説明

記録媒体の製造方法とそれによって製造された記録媒体

【課題】本発明は、記録媒体の製造方法とそれによって製造された記録媒体に関するもので、生産性を向上することを目的とするものである。
【解決手段】一面側に、所定ピッチで溝18を有する板状の記録媒体14を所定位置に配置する第一の工程と、記録媒体14の一面側から、第一の平行光を入射させるとともに、記録媒体14の他面側から第二の平行光を入射させる第二の工程と、次に、記録媒体14の、溝18を透明樹脂21により覆うとともに、この記録媒体14を所定位置に配置する第三の工程と、その後、この記録媒体14の一面側から、第一の平行光を入射させるとともに、記録媒体14の他面側から第二の平行光を入射させる第四の工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚さ方向に、複数のホログラム層を多層状態で設けた記録媒体の製造方法とそれによって製造された記録媒体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、記録容量を大きくするために、下記(特許文献1)に示すごとく、多層記録された記録媒体が提案されている。
【0003】
すなわち、下記(特許文献1)に示すものでは、図11(c)のごとく、円板状の記録媒体1内の厚さ方向に、ホログラム層2が多層状態で設けられているので、記録容量は極めて大きくなる。
【0004】
この(特許文献1)に示した従来例の特徴点は、マイクロホログラム3が渦巻状、または同心円状に配置されたホログラム層2を、記録媒体1内に、複数層設けているので、この記録媒体1への記録時でも、再生時でも、記録媒体1の片側から、そのマイクロホログラム3に向けて光を照射すれば良いという点である。
【0005】
すなわち、記録時には、記録媒体1の片側から、その記録部分のマイクロホログラム3に光を照射し、光学的な変質を起こさせ、マイクロホログラム3を消失させる部分と、光を照射せず、マイクロホログラム3を残存させる部分とを形成することで、デジタル的な記録を行うことができる。
【0006】
また、再生時にも、記録媒体1の片側から、マイクロホログラム3の消失部分と、マイクロホログラム3の残存部分に光を照射し、そこからの反射光を読み取れば、デジタル的な再生を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第7388695号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来例においては、下記の手順により記録媒体1を製造している。
【0009】
先ず、図8に示す様に、マスターディスク4の一外面側から(例えば上面から)、このマスターディスク4に向けて参照光5を入射させるとともに、このマスターディスク4の他外面側から(例えば下面から)、このマスターディスク4に向けて記録光6を入射させ、マスターディスク4内にマイクロホログラム7を形成し、これによりマスターディスク4を完成させる。
【0010】
次に、図9に示す様に、マスターディスク4に共役マスターディスク8を重合させ、その状態で図10(a)のごとく、共役マスターディスク8側から平行光9を入射させる。
【0011】
すると、図10(b)のごとく、マスターディスク4内のマイクロホログラム7からの反射光10が発生し、この反射光10と前記平行光9が共役マスターディスク8内で干渉することで、この共役マスターディスク8内にホログラム11が形成される。つまり、これにて共役マスターディスク8が完成する。
【0012】
その後、図11(a)に示す様に、共役マスターディスク8に、まだブランクディスク状態の記録媒体1を重合させ、記録媒体1側から平行光12を入射させる。
【0013】
すると、図11(b)に示す様に、ホログラム11からの反射光13が発生し、この反射光13と前記平行光12がブランクディスク状態の記録媒体1内で干渉することで、この記録媒体1内にマイクロホログラム3が形成される。つまり、記録媒体1が完成する。
【0014】
以上の説明で明らかな様に、従来の記録媒体1の製造方法は、マスターディスク4と共役マスターディスク8を事前に形成しなければならないので、非常に手間のかかるもので、生産性が低いものであった。
【0015】
そこで、本発明は、記録媒体の生産性を向上することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
