説明

記録媒体およびその印刷物

【課題】 本発明は、従来の記録媒体に用いられている受容層と比較して、強度や製膜性、耐久性等が同等であり、かつ環境面で配慮した受容層を有する記録媒体を提供することを主目的としている。
【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、基材と、前記基材上に形成された生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を含有する受容層とを有することを特徴とする記録媒体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写方式やインクジェット方式、昇華転写方式等、種々の方式による印刷が可能であり、かつ環境に対して配慮した受容層を有する記録媒体、およびその印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、記録媒体への記録は、溶融型熱転写方式や、昇華型熱転写方式、電子写真方式、インクジェット方式等により行われており、記録媒体としては、通常、基材と、その基材上に形成され、インク等を吸収して定着させる受容層とを有するものとされている。一般的な上記記録媒体には、上記基材として、塩化ビニルやポリエステル、ポリスチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリカーボネート、ノルボルネン、ビニロン、アクリル等のプラスチックフィルムまたはシートが用いられている。また、上記受容層として、ポリウレタンやポリアクリル等を主成分としたものが多く用いられている。
【0003】
ここで、上記のような記録媒体は、印字され、一定期間使用された後に大半が廃棄されることとなる。このような記録媒体の廃棄処分方法としては、焼却処分や埋め立て処分等が挙げられるが、上述したような材料は、焼却の際に発熱量が高く焼却炉を損傷したり、有害ガスを発生させるものも多い。また、埋め立て処分を行った場合には、土壌中に上記材料が残留して、土壌汚染の原因となる場合がある。また、石油由来の材料を用いた場合には、資源の再生が困難であり、資源が枯渇する可能性がある等の問題もある。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、例えば特許文献1等に、生分解性を有する基材を含む記録媒体が提案されている。しかしながら、受容層については、上述したような印刷方法により印刷されたインク等を定着させることが必要であったり、製膜性が必要とされるため、生分解性を有する材料等によって、従来の受容層と同等の性質を有するものとすることが困難であった。
【特許文献1】特開平06−239014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、従来の記録媒体に用いられている受容層と比較して、強度や製膜性、耐久性等が同等であり、かつ環境面で配慮した受容層を有する記録媒体の提供が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基材と、上記基材上に形成された生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を含有する受容層とを有することを特徴とする記録媒体を提供する。
【0007】
本発明の記録媒体において、上記受容層が生分解性を有する材料を含有しているものである場合には、記録媒体が埋め立て処分された際、受容層が土壌中の微生物等により分解されることが可能なものとすることができる。またこの場合、記録媒体が焼却処分された際、非生分解性の材料の発熱量と比較して発熱量を少ないものとすることができ、焼却炉を損傷したり、有害ガスを発生させる恐れが少ないものとすることができる。一方、受容層が生物由来の材料を含有しているものである場合には、生物由来の材料は再生原料であり、再生不可能な原料である石油資源の節約等をすることができる、という利点を有する。
【0008】
上記発明においては、上記基材が生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を有することが好ましい。これにより、上記と同様に、基材が環境に及ぼす影響を少ないものとすることができ、記録媒体全体として、環境面に配慮したものとすることができる。
【0009】
上記発明においては、上記基材と上記受容層との間にアンカー層を有し、上記アンカー層が生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を含有していてもよい。アンカー層を設けることにより、基材と受容層との密着性を良好なものとすることができる。またこの際、上記と同様に、アンカー層が環境に及ぼす影響も少ないものとすることができ、記録媒体全体として、環境面に配慮したものとすることができる。
【0010】
また、上記発明においては、上記生分解性を有する材料および/または生物由来の材料が、脂肪族ポリエステル系またはその誘導体であることが好ましく、中でも上記生分解性を有する材料および/または生物由来の材料が、ポリ乳酸であることが好ましい。脂肪族ポリエステル系樹脂は製膜性や塗膜強度の面で優れており、さらにポリ乳酸は、生分解性を有し、かつ生物由来の材料であることから、環境に対する影響をより少ないものとすることができる。また、ポリ乳酸は、比較的強度が高く、製膜性等に優れることから、従来の記録媒体に用いられる受容層や基材、アンカー層と同等の性能を有するものとすることができるからである。
