説明

記録媒体の再生装置、記録媒体の再生方法およびプログラム

【課題】ノイズとトラッキングエラー信号とを誤認識することがなく、安定した再生動作を行うこと。
【解決手段】記録媒体30から得られるオフトラック信号と記録媒体30から得られるトラックカウント信号とをそれぞれ検出する信号検出手段としての再生信号検出部10、再生信号弁別処理部15、トラッキングエラー信号検出部12、トラッキングエラー信号弁別処理部16、制御部18と、信号検出手段により検出されたオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数がいずれも所定範囲内であるときに記録媒体30が対応記録媒体であると判定する記録媒体判定部17、制御部18と、を備える記録媒体の再生装置1を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体の再生装置、記録媒体の再生方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクの種類には大きく分けてCD(Compact Disc)とDVD(Digital Versatile Disc)がある。また、昨今では、従来のDVDに加え、BD(Blu-ray
Disc)も存在する。これらのCD、DVD、BDでは、用いるレーザ光の波長、開口数、光ディスクのトラックピッチなどの仕様がそれぞれ異なっている。したがって、これらの記録媒体の再生装置は、これらの記録媒体の種別を判別しなければならない。
【0003】
特許文献1には、記録媒体から取得した反射信号の数やDVDレーザを用いてトラッキングした場合のトラッキングの有無に基づき、光ディスクの記録媒体のタイプがCD、DVD、BDその他のいずれであるかを判別する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−146698号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
記録媒体の再生装置において、非対応記録媒体の挿入時に、反射面から得られる信号によってフォーカスがONしたときに、ピット(トラック:行)から得られた反射信号ではない波形(ノイズなど)をトラッキングエラー信号と誤認識することがある。
【0006】
この場合、さらにサーボをONさせる為に、トラッキングエラー信号を得ようと次のトラックを求めて光ピックアップがディスクの内周側(または外周側)へ進んでしまう。しかし、次のトラッキングエラー信号が得られることはないため、光ピックアップがさらに進んでしまう。このような状態が継続することにより、光ピックアップを記録媒体上で移動させるスレッドが記録媒体上を暴走することになる。
【0007】
この従来の問題点について図7のフローチャートを参照して説明する。図7は、従来の記録媒体の再生装置(以下では、単に再生装置という)の制御部が行う再生処理のフローチャートである。
【0008】
START:再生装置の電源がONになるなどして再生装置が起動すると、制御部は、ステップS30の処理へ移行する。
【0009】
ステップS30:制御部は、再生装置に記録媒体としてのディスクが挿入されたことを検出すると、ステップS31の処理へ移行する。
【0010】
ステップS31:制御部は、挿入された記録媒体としてのディスクの記録面に対してフォーカスサーチ処理を開始し、ステップS32の処理へ移行する。
【0011】
ステップS32:制御部は、フォーカスサーチ処理を開始した結果、何らかの反射信号を取得できたか否かを判断する。すなわち、制御部は、フォーカスサーチ処理を開始した結果、何らかの反射信号が得られた場合(ステップS32でYes)、ステップS33の処理へ移行する。一方、制御部は、フォーカスサーチ処理を開始した結果、何も反射信号が得られない場合(ステップS32でNo)、ステップS42の処理へ移行し、再生処理を終了する。
【0012】
ステップS33:制御部は、フォーカスON処理を開始し、ステップS34の処理へ移行する。
【0013】
ステップS34:制御部は、フォーカスON処理を開始した結果、フォーカスONに成功したか否かを判断する。すなわち、制御部は、フォーカスON処理を開始した結果、フォーカスONに成功した場合(ステップS34でYes)、ステップS35の処理へ移行する。一方、制御部は、フォーカスON処理を開始した結果、フォーカスONに失敗した場合(ステップS34でNo)、ステップS42の処理へ移行し、再生処理を終了する。
【0014】
ステップS35:制御部は、フォーカスONに成功した後、次にトラッキングエラー信号を取得できたか否かを判断する。すなわち、制御部は、フォーカスONに成功した後、トラッキングエラー信号を取得できた場合(ステップS35でYes)、ステップS36の処理へ移行する。一方、制御部は、フォーカスONに成功した後、トラッキングエラー信号を取得できなかった場合(ステップS35でNo)、ステップS42の処理へ移行し、再生処理を終了する。
