説明

記録メディア駆動装置

【課題】 低トルクのモータを使用しても記録メディアの確実なコネクタ接続を実現できる「記録メディア駆動装置」を提供する。
【解決手段】 記録メディアをメディア挿入位置でホルダ6に挿入・保持させ、このホルダ6をメディア挿入位置から装着位置まで自動搬送し、この装着位置で記録メディアの可動側コネクタ5が筐体1内の固定側コネクタ24に接続される記録メディア駆動装置において、モータ9の駆動力を駆動部材12を介して回動アーム15に伝達することにより、回動アームを回動させてホルダ6をメディア挿入位置から装着位置の手前側の切替位置まで搬送し、この切替位置でモータ9の駆動力を駆動部材12から中継部材21を介してスライダに切り替えることにより、スライダをスライド移動させてホルダ6を切替位置から装着位置まで搬送し、この間で記録メディアの可動側コネクタが固定側コネクタ24に大きな嵌挿力で接続されるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は記録メディア駆動装置に係り、特に、モータの駆動力で記録メディアを自動搬送してコネクタ接続する記録メディア駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種データが記録された記録メディアを手動操作でホルダに挿入・保持し、このホルダを搬送機構によって筐体の内部に自動搬送することにより、記録メディアの挿入方向先端側に設けられた可動側コネクタと筐体内に配設された固定側コネクタとを接続するようにした記録メディア駆動装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。ここで、可動側コネクタは複数のクリップ状メス型端子を所定ピッチで配列したものからなり、固定側コネクタは複数のピン状オス型端子をメス型端子と同ピッチで配列したものからなる。また、搬送機構は、モータを駆動源として回転する減速歯車列と、この減速歯車列の最終段ギヤに噛合するラックとからなり、このラックはホルダの側面に固定されている。
【0003】
このように概略構成された記録メディア駆動装置において、記録メディアをホルダに挿入・保持した後にモータが一方向へ回転すると、モータを駆動源とする搬送機構によりホルダが筐体の内部に向かって直線的に移動する。そして、ホルダが筐体内の装着位置まで移動すると、ホルダに保持された記録メディアの可動側コネクタに筐体内に配設された固定側コネクタが嵌挿し、記録メディアは装置内に装着された状態でコネクタ接続される。また、かかる記録メディアの装着状態でモータが上記と逆方向へ回転すると、ホルダが装着位置から筐体の前面に向かって直線的に移動するため、それに伴って可動側コネクタが固定側コネクタから抜け出て接続解除された後、記録メディアは排出可能な初期位置まで自動搬送される。
【特許文献1】特開2004−348812号公報(第5−7頁、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の記録メディア駆動装置では、ホルダに保持された記録メディアをモータを駆動源とする搬送機構によって自動搬送し、その搬送力を利用して記録メディアの可動側コネクタを固定側コネクタに対して挿抜させるようにしているが、この動作を満足させるコネクタ挿抜力の規格値がかなり高い(例えば2kg・f)ため、モータのトルクが不十分であると可動側コネクタと固定側コネクタを確実に接続/解除することができなくなる。このような理由からモータのトルクを高める必要があるが、高トルクのモータを使用する場合、記録メディアの搬送スピードを速めることが困難であったり、搬送機構を含む各機構構造体に高い機械的強度が要求される等、種々の問題が発生する。
【0005】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、低トルクのモータを使用しても記録メディアの確実なコネクタ接続を実現できる記録メディア駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、モータの駆動力をホルダの搬送途中で切り替えて第1および第2の搬送機構を選択的に動作させるようにし、記録メディアのコネクタ接続直前までは第1の搬送機構によってホルダを搬送すると共に、記録メディアのコネクタ接続中は第1の搬送機構よりも大きな搬送力で第2の搬送機構がホルダを搬送するようにした。
【発明の効果】
【0007】
