説明

計算機システムのファームウェアのバージョン管理方法及び情報処理装置

【課題】 システムボードの交換時等に最適なバージョンのファームウェアに自動的に更新できるようにする。
【解決手段】 バージョン変更部15は、システムボードを交換するときに、システムボードのファームウェアのバージョンと、パーティション別バージョン記憶部12に記憶されている該当するパーティションのファームウェアのバージョンを照合する。両者が不一致の場合に、システムボードのファームウェアのバーションをパーティション別バージョン記憶部12に記憶されている該当するバージョンと同一のバージョンに更新する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のOSが動作可能な複数のパーティションを有する計算機システムのファームウェアのバージョン管理方法及び複数複数のOSが動作可能な複数のパーティションを有する情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基幹業務系の計算機システムでは、ハードウェアの交換、ファームウェアの入れ替えを活性状態で行うことが必須条件である。
計算機システムの機能を変更する方法として、システムボードの交換、あるいはシステムボードのファームウェアの変更の2つの方法がある。
【0003】
前者のシステムボードを交換する方法は、新たなボードを設計し、ハードを全て交換する必要があり、設計及び交換等の全体の工数が後者のファームウェアを変更する方法に較べて多くなるという欠点がある。一般に設置済の計算機システムの改造作業を行う場合、ボードの交換とファームウェアの入れ替えを比較すると、ファームウェアの入れ替えの方が短い作業時間で行うことができる。
【0004】
ところで、複数のOS(Operation System)を同時に動作可能な複数のパーティションを有する計算機システムでは、パーティション毎にファームウェアのバージョンが異なる場合がある。パーティション毎にファームウェアのバージョンが異なると、システムボードを交換するときに、交換するシステムボードのファームウェアを使用されるパーティションのファームウェアのバージョンと一致させる必要がある。従来、このような場合、各パーティションのファームウェアのバージョンをシステムボードの交換作業をする人が確認してバージョンを合わせる必要があった。
【0005】
また、新たにパーティションを作成し、システムボードを増設する場合、そのシステムボードに実装するファームウェアは最新のバージョンのファームウェアにすることが望ましい。しかしながら、使用するシステムボードのファームウェアのバージョンは必ずしも最新のバージョンのものが使用されているとはかぎらない。
【0006】
特許文献1には、ファームウェアのバージョンアップの書き換え作業の効率化を図るために、情報機器の出力制御用ファームウェアの既存のバージョンが最新バージョンと一致するか否かを判定してバージョンが一致していない場合、最新バージョンにバージョンアップし、その結果に応じて最新バージョンと既存バージョンの何れかを選択して出力処理を実行することが記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、ドライバの起動時に、自動的に予め指定された場所から現在の周辺装置やホストコンピュータのシステム構成における最適な置き換え用ファームウェアをロードしてきて、ファームウェアのアップデートを行うことが記載されている。
【特許文献1】特開2002−358209号公報
【特許文献2】特開2004−21463号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、システムボードの交換時等に最適なバージョンのファームウェアに自動的に更新できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、複数のOSが動作可能な複数のパーティションを有し、各パーティションが1または複数のシステムボードで構成される計算機システムの前記システムボードのファームウェアのバージョン管理方法であって、前記各パーティションで使用されている前記ファームウェアのバージョンと前記各パーティションとを対応づけてパーティション別バージョン記憶手段に記憶し、前記システムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアのバージョンと、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている該当するパーティションの前記ファームウェアのバージョンが一致するか否かを判定し、両者のバージョンが一致しない場合には、前記新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアを、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている前記パーティションの前記ファームウェアのバージョンと同一のバージョンに変更するバージョン変更手段とを備える。
【0010】
この発明によれば、システムボードを交換するときに、システムボードのファームウェアを、そのシステムボードが使用されるパーティションのファームウェアのバージョンに自動的に更新することができる。
【0011】