【0015】
なお、ここでは、ステップS35において得られたトラッキングエラー信号は、ノイズなどの擬似的なトラッキングエラー信号であるとする。
【0016】
ステップS36:制御部は、取得したトラッキングエラー信号に基づいてトラッキングON処理を開始し、ステップS37の処理へ移行する。
【0017】
ステップS37:制御部は、トラッキングON処理を開始した結果、トラッキングONしたと見なせるか否かを判断する。すなわち、制御部は、トラッキングON処理を開始した結果、トラッキングONと見なせる場合(ステップS37でYes)、ステップS38の処理へ移行する。一方、制御部は、トラッキングON処理を開始した結果、トラッキングONに失敗した場合(ステップS37でNo)、ステップS42の処理へ移行し、再生処理を終了する。
【0018】
ステップS38:制御部は、トラッキングONが継続しているか否かを判断する。すなわち、制御部は、トラッキングONが継続していない場合(ステップS38でNo)、ステップS39の処理へ移行する。一方、制御部は、トラッキングONが継続している場合(ステップS38でYes)、ステップS41の処理へ移行し、再生処理を実行する。
【0019】
ステップS39:制御部は、ON状態を継続させるために、光ピックアップをトラックの先行または後行へ移行し(ディスクの内周側もしくは外周側へ移動させ)、ステップS40の処理へ移行する。
【0020】
ステップS40:制御部は、ステップS39の処理によって移行した先行または後行において、トラッキングエラー信号が取得できたか否か判断する。すなわち、制御部は、ステップS39の処理によって移行した先行または後行において、トラッキングエラー信号が取得できた場合(ステップS40でYes)、ステップS36の処理へ戻る。一方、制御部は、ステップS39の処理によって移行した先行または後行において、トラッキングエラー信号が取得できなかった場合(ステップS40でNo)、ステップS38の処理へ戻る。
【0021】
ステップS41:制御部は、再生処理を実行してステップS42の処理へ移行する。
【0022】
ステップS42:制御部は、再生処理を終了する(END)。
【0023】
このように、図7のフローチャートにおいて、ステップS40でトラッキングエラー信号が検出されない場合、制御部は、トラッキングエラー信号を求めて先行または後行へ光ピックアップを移行する。しかしながら、先程取得したトラッキングエラー信号は、ノイズなどによる擬似的なトラッキングエラー信号である。よって、そのような擬似的なトラッキングエラー信号が引き続き発生する確率はきわめて低く、ステップS38→S39→S40の処理は、繰り返される。この結果、光ピックアップを備えるスレッドは、ディスク上を隈なく走査してトラッキングエラー信号を探し求めようとする。これにより、スレッドは暴走する。
【0024】
すなわち、ステップS35において、トラッキングエラー信号が取得できなければ、制御部は、挿入されたディスクが非対応記録媒体のディスクであると判断してステップS42の処理へ移行し、再生処理を終了するので何等問題は生じない。
【0025】
しかしながら、制御部は、ステップS35において、トラッキングエラー信号と誤認識するような誤った信号の入力があると、もはや挿入されたディスクが非対応記録媒体のディスクであるか否かという判断は行わず、次のステップに進んでしまい、これにより、スレッドの暴走という問題が発生する。
【0026】
また、特許文献1の提案では、記録媒体の種類に対応したレーザを用いて記録媒体の種類を判定している。しかしながら、特許文献1の提案のように、複数種類のレーザを用意し、これを用いて記録媒体の種類を判定することは、単に1種類の記録媒体を判定しようとする場合には複雑かつ高価であり適さない。
【0027】
本発明は、このような背景の下に行われたものであって、ノイズとトラッキングエラー信号とを誤認識することがなく、簡単に安定した再生処理を行える記録媒体の再生装置、記録媒体の再生方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明の第一の観点は、記録媒体の再生装置としての観点である。すなわち、本発明の記録媒体の再生装置は、記録媒体から得られるオフトラック信号と記録媒体から得られるトラックカウント信号とをそれぞれ検出する信号検出手段と、信号検出手段により検出されたオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数がいずれも所定範囲内であるときに、記録媒体が対応記録媒体であると判定する記録媒体判定手段と、を備えるものである。
【0029】