【0011】
また、本発明は上述したいずれかの記録媒体に印刷したことを特徴とする印刷物を提供する。本発明によれば、上記記録媒体を用いた印刷物であることから、環境への負担が少ないものとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、記録媒体が埋め立て処分された際、受容層が土壌中の微生物等により分解されるもの、または記録媒体が焼却処分された際、受容層が焼却炉を損傷したり、有害ガスを発生させる恐れが少ないものとすることや、石油資源を節約すること等ができ、環境に対して配慮された記録媒体とすることができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、環境面に配慮した受容層を有する記録媒体、またはその記録媒体を用いた印刷物に関するものである。以下、それぞれについて説明する。
【0014】
A.記録媒体
まず、本発明の記録媒体について説明する。本発明の記録媒体は、基材と、上記基材上に形成された生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を含有する受容層とを有することを特徴とするものである。
【0015】
一般的な記録媒体に用いられている受容層は、製膜性や強度等の面から、非生分解性の材料、または石油由来の材料が含有されている。しかしながら、この場合、不要となった記録媒体が廃棄処分された際、土壌汚染の原因や、有毒ガスの発生、また焼却炉の損傷の原因となる場合等があった。また、石油は再生資源ではないことから、資源の枯渇が生じるという問題があった。
【0016】
一方、本発明においては、上記受容層が生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を含有するものである。したがって、上記受容層が生分解性を有する場合、廃棄処分された際、受容層が土壌中の微生物により分解されることが可能である。また焼却時の発生熱量を、非生分解性材料と比較して小さなものとすることができることから、有毒ガスの発生や焼却炉の損傷等をすることのないものとすることができる。また、受容層が生物由来の材料を含有している場合には、生物由来の材料は再生原料であることから、資源の枯渇等の問題がないものとすることができ、石油資源の節約につながる。また、生分解性を有し、かつ生物由来の材料を用いた場合には、より環境に対して受容層が及ぼす影響を小さいのものとすることができる。
以下、本発明の記録媒体の各構成ごとに詳しく説明する。
【0017】
1.受容層
まず、本発明の記録媒体に用いられる受容層について説明する。本発明に用いられる受容層としては、後述する基材上に形成され、かつ生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を含有するものである。
【0018】
ここで、本発明において、生分解性を有する材料とは、生分解性試験(JIS K6950、JIS K6951、JIS K6953)により、生分解性を有する材料のみからなるものが60%以上の生分解性を示すものであることをいうこととする。また、生物由来の材料とは、植物等の生物から生成された材料、または微生物により産生された材料を用いて生成された材料をいうこととし、例えば植物や生物等から生成された材料そのものである必要はなく、これらの材料を例えば重合させたり、他の材料と結合させたもの等も含まれることとする。
【0019】
本発明に用いられる受容層としては、上記材料を含有し、かつ従来より記録媒体に用いられている受容層と同等の性質、具体的には強度、製膜性、被印刷性を有するものであれば特に限定されるものではなく、生分解性を有する材料および/または生物由来の材料のみからなるものであってもよく、また生分解性を有する材料および/または生物由来の材料に必要にフィラーや添加剤等、他の材料が含有されているものであってもよい。
【0020】
上記生分解性を有する材料としては、石油由来の材料であってもよく、また天然物由来の材料であってもよい。このような生分解性を有する材料として、例えば脂肪族ポリエステル、微生物産生ポリエステル、芳香族‐脂肪族ポリエステル、脂肪族ポリエステルカーボネート、脂肪族ポリエステルアミド、脂肪族ポリエステルエーテル、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、デンプン、セルロースおよび酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等のセルロース誘導体、キチン、キトサン、マンナン等の多糖類が挙げられる。中でも製膜性や塗膜強度の面から脂肪族ポリエステルが好ましい。
【0021】
