記録ヘッド装置、記録装置、記録方法
【課題】擬似フォーカスエラーの発生によるサーボの不安定化を解消する。
【解決手段】記録光を出力する光源と、光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み光源からの記録光を対物レンズに導く光学系とを備えた記録ヘッド装置を用いる。このときに対物レンズからの出射光の軸上色収差を、記録光の中心波長λ及び対物レンズの開口数NAに対してλ/(2NA2)以下とする。
【解決手段】記録光を出力する光源と、光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み光源からの記録光を対物レンズに導く光学系とを備えた記録ヘッド装置を用いる。このときに対物レンズからの出射光の軸上色収差を、記録光の中心波長λ及び対物レンズの開口数NAに対してλ/(2NA2)以下とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は記録ヘッド装置、記録装置、記録方法に関し、記録媒体への記録光の照射により情報記録を行う技術に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2009−540485号公報
【背景技術】
【0003】
光記録方式としてPTM(Phase Transition Mastering)方式と呼ばれるものがある。これは所定の原盤に無機レジストを塗布して、そこに集光されたレーザビームをフォーカスをかけながら照射する。そして原盤あるいはビームのいずれか、あるいは両方を動かして原盤上のビーム位置を相対的に制御し、所定の微細パターンを記録するものである。
【0004】
その代表的なものに、光ディスク記録装置があげられる。記録媒体の一種である光ディスクとして、BD(ブルーレイディスク・・・Blu-ray Disc:登録商標)やDVD(Digital Versatile Disc)等が知られているが、例えばこれらの光ディスクの製造工程における原盤マスタリングでは、PTM方式の記録装置が用いられることがある。
この場合、レジスト原盤上に、対物レンズで集光したレーザビームを、その焦点深度内にレジスト原盤表面上に追従するようにフォーカスをかけながら、レジスト原盤を回転させ、所定のトラックピッチにて、レジスト原盤上のレジスト材料を感光させる。これによりピット列あるいはグルーブを記録する。
一般的にはこの後に現像とよぶエッチング工程を行い、レジスト材料の段差によりピット列あるいはグルーブを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既にBD−ROM(Blu-ray Disc - Read Only Memory)の規格がリリースされ量産が開始されているが、技術の進歩と市場競争の両面から、ディスクの製造においては、より早くより安くより高品質な製品の供給が求められる。具体的には、製造におけるマスタリングにおける記録速度は当初1倍速つまりチャンネルクロック66MHzであったのに対して、今後より高速化(1.5倍、2倍、或いはそれ以上)の対応が必要となる。
【0006】
一方、PTM方式においては熱記録が行われる。照射されたビームスポットの中心付近のみが高温となりレジスト反応を起こさせて熱反応により記録が行われるわけだが、光源である半導体レーザの記録時における波長の広がりが空間的な軸上色収差を生じさせる。同時に、発光波長の各発光スペクトルへのパワー配分の変動という時間的なゆらぎによりアクチュエータが静止しているにも関わらず擬似的なフォーカスエラー信号を発生させ、これがフィードバックされてアクチュエータを余計に駆動させてしまい実質的なフォーカス誤差が重畳されて生じてしまう現象がある。
【0007】
このことにより従来の記録装置では、製造された製品の品質のばらつきを生ずる問題があった。さらには今後の高倍速記録やより微細なサイズの加工において所望の品質を達成できなくなる懸念があった。
【0008】
そこで本開示では、製品品質の向上や、今後の高倍速記録、より微細なサイズの加工において所望の品質を達成できるための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の記録ヘッド装置は、記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み、上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えると共に、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている。
【0010】
本開示の記録装置は、記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えると共に、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている記録ヘッド装置と、上記光源に対し発光駆動信号を与える駆動回路部と、上記記録ヘッド装置による上記記録媒体への記録光の照射のためのサーボ制御を行うサーボ部とを備える。
【0011】
本開示の記録方法は、記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えた記録ヘッド装置により、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差を、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対してλ/(2NA2)以下として、上記記録媒体への記録光の照射を行い、情報の記録を行う記録方法である。
【0012】
このような本開示の技術において、出射光の軸上色収差がλ/(2NA2)以下であるということは、記録光の焦点深度λ/(NA2)の50%以下ということである。つまり軸上色収差の許容最大値を、焦点深度の半分とする。例えば中心波長λ=405nm、NA=0.85とした場合、記録光の焦点深度=560nmとなるが、この場合に軸上色収差を280nm以下とする。
このように軸上色収差をできるだけ低く抑えておくことで、擬似フォーカスエラー信号による不安定化を防止し、記録精度を高めることができる。
例えばジャストフォーカスの状態であっても、軸上色収差と発光波長の時間的なゆらぎによって、フォーカスエラー信号成分が発生する。これが擬似フォーカスエラー信号である。擬似フォーカスエラー信号成分に基づいてフォーカスアクチュエータが駆動されると対物レンズが不要に駆動されてしまう。これによってさらなるフォーカスエラー信号成分が生ずる。軸上色収差を焦点深度の半分以下に抑えることで、このような不安定動作を低減又は解消できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、対物レンズからの出射光の軸上色収差がλ/(2NA2)以下とされていることで、軸上色収差の影響による不安定動作が低減又は解消される。これにより記録動作が行われた光ディスク等の記録媒体の製品品質の向上が実現される。また今後の高倍速記録や、より微細なサイズの加工において所望の品質を達成するためにも好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の実施の形態の記録装置のブロック図である。
【図2】実施の形態の光ピックアップの光学系の説明図である。
【図3】実施の形態の記録装置の構造の説明図である。
【図4】光ディスク製造工程の説明図である。
【図5】PTM記録のレーザ発光信号波形の説明図である。
【図6】実施の形態の軸上色収差の説明図である。
【図7】光源の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図8】試料1,2の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図9】試料3,4の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図10】試料5,6の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図11】試料7,8の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図12】ストレール比Sと波面収差W/λの関係の説明図である。
【図13】平行光の光軸調整の説明図である。
【図14】平行光のRIM強度バランス最適化の説明図である。
【図15】球面収差最適化の説明図である。
【図16】軸上色収差とフォーカスエラーの調査に用いる光学系の説明図である。
【図17】軸上色収差とフォーカスエラーの調査結果を示す図である。
【図18】軸上色収差0.490μmでの調査結果の波形図である。
【図19】軸上色収差0.307μmでの調査結果の波形図である。
【図20】軸上色収差0.084μmでの調査結果の波形図である。
【図21】軸上色収差とフォーカス駆動電流の調査結果を示す図である。
【図22】軸上色収差0.490μmでの調査結果の波形図である。
【図23】軸上色収差0.307μmでの調査結果の波形図である。
【図24】軸上色収差0.084μmでの調査結果の波形図である。
【図25】光学部品の組み合わせとピックアップ試料の説明図である。
【図26】ピックアップ番号とジッター及びピュアジッターを示す図である。
【図27】ピックアップ番号とディスクジッターを示す図である。
【図28】ピックアップ番号とディスクピュアジッターを示す図である。
【図29】ピックアップ番号とディスクジッターを示す図である。
【図30】ピックアップ番号とディスクジッターを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について次の順序で説明する。
<1.ディスク製造工程>
<2.原盤製造装置の構成>
<3.軸上色収差>
<4.波面収差>
<5.光学ピックアップの製造工程>
<6.軸上色収差によるフォーカスエラー、フォーカス駆動電流への影響の調査>
<7.ジッター調査>
<8.実施の形態のまとめ>
【0016】
<1.ディスク製造工程>
実施の形態では、本開示の記録装置、及び記録ヘッド装置の例として、光ディスク製造工程で原盤マスタリングを行う原盤製造装置、及びそれに搭載される光学ピックアップを挙げることとする。そこで、まず図4を参照して、光ディスクの製造工程を述べる。
【0017】
図4Aは原盤を構成する原盤形成基板100を示している。先ず、この原盤形成基板100の上に、図4Bのように、スパッタリング法により無機系のレジスト材料からなるレジスト層102を均一に成膜する。
本例では、原盤を製造するマスタリング工程として、無機系のレジスト材料を用いたPTMマスタリングを行うが、この場合、レジスト層102に提供される材料としては、遷移金属の不完全酸化物が用いられ、具体的な遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Ag等が挙げられる。
なお、レジスト層102の露光感度の改善のために基板100とレジスト層102との間に所定の中間層101(例えば蓄熱層)を形成しても良く、図4Bではその状態を示している。
【0018】
次に、後述する原盤製造装置を利用して、図4Cのようにレジスト層102に信号パターンとしてのピット列もしくはグルーブに対応した選択的な露光を施し感光させる。そしてレジスト層102を現像(エッチング)することによって、図4Dのように所定の凹凸パターン(ピット列やグルーブ)が形成された原盤103が生成される。
続いて、上記のように生成した原盤103の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させ(図4E)、これを原盤103から剥離させた後に所定の加工を施し、原盤103の凹凸パターンが転写された成型用のスタンパ104を得る(図4F)。
そのスタンパ104を用いて射出成型法によって熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなる樹脂製ディスク基板105を成形する(図4G)。
その後、スタンパ104を剥離し(図4H)、その樹脂製ディスク基板の凹凸面にAg合金などの反射膜106(図4I)と、膜厚0.1mm程度の保護膜107とを成膜することにより光ディスクを得る(図4J)。即ちピット列が形成された再生専用ディスクや、グルーブが形成された記録可能型ディスクが製造される。
【0019】
このような製造工程において、原盤103の製造に用いられるレジスト層102に適用されるレジスト材料は、遷移金属の不完全酸化物である。ここで、遷移金属の不完全酸化物は、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれた化合物のこと、すなわち遷移金属の不完全酸化物における酸素の含有量が、上記遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さい化合物のことと定義する。
例えば、遷移金属の酸化物として化学式MoO3を例に挙げて説明する。化学式MoO3の酸化状態を、組成状態を組成割合Mo1-xOxに換算すると、x=0.75の場合が完全酸化物であるのに対して、0<x<0.75で表される場合に化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。
また、遷移金属では1つの元素が価数の異なる酸化物を形成可能なものがあるが、この場合には、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より実際の酸素含有量が不足している場合とする。例えばMoは、先に述べた3価の酸化物(MoO3)が最も安定であるが、その他に1価の酸化物(MoO)も存在する。この場合には組成割合Mo1-xOxに換算すると、0<x<0.5の範囲内であるとき化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。なお、遷移金属酸化物の価数は、市販の分析装置で分析可能である。
このような遷移金属の不完全酸化物は、紫外線又は可視光に対して吸収を示し、紫外線又は可視光を照射されることでその化学的性質が変化する。この結果、無機レジストでありながら現像工程において露光部と未露光部とでエッチング速度に差が生じる、いわゆる選択比が得られる。また、遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト材料は、膜材料の微粒子サイズが小さいために未露光部と露光部との境界部のパターンが明瞭なものとなり、分解能を高めることができる。
【0020】
ところで、遷移金属の不完全酸化物は、酸化の度合いによってそのレジスト材料としての特性が変化するので、適宜最適な酸化の度合いを選択する。例えば、遷移金属の完全酸化物の化学量論組成より大幅に酸素含有量が少ない不完全酸化物では、露光工程で大きな照射パワーを要したり、現像処理に長時間を有したりする等の不都合を伴う。このため、遷移金属の完全酸化物の化学量論組成より僅かに酸素含有量が少ない不完全酸化物であることが好ましい。
上述のようにレジスト材料を構成する具体的な遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Ag等が挙げられる。この中でも、Mo、W、Cr、Fe、Nbを用いることが好ましく、紫外線又は可視光により大きな化学的変化を得られるといった見地から特にMo、Wを用いることが好ましい。
【0021】
このような光ディスク製造工程において、本例では、図4C、図4Dの原盤製造工程(マスタリング工程)で原盤103が製造される。なお本例のマスタリング工程は、後述する原盤製造装置によりPTM(Phase Transition Mastering)方式が用いられる。PTM方式について簡単に説明しておく。
【0022】
例えばCD(Compact Disc)方式やDVD(Digital Versatile Disc)方式などのディスクを製造する際には、まずフォトレジストを塗布した原盤を用意し、マスタリング装置(原盤製造装置)によって原盤上にガスレーザ等の光源からレーザを照射し、ピットに応じた露光パターンを形成していった。この場合、連続発振レーザであるレーザ光源からのレーザ光を、例えばAOM(Acousto-Optical Modulator)で光強度変調し、強度変調されたレーザ光を光学系によって原盤に導き、露光する。即ち、AOMにはピット変調信号である例えばNRZ(Non Return to Zero)変調信号を与え、このAOMによってレーザ光がピットパターンに対応した強度変調を受けることで、原盤上ではピット部分のみが露光されていく。
例えば図5Bには1つのピット形状を示しているが、AOMで変調されたレーザ発光強度は図5Cのようになる。原盤上のフォトレジストの露光はいわゆる光記録であるため、図5Bのようにレーザにより露光された部分がそのままピットとなる。
【0023】
一方、PTM方式では、無機レジストを塗布した原盤に対して、半導体レーザからのレーザ光を照射し、熱記録としての露光を行う。
この場合、レーザ照射による熱の蓄積を抑圧してピット幅の均一化を計るために、通常図5Aに示すようなパルス光で露光する。即ちこの場合には、一般にクロックに同期したNRZ変調信号が、そのHレベルの長さに応じてクロック周期より短い時間幅のパルス信号へ変換され、変換されたパルス変調信号に同期して直接変調可能な半導体レーザへ電力供給される。これによって図5Aのようなピット長に応じた加熱用のパルス発光PL1〜PLnとしてのレーザ出力が行われる。
【0024】
<2.原盤製造装置の構成>
PTM方式でマスタリングを行う本例の原盤製造装置(記録装置)の構成例を図1に示す。この原盤製造装置は、上記図4C、図4Dのマスタリング工程において、無機レジストを塗布した原盤103に対してレーザ照射による熱記録動作により、ピットパターンやグルーブパターンの露光を行う。