このときに、記録媒体判定手段は、オフトラック信号の位相とトラックカウント信号の位相とのずれが所定時間内に一定であるとき上述した所定範囲内であると判定する記録媒体判定手段と、を備えるようにしてもよい。
【0030】
本発明の第二の観点は、記録媒体の再生方法としての観点である。すなわち、本発明の記録媒体の再生方法は、記録媒体の再生装置が、記録媒体から得られるオフトラック信号と記録媒体から得られるトラックカウント信号とをそれぞれ検出する信号検出ステップと、信号検出ステップの処理により検出されたオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数がいずれも所定範囲内であるときに記録媒体が対応記録媒体であると判定する記録媒体判定ステップと、を実行するものである。
【0031】
このときに、記録媒体判定ステップの処理として、オフトラック信号の位相とトラックカウント信号の位相とのずれが所定時間内に一定であるとき上述した所定範囲内であると判定するようにしてもよい。
【0032】
本発明の第三の観点は、プログラムとしての観点である。すなわち、本発明のプログラムは、情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、本発明の記録媒体の再生装置における信号検出手段の機能および記録媒体判定手段の機能を実現するものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、ノイズとトラッキングエラー信号とを誤認識することがなく、簡単に安定した再生処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態に係る再生装置の全体構成図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る再生装置の機能ブロック構成図である。
【図3】図2の再生信号検出部が検出する再生信号、再生信号弁別処理部が出力するオフトラック信号、トラッキングエラー信号検出部が検出するトラッキングエラー信号、トラッキングエラー信号弁別処理部が出力するトラックカウント信号を説明する図であり、記録媒体の内周から外周方向へスレッドが移動する場合の状態を示す図である。
【図4】図2の再生信号検出部が検出する再生信号、再生信号弁別処理部が出力するオフトラック信号、トラッキングエラー信号検出部が検出するトラッキングエラー信号、トラッキングエラー信号弁別処理部が出力するトラックカウント信号を説明する図であり、記録媒体の外周から内周方向へスレッドが移動する場合の状態を示す図である。
【図5】図2の制御部が行う再生処理を示すフローチャートであり、記録媒体種類判定部がオフトラック信号とトラックカウント信号とを観察して記録媒体の種類を判定する第1の方法を含むフローチャートである。
【図6】図2の制御部が行う再生処理を示すフローチャートであり、記録媒体種類判定部がオフトラック信号とトラックカウント信号とを観察して記録媒体の種類を判定する第2の方法を含むフローチャートである。
【図7】従来の問題点を説明するための再生処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
(本発明の実施の形態に係る記録媒体の再生装置1の構成について)
本発明の実施の形態に係る記録媒体の再生装置1の構成について図1、図2を参照して説明する。図1は、再生装置1の全体構成図である。図2は、再生装置1の機能ブロック構成図である。再生装置1は、図1に示すように、ターンテーブル10、スピンドルモータ11、光ピックアップ12、再生信号検出部13、トラッキングエラー信号検出部14、再生信号弁別(コンパレート)処理部15、トラッキングラエー信号弁別処理部16、記録媒体判定部17、制御部18を備えるCD再生装置である。
【0036】
また、光ピックアップ12は、レーザ発振器20、コリメータレンズ21、偏光ビームスプリッタ22、1/4波長板23、対物レンズ24を備える。なお、光ピックアップ12の構成については周知であるので説明は省略する。
【0037】
また、図2に示すように、光ピックアップ12は、スレッド19に備えられている。スレッド19は、スレッド駆動部20によって、ターンテーブル10に装着された記録媒体30の径方向に移動することができる。
【0038】
たとえば、スレッド駆動部20は、ネジを切ったシャフトと、このシャフトを回転させるモータ(たとえばステッピングモータ)とによって構成される。スレッド19には、このシャフトが貫通する穴があり、シャフトのネジ山と嵌合するように溝が形成されている。これにより、スレッド駆動部20のシャフトが回転することにより、スレッド19がシャフト上をシャフトの軸方向に移動する。このようにして、光ピックアップ12は、記録媒体30上を隈なく走査することができる。
【0039】