上記脂肪族ポリエステルとしては、例えば環状ラクトン類を開環重合したポリカプロラクトン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリプロピオラクトン等や、ラクチド、グリコリドを開環重合したポリ乳酸やポリグリコール酸等が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類を共重合させて得られるポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリブチレンサクシネート・アジペート、またはこれらの共重合体等が挙げられる。また、微生物産生の脂肪族ポリエステルとして、例えばポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリヒドロキシブチレートバリレート等が挙げられ、これらに3−ヒドロキシヘキサノエート、3−ヒドロキシオクタノエート等のヒドロキシアルカノエートを共重合してもよい。また、上記に挙げた脂肪族ポリエステルと、芳香族ポリエステル、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族ポリエーテル等とを、必要に応じて共重合させてもよい。なお、上記脂肪族ポリエステルは、重量平均分子量が1万〜30万の範囲内、中でも3万〜20万の範囲内であることが好ましい。また、用いられる脂肪族ポリエステルの繰り返し単位(モノマー単位)に含まれる炭素数が2〜20の範囲内、中でも2〜12の範囲内であることが好ましい。
【0022】
本発明においては、上述したような材料を1種類、または2種類以上混合して用いることができる。また、上記生分解性を有する材料のみでは、例えば強度や製膜性等が低い場合には、上記生分解性を有する材料と、一般的な記録媒体の受容層等に用いられる生分解性を有しない樹脂等を混合して用いてもよい。上記生分解性を有する材料と混合して用いることが可能な材料としては、例えばポリアクリル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリオレフィン等が挙げられる。またこの場合、上記生分解性を有しない樹脂は、受容層に用いられる樹脂全体の中で50重量%未満、中でも30重量%未満の範囲内で含有されていることが好ましい。上記生分解性を有しない材料の含有量を上記範囲内とすることにより、本発明の目的を損なうことのないものとすることができるからである。
【0023】
一方、本発明に用いられる生物由来の材料としては、生物由来の材料であるポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート等のポリエステル系樹脂や、ポリアミノ酸系樹脂、セルロースアセテート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、キチン、キトサン、マンナン等の、多糖・デンプン・セルロース系樹脂、大豆タンパク、またはこれらの樹脂を架橋等させたもの、またさらにこれらの樹脂と一般的に用いられている非生物由来の樹脂と結合させたもの等とすることができる。本発明においては、製膜性や塗膜強度の面から上記の中でもポリエステル系樹脂、またはこの誘導体を用いることが好ましい。また、上記非生物由来の樹脂と混合させる場合には、受容層に用いられる樹脂全体の中で非生物由来の樹脂が50重量%未満、中でも30重量%未満の範囲内で含有されていることが好ましい。上記生物由来の材料以外の材料の含有量を上記範囲内とすることにより、本発明の目的を損なうことのないものとすることができるからである。
【0024】
ここで、本発明に用いられる受容層には、上記生分解性を有し、かつ生物由来の材料が用いられることが好ましい。これにより、上記受容層が環境汚染の原因等となることもなく、また石油資源の節約もすることができ、より環境に対して好ましいものとすることができるからである。このような材料としては、例えば上述したようなポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート等の微生物産生ポリエステル系樹脂や、ポリ(γ‐グルタミン酸)等のポリアミノ酸系樹脂、セルロースアセテート、デンプン、キチン、キトサン、マンナン、プルラン等の多糖・デンプン・セルロース系樹脂等を挙げることができる。本発明においてはこのような材料の中でも脂肪族ポリエステル系樹脂が、製膜性が高く塗膜の強度が比較的高いことから、受容層として適している。なお、本発明においては、上記樹脂の極性を変えることにより、受容層が受容するインキに合わせて印刷適正を調節することもできる。
【0025】
本発明においては、上記の中でも特にポリ乳酸、またはポリブチレンサクシネートを用いることが好ましい。上記材料は、強度が比較的高く、機械的強度等の面において優れており、従来の記録媒体に用いられている受容層と同等の性能を有する受容層とすることができるからである。
【0026】
また、本発明に用いられる受容層に含有される生分解性を有する材料および/または生物由来の材料以外の材料としては、受容層の被印刷性を向上させるためのカチオン系のポリマーや、シリカ粒子等の無機粒子、ブロッキング防止剤としての有機粒子や無機粒子、酸化防止剤や紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、潤滑剤、消泡剤、可塑剤、架橋剤、親水性の高い各種変性オイル等の各種添加剤等を、本発明の目的を妨げない範囲内で使用することができる。
【0027】