上記の発明のファームウェアのバージョン管理方法において、各システムボードに割り当てられている前記パーティションを示す情報をシステムボード構成情報記憶手段に記憶させ、前記システムボードを交換するときに、前記システムボード構成情報記憶手段の情報を参照して交換対象のシステムボードのパーティションを特定し、前記パーティション別バージョン記憶手段から前記特定したパーティションの前記ファームウェアのバージョンを取得し、前記新たに使用されるシステムボードのファームウェアを、取得した前記ファームウェアのバージョンと同じバージョンに変更する。
【0012】
このように構成することで、システムボードを交換するときに、交換対象のシステムボードに割り当てられているパーティションをシステムボード構成情報記憶手段に記憶されている情報により特定し、特定したパーティションで使用されているファームウェアのバージョンと同じバージョンのファームウェアに自動的に更新できる。
【0013】
上記の発明のファームウェアのバージョン管理方法において、前記システムボードを識別するためのボード識別情報をシステムボード構成情報記憶手段に記憶させ、最新のバージョンのファームウェアを最新バージョン記憶手段に記憶させ、新たなパーティションが設定されて新たなシステムボードが使用された場合に、前記バージョン変更手段が前記新たに使用されたシステムボードのボード識別情報と、前記システムボード構成情報記憶手段に記憶されているボード識別情報を照合して未登録のシステムボードか否かを判定し、前記新たに使用されたシステムボードが未登録であった場合に、前記新たに使用されたシステムボードの前記ファームウェアを、前記最新バージョン記憶手段に記憶されている最新のバージョンの前記ファームウェアに変更する。
【0014】
このように構成することで、新たなパーティションが設定されて新たなシステムボードが増設された場合に、そのシステムボードのファームウェアを最新のバージョンのファームウェアに自動的に更新することができる。
【0015】
上記の発明のファームウェアのバージョン管理方法において、前記システムボードは、現在割り当てられているパーティションで使用されているバージョンの前記ファームウェアを記憶する第1の不揮発性メモリと、切り換え先のパーティションで使用されているバージョンの前記ファームウェアを記憶する第2の不揮発メモリとを有し、前記システムボードの割り当て先のパーティションを切り換えるときに、前記第1と第2の不揮発性メモリを切り換える。
【0016】
このように構成することでシステムボードに搭載されている不揮発性メモリを切り換えることで切り換え先のパーティションに適合するバージョンのファームウェアに迅速に切り換えることができる。
【0017】
上記の発明のファームウェアのバージョン管理方法において、特定のパーティションの前記システムボードの前記ファームウェアのバージョンを更新した結果、動作異常が発生した場合に、前記バージョン変更手段は、前記各パーティションを活性状態のままで、動作異常が発生した前記特定のパーティションの前記システムボードの前記ファームウェアのバージョンを、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている前記特定のパーティションの前記ファームウェアの旧のバージョンに戻す。
【0018】
このように構成することでファームウェアのバージョンを変更した結果、動作異常が発生した場合には、変更前のバージョンに戻して元の状態に復帰させることができる。
上記の発明のファームウェアのバージョン管理方法において、複数のバージョンのファームウェアをバックアップ記憶手段に記憶させ、前記システムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアのバージョンと、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている該当するパーティションの前記ファームウェアのバージョンを照合し、両者のバージョンが一致しない場合には、前記パーティション別バージョン記憶手段から前記パーティションの前記ファームウェアのバージョンを取得し、該バージョンのファームウェアを前記バッアップ記憶手段から読み出し、前記新たに使用される前記システムボードのファームウェアを前記バックアップ記憶手段から読み出したバージョンの前記ファームウェアに変更する。
【0019】
このように構成することでシステムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードのファームウェアのバージョンが、そのシステムボードに割り当てられているパーティションのファームウェアのバージョンと異なる場合に、バックアップ記憶手段に記憶されているファームウェアを利用して最適なバージョンに自動的に更新することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、システムボードを交換するときに、システムボードのファームウェアを、そのシステムボードが使用されるパーティションに適合したバージョンに自動的に更新できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る計算機システム11の基本構成を示す図である。
この計算機システム11は、複数のOSが同時に動作可能な複数のパーティションを有し、各パーティションはファームウェアが実装された1または複数のシステムボード16a〜16nで構成されている。
【0022】