ここで、請求項でいう信号検出手段は、再生信号検出部13、再生信号弁別処理部15、トラッキングエラー信号検出部14、トラッキングエラー信号弁別処理部16、制御部18がこれに相当する。また、請求項でいう記録媒体判定手段は、記録媒体判定部17、制御部18がこれに相当する。
【0040】
光ピックアップ18は、3ビーム方式であり、図2に示すように、記録媒体30上に、1本のメインビームと2本のサブビーム♯1、♯2を照射し、その反射信号から再生信号(RF信号)およびトラッキングエラー信号を検出する。なお、再生信号は、再生信号検出部10内の受光部40における4つの領域に分割されるメインスポット信号の各領域の総和から生成される。また、トラッキングエラー信号は、トラッキングエラー信号検出部12がサブビーム♯1、♯2によって検出する2つのサブスポット信号の差分(サブスポット信号♯1−サブスポット信号♯2)から生成される。
【0041】
再生信号弁別処理部15は、再生信号検出部10が検出した再生信号におけるエンベロープの明暗レベルを所定の閾値によって弁別する。これにより再生信号弁別処理部15は、後述するオフトラック信号を出力する。なお、“弁別(コンパレート)”の処理については周知の技術であり、詳細な説明は省略するが、ごく簡単に説明すると、所定の閾値と弁別対象となる信号のレベルとを比較し、所定の閾値よりも大きな信号のレベルの領域と所定の閾値よりも小さな信号のレベルの領域とに分類するといった処理である。
【0042】
また、トラッキングエラー信号弁別処理部16は、トラッキングエラー信号検出部12が検出したトラッキングエラー信号を所定の閾値によって弁別する。これによりトラッキングエラー信号弁別処理部16は、後述するトラックカウント信号を出力する。
【0043】
記録媒体判定部17は、再生信号弁別処理部15から出力されるオフトラック信号と、トラッキングエラー信号弁別処理部16から出力されるトラックカウント信号とを入力し、後述する方法によって対応する記録媒体か否かの判定結果を出力する。
【0044】
制御部18は、スピンドルモータ11、光ピックアップ12、再生信号検出部13、再生信号弁別処理部15、トラッキングエラー信号検出部14、トラッキングエラー信号弁別処理部16、記録媒体判定部17、スレッド駆動部20をそれぞれ制御する。
【0045】
(再生装置1の動作について)
次に、再生装置1の動作について図3〜図5を参照して説明する。図3は、記録媒体30の内周から外周に向かう方向にスレッド19が移動する場合における再生信号検出部13が検出する再生信号および当該再生信号を再生信号弁別処理部15で弁別処理して得られるオフトラック信号、トラッキングエラー信号検出部14が検出するトラッキングエラー信号および当該トラッキングエラー信号をトラッキングエラー信号弁別処理部16で弁別処理して得られるトラックカウント信号をそれぞれ示している。
【0046】
また、図4は、記録媒体30の外周から内周に向かう方向にスレッド19が移動する場合における再生信号検出部13が検出する再生信号および当該再生信号を再生信号弁別処理部15で弁別処理して得られるオフトラック信号、トラッキングエラー信号検出部14が検出するトラッキングエラー信号および当該トラッキングエラー信号をトラッキングエラー信号弁別処理部16で弁別処理して得られるトラックカウント信号をそれぞれ示している。
【0047】
記録媒体30が対応記録媒体(たとえばCD)である場合、図3、図4において、オフトラック信号とトラックカウント信号とは、たとえば互いに位相が90°という固定値だけずれて同じ周期となるように表れる。記録媒体判定部17では、オフトラック信号とトラックカウント信号とを観察することによって記録媒体20が再生装置1の対応記録媒体(たとえばCD)であるか否かを判定する。
【0048】
ここで制御部18が、記録媒体判定部17によるオフトラック信号とトラックカウント信号の観察結果に基づき再生装置1に挿入された記録媒体30の種類が対応記録媒体であるか否かを記録媒体判定部17に判定させる方法には2種類ある。以下では、この2種類の方法について説明する。
【0049】
なお、説明の便宜上、再生装置1の制御部18、記録媒体判定部17が第1の判定方法を行い、再生装置1Aの制御部18A、記録媒体判定部17Aが第2の判定方法を行うとして説明する。
【0050】
(記録媒体判定部17がオフトラック信号とトラックカウント信号とを観察して記録媒体30の種類を判定する第1の方法について)
記録媒体判定部17がオフトラック信号とトラックカウント信号とを観察して記録媒体30の種類を判定する第1の方法について図5のフローチャートを参照して説明する。図5は、制御部18が行う再生処理のフローチャートである。
【0051】
START:再生装置1の電源がONになるなどして再生装置1が起動すると、制御部18は、ステップS1の処理へ移行する。
【0052】
ステップS1:制御部18は、再生装置1に記録媒体30としてのディスクが挿入されたことを検出すると、ステップS2の処理へ移行する。
