説明

計測システム

【課題】 移動体の位置やタイムを計測するシステムに係り、システムを簡素化することを課題とする。
【解決手段】 移動体には、送信機1が取り付けられ、所定の周波数の無変調波を含む質問電波を送信する。所定の位置に設定された無線タグ2は、質問電波に応じて、自らの固有の無線タグIDで変調して、応答電波として送信する。無線タグの近傍に設置されている漏洩ケーブルあるいはスプリットライン3は、無線タグから受信した応答電波の受信データを伝送し、受信システム4は、受信データに含まれる変調波を復調して無線タグIDを取得し、この無線タグの位置により移動体の位置を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置やタイムを計測するシステムに係り、システムの構成を簡素化する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図23は、従来技術に係る位置計測システムの概要を示す図である。従来、移動体の位置やタイムを計測するシステムで、無線タグ(RFIDタグ:Radio Frequency Identification tag)を利用する場合には、床や壁に埋め込まれた無線タグの無線タグID1002を移動体側のリーダライタ1001で読み取り、無線LANを介してそのデータを移動体側の無線機1003から無線LAN等を介して受信システム1005へ送信することによって、受信システム1005側に移動体の位置を知らせていた。
【0003】
しかし、このような計測システムの場合には、以下のような問題点がある。
・同一無線タグエリア内に複数の移動体が存在する場合には、リーダライタが混信する可能性がある。
・無線装置のチャネル数(回線数)に限りがあるので、多くの移動体について同時に位置を把握することができない。
・移動体側の取り付け部品(リーダライタ、無線装置など)が多く、更にこれらに係る消費電力も大きく、容量の大きい電源が必要となる。
【特許文献1】特開平11−224400号公報
【特許文献2】特開2004−005467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した従来技術の欠点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、移動体の位置やタイムを計測する計測システムに係り、所定位置に設置された無線タグの近傍に設けた漏洩ケーブル又はストリップラインを介して、無線タグからのデータを受信することにより、移動体側の無線装置を不要にし、システムの構成を簡素化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
無変調波を含む質問電波を送信する送信機を取り付けた移動体の位置を計測する計測システムであって、以下の要素を有することを特徴とする計測システム
(1)所定の位置に設置され、送信機からの質問電波を受信して、当該質問電波に含まれる無変調波を自らの固有の無線タグIDで変調して、当該変調波を含む応答電波を送信する複数の無線タグ
(2)複数の無線タグからの応答電波を受信できる範囲に設置され、無線タグから受信した応答電波の受信データを伝送する応答電波受信用ケーブル
(3)応答電波受信用ケーブルと接続され、応答電波受信用ケーブルから前記受信データを入力した場合に、受信データに含まれる変調波を復調して無線タグIDを取得し、取得した無線タグIDにより無線タグの位置を特定し、当該位置に基づいて移動体の位置を判定する受信システム。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、移動体の位置やタイムを計測するシステムにおいて、システム構成を軽減することができ、特に移動体側の装置を軽量化することができる。また、空間伝播と比較して減衰量が小さい漏洩ケーブルを用いることにより、移動体と受信システム間の距離を伸ばすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
以下本発明を図面に示す実施例に基づいて説明する。図1は、実施の形態1に係る位置計測システムの概要を示す図である。本発明に係る位置計測システムは、送信機1、無線タグ2、漏洩ケーブル又はストリップライン3、及び受信システム4から構成されている。
【0008】
送信機1は、移動体に装着されており、所定の周波数の電波を送出するように構成されている。移動体の識別は、送信機に割り当てた周波数による場合と、送信機からデータ(ID番号、コマンドなど)を変調させた送信信号による場合とが考えられる。本実施の形態では、送信機に割り当てた周波数による識別の例について後述する。
【0009】