図1の計算機システム11は、各パーティションに割り当てられているシステムボード16a〜16nのファームウェアのバージョンと各パーティションとを対応づけて記憶するパーティション別バージョン記憶部12と、システムボードに割り当てられているパーティションとシステムボードを識別するためのボード識別情報とを対応づけて記憶するシステムボード構成情報記憶部13と、最新のバージョンのファームウェアを記憶する最新バージョン記憶部14とを有する。
【0023】
また、システムボード16a〜16nのファームウェアのバージョンの更新を行うバージョン変更部15を有する。このバージョン変更部15は、システムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードに実装されているファームウェアのバージョンと、パーティション別バージョン記憶部12に記憶されている該当するパーティションのファームウェアのバージョンを照合し、両者が不一致の場合に、新たに使用されるシステムボードのファームウェアを、パーティション別バージョン記憶部12に記憶されている該当するパーティションのファームウェアのバージョンと同一のバージョンに変更する。
【0024】
また、バージョン変更部15は、新たなパーティションが設定された場合に、新たに使用されるシステムボードのボード識別情報と、システムボード構成情報記憶部13に記憶されているボード識別情報を照合して未登録のシステムボードか否かを判定し、未登録のシステムボードが使用された場合には、新たに使用されるシステムボードのファームウェアを最新のバージョンのファームウェアに変更する。
【0025】
次に、図2は、実施の形態の計算機(情報処理装置)21の要部の構成を示す図である。この計算機21は、複数のOSが同時に動作可能な複数のパーティションを有する。
計算機21は、サービスプロセッサボード(Service Processor Board)22と、複数のパーティションを構成する1または複数のシステムボード(System Board)23a、23b、23c・・・からなる。システムボード23a、23b、23c・・・は、CPU、メモリ、コントローラ等が搭載されたボードである。
【0026】
サービスプロセッサボード22は、サービスプロセッサ(Service Processor:CPU)24と、サービスプロセッサ24が実行する制御プログラムを記憶するフラッシュメモリ等からなる書き換え可能な不揮発性メモリ(FMEM)25と、主記憶メモリ26と、システムボード23a、23b、23c・・の管理情報を記憶する、ディスク装置、あるいはフラッシュメモリ等からなる書き換え可能な不揮発性メモリ27と、システムボード23a、23b、23c・・との間のデータの送受信の制御を行うコントローラ28とを有する。
【0027】
以下の説明では、システムボード23a、23b、23c・・の全体、あるいは特定のシステムボードを指してシステムボード23と呼ぶ。
システムボード23には、フラッシュメモリ等の書き換え可能な2個の不揮発性メモリ(FRAM)29a、29bが搭載されている。この2個の不揮発性メモリ29a、29bには、同一または異なるバージョンの初期設定プログラム(オープン・ブート・プログラム:OBP)が格納される。初期設定プログラム(OBP:ファームウェア)は、システムボードの診断、初期設定、図示しないディスク装置からのOSのダウンロード等を行う。
【0028】
このように2個の不揮発性メモリ29a、29bを有することで、例えば、システムボードが割り当てられているパーティションを切り換える場合、現在割り当てられているパーティションで使用されているバージョンの初期設定プログラムを一方の不揮発性メモリ29aに格納し、切り換え先のパーティションで使用されているバージョンの初期設定プログラムを他方の不揮発性メモリ29bに格納しておく。そして、不揮発性メモリ29a、29bを切り換えることで切り換え先のパーティションで使用されている初期設定プログラムのバージョンに瞬時に切り換えることができる。
【0029】
サービスプロセッサボード22の不揮発性メモリ27は、パーティション別個別版数情報記憶部31と、システム構成情報記憶部32と、最新HCP(Hardware Control Program)記憶部33と、初期設定プログラム(OBP)バッアップ記憶部34とで構成される。
【0030】
パーティション別個別版数情報記憶部31には、各パーティションで使用されている初期設定プログラムのバージョン(版数)を示す情報がパーティション番号と対応づけて記憶されている。
【0031】
図3(A)は、パーティション別個別版数情報記憶部31に記憶されるパーティション別個別版数情報41の構成を示す図である。
図3(A)に示すように、パーティション別個別版数情報41は、パーティション番号と、各パーティションに割り当てられているシステムボード23の初期設定プログラムの現在の版数(バージョン)と、システムボード23の2個の不揮発性メモリ29a、29bにそれぞれ格納されている初期設定プログラムのバンク別版数と、現在使用されているバンクがバンク0とバンク1の何れかであるかを示す現バンク番号と、2つのバンクに格納されている初期設定プログラムの内の旧版数を示す情報とを1組のデータとして構成されている。
【0032】