【0053】
ステップS2:制御部18は、挿入された記録媒体30としてのディスクの記録面に対してフォーカスサーチ処理を開始し、ステップS3の処理へ移行する。
【0054】
ステップS3:制御部18は、フォーカスサーチ処理を開始した結果、何らかの反射信号の有無を判断する。すなわち、制御部18は、フォーカスサーチ処理を開始した結果、何らかの反射信号が得られた場合(ステップS3でYes)、ステップS4の処理へ移行する。一方、制御部18は、フォーカスサーチ処理を開始した結果、何も反射信号が得られない場合(ステップS3でNo)、ステップS11へ移行し、再生処理を終了する。
【0055】
ステップS4:制御部18は、フォーカスON処理を開始し、ステップS5の処理へ移行する。
【0056】
ステップS5:制御部18は、フォーカスON処理を開始した結果、フォーカスONに成功したか否かを判断する。すなわち、制御部18は、フォーカスON処理を開始した結果、フォーカスONに成功した場合(ステップS5でYes)、ステップS6の処理へ移行する。一方、制御部18は、フォーカスON処理を開始した結果、フォーカスONに失敗した場合(ステップS5でNo)、ステップS11の処理へ移行し、再生処理を終了する。
【0057】
ステップS6:制御部18は、記録媒体判定部17を用いて、オフトラック信号とトラックカウント信号とを観察して再生可能な記録媒体30か否かを判定する第1の方法を実行する。すなわち、制御部18は、記録媒体判定部17を用いてトラッキングOFF時において、再生信号弁別処理部15から出力されるオフトラック信号とトラッキングエラー信号弁別処理部16から出力されるトラックカウント信号のパルス数を検出してステップS7の処理へ移行する。
【0058】
ステップS7:制御部18は、所定時間内における記録媒体判定部17を用いて取得したオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数の検出結果がいずれも所定範囲内か否か判断する。すなわち、制御部18は、所定時間内における記録媒体判定部17を用いて取得したオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数の検出結果がいずれも所定範囲内である場合(ステップ7でYes)、ステップS8の処理へ移行する。一方、制御部18は、所定時間内における記録媒体判定部17を用いて取得したオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数の検出結果のいずれか一方または双方共に所定範囲外である場合(ステップ7でNo)、ステップS11の処理へ移行し、再生処理を終了する。
【0059】
なお、所定時間の設定は、要求される判定品質および判定時間によって異なり、精度の高い判定が要求される場合には、所定時間の設定は長くなり、判定精度の高さよりも短い判定時間が要求される場合には、所定時間の設定は短くなる。2つの信号のパルス数を検出するのであるから、たとえば最低でも数パルス分のサンプルを取得する時間は必要である。
【0060】
ステップS8:制御部18は、トラッキングON処理を開始してステップS9の処理へ移行する。
【0061】
ステップS9:制御部18は、トラッキングON処理を開始した結果、トラッキングONが完了したか否か判断する。すなわち、制御部18は、トラッキングON処理を開始した結果、トラッキングONが完了した場合(ステップS9でYes)、ステップS10の処理へ移行する。一方、制御部18は、トラッキングON処理を開始した結果、トラッキングONが未だ完了していない場合(ステップS9でNo)、ステップS8の処理へ戻る。
【0062】
ステップS10:制御部18は、再生処理を実行してステップS11の処理へ移行する。
【0063】
ステップS11:制御部18は、再生処理を終了する(END)。
【0064】
このように、制御部18は、記録媒体判定部17を用いて、所定時間内におけるオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数の検出結果がいずれも所定範囲内か否かを判断させることによって、記録媒体判定部17に、記録媒体30が対応メディアであるCDであるか否かを判断させる。
【0065】
これによれば、ノイズなどによって擬似的なトラッキングエラー信号が入力された場合でもそのような一時的に発生する信号については、記録媒体判定部17が受け付けないようにできる。よって、再生装置1は、ノイズとトラッキングエラー信号とを誤認識することがない。また、再生装置1は、特許文献1の提案のような複数のレーザを用いることなく、再生可能ディスクの判定を精度良く行うことができる。
【0066】