そして、この目的を達成するために本発明は、一面側に、所定ピッチで溝を有する板状の記録媒体を所定位置に配置し、前記記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、第一の平行光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、第二の平行光を入射させ、次に、前記記録媒体の、前記溝を透明樹脂により覆い、その後、この記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、第一の平行光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、第二の平行光を入射させ、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0017】
以上の様に本発明は、一面側に、所定ピッチで溝を有する板状の記録媒体を所定位置に配置する第一の工程と、前記記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、第一の平行光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、第二の平行光を入射させる第二の工程と、次に、前記記録媒体の、前記溝を透明樹脂により覆うとともに、この記録媒体を所定位置に配置する第三の工程と、その後、この記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、第一の平行光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、第二の平行光を入射させる第四の工程を有するものであるので、極めて生産性の高いものになるのである。
【0018】
すなわち、本発明においては、第二、第四の工程により、それぞれ記録媒体内に、タルボ効果により複数層のホログラム層を形成することができるものであり、従来用いられていたマスターディスクと共役マスターディスクを事前に形成することなく、記録媒体内に直接、複数層のホログラム層を形成することができるので、極めて生産性の高いものになるのである。
【0019】
また、第二の工程と、第四の工程では、記録媒体内の異なる部分にホログラム層を形成することができるので、記録密度を高めることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1にかかる記録媒体を示す斜視図
【図2】(a)同記録媒体の製造方法を示す断面図、(b)同断面図
【図3】同記録媒体の製造方法を示す断面図
【図4】同記録媒体の製造方法を示す断面図
【図5】同製造方法により製造した記録媒体の断面図
【図6】本発明の実施の形態2にかかる記録媒体の製造方法により製造した記録媒体の断面図
【図7】本発明の実施の形態3にかかる記録媒体の製造方法により製造した記録媒体の断面図
【図8】従来の製造方法を示す図
【図9】同製造方法を示す図
【図10】同製造方法を示す図
【図11】同製造方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1において、14は本発明の実施の形態1にかかる製造方法によって製造した記録媒体を示し、中心部分には、貫通孔15が形成されており、また内部には、断続的な渦巻状、または連続的な渦巻状のホログラム層16が多層状態で形成されている。
【0023】
以下、この記録媒体14の製造方法について、説明を行う。
【0024】
先ず、図2(a)のごとく、記録媒体14の一面(例えば下面)に、金型17で、図2(b)のごとく、溝18を形成する。
【0025】
この溝18は、ホログラム層16と同じく渦巻状となっており、内、外周間のピッチは、渦巻状のホログラム層16の内、外周間のピッチと同じくpとなっている。
【0026】
なお、本実施形態における、ホログラム層16は、マイクロホログラムが渦巻状に、連続的に形成された形状となっている。
【0027】
また、記録媒体14を形成している合成樹脂の光屈折率を(n1)とすると、溝18の深さdは、d≒λ/4(n1−1)としている。
【0028】
また、この状態では、当然なことではあるが、記録媒体14内には、ホログラム層16は未だ形成されていないブランクディスク状態である。
【0029】
次に、図3のごとく、記録媒体14を所定位置に水平状態で配置し、前記記録媒体14の一面側(下面側)から、この記録媒体14内に、記録光として第一の平行光(波長は405nm)19を入射させるとともに、前記記録媒体14の他面側(上面側)からこの記録媒体14内に、参照光として第二の平行光(波長は405nm)20を入射させる。
【0030】
この時に、記録媒体14の溝18側に注目すると、溝18の部分の光屈折率は、その内部には空気が存在しているので、空気と同じく(1)となっている。
【0031】
しかし、この溝18に隣接する部分には、記録媒体14が凸の状態で存在しており、この凸部分の光屈折率は、上述のごとく空気の光屈折率(1)よりも高い(n1)となっている。
【0032】