なお、図1ではマスタリング工程においてピット列としての凹凸パターンを形成する原盤製造装置の構成例を説明する。
【0025】
原盤製造装置には、ピックアップヘッド10が取り付けられる。ピックアップヘッド10には、光学ピックアップPUが搭載される。図1では図示の都合上、光学ピックアップPU内にはレーザダイオード11、フロントフォトディテクタ17、4分割フォトディテクタ20、対物レンズ26、アクチュエータ29のみを示しているが、その詳細な構成例は図2のようになる。
【0026】
図2に示すように光学ピックアップPUは、上半身部50と下半身部51に分けられ、それぞれの光学素子により記録レーザの照射光学系が形成される。まず図2で光学系の説明を行う。
【0027】
レーザ光源11としては、半導体レーザダイオードが用いられる。このレーザ光源11は、例えば中心波長λ=405nmのレーザ光を出力するものとされる。このレーザ光源11には、例えばRLL(1−7)pp等のNRZ変調信号が図5Aのようにパルス変調信号に変換されたレーザ駆動信号DLが供給され、このレーザ駆動信号DLに則って発光する。(RLL:Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))
レーザ光源11から出射したレーザ光は、往路コリメータレンズ12で平行光とされた後、アナモルフィックプリズム13でスポット形状が楕円から円形に変形され、固定レンズと可動レンズから成るエキスパンダレンズセットEXP#1を介して偏光ビームスプリッタ(PBS)14に導かれる。
エキスパンダレンズセットEXP#1は、後述するEOD(Electro Optic Deflector:電気光学偏向器)21へ入射させる光を完全平行となるように調整するために設けられている。
【0028】
偏光ビームスプリッタ14で反射された偏光成分は、フロントフォトディテクタ用コリメータレンズ22を介してフロントフォトディテクタ(FPD)17に入射される。
フロントフォトディテクタ17は、レーザ光源11からのレーザ光強度検出のために設けられている。フロントフォトディテクタ17は、受光した光量レベル(光強度)に応じた光強度モニタ信号SMを出力する。
【0029】
また偏光ビームスプリッタ14を透過した偏光成分は、EOD21、エキスパンダレンズセットEXP#2、λ/4波長板15、色消しレンズACを介して対物レンズ26に導かれ、この対物レンズ26で集光されて原盤103(無機レジスト層102が形成された原盤形成基板100)上に照射される。
【0030】
EOD21は、例えば記録可能型ディスクの原盤製作の際にウォブリンググルーブパターンの露光等を実行可能とするために設けられている。
固定レンズと可動レンズから成るエキスパンダレンズセットEXP#2は、対物レンズ26の出射光において三次の球面収差をゼロに調整するために設けられている。
λ/4波長板15は、直線偏光と円偏向の変換を行い、往路では偏光ビームスプリッタ14を透過した偏光成分が復路では反射するようにさせる。
色消しレンズACは、対物レンズ26の出射光について軸上色収差を小さくするために設けられる。
対物レンズ26は記録媒体(原盤103)に対する記録レーザ光の出射端となる。この例では対物レンズ26は、無限系非球面単玉レンズとされ、例えばNA=0.85、入射瞳はφ3.0mmとしている。
【0031】
上記のように対物レンズ26を介して原盤103に照射される中心波長405nmのレーザ光源11からのレーザ光は、原盤103上で焦点を結ぶことになる。原盤103はシリコンウェハ上に金属酸化物からなる無機レジストを成膜したもので、405nm近辺のレーザビームを吸収することで、照射部の特に中心付近の高温に加熱された部分が多結晶化する。
即ち、対物レンズ26で集光されたレーザ光スポットによる熱記録で、ピット列としての露光パターンが原盤103上に形成されていく。
なお、図4Dで述べたように、露光された原盤103をNMD3等のアルカリ現像液で現像することにより、露光した部分のみが溶出し、所望のピット形状としての凹凸パターンが形成されるものである。
【0032】
一方、原盤103に照射されたレーザ光の戻り光は、対物レンズ26,色消しレンズAC、λ/4波長板15、エキスパンダレンズセットEXP#2、EOD21を通過して偏光ビームスプリッタ14に達する。この場合、λ/4波長板14を往路と復路で2回通過していることで偏光面が90°回転されており、偏光ビームスプリッタ14で反射されることになる。
偏光ビームスプリッタ14で反射された戻り光は復路コリメータレンズ18,シリンドリカルレンズ19を介して4分割フォトディテクタ20の受光面に受光される。
4分割フォトディテクタ20の受光面は、例えば非点収差によるフォーカスエラー信号を得ることができるようにされている。
フォトディテクタ20の各受光面では、受光光量に応じた電流信号を出力して反射光演算回路31に供給する。
【0033】
図1に示す反射光演算回路31は、4分割の各受光面からの電流信号を電圧信号に変換すると共に、非点収差法としての演算処理を行ってフォーカスエラー信号FEを生成し、そのフォーカスエラー信号FEをフォーカス制御回路32に供給する。
フォーカス制御回路32は、フォーカスエラー信号FEに基づいて、対物レンズ26をフォーカス方向に移動可能に保持しているアクチュエータ29にフォーカス駆動電流FSを流す。そしてアクチュエータ29がフォーカス駆動電流FSによって、対物レンズ26を原盤103に対して接離する方向に駆動することで、フォーカスサーボが実行される。
【0034】
レーザ光源11に対するレーザ駆動信号DLは、記録データ生成部43,レーザ駆動パルス発生部42、レーザドライバ41により生成される。
記録データ生成部43は、原盤103にピット露光パターンとして記録するデータDTを出力する。例えば主データとして映像信号や音声信号、さらには物理情報、管理情報等のデータを出力する。
データDTは、レーザ駆動パルス発生部42に供給される。レーザ駆動パルス発生部42は、データDTに基づいて、ライトストラテジ処理として、実際にレーザ光源11をパルス発光駆動するためのレーザ駆動パルスを生成する。即ち図5Aに示したように、形成するピット長に応じたパルスP1〜Pnとしてのタイミング及び光強度でレーザ発光が行われるようにするためのパルス波形を生成する。
【0035】
このレーザ駆動パルスはレーザドライバ41に供給される。レーザドライバ41は、レーザ駆動パルスに基づいてレーザ光源11としての半導体レーザに対して駆動電流を印加する。これによって、レーザ駆動パルスに応じた発光強度でのレーザのパルス発光が行われることになる。
またフロントフォトディテクタ17から得られた光強度モニタ信号SMは、レーザドライバ41に供給される。レーザドライバ41は、光強度モニタ信号SMを基準値と比較することでレーザ発光強度を所定レベルに保つ制御を行う。
【0036】
なお、レーザドライバ41は、例えば0.01mW間隔で、レーザパワーを可変できるものとされている。
原盤103にマスタリング記録を行う場合には、コントローラ40はレーザドライバ41に対して記録パワー(例えば10〜15mW程度)のレーザ出力を実行させる。
【0037】
原盤103は、スピンドルモータ44によって回転駆動される。スピンドルモータ44は、スピンドルサーボ/ドライバ47によって回転速度が制御されながら回転駆動される。これによって原盤103は例えば一定線速度で回転される。
スライダ45は、スライドドライバ48によって駆動され、原盤103が積載された、スピンドル機構を含む基台全体を移動させる。即ち、スピンドルモータ44で回転されている状態の原盤103は、スライダ45で半径方向に移動されながら上記光学系によって露光されていくことで、露光されるピット列によるトラックがスパイラル状に形成されていくことになる。
スライダ45による移動位置、即ち原盤103の露光位置(ディスク半径位置:スライダ半径位置)はセンサ46によって検出される。センサ46による位置検出情報SSはコントローラ40に供給される。
【0038】
コントローラ40は、この原盤製造装置の全体を制御する。即ち、記録データ生成部43からのデータ発生動作の指示、レーザ駆動パルス発生部42での処理の制御、レーザドライバ41に対してのレーザパワー設定、スピンドルサーボ/ドライバ47によるスピンドル回転動作制御、スライドドライバ48によるスライダ45の移動動作の制御等を行う。
メモリ49は、コントローラ40において実行されるプログラムコードを格納したり、実行中の作業データを一時保管するために使用される。この図の場合、メモリ49は、例えばプログラムを格納するROM(Read Only Memory)、演算ワーク領域や各種一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)、EEP−ROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリを含むものとして示している。
【0039】
図3は、原盤製造装置におけるピックアップヘッド10、スライダ45、スピンドルモータ44の配置を示している。
原盤製造装置では、基台部60に対してピックアップヘッド10が取り付けられる。ピックアップヘッド10は上半身部50と下半身部51から成る。
基台部60に取り付けられたピックアップヘッド10の下方には、スピンドルテーブル61に積載された原盤103が位置する。
このスピンドルテーブル61がスピンドルモータ44によって回転されることで原盤103が回転される。
スピンドルテーブル61及びスピンドルモータ44は、スライダ45に搭載された状態となっている。このスライダ45がスライド軸62に沿って原盤の半径方向(x方向)に移動されることで、スピンドルモータ44及び原盤配置部61が移送され、ピックアップヘッド10と原盤103の相対位置が移動される。
【0040】
<3.軸上色収差>
以上の構成の本実施の形態のPTM方式のマスタリング記録を行う記録装置(原盤製造装置)、記録ヘッド装置(光学ピックアップPU)では、その光学性能としてレーザ光源11の波長範囲、対物レンズ26の性能、出射ビームの軸上色収差と波面収差を規定する。
まず軸上色収差について説明する。
【0041】
対物レンズ26は、その材料となる硝材が分散の性質を持つため、必ず軸上色収差を生じる。そこで必要に応じて上記構成のように、色消しレンズACを光路中に挿入して軸上色収差を低減させる。
色消しレンズACの有無のいずれにおいても、対物レンズ26からの出射ビームの軸上色収差aは光源を除いた光学系固有の値として、光源波長の発光スペクトル幅1[nm]あたりの、焦点距離の変動幅[μm]として次のようにあらわされる。
a[μm/nm]
【0042】
使用するレーザ光源11、この場合、波長405nm近傍の半導体レーザの発光スペクトル幅をΔλ[nm]とすれば、軸上色収差は次の通りである。
Δλ・a[μm]
【0043】
図6に示すように、対物レンズ26によって集光されたビームLBの焦点深度は、ピーク・トゥ・ピークにて、λ/NA2である。
NA=0.85、λ=405nmにおいては560nmとなる。
一方、記録装置のフォーカスサーボシステムのフォーカスサーボゲインを次のように設定した。原盤として使用するシリコンウェハ単体の厚み誤差は5μm以内、このシリコンウェハをスピンドルターンテーブルに装着したときの面ブレは10μm以内である。よってフォーカスサーボの残留誤差は十分に小さいことが望ましいが、設計上の制約を考慮して、フォーカス深度560nmに対してフォーカスサーボの残留誤差を1%以下にすることを目標とする。このときフォーカスサーボゲインの最小値は次のように計算される。
20log10(10[μm]/0.1[μm])=65 [dB]
BD−ROMディスクの記録最内周半径21[mm]における標準記録速度に対する2倍速記録時の回転速度は75[Hz]であるから、75[Hz]より小さい周波数におけるフォーカスゲインは65[dB]以上となるようにフォーカスサーボパラメータを設定した。BD−ROMディスクの記録において標準記録速度に対する2倍速よりもさらに高速の記録を行う場合には、フォーカスゲインを65[dB]以上確保する上限の周波数を、BD−ROMディスクの記録最内周半径における回転速度となるよう設定すればよい。
【0044】
焦点深度560nmに対してサーボ残留誤差は5.6nm以下、比率にして1%以下と十分に小さいことから、フォーカスサーボ残留誤差を生じさせる主な要因は、ほぼ光源波長の時間的ゆらぎと光学系の持つ軸上色収差のかけあわせによるフォーカス変動によるということになる。
【0045】
波長の広がりを含めた軸上色収差を軸方向の距離にてあらわすと、Δλ・a[μm]であるが、波長の広がりとサーボのフィードバックの組合せを想定するとフォーカス残留誤差は最大で2Δλ・a[μm]までの量を生じうることとなる。
このフォーカス残留誤差を焦点深度内に収めることで、これらの影響を許容範囲以内に抑えることが可能となる。その条件はつまり、次のように表すことが出来る。
Δλ・a≦λ/(2NA2)
【0046】
光学系の設計と光源波長の選別において、どのような組合せでも上記条件を満たすためには、両方において規定を設けておくことが望ましい。光源波長の発光スペクトルにおいて選別可能な発光スペクトル幅は、実績をもとに
Δλ≦1.0[nm]
との制限を設けることができる。この制限を、軸上色収差の条件式
Δλ・a≦λ/(2NA2)
に適用すると、光学系の軸上色収差aは、
a≦λ/(2NA2)
とすればよい。
つまり対物レンズ26からの出射光の軸上色収差が、記録レーザ光の中心波長λ及び対物レンズ26の開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされていることが適切となる。
なお、Δλが1.0[nm]よりも十分に小さいレーザ光源11を選別して適用できた場合には、光学系の軸上色収差の条件は上記に限らずともよいことにはなる。
【0047】
図6に、Δλが1.0[nm]、中心波長λ=405nmであった場合の軸上色収差を概念的に図示する。つまり404.5nm〜405.5nmの発光スペクトル幅を持つ場合である。
この場合、光学系内に色消しレンズACを設けない場合と、2種類の色消しレンズ(AC−A、AC−B)を設けた場合として、波長が404.5nm〜405.5nmでの焦点位置を示している。使用した対物レンズ26はNA=0.85のものである。
【0048】
色消しレンズなしの場合として示しているように、対物レンズ26単体での軸上色収差はa=0.0490[μm/nm]である。
図2の構成のように、色消しレンズAC−Aを対物レンズ26の直前に配置した場合、軸上色収差はa=0.0307[μm/nm]である。
また色消しレンズAC−Bを対物レンズ26の直前に配置した場合、軸上色収差はa=0.0084[μm/nm]である。
この例でいえば、色消しレンズAC−Bを選定することにより、光学系の軸上色収差aはa≦λ/(2NA2)の条件を満たすことがわかる。
【0049】
なお色消しレンズAC−A、AC−Bは、それぞれ成形精度や材料などの異なる或る製品としての色消しレンズであり、ここでは色消しレンズAC−Aは対物レンズ26と組み合わせたら軸上色収差a=0.0307[μm/nm]となった製品、色消しレンズAC−Bは対物レンズ26と組み合わせたら軸上色収差a=0.0084[μm/nm]となった製品と理解されたい。
【0050】
ここで、使用する半導体レーザの発光スペクトルを調べた。使用する半導体レーザは一般に使用されているGaN系マルチモード半導体レーザである。
チャンネルクロック132MHz、つまりBD−ROM規定再生線速度の2倍速にてRLL(1−7)PP変調方式のピットとランドの組合せの信号に対して所定のライトストラテジで発光させた。ライトストラテジ波形は、図5Aに示すとおりである。PL1からPLnを代表するピークパワーを13mWとした。
【0051】
測定結果を図7〜図11に示す。図7Aは、半導体レーザの試料1〜試料8についての測定結果としての数値を示している。
発光スペクトルにおける、ピーク強度に対する1/e2包絡線幅により規定した最短波長λmin及び最長波長λmax、これらの平均値としての中心波長、そしてこれらの差分としての包絡線幅である。
図7Bは、図7Aの測定値をグラフ化したものである。
また図8〜図11には、試料1〜試料8について実際に測定された発光スペクトルを示している。
【0052】
この測定結果では、各試料の発光スペクトルにおける中心波長は404nm〜407nmの間に分布し、発光スペクトルの包絡線幅は、いずれも1/e2幅にて0.9nm未満であった。上述のΔλ≦1.0[nm]という制限は妥当といえる。
但し、この測定結果は、ある時点での測定にかかる時間内の平均された測定結果にすぎない。発光スペクトル測定結果における包絡線幅と中心波長は時間変動の影響を殆ど受けないのであるが、発光スペクトルの各成分のパワー配分比率は常に揺らいでいる。
【0053】
発光スペクトルの各ピーク値は縦モードと呼ばれ、半導体レーザダイオードの共振器長と導波路等価屈折率による共振条件から導かれた、ある波長間隔の発光スペクトルピークを持ちながら活性層結晶構造のバンドギャップ近傍に相当する波長を含む包絡線幅内に分布する。しかし各発光スペクトルピークに配分されるパワーの比率の分布は揺らいでおり常に一定ではない。
例えばわかりやすく説明するために縦モードに含まれる任意の発光スペクトルピーク1に含まれるパワーP1と、別の発光スペクトルピーク2に含まれるパワーP2を選び出し、これらを比較すると、ある時刻においてはP1>P2であり、また別の時刻においてはP1<P2となることが起こりうる。その大小関係が逆転しない場合、つまり常にP1>P2、あるいはP1<P2であったとしても、P1とP2の比率P1/P2は常に変動し続けている。
【0054】
発光スペクトルの包絡線幅内に含まれるいずれの発光スペクトルピークを比較しても同様のことが起こりうる。この現象は不確定原理による量子揺らぎによるものであり避けることが出来ない。