さらに、再生装置1は、ステップS5でフォーカスONに成功すれば、ステップS6、S7における記録媒体30の種類の判定が直ちに可能となる。また、再生装置1は、挿入された記録媒体30が対応記録媒体であると確認された場合にのみトラッキングON動作に移行する。これに対し、従来の再生装置は、フォーカスONに成功した後にトラッキングON動作に移行し、このトラッキングON動作の工程で記録媒体の種類の判定を行っている。よって、再生装置1は、従来の再生装置と比較して迅速かつ効率良く、すなわち記録媒体30が非対応記録媒体であったときには無効となるトラッキングON動作を行わず記録媒体30を判定することができる。
【0067】
(記録媒体判定部17Aがオフトラック信号とトラックカウント信号とを観察して記録媒体30の種類を判定する第2の方法について)
次に、記録媒体判定部17Aがオフトラック信号とトラックカウント信号とを観察して記録媒体30の種類を判定する第2の方法について図6のフローチャートを参照して説明する。図6は、制御部18Aが行う再生処理のフローチャートである。なお、図5のフローチャートと共通するステップについては、図5と同一の符号を付し、その説明を省略する。ただし、図6のステップS5においては、制御部18Aは、フォーカスON処理を開始した結果、フォーカスONに成功した場合(ステップS5でYes)、ステップS20の処理へ移行する。
【0068】
ステップS20:制御部18Aは、記録媒体判定部17Aを用いて、オフトラック信号とトラックカウント信号とを観察して記録媒体種類30の種類を判定する第2の方法を実行する。すなわち、制御部18Aは、記録媒体判定部17Aを用いてトラッキングOFF時において、再生信号弁別処理部15から出力されるオフトラック信号とトラッキングエラー信号弁別処理部16から出力されるトラックカウント信号との位相を比較してステップS21の処理へ移行する。なお、位相を比較する場合の比較対象点としては、信号の立ち上がり点同士、立ち下がり点同士、または立ち上がり点と立ち下がり点とを比較することが好ましい。
【0069】
ステップS21:制御部18Aは、所定時間内における記録媒体判定部17Aを用いて取得したオフトラック信号とトラックカウント信号との位相のずれが一定であるか否か判断する。すなわち、制御部18Aは、所定時間内における記録媒体判定部17Aを用いて取得したオフトラック信号とトラックカウント信号との位相のずれが一定である場合(ステップ21でYes)、ステップS8の処理へ移行する。一方、制御部18Aは、所定時間内における記録媒体判定部17Aを用いて取得したオフトラック信号とトラックカウント信号との位相のずれが一定でない場合(ステップ21でNo)、ステップS11の処理へ移行し、再生処理を終了する。
【0070】
なお、所定時間の設定は、要求される判定品質および判定時間によって異なる。すなわち、精度の高い判定が要求される場合には、所定時間の設定は長くなり、判定精度の高さよりも短い判定時間が要求される場合には、所定時間の設定は短くなる。2つの信号の位置関係を比較するのであれば、最低1パルス分のサンプルを取得すれば2つの信号の位置関係の比較は可能となる。しかしながら、ジッタなどにより2つの信号の位置関係がずれる場合を考慮して最低数パルス分のサンプルを取得することが好ましい。
【0071】
このように、制御部18Aは、記録媒体判定部17Aを用いて所定時間内におけるオフトラック信号とトラックカウント信号との位相のずれが一定であるか否か判断することによって、記録媒体判定部17Aに、記録媒体30が対応記録媒体(たとえばCD)であるか否かを判断させる。たとえば図3、図4に示す信号波形の例では、オフトラック信号とトラックカウント信号とは、位相がほぼ90°ずれてはいるもののその位置関係に変化は無い。よって、「両者の位相のずれが一定であるか否かを判断する。」とは「両者の位相のずれがほぼ90°ずれた状態を保っているか否かを判断する。」ということである。
【0072】
これによれば、ノイズなどによって擬似的なトラッキングエラー信号が入力された場合でもそのような一時的に発生する信号については、記録媒体判定部17Aが受け付けないようにできる。よって、再生装置1Aは、ノイズとトラッキングエラー信号とを誤認識することがない。また、再生装置1Aは、特許文献1の提案のような複数のレーザを用いることなく、簡単に再生可能な記録媒体30を判定することができる。
【0073】
さらに、再生装置1Aは、ステップS5でフォーカスONに成功すれば、ステップS20、S21における記録媒体30の判定が直ちに可能となる。また、再生装置1Aは、挿入された記録媒体30が対応記録媒体であると確認された場合にのみトラッキングON動作に移行する。これに対し、従来の再生装置は、フォーカスONに成功した後にトラッキングON動作に移行し、このトラッキングON動作の工程で記録媒体の種類の判定を行っている。よって、再生装置1Aは、従来の再生装置と比較して迅速かつ効率良く、すなわち記録媒体30が非対応記録媒体であったときには無効となるトラッキングON動作を行わず再生可能な記録媒体30を判定することができる。