この結果、この記録媒体14の溝18側においては、位相型タルボ効果発生グレーティングが形成され、これにより第一の平行光(記録光)19の回折現象(理解を容易にするために、0次光と一時回折光に矢印を付している)が起こり、この回折光と第二の平行光(参照光)20が干渉する結果として、ホログラム層16aが形成される。
【0033】
このホログラム層16aは、タルボ効果により図5のごとく記録媒体14内に、タルボ距離T/2毎に複数層同時に形成される。
【0034】
この時、溝18側から数えて奇数番目のホログラム層16aは、溝18に対向するもの、また溝18側から数えて偶数番目のホログラム層16aは溝18間部分に対向する状態となっている。
【0035】
次に、図4に示すごとく、溝18内を透明樹脂21で覆い、その後、この記録媒体14の一面側(下面側)から、この記録媒体14内に、記録光として第一の平行光(波長は405nm)19を入射させるとともに、前記記録媒体14の他面側(上面側)からこの記録媒体14内に、参照光として第二の平行光(波長は405nm)20を入射させる。
【0036】
透明樹脂21の光屈折率(n2)は、記録媒体14を形成している合成樹脂の光屈折率(n1)よりも大きくしている。
【0037】
この結果、タルボ効果により図4、図5のごとく、各層のホログラム層16a間に、ホログラム層16bが同時に形成される。
【0038】
この時、記録媒体14の光屈折率(n1)と、透明樹脂21の光屈折率(n2)との関係を、n1−n2=n1−1(空気の光屈折率)とすれば、図5のごとくホログラム層16aと、ホログラム層16bを同一面に形成することができる。
【0039】
また、この同一面において、隣接するホログラム層16aと、ホログラム層16b間は、隣接する溝18間のピッチpの1/2となるので、記録密度を向上することができる。
【0040】
さて、この状態において、同一面に存在するホログラム層16aと、ホログラム層16bにより、図1に示したような渦巻状のホログラム層16が形成されるようになっている。
【0041】
具体的には、ホログラム層16aと、ホログラム層16bが、渦巻状のホログラム層16の一部分を分割形成した状態となっているのである。
【0042】
また、ホログラム層16を連続した渦巻状とするか、断続的な渦巻状とするか、あるいは同心円状にするかは、溝18の形成により適宜自由に形成できる。
【0043】
さらに、このようにして形成した上、下のホログラム層16の間隔は、上述のように、タルボ距離Tの1/2となる。
【0044】
つまり、図5に示す溝18に対向する上、下のホログラム層16aの間隔は、タルボ距離Tとなり、この上、下のホログラム層16a間にホログラム層16bが存在するので、結論として、上、下のホログラム層16の間隔は、タルボ距離Tの1/2となるのである。
【0045】
なお、タルボ距離Tは、溝18のピッチpの2乗に、n1/λを掛け合わせたもので求められる。
【0046】
(実施の形態2)
図6は本発明の実施の形態2にかかる製造方法によって製造した記録媒体を示し、この例では、隣接するホログラム層16aと、ホログラム層16bが、記録媒体14内において、上下方向の形成方向に差異がある。
【0047】
具体的には、ホログラム層16bの方が、ホログラム層16aよりも、下方に形成されている。
【0048】
このようにするためには、記録媒体14の光屈折率(n1)と、透明樹脂21の光屈折率(n2)との関係を、n2−n1>n1−1(空気の光屈折率)とすれば、ホログラム層16bの方を、ホログラム層16aよりも、下方に形成することができる。
【0049】
(実施の形態3)
図7は本発明の実施の形態3にかかる製造方法によって製造した記録媒体を示し、この例でも、隣接するホログラム層16aと、ホログラム層16bが、記録媒体14内において、上下方向の形成方向に差異がある。
【0050】
具体的には、ホログラム層16aの方が、ホログラム層16bよりも、下方に形成されている。
【0051】
このようにするためには、記録媒体14の光屈折率(n1)と、透明樹脂21の光屈折率(n2)との関係を、n2−n1<n1−1(空気の光屈折率)とすれば、ホログラム層16aの方を、ホログラム層16bよりも、下方に形成することができる。
【0052】
さて、以上のようにして形成された記録媒体14内には同心円状にホログラム層16が形成されているので、この記録媒体14への情報記録、および情報読み出しは次の様にして行われる。
【0053】
つまり、この記録媒体14を、記録再生装置(図示せず)に装着し、情報記録と、その後の再生を行う様になっている。
【0054】
具体的には、記録時は、記録再生用のレンズ(図示せず)で、例えば「デジタル信号の1」に相当する場所のホログラム層16部分に記録再生光(波長405nm)を収束し、その部分のマイクロホログラムを消失させる。逆に「デジタル信号の0」に相当する部分のマイクロホログラム部分には光を照射せず、これによりマイクロホログラムを残す。
