説明

計測システム及び記録装置

【課題】計測データの記録処理及び表示処理に関するパフォーマンスを最大限に発揮しつつ、バッファオーバーランの発生を防止する。
【解決手段】計測データをアクイジションメモリに格納する機能及び前記計測データを波形描画するための表示データを生成する機能を有する計測装置と、一定の記録周期毎に前記計測データを取得して記録する機能及び表示更新周期毎に前記表示データを取得して波形描画を行う機能を有する情報処理装置とを具備する計測システムであって、前記情報処理装置は、今回の記録周期において計測データの取得から記録完了までに要した記録処理時間と、前回の記録周期において表示データの取得から波形描画完了までに要した表示処理時間とに基づいて、次回以降の記録周期における記録処理時間が記録周期内に収まるように前記表示更新周期を決定する表示更新周期決定手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧、温度等のアナログ信号を計測(デジタル変換)し、その計測データをハードディスク等の記録媒体にリアルタイムに保存する計測システム及び記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図6(a)は、従来の波形計測システムの構成概略図である。この図6(a)に示すように、従来の波形計測システムは、例えばデジタルオシロスコープ等の計測装置10と、この計測装置10と通信ケーブル30を介して接続されたPC(Personal Computer)等の情報処理装置20とから構成されている。なお、通信ケーブル30は、例えばUSB(Universal Serial Bus)ケーブルやEthernet(登録商標)ケーブル等である。
【0003】
このような波形計測システムにおいて、計測装置10は、外部入力される電圧や温度等のアナログ信号を所定のサンプルレートでサンプリングしてデジタル変換し、そのデジタルデータ(計測データ)を内部に設けられたアクイジションメモリにリアルタイムに格納する機能(アクイジション機能)及び計測データを波形描画するための表示データ(PP圧縮データ)を生成する機能を有している。一方、情報処理装置20は、通信ケーブル30を介して計測装置10のアクイジションメモリから計測データ及び表示データを読み出し、計測データを内部に設けられたハードディスク等の記録媒体にリアルタイムに記録すると共に、表示データを基にモニタ画面上において波形描画を行う機能を有している。
【0004】
図6(b)は、情報処理装置20の機能ブロック図である。この図6(b)に示すように、情報処理装置20は、通信部21、記録データ管理部22、記録部23、表示データ管理部24及び表示部25から構成されている。通信部21は、通信ケーブル30を介して計測装置10との設定データや計測データ、表示データの送受信を行うためのインタフェースとして機能する。記録データ管理部22は、一定の記録周期毎に、計測装置10内のアクイジションメモリに格納された計測データを通信部21を介して取得し、バッファ用メモリに取り込む。
【0005】
記録部23は、記録データ管理部22にてバッファ用メモリに取り込まれた計測データをハードディスク等の記録媒体に記録する。この時の記録データサイズは、サンプリングインターバルや計測チャネル数等の条件によって変化する。表示データ管理部24は、計測装置10にて生成された表示データを通信部21を介して取得してバッファ用メモリに取り込む。表示部25は、表示データ管理部24にてバッファ用メモリに取り込まれた表示データを基にモニタ画面上において波形描画を行う。
【0006】
図7は、従来の情報処理装置20における計測データの記録及び表示波形の更新時の動作を表すフローチャートである。この図7に示すように、まず、記録データ管理部22は、通信部21を介して計測装置10から計測データを取得し、バッファ用メモリに取り込む(ステップS10)。そして、記録部23は、バッファ用メモリに取り込まれた計測データをハードディスク等の記録媒体に記録する(ステップS11)。
【0007】
計測データの記録完了後、表示データ管理部24は、予め設定されている表示更新周期が経過したか否かを判定し(ステップS12)、表示更新周期が経過した場合(Yes)、通信部21を介して計測装置10から表示データを取得し、バッファ用メモリに取り込む(ステップS13)。そして、表示部25は、バッファ用メモリに取り込まれた表示データを基にモニタ画面上において波形描画を行う(ステップS14)。一方、ステップS12において、表示更新周期が経過していない場合(No)、ステップS13、S14の処理は実行されず、表示波形の更新は行われない。
以上のようなステップS10〜S14が記録周期毎に繰り返されることにより、計測データを受信する毎に表示波形の更新が逐次行われる。
【0008】