【0074】
なお、上述した第1の方法において、検出されたオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数がいずれも所定範囲内であるときに記録媒体30が対応記録媒体であると判定することと、上述した第2の方法による判定とは実質的には同じことである。
【0075】
すなわち、上述した第2の方法において、“オフトラック信号の位相とトラックカウント信号の位相とのずれが所定時間内に一定であるとき”とは、これを言い換えると、“オフトラック信号のパルス数とトラックカウント信号のパルス数とが同じであるとき”ということである。
【0076】
たとえば、もし、オフトラック信号のパルス数がトラックカウント信号のパルス数よりも多ければ、オフトラック信号の位相とトラックカウント信号の位相とのずれは、オフトラック信号の位相がトラックカウント信号の位相に追い付き追い越す形になるため一定にはならない。
【0077】
また、通常、オフトラック信号のパルス数とトラックカウント信号のパルス数が双方ともに上述した第1の方法で説明した所定範囲内を逸脱することは考えられない。
【0078】
したがって、“オフトラック信号の位相とトラックカウント信号の位相とのずれが所定時間内に一定であるとき”とは、すなわち第1の方法における“オフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数の検出結果がいずれも所定範囲内であるとき”ということと同じことになる。
【0079】
すなわち、上述した第1の方法では、直接的にオフトラック信号とトラックカウント信号のパルス数を検出(計数)しているのに対し、上述した第2の方法では、オフトラック信号とトラックカウント信号の位相のずれに着目することによって間接的にこれらの信号のパルス数を検出していることになる。
【0080】
(プログラムを用いた実施の形態について)
再生装置1、1Aの再生信号弁別処理部15、トラッキングエラー信号弁別処理部16、記録媒体判定部17、17A、制御部18、18Aは、所定のプログラムにより動作する汎用の情報処理装置(CPU(Central Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)など)によって構成されてもよい。例えば、汎用の情報処理装置は、メモリ、CPU、入出力ポートなどを有する。汎用の情報処理装置のCPUは、メモリなどから所定のプログラムとして制御プログラムを読み込んで実行する。これにより、汎用の情報処理装置には、再生装置1、1Aの再生信号弁別処理部11、トラッキングエラー信号弁別処理部13、記録媒体判定部17、17A、制御部18、18Aの機能が実現される。また、その他の機能についてもソフトウェアにより実現可能な機能については汎用の情報処理装置とプログラムとによって実現することができる。
【0081】
なお、汎用の情報処理装置が実行する制御プログラムは、再生装置1、1Aの出荷前に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであっても、再生装置1、1Aの出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。また、制御プログラムの一部が、再生装置1、1Aの出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶されたものであってもよい。再生装置1、1Aの出荷後に、汎用の情報処理装置のメモリなどに記憶される制御プログラムは、例えば、CD−ROMなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶されているものをインストールしたものであっても、インターネットなどの伝送媒体を介してダウンロードしたものをインストールしたものであってもよい。
【0082】
また、制御プログラムは、汎用の情報処理装置によって直接実行可能なものだけでなく、ハードディスクなどにインストールすることによって実行可能となるものも含む。また、圧縮されたり、暗号化されたりしたものも含む。
【0083】
(他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り、様々に変更が可能である。たとえば上述の実施の形態では、制御部18、18Aの処理として、非対応記録媒体が挿入された際には、再生処理を停止するとして説明したが、その他にも「非対応記録媒体が挿入されました。」などのメッセージをユーザに向けてテキスト表示、画像表示または音声表示などによって送出するようにしてもよい。
【0084】