また、走路側には、床や壁などの所定の位置に無線タグ2群が設置され、更に、それらの無線タグの近傍を通るように漏洩ケーブル又はストリップライン3が設置される。無線タグ2群が設置される位置関係は、通常一定間隔であると想定されるが、無線タグ2の位置が把握できていれば、必ずしも一定間隔である必要はない。また、無線タグと漏洩ケーブル(又はストリップライン)を別々に設置する必要はなく、漏洩ケーブル(又はストリップライン)に、直接的あるいは保持体を介して間接的に無線タグを貼りつけ、一体として構成したケーブル(又はライン)を床や壁に設置するようにしてもよい。また、作業手順としては、予め計画された位置に無線タグを設置してもよいし、無線タグを設置した後に、その位置を計測するようにしてもよい。
【0010】
受信システム4は、受信機5と追跡装置6を備えている。受信機5は、漏洩ケーブル又はストリップライン3と接続しており、受信データを入力し、計測データを出力するように構成されている。受信システム4は、計測データに従って、移動体の位置を追跡するように構成されている。尚、この例では、受信機5と追跡装置6を分けたが、一体として構成しても構わない。
【0011】
動作の概要を説明する。送信機1より無線タグ2に、無線タグ2が動作する周波数の電波を送出し、無線タグ2は、これに応じて自らの無線タグIDで変調して変調波を送出する。漏洩ケーブル又はストリップライン3でこれを受信し、受信信号が受信機5に伝えられる。受信機5は、受信信号を復調し、無線タグIDを特定する。また、追跡装置6で送信機IDを特定し、無線タグの設置マップ(本実施例では、無線タグテーブルに相当する。)に従って、当該送信機の位置を判定する。
【0012】
図2は、実施の形態1に係る各信号状態を示す図である。本実施の形態では、送信機1毎に異なる発信周波数が予め割り当てられており、各送信機1は、それぞれに割り当てられた個別の周波数で無変調波を連続して送信する。図2の201は、無変調波連続送信の状態を示している。
【0013】
無線タグ2は、送信機1からの無変調波を受信した時点で、自らの無線タグIDで変調して、送信する。図2で、送信機Aが移動するに従って、無線タグ(ID:No.19)と無線タグ(ID:No.20)が,順次、変調部分を加えた電波を送出している(202,203)。従って、受信機5では、204に示す信号レベルを入力する。尚、本実施の形態では、後述するように送信機の識別を周波数により行う。
【0014】
続いて、各装置の構成と動作について詳述する。
【0015】
まず、送信機1について説明する。図3は、送信機の構成を示す図である。送信機1は、発振器301、制御回路302、送信回路303、及び送信アンテナ304を備えている。発振器301は、クロック信号を出力し、制御回路302は、送信回路303を制御し、送信回路303に、クロック信号に基づいて、予め設定されている周波数のキャリア信号を生成させる。送信アンテナ304は、このキャリア信号を電波として送出する。この無変調波が、質問電波となる。
【0016】
本実施の形態では、制御回路302は、送信機に割り当てられている周波数のキャリア信号の生成を送信回路303に指示し、更にその生成による送出状態を維持するように送信回路303を制御している。
【0017】
次に、無線タグ2について説明する。図4は、無線タグの構成を示す図である。無線タグ2は、送受信アンテナ401、受信回路402、整流回路403、制御回路404、メモリ405、及び送信回路406を備えている。送受信アンテナ401で質問電波を受信し、受信回路402は、キャリア信号を検出すると、クロック信号を生成する。整流回路403は、受信した質問電波を整流し、電力に変換する。制御回路404は、電力が供給されると、動作を開始する。クロック信号を入力すると、メモリ405に記憶されている無線タグIDを読み出す。送信回路406は、送受信アンテナ401で受信した質問電波をキャリア信号として、無線機タグIDを変調する。送受信アンテナ401は、この変調波を電波として送出する。この変調波が、応答電波となる。
【0018】
漏洩ケーブルとしては、例えば、移動体無線用の漏洩同軸ケーブルが用いられ、アンテナとケーブルの機能を備えている。また、ストリップラインも、同様にアンテナとケーブルの機能を備えることができる。従って、漏洩ケーブル又はストリップライン3は、応答電波を受信し、受信データを伝送することができる。漏洩ケーブルとストリップラインは、複数の無線タグからの応答電波を受信できる範囲(近傍)に設置され、無線タグから受信した応答電波の受信データを伝送する応答電波受信用ケーブルの例である。
【0019】