図8に、計測データの記録及び表示波形の更新時のタイミングチャートを示す。図8において、記録処理時間には、計測装置10から情報処理装置20への計測データの転送時間とハードディスクへの記録時間が含まれる。また、表示処理時間には、表示データの転送時間とモニタ画面上での波形描画時間が含まれる。図8(a)は、一定の記録周期に対して記録処理と表示処理とが十分間に合っている場合を示しており、図8(b)は、サンプルレートを高速に設定したり、或いは計測チャネル数を増やしたこと等により計測データ量が増大(記録処理時間が増大)し、記録周期よりも記録処理時間と表示処理時間との合計時間の方が長くなってしまった場合を示している。
【0009】
図8(b)からわかるように、計測データ量が増大し、記録周期よりも記録処理時間と表示処理時間との合計時間の方が長くなってしまった場合、記録周期が到来しても前回の記録周期にて実行された表示処理が終了するまで記録処理を開始することができず、その記録周期内で行われるべき記録処理が次回の記録周期にずれこんで実行されることになる。この場合、計測装置10側のアクイジション処理に対して情報処理装置20側の記録処理が間に合わない状態となり、アクイジションメモリのバッファオーバーラン(アクイジションメモリ内の読み出し未完了データが書き込みデータによって上書きされてしまう現象)が発生し、連続的な記録動作ができなくなる。なお、記録処理時間や表示処理時間の長さは、計測データ量だけでなく、計測装置10と情報処理装置20との間の通信回線状況(データ転送時間)にも依存する。
【0010】
従来では、上記のようなバッファオーバーランの発生を考慮し、図9に示すような表示更新周期の設定画面を情報処理装置20のモニタ画面上に表示し、計測条件に見合った表示更新周期の設定をユーザに促すような機能を設けている。つまり、計測データ量が増大しているような状態では、記録周期毎に表示処理が行われないように表示更新周期を長く設定することにより、バッファオーバーランの発生を防止していた。
【特許文献1】特開平5−312601号公報
【特許文献2】特開2002−267508号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のように、従来では、バッファオーバーランの発生を防止するために、ユーザが表示更新周期を設定していた。しかしながら、その表示更新周期の設定値が現在のシステム状態(計測データ量や通信回線状況など)に適した値であるかどうかを、ユーザが正確に判断することは極めて困難であり、情報処理装置20が有する記録処理及び表示処理のパフォーマンスを最大限に発揮することができていなかった。
なお、上記従来技術では、計測装置10と情報処理装置20とから構成される波形計測システムを例示して説明したが、両者の機能を有するオールインワンの記録装置においても同様の問題が発生する(この場合、データ転送は行われないため、記録処理時間や表示処理時間の長さはデータ転送時間に依存しない)。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、計測データの記録処理及び表示処理に関するパフォーマンスを最大限に発揮しつつ、バッファオーバーランの発生を防止することが可能な計測システム及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明では、計測システムに係る第1の解決手段として、計測データをアクイジションメモリに格納する機能及び前記計測データを波形描画するための表示データを生成する機能を有する計測装置と、一定の記録周期毎に前記計測データを取得して記録する機能及び表示更新周期毎に前記表示データを取得して波形描画を行う機能を有する情報処理装置とを具備する計測システムであって、前記情報処理装置は、今回の記録周期において計測データの取得から記録完了までに要した記録処理時間と、前回の記録周期において表示データの取得から波形描画完了までに要した表示処理時間とに基づいて、次回以降の記録周期における記録処理時間が記録周期内に収まるように前記表示更新周期を決定する表示更新周期決定手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、計測システムに係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記情報処理装置は、前記記録周期毎に前記計測装置のアクイジションメモリから計測データを取得すると共に、当該計測データの転送時間を計測する記録データ管理手段と、前記記録データ管理手段にて取得された計測データを所定の記録媒体に記録すると共に、当該記録処理に要した記録時間を計測する記録手段と、前記表示更新周期毎に前記計測装置から表示データを取得すると共に、当該表示データの転送時間を計測する表示データ管理手段と、前記表示データ管理手段にて取得された表示データを基に表示画面上にて波形描画を行うと共に、当該波形描画処理に要した波形描画時間を計測する表示手段と、を備え、前記表示更新周期決定手段は、今回の記録周期において計測された前記計測データの転送時間及び前記記録時間の合計時間を、今回の記録周期における前記記録処理時間とし、前回の記録周期において計測された前記表示データの転送時間及び前記波形描画時間の合計時間を、前回の記録周期における前記表示処理時間とすることを特徴とする。
