説明

計測装置及び計測方法

【課題】計測する個々の経過時間に対応させてビットを有効に活用することを実現すること。
【解決手段】本発明に係る計測装置1は、基点からの経過時間を計測するタイマ計測部2a(計測手段)と、最下位ビットに対応する基準時間を基準ビット数の基準時間情報により設定する基準時間管理部2b(設定手段)と、タイマ計測部2aの計測した計測結果を、経過時間の想定される想定最大値と基準時間の最大値に照らして定められる所定ビット数の時間情報により記憶する異常情報管理部2c(記憶手段)と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車、トラック、バス等の車両に適用して好適な計測装置及び計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の車両においては、車両における様々な機能を実現するための車載機器を、それぞれの車載機器に対応するECU(Electronic Control Unit)等の電子制御装置が制御している。このような電子制御装置の車両における搭載数は、車載機器の電子制御化が進むにつれて増大する傾向にあり、搭載数の増大に伴って車載機器及び電子制御装置の故障診断の必要性も増大する。
【0003】
故障診断は個々の電子制御装置で行う場合が多く、実際に何れかの箇所において異常が検出され故障が発生した場合には、担当する電子制御装置が故障診断装置として機能し、発生した故障内容を含む所謂ダイアグコードに故障発生時間を加えて記憶している。
【0004】
この記憶された情報に基づいて、例えば故障が発生した車両をユーザがディーラーに入庫させ、車両のCAN(Controller Area Network)等の通信規格の外部プラグにダイアグツールを接続して、故障発生時間を含むダイアグコードを読み出すことが行われる。
【0005】
読み出した後においては、ダイアグコードに含まれる故障内容と発生時間を解析して、部品交換又は修理等の適切な処置が行われる。これとともに、故障記録内容をデータベース化して一元化し、車両の設計にフィードバックすることが行われることもある。
【0006】
このように故障診断を有効にかつ短時間に実行するためには、時間情報を計測し記憶することが必須の要件であり、電子制御装置それぞれにおいてある基点からの経過時間を計測する必要が生じる。経過時間を計測することは例えば特許文献1に記載のタイマなどで一般的に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−41014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
実際の故障診断において必要とされる経過時間は、個々の故障のケースにより数msecから数ヶ月までといった幅広い時間となり、これらの幅広い時間をもれなく記憶するためには、大きな数値を扱えるタイマが必須なものとなる。
【0009】
例えば計測対象となる期間が3ヶ月である場合には、経過時間は3ヶ月=90日=2160時間=129600分となり、1分を最下位ビット(LSB:Least Significant Bit)に対応する基準時間に設定すれば129600=1FA40(16進数)となり、タイマのサイズを17ビットとする必要がある。
【0010】
ところが、大きな数値を扱えるタイマを用いることは、経過時間が短い場合にはタイマの上位ビットが無駄なものとなる。例えば30分を測定する場合には、30=1E(16進数)のため上記基準時間を1分とすると、使用されるタイマのビットは下位の5ビットのみで上位12ビット分が無駄となる。
【0011】
経過時間が数ヶ月と長い場合にはクロック誤差の存在に伴って下位ビットが活用できずやはり無駄なものとなるという問題が生じる。例えば3ヶ月測定する場合で仮に誤差が0.1%とすると、3ヶ月×0.1%=129.6(10進数)=81(16進数)で下位の8ビットは活用できないこととなる。すなわち従来技術においては、意図する経過時間に対応させてビットを有効に活用することが実現できていないという課題があった。
【0012】
本発明は、上記問題に鑑み、故障診断のための計測対象として意図する個々の経過時間に対応させてビットを有効に活用することができる計測装置及び計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の問題を解決するため、本発明に係る計測装置は、
基点からの経過時間を計測する計測手段と、
最下位ビットに対応する基準時間を基準ビット数の基準時間情報により設定する設定手段と、
前記計測手段の計測した計測結果を、前記経過時間の想定される想定最大値と前記基準時間の最大値に照らして定められる所定ビット数の時間情報により記憶する記憶手段と、