ここで特に問題視しているのは、各縦モードに配分されるパワー比率の時間的な揺らぎである。対物レンズ26から出射された集光ビームの焦点位置が、光源波長の広がりと光学系の軸上色収差によって、軸方向にぼやけてパワー分布するという空間的なぼやけと組み合わさったときに、この空間的なぼやけがさらに時間的な揺らぎによって変動する。
つまり焦点位置近傍のパワー分布が軸方向において時間的に揺らぐという、熱記録においては致命的な現象が発生することとなる。これは擬似的にフォーカスエラー信号を発生させ、これがフォーカスサーボによりさらにフィードバックされて空間的なぼやけをさらに増大させてしまうことになる。
【0055】
そこで本実施の形態では、対物レンズ26の出射光の軸上色収差がλ/(2NA2)以下であるようにする。つまり軸上色収差の許容最大値を、焦点深度の半分とする。
このように軸上色収差を焦点深度の半分以下に低く抑えておくことで、擬似フォーカスエラー信号による不安定化を防止し、記録精度を高めることができる。
【0056】
<4.波面収差>
次に対物レンズ26より出射したビームの波面収差について説明する。
一般的に言われるマレシャルの評価基準によると、ビームの結像性能としてRMS波面収差が0.07[λrms]以下であることが求められる。これは波面収差による集光ビームの劣化の判断基準としてストレール比Sが0.8以上を確保するために必要な指標である。この条件を満たすためのストレール比S1の条件式は次式であらわされる。
S1=1−(2πW1/λ)2≧0.8
ここでW1は波面収差であり、波長にて規格化した値(W1/λ)は、単位[λrms]での表記に相当する。この不等式により、次式が導き出される。
W1/λ≦0.07
図12に次式で表されるストレール比Sと波面収差W/λ[λrms]の関係を表すグラフを示している。
S=1−(2πW/λ)2
【0057】
このマレシャルの評価基準による指標は古典的な光学的指標としてほぼ無収差とみなせる基準である。
ただし、PTM方式の熱記録においては、たとえこの条件を満たすストレール比Sであっても熱記録に与える影響を無視することができない。その影響について考察すると、近似的に次の関係が成り立つ。
【0058】
つまり完全無収差の状態に対して、波面収差が生じてストレール比Sが1未満である状況においては、記録に必要とされるピークパワーは近似的に1/S倍である。NA=0.85で波長405nmにおけるエアリー径1.22λ/NA=581nmに対して、最小記録ピットサイズの理想値はBD−ROMの2T相当の149nmであり、実質的には開口部直径で約200nm程度である。
エアリー径の約34%に集中したスポット中のエネルギーが熱反応を起こして、レジスト材料を変質させている。そこにはスキャン速度と蓄熱と放熱のバランスが相互に作用しており、また熱反応領域に直接寄与しないスポットの裾野による熱アシストも間接的に寄与している。記録速度つまりスキャン速度を速めれば速めるほど波面収差発生によるストレール比Sの劣化が顕著にあらわれてくるのでこの影響を最小限にとどめなければならない。
【0059】
仮に波面収差が0.07[λrms]でストレール比Sが0.8であるとした場合には、波面収差が十分小さい場合における記録時のピークパワーが13mWであるとして、近似的に16.3mWものピークパワーが必要とされる。さらにピークパワーを上げて補正しても波面収差そのものが劣化していることで露光部分の分解能が損なわれてしまうことが十分に予想される。
ストレール比Sによる波面収差の基準は、システムおよび用途によって定められるべきものであり、PTM方式の熱記録を行う光学系においては、継続的に実現可能な波面収差でかつストレール比Sの低下を最小限に抑えるための閾値として、S2=0.95と定める。
S2=1−(2πW2/λ)2≧0.95
これを満たすための対物出射ビーム波面収差条件は、
W2/λ≦0.035
である。
【0060】
これが対物レンズ26からの出射光の波面収差が、記録光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下であるとする条件の根拠である。
後述するピックアップヘッド10の製作において、波面収差0.035[λrms]以下を実現することができる。記録パワーのばらつきは十分に抑えられており、妥当な基準であることを確認した。ディスクのジッターも十分に低く安定していることから、この波面収差範囲であればほぼ無収差であるとみなすことができる。
【0061】
<5.光学ピックアップの製造工程>
ピックアップヘッド10の製造工程は次の通りである。
平行光および集光スポットの波面収差を測定するのにはシャック=ハルトマン波面センサを用いる。
【0062】
最初に所定の固定方法に基づき、各光学部品を筐体へ装着する。各部品は必要に応じて各軸方向の調整機構を有しており、波面収差やビーム強度をモニタしながら位置の調整を行うことができる。なおウォブリングを伴うグルーブ等の記録も行うことができるよう、図2に示したようにEOD21を光路中に配している。
【0063】
[1]平行光の非点収差
平行光の波面収差を偏光ビームスプリッタ14の出力段階(上半身部50)で最適化する。
レーザ光源11(半導体レーザダイオード)の直後の往路コリメータレンズ12の光軸方向の位置調整により、平行光の非点収差を偏光ビームスプリッタ14の出力段階(上半身部50)で最小化する。
なお、この[1]平行光の非点収差と、後述の[2][3]の工程は順不同であり、所定のビーム品質が得られるまでそれぞれを追いこんで行けばよい。
これらの工程により上半身部50より出射される平行光の品質を確定する。
【0064】
[2]平行光の発散角
平行光の発散角を偏光ビームスプリッタ14の出力段階(上半身部50)で最適化する。
即ち偏光ビームスプリッタ14の出射段階にて完全平行となるように、エキスパンダレンズセットEXP#1のレンズ間隔を調整する。なお、2つのレンズのうち凹レンズホルダに光軸方向位置調整機構をもたせており、凹レンズ側を可動レンズとしている。
【0065】
[3]平行光の光軸傾き調整
平行光の光軸傾きを偏光ビームスプリッタ14の出力段階(上半身部50)で最適化する。
レーザ光源11の固定ジグのx−y方向(zは光軸方向)を調整して、偏光ビームスプリッタ14の出射段階での光軸を基準の光軸方向に合わせる。
上半身部50と下半身部51の両筐体の接合面を基準面とし、これに垂直な方向を基準の光軸方向と定める。
【0066】
図13A、図13Bに上半身部50と下半身部51の側面図、上面図を示している。上記[1]、[2]、[3]の調整が完了したら、図示のように、上半身部50と下半身部51を取付ネジ53で4箇所にて接合面を固定する。下半身部51にはまずEOD21を格納してあるEODホルダユニット52を用いる。取付けネジ53を緩めることで上半身部50と下半身部51は基準面つまり光軸に垂直な接合面を介して相対位置を調整することができる。
【0067】
[4]平行光のRIM強度バランス最適化
次に図14に示すように、エキスパンダレンズセットEXP#2とλ/4波長板15(図示省略)を装着したエキスパンダユニット55を装着する。
エキスパンダレンズセットEXP#2の凸レンズ側はz軸方向にレンズホルダごと移動させ完全平行となる位置近傍にて任意の位置で固定できる機構となっている。
あらかじめ別の基準平行光源を用いて透過光が完全平行となるようにエキスパンダレンズセットEXP#2のレンズ間隔を調整しておく。
【0068】
エキスパンダレンズセットEXP#2の出射ビームを、アパーチャ200(φ3.5mm)を透過させてビームプロファイラでモニタしながら、上半身部50をx−y方向に調整する。x,y方向ともに、光軸中心位置を中心とする円形φ3.0mmに相当するエリアの両エッジのRIM強度バランスを、x方向に相当する両エッジのRIM強度をRx1、Rx2としたときに|Rx1−Rx2|/(Rx1+Rx2)≦10%、y方向の両エッジに相当するRIM強度をRy1、Ry2としたときに|Ry1−Ry2|/(Ry1+Ry2)≦10%となるようにする。
RIM調整が完了した時点で上半身部と下半身部を固定する4箇所の取付ネジ53をしめて完全に固定する。
【0069】
[5]球面収差最適化
図15に示すように、対物レンズ26と色消しレンズACを搭載したアクチュエータ29(アクチュエータユニット56)を装着する。対物レンズ26の出射ビームスポットを波面センサでモニタし波面収差を測定しながらエキスパンダレンズセットEXP#2の凸レンズ位置を調整して対物レンズ26の出射ビームの3次の球面収差をゼロに調整する。
【0070】
[6]フロントフォトディテクタ調整
偏光ビームスプリッタ14にて一部分岐された光強度がフロントフォトディテクタ17の受光部にて最大の感度となるように、フロントフォトディテクタ用コリメータレンズ22のz方向位置調整、及びフロントフォトディテクタ17のx−y位置調整を行う。ここでは分岐した戻り光の光軸をz軸とする。
【0071】
[7]4分割フォトディテクタ調整
マスタリング工程における露光(カッティング)と同一の状況となるように、光学ピックアップPUとレジストつき原盤を配置させ、レーザ光源11(半導体レーザダイオード)をリード状態(レジストを感光させない十分に低いパワー、たとえば盤面上にて0.5mW)で原盤に照射させる。そして反射したビームの光強度が4分割フォトディテクタ20の受光面にて最大の感度となるように、かつ4分割フォトディテクタ20の4つの受光面の受光光強度が均等となるように、復路コリメータレンズ18のz位置と4分割フォトディテクタ20のx−y位置を調整する。ここでは反射した光の光軸をz軸とする。
【0072】
あらかじめ選別して十分な光学品質を確保した光学素子を用いて、以上による入念な調整を行うことで、対物レンズ26の出射ビームの品質として波面収差0.035[λrms]以下を安定的に得ることが可能である。
【0073】
<6.軸上色収差によるフォーカスエラー、フォーカス駆動電流への影響の調査>
軸上色収差によるフォーカスエラー信号FE及びフォーカス駆動電流FSへの影響を調査した。
この調査においては、軸上色収差の異なる3種の光学ピックアップ(PU#1,PU#2,PU#3)を製作した。
図16に光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3のエキスパンダレンズセットEXP#2から対物レンズ26までの構成を示している。(図2の下半身部51内の光学系でEOD21の図示を省略)
【0074】
・PU#1:対物レンズNA=0.85、色消しレンズ無し、軸上色収差=0.490[μm/nm]
・PU#2:対物レンズNA=0.85、色消しレンズAC−A、軸上色収差=0.307[μm/nm]
・PU#3:対物レンズNA=0.85、色消しレンズAC−B、軸上色収差=0.084[μm/nm]
【0075】
これら光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3は、いずれも同一光学系において、色消しレンズACを差し替えることにより製作したものである。
また光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3でレーザ光源11として用いた半導体レーザダイオードの記録条件における中心波長は405.9nm、発光スペクトルの1/e2包絡線幅において0.66μmであった。これは、先の発光スペクトル測定における試料3に相当する光源である。
これにより実際の軸上色収差と波面収差は次のようになった。
【0076】
・PU#1:対物レンズNA=0.85、色消しレンズ無し、軸上色収差=0.323[μm]、波面収差=0.026[λrms]
・PU#2:対物レンズNA=0.85、色消しレンズAC−A、軸上色収差=0.203[μm]、波面収差=0.035[λrms]
・PU#3:対物レンズNA=0.85、色消しレンズAC−B、軸上色収差=0.055[μm]、波面収差=0.035[λrms]
【0077】
光学ピックアップPU#1においては、λ/(2NA2)=0.28μmを超える軸上色収差であり、光学ピックアップPU#2、PU#3においては、λ/(2NA2)=0.28μmを下回る軸上色収差である。
【0078】
これら光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3における軸上色収差がフォーカスサーボに与える影響について調べた。
上述のBD2倍速記録条件にてレーザを発光させ、シリコン原盤上にフォーカスをかけたときの、フォーカスエラー信号FEのノイズ成分を測定した。
レジストが感光して反射率が変化することのない様、また回転による動的なノイズ成分の影響を除去するため、レジストなしのシリコン原盤表面に直接ビームを照射して回転させず静止した状態でフォーカスをかけた。
【0079】
フォーカスエラー信号FEの電圧値を、対物レンズ26を搭載しているアクチュエータ29の駆動距離に換算して結果をまとめた。なお時間変動の影響を知るために測定はそれぞれ3回ずつ行っている(測定1、測定2、測定3)。
測定結果を図17に示す。図17では光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3のそれぞれについて、測定1、測定2、測定3としてのフォーカスエラー信号のピーク・トゥ・ピーク値、及びRMS値を示している。
また図18,図19,図20には、それぞれについて測定されたフォーカスエラー信号FEの波形とフォーカスエラー信号FEのスペクトルを示している。
【0080】
軸上色収差の焦点深度に対する比率を計算すると、各光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3において次の値となる。
PU#1:58%
PU#2:36%
PU#3:10%
この場合は、光学ピックアップPU#2,PU#3が、軸上色収差が焦点深度の50%以下となっている。つまり軸上色収差がλ/(2NA2)以下という条件を満たしている。
【0081】
図17からわかるように、ピーク・トゥ・ピーク値、RMS値ともに、光学ピックアップPU#1においては、光学ピックアップPU#2,およびPU#3にくらべ、フォーカスエラーつまりフォーカスサーボ残留誤差がおよそ2倍であった。
また図18,図19,図20にも見られるように、スペクトル解析においても光学ピックアップPU#1において特定の周波数に生じているピーク成分が、光学ピックアップPU#2,PU#3において十分に抑圧されている。
【0082】
なお、データの取得にはデジタルオシロスコープを用いた。サンプリング周波数は10kHzとし、スペクトル解析では5kHzまでを有効なデータとしている。
【0083】
次に同様に光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3における軸上色収差がアクチュエータ29へ印加するフォーカス駆動電流FSに与える影響について調べた。
BD2倍速記録条件にてレーザを発光させ、シリコン原盤上にフォーカスをかけたときの、アクチュエータ29に流れるフォーカス駆動電流FSのノイズ成分を測定した。
レジストが感光して反射率が変化することのない様、また回転による動的なノイズ成分の影響を除去するため、レジストなしのシリコン原盤表面に直接ビームを照射して回転させず静止した状態でフォーカスをかけた。
【0084】
この場合も、時間変動の影響を知るために測定はそれぞれ3回ずつ行っている(測定1、測定2、測定3)。
測定結果を図21に示す。図21では光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3のそれぞれについて、測定1、測定2、測定3としてのフォーカス駆動電流FSのピーク・トゥ・ピーク値、及びRMS値を示している。
また図22,図23,図24には、それぞれについて測定されたフォーカス駆動電流FSの波形とフォーカス駆動電流FSのスペクトルを示している。
【0085】
図21からわかるように、ピーク・トゥ・ピーク値、RMS値において、光学ピックアップPU#1のフォーカス駆動電流は、光学ピックアップPU#2、PU#3にくらべて、およそ2ないし3倍であった。
また図22,図23,図24からわかるように、スペクトル解析においても光学ピックアップPU#1において特定の周波数に生じているピーク成分が、光学ピックアップPU#2,PU#3において十分に抑圧されている。
【0086】
以上のフォーカスエラー信号FEとフォーカス駆動電流FSの測定により、軸上色収差の焦点深度に対する比率が50%以下、つまり軸上色収差がλ/(2NA2)以下という条件を満たしていると、光源波長の時間的な波長揺らぎによる軸上色収差の影響を十分に低減できていると考えてよいことがわかる。
【0087】
<7.ジッター調査>
上半身部50と下半身部51のいくつかの組合せの光学ピックアップPU(上記PU#2、PU#3を含む)、BD−ROM規格に基づいたディスクを作製した。
カッティングにおいては規定の線速度4.917m/s(チャンネルクロック66MHz)に対して2倍の線速度と132MHzのチャンネルクロックを用いた、いわゆる2倍速記録を行っている。
シリコン原盤上に蓄熱層70nm、無機レジスト層70nmが形成された原盤103に対して、線速度=4.917×2/0.9935=9.898m/s(0.9935は成形収縮率)にて回転させ、所定の記録条件にて各光学ピックアップPUによるディスク上でジッターを最小化するように、ライトストラテジの最適化を行っている。
ピークパワーには各光学ピックアップPUに応じて13〜14mWを適用し、ディスク上でジッターを最小化するようなピークパワーを選んでいる。
【0088】
上半身部50のレーザ光源11には、図7で述べた発光スペクトル測定に用いた光源の試料3と試料7を用いた。
発光スペクトルの1/e2包絡線幅(つまり発光スペクトル幅Δλ)は、試料3にて0.66[nm]、試料7にて0.86[nm]である。
下半身部51には対物レンズ26とエキスパンダレンズセットEXP#2の組合せとして(α)、(β)、(γ)の3種を用いた。
【0089】
各組合せにおいて色消しレンズACを挿入しない状態、色消しレンズAC−Aを用いた状態、色消しレンズAC−Bを用いた状態との組合せを用いて、光学ピックアップPUとしての試料(ピックアップ(i)〜(vi))においてディスクを作製して評価を行った。