本発明の記録メディア駆動装置は、モータを駆動源として動作されるホルダの搬送力を搬送途中で切り替え、記録メディアをメディア挿入位置と装着位置手前間で搬送する際の搬送力に対して、装着位置で記録メディアの可動側コネクタを筐体内の固定側コネクタに挿抜する際の搬送力が大きくなるようにしたので、低トルクのモータを使用しても、あるいはモータからホルダに至る搬送力伝達経路に複雑な減速機構を使用しなくても、記録メディアを確実にコネクタ接続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、挿入方向の先端側に可動側コネクタを有する記録メディアをメディア挿入位置でホルダに挿入・保持させ、このホルダをモータの駆動力によって前記メディア挿入位置から筐体内の装着位置へ自動搬送し、この装着位置で前記記録メディアの前記可動側コネクタが前記筐体内に配設された固定側コネクタに接続される記録メディア駆動装置において、前記ホルダを、前記メディア挿入位置と、前記装着位置の手前側で前記可動側コネクタと前記固定側コネクタとが接続される前の切替位置との間で搬送する第1の搬送機構と、前記ホルダを前記切替位置と前記装着位置との間で搬送する第2の搬送機構と、前記モータの駆動力を前記第1および第2の搬送機構に選択的に伝達する切替手段とを備え、前記第1の搬送機構に対して前記第2の搬送機構の方が大きな搬送力で前記ホルダを搬送するように構成した。
【0009】
このように構成された記録メディア駆動装置では、モータを駆動源として動作されるホルダの搬送力を搬送途中で切り替え、記録メディアをメディア挿入位置と装着位置手前間で搬送する際の搬送力に対して、装着位置で記録メディアの可動側コネクタを筐体内の固定側コネクタに挿抜する際の搬送力が大きくなるようにしたので、低トルクのモータを使用しても、あるいはモータからホルダに至る搬送力伝達経路に複雑な減速機構を使用しなくても、記録メディアを確実にコネクタ接続することができる。
【0010】
上記の構成において、前記第1の搬送機構が回動可能な回動アームからなると共に、前記第2の搬送機構が前記ホルダの搬送方向に対して直交する方向へ移動可能なスライダからなり、これら回動アームとスライダとの間に前記切替手段を介設すると、回動アームの回動中心からホルダと切替手段までのてこ比を利用して、切替手段の少ない移動量でホルダの搬送ストロークを大きくすることができて好ましい。この場合において、前記スライダが前記ホルダの搬送方向に対して傾斜する方向へ延びる傾斜孔を有し、前記ホルダに設けたピンが前記傾斜孔内を摺動することにより、前記スライダの移動が前記ホルダの搬送駆動力に変換されることが好ましい。
【0011】
また、上記の構成において、前記切替手段が、前記ホルダの搬送方向へ移動可能で前記回動アームに連結された駆動部材と、前記スライダに連結された回動可能な中継部材とを有し、前記駆動部材の第1の範囲の移動により、前記メディア挿入位置と前記切替位置との間で前記回動アームが前記ホルダを搬送し、前記駆動部材の前記第1の範囲に続く第2の範囲の移動により、前記切替位置と前記装着位置との間で前記中継部材および前記スライダにより前記ホルダを搬送するように構成すると、モータの駆動力を第1の搬送機構と第2の搬送機構とに確実に切り替えることができる。この場合において、前記駆動部材にその移動方向へ延びるラックが刻設されており、前記モータの回転が減速歯車列を介して前記ラックに伝達されることが好ましい。
【0012】
また、上記の構成において、前記駆動部材にその移動方向へ延びる長孔が設けられると共に、前記中継部材に前記長孔内に挿入された第1のピンと前記スライダに連結された第2のピンとが設けられており、該中継部材の回動中心から前記第1および第2のピンまでの距離がほぼ同一に設定されていると、可動側コネクタの固定側コネクタに対する挿抜力を大きくすることができる。
【0013】
また、上記の構成において、前記駆動部材に係止部と逃げ部を有する係合孔が設けられると共に、前記回動アームに前記係合孔内に挿入された駆動ピンが設けられており、前記駆動ピンと前記係止部とが当接することにより、前記駆動部材の前記第1の範囲の移動が前記回動アームの回動に変換され、前記駆動ピンが前記逃げ部内を移動することにより、前記駆動部材の前記第2の範囲の移動が吸収されて前記回動アームの回動に変換されないように構成することが好ましい。
【0014】
また、上記の構成において、前記切替手段が第1および第2のカム溝を有する回動可能なカム板からなり、前記回動アームに設けた第1駆動ピンを前記第1のカム溝に係合すると共に、前記スライダに設けた第2駆動ピンを前記第2のカム溝に係合すると、切替手段の構成を簡略化することができる。この場合、前記カム板の外周面にギヤ部が刻設され、前記モータの回転が減速歯車列を介して前記ギヤ部に伝達されることが好ましい。
【0015】