なお、受容層の被印刷性を向上させるために用いられるカチオン系ポリマーとしては、例えばアクリルアミド系共重合体、ポリエチレンイミン、ポリアミンスルフォニウム、ポリビニルピリジン、ポリジアルキルアミノエチルメタクリレート、ポリジアルキルアミノエチルアクリレート、ポリジアルキルアミノエチルメタクリルアミド、ポリジアルキルアミノエチルアクリルアミド、ポリエポキシアミン、ポリアミドアミン、ジシアンジアミド‐ホルマリン縮合物、ジシアンジアミド‐ポリアルキレンポリアミン縮合物、ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリアミンポリアミドエピクロルヒドリン、ポリビニルアミン、ポリアクリルアミン等の化合物、およびこれらの変性物等を用いることができる。また、脂肪アミン、脂肪アミンアセテート、第4級アンモニウム化合物等の群から選ばれたカチオン性ポリマーも用いることができる。また、公知のカチオン変性したポリビニルアルコール、カチオン変性ポリエステル、カチオン変性ポリアミド、ジアリルアミン重合体ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、カチオン変性界面活性剤等も用いることができる。このようなカチオン性物質を含有させることにより、受容層に印刷されたインキ等の定着性が向上し、インキ等の滲みの発生等を抑制することができる。
【0028】
ここで、本発明における受容層の形成は、上述した各材料を混合した受容層形成用組成物を溶剤等により適宜希釈し、基材上に公知の方法により塗布することにより行うことができる。塗布は、例えばグラビアコート、グラビアリバースコート、ロールコート、ワイヤーバーコート、ブレードコート、ナイフコート、エアーナイフコート、コンマコート、スロットダイコート、ディップコート等により行うことができる。また、上記受容層形成用組成物の塗布に用いられる溶剤としては、受容層形成用組成物の種類等により適宜選択されるものであるが、例えば水やアルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤等を用いることができる。
【0029】
また、本発明においては、上記受容層の膜厚は、記録媒体の種類や使用目的等により適宜選択されるものであるが、通常0.1μm〜300μmの範囲内、中でも1μm〜100μmとされる。上記膜厚が0.1μm以下である場合には、受容層に印刷された際、インク等の吸収が不十分となる場合があり、また膜厚が300μm以上となる場合には、製造コスト等の面から好ましくないからである。
【0030】
2.基材
次に、本発明の記録媒体に用いられる基材について説明する。本発明の記録媒体に用いられる基材としては、上記受容層が形成可能なものであれば、特に限定されるものではないが、本発明においては特に基材が、生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を有することが好ましい。これにより、記録媒体全体として、環境に配慮したものとすることが可能となるからである。
【0031】
ここで、上記生分解性を有する基材としては、生物由来の材料を用いたものであってもよく、また石油由来の材料を用いたものであってもよい。このような基材としては、上述した受容層の項で説明した生分解性を有する材料を用いた基材とすることができる。また、生物由来の材料を有する基材としては、例えば紙や木材等からなる基材や、上述した受容層の項で説明した生物由来の材料を有する基材とすることができる。
【0032】
本発明においては、特に生分解性を有し、かつ生物由来の材料を用いた基材であることが好ましい。これにより、基材が環境汚染の原因等となることもなく、また石油資源の節約もすることができ、より環境に対して好ましいものとすることができるからである。このような基材として具体的には、紙や木材等からなる基材や、生分解性を有する生物由来のプラスチックを用いた基材等が上げられる。生分解性を有する生物由来のプラスチックとしては、例えばポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート等の脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート等の微生物産生ポリエステル系樹脂や、ポリ(γ‐グルタミン酸)等のポリアミノ酸系樹脂、セルロースアセテート、デンプン、キチン、キトサン、マンナン、プルラン等の多糖・デンプン・セルロース系樹脂等を挙げることができる。本発明においては、これらを1種、または2種以上を共重合させたもの等を用いることができる。また、これらの樹脂を混合して形成したものであってもよい。
【0033】
本発明においては、上記の中でも特にポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシバリレートを含有する基材であることが好ましい。上記材料は比較的強度が高く、本発明の記録媒体を、従来の記録媒体と同様の特性を有するものとすることができるからである。
【0034】
また、上記基材には、必要に応じて適宜、可塑剤や滑剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料、紫外線吸収剤等の各種添加剤や改質剤等が含有されていてもよい。また上記基材は、受容層との密着性を向上させるために、コロナ放電処理等の処理が施されたもの等であってもよい。