ピックアップ(i)〜(vi)の光学部品の組み合わせを図25Aに示している。
【0090】
対物レンズ26のNAは0.85である。色消しレンズACとレーザ光源11の発光スペクトル幅Δλの組合せにより、軸上色収差の値を焦点深度(NA=0.85、λ=405nmにおける560nm)にて規格化した比率であらわすと、図25Bの通りである。図25Bでは、図25Aのピックアップ(i)〜(vi)の「軸上色収差/焦点深度」の値をそれぞれ示している。この場合、ピックアップ(i)(ii)は75%、ピックアップ(iii)(iv)は47%、ピックアップ(v)は36%、ピックアップ(vi)は10%である。従ってピックアップ(iii)〜(vi)は軸上色収差の焦点深度に対する比率が50%以下となっている。
【0091】
光学部品の光学特性は所定の品質を満足しているが、ある程度のばらつきを持っており、対物出射ビームの波面収差は図25Cの通りであった。
この場合、ピックアップ(i)は0.026[λrms]、ピックアップ(ii)は0.023[λrms]、ピックアップ(iii)は0.030[λrms]、ピックアップ(iv)は0.027[λrms]、ピックアップ(v)(vi)は0.035[λrms]である。従ってピックアップ(i)〜(vi)は、波面収差が、記録レーザ光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下である。
【0092】
各ピックアップ(i)〜(vi)を用いて、所定のプロセスに基づきカッティング後の原盤103にて現像を行い、メッキ工程でニッケルマスターにピット形状を転写して、ニッケルマスターの裏面を研磨して滑らかにした後に成形装置へ取り付けるために内径と外径を打ち抜いて、ニッケルマスタースタンパ104とする。これを射出成形によりポリカーボネート1.1mm厚基板上にピット転写を行って、反射膜、0.1mm厚みのカバー層形成を行ってシングルレイヤー構造のBD−ROMディスクを作製した。
【0093】
こうして出来たディスクの一枚を評価装置にて再生し、再生されたRF波形に所定のリミットイコライザ処理を行い、アシンメトリ補正を施した閾値にて2値化を行い、PLLにて生成されたクロック信号の立ち上がりタイミングからの、2値化信号の立ち上がりエッジタイミングと立ち下がりエッジタイミングの時間ズレの統計を取ってディスクジッターを求める。これらの内、再生波形においてピットの開始位置に相当するエッジ(Leading Edge=LE)に対するジッターをLEジッター、同様にピットの終了位置に相当するエッジ(Trailing Edge=TE)に対するジッターをTEジッターとする。
【0094】
また、ピュアジッターの測定も行った。ディスク上にはRLL(1−7)PP変調方式に基づいてピット長とランド長の両方において、2T〜8Tおよび同期パターンとして用いられる9Tの組合せのものが記録されているが、ジッターの測定においては符号間干渉と呼ばれる成分が含まれている(なお、「T」はチャネルクロック周期)。
着目するLEあるいはTEを含むピットに対して、直前および直後のランド長が2T〜9Tのいずれであるか、さらにその先のピット長が2T〜9Tのいずれであるか、によってジッターの分布の平均値がそれぞれ異なる。
これらの各組合せにおける分布の平均値のずれを補正して、仮想的にずれがないものとして算出したジッター値がピュアジッターである。つまり符号間干渉の影響を除いたジッターである。符号間干渉の影響を除去しているということは記録系の本来の性能を現す指標であるということができると同時に、ディスク記録時の信号処理において各組合せにおいてあらかじめこのズレ分を補正して記録を行うことで原理的に到達できる最小のジッター値であるといえる。
【0095】
ピックアップ(i)〜(vi)のディスクにおいてジッターとピュアジッターを測定した結果を図26に示す。また、図26のLE,TEのジッター値をグラフ化したものが図27Aである。図27Bは、ピックアップ(i)と(iii)、(ii)と(iv)、(v)と(vi)についてのジッター差分を示している。
また、図26のLE,TEのピュアジッター値をグラフ化したものが図28Aである。図28Bは、ピックアップ(i)と(iii)、(ii)と(iv)、(v)と(vi)についてのピュアジッター差分を示している。
【0096】
色消しレンズ無しと色消しレンズAC−Aの各場合の比較においては、ピックアップ(i)と(iii)および(ii)と(iv)を比べればよい。
図27B、図28Bからわかるように、色消しレンズAC−Aによるディスクは、色消しレンズ無しに比べてジッター、ピュアジッターともに0.5%以上の低減効果があった。
【0097】
色消しレンズAC−Aと色消しレンズAC−Bの場合の比較においては、ピックアップ(v)と(vi)を比べればよい。
図27B、図28Bに示されるように、色消しレンズAC−Bによるディスクは、色消しレンズAC−Aに比べてジッターは0.1%増加、ピュアジッターは0.1%低減している。
プロセスや測定のばらつきも考慮し、色消しレンズ無しから色消しレンズAC−Aへの変化量とも比べると、色消しレンズAC−Aと色消しレンズAC−Bの差はほとんど無くこれらの性能はほぼ同等と考えてよい。
【0098】
これらの結果より、軸上色収差/焦点深度の比を50%以下に抑えることで、軸上色収差がディスクのジッターおよびピュアジッターに与える影響を最小化できることが確認された。
【0099】
さらに、光学ピックアップPUの安定性を確認するために、ピックアップ(I)から(V)を製作してカッティング記録を行い、ディスクを作製して評価した。
対物レンズ26のNAは0.85である。光学系に用いたレーザ光源11の発光波長の中心値はいずれも403〜407nmの範囲に入るものを選別しており、発光スペクトル幅Δλはいずれも1nm以下である。光学系の軸上色収差は光源波長の発光スペクトル幅Δλ=1nmに対する値として、0.084[μm/nm]となるような色消しレンズAC−Bを採用している。つまりピックアップ(I)から(V)における軸上色収差/焦点深度の値はいずれも0.084/0.56=15%以下となっている。
【0100】
ディスクのカッティング記録においてはチャンネルクロック99MHzつまりBD−ROM規定再生線速度の1.5倍速相当周波数にてRLL(1−7)PP変調式のピットとランドの組合せの信号に対して所定のライトストラテジで発光させた。
シリコン原盤上に蓄熱層70nm、無機レジスト層70nmが形成された原盤103に対して、線速度=4.917×1.5/0.9935=7.424m/s(0.9935は成形収縮率)にて回転させ、各ピックアップに対して同一のライトストラテジを適用して記録を行った。このライトストラテジはあるピックアップにおいてディスク上でジッターを最小化するようにあらかじめ最適化を行っておいたものである。
【0101】
ライトストラテジ波形は、図5Aに示すとおりである。PL1からPLnを代表するピークパワーには各ピックアップに応じて12〜13mWを適用し、ディスク上でジッターを最小化するようなピークパワーを選んでいる。
【0102】
各ピックアップ(I)〜(V)を用いて、所定のプロセスに基づきカッティング後の原盤103にて現像を行い、メッキ工程でニッケルマスターにピット形状を転写して、ニッケルマスターの裏面を研磨して滑らかにした後に成形装置へ取り付けるために内径と外径を打ち抜いて、ニッケルマスタースタンパ104とする。これを射出成形によりポリカーボネート1.1mm厚基板上にピット転写を行って、反射膜、0.1mm厚みのカバー層形成を行ってシングルレイヤー構造のBD−ROMディスクを作製した。
【0103】
各ピックアップ(I)〜(V)について、対物レンズ出射ビームの波面収差と作製したディスクのジッター測定値は図29に示す通りであった。図30は図29のジッター値をグラフ化したものである。
波面収差はいずれも0.024[λrms]以下、ディスクのジッター測定値は4.4%以下となった。
【0104】
図26において軸上色収差/焦点深度が50%以下であるピックアップ(iii)、(iv)、(v)、(vi)のジッター測定値は、軸上色収差/焦点深度が50%を超える場合のジッター測定値に比べて十分に低減された値としてLE、TEともに4.3%〜4.7%の範囲に分布しているが、この値の分布と比較すると、ピックアップ(I)〜(V)においてもディスクのジッター測定値の範囲はLE,TEともに4.1%〜4.4%と十分に低く安定した結果であった。
【0105】
各ピックアップ(I)〜(V)のレーザ光源11の発光スペクトル幅Δλはいずれも1nm以下であり、軸上色収差/焦点深度は、少なくとも0.084/0.560=15%以下である。従って軸上色収差の焦点深度に対する比率が50%以下という条件を十分に満足している。波面収差も0.035[λrms]以下を十分に満たしている。
ピックアップ(I)〜(V)のいずれにおいても同一のライトストラテジを適用することにより十分に低いディスクジッター値を安定して得ることができた。
【0106】
<8.実施の形態のまとめ>
以上実施の形態について説明してきた。実施の形態の光学ピックアップPU(記録ヘッド装置)は、PTM記録方式に用いるもので、記録媒体である原盤103は無機レジスト膜102が形成されており、無機レジスト膜102に対して対物レンズ26から記録光を照射して熱記録を行う。
そして対物レンズ26からの出射光の軸上色収差が、記録光の中心波長λ及び対物レンズ26の開口数NA(例えば0.85以上)に対して、λ/(2NA2)以下とされている。
NA=0.85、記録レーザ光の中心波長λを405nm、発光スペクトル幅Δλが1nm以下とした場合、記録レーザ光の焦点深度=560nmとなるが、この場合に軸上色収差を280nm以下としている。
軸上色収差の低減には、色消しレンズACを用いることが有用である。
また対物レンズ26からの出射光の波面収差が、記録レーザ光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下である。
【0107】
このような実施の形態では、次のような効果が得られる。
まず、PTM記録方式で用いる光学ピックアップPUにおいて、軸上色収差/焦点深度の比率を50%以下に抑えることで、光学系が本来持つ軸上色収差の影響を最小化することができる。
これにより軸上色収差の影響による不安定動作、例えば擬似フォーカスエラーによるサーボ不安定化が低減又は解消される。これにより記録動作が行われた光ディスク等の記録媒体の製品品質の向上が実現される。またさらなる高倍速記録や、より微細なサイズの加工において所望の品質を達成するためにも好適となる。
【0108】
加えて、対物レンズ26からの出射ビームの波面収差を0.035[λrms]以内に抑えることで、製造されたピックアップのばらつきを十分に小さく、ほぼ無収差とみなせる状態にまで抑えることができる。
これは、ピックアップ製造者においてピックアップの出荷前確認時の性能管理を行いやすくする効果がある。つまりばらつきの少ない品質を作りこむことで、その性能の検査の効率を上げることができ、検査に関わるコストを削減し、トータル的にもコストを下げることができる。
具体的には製造したピックアップでディスクを作ってそのディスクの性能つまりおもにジッターに代表される項目によってそのピックアップの品質を保証しているのだが、各ピックアップの性能が近いことで、ディスクの試作における条件設定に同じものを適用することができて、ディスク試作の回数が1回で済む。もしばらつきがあれば、ライトストラテジを最適化するために2回以上のディスク試作が必要となる。
【0109】
またピックアップ性能ばらつきが小さいと、ディスク製造者にとってもメリットがある。光学ピックアップPUの半導体レーザには寿命があり、数年単位で定期的に光学ピックアップPUを交換する必要が生じるが、交換前後で同じライトストラテジを適用できれば、交換後の条件出しディスク試作が1回ですむ。
【0110】
またPTM記録方式において、軸上色収差と波面収差を上記のように管理しない場合よりも、上記の管理を行うことで、軸上色収差の影響は最小化され、波面収差はほぼ無収差とみなせる状態となっており、さらなる高倍速記録、あるいはより高密度の記録が安定的に可能となる。
【0111】
本開示の技術は、実施の形態に限られるものではない。実施の形態ではディスク製造工程における原盤製造装置及びその光学ピックアップPUとしての例を挙げたが、これに限られない。
例えば無機レジスト膜に対する熱記録動作として、ピットやグルーブ等を形成する記録装置に広く適用できる。また情報をピット等として記録するものではなく、レジスト膜面にピット等で描画を行う装置としても適用可能である。
【0112】
また、本開示の技術は再生ヘッド装置にも活用できる。特に高密度再生記録用のヘッド装置として好適である。
即ち光源からの再生光の記録媒体への出射端となる対物レンズからの出射光の軸上色収差が、再生光の中心波長λ及び対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている再生ヘッド装置を構成することは再生動作の安定化に有用である。
【0113】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)記録光を出力する光源と、
上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み、上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系と、
を備えると共に、
上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている記録ヘッド装置。
(2)上記対物レンズの開口数NAは0.85以上である上記(1)に記載の記録ヘッド装置。
(3)上記光源は、上記記録光の中心波長λは405nm近傍であり、発光スペクトル幅が1nm以下である上記(1)又は(2)に記載の記録ヘッド装置。
(4)上記光学系は、色消しレンズを有する上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の記録ヘッド装置。
(5)上記記録媒体は無機レジスト膜が形成されており、該無機レジスト膜に対して上記対物レンズから記録光を照射して熱記録を行う上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の記録ヘッド装置。
(6)上記対物レンズからの出射光の波面収差が、上記記録光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下である上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の記録ヘッド装置。
【符号の説明】
【0114】
10 ピックアップヘッド、11 レーザ光源、14 偏光ビームスプリッタ、15 1/4波長板、17 フロントフォトディテクタ、20 4分割フォトディテクタ、26 対物レンズ、29 アクチュエータ、31 反射光演算回路、32 フォーカス制御回路、40 コントローラ、41 レーザドライバ、42 レーザ駆動パルス発生部、43 記録データ生成部、44 スピンドルモータ、45 スライダ、AC 色消しレンズ、EXP#1,EXP#2 エキスパンダレンズセット、PU 光学ピックアップ
【技術分野】
【0001】
本開示は記録ヘッド装置、記録装置、記録方法に関し、記録媒体への記録光の照射により情報記録を行う技術に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開2009−540485号公報
【背景技術】
【0003】
光記録方式としてPTM(Phase Transition Mastering)方式と呼ばれるものがある。これは所定の原盤に無機レジストを塗布して、そこに集光されたレーザビームをフォーカスをかけながら照射する。そして原盤あるいはビームのいずれか、あるいは両方を動かして原盤上のビーム位置を相対的に制御し、所定の微細パターンを記録するものである。
【0004】
その代表的なものに、光ディスク記録装置があげられる。記録媒体の一種である光ディスクとして、BD(ブルーレイディスク・・・Blu-ray Disc:登録商標)やDVD(Digital Versatile Disc)等が知られているが、例えばこれらの光ディスクの製造工程における原盤マスタリングでは、PTM方式の記録装置が用いられることがある。
この場合、レジスト原盤上に、対物レンズで集光したレーザビームを、その焦点深度内にレジスト原盤表面上に追従するようにフォーカスをかけながら、レジスト原盤を回転させ、所定のトラックピッチにて、レジスト原盤上のレジスト材料を感光させる。これによりピット列あるいはグルーブを記録する。
一般的にはこの後に現像とよぶエッチング工程を行い、レジスト材料の段差によりピット列あるいはグルーブを形成する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既にBD−ROM(Blu-ray Disc - Read Only Memory)の規格がリリースされ量産が開始されているが、技術の進歩と市場競争の両面から、ディスクの製造においては、より早くより安くより高品質な製品の供給が求められる。具体的には、製造におけるマスタリングにおける記録速度は当初1倍速つまりチャンネルクロック66MHzであったのに対して、今後より高速化(1.5倍、2倍、或いはそれ以上)の対応が必要となる。
【0006】
一方、PTM方式においては熱記録が行われる。照射されたビームスポットの中心付近のみが高温となりレジスト反応を起こさせて熱反応により記録が行われるわけだが、光源である半導体レーザの記録時における波長の広がりが空間的な軸上色収差を生じさせる。同時に、発光波長の各発光スペクトルへのパワー配分の変動という時間的なゆらぎによりアクチュエータが静止しているにも関わらず擬似的なフォーカスエラー信号を発生させ、これがフィードバックされてアクチュエータを余計に駆動させてしまい実質的なフォーカス誤差が重畳されて生じてしまう現象がある。