このパーティション別個別版数情報41を参照することで、例えば、パーティション番号0のパーティションの現在の初期設定プログラムのバージョンはAであり、そのパーティションに割り当てられているシステムボード23の両方のバンクに同じバージョンAの初期設定プログラムが格納されていること及び現在使用されているバンクはバンク1であり、旧版は格納されていないことが分かる。また、パーティション番号1のパーティションの現在の初期設定プログラムのバージョンはAであり、バンク0(例えば、不揮発性メモリ29aに対応する)にバージョンAの初期設定プログラムが格納され、バンク1(例えば、不揮発性メモリ29bに対応する)にバージョンBの初期設定プログラムが格納され、現在使用されているバンクがバンク1、バージョンAが旧版であることが分かる。
【0033】
図3(B)は、システムボード構成情報記憶部32に格納されるシステムボード構成情報42の構成を示す図である。
図3(B)に示すように、システムボード構成情報42は、システムボード23が挿入される位置により特定されるシステムボード番号(SB番号)と、各システムボード23に割り当てられているパーティション番号と、個々のシステムボード23に対して一意に与えられるボードシリアル番号(ボード識別情報)とを1組のデータとして構成されている。
【0034】
このシステムボード構成情報42のボードシリアル番号を参照することで、例えば、特定のシステム番号の位置に挿入されたシステムボード23が、新規のシステムボード23か否かを判定できる。
【0035】
最新ハードウェア・コントロール・プログラム(HCP)記憶部33には、最新のバージョンの初期設定プログラム、サービスプロセッサボード22の最新のファームウェア等が格納される。
【0036】
OBP(初期設定プログラム)バックアップ記憶部34には、バックアップ用に数世代分の初期設定プログラムが格納される。
図3(C)は、OBPバックアップ記憶部34に格納されるOBPバックアップ情報43の構成を示す図である。
【0037】
図3(C)に示すように、OBPバックアップ情報43は、初期設定プログラムのバージョンを示す版数情報と、その初期設定プログラムが上書可能か否かを示すvalidと、各バージョンの初期設定プログラム(ファーム情報)とを1組のデータとして構成されている。なお、図3(C)では、上書き可能な場合を×で、上書き不可の場合を○で表している。
【0038】
このOBPバックアップ情報43の特定のバージョンの初期設定プログラムを読み出し、読み出した初期設定プログラムをシステムボード23の不揮発性メモリ29aまたは29bに書き込むことで、システムボード23に実装される初期設定プログラムを所望のバージョンに書き換えることができる。また、保存しておく必要の無くなった版数の初期設定プログラムはvalidを無効に設定することで、OBPバックアップ記憶部34の記憶容量が不足したときにその領域が上書きされる。
【0039】
次に、以上のような構成の計算機21の処理動作を、図4、図6,図7及び図9のフローチャートを参照して説明する。以下の処理は、サービスプロセッサボード22のサービスプロセッサ24により実行される。
【0040】
最初に、システムボード23の交換時に、システムボード23に実装される初期設定プログラムを最適のバージョンに自動更新する処理を、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
システムボード23が挿入されたことが検出されてシステムボード交換イベントを受信すると(図4,S11)、ステップS12に進み、以下の処理を実行する。
挿入されたシステムボード23の位置からシステムボード番号(例えば、システムボード23の挿入位置に対応する)を認識し、システムボード構成情報42を参照して該当するシステムボード番号に対応するボードシリアル番号を取得する。このボードシリアル番号は、交換前のシステムボード23のボードシリアル番号を指しているので、そのシリアル番号と挿入されたシステムボード23のシリアル番号を照合する。
【0042】
次のステップS13で、シリアル番号が一致するか否かを判別する。シリアル番号が不一致の場合には(S13,NO)、ステップS14に進み、システムボード構成情報42を参照してシステムボード番号に対応するパーティション番号を取得する。そして、パーティション別個別版数情報41を参照して取得したパーティション番号に対応する初期設定プログラムの版数(バージョン)を取得する。
【0043】
次のステップS15で、挿入されたシステムボード23に実装されている初期設定プログラムの版数と、該当するパーテションで使用されている初期設定プログラムの版数が一致するか否かを判別する。
【0044】
両者の版数が不一致の場合には(S15,NO)、ステップS16に進み、該当するパーティションで使用されている初期設定プログラムの版数と同一の版数の初期設定プログラムをOBPバックアップ記憶部34から検索し、検索により得られた版数の初期設定プログラムを、新たに挿入されたシステムボード23の不揮発性メモリ29aまたは29bに書き込むことで初期設定プログラムのアップデートを行う。
【0045】
上述したステップS11〜S16の処理により、システムボード23の交換時に、新たに挿入されたシステムボード23の初期設定プログラムの版数を、そのシステムボードが割り当てられるパーティションの初期設定プログラムの版数と一致するように自動的に更新することができる。これにより、システムボード23の交換時に初期設定プログラムの版数を合わせる作業が不要となる。また、同一パーティション内のシステムボード23の初期設定プログラムの版数の不一致により動作不良が発生するのを防止できる。
【0046】
ここで、図5を参照して、上述したシステムボード23の初期設定プログラムを最適な版数に更新する処理について説明する。
