さず、テクスチャリングを作り出さない。後者は、テクスチャリング材料を作り出すことによって酸化処理の後のみに示される。酸化処理は、後者と化学的に反応して非常に特徴的なテクスチャリング材料を形成するところの粒子および粒界の表面へ前駆物質を移動させる効果を有するように見える。
【0047】
酸化熱処理は、1000℃と1400℃との間、とくに1100℃と1300℃との間の温度で好ましくは実行される。
【0048】
酸化熱処理は、焼成から別のステップで一般に実行される。とくに、これは、焼成が不活性雰囲気の中で実行されなくてはならない炭化ケイ素フィルターの場合である。しかし、焼成の後、温度の降下として酸化熱処理を実行することが可能である。あるいは、酸化熱処理は、焼成の間に行われてもよい。これは、本発明による処理の温度範囲内で酸化雰囲気で一般に焼成されるチタン酸アルミニウムフィルターの場合であるかもしれない。
【0049】
酸化熱処理は、粒子および粒界の表面のほとんどを被覆するテクスチャリング材料を形成することを可能にする。好都合に、熱処理は、上記で規定されたように連結層を作り出すことが可能にする。この処理によって得られた、テクスチャが形成された表面は、粒子および粒界の表面のほとんどにわたって大きな凹凸を有する。したがって、濾過壁とテクスチャリング材料との間の接着と同じようにフィルターの触媒活性は改善される。
【0050】
酸化熱処理温度が低すぎると、テクスチャリング材料による被覆率が不十分になる。しかし、非常に高い温度では、結晶シリカ相、とくにクリストバライトが現れ、フィルターの耐熱衝撃性を減少させる。酸化熱処理は、実際の処理温度での温度保持に続く温度上昇を一般に含む。温度保持の持続期間は、好ましくは0.5時間と10時間との間である。処理温度に達する前の温度上昇の速度は、一般に20℃/時間と500℃/時間との間である。
【0051】
したがって、本発明によるプロセスの実施の2つの方法の間の共通の点は、一方は、テクスチャリング材料またはその前駆物質の1つの導入であり(実施の第1の方法ではフィルターを成形して焼成した後、または、実施の第2の方法では成形して焼成する前、)、および他方は、焼成の後の、900℃と1500℃との間、または1100℃と1500℃との間の最終的な酸化処理である。この酸化処理は、粒子および粒界のテクスチャリング材料による被覆率を非常に実質的に増加させることを上記で示したように可能にし、連結層を作り出すことを一般に可能にする。これは、テクスチャリング材料の接着の点でとくに有利である。また、テクスチャリング材料が堆積された後、またはこの材料の前駆物質の添加の後の酸化処理は、フィルターの機械的強度、とくにその曲げ強度をかなり増加させることが可能であることが明らかである。酸化熱処理の間の酸化ガスの分圧は、不活性または活性がある酸化になるように適合されてもよい。
【0052】
本発明の意味の中では、用語「触媒コーティング」は、(一般に10〜100m2/gのオーダーの)高い比表面積の、金属、一般に貴金属などの活性相を分散させ安定化させるための無機支持材料を含むコーティングとして定義され、酸化または還元反応のための実際の触媒中心として作用する。活性相は、ガス状汚染物、すなわち、主に一酸化炭素(CO)および不燃炭化水素ならびに窒素酸化物(NOx)を、窒素(N2)ガスまたは二酸化炭素(CO2)ガスなどのより害の少ないガスへ変換する触媒作用を及ぼし得る、および/またはフィルター上に蓄積されたすすの粒子の燃焼を促進する。したがって、触媒は、少なくとも1種の支持材料および少なくとも1種の活性相を含む。
【0053】
支持材料は、酸化物、とくにアルミナまたはシリカ、または他の酸化物を一般にベースとし、たとえば、セリア、ジルコニアまたはチタニア、またはこれらの様々な酸化物の混合されたブレンドをベースとする。触媒金属粒子が上に配置される触媒コーティングを構成する支持材料の粒子のサイズは、数ナノメートルから数十ナノメートル、または、例外的に数百ナノメートルのオーダーである。