【0007】
このことにより従来の記録装置では、製造された製品の品質のばらつきを生ずる問題があった。さらには今後の高倍速記録やより微細なサイズの加工において所望の品質を達成できなくなる懸念があった。
【0008】
そこで本開示では、製品品質の向上や、今後の高倍速記録、より微細なサイズの加工において所望の品質を達成できるための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の記録ヘッド装置は、記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み、上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えると共に、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている。
【0010】
本開示の記録装置は、記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えると共に、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている記録ヘッド装置と、上記光源に対し発光駆動信号を与える駆動回路部と、上記記録ヘッド装置による上記記録媒体への記録光の照射のためのサーボ制御を行うサーボ部とを備える。
【0011】
本開示の記録方法は、記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えた記録ヘッド装置により、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差を、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対してλ/(2NA2)以下として、上記記録媒体への記録光の照射を行い、情報の記録を行う記録方法である。
【0012】
このような本開示の技術において、出射光の軸上色収差がλ/(2NA2)以下であるということは、記録光の焦点深度λ/(NA2)の50%以下ということである。つまり軸上色収差の許容最大値を、焦点深度の半分とする。例えば中心波長λ=405nm、NA=0.85とした場合、記録光の焦点深度=560nmとなるが、この場合に軸上色収差を280nm以下とする。
このように軸上色収差をできるだけ低く抑えておくことで、擬似フォーカスエラー信号による不安定化を防止し、記録精度を高めることができる。
例えばジャストフォーカスの状態であっても、軸上色収差と発光波長の時間的なゆらぎによって、フォーカスエラー信号成分が発生する。これが擬似フォーカスエラー信号である。擬似フォーカスエラー信号成分に基づいてフォーカスアクチュエータが駆動されると対物レンズが不要に駆動されてしまう。これによってさらなるフォーカスエラー信号成分が生ずる。軸上色収差を焦点深度の半分以下に抑えることで、このような不安定動作を低減又は解消できる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、対物レンズからの出射光の軸上色収差がλ/(2NA2)以下とされていることで、軸上色収差の影響による不安定動作が低減又は解消される。これにより記録動作が行われた光ディスク等の記録媒体の製品品質の向上が実現される。また今後の高倍速記録や、より微細なサイズの加工において所望の品質を達成するためにも好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示の実施の形態の記録装置のブロック図である。
【図2】実施の形態の光ピックアップの光学系の説明図である。
【図3】実施の形態の記録装置の構造の説明図である。
【図4】光ディスク製造工程の説明図である。
【図5】PTM記録のレーザ発光信号波形の説明図である。
【図6】実施の形態の軸上色収差の説明図である。
【図7】光源の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図8】試料1,2の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図9】試料3,4の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図10】試料5,6の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図11】試料7,8の発光スペクトル測定結果を示す図である。
【図12】ストレール比Sと波面収差W/λの関係の説明図である。
【図13】平行光の光軸調整の説明図である。
【図14】平行光のRIM強度バランス最適化の説明図である。
【図15】球面収差最適化の説明図である。
【図16】軸上色収差とフォーカスエラーの調査に用いる光学系の説明図である。
【図17】軸上色収差とフォーカスエラーの調査結果を示す図である。
【図18】軸上色収差0.490μmでの調査結果の波形図である。
【図19】軸上色収差0.307μmでの調査結果の波形図である。
【図20】軸上色収差0.084μmでの調査結果の波形図である。
【図21】軸上色収差とフォーカス駆動電流の調査結果を示す図である。
【図22】軸上色収差0.490μmでの調査結果の波形図である。
【図23】軸上色収差0.307μmでの調査結果の波形図である。
【図24】軸上色収差0.084μmでの調査結果の波形図である。
【図25】光学部品の組み合わせとピックアップ試料の説明図である。
【図26】ピックアップ番号とジッター及びピュアジッターを示す図である。
【図27】ピックアップ番号とディスクジッターを示す図である。
【図28】ピックアップ番号とディスクピュアジッターを示す図である。
【図29】ピックアップ番号とディスクジッターを示す図である。
【図30】ピックアップ番号とディスクジッターを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について次の順序で説明する。
<1.ディスク製造工程>
<2.原盤製造装置の構成>
<3.軸上色収差>
<4.波面収差>
<5.光学ピックアップの製造工程>
<6.軸上色収差によるフォーカスエラー、フォーカス駆動電流への影響の調査>
<7.ジッター調査>
<8.実施の形態のまとめ>
【0016】
<1.ディスク製造工程>
実施の形態では、本開示の記録装置、及び記録ヘッド装置の例として、光ディスク製造工程で原盤マスタリングを行う原盤製造装置、及びそれに搭載される光学ピックアップを挙げることとする。そこで、まず図4を参照して、光ディスクの製造工程を述べる。
【0017】
図4Aは原盤を構成する原盤形成基板100を示している。先ず、この原盤形成基板100の上に、図4Bのように、スパッタリング法により無機系のレジスト材料からなるレジスト層102を均一に成膜する。
本例では、原盤を製造するマスタリング工程として、無機系のレジスト材料を用いたPTMマスタリングを行うが、この場合、レジスト層102に提供される材料としては、遷移金属の不完全酸化物が用いられ、具体的な遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Ag等が挙げられる。
なお、レジスト層102の露光感度の改善のために基板100とレジスト層102との間に所定の中間層101(例えば蓄熱層)を形成しても良く、図4Bではその状態を示している。
【0018】
次に、後述する原盤製造装置を利用して、図4Cのようにレジスト層102に信号パターンとしてのピット列もしくはグルーブに対応した選択的な露光を施し感光させる。そしてレジスト層102を現像(エッチング)することによって、図4Dのように所定の凹凸パターン(ピット列やグルーブ)が形成された原盤103が生成される。
続いて、上記のように生成した原盤103の凹凸パターン面上に金属ニッケル膜を析出させ(図4E)、これを原盤103から剥離させた後に所定の加工を施し、原盤103の凹凸パターンが転写された成型用のスタンパ104を得る(図4F)。
そのスタンパ104を用いて射出成型法によって熱可塑性樹脂であるポリカーボネートからなる樹脂製ディスク基板105を成形する(図4G)。
その後、スタンパ104を剥離し(図4H)、その樹脂製ディスク基板の凹凸面にAg合金などの反射膜106(図4I)と、膜厚0.1mm程度の保護膜107とを成膜することにより光ディスクを得る(図4J)。即ちピット列が形成された再生専用ディスクや、グルーブが形成された記録可能型ディスクが製造される。
【0019】
このような製造工程において、原盤103の製造に用いられるレジスト層102に適用されるレジスト材料は、遷移金属の不完全酸化物である。ここで、遷移金属の不完全酸化物は、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より酸素含有量が少ない方向にずれた化合物のこと、すなわち遷移金属の不完全酸化物における酸素の含有量が、上記遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成の酸素含有量より小さい化合物のことと定義する。
例えば、遷移金属の酸化物として化学式MoO3を例に挙げて説明する。化学式MoO3の酸化状態を、組成状態を組成割合Mo1-xOxに換算すると、x=0.75の場合が完全酸化物であるのに対して、0<x<0.75で表される場合に化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。
また、遷移金属では1つの元素が価数の異なる酸化物を形成可能なものがあるが、この場合には、遷移金属のとりうる価数に応じた化学量論組成より実際の酸素含有量が不足している場合とする。例えばMoは、先に述べた3価の酸化物(MoO3)が最も安定であるが、その他に1価の酸化物(MoO)も存在する。この場合には組成割合Mo1-xOxに換算すると、0<x<0.5の範囲内であるとき化学量論組成より酸素含有量が不足した不完全酸化物であるといえる。なお、遷移金属酸化物の価数は、市販の分析装置で分析可能である。
このような遷移金属の不完全酸化物は、紫外線又は可視光に対して吸収を示し、紫外線又は可視光を照射されることでその化学的性質が変化する。この結果、無機レジストでありながら現像工程において露光部と未露光部とでエッチング速度に差が生じる、いわゆる選択比が得られる。また、遷移金属の不完全酸化物からなるレジスト材料は、膜材料の微粒子サイズが小さいために未露光部と露光部との境界部のパターンが明瞭なものとなり、分解能を高めることができる。
【0020】
ところで、遷移金属の不完全酸化物は、酸化の度合いによってそのレジスト材料としての特性が変化するので、適宜最適な酸化の度合いを選択する。例えば、遷移金属の完全酸化物の化学量論組成より大幅に酸素含有量が少ない不完全酸化物では、露光工程で大きな照射パワーを要したり、現像処理に長時間を有したりする等の不都合を伴う。このため、遷移金属の完全酸化物の化学量論組成より僅かに酸素含有量が少ない不完全酸化物であることが好ましい。
上述のようにレジスト材料を構成する具体的な遷移金属としては、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Nb、Cu、Ni、Co、Mo、Ta、W、Zr、Ru、Ag等が挙げられる。この中でも、Mo、W、Cr、Fe、Nbを用いることが好ましく、紫外線又は可視光により大きな化学的変化を得られるといった見地から特にMo、Wを用いることが好ましい。
【0021】
このような光ディスク製造工程において、本例では、図4C、図4Dの原盤製造工程(マスタリング工程)で原盤103が製造される。なお本例のマスタリング工程は、後述する原盤製造装置によりPTM(Phase Transition Mastering)方式が用いられる。PTM方式について簡単に説明しておく。
【0022】
例えばCD(Compact Disc)方式やDVD(Digital Versatile Disc)方式などのディスクを製造する際には、まずフォトレジストを塗布した原盤を用意し、マスタリング装置(原盤製造装置)によって原盤上にガスレーザ等の光源からレーザを照射し、ピットに応じた露光パターンを形成していった。この場合、連続発振レーザであるレーザ光源からのレーザ光を、例えばAOM(Acousto-Optical Modulator)で光強度変調し、強度変調されたレーザ光を光学系によって原盤に導き、露光する。即ち、AOMにはピット変調信号である例えばNRZ(Non Return to Zero)変調信号を与え、このAOMによってレーザ光がピットパターンに対応した強度変調を受けることで、原盤上ではピット部分のみが露光されていく。
例えば図5Bには1つのピット形状を示しているが、AOMで変調されたレーザ発光強度は図5Cのようになる。原盤上のフォトレジストの露光はいわゆる光記録であるため、図5Bのようにレーザにより露光された部分がそのままピットとなる。
【0023】
一方、PTM方式では、無機レジストを塗布した原盤に対して、半導体レーザからのレーザ光を照射し、熱記録としての露光を行う。
この場合、レーザ照射による熱の蓄積を抑圧してピット幅の均一化を計るために、通常図5Aに示すようなパルス光で露光する。即ちこの場合には、一般にクロックに同期したNRZ変調信号が、そのHレベルの長さに応じてクロック周期より短い時間幅のパルス信号へ変換され、変換されたパルス変調信号に同期して直接変調可能な半導体レーザへ電力供給される。これによって図5Aのようなピット長に応じた加熱用のパルス発光PL1〜PLnとしてのレーザ出力が行われる。
【0024】
<2.原盤製造装置の構成>
PTM方式でマスタリングを行う本例の原盤製造装置(記録装置)の構成例を図1に示す。この原盤製造装置は、上記図4C、図4Dのマスタリング工程において、無機レジストを塗布した原盤103に対してレーザ照射による熱記録動作により、ピットパターンやグルーブパターンの露光を行う。
なお、図1ではマスタリング工程においてピット列としての凹凸パターンを形成する原盤製造装置の構成例を説明する。
【0025】
原盤製造装置には、ピックアップヘッド10が取り付けられる。ピックアップヘッド10には、光学ピックアップPUが搭載される。図1では図示の都合上、光学ピックアップPU内にはレーザダイオード11、フロントフォトディテクタ17、4分割フォトディテクタ20、対物レンズ26、アクチュエータ29のみを示しているが、その詳細な構成例は図2のようになる。
【0026】
図2に示すように光学ピックアップPUは、上半身部50と下半身部51に分けられ、それぞれの光学素子により記録レーザの照射光学系が形成される。まず図2で光学系の説明を行う。
【0027】
レーザ光源11としては、半導体レーザダイオードが用いられる。このレーザ光源11は、例えば中心波長λ=405nmのレーザ光を出力するものとされる。このレーザ光源11には、例えばRLL(1−7)pp等のNRZ変調信号が図5Aのようにパルス変調信号に変換されたレーザ駆動信号DLが供給され、このレーザ駆動信号DLに則って発光する。(RLL:Run Length Limited、PP:Parity preserve/Prohibit rmtr(repeated minimum transition runlength))
レーザ光源11から出射したレーザ光は、往路コリメータレンズ12で平行光とされた後、アナモルフィックプリズム13でスポット形状が楕円から円形に変形され、固定レンズと可動レンズから成るエキスパンダレンズセットEXP#1を介して偏光ビームスプリッタ(PBS)14に導かれる。
エキスパンダレンズセットEXP#1は、後述するEOD(Electro Optic Deflector:電気光学偏向器)21へ入射させる光を完全平行となるように調整するために設けられている。
【0028】
偏光ビームスプリッタ14で反射された偏光成分は、フロントフォトディテクタ用コリメータレンズ22を介してフロントフォトディテクタ(FPD)17に入射される。
フロントフォトディテクタ17は、レーザ光源11からのレーザ光強度検出のために設けられている。フロントフォトディテクタ17は、受光した光量レベル(光強度)に応じた光強度モニタ信号SMを出力する。
【0029】
また偏光ビームスプリッタ14を透過した偏光成分は、EOD21、エキスパンダレンズセットEXP#2、λ/4波長板15、色消しレンズACを介して対物レンズ26に導かれ、この対物レンズ26で集光されて原盤103(無機レジスト層102が形成された原盤形成基板100)上に照射される。
【0030】
EOD21は、例えば記録可能型ディスクの原盤製作の際にウォブリンググルーブパターンの露光等を実行可能とするために設けられている。
固定レンズと可動レンズから成るエキスパンダレンズセットEXP#2は、対物レンズ26の出射光において三次の球面収差をゼロに調整するために設けられている。
λ/4波長板15は、直線偏光と円偏向の変換を行い、往路では偏光ビームスプリッタ14を透過した偏光成分が復路では反射するようにさせる。
色消しレンズACは、対物レンズ26の出射光について軸上色収差を小さくするために設けられる。
対物レンズ26は記録媒体(原盤103)に対する記録レーザ光の出射端となる。この例では対物レンズ26は、無限系非球面単玉レンズとされ、例えばNA=0.85、入射瞳はφ3.0mmとしている。
【0031】
上記のように対物レンズ26を介して原盤103に照射される中心波長405nmのレーザ光源11からのレーザ光は、原盤103上で焦点を結ぶことになる。原盤103はシリコンウェハ上に金属酸化物からなる無機レジストを成膜したもので、405nm近辺のレーザビームを吸収することで、照射部の特に中心付近の高温に加熱された部分が多結晶化する。
即ち、対物レンズ26で集光されたレーザ光スポットによる熱記録で、ピット列としての露光パターンが原盤103上に形成されていく。