また、上述の実施の形態では、一般的な3ビーム方式を用いる例を説明したが、その他にもPush−Pull演算方式のトラッキングエラー信号を用いてもよい。また、如何なる方式のトラッキングエラー信号の演算処理を用いた場合においても、オフトラック信号とトラックカウント信号とが共にモニタできれば上述した実施の形態を適用することができる。
【0085】
また、上述の実施の形態では、再生装置1が行う第1の判定方法と、再生装置1Aが行う第2の判定方法として個別に説明したが、1台の再生装置1Cが第1の判定方法と第2の判定方法とを適宜切り替えて実行するようにしてもよい。
【0086】
たとえば第1の判定方法は、2つの信号のパルス数の検出を用いる。これに対し、第2の判定方法は、2つの信号の位置関係の比較を用いる。これらの判定方法は、両者共に所定の観察時間を要する。しかしながら、2つの信号の位置関係の比較であれば、高い判定品質を望まない状況下においては最低1パルス分であっても判定可能である。このようなことから、比較的長い観測時間を要しても高い判定品質を望む場合には、第1の判定方法を採用し、高い判定品質よりも短い観測時間を望むのであれば第2の判定方法を採用するなどとしてもよい。
【0087】
また、この切り替えは、ユーザの操作によって行うようにしたり、時間帯、使用環境その他の要因によって再生装置1Cが自動的に切り替えるようにしてもよい。
【0088】
また、上述した実施の形態では、「第2の方法」において、オフトラック信号とトラックカウント信号とを用いたが、これに代えて、再生信号弁別処理部15、トラッキングエラー信号弁別処理部16を用いずに、再生信号と、トラッキングエラー信号とをそのまま用いてもよい。なお、これらの再生信号、トラッキングエラー信号は弁別(コンパレート)されていないため、オフトラック信号、トラックカウント信号のようなパルス波形になっていない。このために、再生信号、トラッキングエラー信号の場合は、立ち上がり点、立ち下がり点が不明確となる。よって、再生信号、トラッキングエラー信号のゼロクロス点などを位相を比較する場合の比較対象点とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0089】
1、1A…再生装置、13…再生信号検出部(信号検出手段の一部)、14…トラッキングエラー信号検出部(信号検出手段の一部)、15…再生信号弁別処理部(信号検出手段の一部)、16…トラッキングエラー信号弁別処理部(信号検出手段の一部)、17…記録媒体判定部(記録媒体判定手段の一部)、19…スレッド、20…スレッド駆動部、18、18A…制御部(信号検出手段の一部、記録媒体判定手段の一部)、30…記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体から得られるオフトラック信号と上記記録媒体から得られるトラックカウント信号とをそれぞれ検出する信号検出手段と、
上記信号検出手段により検出された上記オフトラック信号と上記トラックカウント信号のパルス数がいずれも所定範囲内であるときに上記記録媒体が対応記録媒体であると判定する記録媒体判定手段と、
を備える、
ことを特徴とする記録媒体の再生装置。
【請求項2】
請求項1記載の記録媒体の再生装置において、
前記記録媒体判定手段は、前記オフトラック信号の位相と前記トラックカウント信号の位相とのずれが所定時間内に一定であるとき前記所定範囲内であると判定する、
ことを特徴とする記録媒体の再生装置。
【請求項3】
記録媒体の再生装置が、
上記記録媒体から得られるオフトラック信号と上記記録媒体から得られるトラックカウント信号とをそれぞれ検出する信号検出ステップと、
上記信号検出ステップの処理により検出された上記オフトラック信号と上記トラックカウント信号のパルス数がいずれも所定範囲内であるときに上記記録媒体が対応記録媒体であると判定する記録媒体判定ステップと、
を実行する、
ことを特徴とする記録媒体の再生方法。
【請求項4】
請求項3記載の記録媒体の再生方法において、
前記記録媒体判定ステップの処理として、前記オフトラック信号の位相と前記トラックカウント信号の位相とのずれが所定時間内に一定であるとき前記所定範囲内であると判定する、
ことを特徴とする記録媒体の再生方法。
【請求項5】
情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、
請求項1または2記載の記録媒体の再生装置における前記信号検出手段の機能および前記記録媒体判定手段の機能を実現させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−28798(P2011−28798A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172255(P2009−172255)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】