を含むことを特徴とする。
【0014】
前記計測装置によれば、前記想定最大値よりも前記基準ビット数と前記所定ビット数の和を小さくすることができる。例えば、前記基準ビット数を2ビットとした場合、前記設定手段により前記基準時間を1分→2分→4分→8分とすることで、前記所定ビット数を14ビットとすることができ、想定ビット数である17ビットに対してビット数を1だけ減らすことができる。もちろん、2進数でなく3進数以上で構成することもできる。
【0015】
さらに、前記計測装置によれば、前記経過時間が短い場合には、前記基準時間を短く設定することで上位ビットの無駄を削減し、前記経過時間が長い場合には、前記基準時間を長く設定することで、誤差により発生する下位ビットの無駄を削減することができる。
【0016】
ここで、前記計測装置において、
前記経過時間の増加に応じて前記設定手段が前記基準時間情報を変更することが好ましい。
【0017】
この場合、前記経過時間の増加を、前記記憶手段が含む所定ビット数のタイマのオーバーフローにより検知しても良いし、前記経過時間そのものにより検知しても良い。
【0018】
また、前記計測装置においては、
車両状態に応じて前記設定手段が前記基準時間情報を変更しても良い。
【0019】
ここで、前記車両状態とは、例えば、車両走行中、停車中、駐車中等の区別を指す。
【0020】
上記の問題を解決するため、本発明に係る計測方法は、
基点からの経過時間を計測する計測ステップと、
最下位ビットに対応する基準時間を基準ビット数の基準時間情報により設定する設定ステップと、
前記計測ステップにおいての計測した計測結果を、前記経過時間の想定される想定最大値と前記基準時間の最大値に照らして定められる所定ビット数の時間情報により記憶する記憶ステップと、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、計測の対象となる個々の車載機器により又は条件により異なる個々の経過時間に対応させて、ビットを有効に活用することを実現することができる計測装置及び計測方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る計測装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る計測装置の一実施形態において用いられる計測概念を示す模式図である。
【図3】本発明に係る計測装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る計測装置の一実施形態において用いられる計測概念を示す模式図である。
【図5】本発明に係る計測装置の制御内容を示すフローチャートである。
【図6】本発明に係る計測装置の一実施形態を示すブロック図である。
【図7】本発明に係る計測装置の制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0024】
図1は、本実施例1の計測装置を構成する故障診断装置1の一実施形態を示す模式図である。図2は、本実施例1の故障診断装置1の一実施形態におけるタイマの記憶態様を示す模式図である。
【0025】
本実施例1の故障診断装置1は、ECU2、センサ3を含んで構成される。ECU2は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM、フラッシュメモリ及びそれらを相互に接続するデータバスと被制御機器となる車載機器や制御に用いるセンサ等と接続可能な入出力インターフェースから構成される。
【0026】
ECU2は、フラッシュメモリに格納されたプログラムに従い、図1中矢印線により接続されたセンサ3からの信号に基づいて、接続された図示しない被制御対象の車載機器を制御する処理を行う。さらに、ECU2は、故障診断に供するための異常検出、異常検出時のある基点からの経過時間の測定のための処理を行うものである。
【0027】
ECU2は、プログラムの実行に伴って、複数の機能ブロックを構成する。すなわち、ECU2は、タイマ計測部2a(計測手段)、基準時間管理部2b(設定手段)、異常情報管理部2c(記憶手段)、異常検出部2dを機能ブロックとして含む。
【0028】
タイマ計測部2aは、ある基点からの経過時間を、例えば周知の水晶振動子発振回路等の内部クロックにより発生したパルスをカウントし、ある基点からの経過時間を測定し記憶するタイマを含む。
【0029】
また、タイマ計測部2aは、測定結果としての経過時間を最下位ビットLSBに対応する基準時間の基準時間情報つまりLSB情報に基づいて、時間情報として例えば二進数により記憶する。また、タイマ計測部2aはタイマがオーバーフローした場合には、オーバーフローした旨のオーバーフロー通知信号を基準時間管理部2bに送信し通知する。