なお、図4Dで述べたように、露光された原盤103をNMD3等のアルカリ現像液で現像することにより、露光した部分のみが溶出し、所望のピット形状としての凹凸パターンが形成されるものである。
【0032】
一方、原盤103に照射されたレーザ光の戻り光は、対物レンズ26,色消しレンズAC、λ/4波長板15、エキスパンダレンズセットEXP#2、EOD21を通過して偏光ビームスプリッタ14に達する。この場合、λ/4波長板14を往路と復路で2回通過していることで偏光面が90°回転されており、偏光ビームスプリッタ14で反射されることになる。
偏光ビームスプリッタ14で反射された戻り光は復路コリメータレンズ18,シリンドリカルレンズ19を介して4分割フォトディテクタ20の受光面に受光される。
4分割フォトディテクタ20の受光面は、例えば非点収差によるフォーカスエラー信号を得ることができるようにされている。
フォトディテクタ20の各受光面では、受光光量に応じた電流信号を出力して反射光演算回路31に供給する。
【0033】
図1に示す反射光演算回路31は、4分割の各受光面からの電流信号を電圧信号に変換すると共に、非点収差法としての演算処理を行ってフォーカスエラー信号FEを生成し、そのフォーカスエラー信号FEをフォーカス制御回路32に供給する。
フォーカス制御回路32は、フォーカスエラー信号FEに基づいて、対物レンズ26をフォーカス方向に移動可能に保持しているアクチュエータ29にフォーカス駆動電流FSを流す。そしてアクチュエータ29がフォーカス駆動電流FSによって、対物レンズ26を原盤103に対して接離する方向に駆動することで、フォーカスサーボが実行される。
【0034】
レーザ光源11に対するレーザ駆動信号DLは、記録データ生成部43,レーザ駆動パルス発生部42、レーザドライバ41により生成される。
記録データ生成部43は、原盤103にピット露光パターンとして記録するデータDTを出力する。例えば主データとして映像信号や音声信号、さらには物理情報、管理情報等のデータを出力する。
データDTは、レーザ駆動パルス発生部42に供給される。レーザ駆動パルス発生部42は、データDTに基づいて、ライトストラテジ処理として、実際にレーザ光源11をパルス発光駆動するためのレーザ駆動パルスを生成する。即ち図5Aに示したように、形成するピット長に応じたパルスP1〜Pnとしてのタイミング及び光強度でレーザ発光が行われるようにするためのパルス波形を生成する。
【0035】
このレーザ駆動パルスはレーザドライバ41に供給される。レーザドライバ41は、レーザ駆動パルスに基づいてレーザ光源11としての半導体レーザに対して駆動電流を印加する。これによって、レーザ駆動パルスに応じた発光強度でのレーザのパルス発光が行われることになる。
またフロントフォトディテクタ17から得られた光強度モニタ信号SMは、レーザドライバ41に供給される。レーザドライバ41は、光強度モニタ信号SMを基準値と比較することでレーザ発光強度を所定レベルに保つ制御を行う。
【0036】
なお、レーザドライバ41は、例えば0.01mW間隔で、レーザパワーを可変できるものとされている。
原盤103にマスタリング記録を行う場合には、コントローラ40はレーザドライバ41に対して記録パワー(例えば10〜15mW程度)のレーザ出力を実行させる。
【0037】
原盤103は、スピンドルモータ44によって回転駆動される。スピンドルモータ44は、スピンドルサーボ/ドライバ47によって回転速度が制御されながら回転駆動される。これによって原盤103は例えば一定線速度で回転される。
スライダ45は、スライドドライバ48によって駆動され、原盤103が積載された、スピンドル機構を含む基台全体を移動させる。即ち、スピンドルモータ44で回転されている状態の原盤103は、スライダ45で半径方向に移動されながら上記光学系によって露光されていくことで、露光されるピット列によるトラックがスパイラル状に形成されていくことになる。
スライダ45による移動位置、即ち原盤103の露光位置(ディスク半径位置:スライダ半径位置)はセンサ46によって検出される。センサ46による位置検出情報SSはコントローラ40に供給される。
【0038】
コントローラ40は、この原盤製造装置の全体を制御する。即ち、記録データ生成部43からのデータ発生動作の指示、レーザ駆動パルス発生部42での処理の制御、レーザドライバ41に対してのレーザパワー設定、スピンドルサーボ/ドライバ47によるスピンドル回転動作制御、スライドドライバ48によるスライダ45の移動動作の制御等を行う。
メモリ49は、コントローラ40において実行されるプログラムコードを格納したり、実行中の作業データを一時保管するために使用される。この図の場合、メモリ49は、例えばプログラムを格納するROM(Read Only Memory)、演算ワーク領域や各種一時記憶のためのRAM(Random Access Memory)、EEP−ROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)等の不揮発性メモリを含むものとして示している。
【0039】
図3は、原盤製造装置におけるピックアップヘッド10、スライダ45、スピンドルモータ44の配置を示している。
原盤製造装置では、基台部60に対してピックアップヘッド10が取り付けられる。ピックアップヘッド10は上半身部50と下半身部51から成る。
基台部60に取り付けられたピックアップヘッド10の下方には、スピンドルテーブル61に積載された原盤103が位置する。
このスピンドルテーブル61がスピンドルモータ44によって回転されることで原盤103が回転される。
スピンドルテーブル61及びスピンドルモータ44は、スライダ45に搭載された状態となっている。このスライダ45がスライド軸62に沿って原盤の半径方向(x方向)に移動されることで、スピンドルモータ44及び原盤配置部61が移送され、ピックアップヘッド10と原盤103の相対位置が移動される。
【0040】
<3.軸上色収差>
以上の構成の本実施の形態のPTM方式のマスタリング記録を行う記録装置(原盤製造装置)、記録ヘッド装置(光学ピックアップPU)では、その光学性能としてレーザ光源11の波長範囲、対物レンズ26の性能、出射ビームの軸上色収差と波面収差を規定する。
まず軸上色収差について説明する。
【0041】
対物レンズ26は、その材料となる硝材が分散の性質を持つため、必ず軸上色収差を生じる。そこで必要に応じて上記構成のように、色消しレンズACを光路中に挿入して軸上色収差を低減させる。
色消しレンズACの有無のいずれにおいても、対物レンズ26からの出射ビームの軸上色収差aは光源を除いた光学系固有の値として、光源波長の発光スペクトル幅1[nm]あたりの、焦点距離の変動幅[μm]として次のようにあらわされる。
a[μm/nm]
【0042】
使用するレーザ光源11、この場合、波長405nm近傍の半導体レーザの発光スペクトル幅をΔλ[nm]とすれば、軸上色収差は次の通りである。
Δλ・a[μm]
【0043】
図6に示すように、対物レンズ26によって集光されたビームLBの焦点深度は、ピーク・トゥ・ピークにて、λ/NA2である。
NA=0.85、λ=405nmにおいては560nmとなる。
一方、記録装置のフォーカスサーボシステムのフォーカスサーボゲインを次のように設定した。原盤として使用するシリコンウェハ単体の厚み誤差は5μm以内、このシリコンウェハをスピンドルターンテーブルに装着したときの面ブレは10μm以内である。よってフォーカスサーボの残留誤差は十分に小さいことが望ましいが、設計上の制約を考慮して、フォーカス深度560nmに対してフォーカスサーボの残留誤差を1%以下にすることを目標とする。このときフォーカスサーボゲインの最小値は次のように計算される。
20log10(10[μm]/0.1[μm])=65 [dB]
BD−ROMディスクの記録最内周半径21[mm]における標準記録速度に対する2倍速記録時の回転速度は75[Hz]であるから、75[Hz]より小さい周波数におけるフォーカスゲインは65[dB]以上となるようにフォーカスサーボパラメータを設定した。BD−ROMディスクの記録において標準記録速度に対する2倍速よりもさらに高速の記録を行う場合には、フォーカスゲインを65[dB]以上確保する上限の周波数を、BD−ROMディスクの記録最内周半径における回転速度となるよう設定すればよい。
【0044】
焦点深度560nmに対してサーボ残留誤差は5.6nm以下、比率にして1%以下と十分に小さいことから、フォーカスサーボ残留誤差を生じさせる主な要因は、ほぼ光源波長の時間的ゆらぎと光学系の持つ軸上色収差のかけあわせによるフォーカス変動によるということになる。
【0045】
波長の広がりを含めた軸上色収差を軸方向の距離にてあらわすと、Δλ・a[μm]であるが、波長の広がりとサーボのフィードバックの組合せを想定するとフォーカス残留誤差は最大で2Δλ・a[μm]までの量を生じうることとなる。
このフォーカス残留誤差を焦点深度内に収めることで、これらの影響を許容範囲以内に抑えることが可能となる。その条件はつまり、次のように表すことが出来る。
Δλ・a≦λ/(2NA2)
【0046】
光学系の設計と光源波長の選別において、どのような組合せでも上記条件を満たすためには、両方において規定を設けておくことが望ましい。光源波長の発光スペクトルにおいて選別可能な発光スペクトル幅は、実績をもとに
Δλ≦1.0[nm]
との制限を設けることができる。この制限を、軸上色収差の条件式
Δλ・a≦λ/(2NA2)
に適用すると、光学系の軸上色収差aは、
a≦λ/(2NA2)
とすればよい。
つまり対物レンズ26からの出射光の軸上色収差が、記録レーザ光の中心波長λ及び対物レンズ26の開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされていることが適切となる。
なお、Δλが1.0[nm]よりも十分に小さいレーザ光源11を選別して適用できた場合には、光学系の軸上色収差の条件は上記に限らずともよいことにはなる。
【0047】
図6に、Δλが1.0[nm]、中心波長λ=405nmであった場合の軸上色収差を概念的に図示する。つまり404.5nm〜405.5nmの発光スペクトル幅を持つ場合である。
この場合、光学系内に色消しレンズACを設けない場合と、2種類の色消しレンズ(AC−A、AC−B)を設けた場合として、波長が404.5nm〜405.5nmでの焦点位置を示している。使用した対物レンズ26はNA=0.85のものである。
【0048】
色消しレンズなしの場合として示しているように、対物レンズ26単体での軸上色収差はa=0.0490[μm/nm]である。
図2の構成のように、色消しレンズAC−Aを対物レンズ26の直前に配置した場合、軸上色収差はa=0.0307[μm/nm]である。
また色消しレンズAC−Bを対物レンズ26の直前に配置した場合、軸上色収差はa=0.0084[μm/nm]である。
この例でいえば、色消しレンズAC−Bを選定することにより、光学系の軸上色収差aはa≦λ/(2NA2)の条件を満たすことがわかる。
【0049】
なお色消しレンズAC−A、AC−Bは、それぞれ成形精度や材料などの異なる或る製品としての色消しレンズであり、ここでは色消しレンズAC−Aは対物レンズ26と組み合わせたら軸上色収差a=0.0307[μm/nm]となった製品、色消しレンズAC−Bは対物レンズ26と組み合わせたら軸上色収差a=0.0084[μm/nm]となった製品と理解されたい。
【0050】
ここで、使用する半導体レーザの発光スペクトルを調べた。使用する半導体レーザは一般に使用されているGaN系マルチモード半導体レーザである。
チャンネルクロック132MHz、つまりBD−ROM規定再生線速度の2倍速にてRLL(1−7)PP変調方式のピットとランドの組合せの信号に対して所定のライトストラテジで発光させた。ライトストラテジ波形は、図5Aに示すとおりである。PL1からPLnを代表するピークパワーを13mWとした。
【0051】
測定結果を図7〜図11に示す。図7Aは、半導体レーザの試料1〜試料8についての測定結果としての数値を示している。
発光スペクトルにおける、ピーク強度に対する1/e2包絡線幅により規定した最短波長λmin及び最長波長λmax、これらの平均値としての中心波長、そしてこれらの差分としての包絡線幅である。
図7Bは、図7Aの測定値をグラフ化したものである。
また図8〜図11には、試料1〜試料8について実際に測定された発光スペクトルを示している。
【0052】
この測定結果では、各試料の発光スペクトルにおける中心波長は404nm〜407nmの間に分布し、発光スペクトルの包絡線幅は、いずれも1/e2幅にて0.9nm未満であった。上述のΔλ≦1.0[nm]という制限は妥当といえる。
但し、この測定結果は、ある時点での測定にかかる時間内の平均された測定結果にすぎない。発光スペクトル測定結果における包絡線幅と中心波長は時間変動の影響を殆ど受けないのであるが、発光スペクトルの各成分のパワー配分比率は常に揺らいでいる。
【0053】
発光スペクトルの各ピーク値は縦モードと呼ばれ、半導体レーザダイオードの共振器長と導波路等価屈折率による共振条件から導かれた、ある波長間隔の発光スペクトルピークを持ちながら活性層結晶構造のバンドギャップ近傍に相当する波長を含む包絡線幅内に分布する。しかし各発光スペクトルピークに配分されるパワーの比率の分布は揺らいでおり常に一定ではない。
例えばわかりやすく説明するために縦モードに含まれる任意の発光スペクトルピーク1に含まれるパワーP1と、別の発光スペクトルピーク2に含まれるパワーP2を選び出し、これらを比較すると、ある時刻においてはP1>P2であり、また別の時刻においてはP1<P2となることが起こりうる。その大小関係が逆転しない場合、つまり常にP1>P2、あるいはP1<P2であったとしても、P1とP2の比率P1/P2は常に変動し続けている。
【0054】
発光スペクトルの包絡線幅内に含まれるいずれの発光スペクトルピークを比較しても同様のことが起こりうる。この現象は不確定原理による量子揺らぎによるものであり避けることが出来ない。
ここで特に問題視しているのは、各縦モードに配分されるパワー比率の時間的な揺らぎである。対物レンズ26から出射された集光ビームの焦点位置が、光源波長の広がりと光学系の軸上色収差によって、軸方向にぼやけてパワー分布するという空間的なぼやけと組み合わさったときに、この空間的なぼやけがさらに時間的な揺らぎによって変動する。
つまり焦点位置近傍のパワー分布が軸方向において時間的に揺らぐという、熱記録においては致命的な現象が発生することとなる。これは擬似的にフォーカスエラー信号を発生させ、これがフォーカスサーボによりさらにフィードバックされて空間的なぼやけをさらに増大させてしまうことになる。
【0055】
そこで本実施の形態では、対物レンズ26の出射光の軸上色収差がλ/(2NA2)以下であるようにする。つまり軸上色収差の許容最大値を、焦点深度の半分とする。
このように軸上色収差を焦点深度の半分以下に低く抑えておくことで、擬似フォーカスエラー信号による不安定化を防止し、記録精度を高めることができる。
【0056】
<4.波面収差>
次に対物レンズ26より出射したビームの波面収差について説明する。
一般的に言われるマレシャルの評価基準によると、ビームの結像性能としてRMS波面収差が0.07[λrms]以下であることが求められる。これは波面収差による集光ビームの劣化の判断基準としてストレール比Sが0.8以上を確保するために必要な指標である。この条件を満たすためのストレール比S1の条件式は次式であらわされる。
S1=1−(2πW1/λ)2≧0.8
ここでW1は波面収差であり、波長にて規格化した値(W1/λ)は、単位[λrms]での表記に相当する。この不等式により、次式が導き出される。
W1/λ≦0.07
図12に次式で表されるストレール比Sと波面収差W/λ[λrms]の関係を表すグラフを示している。
S=1−(2πW/λ)2
【0057】
このマレシャルの評価基準による指標は古典的な光学的指標としてほぼ無収差とみなせる基準である。
ただし、PTM方式の熱記録においては、たとえこの条件を満たすストレール比Sであっても熱記録に与える影響を無視することができない。その影響について考察すると、近似的に次の関係が成り立つ。
【0058】
つまり完全無収差の状態に対して、波面収差が生じてストレール比Sが1未満である状況においては、記録に必要とされるピークパワーは近似的に1/S倍である。NA=0.85で波長405nmにおけるエアリー径1.22λ/NA=581nmに対して、最小記録ピットサイズの理想値はBD−ROMの2T相当の149nmであり、実質的には開口部直径で約200nm程度である。
エアリー径の約34%に集中したスポット中のエネルギーが熱反応を起こして、レジスト材料を変質させている。そこにはスキャン速度と蓄熱と放熱のバランスが相互に作用しており、また熱反応領域に直接寄与しないスポットの裾野による熱アシストも間接的に寄与している。記録速度つまりスキャン速度を速めれば速めるほど波面収差発生によるストレール比Sの劣化が顕著にあらわれてくるのでこの影響を最小限にとどめなければならない。
【0059】
仮に波面収差が0.07[λrms]でストレール比Sが0.8であるとした場合には、波面収差が十分小さい場合における記録時のピークパワーが13mWであるとして、近似的に16.3mWものピークパワーが必要とされる。さらにピークパワーを上げて補正しても波面収差そのものが劣化していることで露光部分の分解能が損なわれてしまうことが十分に予想される。
ストレール比Sによる波面収差の基準は、システムおよび用途によって定められるべきものであり、PTM方式の熱記録を行う光学系においては、継続的に実現可能な波面収差でかつストレール比Sの低下を最小限に抑えるための閾値として、S2=0.95と定める。
S2=1−(2πW2/λ)2≧0.95
これを満たすための対物出射ビーム波面収差条件は、
W2/λ≦0.035
である。
【0060】
これが対物レンズ26からの出射光の波面収差が、記録光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下であるとする条件の根拠である。
後述するピックアップヘッド10の製作において、波面収差0.035[λrms]以下を実現することができる。記録パワーのばらつきは十分に抑えられており、妥当な基準であることを確認した。ディスクのジッターも十分に低く安定していることから、この波面収差範囲であればほぼ無収差であるとみなすことができる。
【0061】
<5.光学ピックアップの製造工程>
ピックアップヘッド10の製造工程は次の通りである。
平行光および集光スポットの波面収差を測定するのにはシャック=ハルトマン波面センサを用いる。
【0062】
最初に所定の固定方法に基づき、各光学部品を筐体へ装着する。各部品は必要に応じて各軸方向の調整機構を有しており、波面収差やビーム強度をモニタしながら位置の調整を行うことができる。なおウォブリングを伴うグルーブ等の記録も行うことができるよう、図2に示したようにEOD21を光路中に配している。
【0063】
[1]平行光の非点収差
平行光の波面収差を偏光ビームスプリッタ14の出力段階(上半身部50)で最適化する。
レーザ光源11(半導体レーザダイオード)の直後の往路コリメータレンズ12の光軸方向の位置調整により、平行光の非点収差を偏光ビームスプリッタ14の出力段階(上半身部50)で最小化する。
なお、この[1]平行光の非点収差と、後述の[2][3]の工程は順不同であり、所定のビーム品質が得られるまでそれぞれを追いこんで行けばよい。
これらの工程により上半身部50より出射される平行光の品質を確定する。
【0064】
[2]平行光の発散角
平行光の発散角を偏光ビームスプリッタ14の出力段階(上半身部50)で最適化する。
即ち偏光ビームスプリッタ14の出射段階にて完全平行となるように、エキスパンダレンズセットEXP#1のレンズ間隔を調整する。なお、2つのレンズのうち凹レンズホルダに光軸方向位置調整機構をもたせており、凹レンズ側を可動レンズとしている。
【0065】
[3]平行光の光軸傾き調整
平行光の光軸傾きを偏光ビームスプリッタ14の出力段階(上半身部50)で最適化する。
レーザ光源11の固定ジグのx−y方向(zは光軸方向)を調整して、偏光ビームスプリッタ14の出射段階での光軸を基準の光軸方向に合わせる。
上半身部50と下半身部51の両筐体の接合面を基準面とし、これに垂直な方向を基準の光軸方向と定める。
【0066】
図13A、図13Bに上半身部50と下半身部51の側面図、上面図を示している。上記[1]、[2]、[3]の調整が完了したら、図示のように、上半身部50と下半身部51を取付ネジ53で4箇所にて接合面を固定する。下半身部51にはまずEOD21を格納してあるEODホルダユニット52を用いる。取付けネジ53を緩めることで上半身部50と下半身部51は基準面つまり光軸に垂直な接合面を介して相対位置を調整することができる。
【0067】
[4]平行光のRIM強度バランス最適化
次に図14に示すように、エキスパンダレンズセットEXP#2とλ/4波長板15(図示省略)を装着したエキスパンダユニット55を装着する。
エキスパンダレンズセットEXP#2の凸レンズ側はz軸方向にレンズホルダごと移動させ完全平行となる位置近傍にて任意の位置で固定できる機構となっている。
あらかじめ別の基準平行光源を用いて透過光が完全平行となるようにエキスパンダレンズセットEXP#2のレンズ間隔を調整しておく。
【0068】
エキスパンダレンズセットEXP#2の出射ビームを、アパーチャ200(φ3.5mm)を透過させてビームプロファイラでモニタしながら、上半身部50をx−y方向に調整する。x,y方向ともに、光軸中心位置を中心とする円形φ3.0mmに相当するエリアの両エッジのRIM強度バランスを、x方向に相当する両エッジのRIM強度をRx1、Rx2としたときに|Rx1−Rx2|/(Rx1+Rx2)≦10%、y方向の両エッジに相当するRIM強度をRy1、Ry2としたときに|Ry1−Ry2|/(Ry1+Ry2)≦10%となるようにする。
RIM調整が完了した時点で上半身部と下半身部を固定する4箇所の取付ネジ53をしめて完全に固定する。
【0069】
[5]球面収差最適化
図15に示すように、対物レンズ26と色消しレンズACを搭載したアクチュエータ29(アクチュエータユニット56)を装着する。対物レンズ26の出射ビームスポットを波面センサでモニタし波面収差を測定しながらエキスパンダレンズセットEXP#2の凸レンズ位置を調整して対物レンズ26の出射ビームの3次の球面収差をゼロに調整する。
【0070】
[6]フロントフォトディテクタ調整
偏光ビームスプリッタ14にて一部分岐された光強度がフロントフォトディテクタ17の受光部にて最大の感度となるように、フロントフォトディテクタ用コリメータレンズ22のz方向位置調整、及びフロントフォトディテクタ17のx−y位置調整を行う。ここでは分岐した戻り光の光軸をz軸とする。
【0071】
[7]4分割フォトディテクタ調整
マスタリング工程における露光(カッティング)と同一の状況となるように、光学ピックアップPUとレジストつき原盤を配置させ、レーザ光源11(半導体レーザダイオード)をリード状態(レジストを感光させない十分に低いパワー、たとえば盤面上にて0.5mW)で原盤に照射させる。そして反射したビームの光強度が4分割フォトディテクタ20の受光面にて最大の感度となるように、かつ4分割フォトディテクタ20の4つの受光面の受光光強度が均等となるように、復路コリメータレンズ18のz位置と4分割フォトディテクタ20のx−y位置を調整する。ここでは反射した光の光軸をz軸とする。
【0072】
あらかじめ選別して十分な光学品質を確保した光学素子を用いて、以上による入念な調整を行うことで、対物レンズ26の出射ビームの品質として波面収差0.035[λrms]以下を安定的に得ることが可能である。
【0073】
<6.軸上色収差によるフォーカスエラー、フォーカス駆動電流への影響の調査>
軸上色収差によるフォーカスエラー信号FE及びフォーカス駆動電流FSへの影響を調査した。
この調査においては、軸上色収差の異なる3種の光学ピックアップ(PU#1,PU#2,PU#3)を製作した。
図16に光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3のエキスパンダレンズセットEXP#2から対物レンズ26までの構成を示している。(図2の下半身部51内の光学系でEOD21の図示を省略)
【0074】
・PU#1:対物レンズNA=0.85、色消しレンズ無し、軸上色収差=0.490[μm/nm]
・PU#2:対物レンズNA=0.85、色消しレンズAC−A、軸上色収差=0.307[μm/nm]
・PU#3:対物レンズNA=0.85、色消しレンズAC−B、軸上色収差=0.084[μm/nm]
【0075】
これら光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3は、いずれも同一光学系において、色消しレンズACを差し替えることにより製作したものである。
また光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3でレーザ光源11として用いた半導体レーザダイオードの記録条件における中心波長は405.9nm、発光スペクトルの1/e2包絡線幅において0.66μmであった。これは、先の発光スペクトル測定における試料3に相当する光源である。
これにより実際の軸上色収差と波面収差は次のようになった。
【0076】
・PU#1:対物レンズNA=0.85、色消しレンズ無し、軸上色収差=0.323[μm]、波面収差=0.026[λrms]
・PU#2:対物レンズNA=0.85、色消しレンズAC−A、軸上色収差=0.203[μm]、波面収差=0.035[λrms]
・PU#3:対物レンズNA=0.85、色消しレンズAC−B、軸上色収差=0.055[μm]、波面収差=0.035[λrms]
【0077】
光学ピックアップPU#1においては、λ/(2NA2)=0.28μmを超える軸上色収差であり、光学ピックアップPU#2、PU#3においては、λ/(2NA2)=0.28μmを下回る軸上色収差である。
【0078】
これら光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3における軸上色収差がフォーカスサーボに与える影響について調べた。
上述のBD2倍速記録条件にてレーザを発光させ、シリコン原盤上にフォーカスをかけたときの、フォーカスエラー信号FEのノイズ成分を測定した。
レジストが感光して反射率が変化することのない様、また回転による動的なノイズ成分の影響を除去するため、レジストなしのシリコン原盤表面に直接ビームを照射して回転させず静止した状態でフォーカスをかけた。
【0079】
フォーカスエラー信号FEの電圧値を、対物レンズ26を搭載しているアクチュエータ29の駆動距離に換算して結果をまとめた。なお時間変動の影響を知るために測定はそれぞれ3回ずつ行っている(測定1、測定2、測定3)。
測定結果を図17に示す。図17では光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3のそれぞれについて、測定1、測定2、測定3としてのフォーカスエラー信号のピーク・トゥ・ピーク値、及びRMS値を示している。
また図18,図19,図20には、それぞれについて測定されたフォーカスエラー信号FEの波形とフォーカスエラー信号FEのスペクトルを示している。
【0080】
軸上色収差の焦点深度に対する比率を計算すると、各光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3において次の値となる。
PU#1:58%
PU#2:36%
PU#3:10%
この場合は、光学ピックアップPU#2,PU#3が、軸上色収差が焦点深度の50%以下となっている。つまり軸上色収差がλ/(2NA2)以下という条件を満たしている。
【0081】
図17からわかるように、ピーク・トゥ・ピーク値、RMS値ともに、光学ピックアップPU#1においては、光学ピックアップPU#2,およびPU#3にくらべ、フォーカスエラーつまりフォーカスサーボ残留誤差がおよそ2倍であった。
また図18,図19,図20にも見られるように、スペクトル解析においても光学ピックアップPU#1において特定の周波数に生じているピーク成分が、光学ピックアップPU#2,PU#3において十分に抑圧されている。
【0082】
なお、データの取得にはデジタルオシロスコープを用いた。サンプリング周波数は10kHzとし、スペクトル解析では5kHzまでを有効なデータとしている。
【0083】
次に同様に光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3における軸上色収差がアクチュエータ29へ印加するフォーカス駆動電流FSに与える影響について調べた。
BD2倍速記録条件にてレーザを発光させ、シリコン原盤上にフォーカスをかけたときの、アクチュエータ29に流れるフォーカス駆動電流FSのノイズ成分を測定した。
レジストが感光して反射率が変化することのない様、また回転による動的なノイズ成分の影響を除去するため、レジストなしのシリコン原盤表面に直接ビームを照射して回転させず静止した状態でフォーカスをかけた。
【0084】
この場合も、時間変動の影響を知るために測定はそれぞれ3回ずつ行っている(測定1、測定2、測定3)。
測定結果を図21に示す。図21では光学ピックアップPU#1,PU#2,PU#3のそれぞれについて、測定1、測定2、測定3としてのフォーカス駆動電流FSのピーク・トゥ・ピーク値、及びRMS値を示している。
また図22,図23,図24には、それぞれについて測定されたフォーカス駆動電流FSの波形とフォーカス駆動電流FSのスペクトルを示している。
【0085】
図21からわかるように、ピーク・トゥ・ピーク値、RMS値において、光学ピックアップPU#1のフォーカス駆動電流は、光学ピックアップPU#2、PU#3にくらべて、およそ2ないし3倍であった。
また図22,図23,図24からわかるように、スペクトル解析においても光学ピックアップPU#1において特定の周波数に生じているピーク成分が、光学ピックアップPU#2,PU#3において十分に抑圧されている。
【0086】
以上のフォーカスエラー信号FEとフォーカス駆動電流FSの測定により、軸上色収差の焦点深度に対する比率が50%以下、つまり軸上色収差がλ/(2NA2)以下という条件を満たしていると、光源波長の時間的な波長揺らぎによる軸上色収差の影響を十分に低減できていると考えてよいことがわかる。
【0087】
<7.ジッター調査>
上半身部50と下半身部51のいくつかの組合せの光学ピックアップPU(上記PU#2、PU#3を含む)、BD−ROM規格に基づいたディスクを作製した。
カッティングにおいては規定の線速度4.917m/s(チャンネルクロック66MHz)に対して2倍の線速度と132MHzのチャンネルクロックを用いた、いわゆる2倍速記録を行っている。
シリコン原盤上に蓄熱層70nm、無機レジスト層70nmが形成された原盤103に対して、線速度=4.917×2/0.9935=9.898m/s(0.9935は成形収縮率)にて回転させ、所定の記録条件にて各光学ピックアップPUによるディスク上でジッターを最小化するように、ライトストラテジの最適化を行っている。
ピークパワーには各光学ピックアップPUに応じて13〜14mWを適用し、ディスク上でジッターを最小化するようなピークパワーを選んでいる。
【0088】
上半身部50のレーザ光源11には、図7で述べた発光スペクトル測定に用いた光源の試料3と試料7を用いた。
発光スペクトルの1/e2包絡線幅(つまり発光スペクトル幅Δλ)は、試料3にて0.66[nm]、試料7にて0.86[nm]である。
下半身部51には対物レンズ26とエキスパンダレンズセットEXP#2の組合せとして(α)、(β)、(γ)の3種を用いた。
【0089】
各組合せにおいて色消しレンズACを挿入しない状態、色消しレンズAC−Aを用いた状態、色消しレンズAC−Bを用いた状態との組合せを用いて、光学ピックアップPUとしての試料(ピックアップ(i)〜(vi))においてディスクを作製して評価を行った。
ピックアップ(i)〜(vi)の光学部品の組み合わせを図25Aに示している。
【0090】
対物レンズ26のNAは0.85である。色消しレンズACとレーザ光源11の発光スペクトル幅Δλの組合せにより、軸上色収差の値を焦点深度(NA=0.85、λ=405nmにおける560nm)にて規格化した比率であらわすと、図25Bの通りである。図25Bでは、図25Aのピックアップ(i)〜(vi)の「軸上色収差/焦点深度」の値をそれぞれ示している。この場合、ピックアップ(i)(ii)は75%、ピックアップ(iii)(iv)は47%、ピックアップ(v)は36%、ピックアップ(vi)は10%である。従ってピックアップ(iii)〜(vi)は軸上色収差の焦点深度に対する比率が50%以下となっている。
【0091】
光学部品の光学特性は所定の品質を満足しているが、ある程度のばらつきを持っており、対物出射ビームの波面収差は図25Cの通りであった。
この場合、ピックアップ(i)は0.026[λrms]、ピックアップ(ii)は0.023[λrms]、ピックアップ(iii)は0.030[λrms]、ピックアップ(iv)は0.027[λrms]、ピックアップ(v)(vi)は0.035[λrms]である。従ってピックアップ(i)〜(vi)は、波面収差が、記録レーザ光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下である。
【0092】
各ピックアップ(i)〜(vi)を用いて、所定のプロセスに基づきカッティング後の原盤103にて現像を行い、メッキ工程でニッケルマスターにピット形状を転写して、ニッケルマスターの裏面を研磨して滑らかにした後に成形装置へ取り付けるために内径と外径を打ち抜いて、ニッケルマスタースタンパ104とする。これを射出成形によりポリカーボネート1.1mm厚基板上にピット転写を行って、反射膜、0.1mm厚みのカバー層形成を行ってシングルレイヤー構造のBD−ROMディスクを作製した。
【0093】
こうして出来たディスクの一枚を評価装置にて再生し、再生されたRF波形に所定のリミットイコライザ処理を行い、アシンメトリ補正を施した閾値にて2値化を行い、PLLにて生成されたクロック信号の立ち上がりタイミングからの、2値化信号の立ち上がりエッジタイミングと立ち下がりエッジタイミングの時間ズレの統計を取ってディスクジッターを求める。これらの内、再生波形においてピットの開始位置に相当するエッジ(Leading Edge=LE)に対するジッターをLEジッター、同様にピットの終了位置に相当するエッジ(Trailing Edge=TE)に対するジッターをTEジッターとする。
【0094】
また、ピュアジッターの測定も行った。ディスク上にはRLL(1−7)PP変調方式に基づいてピット長とランド長の両方において、2T〜8Tおよび同期パターンとして用いられる9Tの組合せのものが記録されているが、ジッターの測定においては符号間干渉と呼ばれる成分が含まれている(なお、「T」はチャネルクロック周期)。
着目するLEあるいはTEを含むピットに対して、直前および直後のランド長が2T〜9Tのいずれであるか、さらにその先のピット長が2T〜9Tのいずれであるか、によってジッターの分布の平均値がそれぞれ異なる。
これらの各組合せにおける分布の平均値のずれを補正して、仮想的にずれがないものとして算出したジッター値がピュアジッターである。つまり符号間干渉の影響を除いたジッターである。符号間干渉の影響を除去しているということは記録系の本来の性能を現す指標であるということができると同時に、ディスク記録時の信号処理において各組合せにおいてあらかじめこのズレ分を補正して記録を行うことで原理的に到達できる最小のジッター値であるといえる。
【0095】