また、上記の構成において、前記回動アームが前記切替手段に連結された第1の回動アームと前記ホルダに連結された第2の回動アームとからなり、これら第1および第2の回動アームを同軸上で回転可能に連結すると共に、第1および第2の回動アームが一体的に回転するように両者を互いに係合する方向へ弾性付勢すると、ホルダが第2の搬送機構により搬送されてコネクタ挿抜されるとき、第1の回動アームに対して第2の回動アームが回動することによってホルダの動きが吸収されるため、切替手段に連結された第1の回動アームに無理な力が作用することを防止できて好ましい。
【実施例】
【0016】
実施例について図面を参照して説明すると、図1は本発明の第1実施例に係る記録メディア駆動装置の待機状態を示す平面図、図2は該記録メディア駆動装置のメディア挿入初期状態を示す平面図、図3は該記録メディア駆動装置のメディア保持状態を示す平面図、図4は該記録メディア駆動装置のメディア搬送途中状態を示す平面図、図5は該記録メディア駆動装置のメディア搬送完了状態を示す平面図、図6(a)は該記録メディア駆動装置に使用される記録メディアの平面図、図6(b)は該記録メディアの側面図である。
【0017】
図1〜図5に示すように、本実施例に係る記録メディア駆動装置は、車室内の所定位置(例えばコンソール内)に設置される箱形の筐体1と、この筐体1の前面開口端に取り付けられた前面パネル2とを備えており、前面パネル2に開設された挿入口2aから筐体1に対して記録メディア3を挿入/排出できるようになっている。図6に示すように、記録メディア3は記録媒体としてのハードディスク(図示省略)を合成樹脂製のカートリッジ4内に収納したものであり、カートリッジ4の挿入側端面には可動側コネクタ5が設けられている。また、カートリッジ4の左右両側面には、挿入/排出方向へ延びるガイド溝4aと、クランプ用の凹部4bとが形成されている。
【0018】
筐体1の内部には前面を開放したホルダ6が配置されており、挿入口2aから筐体1内に挿入された記録メディア3はこのホルダ6に保持されるようになっている。ホルダ6の上面には3本のピン6a,6b,6cが植設されており、これらピン6a,6b,6cが筐体1の上面に形成された直線状の各ガイド孔1aに案内されることにより、ホルダ6は図3に示すメディア挿入位置と図5に示す装着位置との間を筐体1の前後方向(X1−X2方向)へ移動可能となっている。ホルダ6の左右両内側部には記録メディア3を保持するためのクランパ7が回転可能に支持されており、両クランパ7はそれぞれ捩りコイルばね8の弾性力によってホルダ6の内方へ向けて回動付勢されている。なお、筐体1の左右両側面には逃げ孔1bが形成されており、ホルダ6が図3に示すメディア挿入位置にあるときだけ、両クランパ7は逃げ孔1bによって外側への回動が許容されるようになっている。
【0019】
筐体1の図示左側方には低トルクのモータ9が設置されており、このモータ9の回転軸に取り付けられたウォームギヤ10は2つの減速ギヤからなる簡易な減速歯車列11の最初段ギヤに噛合している。減速歯車列11の最終段ギヤは駆動部材12の図示左側面に設けられたラック13に噛合しており、モータ9の回転がウォームギヤ10と減速歯車列11を介してラック13の直線運動に変換されることにより、駆動部材12が筐体1の前後方向(X1−X2方向)へ往復移動するようになっている。この駆動部材12には透孔12aと長孔12bおよび係合孔14が形成されており、透孔12aと長孔12bは筐体1の前後方向へ直線状に延びている。また、係合孔14は逆L字状に連続する係止部14aと逃げ部14bとからなり、係止部14aは筐体1の左右方向(Y1−Y2方向)へ延び、逃げ部14bは筐体1の前後方向(X1−X2方向)へ延びている。
【0020】
筐体1の上面側には第1の搬送機構である回動アーム15と第2の搬送機構であるスライダ16とが配設されており、回動アーム15は回動軸17を中心として筐体1に矢印A−B方向へ回動可能に支持され、スライダ16は筐体1の上面に突設されたガイドピン1cに沿って筐体1の左右方向(Y1−Y2方向)へ移動可能に支持されている。後述するように、モータ9の駆動力が回動アーム15とスライダ16とに選択的に伝達されるようになっており、回動アーム15はホルダ6を図3に示すメディア挿入位置と図4に示す切替位置との間で搬送し、スライダ16はホルダ6を図4に示す切替位置と図5に示す装着位置との間で搬送する。
【0021】