【0030】
基準時間管理部2bは、初期設定としてタイマ計測部2aのLSB情報を1分に設定し、タイマ計測部2aからオーバーフロー通知信号を受信すると、タイマ計測部2aのLSB情報を増加する方向に変更する。
【0031】
ここで、タイマ計測部2aは2ビットのLSB情報を用いており、対応する時間は段階的に最小値から最大値まで増加する数列を階段的に用いるものとして、基数を2、指数を0〜3に変化させた数列を用いている。
【0032】
より具体的には、基準時間管理部2bは、2ビットのLSB情報として、「00」に対応させた基準時間として「1分」、「01」に対応させた基準時間として「2分」、「10」に対応させた基準時間として「4分」、「11」に対応させた基準時間として「8分」を割り当てたものを記憶しており、オーバーフロー通知信号を受信する毎に、この順番に段階的にLSB情報を変更する。
【0033】
異常検出部2dは、センサ3の電源線の電圧電流、信号線の電圧電流周波数等の、閾値との比較、変化率の閾値との比較及び通信プロトコルによるダイアグチェック等により、断線異常、センサ素子異常、マイコン異常等の異常を検出する。異常検出部2dは異常を検出した場合、異常情報管理部2cに異常検出通知信号を送信する。
【0034】
異常情報管理部2cは、異常検出部2dからの異常検出通知信号を受信すると、タイマ計測部2aが含むタイマの時間情報と、基準時間管理部2bが含むLSB情報を取得して、検出された異常の内容に対応するダイアグコードと、時間情報とLSB情報とを併せて、EEPROMに記憶する。
【0035】
この際、時間情報は、経過時間の想定される想定最大値と基準時間の最大値に照らして定められるEEPROM内の所定ビット数に対応する領域に記憶され、LSB情報は基準時間情報に対応する基準ビット数に対応する領域に記憶される。
【0036】
既に述べたように、例えば計測対象となる期間を3ヶ月と定める場合においては、経過時間の想定最大値は3ヶ月=129600分となり、LSB情報を1分に固定した場合には、想定最大値は129600=1FA40(16進数)つまり、17ビットとなる。なお、17ビットで表現できる経過時間の最大値は131071分である。
【0037】
ここで、基準ビット数は上述したように2ビットであり、基準ビット数2において設定される基準時間の最大値は8分であり、最小値は1分で、二段目の値と三段目の値はそれぞれ2分、4分であることから、時間情報に対応する所定ビット数は基準時間の最大値により定まる。
【0038】
なお、本実施例1においては、計測は基準時間が四段階であることから第一段階から第四段階を含む。本実施例においては隣接する段階の切換を、所定ビット数においてオーバーフローが発生するタイミングとしている。ここで、オーバーフローとはタイマの所定ビット数の値が「全て1」の状態で基準時間が経過することを指す。
【0039】
基準時間が「1分」である第一段階においては、所定ビット数の二進数の最大値に「1分」を乗じた値が計測可能な最大値となり、これを第一段階最大値と称する。基準時間が「2分」である第二段階においては、所定ビット数の二進数の最大値に「2分」を乗じた値に第一段階最大値を加えた値が計測可能な最大値となり、これを第二段階最大値と称する。
【0040】
基準時間が「4分」である第三段階においては、所定ビット数の二進数の最大値に「4分」を乗じた値に第二段階最大値を加えた値が計測可能な最大値となり、これを第三段階最大値と称する。
【0041】
基準時間が「8分」である第四段階においては、所定ビット数の二進数の最大値に「8分」を乗じた値に第三段階最大値を加えた値が計測可能な最大値となり、これを第四段階最大値と称する。なお、本実施例1の第四段階最大値を計算すると図2中再下段左側に示すように245752分となり、約5.7ヶ月分に相当する値となる。なお、245752分の算出根拠は、所定ビットの二進数の最大値が16384であるならば第四段階において二進数の最大値から1引いた値までしか計測できないことに基づく。
【0042】
この第四段階最大値つまり基準時間を段階的に増加する方向に変更した場合の最終段階における最終段階最大値が前述した想定最大値以上であって、基準時間と所定ビット数の和が想定ビット数よりも小さくなる所定条件を満足するように、所定ビット数を予め設定する。
【0043】
図2中段部は本実施例1におけるオーバーフロー時の時間情報と基準時間情報の第一段階から第二段階への変遷を示す。14ビットのタイマ単独が表現できる経過時間の最大値は16383分であるので、基準時間情報が「00」で基準時間が「1分」であれば、時間情報は「全て1」となる。