特定のシステムボード23が交換されたことを検出すると、システムボード構成情報42からそのシステムボード23のパーティション番号を取得する。パーティション番号が、例えば、パーティション番号#0であることが分かると、パーティション別個別版数情報記憶部31のパーティション別個別版数情報41を参照してパーティション番号#0の初期設定プログラム(OBP)の版数を取得する。初期設定プログラムの版数を取得したなら、OBPバックアップ記憶部34から該当する版数の初期設定プログラムをダウンロードする(図5では、1版のOBP)。そして、交換するシステムボード23の不揮発性メモリ29aまたは29bにダウンロードした1版の初期設定プログラムを書き込む。
【0047】
これにより交換するシステムボード23の初期設定プログラムの版数を、そのシステムボード23が割り当てられるパーティションで使用されている初期設定プログラムの版数と同一となるように自動更新することができる。
【0048】
次に、図6は、新規のパーティションを作成し、その新規のパーティションで使用されるシステムボード23を増設する場合の初期設定プログラムの自動更新処理のフローチャートである。
【0049】
システムボード23が挿入されたことを示すシステムボード23挿入イベントを受信すると(図6,S21)、挿入されたシステムボード23のボードシリアル番号と、システムボード構成情報42の該当するシステムボード番号のボードシリアル番号を照合する(S22)。
【0050】
両者のボードシリアル番号が一致するか否かにより挿入されたシステムボードが新規のシステムボードか否かを判定する(S23)。
新規のシステムボード23が挿入された場合には(S23,YES)、ステップS24に進み、挿入されたシステムボード23の不揮発性メモリ(FMEM)29a、29bに格納されている初期設定プログラム(OBP)の版数を読み出し、その初期設定プログラムの版数と、最新HCP記憶部33に格納されている初期設定プログラムの最新の版数を照合する。そして、次のステップS25で、両者の版数が一致するか否かを判別する。
【0051】
新規に挿入されたシステムボード23の初期設定プログラムの版数が最新の版数と一致しない場合には(S25,NO)、ステップS26に進み、最新HCP記憶部33に格納されている最新版の初期設定プログラムを読み出し、その最新版の初期設定プログラムを挿入されたシステムボード23の不揮発性メモリ29aまたは29bに書き込むことで初期設定プログラムのアップデートを行う。
【0052】
また、ステップS23で、新規に挿入されたシステムボード23ではないと判定された場合(S23,NO)、あるいはステップS25で、新規に挿入されたシステムボード23の初期設定プログラムの版数が最新版の版数と一致すると判定された場合には(S25,YES)、そこで処理を終了する。
【0053】
上記のステップS21〜S26の処理により、新規にパーティションが作成され、新規のシステムボード23が挿入された場合に、新規のシステムボード23を自動的に最新の版数の初期設定プログラムに自動更新することができる。これにより、パーティションを増設する場合に、そのパーティションで使用するシステムボード23に実装される初期設定プログラムを最新の版数のものにそろえることができる。
【0054】
次に、図7は、予備のシステムボード、あるいは特定のパーティションに割り当てられているシステムボード23を活性状態で他のパーティションに動的に切り替える場合の初期設定プログラムの版数の自動更新処理のフローチャートである。
【0055】
システムボード23のパーティションを切り換える移動イベントを受信すると(図7,S31)、システムボード構成情報42を参照して移動対象のシステムボード23の初期設定プログラムの版数を取得し、さらにパーティション別個別版数情報41を参照して、移動先(切り換え先)のパーティションの初期設定プログラムの版数を取得して両者を照合する(S32)。そして、次のステップS33で、移動対象のシステムボード23の初期設定プログラムの版数と、移動先のパーティションの初期設定プログラムの版数が一致するか否かを判別する。
【0056】
両者の版数が不一致の場合には(S33,NO)、ステップS34に進み、移動先のパーティションの初期設定プログラムの版数と同一の版数の初期設定プログラムをOBPバックアップ記憶部34から読み出し、その初期設定プログラムを移動対象のシステムボード23の不揮発性メモリに書き込む。
【0057】
本実施の形態では、システムボード23上には、図8に示すようにカレントバンクとリザーブバンクの2個の不揮発性メモリ29a、29bが搭載されているので、移動先のパーティションの版数の初期設定プログラムをリザーブバンクの不揮発性メモリ29bに書き込む。
【0058】
なお、移動先のパーティションの版数と同じ版数の初期設定プログラムがリザーブバンクの不揮発性メモリ29bに既に格納されている場合には、ステップ34の替わりに、ステップS35の処理を実行する。ステップS35の処理では、バンク切り換えによりリザーブバンクに格納されている初期設定プログラムに切り換える。これにより、システムボード23に割り当てられるパーティションを切り換える場合に、切り換え先のパーティションと同じ版数の初期設定プログラムをダウンロードしてシステムボード23上の不揮発性メモリ29a(または29b)に書き込む必要がなくなるのでパーティションの切り換えに要する時間を短縮できる。
【0059】
