説明

計器の駆動装置

【課題】 実際の計器の接続状況に応じた機能の実行あるいは設定ができ、アフターメータシステム全体としての利便性を向上させることが可能な計器の駆動装置を提供する。
【解決手段】 複数種類の計器2,3を駆動可能な計器の駆動装置である。各計器2,3と双方向通信可能に設けられ、各計器2,3との通信結果によって各計器2,3が接続されているか否かを判断する接続確認機能を有する制御ユニット1を備えてなる。制御ユニット1は、前記接続確認機能として、各計器2,3に接続確認要求メッセージを送信し、各計器2,3から接続確認応答メッセージを受信した場合に各計器2,3が接続されていると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のコンビネーションメータとは別に設けられる回転計,吸気圧計及び排気温度計等の計器の駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の計器としては、速度計,回転計(タコメータ),温度計や燃料計がケース体に収納された既存のコンビネーションメータとは別に、ダッシュボードやインストルメントパネル(インパネ)等に取り付けられるアフターメータと称される計器が知られている。このアフターメータとしては、例えば、単一のアナログ式表示部をケース内に収納し、車両の単一の車両情報(例えば、エンジン回転数)を表示する計器や発光ディスプレイを有し、前記車両情報をデジタル表示する計器がある。このような計器は、サーキットレース場等を走行する競技車両等や、ターボ等の過給器付きエンジンを搭載した車両等に搭載されることが多い。かかる計器の種類としては、エンジンの回転数を監視する回転計,エンジンの吸気圧を監視する吸気圧計,排気ガスの排気温度を監視する排気温度計,エンジンオイルの温度を監視する油温計あるいはエンジンオイルの圧力を監視する油圧計等がある。
【0003】
また、本願出願人は、複数配置されることが想定されるアフターメータの駆動装置として、特許文献1に開示される計器の駆動装置を提案している。特許文献1にて提案される計器の駆動装置は、車両情報に応じた複数の状態信号を入力可能とする入力ポートを備え、複数の前記状態信号に応じた各計測データを求める単一のコントロールユニットを設け、このコントロールユニットと前記各計器との間を前記コントロールユニットにより生成されるシリアルデータによって通信してなるもので、計器を複数配設する場合であっても取付作業を簡素化し、かつダッシュボードやインパネ回りの美観を損ねることなく、前記各計器を取り付けることが可能となるものである。
【特許文献1】特開平10−183523号公報
【特許文献2】特開平10−206444号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のアフターメータ及びその駆動装置においては、前記コントロールユニットと前記各計器との間は前記コントロールユニットから一方向的に前記シリアルデータが送信されるのみであって、利用者の好みや車両の特性などに応じて適宜複数種類の前記計器がダッシュボードあるいはインパネ上に配設されることが想定されるアフターメータにあって、実際に前記コントロールユニットに接続される前記計器に応じた各種機能の実行あるいは設定を行うことができないという問題点があった。例えば、前記計器のうち回転計に関して車両によって異なるエンジンの気筒数を設定する気筒数設定機能があるが(例えば特許文献2参照)、従来では回転計の接続の有無に関わらず気筒数設定を実行する気筒数設定モードへの移行がなされてしまい、スイッチ操作が煩雑となるという問題点があった。また、吸気圧を表示するアナログ式の吸気圧計としては過給器付きエンジン搭載車(ターボ車)に用いられるターボ計(例えば表示範囲が−100kPa〜200kPa)と自然吸気型エンジン搭載車(NA車)用のインテークマニホールドプレッシャー計(バキューム計と称される場合もある。例えば表示範囲が−100kPa〜20kPa)とがある。車両情報が設定値以上(あるいは設定値以下)となったことを報知するワーニング機能において、吸気圧に関して前記設定値の初期設定が例えばターボ計を基準になされていると(例えば100kPa)、正圧表示範囲が小さいインテークマニホールドプレッシャー計が接続された場合には初期設定される前記設定値が表示範囲の最大値を超える値であり、前記設定値を表示しながら前記設定値の調整を行うワーニング設定モードにおいて指針が振り切った状態となるため利用者が故障と誤解するおそれがあり、また、前記設定値を調整する際にスイッチ操作を長時間行う必要があってスイッチ操作が煩雑となり、更なる改善の余地があった。
【0005】
本発明は、前述の問題点に鑑み、複数種類の計器が配置されることが想定されるアフターメータの駆動装置を更に改善し、実際の計器の接続状況に応じた機能の実行あるいは設定ができ、アフターメータシステム全体としての利便性を向上させることが可能な計器の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、複数種類の計器を駆動可能な計器の駆動装置であって、前記各計器と双方向通信可能に設けられ、前記各計器との通信結果によって前記各計器が接続されているか否かを判断する接続確認機能を有する制御ユニットを備えてなることを特徴とする。
【0007】
また、前記制御ユニットは、前記接続確認機能として、前記各計器に接続確認要求メッセージを送信し、前記各計器から接続確認応答メッセージを受信した場合に前記各計器が接続されていると判断することを特徴とする。
【0008】
また、前記制御ユニットは、前記各計器が接続されているか否かの判断結果に基づいて、前記各計器に関する機能の実行を許可するあるいは前記機能の設定を行うことを特徴とする。
【0009】
また、前記制御ユニットは、前記機能として回転計の気筒数設定機能を有し、前記接続確認機能において前記計器として回転計が接続されていると判断される場合に前記気筒数設定機能の実行を許可することを特徴とする。
【0010】
また、前記制御ユニットは、前記機能として吸気圧が設定値以上であることを報知するワーニング機能を有し、前記接続確認機能において前記計器としてターボ計が接続されていると判断される場合には前記設定値を第一の設定値とし、前記計器としてインテークマニホールドプレッシャー計が接続されていると判断される場合には前記設定値を前記第一の設定値よりも小さい第二の設定値とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、車両用のコンビネーションメータとは別に設けられる回転計,吸気圧計及び排気温度計等の計器の駆動装置に関するものであり、実際の計器の接続状況に応じた機能の実行あるいは設定ができ、アフターメータシステム全体としての利便性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。図1及び図2を用いて計器の駆動装置の全体構成を説明する。計器の駆動装置は、図1に示すように、コントロールユニット(制御ユニット)1と、第一の計器2と、第二の計器3と、操作スイッチ4と、から主に構成されている。
【0013】
コントロールユニット1は、主にマイクロコンピュータからなり、車両情報を示す各状態信号を入力するA/D変換部と、所定の処理動作プログラムを実行するCPUと、前記処理動作プログラム等が記憶されたROMと、前記CPUにより処理されたデータ等を一時的に記憶するRAMと、パラレルデータをシリアルデータに変換するパラレル・シリアル変換部(P/S変換部)と、各種の設定を不揮発的に記憶するEEPROMやバックアップRAM等からなる記憶部と、を備える。また、コントロールユニット1は、前記シリアルデータを所定の周期により送信する送信部と、第一,第二の計器2,3からの後述する接続確認応答メッセージを受信する受信部と、を有し、第一,第二の計器2,3と双方向通信可能に設けられている。なお、コントロールユニット1と第一,第二の計器2,3とはコントロールユニット1からのシリアルデータを転送する多重伝送通信線を含む配線部材5を介して接続されている。本実施形態においてコントロールユニット1からの前記シリアルデータは、配線部材5を介して第一の計器2→第二の計器3の順に伝達される。コントロールユニット1は、コントロールユニット1で駆動可能な各計器が接続されているか否かを判断する接続確認機能を有する。
【0014】
コントロールユニット1は、前記車両情報を示す前記各状態信号を入力すると、前記各状態信号に応じて所定の演算処理を行い前記車両情報の各計測データを算出する。また、コントロールユニット1は、通常動作モードにおいては、計器の機種を識別するためのID(認識番号)コード及び前記各計測データであるパラレルデータをシリアルデータに変換し、第一,第二の計器2,3の制御手段2a,3aに送信する。
【0015】
第一,第二の計器2,3は、図1及び図2に示すように、制御手段2a,3aと、アナログ式の表示部2b,3bと、発光素子2c,3cと、をそれぞれケース体内に収納してなるアナログ式の計器である。
【0016】
制御手段2a,3aは、マイクロコンピュータからなり、コントロールユニット1によって送信される前記シリアルデータを受信し前記シリアルデータに基づいて表示部2b,3bを制御するものである。なお、制御手段2a,3aは、配線部材5を介して他の計器と接続可能な接続部を備え、複数の車両用計器を互いに接続して前記シリアルデータで通信可能となっている。
【0017】
発光素子2c,3cは、例えばLEDからなり、点灯あるいは点滅することで車両情報が所定値以上(あるいは所定値以下)であること,配線の断線あるいはショートまたは通信エラー等の警告情報を報知する発光表示部を構成するものである。
【0018】
操作スイッチ4は、例えば複数の押しボタンスイッチやスライドスイッチ等を有し、各種操作に応じた操作信号をコントロールユニット1に出力し、コントロールユニット1に備えられる各種計器に関する機能の選択や実行等の操作を行うためのものである。
【0019】
以上の各部によって計器の駆動装置が構成されている。
【0020】
次に、図3を用いて前述の接続確認機能における制御方法について説明する。
【0021】
コントロールユニット1は、電源が投入されると、ステップS1において各種計器の接続確認情報の初期化を実行する。
【0022】
次にコントロールユニット1は、ステップS2において、図4に示すように各計器の機種を識別するIDコードを示す変数Nに「1」を代入する(N=1)。
【0023】
次にコントロールユニット1は、ステップS3において、IDコード=Nである計器がコントロールユニット1に接続されているか否かを判断する。ステップS3の判断に際し、コントロールユニット1は、まずIDコード=Nである計器にアンサーバックを求める接続確認要求メッセージを送信する。前記接続確認要求メッセージは配線部材5を介して実際にコントロールユニット1に接続される計器(本実施形態においては第一,第二の計器2,3)に送信される。IDコード=Nである計器は、前記接続確認要求メッセージを受信するとアンサーバックとして接続確認応答メッセージをコントロールユニット1に送信する。コントロールユニット1は、接続部材4を介して前記接続確認応答メッセージが受信される場合はIDコード=Nである計器が接続されていると判断し、前記接続確認応答メッセージが受信されない場合はIDコード=Nである計器が接続されていないと判断する。
【0024】
コントロールユニット1は、ステップS3においてIDコード=Nである計器が接続されていると判断した場合にステップS4に移行し、IDコード=Nである計器に関する接続情報を「ON(接続あり)」に設定する。
【0025】
また、コントロールユニット1は、ステップS3においてIDコード=Nである計器が接続されていないと判断した場合にステップS5に移行し、IDコード=Nである計器に関する接続情報を「OFF(接続なし)」に設定する。
【0026】
次にコントロールユニット1は、ステップS6において、変数Nに「N+1」を代入する(N=N+1)。
【0027】
次にコントロールユニット1は、ステップS7において、変数Nが最大値(本実施形態においては「9」)より大きいか否かを判断する。コントロールユニット1は、ステップS7において変数Nが最大値以下である場合はステップS3に移行して計器の接続確認を継続し、変数Nが最大値よりも大きい場合は全ての機種の計器に関して接続情報の設定が終了したと判断できるためステップS8に移行する。
【0028】
コントロールユニット1は、ステップS8において、前記接続情報に基づいた状態遷移の選択を行う。
【0029】
この状態遷移の選択の1つとして、コントロールユニット1は、回転計(IDコード=3)についての前記接続情報に応じて回転計に関する機能である気筒数設定機能の実行を許可するか否かを選択する。具体的には、コントロールユニット1は、回転計についての前記接続情報が「ON」に設定されている場合は、操作スイッチ4の所定操作に応じて前記気筒数設定機能を実行する気筒数設定モードへ移行する。この気筒数設定モードにおいて、コントロールユニット1は例えば回転計に選択される気筒数に応じた指示表示させ、操作スイッチ4の所定操作に応じて気筒数の設定を変更する。また、回転計についての前記接続情報が「OFF」に設定されている場合は、コントロールユニット1は操作スイッチ4によって前記気筒数設定モードへの移行を行うための操作の入力があっても前記気筒数設定モードへの移行を行わない。かかる処理によって、従来のように実際に回転計がコントロールユニット1に接続されていない場合に誤って前記気筒数設定モードへ移行することを防止することができ、利便性が向上する。なお、コントロールユニット1は、車両情報を含む各種情報を表示可能なマルチディスプレイ(IDコード=9)を計器として接続可能である。コントロールユニット1は、マルチディスプレイについての前記接続情報が「ON」に設定されている場合には、前記気筒数設定モードにおいて、選択される気筒数を回転計による指示表示に代えてマルチディスプレイに表示させる。
【0030】
また、状態遷移の選択の1つとして、コントロールユニット1は、車両情報が設定値以上(車両情報によっては設定値以下)である場合に報知部(本実施形態で示すものとしては発光素子2c,3c)を点滅あるいは点灯させるワーニング機能において、吸気圧計であるターボ計(IDコード=1)及びインテークマニホールドプレッシャー計(IDコード=2)についての前記接続情報に応じて吸気圧の設定値の設定を行う。すなわち、コントロールユニット1は、ターボ計についての前記接続情報が「ON」に、インテークマニホールドプレッシャー計についての前記接続情報が「OFF」に設定されている場合は、前記設定値をターボ計に対応する第一の設定値(例えば初期値が100kPa)とする。また、コントロールユニット1は、ターボ計についての前記接続情報が「OFF」に、インテークマニホールドプレッシャー計についての前記接続情報が「ON」に設定されている場合は、前記設定値をインテークマニホールドプレッシャー計に対応する第二の設定値(例えば初期値が10kPa)とする。前記第二の設定値は、少なくともその初期値が前記第一の設定値の初期値よりも小さく設定されるものである。また、ターボ計についての前記接続情報とインテークマニホールドプレッシャー計についての前記接続情報とが両者とも「ON」に設定されている場合、あるいは両者とも「OFF」に設定されている場合は、コントロールユニット1は前記設定値を前記第一の設定値とする。なお、コントロールユニット1は、操作スイッチ4の所定操作に応じてワーニング設定モードに移行する。前記ワーニング設定モードにおいて、コントロールユニット1は計器に前記設定値を表示させるとともに操作スイッチ4の入力に応じて前記設定値を調整する。かかる処理によって、吸気圧計として実際に接続される計器の種別に対応した前記設定値を選択することができ、従来のように利用者が故障と間違うことがなく、また、前記設定値を適正な数値に調整する操作を長時間行う必要がないため、利便性を向上させることができる。
【0031】
本実施形態の計器の駆動装置は、コントロールユニット1に各計器が接続されているか否かを判断する前記接続確認機能を備えることによって、実際の計器の接続状況に応じた各機能の実行あるいは設定を行うことができ、操作を簡素化してアフターメータシステム全体としての利便性を向上させることが可能となる。
【0032】
なお、本実施形態においては、コントロールユニット1と第一,第二の計器2,3は配線部材5によって有線接続されるものであったが、本発明は、制御ユニットと各計器とを無線接続する計器の駆動装置であっても適用可能であり、本実施形態と同様にアフターメータシステム全体としての利便性を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態の計器の駆動装置の構成を示すブロック図。
【図2】同上計器の駆動装置における計器の構成を示すブロック図。
【図3】同上計器の駆動装置における制御方法を示すフローチャート図。
【図4】同上計器の駆動装置におけるIDコードの一覧表を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1 コントロールユニット(制御ユニット)
2 第一の計器
2a 制御手段
2b 表示部
2c 発光素子
3 第二の計器
3a 制御手段
3b 表示部
3c 発光素子
4 操作スイッチ
5 配線部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の計器を駆動可能な計器の駆動装置であって、
前記各計器と双方向通信可能に設けられ、前記各計器との通信結果によって前記各計器が接続されているか否かを判断する接続確認機能を有する制御ユニットを備えてなることを特徴とする計器の駆動装置。
【請求項2】
前記制御ユニットは、前記接続確認機能として、前記各計器に接続確認要求メッセージを送信し、前記各計器から接続確認応答メッセージを受信した場合に前記各計器が接続されていると判断することを特徴とする請求項1に記載の計器の駆動装置。
【請求項3】
前記制御ユニットは、前記各計器が接続されているか否かの判断結果に基づいて、前記各計器に関する機能の実行を許可するあるいは前記機能の設定を行うことを特徴とする請求項1に記載の計器の駆動装置。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記機能として回転計の気筒数設定機能を有し、前記接続確認機能において前記計器として回転計が接続されていると判断される場合に前記気筒数設定機能の実行を許可することを特徴とする請求項3に記載の計器の駆動装置。
【請求項5】
前記制御ユニットは、前記機能として吸気圧が設定値以上であることを報知するワーニング機能を有し、前記接続確認機能において前記計器としてターボ計が接続されていると判断される場合には前記設定値を第一の設定値とし、前記計器としてインテークマニホールドプレッシャー計が接続されていると判断される場合には前記設定値を前記第一の設定値よりも小さい第二の設定値とすることを特徴とする請求項3に記載の計器の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−113545(P2010−113545A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−285881(P2008−285881)
【出願日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】