【0044】
経過時間が16384分となると、16384分=16384分+0×2分であるので、時間情報を「全て0」とし基準時間は「2分」に増大され基準時間情報は「01」に切り替えられる。
【0045】
さらに、異常検出後、ユーザが異常の発生を認知して故障診断と修理を目的として、車両をディーラー等に入庫させた場合には、ECU2には、図1に示すようなCAN及び図示しない外部コネクタにより診断ツール4(ダイアグツール)に接続されて、故障診断が行われる。
【0046】
診断ツール4はディーラーのサービスマンの操作に基づいて又は外部コネクタへの接続に伴う自動動作により、読み出し要求信号がECU2に対して送信され、読み出し要求信号を受信したECU2の異常情報管理部2cは、EEPROMに記憶され保持された時間情報、基準時間情報、ダイアグコードを再度読み出す。
【0047】
異常情報管理部2cは、時間情報と基準時間情報から経過時間を上述した関係に基づいて換算した後、経過時間とダイアグコードを含むデータフレームを診断ツール4に送信する。診断ツール4は、このデータフレームを受信して、故障診断を実行する。故障診断により判明した故障内容に基づいて、部品交換又は修繕等の適宜の処置が行われる。
【0048】
以下に以上述べた本実施例1の故障診断装置1の制御内容の流れを、図3に示すフローチャートを用いて説明する。
【0049】
図3に示すように、ステップS1において、上述したある基点もしくは前回のタイマ更新(ステップS2)から基準時間(初期設定は1秒)が経過したか否かについて、タイマ計測部2aが判定し、肯定である場合にはステップS2にすすみ、否定である場合には、ステップS5にすすむ。
【0050】
ステップS2において、タイマ計測部2aは計測された経過時間の計測結果である時間情報を更新する。
【0051】
ステップS3において、タイマ計測部2aは自身が含むタイマがオーバーフローしているか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS4にすすみ、否定である場合にはステップS5にすすむ。
【0052】
ステップS4において、タイマ計測部2aは基準時間管理部2bに対してオーバーフロー通知信号を送信し、基準時間管理部2bはオーバーフロー通知信号を受信すると、基準時間に対応するLSB情報を順方向に変更し更新する。加えて、タイマ計測部2aは更新後のLSB情報により表現される基準時間と変更前の段階における最大値に基づいて、計測された経過時間を二進数に変換して時間情報として保持する。
【0053】
ステップS5において、異常検出部2dは異常を検出し、異常検出が発生したか否かを判定して、肯定であればステップS6にすすみ、否定であればRETURNにすすむ。
【0054】
ステップS6において、異常検出部2dは、異常検出信号を異常情報管理部2cに送信し、異常情報管理部2cは、タイマ計測部2aから時間情報と基準時間情報を取得して、経過時間に再変換する。
【0055】
ステップS7において、異常の内容に対応させたダイアグコードと経過時間をEEPROMに記憶する。さらに、診断ツール4の読み出し要求に応じて適宜診断ツール4にダイアグコードと経過時間を含むデータフレームを送信する。
【0056】
以上述べたステップS1からステップS7の処理は、一定の演算周期で繰り返し実行され、本発明の計測方法の、計測ステップ、設定ステップ、記憶ステップが順に実行される。
【0057】
上述した本実施例1の故障診断装置1によれば、従来技術に較べてビット数を削減し、かつ、限られたビットを有効活用することができる。以下に本実施例1により得られる有利な作用効果について図を用いて説明する。図4は、本実施例1の故障診断装置1の計測概念を示す模式図である。
【0058】
既に述べたように、本実施例1においては、計測対象となる期間が3ヶ月と定められる場合であり、経過時間は3ヶ月=90日=2160時間=129600分となり、1分を最下位ビットに対応する基準時間として固定すると、129600=1FA40(16進数)となり、想定ビット数は17ビットである。
【0059】
本実施例1においては、最下位ビットに対応する基準時間について、四段階で設定できるものとし、2ビットの基準時間情報をまず設定し、四段階で設定された基準時間情報と各段階で表現可能な最大値に基づいて、計測された経過時間を二進数に変換し、変換された後の時間情報は図4右下に示すように14ビットの二進数で表現するものとしている。
【0060】