次に、図9は、初期設定プログラムをアップデートした結果、動作異常が発生した場合に、旧版に戻す処理のフローチャートである。
特定のパーティションの初期設定プログラム(OBP)をアップデートする(図9,S41)、その結果、動作不能となるか、ユーザが動作異常を発見したなら、ユーザが初期設定プログラムを旧版に戻す操作を行う(S42)。
【0060】
初期設定プログラムを旧版に戻す操作を検出したなら、ステップS43で、パーティション別個別版数情報41を参照してそのパーティションの初期設定プログラムの旧版数を取得する。旧版がシステムボード23のリザーブバンクに格納されている場合には、カレントバンクからリザーブバンクに切り換えて初期設定プログラムの版数を切り換える。旧版がリザーブバンクに格納されていない場合には、OBPバックアップ記憶部34から旧版を読み出してシステムボード23のリザーブバンクに書き込む。そして、バンクをリザーブバンクに切り換える。
【0061】
上記のステップS41〜S43の処理により、特定のパーティションのシステムボードの初期設定プログラムをアップデートした結果、異常が発生した場合に、そのパーティションの旧版の版数をパーティション別個別版数情報41から取得し、システムボードの初期設定プログラムを旧版の初期設定プログラムに書き換えることで元の状態に戻すことができる。
【0062】
本発明は、初期設定プログラムに限らず他のファームウェアにも適用できる。
また、実施の形態では、パーティション別個別版数情報41とシステムボード構成情報42を別の情報として記憶するようにしたが、それらの情報を1組の情報として構成しても良い。
【0063】
(付記1) 複数のOSが動作可能な複数のパーティションを有し、各パーティションが1または複数のシステムボードで構成される計算機システムの前記システムボードのファームウェアのバージョン管理方法であって、
前記各パーティションで使用されている前記ファームウェアのバージョンと前記各パーティションとを対応づけてパーティション別バージョン記憶手段に記憶し、
前記システムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアのバージョンと、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている該当するパーティションの前記ファームウェアのバージョンが一致するか否かを判定し、両者のバージョンが一致しない場合には、前記新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアを、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている前記パーティションの前記ファームウェアのバージョンと同一のバージョンに変更するバージョン変更手段とを備えるファームウェアのバージョン管理方法。
(付記2) 付記1記載のファームウェアのバージョン管理方法において、
各システムボードに割り当てられている前記パーティションを示す情報をシステムボード構成情報記憶手段に記憶させ、
前記システムボードを交換するときに、前記システムボード構成情報記憶手段の情報を参照して交換対象のシステムボードのパーティションを特定し、前記パーティション別バージョン記憶手段から前記特定したパーティションの前記ファームウェアのバージョンを取得し、前記新たに使用されるシステムボードのファームウェアのバージョンを、取得した前記ファームウェアのバージョンと同じバージョンに変更する。
(付記3) 付記1記載のファームウェアのバージョン管理方法において、
前記システムボードを識別するためのボード識別情報をシステムボード構成情報記憶手段に記憶させ、
最新のバージョンのファームウェアを最新バージョン記憶手段に記憶させ、
新たなパーティションが設定されて新たなシステムボードが使用された場合に、前記バージョン変更手段が前記新たに使用されたシステムボードのボード識別情報と、前記システムボード構成情報記憶手段に記憶されているボード識別情報を照合して未登録のシステムボードか否かを判定し、前記新たに使用されたシステムボードが未登録であった場合に、前記新たに使用されたシステムボードのファームウェアを、前記最新バージョン記憶手段に記憶されている最新のバージョンのファームウェアに変更する。
(付記4) 付記1,2または3記載のファームウェアのバージョン管理方法において、
前記システムボードは、現在割り当てられているパーティションで使用されているバージョンの前記ファームウェアを記憶する第1の不揮発性メモリと、切り換え先のパーティションで使用されているバージョンの前記ファームウェアを記憶する第2の不揮発メモリとを有し、
前記システムボードの割り当て先のパーティションを切り換えるときに、前記第1と第2の不揮発性メモリを切り換える。
(付記5) 付記1,2,3または4記載のファームウェアのバージョン管理方法であって、
特定のパーティションの前記システムボードの前記ファームウェアのバージョンを更新した結果、動作異常が発生した場合に、前記バージョン変更手段は、前記各パーティションを活性状態のままで、動作異常が発生した前記特定のパーティションの前記システムボードの前記ファームウェアのバージョンを、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている前記特定のパーティションの前記ファームウェアの旧のバージョンに戻す。
(付記6) 付記1記載のファームウェアのバージョン管理方法であって、