【0054】
触媒コーティングは、支持材料またはその前駆物質および活性相または活性相の前駆物質の形態で、触媒を含む溶液を用いた含浸によって一般に得られる。一般に、使用される前駆物質は、水性または有機溶液に溶解したまたは懸濁した有機もしくは無機の塩または化合物の形態をとる。含浸に次いで、フィルターの気孔の中の固体のおよび触媒作用の活性相の最終のコーティングを得る目的で、熱処理が行われる。
【0055】
上記プロセスおよびそれを実施するための装置が、特許出願または特許、米国特許出願公開第2003/044520号明細書、国際公開第2004/091786号パンフレット、米国特許第6 149 973号明細書、米国特許第6627 257号明細書、米国特許第6 478 874号明細書、米国特許第5 866 210号明細書、米国特許第4 609 563号明細書、米国特許第4 550 034号明細書、米国特許第6 599 570号明細書、米国特許第4 208 454号明細書または米国特許第5 422 138号明細書にたとえば記載されている。
【0056】
どのような方法が使用されようとも、酸化物の支持の上の活性相として白金族(Pt、Pd、Rh)の高価な金属を通例は含む堆積した触媒のコストは、含浸プロセスの全体のコストの取るに足らない部分ではない。したがって、節約の目的のために、ガス状反応物によって容易に接近できるように、できる限り均一に触媒が堆積されることが重要である。
【0057】
本発明の最後の対象は、本発明による触媒フィルターを得るための中間構造である。この中間構造は、触媒コーティングのいずれかの堆積の前のフィルターに対応する。本発明による中間構造は、相互に連結した粒子の形態の炭化ケイ素またはチタン酸アルミニウムをベースとするかまたはからなる多孔質マトリックスを含み、上記粒子および粒界は、上述したようにテクスチャリング材料で、それらの表面積の少なくとも70%にわたって被覆されている。
【0058】
好ましくは。連結層は、テクスチャリング材料と濾過壁の粒子および粒界との間の界面に形成される。連結層の好ましい特性は、上記に説明されている。
【0059】
本発明およびその有利な点は、本発明を限定せず、もっぱら説明として提供される次の例示的態様を読むとき、より良好に理解されるであろう。
【0060】
図1〜6は、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して取られた、以下の例の濾過壁の顕微鏡写真である。
【0061】
比較例C1
この例では、SiCベースの触媒フィルターは、通常使用される方法で合成された。
【0062】
最初に、欧州特許第1 142 619号明細書に記載された粉末ブレンドと比較する第1の態様では、10ミクロンの平均粒径d50を有する粒子を有する、70重量%のSiC粉末が、0.5ミクロンの平均粒径d50を有する第2のSiC粉末と混合された。本明細書の文脈内では、用語「平均ポアー直径d50」は、粒子の全集団のそれぞれ50%がこの直径以下のサイズを有するような粒子の直径を示す。SiC粒子の全重量の5重量%に等しい割合でポリエチレンタイプの造孔剤とSiC粒子の全重量の10重量%に等しい割合でメチルセルロースタイプの気泡剤とが、このブレンドに添加された。
【0063】
次に、必要な量の水が添加され、国際公開第05/016491号パンフレットの図3に関連して記載されているもののような内部通気路の波形の配置によって特徴付けられるモノリスを作製するようにハニカム構造を有するダイを通して押出し成形されることを可能とする塑性を有する均質なペーストが得られるまで、混合が行われた。断面では、7%に等しい、国際公開第05/016491号パンフレットに規定されているように、非対称因子によって壁の波形は特徴付けらる。
【0064】
押出し成形後の構造の寸法的特徴を表1に示す。:
【0065】
【表1】