【0035】
なお、本発明に用いられる基材の形態は、記録媒体の種類や用途等に応じて適宜選択され、シート状やフィルム状であってもよく、また板状、棒状、成形品等とすることができる。
【0036】
3.記録媒体
本発明の記録媒体は、例えばカード基材、葉書、OHPシート、インクジェット紙、熱転写用紙、電子写真用用紙、昇華転写用紙等、種々の目的に用いられるものである。
【0037】
本発明の記録媒体は、上記基材および受容層を有するものであれば、その層構成等は特に限定されるものではなく、例えば基材と受容層との間にアンカー層を有するものであってもよく、また上記受容層が形成される側と反対側の基材上に、カール防止や帯電防止、ブロッキング防止等の目的で裏面層を有するもの等であってもよい。また、基材の両面に受容層を設けたような構成としてもよい。
【0038】
本発明においては、特に基材と受容層との間にアンカー層が形成されていることが好ましい。これにより、基材と受容層との密着性を良好なものとしたり、上記受容層の耐擦過性、耐剥離性等を向上させることが可能となるからである。また、例えば基材の凹凸を平坦化することや、記録媒体の光沢感等を向上させることも可能となる。このような本発明に用いられるアンカー層について以下説明する。
【0039】
(アンカー層)
本発明に用いられるアンカー層としては、上記基材と受容層との密着性が良好なものであれば、特に限定されるものではないが、本発明においては特にアンカー層が、生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を有することが好ましい。これにより、記録媒体全体として、環境に配慮したものとすることが可能となるからである。
【0040】
このような生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を有するものとしては、上述した受容層や基材の項で説明したものと同様とすることができるが、本発明においては上記の中でもポリ乳酸を用いることが好ましい。上述したように、ポリ乳酸は生分解性を有する生物由来の材料である。また上記基材や受容層としてポリ乳酸が好適に用いられることから、アンカー層としてポリ乳酸を用いることにより、これらの基材や受容層との密着性をより良好なものとすることができるからである。
【0041】
本発明においては、このようなアンカー層は、上記受容層と同様の方法により形成することができるので、ここでの詳しい説明は省略する。また、このアンカー層の膜厚としては、記録媒体の種類や用途等により適宜選択されるものであるが、通常0.1μm〜300μm程度、中でも1μm〜100μm程度とすることができる。また、必要に応じて架橋剤、可塑剤、各種添加剤や改質剤を適宜使用してもよい。架橋剤を添加することで、上記基材や受容層との密着性をより向上させることができる。
【0042】
(その他)
なお、上述したように、本発明の記録媒体には、上記アンカー層以外にも例えば上記裏面層等が形成されていてもよく、これらの層は、一般的な記録媒体に用いられる層と同様とすることができる。
【0043】
ここで、本発明においては、このような層についても、生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を有することが好ましい。これにより、記録媒体全体として、環境に配慮したものとすることが可能となるからである。
【0044】
B.印刷物
次に、本発明の印刷物について説明する。本発明の印刷物は、上述した記録媒体に印刷がされたものであれば、その印刷方式は特に限定されるものではない。印刷方式としては、例えばインクジェット方式や、昇華転写方式、溶融型熱転写方式、電子写真方式等、一般的に用いられている印刷方式を用いることができる。また、印刷範囲についても、特に限定されるものではなく、例えば上記受容層全体に印刷されているものであってもよく、また受容層の一部のみに印刷されているものであってもよい。
【0045】
なお、本発明においては、上記印刷方式による印刷に用いられるインキ等が、生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を有することが好ましい。これにより、印刷物全体として、環境に配慮したものとすることが可能となるからである。
【0046】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0048】
[実施例1]
基材として、ポリ乳酸シート(エコロージュSW、250μm厚、三菱樹脂(株)製)を用い、受容層形成用組成物としてポリ乳酸系エマルジョン(ランディPL、ミヨシ油脂(株)製、主溶媒:水)をバーコーターにより塗布した後、100℃で乾燥させて、基材及び受容層を有する記録媒体を得た。乾燥後の膜厚は10μmであった。
【0049】
[実施例2]
受容層形成用組成物として、ポリブチレンサクシネート系エマルジョン(AQ‐1 アイカ工業(株)製、主溶媒:水)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、基材及び受容層を有する記録媒体を得た。
【0050】
[実施例3]