複数のバージョンのファームウェアをバックアップ記憶手段に記憶させ、
前記システムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアのバージョンと、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている該当するパーティションの前記ファームウェアのバージョンを照合し、両者のバージョンが一致しない場合には、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている該当するパーティションのバージョンの前記ファームウェアを前記バッアップ記憶手段から読み出し、前記新たに使用される前記システムボードのファームウェアを前記バックアップ記憶手段から読み出したバージョンの前記ファームウェアに変更する。
(付記7) 複数の0Sが動作可能な複数のパーティションを有し、各パーティションがファームウェアが実装された1または複数のシステムボードで構成される情報処理装置であって、
前記各パーティションで使用されている前記ファームウェアのバージョンを前記各パーティションと対応づけて記憶するパーティション別バージョン記憶手段と、
前記システムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアのバージョンと、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている該当するパーティションの前記ファームウェアのバージョンが一致するか否かを判定し、両者のバージョンが一致しない場合には、前記新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアを、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている前記パーティションの前記ファームウェアのバージョンと同一のバージョンに変更するバージョン変更手段とを備える情報処理装置。
(付記8) 付記7記載の情報処理装置において、
各システムボードに割り当てられている前記パーティションを示す情報を記憶するシステムボード構成情報記憶手段を有し、
前記システムボードを交換するときに、前記バージョン変更手段は、前記システムボード構成情報記憶手段の情報を参照して交換対象のシステムボードのパーティションを特定し、前記パーティション別バージョン記憶手段から前記特定したパーティションの前記ファームウェアのバージョンを取得し、前記新たに使用されるシステムボードのファームウェアのバージョンを、取得した前記ファームウェアのバージョンと同じバージョンに変更する。
(付記9) 付記7記載の情報処理装置において、
前記システムボードを識別するためのボード識別情報を記憶するシステムボード構成情報記憶手段と、
最新のバージョンのファームウェアを記憶する最新バージョン記憶手段とを有し、
新たなパーティションが設定されて新たなシステムボードが使用された場合に、前記バージョン変更手段が前記新たに使用されたシステムボードのボード識別情報と、前記システムボード構成情報記憶手段に記憶されているボード識別情報を照合して未登録のシステムボードか否かを判定し、前記新たに使用されたシステムボードが未登録であった場合に、前記新たに使用されたシステムボードのファームウェアを、前記最新バージョン記憶手段に記憶されている最新のバージョンのファームウェアに変更する。
(付記10) 付記7、8または9記載の情報処理装置において、
前記システムボードは、現在割り当てられているパーティションで使用されているバージョンのファームウェアを記憶する第1の不揮発性メモリと、切り換え先のパーティションで使用されているバージョンのファームウェアを記憶する第2の不揮発メモリとを有し、
前記システムボードに割り当てられているパーティションを切り換えるときに、前記第1と第2の不揮発性メモリを切り換える。
(付記11) 付記7、8,9または10記載の情報処理装置において、
特定のパーティションの前記システムボードの前記ファームウェアのバージョンを更新した結果、動作異常が発生した場合に、前記バージョン変更手段は、前記各パーティションを活性状態のままで、動作異常が発生した前記特定のパーティションの前記システムボードの前記ファームウェアのバージョンを、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている前記特定のパーティションの旧のバージョンに戻す。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】計算機システムの基本構成を示す図である。
【図2】実施の形態の計算機の構成を示す図である。
【図3】(A)はパーティション別個別版数情報、(B)はシステムボード構成情報、(C)はOBPバックアップ情報の構成を示す図である。
【図4】システムボード交換時の版数の自動更新処理のフローチャートである。
【図5】システムボード交換時の自動更新処理の説明図である。
【図6】新規パーティションのシステムボードの版数の自動更新処理のフローチャートである。
【図7】パーティションの構成を変更する場合の自動更新処理のフローチャートである。
【図8】バンク切り換えの説明図である。
【図9】旧版へ戻す処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
11 計算機システム
12 パーティション別バージョン記憶部