回動アーム15はその回動軸17を介して同軸で連結された第1の回動アーム18と第2の回動アーム19とで構成されており、回動軸17は駆動部材12の透孔12aに挿入されている。第1の回動アーム18には駆動ピン18aが植設されており、この駆動ピン18aは駆動部材12の係合孔14に挿入されている。これにより、第1の回動アーム18は駆動ピン18aが係合孔14の係止部14a内にあるときだけ駆動部材12の移動に伴って回動され、駆動ピン18aが係合孔14の逃げ部14b内へ移行すると、第1の回動アーム18は駆動部材12が移動しても回動しない。また、第2の回動アーム19の先端部には長孔19aが形成されており、ホルダ6に植設された3本のピン6a,6b,6cのうち、中央のピン6aがこの長孔19aに挿入されている。なお、回動軸17と駆動ピン18a間の距離に比べて回動軸17からピン6aまでの距離は十分に長く設定されており、ホルダ6の搬送のため駆動力は小さいが、第1の回動アーム18の少ない回転角度でもホルダ6が大きな移動量をもって高速に搬送できるようになっている。また、第1の回動アーム18には第2の回動アーム19の回動を規制する一対の規制壁18b,18cが折曲形成されると共に、第1および第2の回動アーム18,19の端部には引っ張りばね20が張架されており、この引っ張りばね20によって第2の回動アーム19は第1の回動アーム18の手前側の規制壁18bに圧接する方向へ弾性付勢されている。これにより、駆動部材12の前後進に伴って第1の回動アーム18が回動するとき、第1および第2の回動アーム18,19は回動軸17を中心に一体的に回動するが、第1の回動アーム18が停止した状態でホルダ6から第2の回動アーム19に矢印X2方向の外力が作用すると、引っ張りばね20の張力に抗して第2の回動アーム19のみが第1の回動アーム18の手前側の規制壁18bから奥側の規制壁18cに向かって微少角度だけ回動するようになっている。
【0022】
筐体1内の図示左奥部には平面視三角形状の中継部材21が回動可能に支持されており、この中継部材21および駆動部材12によってモータ9の駆動力を回動アーム15とスライダ16に選択的に伝達する切替手段が構成されている。中継部材21の各頂部には第1および第2のピン21a,21bと回動軸21cとが植設されおり、中継部材21は回動軸21cを中心として回動可能となっている。中継部材21の第1のピン21aは駆動部材12の長孔12bに挿入されており、駆動部材12の前後進に伴って第1のピン21aが長孔12b内を移動するとき、駆動部材12の移動は中継部材21に伝達されないが、第1のピン21aが長孔12bの後端に当接すると、駆動部材12の移動に伴って中継部材21が回動軸21cを中心に回転するようになっている。一方、中継部材21の第2のピン21bはスライダ16に形成された連結孔16aに挿入されており、中継部材21の回転に伴ってスライダ16が筐体1の左右方向(Y1−Y2方向)へ移動するようになっている。ここで、中継部材21からスライダ16に伝達される駆動力の大きさは回動軸21cから第1および第2のピン21a,21bまでの距離によって任意に設定可能であり、本実施例では、回動軸21cから第1および第2のピン21a,21bまでの距離がほぼ等しく設定されているため、駆動源として低トルクのモータ9を使用しても、中継部材21の回転駆動力に対してスライダ16が大きな駆動力で移動するようになっている。このスライダ16には前端面から斜め後方へ延びる一対の傾斜孔16cが形成されており、これら傾斜孔16cは筐体1に形成された左右の両ガイド孔1aと平面的にオーバーラップしている。したがって、ホルダ6がスライダ16と重なる位置まで搬送されると、ホルダ6の左右2本のピン6b,6cがガイド孔1aに係合したまま傾斜孔16cに入り込むことになる。傾斜孔16cはホルダ6の移動方向(X1−X2方向)に対して45°の傾斜角度で後方へ延びている。
【0023】
また、筐体1の内部には第1および第2の検出スイッチ22,23が設置されており、これら第1および第2の検出スイッチ22,23からの信号に基づいてモータ9が始動/停止するようになっている。第1の検出スイッチ22は第2の回動アーム19によってオン/オフ動作され、第2の検出スイッチ23は駆動部材12に設けられたラック13の前端部によってオン/オフ動作される。さらに、筐体1内の最奥部には固定側コネクタ24が配設されており、ホルダ6に保持された記録メディア3が図5に示す装着位置まで搬送されると、記録メディア3の可動側コネクタ5が固定側コネクタ24に接続されるようになっている。詳細な構造は図示省略されているが、可動側コネクタ5は複数のクリップ状メス型端子を所定ピッチで配列したものからなり、固定側コネクタ24は複数のピン状オス型端子をメス型端子と同ピッチで配列したものからなる。
【0024】
次に、上述のごとく構成された記録メディア駆動装置の動作を説明する。
【0025】
図1は記録メディア3が筐体1内に挿入されていないイジェクト時の待機状態を示しており、この場合、ホルダ6は筐体1の最も手前側の前進位置(メディア挿入位置)にある。また、駆動部材12は筐体1の後方寄りに位置しており、回動アーム15の駆動ピン18aは係合孔14の係止部14a内にある。さらに、中継部材21の第1のピン21aは駆動部材12の長孔12bの前端側にあり、スライダ16はY1方向の末端位置にある。
【0026】