【0066】
次に、得られたグリーンモノリスは、化学的に結合していない水の含有量を1重量%未満にするのに十分な時間のマイクロ波乾燥によって乾燥された。
【0067】
モノリスのそれぞれの面の通気路は、よく知られた技術、たとえば、国際公開第2004/065088号パンフレットに記載されているものを使用して交互にふさがれた。
【0068】
その後、モノリスは、2200℃の最大温度に達するまで20℃/時間の温度上昇でアルゴン中で焼成され、これは6時間維持された。
【0069】
その後、被覆されていないSiC濾過構造が得られた。図1に示され得るように、フィルターの濾過壁は、粒界によって相互に連結された平滑な表面のSiC粒子のマトリックスによって形成された。その材料の気孔率は、粒子間に残されている孔によって定まる。
【0070】
比較例C2:
この例では、例C1にしたがって得られた被覆されていない構造は、その後、第1のテクスチャリング処理を受けた。テクスチャリングのために使用される材料は、SiCベースのスリップの形態でフィルターの気孔の中へ導入された。
【0071】
スリップは、重量%で、96%の水、0.1%の非イオンタイプの分散剤、1.0%のPVA(ポリビニルアルコール)タイプのバインダーならびに2.8%の、0.5μmの平均粒径および98重量%よりも高い純度を有するSiC粉末を含んだ。
【0072】
スリップは、以下のステップにしたがって製造された。:
【0073】
バインダーとして使用されたPVAは、80℃に加熱された水に最初に溶解された。分散剤およびその後SiC粉末は、水に溶解されたPVAを含むタンクの中に導入され、均質な懸濁液が得られるまで撹拌され続けられた。
【0074】
スリップは、簡単な浸漬によってフィルターの中に堆積された。余分な懸濁液は、10ミリバールの残留圧力下の真空吸引によって除去された。
【0075】
その後、得られたモノリスは、120℃で16時間の乾燥ステップを受け、次いで、1700℃、アルゴン中で3時間の焼結熱処理を受けた。不活性雰囲気中のこの処理は、本発明による処理と異なり、粒子および粒界の表面の高い被覆率を得ることおよび連結相を形成することを可能にしない。
【0076】
図2は、その後、得られたテクスチャが形成されたフィルターの濾過壁のSEM顕微鏡写真を示す。それは、多孔質マトリックスを構成するSiC粒子の表面上に凹凸を示す。この例では、凹凸は、SiC微結晶およびSiC結晶クラスターの形態をとる。テクスチャリング材料によって被覆される領域は、比較的非常に小さい。
【0077】
この態様によれば、測定されたパラメーターdは、上述したように、SiC粒子の表面に存在する微結晶の平均粒径に対応する。パラメーターhは、上記微結晶の平均高さhに対応する。
【0078】
例3(本発明による)および例C3(比較例):
この例では、例C1により得られた被覆されていない構造は、別のテクスチャリング処理を受けた。テクスチャリング材料が、Disperal(登録商標)の名の下で会社Sasolから販売されているアルミナゾルの形態でフィルターの気孔の中に導入された。このゾルは、およそ2のpHを有し、硝酸水溶液中の5重量%のベーマイトを含む。
【0079】
モノリスは、簡単な浸漬によってアルミナゾルを使用してしみ込まされ、余分は、10ミリバールの残留圧力下の真空を適用することによって除去された。その後、モノリスは、空気中、500℃、2時間の仮焼熱処理を受け、次いで、アルミナコーティングをSiC基材と反応させるために、空気中で1200℃、4時間の酸化熱処理を受けた。
【0080】
図3aおよびbは、テクスチャリングが、針状または球状構造の形態で得られることを示す。これらの凹凸は、大部分が非晶質のシリカを含む相中のアルミナシリケートの、とくにムライトの微結晶からなる。:これは、堆積されたアルミナと基材の酸化から結果として生じたシリカとの間の化学反応を示す。図3aおよびbが示すように、粒子および粒界の酸化から結果として生じたシリカが非常にリッチな薄層が、これらの凹凸と粒子との間に形成された。
【0081】
上述したように、凹凸は、粒子の表面に、図3bで観察される、棒の直径および長さにそれぞれ相当する0.7μmの平均高さhと、2.0μmの相当直径dを有する。また、凹凸は、0.7μmの平均深さpを有する。
【0082】
凹凸は、粒子および粒界の表面のほとんどすべてを覆う。それは、テクスチャリング材料での表面の被覆率の程度は、95%よりも大きいと評価され得る。
【0083】
比較例C3は、空気中で、1200℃の酸化熱処理を受けなかった点のみで例3と異なる。
【0084】
例4(本発明による)および例C4(比較例):