受容層形成用組成物として、ポリ乳酸系塗工液(バイロエコールTYB−280 東洋紡(株)製、主溶媒:メチルエチルケトン)を用いた以外は、実施例1と同様に行い、基材及び受容層を有する記録媒体を得た。
【0051】
[実施例4]
受容層形成用組成物として、下記の組成の受容層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様に行い、基材及び受容層を有する記録媒体を得た。
ポリ乳酸系エマルジョン(ランディPL、ミヨシ油脂(株)製、主溶媒:水)
80重量部
カチオン性ポリマー(PM S‐19 PNケミカル(株)製) 20重量部
[実施例5]
以下の組成の受容層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様に行い、基材及び受容層を有する記録媒体を得た。
ポリ乳酸系エマルジョン(ランディPL、ミヨシ油脂(株)製、主溶媒:水)
35重量部
カチオン性ポリマー(PM S‐19 PNケミカル(株)製) 15重量部
シリカ(ファインシール K−41 トクヤマ(株)製) 50重量部
【0052】
[実施例6]
以下の組成の受容層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様に行い、基材及び受容層を有する記録媒体を得た。
ポリ乳酸系エマルジョン(ランディPL、ミヨシ油脂(株)製、主溶媒:水)
55重量部
カチオン性ポリマー(PM S‐19 PNケミカル(株)製) 10重量部
シリカ(ファインシール K−41 トクヤマ(株)製) 35重量部
【0053】
[実施例7]
基材上にポリ乳酸系塗工液(バイロエコールTYB−280 東洋紡(株)製)をバーコーターにより塗布した後、100℃で乾燥させて、アンカー層とし、その上に受容層を形成した以外は、実施例1と同様に行った。アンカー層の膜厚は、3μmであった。
【0054】
[実施例8]
実施例1で形成された記録媒体に昇華型プリンターで印刷を行い、印刷物とした。
【0055】
[比較例]
基材として、塩化ビニルシート(ビニホイル 250μm厚、三菱樹脂(株)製)を用い、受容層形成用組成物としてアクリル系ポリマー組成物(NS−620X 高松油脂(株)製)をバーコーターにより塗布した後、100℃で乾燥させて、基材及び受容層を有する記録媒体を得た。
【0056】
[評価]
実施例1から実施例6までの記録媒体、および比較例の記録媒体の塗工適正、密着性、生分解性、被印刷適正を評価した結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
上記評価は、それぞれ以下の方法により行った。
塗工適正:塗工液の安定性および受容層形成後の塗工外観を目視にて評価し、塗工外観および塗工液の安定性が良好なものを○、塗工液のケーキングが起きるものや、塗工外観に凹凸が見られるもの、塗工液の安定性が悪いものを×とした。
密着性:密着性はセロハンテープ剥離試験により評価した。受容層上にセロハンテープを18mm×25mmのサイズで貼り、一気にはがした際に、塗膜がセロハンテープ面に移行しなかったものを○、一部でも転移したものを×とした。
生分解性:作製した記録媒体をコンポスト中に埋めて6ヶ月間放置し、その後に記録媒体が分解されているかを目視にて評価した。分解が進行しているものを○、変化がないものを×とした。
被印刷適正:Canon製昇華型プリンタCP3020Dを使用し、速度0.2m/minで印刷を行った。良好に印刷が行われたものを○、印刷がかすれたり、印字ができないものを×とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に形成された生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を含有する受容層とを有することを特徴とする記録媒体。
【請求項2】
前記基材が生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を有することを特徴とする請求項1に記載の記録媒体。
【請求項3】
前記基材と前記受容層との間にアンカー層を有し、前記アンカー層が生分解性を有する材料および/または生物由来の材料を含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の記録媒体。
【請求項4】
前記生分解性を有する材料および/または生物由来の材料が、脂肪族ポリエステル系またはその誘導体であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの請求項に記載の記録媒体。
【請求項5】
前記生分解性を有する材料および/または生物由来の材料が、ポリ乳酸であることを特徴とする請求項4に記載の記録媒体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかの請求項に記載の記録媒体に印刷したことを特徴とする印刷物。

【公開番号】特開2006−82437(P2006−82437A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−270426(P2004−270426)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】