かかる待機状態において、図2に示すように、ユーザが記録メディア3を挿入口2aから筐体1内のホルダ6に挿入し始めると、記録メディア3の挿入方向における先端側の両隅部がクランパ7に当接し、記録メディア3の挿入力によって両クランパ7が外側へ回動する。そして、記録メディア3の先端がホルダ6の最奥まで挿入されると、両クランパ7が捩りコイルばね8の弾性力で内側へ回動して凹部4bに入り込むため、図3のメディア挿入位置に示すように、記録メディア3が両クランパ7によってホルダ6に保持される。この状態からユーザが記録メディア3を筐体1内にさらに押し込むと、ホルダ6がX2方向へ若干量移動して第2の回動アーム19を反時計方向(矢印B方向)へ押圧するため、前述したように、第1の回動アーム18に対して第2の回動アーム19のみが手前側の規制壁18bから奥側の規制壁18cに向かって微少角度だけ回転し、それに伴って検出スイッチ22がオン動作してモータ9を始動させる。
【0027】
このようにしてモータ9が一方向へ回転し始めると、モータ9の回転がウォームギヤ10と減速歯車列11を介してラック13の直線運動に変換されるため、図4に示すように、筐体1の後方寄りに位置していた駆動部材12が手前側(X1方向)へ移動し、それに伴って回動アーム15が回動軸17を中心に矢印B方向へ回動する。すなわち、図3のメディア挿入位置から駆動部材12がX1方向へ所定距離(第1の範囲)移動すると、第1の回動アーム18の駆動ピン18aが係合孔14の係止部14aによってX1方向へ押圧されるため、第1および第2の回動アーム18,19が回動軸17を中心に矢印B方向へ一体的に回動し、第2の回動アーム19に連結されたホルダ6が図3に示すメディア挿入位置から図4に示す切替位置までX2方向へ搬送される。この場合、回動アーム15に必要とされる駆動力は記録メディア3を保持するホルダ6を切替位置まで搬送できる程度の小さな力で良いため、第1および第2の回動アーム18,19の駆動源として低トルクのモータ9を使用することができ、ホルダ6の搬送スピードも速めることができる。
【0028】
そして、かかる切替位置において、ホルダ6はスライダ16と重なる位置まで搬送されるため、ホルダ6の左右2本のピン6b,6cがスライダ16の傾斜孔16cに入り込み、記録メディア3の可動側コネクタ5が筐体1内の最奥部に配設された固定側コネクタ24に僅かな隙間を介して対向する。この間、中継部材21の第1のピン21aは駆動部材12の長孔12b内を前端から後端に向かって相対的に移動するため、モータ9を駆動源とする駆動部材12の駆動力は中継部材21に伝達されず、スライダ16はY1方向の末端位置に保持されたままで移動しない。また、回動アーム15の回動軸17は駆動部材12の透孔12a内を相対的に移動し、駆動ピン18aは第1の回動アーム18のB方向への回動により係合孔14の係止部14aから逃げ部14bへと移行する。
【0029】
駆動部材12がモータ9を駆動源として図4に示す切替位置から筐体1の手前側(X1方向)へ向かってさらに第2の範囲で移動すると、駆動ピン18aが係合孔14の逃げ部14b内を相対的に移動するため、モータ9を駆動源とする駆動部材12の駆動力は第1の回動アーム18に伝達されず、その代わりに第1のピン21aが長孔12bの後端に当接して押圧されるため、中継部材21が回動軸21cを中心に図4の反時計方向へ回転し、それに伴ってスライダ16がY1方向の末端位置からY2方向へ大きな駆動力をもって移動し始める。このようにスライダ16がY2方向へ移動開始すると、ホルダ6の両ピン6b,6cがスライダ16の傾斜孔16cの斜辺に押圧されてガイド孔1aの奥側へ移行するため、ホルダ6が切替位置からさらにX2方向へ搬送されて図5に示す装着位置に至り、この装着位置で第2の検出スイッチ23がラック13の前端部でオン動作されてモータ9が停止する。そして、ホルダ6が切替位置から装着位置まで搬送される間に、ホルダ6に保持された記録メディア3の可動側コネクタ5に固定側コネクタ24が嵌挿され、記録メディア3は装置内に装着された状態でコネクタ接続される。
【0030】
すなわち、ホルダ6が図3に示すメディア挿入位置から図4に示す切替位置まで搬送されると、モータ9を駆動源とする駆動部材12の駆動力が中継部材21を介してスライダ16へ切り替えられ、このスライダ16の移動によってホルダ6が図5に示す装着位置まで搬送される。その際、中継部材21の回動軸21cから第1および第2のピン21a,21bまでの距離がほぼ等しく設定されているため、この中継部材21の回動量に対するスライダ16のスライド量はさほど多くなく、ホルダ6の搬送速度も回動アーム15による搬送速度に比べて遅くなるが、中継部材21の回転駆動力に対してスライダ16が大きな駆動力で移動することになる。