図5は、受信機の構成を示す図である。受信機5は、受信回路501、タイマ502、及びインターフェース503を備えている。受信回路501は、漏洩ケーブル又はストリップライン3で受信した受信データを入力し、内部の帯域通過フィルタを通過させ、受信データを復調する。これにより、無線タグIDを取得することができる。また、受信回路501は周波数も特定する。インターフェース503は、タイマから時刻を取得し、計測時刻とする。そして、無線タグIDと周波数と計測時刻を計測データとして、追跡装置6へ出力する。
【0020】
図6は、実施の形態1に係る追跡装置のモジュール構成を示す図である。追跡装置6は、計測データ入力部601、位置判定部602、無線タグテーブル603、送信機判定部604、送信機デーブル605、追跡処理部606、及び追跡データ記憶部607を備えている。
【0021】
図7は、実施の形態1に係る追跡装置の処理フローを示す図である。計測データ入力部601による計測データ入力処理(S701)では、受信機5から計測データを入力する。この実施の形態では、計測データとして、無線タグIDと周波数と計測時刻を取得する。位置判定部602による位置判定処理(S702)では、無線タグテーブル603を用いて、無線タグIDに対応する無線タグの設置位置を特定する。
【0022】
図8は、無線タグテーブルの例を示す図である。無線タグテーブル603は、無線タグ毎にレコードを設け、無線タグIDと無線タグ設置位置を対応付けて記憶している。無線タグ設置位置は、緯度経度のような絶対的な座標、基準点からの相対的な座標、あるいは基準点からの方位と距離など、位置を特定できる情報であれば足りる。
【0023】
位置判定部602は、計測データに含まれる無線タグIDと一致する無線タグIDを有するレコードを検索し、当該レコードの無線タグ設置位置を取得する。そして、この無線タグ設置位置に基づいて計測位置を特定し、出力する。無線タグ設置位置をそのまま計測位置として扱う方式の他に、無線タグで受信できる範囲が広い場合には、その範囲のうち、移動体が接近してくる方向に近い領域を計測位置とする方式なども考えられる。
【0024】
送信機判定部604による送信機判定処理(S703)では、送信機テーブル605を用いて、周波数に対応する送信機IDを特定する。
【0025】
図9は、送信機テーブルの例を示す図である。送信機テーブル605は、送信機毎にレコードを設け、送信機IDと周波数を対応付けて記憶している。
【0026】
送信機判定部604は、計測データに含まれる周波数に相当する周波数を有するレコードを検索し、当該レコードの送信機IDを取得する。そして、この送信機IDを出力する。
【0027】
追跡処理部606による追跡処理(S704)では、計測データ毎に、送信機IDと計測位置と計測時刻の組み合わせを入力して、送信機の一連の移動を追跡する処理を行う。その際に、追跡データ記憶部607に記憶している追跡データに基づいて移動先を推測する処理や、特定した計測位置等を追跡データとして追跡データ記憶部607に追加して記憶させる処理などを行う。
【0028】
以上説明したように本実施の形態の計測システムでは、無線タグの近傍に設けた漏洩ケーブル又はストリップラインを介して、無線タグからのデータを受信し、受信システムに受信データ伝送するため、移動体側の無線装置が不要となり、移動体側の装置を軽量化することができる。
【0029】
実施の形態2.
実施の形態1では、送信機1から連続して無変調波を送出したが、本実施の形態では、送信機1から無変調波を断続的に送出する形態について説明する。送信機の識別は、実施の形態1と同様に周波数で行う。
【0030】
図10は、実施の形態2に係る各信号状態を示す図である。1001に示すように、所定の周波数の無変調波を、停止間隔を設けながら、繰り返し送出する。無線タグ2は、実施の形態1と同様に、キャリア信号を検出すると自身の無線タグIDで変調して、変調波を送出する(1002,1003)。その結果、受信機5では1004に示すような信号レベルを入力する。
【0031】
送信機1は、実施の形態1と同様に図3の構成を有し、制御回路302は、送信機に割り当てられている周波数のキャリア信号の生成を送信回路303に指示するが、キャリア信号の生成による送出状態と、同生成を中断する停止状態を繰り返すように送信回路303を制御する。送出状態は、通常一定の間隔となる。停止状態も、一定の間隔だけ維持するように制御した場合には、一定間隔の間欠送信となる。停止状態を、一定でないランダムの間隔だけ維持するように制御した場合には、ランダム間隔の送信となる。ランダム間隔送信の場合には、複数の送信機からの質問電波が通信衝突を起こすような場合でも衝突を繰り返すような事態を回避できる点で有利である。
【0032】
無線タグ2、漏洩ケーブル又はストリップライン3、受信システム4、及び受信機5については、実施の形態1と同様の構成を有し、同様の動作を行う。
【0033】
実施の形態3.
実施の形態1及び2では、送信機1毎に割り当てられている周波数により、送信機1を識別する形態について説明したが、実施の形態3及び4では、送信機1で自らの送信機IDを変調して質問電波に含める形態について説明する。送信機IDの変調部分から送信機IDを特定するので、周波数による送信機の識別は必要ない。つまり、送信機1毎に異なる周波数を用いる必要はなく、各送信機1で共通の周波数を用いても構わない。
【0034】
図11は、実施の形態3に係る位置計測システムの概要を示す図である。送信機1は、周波数fの質問電波の一部に、自らの送信機IDを変調した変調波を含めて送出する。無線タグ2は、質問電波の無変調波部分を自らの無線タグIDで変調し、変調波として送出する。受信機5は、入力した受信データを復調して、送信機IDと無線タグIDを取得する。
【0035】
図12は、実施の形態3に係る各信号状態を示す図である。図13は、実施の形態3に係る信号の詳細を示す図である。図13の上段は質問電波であり、図に示すように、質問電波の前方部分(T1)は、無変調波であり、後方部分(T2)が、送信機IDで変調した変調波となる。そして、図13の下段は応答電波であり、図に示すように、応答電波の前方部分は無線タグIDで変調され変調波となる。(T3)。
【0036】
このように、質問電波と応答電波を構成することにより、図12のように信号が転送される。通信衝突が生じた場合には、衝突に係る当該データは処理対象外となる。従って、通信衝突防止のために、送信機からの送信は、実施の形態2と同様に一定間隔又はランダム間隔で断続的に行われる。
【0037】
送信機1については実施の形態3と同様に、図3に示す制御回路302より、所定の周波数(一般には各送信機1で共通の周波数)のキャリア信号の生成を送信回路303に指示し、送出状態と停止状態を繰り返すように送信回路303を制御する。更に、送出状態の後部分(T2)で、送信回路303が、送信機1に含まれるメモリ(図3では、図示せず)から、予め記憶させてある送信機IDを読み出し、この送信機IDで変調するように、制御回路302は送信回路303を制御する。
【0038】
無線タグ2は、前述の実施の形態と同様の構成である。その為、キャリア信号を検出した時点で、無線タグIDで変調し、変調波部分(T3)となるが、送信機IDの変調波部分(T2)は、そのまま送出される(T5)。
【0039】
受信機5は、図5の構成を有し、受信回路501で受信データの復調を行い、前方の変調波部分(T3)から無線タグIDを取得し、後方の変調波部分(T5)から送信機IDを取得する。インターフェース503は、タイマから時刻を取得し、計測時刻とし、無線タグIDと送信機IDと計測時刻を計測データとして、追跡装置6へ出力する。
【0040】
図14は、実施の形態3に係る追跡装置のモジュール構成を示す図である。図15は、実施の形態3に係る追跡装置の処理フローを示す図である。追跡装置6では、計測データとして、周波数の代わりに、送信機IDが含まれるので、送信機判定部604による送信機判定の処理は不要になる。追跡処理部606は、計測データに含まれる送信機IDを用いて追跡処理(S1503)を行う。
【0041】
実施の形態4.
実施の形態3と同様に、送信機1が自らの送信機IDで変調して質問電波に含める形態について説明する。但し、実施の形態3と異なり、送信機IDの変調波は送信機IDとコマンドによって構成され、質問電波の前方部分に設けられる。また、無線タグは、前述の実施の形態と異なり、質問電波に含まれる変調波からコマンドを検出した時点で、自らの無線タグIDでの変調を行う。
【0042】
図16は、実施の形態4に係る各信号状態を示す図である。図17は、実施の形態4に係る信号の詳細を示す図である。図17の上段は質問電波であり、図に示すように、質問電波の前方部分(T6)は、送信機IDとコマントとで変調された変調波であり、後方部分(T7)が、無変調波となる。このコマンドは、無線タグ2に対して、自身の無線タグIDで変調した変調波を送出するように指示するコマンドである。そして、図17の下段は応答電波であり、図に示すように応答電波の後方部分が無線タグIDで変調され、変調波となる(T10)。
【0043】
このように、質問電波と応答電波を構成することにより、図16のような信号状態となる。通信衝突が生じた場合には、衝突に係る当該データは処理対象外となる。従って、通信衝突防止のために、送信機からの送信は、実施の形態2や実施の形態3と同様に一定間隔又はランダム間隔で断続的に行われる。
【0044】
送信機1については実施の形態3や実施の形態4と同様に、図3に示す制御回路302より、所定の周波数(一般には各送信機1で共通の周波数)のキャリア信号の生成を送信回路303に指示し、送出状態と停止状態を繰り返すように送信回路303を制御する。更に、送出状態の前方部分(T6)で、送信回路303が、送信機1に含まれるメモリ(図3では、図示せず)から、予め記憶させてある送信機IDを読み出し、この送信機IDと前述のコマンドで変調するように、制御回路302は送信回路303を制御する。
【0045】
本実施の形態の無線タグ2は、キャリア信号を検出した時点ではなく、前述コマンドを検出した時点で、無線タグIDで変調する。従って、前述の実施の形態と同様に図4に示す構成からなるが、動作が異なる。送受信アンテナ401で質問電波を受信し、整流回路403は、受信した質問電波を整流し、電力に変換する。受信回路402は、受信信号を検出すると、キャリア信号に基づいてクロック信号を生成する。また、受信信号を復調する。制御回路404は、復調した結果からコマンドを検出すると、メモリ405に記憶されている無線タグIDを読み出す。送信回路406は、送受信アンテナ401で受信した質問電波をキャリア信号として、無線タグIDで変調を行う。送受信アンテナ401は、この変調波を電波として送出する。尚、質問電波の変調波部分が終了するまでは、受信した質問電波を変調することなく、そのまま送出する。
【0046】
その結果、図17に示すように、送信機IDの変調波部分(T6)は、そのまま送出されるが(T8)、無変調波部分(T7)が無線タグIDで変調された変調波部分(T10)となる。
【0047】
受信機5は、図5の構成を有し、受信回路501で受信データの復調を行い、前方の変調波部分(T8)から送信機IDを取得し、後の変調波部分(T10)から無線タグIDを取得する。インターフェース503は、タイマから時刻を取得し、計測時刻とし、無線タグIDと送信機IDと計測時刻を計測データとして、追跡装置6へ出力する。
【0048】
追跡装置6は、実施の形態3と同様の構成を有し、同様に動作する。
【0049】
実施の形態5.
実施の形態5から実施の形態7では、無線タグ2と漏洩ケーブル又はストリップライン3の配置の例を示す。図18は、無線タグと漏洩ケーブル(ストリップライン)の第一配置例を示す図である。陸上競技・スピードスケート・競輪などでは、図に示すように走行コースに沿って、無線タグ2と漏洩ケーブル又はストリップライン3を配置することが有効である。走行者が自由に走行ラインを変更できる競技の場合には、ラインの変更も把握できる。
【0050】
実施の形態6.
図19は、無線タグと漏洩ケーブル(ストリップライン)の第二配置例を示す図である。駐車場、倉庫、工場等で、車両や荷物の位置を特定する場合に応用できる。
【0051】
実施の形態7.
上述のように、走行方向に沿って設置する以外に、走行方向と直角に設置することもできる。
【0052】
図20は、無線タグと漏洩ケーブル(ストリップライン)の第三配置例を示す図である。この例では、鍵型に連続して配置することにより、一本のケーブルで二次元的な領域をカバーしている。
【0053】
実施の形態8.
本発明では、以上説明してきた実施の形態に基づき、従来に比較して移動体と受信システム間の距離を伸ばすことができる。従来に比較して、移動体・受信システム間において、どの程度通信距離を延伸できるかを、図21と図24を用いて検討する。
【0054】
まず、従来技術について、回線設計を行う。図24は、従来技術に係る回線を示す図である。各符号の意味は、以下の通りである。
Ptx :リーダライタ送信出力
Prx :リーダライタ受信入力
Pi :タグ受信入力
Po :タグ反射出力
Grw :リーダライタ空中線利得
Gtag :タグ空中線利得
D :タグ・リーダライタ間距離
PLtag:タグ内電力損失
Mtag :タグ変調度
空間減衰量αは、次式で表される。
α=20×log(λ/4πD)
タグ受信レベルPiは、次式で表される。
Pi=Ptx+Grw+α+Gtag
タグ送信レベルPoは、次式で表される。
Po=Pi−PLtag+20×log(Mtag)
受信機受信レベルは、次式で表される。
Prx=Po+Gtag+α+Grw
従って、
Prx=Ptx−PLtag+20×log(Mtag)+2×(Grw+α+Gtag)
となる。
【0055】
一方、本発明に係る回線設計を行う。図21は、本発明に係る回線を示す図である。空間減衰量α、タグ受信レベルPi、及びタグ送信レベルPoは、従来技術と同様である。
【0056】
受信機受信レベルPrxは、次式で表される。
Prx=Po+Gtag+β+γ
従って、
Prx=Ptx−PLtag+20×log(Mtag)+2×Gtag+Grw+α+β+γ
となる。
【0057】
一般的な900MHz帯のRFIDの無線タグを例に、従来技術と本発明との通信距離を比較する。リーダライタ(本発明では、送信機)と無線タグ間の最大通信距離を5m程度と想定する。空間減衰量α=45.5dBとなる。そこで、リーダライタ空中線利得を2dBとすると
Grw+α=−43.5dB
となる。
【0058】
次に通信距離を算出する。従来技術の場合、受信システムで移動体を把握できる距離は、受信システムの無線機と移動体側の無線機との無線方式や性能によって決まるが、例えば無線LANで約100m、特定小電力データ通信で約100m、PHS子機間通信で約100m程度である。このことから、無線タグ・受信システム間の通信距離は、約105m(無線タグ・移動体間5m+移動体・受信システム間100m)となる。
【0059】
一方、本発明の通信距離は、移動体側の送信機と、無線タグを介した漏洩ケーブル間の通信距離を上述と同様に5m程度と想定すると、無線タグ密着時の無線タグと漏洩ケーブル間の結合損失が−30dB(実験値)であり、漏洩ケーブル減衰量が−6dB/100m(一般的な値)として、上記Grw+αと同じ利得となるように換算すると、通信距離は、230m(移動体・無線タグ間5m+無線タグ・受信システム間225m)となる。このように、通信距離は、従来技術が105m程度であったのに対して、本発明では230m程度まで延伸できることがわかる。言い換えれば、受信システムは、230m程度先の移動体の位置を計測することができる。
【0060】
尚、上述の追跡装置は、コンピュータであり、各要素はプログラムにより処理を実行することができる。また、プログラムを記憶媒体に記憶させ、記憶媒体からコンピュータに読み取られるようにすることができる。
【0061】
図22は、追跡装置のハードウェア構成を示す図である。バスに、演算装置2201、データ記憶装置2202、メモリ2203、通信インターフェース2204が接続されている。データ記憶装置2202は、例えばROM(Read Only Memory)やハードディスクである。メモリ2203は、通常RAM(Random Access Memory)である。通信インターフェース2204は、受信機との通信の為に用いられる。
【0062】
プログラムは、通常データ記憶装置2202に記憶されており、メモリ2203にロードされた状態で、順次演算装置2201に読み込まれ処理を行う。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】実施の形態1に係る位置計測システムの概要を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る信号状態を示す図である。
【図3】送信機の構成を示す図である。
【図4】無線タグの構成を示す図である。
【図5】受信機の構成を示す図である。
【図6】実施の形態1に係る追跡装置のモジュール構成を示す図である。
【図7】実施の形態1に係る追跡装置の処理フローを示す図である。
【図8】無線タグテーブルの例を示す図である。
【図9】送信機テーブルの例を示す図である。
【図10】実施の形態2に係る信号状態を示す図である。
【図11】実施の形態3に係る位置計測システムの概要を示す図である。
【図12】実施の形態3に係る信号状態を示す図である。
【図13】実施の形態3に係る信号の詳細を示す図である。
【図14】実施の形態3に係る追跡装置のモジュール構成を示す図である。
【図15】実施の形態3に係る追跡装置の処理フローを示す図である。
【図16】実施の形態4に係る信号状態を示す図である。
【図17】実施の形態4に係る信号の詳細を示す図である。
【図18】無線タグと漏洩ケーブル(ストリップライン)の第一配置例を示す図である。
【図19】無線タグと漏洩ケーブル(ストリップライン)の第二配置例を示す図である。
【図20】無線タグと漏洩ケーブル(ストリップライン)の第三配置例を示す図である。
【図21】本発明に係る信号レベルを示す図である。
【図22】追跡装置のハードウェア構成を示す図である。
【図23】従来技術に係る位置計測システムの概要を示す図である。
【図24】従来技術に係る信号レベルを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 送信機、2 無線タグ、3 漏洩ケーブル又はストリップライン、4 受信システム、5 受信機、6 追跡装置、301 発振器、302 制御回路、303 送信回路、304 送信アンテナ、401 送受信アンテナ、402 受信回路、403 整流回路、404 制御回路、405 メモリ、406 送信回路、501 受信回路、502 タイマ、503 インターフェース、601 計測データ入力部、602 位置判定部、603 無線タグテーブル、604 送信機判定部、605 送信機デーブル、606 追跡処理部、607 追跡データ記憶部、2201 演算装置、2202 データ記憶装置、2203 メモリ、2204 通信インターフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無変調波を含む質問電波を送信する送信機を取り付けた移動体の位置を計測する計測システムであって、以下の要素を有することを特徴とする計測システム
(1)所定の位置に設置され、送信機からの質問電波を受信して、当該質問電波に含まれる無変調波を自らの固有の無線タグIDで変調して、当該変調波を含む応答電波を送信する複数の無線タグ
(2)複数の無線タグからの応答電波を受信できる範囲に設置され、無線タグから受信した応答電波の受信データを伝送する応答電波受信用ケーブル
(3)応答電波受信用ケーブルと接続され、応答電波受信用ケーブルから前記受信データを入力した場合に、受信データに含まれる変調波を復調して無線タグIDを取得し、取得した無線タグIDにより無線タグの位置を特定し、当該位置に基づいて移動体の位置を判定する受信システム。
【請求項2】
無線タグは、受信した質問電波を整流し、電力に変換し、変換した電力により制御されることを特徴とする請求項1記載の計測システム。
【請求項3】
応答電波受信用ケーブルは、漏洩ケーブル又はストリップラインであることを特徴する請求項1または2に記載の計測システム。
【請求項4】
送信機は、送信機毎に固有の周波数の質問電波を送信するものであって、
受信システムは、送信機とその送信機の固有の周波数とを対応付けて記憶しており、入力した前記受信データの周波数に対応する送信機を、計測対象の送信機として特定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の計測システム。
【請求項5】
送信機は、質問電波に、自らの送信機IDを変調した変調波を含めるものであって、
受信システムは、受信データに含まれる変調波を復調して送信機IDを取得し、取得した送信機IDにより計測対象の送信機として特定することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の計測システム。
【請求項6】
送信機は、前記変調の際に、自らの送信機IDに加えて、変調波送出を無線タグに指示するコマンドで変調するものであって、
無線タグは、受信した質問電波を復調して前記コマンドを取得した場合に、前記応答電波に含める変調波の変調を行うことを特徴とする請求項5記載の計測システム。
【請求項7】
移動体の位置を計測する計測システムであって、以下の要素を有することを特徴とする計測システム
(1)移動体に取り付けられ、無変調波を含む質問電波を送信する送信機
(2)所定の位置に設置され、送信機からの質問電波を受信して、当該質問電波に含まれる無変調波を自らの固有の無線タグIDで変調して、当該変調波を含む応答電波を送信する複数の無線タグ
(3)複数の無線タグからの応答電波を受信できる範囲に設置され、無線タグから受信した応答電波の受信データを伝送する応答電波受信用ケーブル
(4)応答電波受信用ケーブルと接続され、応答電波受信用ケーブルから前記受信データを入力した場合に、受信データに含まれる変調波を復調して無線タグIDを取得し、取得した無線タグIDにより無線タグの位置を特定し、当該位置に基づいて移動体の位置を判定する受信システム。
【請求項8】
無変調波を含む質問電波を送信する送信機を取り付けた移動体の位置を計測する為に、無線タグからの変調波を含む応答電波を受信できる範囲に設置された応答電波受信用ケーブルに接続する受信システムであって、以下の要素を有することを特徴とする受信システム
(1)受信データを復調して無線タグIDを取得する受信回路
(2)無線タグIDと、当該無線タグが設置されている位置とを対応付けて記憶している無線タグテーブル
(3)受信回路で取得した無線タグIDに対応する前記無線タグ設置位置に基づいて、移動体の計測位置を判定する位置判定部。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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