以前の例と異なり、例1により得られた被覆されていない構造は、アルミナの量に関連して5重量%の量のマグネシア(MgO)とアルミナの量に関連して5重量%の量の酸化鉄(Fe23)とで満たされたアルミナゾルを使用してしみ込まされた。マグネシアは、水和物の形態で供給された。酸化鉄は、Rana Gruber社によってCRM 50の名の下で販売されている粉末の形態で供給された。酸化鉄の純度はおよそ97%であり、平均粒径はおよそ0.6ミクロンであった。
【0085】
その後、得られたモノリスは、例3によるものと同じ酸加熱処理を受けた。
【0086】
図4aおよびbは、得られたテクスチャリングが球状および針状構造の形態であることを示す。これらの凹凸は、大部分が非晶質シリカを含む相中のアルミナシリケート微結晶からなる。これらの凹凸と粒子との間には、粒子および粒界の酸化から結果として生じたシリカが非常にリッチである薄層が形成された。
【0087】
これらの凹凸は、平均高さh=1.9μmおよび平均相当直径d=1.9μmを有する球状突出物によって形成される。これらの突出物は、平均深さpが1.5μmであるへこみによって隔てられている。
【0088】
比較例C4は、空気中で1200℃の酸化熱処理を受けなかった点のみで例4と異なる。
【0089】
例5(本発明による)および例C5(比較例):
この例では、被覆されていない構造は、テクスチャリング材料の前駆物質がSiC粉末ブレンドに添加された点を除いて、例C1にしたがって得られた。
【0090】
テクスチャリング材料の前駆物質は、Almatis 社によってCT3000SGの名の下で販売されている約0.8μmの平均粒径を有する粉末の形態の反応性アルミナであった。添加される含有量は、炭化ケイ素粉末の量に関連して2重量%であった。
【0091】
混合する水の量は、均質かつ塑性のペーストを得るように適合された。その後、モノリスは、押出し成形によって得られた。その後、それらは、例C1と同じ方法で、乾燥され、ふさがれ、焼成された。
【0092】
これらの生成物は、走査顕微鏡で観察された。図5aが示すように、酸化処理前の微細構造は、例C1にしたがった参照生成物のものと非常に似ている。テクスチャリングは観察されない。
【0093】
その後、モノリスは、1200℃、空気中、4時間の酸加熱処理を受けた。
【0094】
図5bは、この酸加熱処理のおかげで得られたテクスチャリングは球状構造を有するということを示す。凹凸は、大部分は非晶質シリカを含む相の中のアルミノシリケート、とくにムライト微結晶から構成される。粒子および粒界の酸化から結果として生じるシリカが非常にリッチである薄層が、これらの凹凸と粒子との間に形成される。
【0095】
これら凹凸が、平均高さh=0.9μmおよび平均相当直径d=0.9μmを有する球状突出物によって形成される。これらの突出物は、平均深さpが0.9μmであるへこみによって隔てられている。
【0096】
比較例C5は、空気中の1200℃での酸化熱処理を受けなかった点のみで例5と異なる。したがって、比較例C5は、図5aによって説明される。
【0097】
例6(本発明による)および例C6(比較例):
上記の例5と異なり、テクスチャリング材料の前駆物質は、窒化アルミニウムであった。2.5μmの平均粒径を有する2%の窒化アルミニウム(AlN)粉末が、アルミナ粉末の代わりに押出し成形混合物に添加された。モノリスが、例5で記載されたものと同じプロセスを使用して得られた。
【0098】
これらの生成物は、走査顕微鏡で観察された。図6aに示すように、微細構造は、例C1による参照生成物のものと非常に似ている。焼成からテクスチャリングは現れなかった。
【0099】
その後、モノリスは、例5に関して記載されたものと同じ酸加熱処理を受けた。
【0100】
図6bは、酸加熱処理のおかげで得られたテクスチャリングは、非常に特徴的な球状構造を有するということを示す。これらの凹凸は、シリカを含む相の中の約2%のアルミナからなる。粒子および粒界の酸化から結果として生じるシリカが非常にリッチである薄層が、これらの凹凸と粒子との間に形成された。
【0101】
これらの凹凸は、平均高さh=0.9μmおよび平均相当直径d=0.9μmを有する球状突出物によって形成される。これらの突出物は、平均深さpが0.9μmであるへこみによって隔てられている。
【0102】
比較例C6は、空気中の1200℃での酸化熱処理を受けなかった点のみで例6と異なる。したがって、それは、図6aによって説明される。
【0103】
本発明による例3〜6のこれらのテクスチャが形成されたモノリスの特性は、測定され、比較例のものと比較された。
【0104】
これらの特性は、以下の実験手順にしたがって測定された。
【0105】
A:テクスチャリング成分またはその前駆物質を添加している間の重量吸収量:
テクスチャリング材料の堆積またはその前駆物質の添加と関連する重量吸収量は、酸加熱処理前のそれぞれのモノリスについて測定され、参照モノリスの重量と関連づけられた。この重量吸収量は、含まれるテクスチャリング剤の量に相当する。