ピックアップ(i)〜(vi)のディスクにおいてジッターとピュアジッターを測定した結果を図26に示す。また、図26のLE,TEのジッター値をグラフ化したものが図27Aである。図27Bは、ピックアップ(i)と(iii)、(ii)と(iv)、(v)と(vi)についてのジッター差分を示している。
また、図26のLE,TEのピュアジッター値をグラフ化したものが図28Aである。図28Bは、ピックアップ(i)と(iii)、(ii)と(iv)、(v)と(vi)についてのピュアジッター差分を示している。
【0096】
色消しレンズ無しと色消しレンズAC−Aの各場合の比較においては、ピックアップ(i)と(iii)および(ii)と(iv)を比べればよい。
図27B、図28Bからわかるように、色消しレンズAC−Aによるディスクは、色消しレンズ無しに比べてジッター、ピュアジッターともに0.5%以上の低減効果があった。
【0097】
色消しレンズAC−Aと色消しレンズAC−Bの場合の比較においては、ピックアップ(v)と(vi)を比べればよい。
図27B、図28Bに示されるように、色消しレンズAC−Bによるディスクは、色消しレンズAC−Aに比べてジッターは0.1%増加、ピュアジッターは0.1%低減している。
プロセスや測定のばらつきも考慮し、色消しレンズ無しから色消しレンズAC−Aへの変化量とも比べると、色消しレンズAC−Aと色消しレンズAC−Bの差はほとんど無くこれらの性能はほぼ同等と考えてよい。
【0098】
これらの結果より、軸上色収差/焦点深度の比を50%以下に抑えることで、軸上色収差がディスクのジッターおよびピュアジッターに与える影響を最小化できることが確認された。
【0099】
さらに、光学ピックアップPUの安定性を確認するために、ピックアップ(I)から(V)を製作してカッティング記録を行い、ディスクを作製して評価した。
対物レンズ26のNAは0.85である。光学系に用いたレーザ光源11の発光波長の中心値はいずれも403〜407nmの範囲に入るものを選別しており、発光スペクトル幅Δλはいずれも1nm以下である。光学系の軸上色収差は光源波長の発光スペクトル幅Δλ=1nmに対する値として、0.084[μm/nm]となるような色消しレンズAC−Bを採用している。つまりピックアップ(I)から(V)における軸上色収差/焦点深度の値はいずれも0.084/0.56=15%以下となっている。
【0100】
ディスクのカッティング記録においてはチャンネルクロック99MHzつまりBD−ROM規定再生線速度の1.5倍速相当周波数にてRLL(1−7)PP変調式のピットとランドの組合せの信号に対して所定のライトストラテジで発光させた。
シリコン原盤上に蓄熱層70nm、無機レジスト層70nmが形成された原盤103に対して、線速度=4.917×1.5/0.9935=7.424m/s(0.9935は成形収縮率)にて回転させ、各ピックアップに対して同一のライトストラテジを適用して記録を行った。このライトストラテジはあるピックアップにおいてディスク上でジッターを最小化するようにあらかじめ最適化を行っておいたものである。
【0101】
ライトストラテジ波形は、図5Aに示すとおりである。PL1からPLnを代表するピークパワーには各ピックアップに応じて12〜13mWを適用し、ディスク上でジッターを最小化するようなピークパワーを選んでいる。
【0102】
各ピックアップ(I)〜(V)を用いて、所定のプロセスに基づきカッティング後の原盤103にて現像を行い、メッキ工程でニッケルマスターにピット形状を転写して、ニッケルマスターの裏面を研磨して滑らかにした後に成形装置へ取り付けるために内径と外径を打ち抜いて、ニッケルマスタースタンパ104とする。これを射出成形によりポリカーボネート1.1mm厚基板上にピット転写を行って、反射膜、0.1mm厚みのカバー層形成を行ってシングルレイヤー構造のBD−ROMディスクを作製した。
【0103】
各ピックアップ(I)〜(V)について、対物レンズ出射ビームの波面収差と作製したディスクのジッター測定値は図29に示す通りであった。図30は図29のジッター値をグラフ化したものである。
波面収差はいずれも0.024[λrms]以下、ディスクのジッター測定値は4.4%以下となった。
【0104】
図26において軸上色収差/焦点深度が50%以下であるピックアップ(iii)、(iv)、(v)、(vi)のジッター測定値は、軸上色収差/焦点深度が50%を超える場合のジッター測定値に比べて十分に低減された値としてLE、TEともに4.3%〜4.7%の範囲に分布しているが、この値の分布と比較すると、ピックアップ(I)〜(V)においてもディスクのジッター測定値の範囲はLE,TEともに4.1%〜4.4%と十分に低く安定した結果であった。
【0105】
各ピックアップ(I)〜(V)のレーザ光源11の発光スペクトル幅Δλはいずれも1nm以下であり、軸上色収差/焦点深度は、少なくとも0.084/0.560=15%以下である。従って軸上色収差の焦点深度に対する比率が50%以下という条件を十分に満足している。波面収差も0.035[λrms]以下を十分に満たしている。
ピックアップ(I)〜(V)のいずれにおいても同一のライトストラテジを適用することにより十分に低いディスクジッター値を安定して得ることができた。
【0106】
<8.実施の形態のまとめ>
以上実施の形態について説明してきた。実施の形態の光学ピックアップPU(記録ヘッド装置)は、PTM記録方式に用いるもので、記録媒体である原盤103は無機レジスト膜102が形成されており、無機レジスト膜102に対して対物レンズ26から記録光を照射して熱記録を行う。
そして対物レンズ26からの出射光の軸上色収差が、記録光の中心波長λ及び対物レンズ26の開口数NA(例えば0.85以上)に対して、λ/(2NA2)以下とされている。
NA=0.85、記録レーザ光の中心波長λを405nm、発光スペクトル幅Δλが1nm以下とした場合、記録レーザ光の焦点深度=560nmとなるが、この場合に軸上色収差を280nm以下としている。
軸上色収差の低減には、色消しレンズACを用いることが有用である。
また対物レンズ26からの出射光の波面収差が、記録レーザ光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下である。
【0107】
このような実施の形態では、次のような効果が得られる。
まず、PTM記録方式で用いる光学ピックアップPUにおいて、軸上色収差/焦点深度の比率を50%以下に抑えることで、光学系が本来持つ軸上色収差の影響を最小化することができる。
これにより軸上色収差の影響による不安定動作、例えば擬似フォーカスエラーによるサーボ不安定化が低減又は解消される。これにより記録動作が行われた光ディスク等の記録媒体の製品品質の向上が実現される。またさらなる高倍速記録や、より微細なサイズの加工において所望の品質を達成するためにも好適となる。
【0108】
加えて、対物レンズ26からの出射ビームの波面収差を0.035[λrms]以内に抑えることで、製造されたピックアップのばらつきを十分に小さく、ほぼ無収差とみなせる状態にまで抑えることができる。
これは、ピックアップ製造者においてピックアップの出荷前確認時の性能管理を行いやすくする効果がある。つまりばらつきの少ない品質を作りこむことで、その性能の検査の効率を上げることができ、検査に関わるコストを削減し、トータル的にもコストを下げることができる。
具体的には製造したピックアップでディスクを作ってそのディスクの性能つまりおもにジッターに代表される項目によってそのピックアップの品質を保証しているのだが、各ピックアップの性能が近いことで、ディスクの試作における条件設定に同じものを適用することができて、ディスク試作の回数が1回で済む。もしばらつきがあれば、ライトストラテジを最適化するために2回以上のディスク試作が必要となる。
【0109】
またピックアップ性能ばらつきが小さいと、ディスク製造者にとってもメリットがある。光学ピックアップPUの半導体レーザには寿命があり、数年単位で定期的に光学ピックアップPUを交換する必要が生じるが、交換前後で同じライトストラテジを適用できれば、交換後の条件出しディスク試作が1回ですむ。
【0110】
またPTM記録方式において、軸上色収差と波面収差を上記のように管理しない場合よりも、上記の管理を行うことで、軸上色収差の影響は最小化され、波面収差はほぼ無収差とみなせる状態となっており、さらなる高倍速記録、あるいはより高密度の記録が安定的に可能となる。
【0111】
本開示の技術は、実施の形態に限られるものではない。実施の形態ではディスク製造工程における原盤製造装置及びその光学ピックアップPUとしての例を挙げたが、これに限られない。
例えば無機レジスト膜に対する熱記録動作として、ピットやグルーブ等を形成する記録装置に広く適用できる。また情報をピット等として記録するものではなく、レジスト膜面にピット等で描画を行う装置としても適用可能である。
【0112】
また、本開示の技術は再生ヘッド装置にも活用できる。特に高密度再生記録用のヘッド装置として好適である。
即ち光源からの再生光の記録媒体への出射端となる対物レンズからの出射光の軸上色収差が、再生光の中心波長λ及び対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている再生ヘッド装置を構成することは再生動作の安定化に有用である。
【0113】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)記録光を出力する光源と、
上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み、上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系と、
を備えると共に、
上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている記録ヘッド装置。
(2)上記対物レンズの開口数NAは0.85以上である上記(1)に記載の記録ヘッド装置。
(3)上記光源は、上記記録光の中心波長λは405nm近傍であり、発光スペクトル幅が1nm以下である上記(1)又は(2)に記載の記録ヘッド装置。
(4)上記光学系は、色消しレンズを有する上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の記録ヘッド装置。
(5)上記記録媒体は無機レジスト膜が形成されており、該無機レジスト膜に対して上記対物レンズから記録光を照射して熱記録を行う上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の記録ヘッド装置。
(6)上記対物レンズからの出射光の波面収差が、上記記録光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下である上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の記録ヘッド装置。
【符号の説明】
【0114】
10 ピックアップヘッド、11 レーザ光源、14 偏光ビームスプリッタ、15 1/4波長板、17 フロントフォトディテクタ、20 4分割フォトディテクタ、26 対物レンズ、29 アクチュエータ、31 反射光演算回路、32 フォーカス制御回路、40 コントローラ、41 レーザドライバ、42 レーザ駆動パルス発生部、43 記録データ生成部、44 スピンドルモータ、45 スライダ、AC 色消しレンズ、EXP#1,EXP#2 エキスパンダレンズセット、PU 光学ピックアップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録光を出力する光源と、
上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み、上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系と、
を備えると共に、
上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている記録ヘッド装置。
【請求項2】
上記対物レンズの開口数NAは0.85以上である請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項3】
上記光源は、上記記録光の中心波長λは405nm近傍であり、発光スペクトル幅が1nm以下である請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項4】
上記光学系は、色消しレンズを有する請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項5】
上記記録媒体は無機レジスト膜が形成されており、該無機レジスト膜に対して上記対物レンズから記録光を照射して熱記録を行う請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項6】
上記対物レンズからの出射光の波面収差が、上記記録光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下である請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項7】
記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えると共に、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている記録ヘッド装置と、
上記光源に対し発光駆動信号を与える駆動回路部と、
上記記録ヘッド装置による上記記録媒体への記録光の照射のためのサーボ制御を行うサーボ部と、
を備えた記録装置。
【請求項8】
記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えた記録ヘッド装置により、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差を、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対してλ/(2NA2)以下として、上記記録媒体への記録光の照射を行い、情報の記録を行う記録方法。
【請求項1】
記録光を出力する光源と、
上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み、上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系と、
を備えると共に、
上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている記録ヘッド装置。
【請求項2】
上記対物レンズの開口数NAは0.85以上である請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項3】
上記光源は、上記記録光の中心波長λは405nm近傍であり、発光スペクトル幅が1nm以下である請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項4】
上記光学系は、色消しレンズを有する請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項5】
上記記録媒体は無機レジスト膜が形成されており、該無機レジスト膜に対して上記対物レンズから記録光を照射して熱記録を行う請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項6】
上記対物レンズからの出射光の波面収差が、上記記録光の中心波長λに対して0.035[λrms]以下である請求項1に記載の記録ヘッド装置。
【請求項7】
記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えると共に、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差が、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対して、λ/(2NA2)以下とされている記録ヘッド装置と、
上記光源に対し発光駆動信号を与える駆動回路部と、
上記記録ヘッド装置による上記記録媒体への記録光の照射のためのサーボ制御を行うサーボ部と、
を備えた記録装置。
【請求項8】
記録光を出力する光源と、上記光源からの記録光の記録媒体への出射端となる対物レンズを含み上記光源からの記録光を上記対物レンズに導く光学系とを備えた記録ヘッド装置により、上記対物レンズからの出射光の軸上色収差を、上記記録光の中心波長λ及び上記対物レンズの開口数NAに対してλ/(2NA2)以下として、上記記録媒体への記録光の照射を行い、情報の記録を行う記録方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図2】
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【図8】
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【図11】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【公開番号】特開2013−97848(P2013−97848A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242375(P2011−242375)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニーDADC (88)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【出願人】(594064529)株式会社ソニーDADC (88)
【Fターム(参考)】
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