13 システムボード構成情報記憶部
14 最新バージョン記憶部
15 バージョン変更部
16a〜16n システムボード
22 サービスプロセッサボード
24 サービスプロセッサ
28 コントローラ
31 バージョン別個別版数情報記憶部
32 システム構成情報記憶部
33 最新HCP記憶部
34 OBPバックアップ記憶部
41 パーティション別個別版数情報
42 システムボード構成情報
43 OBPバッアップ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のOSが動作可能な複数のパーティションを有し、各パーティションが1または複数のシステムボードで構成される計算機システムの前記システムボードのファームウェアのバージョン管理方法であって、
前記各パーティションで使用されている前記ファームウェアのバージョンと前記各パーティションとを対応づけてパーティション別バージョン記憶手段に記憶し、
前記システムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアのバージョンと、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている該当するパーティションの前記ファームウェアのバージョンが一致するか否かを判定し、両者のバージョンが一致しない場合には、前記新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアを、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている前記パーティションの前記ファームウェアのバージョンと同一のバージョンに変更するバージョン変更手段とを備えるファームウェアのバージョン管理方法。
【請求項2】
各システムボードに割り当てられている前記パーティションを示す情報をシステムボード構成情報記憶手段に記憶させ、
前記システムボードを交換するときに、前記システムボード構成情報記憶手段の情報を参照して交換対象のシステムボードのパーティションを特定し、前記パーティション別バージョン記憶手段から前記特定したパーティションの前記ファームウェアのバージョンを取得し、前記新たに使用されるシステムボードのファームウェアのバージョンを、取得した前記ファームウェアのバージョンと同じバージョンに変更する請求項1記載のファームウェアのバージョン管理方法。
【請求項3】
前記システムボードを識別するためのボード識別情報をシステムボード構成情報記憶手段に記憶させ、
最新のバージョンのファームウェアを最新バージョン記憶手段に記憶させ、
新たなパーティションが設定されて新たなシステムボードが使用された場合に、前記バージョン変更手段が前記新たに使用されたシステムボードのボード識別情報と、前記システムボード構成情報記憶手段に記憶されているボード識別情報を照合して未登録のシステムボードか否かを判定し、前記新たに使用されたシステムボードが未登録であった場合に、前記新たに使用されたシステムボードのファームウェアを、前記最新バージョン記憶手段に記憶されている最新のバージョンのファームウェアに変更する請求項1記載のファームウェアのバージョン管理方法。
【請求項4】
前記システムボードは、現在割り当てられているパーティションで使用されているバージョンの前記ファームウェアを記憶する第1の不揮発性メモリと、切り換え先のパーティションで使用されているバージョンの前記ファームウェアを記憶する第2の不揮発メモリとを有し、
前記システムボードの割り当て先のパーティションを切り換えるときに、前記第1と第2の不揮発性メモリを切り換える請求項1、2または3記載のファームウェアのバージョン管理方法。
【請求項5】
複数の0Sが動作可能な複数のパーティションを有し、各パーティションがファームウェアが実装された1または複数のシステムボードで構成される情報処理装置であって、
前記各パーティションで使用されている前記ファームウェアのバージョンを前記各パーティションと対応づけて記憶するパーティション別バージョン記憶手段と、
前記システムボードを交換するときに、新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアのバージョンと、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている該当するパーティションの前記ファームウェアのバージョンが一致するか否かを判定し、両者のバージョンが一致しない場合には、前記新たに使用されるシステムボードの前記ファームウェアを、前記パーティション別バージョン記憶手段に記憶されている前記パーティションの前記ファームウェアのバージョンと同一のバージョンに変更するバージョン変更手段とを備える情報処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図5】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−260330(P2006−260330A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−78506(P2005−78506)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.FRAM
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】