【0106】
B:酸化熱処理の間の重量吸収量
このステップに関連する重量吸収量は、酸加熱処理の間の基材とテクスチャリング剤またはその前駆物質との反応を定量化することがすることができる。
【0107】
関連する重量吸収量は、酸化熱処理後のそれぞれのモノリスで測定され、この熱処理前のモノリスの重量と関連づけられた。
【0108】
C:マトリックスを構成する材料の気孔率および曲げ強度の測定
解放気孔率は、Micromeritics社製9500ポロシメーター(porosimeter)を使用し、従来の高圧水銀ポロシメトリー(porosimetry)技術を使用して測定された。
【0109】
曲げ強度は、ISO5014標準にしたがって、支点と0.4mm/分の速度で下がるポンチとの間に40mmの距離を有する3点曲げによって室温で測定された。試料は、モノリスとして同時に焼成および押出し成形を行った棒であり、その寸法は、60×6×8mm3であった。
【0110】
D:テクスチャリングコーティングの凹凸の幾何学的特徴の測定
上記に規定されたように、粒子の表面上に存在する凹凸を特徴付けるパラメーターd、hまたはpは、堆積されたコーティングおよびモノリス上の様々な点の典型を示す一連の画像での一連の走査電子顕微鏡観察によって測定された。
【0111】
図1〜6が抜粋されたこれらの画像は、モノリス内の、横方向に割られた通気路の壁の内部構造、とくに解放気孔率の特徴的外観に対応する。
【0112】
また、モノリス上の種々の点における一連の顕微鏡写真で実行された他のSEM観察は、テクスチャリング材料によって覆われた表面積が、多孔質マトリックスルを構成する無機材料の粒子および粒界の全表面積に関連して測定されるのを可能にした。
【0113】
E:含浸後の触媒コーティング(または薄め塗膜)の量の測定
モノリスは、以下の実験手順にしたがって、触媒溶液を使用して含浸処理を受けた。
【0114】
モノリスは、欧州特許出願公開第1 338 322A1号明細書に記載されている原理にしたがって、適切な割合のH2PtCl6の形態の白金前駆物質、(窒化セリウムの形態の)酸化セリウム(CeO2)前駆物質および(窒化ジルコニウムの形態の)酸化ジルコニウム(ZrO2)前駆物質を含む水溶液槽の中に浸された。モノリスは、米国特許第5 866 210号明細書に記載されたものと同じ実施の方法を使用して溶液をしみ込まされた。表3に示される含浸溶液の装填量は、(リットル単位の)しみ込ませされたフィルターの体積で割り算された(グラム単位の)含浸溶液の量に相当する。
【0115】
その後、モノリスは約150℃で乾燥され、その後、約500℃の温度に加熱される。
【0116】
F:圧力降下の測定
上述の触媒含浸の後に得られたモノリスの圧力降下は、30m3/時間の空気の流量を有する周囲の空気の流れの中で先行技術を使用して測定された。用語「圧力降下」は、モノリスの上流側と下流側との間に存在する差異圧力であると本発明の意味の中で理解される。
【0117】
G:ライトオフ触媒性能試験
この試験は、触媒のライトオフ温度を測定することを意図された。この温度は、触媒が汚染物質ガスの50体積%を変える温度として一定のガス圧力および流量条件下で規定される。COおよびHCの転換温度は、欧州特許第1759763号明細書、とくにそれの段落33および34に記載されたものと同一の実験手順を使用してここで測定された。その測定によれば、変換温度が低くなると、触媒システムの効率がよくなる。
【0118】
モノリスから切断された約25cm3を測定する試料で試験は実行された。
【0119】
H:後エージングライトオフ触媒性能試験
モノリスは、段落Eに記載されているように触媒をしみ込ませる前であり、その後、800℃、湿り空気中、5時間の継続時間で、炉の中に配置された。空気の湿度は、水のモル濃度が3%で一定に保持されるようなものある。
【0120】
420℃におけるCO転換の程度およびHCライトオフ温度が、上記ポイントGに記載されたものと同じ実験手順を使用して、上のようにエージングが行われたそれぞれのモノリス試料で測定された。HCライトオフ温度の増加は、エージングが行われた試料におけるHCライトオフ温度とエージングが行われていない試料で測定されたものとの間の差異から計算された。これらの試験によれば、エージングが行われた試料におけるライトオフ温度が低くなるにしたがって、またはエージングによるライトオフ温度の増加が小さくなるにしたがって、触媒システムの耐エージング性が大きくなる。転換の後エージングの程度が高くなるにしたがって、触媒システムはより効果的になる。
【0121】
表2は曲げ強度の項における結果を示す。
【0122】
表3は、上述の試験による主な測定された特性を示す。
【0123】
【表2】