【0015】
また、計測システムに係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記表示更新周期決定手段は、前記記録周期TREC、前記表示処理時間T、前記記録処理時間Tから成る下記演算式(1)に基づいて、前記表示更新周期TRDを算出することを特徴とする。
RD=TREC・{T/(TREC−T)} ・・・・(1)
【0016】
また、記録システムに係る第4の解決手段として、上記第3の解決手段において、前記表示更新周期決定手段は、前記表示更新周期TRD、前記表示処理時間T、前記記録処理時間Tから成る下記演算式(2)に基づいて、前記情報処理装置の記録処理及び表示処理に関する負荷量Lを算出し、前記表示手段は、前記表示更新周期決定手段にて算出された負荷量Lを表示することを特徴とする。
L={(T+T)/TRD}・100 (%) ・・・・(2)
【0017】
さらに、本発明では、記録装置に係る解決手段として、計測データをアクイジションメモリに格納する機能と、一定の記録周期毎に前記アクイジションメモリから計測データを取得して所定の記録媒体に記録する機能と、表示更新周期毎に記録済みの計測データを波形描画するための表示データを生成して波形描画を行う機能とを有する記録装置であって、今回の記録周期において計測データの取得から記録完了までに要した記録処理時間と、前回の記録周期において表示データの生成から波形描画完了までに要した表示処理時間とに基づいて、次回以降の記録周期における記録処理時間が記録周期内に収まるように前記表示更新周期を決定する表示更新周期決定手段を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、今回の記録周期において計測された記録処理時間と、前回の記録周期において計測された表示処理時間とに基づいて、次回以降の記録周期における記録処理時間が記録周期内に収まるように表示更新周期を決定するため、記録データ量が増大するなどして記録処理時間と表示処理時間とが変化した場合は、それらの処理時間に応じて表示更新周期を動的に変更することができ、その結果、計測データの記録処理及び表示処理に関するパフォーマンスを最大限に発揮しつつ、バッファオーバーランの発生を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る計測システム及び記録装置及びの一実施形態について説明する。
〔計測システム〕
図1(a)は、本実施形態に係る計測システムの構成概略図である。この図1(a)に示すように、本実施形態に係る計測システムは、例えばデジタルオシロスコープ等の計測装置10と、この計測装置10と通信ケーブル30を介して接続されたPC(Personal Computer)等の情報処理装置40とから構成されている。なお、図1(a)において、計測装置10及び通信ケーブル30は、図6(a)に示す従来の計測システムと同様であるので詳細な説明は省略し、以下では従来の計測システムと異なる部分について説明する。
【0020】
図1(b)は、情報処理装置40の機能ブロック図である。この図1(b)に示すように、情報処理装置40は、通信部41、記録データ管理部(記録データ管理手段)42、記録部(記録手段)43、表示データ管理部(表示データ管理手段)44、表示部(表示手段)45及び表示更新周期決定部(表示更新周期決定手段)46から構成されている。
【0021】
通信部41は、通信ケーブル30を介して計測装置10との設定データや計測データ、表示データの送受信を行うためのインタフェースとして機能する。記録データ管理部42は、一定の記録周期毎に、計測装置10内のアクイジションメモリに格納された計測データを通信部41を介して取得すると共に、当該計測データの転送時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部46に出力する。記録部43は、記録データ管理部42にて取得された計測データをハードディスク等の記録媒体に記録すると共に、当該記録処理に要した記録時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部46に出力する。
【0022】
表示データ管理部44は、表示データの取得開始タイミングの周期を示す表示更新周期に従って計測装置10から表示データを取得すると共に、当該表示データの転送時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部46に出力する。表示部45は、表示データ管理部44にて取得された表示データを基にモニタ画面上において波形描画を行うと共に、当該波形描画処理に要した波形描画時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部46に出力する。
【0023】
表示更新周期決定部46は、記録部43による計測データの記録完了後に、今回の記録周期において計測された計測データの転送時間及び記録時間の合計時間である記録処理時間と、前回の記録周期において計測された表示データの転送時間及び波形描画時間の合計時間である表示処理時間とに基づいて、次回以降の記録周期における記録処理時間が記録周期内に収まるように表示更新周期を決定する。具体的には、この表示更新周期決定部46は、記録周期TREC、表示処理時間T、記録処理時間Tから成る下記演算式(1)に基づいて表示更新周期TRDを算出し、その算出結果を表示データ管理部44に出力する。
RD=TREC・{T/(TREC−T)} ・・・・(1)
【0024】
続いて、上記のように構成された情報処理装置40における計測データの記録及び表示波形の更新時の動作について図2のフローチャートを参照して説明する。
図2に示すように、まず、記録データ管理部42は、通信部41を介して計測装置10から計測データを取得すると共に、当該計測データの転送時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部46に出力する(ステップS20)。そして、記録部43は、記録データ管理部42にて取得された計測データをハードディスク等の記録媒体に記録すると共に、当該記録処理に要した記録時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部46に出力する(ステップS21)。
【0025】
続いて、表示更新周期決定部46は、記録部43による計測データの記録完了後に、今回の記録周期において計測された計測データの転送時間及び記録時間の合計時間である記録処理時間と、前回の記録周期において計測された表示データの転送時間及び波形描画時間の合計時間である表示処理時間(この前回の記録周期における表示処理時間は内部メモリに格納されている)とを基に、上記演算式(1)から表示更新周期TRDを算出し、その算出結果を表示データ管理部44に出力する(ステップS22)。
【0026】
表示データ管理部44は、表示更新周期決定部46にて算出された表示更新周期TRDが経過したか否かを判定し(ステップS23)、表示更新周期TRDが経過した場合(Yes)、通信部41を介して計測装置10から表示データを取得すると共に、当該表示データの転送時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部46に出力する(ステップS24)。この時、表示更新周期決定部46は、表示データの転送時間を内部メモリに格納する。
【0027】
そして、表示部45は、表示データ管理部44にて取得された表示データを基にモニタ画面上において波形描画を行うと共に、当該波形描画処理に要した波形描画時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部46に出力する(ステップS25)。この時、表示更新周期決定部46は、波形描画時間を内部メモリに格納する。
一方、ステップS23において、表示更新周期TRDが経過していない場合(No)、ステップS24、S25の処理は実行されず、表示波形の更新は行われない。
以上のようなステップS20〜S25が記録周期毎に繰り返されることにより、計測データがリアルタイムに記録される。
【0028】
図3に、計測データの記録及び表示波形の更新時のタイミングチャートを示す。図3では、1回目の記録周期TREC(1)において、計測データ量が増大することにより、記録処理時間T(1)が長くなり、表示処理時間T(1)が2回目の記録周期TREC(2)にずれ込んでしまった場合を例示している。このような場合、図3に示すように、従来技術では、3回目の記録周期TREC(3)で実行される記録処理が、4回目の記録周期TREC(4)にずれ込んでしまい、計測装置10側でバッファオーバーランが発生してしまう。
【0029】
一方、本実施形態では、2回目の記録周期TREC(2)において、記録処理時間T(2)を計測した後、この記録処理時間T(2)と、前回の記録周期TREC(1)において計測した表示処理時間T(1)とを基に、次回以降の記録周期(つまり3回目の記録周期TREC(3)以降)における記録処理時間が記録周期内に収まるように表示更新周期TRDを決定(算出)する。このように算出された表示更新周期TRDに従って表示データ管理部44は表示データの取得を行うため、例えば図3に示すように、2回目の記録周期TREC(2)では表示処理は行われず、3回目の記録周期TREC(3)における記録処理完了後に2回目の表示処理(表示波形の更新)が行われる。このように、本実施形態では記録処理のずれ込みが発生せず、バッファオーバーランも発生しない。
【0030】
4回目の記録周期TREC(4)以降は、記録処理時間と表示処理時間とが変化しない限り表示更新周期TRDは変化せず、2回の記録処理に対して1回の表示処理の割合で計測データの記録及び波形表示の更新が行われることになる。さらに、記録処理時間と表示処理時間とが変化した場合は、それらの処理時間に応じて表示更新周期TRDは動的に変更されるため、システム状態(計測データ量や通信回線状況など)に拘わらず、計測データの記録処理及び表示処理に関するパフォーマンスを最大限に発揮しつつ、バッファオーバーランの発生を防止することが可能となる。
【0031】
なお、上記実施形態では、記録処理時間及び表示処理時間に応じて表示更新周期を動的に変更するのみであったが、これら記録処理時間、表示処理時間及び表示更新周期に基づいて記録処理及び表示処理に関する負荷量を算出する機能を表示更新周期決定部46に持たせ、この算出された負荷量を表示する機能を表示部45に持たせても良い。具体的には、表示更新周期TRD、表示処理時間T、記録処理時間Tから成る下記演算式(2)に基づいて、記録処理及び表示処理に関する負荷量Lを算出する。
L={(T+T)/TRD}・100 (%) ・・・・(2)
【0032】
図4は、上記のように算出した負荷量Lをバーグラフ表示した例を示すものである。このように負荷量Lを表示することにより、ユーザは計測データの記録処理及び表示処理に関するパフォーマンスを定量的且つ直感的に把握することが可能となる。
【0033】
〔記録装置〕
次に、上述した計測システムにおける計測装置10及び情報処理装置40の両方の機能を有するオールインワンの記録装置について説明する。図5は、本実施形態に係る記録装置100の機能ブロック図である。この図5に示すように、本実施形態に係る記録装置100は、計測部101、アクイジションメモリ102、記録データ管理部103、記録部104、表示データ管理部105、表示部106及び表示更新周期決定部107から構成されている。
【0034】
計測部101は、外部から入力される電圧や温度等のアナログ信号を計測するものであり、この外部入力されるアナログ信号を予め設定されたサンプルレートでA/D変換し、量子化されたデジタルデータ(計測データ)と、当該計測データの書き込みアドレスとをアクイジションメモリ102に出力する。アクイジションメモリ102は、計測部101から入力される書き込みアドレスによって指定されたメモリ領域に計測データをリアルタイムに格納する一方、記録データ管理部103から入力される読み出しアドレスによって指定されたメモリ領域に格納されているデータを記録データ管理部103に出力する。
【0035】
記録データ管理部103は、一定の記録周期毎に、読み出しアドレスを出力してアクイジションメモリ102から計測データを取得すると共に、当該計測データの取得時間を計測して、その計測結果を表示更新周期決定部107に出力する。記録部104は、記録データ管理部103にて取得された計測データをハードディスク等の記録媒体に記録すると共に、当該記録処理に要した記録時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部107に出力する。
【0036】
表示データ管理部105は、表示データの生成開始タイミングの周期を示す表示更新周期に従って、記録媒体に記録されている計測データを波形描画するための表示データを生成すると共に、当該表示データの生成時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部107に出力する。表示部106は、表示データ管理部105にて生成された表示データを基にモニタ画面上において波形描画を行うと共に、当該波形描画処理に要した波形描画時間を計測し、その計測結果を表示更新周期決定部107に出力する。
【0037】
表示更新周期決定部107は、記録部104による計測データの記録完了後に、今回の記録周期において計測された計測データの取得時間及び記録時間の合計時間である記録処理時間と、前回の記録周期において計測された表示データの生成時間及び波形描画時間の合計時間である表示処理時間とに基づいて、次回以降の記録周期における記録処理時間が記録周期内に収まるように表示更新周期を決定する。具体的には、この表示更新周期決定部107は、上記演算式(1)に基づいて表示更新周期TRDを算出し、その算出結果を表示データ管理部105に出力する。
【0038】
以上のように、本実施形態に係る記録装置100は、上述した計測システムと比較して、記録処理時間が計測データの取得時間及び記録時間の合計時間に替わり、また、表示処理時間が表示データの生成時間及び波形描画時間の合計時間に替わったのみであり、計測データの記録及び表示波形の更新時における動作は計測システムと同一の動作を採用することができる。従って、動作に関しては詳細な説明を省略するが、本実施形態に係る記録装置100によれば、上述した計測システムと同様に、計測データの記録処理及び表示処理に関するパフォーマンスを最大限に発揮しつつ、バッファオーバーランの発生を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施形態に係る計測システムの構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る計測システムにおける情報処理装置40の動作を表すフローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係る計測システムにおける情報処理装置40の動作を表すタイミングチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係る計測システムにおける情報処理装置40の負荷量Lの表示例である。