このように、本実施例1においては、図3に示したフローチャートの実行により、基準時間を1分→2分→4分→8分と段階的に増加させる更新を、オーバーフローが発生する毎に行うことができる。このため、所定ビット数は基準時間の最大値である8分に対応させた値とすれば十分であり、所定ビット数を14ビットとすることができる。
【0061】
これによって、設定される基準時間の最大値(ここでは8分)により、最下位ビットに対応する基準時間を1分に固定した条件で想定される想定ビット数である17ビットよりも、基準ビット数である2ビットと所定ビット数である14ビットの和である16ビットを小さくすることができる。従ってビット数の削減を実現することができる。
【0062】
さらに、本実施例1の計測装置によれば、経過時間が短い場合には、基準時間を短く設定することで、図4右下の14ビットのタイマの主に右側の下位ビットのみを使用するものとし、時間情報の上位ビットの無駄を削減することができる。
【0063】
また、逆に、経過時間が長い場合には、基準時間を長く設定することで、図4右下の14ビットのタイマのうち誤差により発生する下位ビットの無駄を削減することができる。
従って、本実施例1においては、意図する経過時間に対応させてタイマのビットを有効に活用することができる。
【0064】
図4左側のグラフは、経過時間を横軸にとり、タイマに記憶される時間情報の各段階の積算値Σと基準時間情報の積を縦軸に取ったものである。図4左側のグラフが示すように、本実施例1のように経過時間の増加に伴い段階的に基準時間を増加させることとすれば、経過時間が長い場合には、誤差を考慮した上で下位ビットを予め含まないものとし、経過時間が短い場合には下位ビットのみを使用して上位ビットを無駄にしないものとすることができる。
【0065】
加えて、LSB情報を1分に固定した場合には、想定最大値は129600=1FA40(16進数)つまり、17ビットとなり、17ビットで表現できる経過時間の最大値は131071分であること、及び、本実施例1の所定ビット数14と基準ビット数2の組合せでは表現できる経過時間の最大値は245752分であることを考慮すると、ビット数の削減に伴って、表現できる経過時間の最大値の増大を実現できる。すなわち、ビット数の削減と記憶可能な経過時間の拡大を同時に図ることができる。
【0066】
上述した実施例1においては、基準時間の更新のトリガをタイマのオーバーフローの発生としている。このことに換えて、経過時間そのものの閾値との比較に基づいて、基準時間を段階的に更新することもできる。以下それについての実施例2について述べる。
【実施例2】
【0067】
本実施例2の故障診断装置1は、構成要素そのものは図1に示した実施例1の故障診断装置1と同一であるため、構成を示す模式図は図1を共通して使用し、重複する機能説明については省略する。
【0068】
本実施例2の故障診断装置1が含むECU2の含む機能ブロックそのものは、実施例1に示したものと同様である。相違点は上述したように変更のトリガを経過時間によるものとした点である。
【0069】
本実施例2において、タイマ計測部2aは、実施例1において述べた第一段階最大値、第二段階最大値、第三段階最大値を一定時間として予め記憶している。タイマ計測部2aは、計測した経過時間が三段階の一定時間を経過する毎に、経過通知信号を基準時間管理部2bに送信する。
【0070】
基準時間管理部2bは、初期設定としてタイマ計測部2aのLSB情報を1分に設定し、タイマ計測部2aから経過通知信号を受信すると、タイマ計測部2aのLSB情報を増加する方向に変更する。
【0071】
以下に以上述べた本実施例2の故障診断装置1の制御内容の流れを、図5に示すフローチャートを用いて説明する。
【0072】
図5に示すように、ステップS11において、上述したある基点もしくは前回のタイマ更新(ステップS12)から初期設定の最小の基準時間(1秒)が経過したか否かについて、タイマ計測部2aが判定し、肯定である場合にはステップS12にすすみ、否定である場合には、ステップS15にすすむ。
【0073】
ステップS12において、タイマ計測部2aは計測された経過時間の計測結果である時間情報を更新する。
【0074】
ステップS13において、タイマ計測部2aは計測した経過時間が三段階の一定時間のいずれかを経過したか否かを判定し、肯定である場合には、ステップS14にすすみ、否定である場合にはステップS15にすすむ。
【0075】
ステップS14において、タイマ計測部2aは基準時間管理部2bに対して経過通知信号を送信し、基準時間管理部2bは経過通知信号を受信すると、基準時間に対応するLSB情報を順方向に変更し更新する。加えて、タイマ計測部2aは更新後のLSB情報により表現される基準時間と変更前の段階における最大値に基づいて、計測された経過時間を二進数に変換して時間情報として保持する。
【0076】
ステップS15において、異常検出部2dは異常を検出し、異常検出が発生したか否かを判定し、肯定であればステップS16にすすみ、否定であればRETURNにすすむ。
【0077】
ステップS16において、異常検出部2dは、異常検出信号を異常情報管理部2cに送信し、異常情報管理部2cは、タイマ計測部2aから時間情報と基準時間情報を取得する。ステップS17において、異常情報管理部2cは、時間情報と基準時間情報を経過時間に変換して、ステップS18において、異常の内容に対応させたダイアグコードと経過時間をEEPROMに記憶する。さらに、診断ツール4の読み出し要求に応じて適宜診断ツール4にダイアグコードと経過時間を含むデータフレームを送信する。
【0078】
以上述べたステップS11からステップS17の処理は、実施例1と同様、一定の演算周期で繰り返し実行され、やはり、本発明の計測方法の、計測ステップ、設定ステップ、記憶ステップが順に実行される。
【0079】
本実施例2においても、上述した実施例1と同様に、ビット数の削減、ビット数の有効利用を図ることができる。加えて、初期設定の基準時間を最小値に固定することができるので、他のタイマ計測と共用することができる。
【0080】
上述した実施例2においては、基準時間の更新のトリガを三段階の所定時間の経過としている。このことに換えて、車両状態の変遷の検出に基づいて、基準時間を段階的に更新することもできる。以下それについての実施例3について述べる。
【実施例3】
【0081】
図6は、本実施例3の故障診断装置1の構成を示す模式図である。本実施例2の故障診断装置1は、図6に示すように、図1に示した実施例1の故障診断装置1に対して、機能ブロックとして、車両状態判定部2eを含む点が異なり、それ以外の機能ブロック及び構成は、実施例1に示したものと同様である。
【0082】
車両状態判定部2eはCAN上から得られる情報に基づいて、車両状態が「車両走行中」「停車中」「駐車中」のいずれに該当するかを判定する。また、タイマ計測部2aは判定結果が遷移した後の車両状態が上記のいずれであるかを示す車両状態通知信号を基準時間管理部2bに送信し通知する。
【0083】
基準時間管理部2bは、車両状態に対応したLSB情報を予め記憶する。より具体的には、基準時間管理部2bは、2ビットのLSB情報として、「00」に対応させた基準時間として「0.1秒」、「01」に対応させた基準時間として「1秒」、「10」に対応させた基準時間として「1分」を割り当てたものを記憶している。
【0084】
さらに、基準時間管理部2bは基準時間のうち「0.1秒」が「車両走行中」に対応させ、「1秒」を「停車中」に対応させ、「1分」を「駐車中」に割り当てるマップを予め記憶している。
【0085】
基準時間管理部2bは、車両状態通知信号を受信する毎に、「車両状態」に対応させた「基準時間」に変更するべく上述したマップを用いてLSB情報を変更する。なお、車両の運転終了にあたっては「車両走行中」「停車中」「駐車中」の車両状態はこの順番に遷移するので、タイマ計測部2aのLSB情報を増加する方向に変更することとなる。発進時にあたっては、逆に減少する方向に変更することとなり、発進と停止が繰り返される市街地走行では増加と減少を繰り返す変更が行われる。
【0086】
以下に以上述べた本実施例3の故障診断装置1の制御内容の流れを、図7に示すフローチャートを用いて説明する。
【0087】
図7に示すように、ステップS21において、上述したある基点もしくは前回のタイマ更新(ステップS22)から初期設定の基準時間(1秒)が経過したか否かについて、タイマ計測部2aが判定し、肯定である場合にはステップS22にすすみ、否定である場合には、ステップS25にすすむ。
【0088】
ステップS22において、タイマ計測部2aは計測された経過時間の計測結果である時間情報を更新する。
【0089】
ステップS23において、車両状態判定部2eはCAN上から車両状態を取得し、車両状態に応じて基準時間を選択して変更する。
【0090】
ステップS24において、異常検出部2dは異常を検出し、異常検出が発生したか否かを判定して、肯定であればステップS25にすすみ、否定であればRETURNにすすむ。
【0091】
ステップS25において、異常検出部2dは、異常検出信号を異常情報管理部2cに送信し、異常情報管理部2cは、タイマ計測部2aから時間情報と基準時間情報を取得して、経過時間に再変換する。
【0092】
ステップS26において、異常の内容に対応させたダイアグコードと経過時間をEEPROMに記憶する。さらに、診断ツール4の読み出し要求に応じて適宜診断ツール4にダイアグコードと経過時間を含むデータフレームを送信する。
【0093】
以上述べたステップS21からステップS27の処理は、実施例1と同様、一定の演算周期で繰り返し実行され、やはり、本発明の計測方法の、計測ステップ、設定ステップ、記憶ステップが順に実行される。
【0094】
本実施例3においても、上述した実施例1及び実施例2と同様に、ビット数の削減、ビット数の有効利用を図ることができる。加えて、本実施例3においては、基準時間を車両状態に対応させて変更することによって、以下の有利な作用効果を得ることができる。
【0095】
つまり、車両搭載のECUは一般に「車両走行中」が車両挙動を高速で判断する要請が高いことに基づいて、特には、エンジン関連機器やブレーキ関連機器の制御を実行し、監視していることを利用することができる。
【0096】
すなわち、どのタイミングで異常の発生を検出したかを、上述した故障診断時において迅速に把握するにあたっては、より精度の高い、換言すれば基準時間を小さい値として計測を行うことが適切であることを考慮して、基準時間を0.1秒として基準時間と計測の最適化を図ることができる。
【0097】
さらに、本実施例3においては、駐車中において、エンジン関連機器やブレーキ関連機器の制御を実行していない状態であり、車両挙動も変化しないことから、ECUは車両挙動を高速で判断する要請が低いことに基づいて、高精度の計測は必要がないことを利用することができる。
【0098】
すなわち、どのタイミングで異常の発生を検出したかを、比較的精度の低い、換言すれば基準時間を大きな値として計測を行うことが適切であることを考慮して、基準時間を1分としてこれも基準時間と計測の最適化を図ることができる。
【0099】
以上本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明は上述した実施例に制限されることなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0100】
例えば、実施例1及び実施例2において基準時間を設定するに当たり用いた基数については2に限られず3とすることもできる。ここで、基数が2である場合には、指数は2以上であることがビット数の削減上有効である。基数が3である場合には、指数は1以上であることがビット数の削減上有効である。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の計測装置及び計測方法によれば、計測対象とする個々の車載機器相互間にて又は条件等により異なる、必要とされる個々の経過時間に対応させてビットを有効に活用することを実現することができる。このため車両の車載機器の故障診断に用いて特に有益なものであって、乗用車、トラック、バス等の様々な車両に適用して利益のあるものである。
【符号の説明】
【0102】
1 故障診断装置(計測装置)
2 ECU
2a タイマ計測部(計測手段)
2b 基準時間管理部(設定手段)
2c 異常情報管理部(記憶手段)
2d 異常検出部
2e 車両状態判定部
3 センサ
4 診断ツール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基点からの経過時間を計測する計測手段と、最下位ビットに対応する基準時間を基準ビット数の基準時間情報により設定する設定手段と、前記計測手段の計測した計測結果を、前記経過時間の想定される想定最大値と前記基準時間の最大値に照らして定められる所定ビット数の時間情報により記憶する記憶手段と、を含むことを特徴とする計測装置。
【請求項2】
前記経過時間の増加に応じて前記設定手段が前記基準時間情報を変更することを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項3】
車両状態に応じて前記設定手段が前記基準時間情報を変更することを特徴とする請求項1に記載の計測装置。
【請求項4】
基点からの経過時間を計測する計測ステップと、最下位ビットに対応する基準時間を基準ビット数の基準時間情報により設定する設定ステップと、前記計測ステップにおいて計測した計測結果を、前記経過時間の想定される想定最大値と前記基準時間の最大値に照らして定められる所定ビット数の時間情報により記憶する記憶ステップと、を含むことを特徴とする計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196795(P2011−196795A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63095(P2010−63095)
【出願日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】