【0124】
【表3】

【0125】
本発明によるフィルターの表面の95%超は、テクスチャリング材料で被覆されている。したがって、それは、酸加熱処理を受けなかった例C2〜C4と異なり、ほとんど完全な被覆率を示す。
【0126】
例3、4および5のフィルターは、同等またはさらに少し低い気孔率特性に関して、比較例のものに比べて触媒コーティング(薄め塗膜)の装填の実質的により高いレベルのを示す。本発明によるフィルターによって生じる圧力降下は、本発明にテクスチャが形成されたフィルターに存在する触媒の量の著しい増加によってほとんど影響されないことは注目されるべきである。したがって、測定された圧力降下値は、濾過用途に関して非常に許容可能に維持される。
【0127】
本発明のすべてのフィルターは、比較例のものに比べてより効果的な触媒活性を示す。
【0128】
等しい量の触媒コーティングに関して、例6は、比較例C2に比べてより高い触媒性能を非常によく示し、それは、触媒のより良好な分散またはさらに浄化されるべきガスについて活性点へのより容易な接近の結果として解釈され得る。
【0129】
本発明のすべてのフィルターは、比較例のものに比べて、より高い、エージングが行われた後の触媒性能を示す。とくに、例5および6は、最良の耐エージング性値を示す。同様に、本発明によるフィルター3および4は、比較のフィルターC3およびC4に比べて、エージングが行われた後の触媒性能のより小さい減少を示す。
【0130】
さらに、本発明によるフィルターは、とくに気孔のサイズ(解放気孔率、ポアー直径)を増加させることによる濾過構造の気孔の中に存在する触媒の装填を増加させるための今まで知られていた解決策と異なり、その濾過性能をなお維持しながらすべての機械的強度特性を維持する。とくに、曲げ強度の測定は、改善された強度は、テクスチャリングによって得られ得るということを証明し、強度におけるこの改善は、酸加熱処理も受けた試料(例5および6)に関して非常に大きい。この有利な点は、フィルターの壁の厚みをさらに減少させ、触媒の装填を増加させ、および/または同等の機械強度で圧力降下を減少させることを可能にするかもしれない。
【図1】