【図5】本発明の一実施形態に係る記録装置100の機能ブロック図である。
【図6】従来における計測システムの構成図である。
【図7】従来における計測システムの情報処理装置20の動作を表すフローチャートである。
【図8】従来における計測システムの情報処理装置20の動作を表すタイミングチャートである。
【図9】従来における計測システムの表示更新周期の設定画面である。
【符号の説明】
【0040】
10…計測装置、40…情報処理装置、41…通信部、42…記録データ管理部、43…記録部、44…表示データ管理部、45…表示部、46…表示更新周期決定部、100…記録装置、101…計測部、102…アクイジションメモリ、103…記録データ管理部、104…記録部、105…表示データ管理部、106…表示部、107…表示更新周期決定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測データをアクイジションメモリに格納する機能及び前記計測データを波形描画するための表示データを生成する機能を有する計測装置と、一定の記録周期毎に前記計測データを取得して記録する機能及び表示更新周期毎に前記表示データを取得して波形描画を行う機能を有する情報処理装置とを具備する計測システムであって、
前記情報処理装置は、今回の記録周期において計測データの取得から記録完了までに要した記録処理時間と、前回の記録周期において表示データの取得から波形描画完了までに要した表示処理時間とに基づいて、次回以降の記録周期における記録処理時間が記録周期内に収まるように前記表示更新周期を決定する表示更新周期決定手段を備えることを特徴とする計測システム。
【請求項2】
前記情報処理装置は、
前記記録周期毎に前記計測装置のアクイジションメモリから計測データを取得すると共に、当該計測データの転送時間を計測する記録データ管理手段と、
前記記録データ管理手段にて取得された計測データを所定の記録媒体に記録すると共に、当該記録処理に要した記録時間を計測する記録手段と、
前記表示更新周期毎に前記計測装置から表示データを取得すると共に、当該表示データの転送時間を計測する表示データ管理手段と、
前記表示データ管理手段にて取得された表示データを基に表示画面上にて波形描画を行うと共に、当該波形描画処理に要した波形描画時間を計測する表示手段と、を備え、
前記表示更新周期決定手段は、今回の記録周期において計測された前記計測データの転送時間及び前記記録時間の合計時間を、今回の記録周期における前記記録処理時間とし、前回の記録周期において計測された前記表示データの転送時間及び前記波形描画時間の合計時間を、前回の記録周期における前記表示処理時間とすることを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項3】
前記表示更新周期決定手段は、前記記録周期TREC、前記表示処理時間T、前記記録処理時間Tから成る下記演算式(1)に基づいて、前記表示更新周期TRDを算出することを特徴とする請求項1または2に記載の計測システム。
RD=TREC・{T/(TREC−T)} ・・・・(1)
【請求項4】
前記表示更新周期決定手段は、前記表示更新周期TRD、前記表示処理時間T、前記記録処理時間Tから成る下記演算式(2)に基づいて、前記情報処理装置の記録処理及び表示処理に関する負荷量Lを算出し、
前記表示手段は、前記表示更新周期決定手段にて算出された負荷量Lを表示することを特徴とする請求項3記載の計測システム。
L={(T+T)/TRD}・100 (%) ・・・・(2)
【請求項5】
計測データをアクイジションメモリに格納する機能と、一定の記録周期毎に前記アクイジションメモリから計測データを取得して所定の記録媒体に記録する機能と、表示更新周期毎に記録済みの計測データを波形描画するための表示データを生成して波形描画を行う機能とを有する記録装置であって、
今回の記録周期において計測データの取得から記録完了までに要した記録処理時間と、前回の記録周期において表示データの生成から波形描画完了までに要した表示処理時間とに基づいて、次回以降の記録周期における記録処理時間が記録周期内に収まるように前記表示更新周期を決定する表示更新周期決定手段を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−281872(P2009−281872A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134398(P2008−134398)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】