【0055】
その後、記録した情報を再生する時には、波長405nmの記録再生光をレンズ(図示せず)を介してホログラム層16に照射し、そこからの反射光からデジタル信号の再生を行う。
【0056】
つまり、マイクロホログラムが消失した部分からは記録再生光の反射光はなく、マイクロホログラムが残った部分からは記録再生光の反射光がある状態となるので、この反射光の有無によりデジタル信号の再生を行うのである。
【0057】
なお、再生時には、記録媒体14が連続的に高速回転しており、しかも記録再生光の照射時間が極めて短時間であり、また照射パワーも記録時に比較して、非常に低く、よってホログラム層16の残っているマイクロホログラムが劣化することはない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上の様に本発明は、一面側に、所定ピッチで溝を有する板状の記録媒体を所定位置に配置する第一の工程と、前記記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、第一の平行光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、第二の平行光を入射させる第二の工程と、次に、前記記録媒体の、前記溝を透明樹脂により覆うとともに、この記録媒体を所定位置に配置する第三の工程と、その後、この記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、第一の平行光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、第二の平行光を入射させる第四の工程を有するものであるので、極めて生産性の高いものになるのである。
【0059】
すなわち、本発明においては、第二、第四の工程により、それぞれ記録媒体内に、タルボ効果により複数層のホログラム層を形成することができるものであり、従来用いられていたマスターディスクと共役マスターディスクを事前に形成することなく、記録媒体内に直接、複数層のホログラム層を形成することができるので、極めて生産性の高いものになるのである。
【0060】
また、第二の工程と、第四の工程では、記録媒体内の異なる部分にホログラム層を形成することができるので、記録密度を高めることもできる。
【0061】
このため、記録媒体の製造方法およびそれによって製造される記録媒体として、広く活用が期待される。
【符号の説明】
【0062】
14 記録媒体
15 貫通孔
16 ホログラム層
16a、16b ホログラム層
17 金型
18 溝
19 第一の平行光
20 第二の平行光
21 透明樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側に、所定ピッチで溝を有する板状の記録媒体を所定位置に配置する第一の工程と、前記記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、第一の平行光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、第二の平行光を入射させる第二の工程と、次に、前記記録媒体の、前記溝を透明樹脂により覆うとともに、この記録媒体を所定位置に配置する第三の工程と、その後、この記録媒体の一面側から、この記録媒体内に、第一の平行光を入射させるとともに、前記記録媒体の他面側からこの記録媒体内に、第二の平行光を入射させる第四の工程を有する記録媒体の製造方法。
【請求項2】
記録媒体の一面側には、溝が渦巻状に形成されている請求項1に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項3】
記録媒体の一面側には、複数の溝が同心円状に形成されている請求項1に記載の記録媒体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の記録媒体の製造方法を用いて製造された記録媒体であって、この記録媒体内には、断続的な渦巻状、または連続的な渦巻状のホログラム層が形成されている記録媒体。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一つに記載の記録媒体の製造方法を用いて製造された記録媒体であって、この記録媒体内には、ホログラム層が同心円状に形成されている記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−210324(P2011−210324A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78457(P2010−78457)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】