【図2】

【図3a】

【図3b】

【図4a】

【図4b】

【図5a】

【図5b】

【図6a】

【図6b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に連結した粒子の形態の炭化ケイ素またはチタン酸アルミニウムをベースとするか、または、からなる多孔質濾過壁よって隔てられた長手方向の通気路の集まりを形成する多孔質マトリックスを含む、内燃エンジンの燃焼ガス由来の固体粒子およびガス状汚染物の処理のための触媒フィルターにおいて、
− 前記多孔質濾過壁の前記粒子および粒界は、それらの表面積の少なくとも70%にわたって、テクスチャリング材料で被覆され、前記テクスチャリングは凹凸からなり、前記凹凸の大きさは10nmと5ミクロンとの間であり、
− 触媒コーティングまたは薄め塗膜は、前記テクスチャリング材料を少なくとも部分的に被覆しており、所望により前記多孔質濾過壁の粒子を少なくとも部分的に被覆していることを特徴とするフィルター。
【請求項2】
前記テクスチャリング材料は、前記多孔質濾過壁の前記粒子および粒界の全表面積の少なくとも80%または90%被覆している請求項1に記載のフィルター。
【請求項3】
連結層は、前記テクスチャリング材料と前記濾過壁の前記粒子および粒界との間の界面に形成される請求項1または2に記載のフィルター。
【請求項4】
前記連結層は、前記濾過壁の前記粒子および粒界の組成ならびに前記テクスチャリング材料の組成と異なる化学組成を有する請求項3に記載のフィルター。
【請求項5】
前記連結層は、前記濾過壁の前記粒子および粒界の組成と前記テクスチャリング材料の組成との間に組成的勾配を有する請求項3または4に記載のフィルター。
【請求項6】
前記連結層は、少なくとも25重量%、とくに50重量%のシリカを含む請求項3〜5のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項7】
前記凹凸は、とくに棒または針状もしくは球状構造、くぼみまたはクラスターの形態で、前記多孔質壁の前記粒子および粒界の表面上の焼成または焼結された材料の微結晶または微結晶のクラスターによって形成され、
前記凹凸は、約10nmと約5ミクロンとの間、とくに100nmと2.5ミクロンとの間の平均相当直径d、および/または約10nmと約5ミクロンとの間、とくに100nmと2.5ミクロンとの間の平均高さhもしくは平均深さpを有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項8】
前記凹凸の前記平均相当直径dおよび/または前記平均高さhもしくは前記平均深さpは、前記マトリックスを構成する前記無機材料の前記粒子の平均粒径に比べて、1/2と1/1000との間で、とくに1/5と1/100との間で小さい請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項9】
前記テクスチャリング材料は、アルミノシリケートによって形成される請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルター。
【請求項10】
相互に連結した粒子の形態の炭化ケイ素またはチタン酸アルミニウムをベースとするかまたはからなる多孔質マトリックスを含み、
前記粒子および粒界は、請求項1〜9のいずれか1項に規定されているテクスチャリング材料で、前記粒子および粒界の表面積の少なくとも70%にわたって被覆される請求項1〜9のいずれか1項に記載の固体粒子およびガス状汚染物の処理のための触媒フィルターを得るための中間構造。
【請求項11】
セラミック粒子および粉末を含むペーストを作製すること、
前記ペーストで成形し、次いで乾燥し、焼成すること、
前記多孔質濾過壁の前記粒子および粒界の表面の少なくとも一部に、テクスチャリング材料または少なくとも1種のその前駆物質を堆積させること、
酸化雰囲気、とくに空気の中で、1100℃と1500℃との間の温度での酸化熱処理、および、
所望による、ガス状汚染種の処理のための触媒または触媒の前駆物質を含む溶液を使用した、テクスチャが形成されたハニカム構造の含浸を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルターまたは請求項10に記載の中間構造を得るための方法。
【請求項12】
前記テクスチャリング材料は、前記テクスチャリング材料の懸濁液またはその前駆物質の懸濁液を前記粒子および粒界の表面上に適用することによって、堆積される請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記テクスチャリング材料は、無機粒子の形態のフィラーをとくに含むゾル−ゲル溶液を適用することによって堆積され、次いで、仮焼熱処理を行う請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記ゾル−ゲル溶液は、シリカおよび/またはアルミナのゾルである請求項11〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
セラミック粒子および粉末ならびにテクスチャリング材料の少なくとも1種の前駆物質を含むペーストの作製、
前記ペーストを成形し、次いで乾燥し、焼成し、
酸化雰囲気の中での900℃と1500℃との間の温度での酸化熱処理、および
所望による、前記ガス状汚染種の処理のための触媒または触媒の前駆物質を含む溶液を使用した、テクスチャが形成されたハニカム構造の含浸を含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルターまたは請求項10に記載の中間構造を得るための方法。
【請求項16】
テクスチャリング材料の前記前駆物質は、金属、酸化物、窒化物またはオキシニトライドの形態、またはそれらの混合物のいずれか1つで、または固溶体もしくは合金で、アルミニウムおよび/またはケイ素を含む請求項11〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ディーゼルまたはガソリンエンジンの排気ラインにおける請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルターの使用。

【公表番号】特表2011−527938(P2011−527938A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517983(P2011−517983)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際出願番号】PCT/FR2009/051421
【国際公開番号】WO2010/007324
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(310009890)サン−ゴバン サントル ドゥ ルシェルシェ エ デトゥードゥ ユーロペン (24)
【Fターム(参考)】