したがって、低トルクのモータ9を使用し、また大掛りな減速機構をモータ9とホルダ6との間の搬送力伝達経路内に設けなくても、切替位置から装着位置までの短い区間でホルダ6はスライダ16によって大きな駆動力で搬送されることになり、ホルダ6に保持された記録メディア3の可動側コネクタ5と固定側コネクタ24との間に必要とされる高い挿抜力(例えば2kg・f)を満足することができる。なお、このようにスライダ16の移動に伴ってホルダ6が装着位置へ搬送される間、回動アーム15の第1の回動アーム18は回動しないが、第2の回動アーム19にはホルダ6から矢印B方向への回動力が作用する。この場合も、記録メディア3の挿入時と同様に、停止している第1の回動アーム18に対して第2の回動アーム19のみが手前側の規制壁18bから奥側の規制壁18cに向かって微少角度だけ回転するため、第1および第2の回動アーム18,19に無理な外力が加わることを吸収できる。
【0031】
また、装置内に装着された記録メディア3を排出する場合は、図示せぬイジェクト釦を操作すると、モータ9が逆方向へ回転を開始して上記と逆の動作が行われ、ホルダ6が装着位置から切替位置を経て図3に示すメディア挿入位置までX1方向へ移動するため、ユーザは記録メディア3を筐体1の外部に排出することができる。この場合は、ホルダ6がスライダ16によって装着位置から切替位置まで搬送される間に、記録メディア3の可動側コネクタ5が固定側コネクタ24から抜け出て接続解除され、その後にホルダ6が回動アーム15によって切替位置からメディア挿入位置まで搬送されることになる。
【0032】
図7は本発明の第2実施例に係る記録メディア駆動装置のメディア保持状態を示す要部平面図、図8は該記録メディア駆動装置のメディア搬送途中状態を示す要部平面図、図9は該記録メディア駆動装置のメディア搬送完了状態を示す要部平面図であり、図1〜図5に対応する部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0033】
本実施例に係る記録メディア駆動装置が前述した第1実施例と相違する点は、モータ9の駆動力を第1および第2の搬送機構に選択的に伝達する切替手段としてカム板25を用いたことにあり、それ以外の構成は基本的に同じである。このカム板25は筐体1に回動可能に支持されており、その外周面に刻設されたギヤ部25aが減速歯車列11の最終段ギヤに噛合することにより、モータ(図示省略)を駆動源として正逆両方向へ回転できるようになっている。
【0034】
カム板25には第1のカム溝26と第2のカム溝27が設けられており、第1のカム溝26には第1の搬送機構である第1の回動アーム18に植設された駆動ピン18aが係合し、第2のカム溝27には第2の搬送機構であるスライダ16に植設された駆動ピン16dが係合している。実線で示す第1のカム溝26は、カム板25の回転軸25bからの距離が順次変化する非円弧部26aと、カム板25の回転軸25bからの距離が一定な円弧部26bとからなり、二点鎖線で示す第2のカム溝27は、カム板25の裏面に形成され、カム板25の回転軸25bからの距離が順次変化する非円弧部27aと、カム板25の回転軸25bからの距離が一定な円弧部27bとからなる。上記第1実施例と同様に、回動アーム15の回動軸17と駆動ピン18a間の距離に比べて回動軸17からホルダ6のピン6aまでの距離が十分に長く設定されているため、駆動ピン18aが第1のカム溝26の非円孤部26a内をトレースして第1の回動アーム18を回動させるときの駆動力(ホルダ6の搬送力)は小さいものとなるが、第1の回動アーム18の少ない回転角度でホルダ6を大きく且つ高速で移動させることができる。一方、スライダ16の駆動ピン16dは、第2のカム溝27の非円孤部27a内をトレースしてこの非円孤部27aで直接駆動されるため、スライダ16は低速ながら大きな駆動力でスライド駆動される。
【0035】
このように構成された記録メディア駆動装置では、図7に示すように、記録メディアがホルダ6に挿入・保持されたメディア挿入位置において、第1の回動アーム18側の駆動ピン18aは第1のカム溝26の非円弧部26aの末端位置にあり、スライダ16側の駆動ピン16dは第2のカム溝27の円弧部27bの末端位置にある。この状態からモータを駆動源としてカム板25が図示反時計方向へ回転すると、第1の回動アーム18側の駆動ピン18aが第1のカム溝26内を非円弧部26aの末端位置から円弧部26bに向かってトレースするため、図8に示すように、回動アーム15(第1および第2の回動アーム18,19)が矢印B方向へ回動してホルダ6を切替位置まで搬送する。この間、スライダ16側の駆動ピン16dは第2のカム溝27の円弧部27b内をトレースするため、カム板25の回転駆動力はスライダ16に伝達されない。
【0036】
図8に示す切替位置からカム板25が反時計方向へさらに回転すると、第1の回動アーム18側の駆動ピン18aが第1のカム溝26の円弧部26b内をトレースするため、カム板25の回転駆動力は第1の回動アーム18に伝達されなくなり、その代わりにスライダ16側の駆動ピン16dが第2のカム溝27の非円弧部27a内をトレースするため、図9に示すように、スライダ16がY1方向の末端位置からY2方向へ移動してホルダ6を装着位置まで搬送する。前述した第1実施例と同様に、このようにスライダ16がY2方向へ移動開始すると、ホルダ6の両ピン6b,6cがスライダ16の傾斜孔16cの斜辺に押圧されてガイド孔1aの奥側へ移行するため、ホルダ6に保持された記録メディア3の可動側コネクタ5に固定側コネクタ24が嵌挿され、記録メディア3は装置内に装着された状態でコネクタ接続される。
【0037】
すなわち、この第2実施例においては、切替手段であるカム板25に第1および第2のカム溝26,27を設け、ホルダ6が図7に示すメディア挿入位置から図8に示す切替位置まで搬送される間は、駆動ピン18aを第1のカム溝26の円弧部26bに係合させて第1の回動アーム18を回動させ、ホルダ6が図8に示す切替位置から図9に示す装着位置まで搬送される間は、駆動ピン16dを第2のカム溝27の非円弧部27aに係合させてスライダ16を移動させるようにしたので、1つのカム板25によってモータの駆動力を第1の搬送機構(回動アーム15)と第2の搬送機構(スライダ16)とに選択的に伝達することができ、その分、記録メディア駆動装置の構造を簡略化することができる。また、回動アーム15によるホルダ6の駆動力に比べてスライダ16によるホルダ6の駆動力を十分に大きく設定できるため、低トルクのモータを駆動源として使用しても、記録メディア3の可動側コネクタ5と固定側コネクタ24との間に必要とされる高い挿抜力(例えば2kg・f)を満足することができる。
【0038】
上記各実施例におけるホルダ6の切替位置は、記録メディアの可動側コネクタ5が筐体1内の固定側コネクタ24に嵌挿される直前の位置に設定されているため、第1の搬送機構(回動アーム15)によるホルダ6の移動量を最大限に大きくして記録メディア3をできる限り高速で搬送することができるようになっている。ただし、記録メディア3の高速搬送が要求されない場合は、ホルダ6の切替位置をより挿入口2a側に設定しても良い。
【0039】
なお、上記各実施例においては、記録メディア3として磁気ディスクであるハードディスクを内蔵するカートリッジ4を使用した例を説明したが、本発明では、これに限らず半導体メモリや光ディスクを内蔵するカード型あるいはカートリッジ型記録メディア等であっても良い。
【0040】
また、第1の搬送機構と第2の搬送機構についても、回動アーム15やスライダ16に限定されるものではなく、第1の搬送機構よりも第2の搬送機構の方がホルダ6の搬送力が大きいものであれば、種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1実施例に係る記録メディア駆動装置の待機状態を示す平面図である。
【図2】該記録メディア駆動装置のメディア挿入初期状態を示す平面図である。
【図3】該記録メディア駆動装置のメディア保持状態を示す平面図である。
【図4】該記録メディア駆動装置のメディア搬送途中状態を示す平面図である。
【図5】該記録メディア駆動装置のメディア搬送完了状態を示す平面図である。
【図6】該記録メディア駆動装置に使用される記録メディアの説明図である。
【図7】本発明の第2実施例に係る記録メディア駆動装置のメディア保持状態を示す要部平面図である。
【図8】該記録メディア駆動装置のメディア搬送途中状態を示す要部平面図である。
【図9】該記録メディア駆動装置のメディア搬送完了状態を示す要部平面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 筐体
1a ガイド孔
2 前面パネル
2a 挿入口
3 記録メディア
5 可動側コネクタ
6 ホルダ
6a,6b,6c ピン
7 クランパ
9 モータ
11 減速歯車列
12 駆動部材
12a 透孔
12b 長孔
13 ラック
14 係合孔
14a 係止部
14b 逃げ部
15 回動アーム
16 スライダ
16a 連結孔
16c 傾斜孔
16d 駆動ピン
17 回動軸
18 第1の回動アーム
18a 駆動ピン
19 第2の回動アーム
19a 長孔
20 引っ張りばね
21 中継部材
21a 第1のピン
21b 第2のピン
21c 回動軸
24 固定側コネクタ
25 カム板
25a ギヤ部
25b 回転軸
26 第1のカム溝
27 第2のカム溝
26a,27a 非円弧部
26b,27b 円弧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入方向の先端側に可動側コネクタを有する記録メディアをメディア挿入位置でホルダに挿入・保持させ、このホルダをモータの駆動力によって前記メディア挿入位置から筐体内の装着位置へ自動搬送し、この装着位置で前記記録メディアの前記可動側コネクタが前記筐体内に配設された固定側コネクタに接続される記録メディア駆動装置において、
前記ホルダを、前記メディア挿入位置と、前記装着位置の手前側で前記可動側コネクタと前記固定側コネクタとが接続される前の切替位置との間で搬送する第1の搬送機構と、前記ホルダを前記切替位置と前記装着位置との間で搬送する第2の搬送機構と、前記モータの駆動力を前記第1および第2の搬送機構に選択的に伝達する切替手段とを備え、前記第1の搬送機構に対して前記第2の搬送機構の方が大きな搬送力で前記ホルダを搬送するように構成したことを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記第1の搬送機構が回動可能な回動アームからなると共に、前記第2の搬送機構が前記ホルダの搬送方向に対して直交する方向へ移動可能なスライダからなり、これら回動アームとスライダとの間に前記切替手段を介設したことを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記スライダが前記ホルダの搬送方向に対して傾斜する方向へ延びる傾斜孔を有し、前記ホルダに設けたピンが前記傾斜孔内を摺動することにより、前記スライダの移動が前記ホルダの搬送駆動力に変換されることを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項4】
請求項2または3の記載において、前記切替手段が、前記ホルダの搬送方向へ移動可能で前記回動アームに連結された駆動部材と、前記スライダに連結された回動可能な中継部材とを有し、前記駆動部材の第1の範囲の移動により、前記メディア挿入位置と前記切替位置との間で前記回動アームが前記ホルダを搬送し、前記駆動部材の前記第1の範囲に続く第2の範囲の移動により、前記切替位置と前記装着位置との間で前記中継部材および前記スライダにより前記ホルダを搬送することを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項5】
請求項4の記載において、前記駆動部材にその移動方向へ延びるラックが刻設されており、前記モータの回転が減速歯車列を介して前記ラックに伝達されることを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項6】
請求項4または5の記載において、前記駆動部材にその移動方向へ延びる長孔が設けられると共に、前記中継部材に前記長孔内に挿入された第1のピンと前記スライダに連結された第2のピンとが設けられており、該中継部材の回動中心から前記第1および第2のピンまでの距離がほぼ同一に設定されていることを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項7】
請求項4〜6のいずれか1項の記載において、前記駆動部材に係止部と逃げ部を有する係合孔が設けられると共に、前記回動アームに前記係合孔内に挿入された駆動ピンが設けられており、前記駆動ピンと前記係止部とが当接することにより、前記駆動部材の前記第1の範囲の移動が前記回動アームの回動に変換され、前記駆動ピンが前記逃げ部内を移動することにより、前記駆動部材の前記第2の範囲の移動が吸収されて前記回動アームの回動に変換されないようにしたことを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項8】
請求項2または3の記載において、前記切替手段が第1および第2のカム溝を有する回動可能なカム板からなり、前記回動アームに設けた第1駆動ピンを前記第1のカム溝に係合すると共に、前記スライダに設けた第2駆動ピンを前記第2のカム溝に係合したことを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項9】
請求項8の記載において、前記カム板の外周面にギヤ部が刻設されており、前記モータの回転が減速歯車列を介して前記ギヤ部に伝達されることを特徴とする記録メディア駆動装置。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれか1項の記載において、前記回動アームが前記切替手段に連結された第1の回動アームと前記ホルダに連結された第2の回動アームとからなり、これら第1および第2の回動アームを同軸上で回転可能に連結すると共に、これら第1および第2の回動アームが一体的に回転するように両者を互いに係合する方向へ弾性付勢したことを特徴とする記録メディア駆動装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate