説明

記録媒体カセット

【課題】上部スライドトレイ(用紙収容空間)に収容した用紙のエッジに対するエッジガイドの突き当て具合の調整を容易に行うことができる記録媒体カセットを提供する。
【解決手段】用紙P(記録媒体)に記録を行う記録装置1に対し着脱自在に構成され、用紙Pが収容される用紙収容空間Sを有する上部スライドトレイ57と、上部スライドトレイ57の用紙収容空間Sを覆うように設けられ、用紙収容空間Sを開閉する上部外側カバー55と、上部外側カバー55に対し摺動自在に設けられ、前記収容部を閉塞したときに用紙収容空間Sに収容した用紙Pの少なくとも一端に接触して用紙Pをガイドするエッジガイド58と、を備え、エッジガイド58は、上部外側カバー55の上部スライドトレイ57と反対側の面に露出した排出側ガイド65を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体に記録を行う記録装置に対し着脱自在に構成され、収容された記録媒体のエッジ(端部)に接触してガイドする記録媒体カセットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録媒体に記録を行う記録装置に対し着脱自在に構成された記録媒体カセットであって、記録媒体(用紙)を収容するベースケース(カセット本体)と、ベースケースを覆うカバーケース(前面ケース)と、ベースケースの収容部に対し、記録媒体の幅方向に移動可能な第1エッジガイドおよび第2エッジガイドを備えた記録媒体カセットが知られている(特許文献1参照)。
この記録媒体カセットでは、2つのエッジガイドをそれぞれ変位させることで、記録媒体のサイズに合った適切な位置で、セットした記録媒体のエッジをガイドすることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−266023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の記録媒体カセットでは、収容部に記録媒体を収容し、各エッジガイドを記録媒体の端(エッジ)接触させるように移動させた後(セット状態)、カバーケースで収容部を閉塞していた。ここで、記録媒体のエッジに対する各エッジガイドの突き当てが強い(または弱い)場合など、エッジガイドの変位を再調整する必要が生じるとカバーケースを再び取り外し、エッジガイドを操作できる状態にしなければならなかった。
【0005】
本発明は、ベースケースに収容した記録媒体のエッジに対するエッジガイドの突き当て具合の調整を容易に行うことができる記録媒体カセットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の記録媒体カセットは、記録媒体に記録を行う記録装置に対し着脱自在に構成され、記録媒体が収容される収容部を有するベースケースと、ベースケースの収容部を覆うように設けられ、収容部を開閉するカバーケースと、カバーケースに対し摺動自在に設けられ、収容部を閉塞したときに収容部に収容した記録媒体の少なくとも一端に接触して記録媒体をガイドするエッジガイドと、を備え、エッジガイドは、カバーケースのベースケースと反対側の面に露出した操作子を有することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、ベースケースに記録媒体を収容し、収容部をカバーケースで閉塞した後に、カバーケースの外側に臨む操作子を用いてエッジガイドを記録媒体の端(エッジ)に突き当てることができる。すなわち、記録媒体を収容した収容部を、カバーケースにより閉塞したまま、エッジガイドの摺動を操作することができる。これにより、記録媒体のエッジに対するエッジガイドの突き当てが強い(または弱い)ため、エッジガイドの変位調整が必要な場合など、カバーケースを再び取り外すことなく容易にエッジガイドを変位させることができる。
なお、カバーケースで収容部の閉塞前に、エッジガイドを変位させてもよい。好ましくは、閉塞前に記録媒体のサイズに合わせてエッジガイドを大雑把に位置合わせしておき、閉塞後に操作子を用いてエッジガイドを記録媒体のエッジに突き当てるようにする。
【0008】
この場合、カバーケースは、ベースケースと反対側の面が、収容状態から送り出されて記録が行われた記録媒体の保持部として機能し、エッジガイドは、収容部側に設けられ、収容部に収容された記録媒体をガイドする供給側ガイドと、保持部側に設けられ、操作子を有し、保持部に保持された記録媒体をガイドする排出側ガイドと、カバーケースを貫通して形成された貫通穴を通して供給側ガイドと排出側ガイドとを連結する連結部と、を有し、貫通穴に沿って摺動自在に設けられていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、カバーケースの表裏にそれぞれ供給側ガイドと排出側ガイドとが設けられているため、収容部内の記録媒体だけでなく、保持部に保持(ストック(蓄積))された記録媒体のエッジもガイドすることができる。これにより、供給側と排出側とで個別にエッジガイドを摺動させるための構造を設ける必要がなく、構造の単純化および低コスト化を図ることができる。
また、供給側ガイドと排出側ガイドとは、連結部により連結されていることから、どちらか一方を変位させることにより、他方も変位させることができる。これにより、供給側ガイドおよび排出側ガイドの変位調整を一度に行うことができるため、迅速かつ容易な操作が可能となる。
【0010】
また、この場合、エッジガイドは、記録媒体の搬送方向に直交する方向に摺動自在に設けられたことが好ましい。
【0011】
この構成によれば、記録媒体は、幅方向に整えられた状態でベースケースにセットされる。これにより、記録媒体は、幅方向にずれることなく正常に搬送され、正常な記録が行われる。
【0012】
この場合、ベースケースに対し記録媒体の搬送方向に摺動自在に設けられた第2エッジガイドを、更に備えていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、記録媒体は、長さ方向に対しても整えられた状態でベースケースにセットされる。特に複数の記録媒体をセットした場合に、搬送方向の下流側端部が不揃いとなることで生じうる搬送不良を防止することができる。
また、1つのケースに2つのエッジガイドのための摺動構造を設けると、そのケースの構造強度が低下する。しかし、上記の構成によれば、第2エッジガイドは、エッジガイドが設けられたカバーケースではなく、ベースケースに設けられているため、ベースケースおよびカバーケースの構造強度の低下を防止することができる。
【0014】
また、この場合、カバーケースは、一端を回転軸として回動自在にベースケースに取り付けられていることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、カバーケースは、回転軸中心に回動することで収容部を大きく開放することができる。これにより、収容部への記録媒体の収容を容易に行うことができる。
【0016】
この場合、カバーケースは、記録媒体の搬送方向に直交する方向に延在した一端を回転軸として回動自在にベースケースに取り付けられており、エッジガイドは、カバーケースから外れて記録媒体の搬送方向に延在して形成され、回転軸と同軸のエッジ回動軸によりカバーケースと一体に回動することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、エッジガイドのカバーケースを外れた部分は回動せず、エッジガイドのカバーケースに設けられた部分が、エッジ回転軸を中心にしてカバーケースと共に回動する。これにより、収容部を大きく開放することができると共に、カバーケースを外れた部分のエッジガイドが、記録媒体の収容時のガイドとなる。また、エッジガイドは、搬送方向に延びているため、記録媒体のエッジに対し、搬送方向に長く接触することができ、エッジガイドとしての機能を確実に発揮することができる。
【0018】
この場合、ベースケースは、ベース本体と、ベース本体に対し摺動自在に係合するスライドベースと、を有し、カバーケースは、カバー本体と、カバー本体に対し摺動自在に係合するスライドカバーと、を有し、スライドベースおよびスライドカバーは、それぞれ、記録媒体の搬送方向に摺動することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、セットする記録媒体に合わせてスライドベースおよびスライドカバーを摺動させ、適切な大きさの収容部を形成することができる。これにより、記録媒体の長さに関わらず適切にセットすることができる。
【0020】
また、この場合、カバーケースのベースケースと反対側の面に記録媒体のサイズを指標する目盛が設けられていることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、カバーケースにより収容部を閉塞する前に、収容した記録媒体に合わせてエッジガイドを変位させることができる。また、目盛を確認することで、カバーケースにより収容部を閉塞した後に、収容した記録媒体のサイズを知ることができる。なお、目盛を更にベースケース(収容部)側に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】記録装置の外観斜視図である。
【図2】用紙を給送ローラーから離間させた状態の記録装置の側断面図である。
【図3】用紙を給送ローラーに圧接させた状態の記録装置の側断面図である。
【図4】上部外側カバーが閉塞した状態の記録媒体カセットの斜視図である。
【図5】上部外側カバーが開放された状態の記録媒体カセットの斜視図である。
【図6】上部外側カバーが閉塞した状態の記録媒体カセットの正面図である。
【図7】(a)は、図6のA−A線における記録媒体カセットの断面図、(b)は、上部外側カバーが開放された状態の記録媒体カセットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る記録装置について説明する。この記録装置は、起立姿勢で保持した用紙(記録媒体)を搬送しながら所望の記録を行い、排紙した記録済みの用紙を起立状態で保持(ストック)するものである。なお、各図に示す通り、X軸(左右)方向、Y軸(前後)方向およびZ軸(上下)方向を規定して、以降説明する。
【0024】
図1ないし図3に示すように、記録装置1は、X軸およびY軸方向よりもZ軸方向の寸法が大きく形成された薄型の箱状体を成す筐体2によって外観が構成されている。なお、所謂縦置き型の記録装置1は、X軸およびY軸方向の寸法を小さくすることで設置面積が小さくなるように構成されている。また、X軸方向の寸法は、使用する用紙Pの最大幅により決定されるため、Y軸方向の寸法を抑えることにより、設置面積の抑制を図っている。
【0025】
また、記録装置1は、搬送路上に臨む用紙Pにインクジェット方式で印刷処理を行う印刷部3と、枚葉の用紙Pを搬送路に沿って送る搬送部4と、用紙Pを起立姿勢で収容し、筐体2に対し着脱自在に装着される記録媒体カセット5と、搬送部4や印刷部3などを支持する装置フレーム(図示省略)と、装置全体を統括制御する制御装置(図示省略)と、を備えている。
【0026】
筐体2の上面には、操作ボタン等が配置された操作パネル21と、PC等に接続するためのケーブルが接続されるケーブル端子22と、複数のインクカートリッジ(図示省略)を着脱可能に装着するカートリッジ装着部(図示省略)を開閉するカートリッジカバー23と、が設けられている。また、筐体2の上面には、記録が行われた用紙P(記録媒体)を排出するための用紙排出口24を開閉する用紙排出口カバー25が設けられている。なお、用紙排出口カバー25は、ユーザーによって開閉されるものであるが、仮に閉じた状態で記録が実行された場合でも、図外の開閉機構によって自動的に開くようになっている。
【0027】
印刷部3は、後述する一対の搬送ローラー42の下流側に配設されており、インクジェットヘッド32を搭載したキャリッジ31と、インクジェットヘッド32に対向位置に設けられた案内部材33と、を有している。
【0028】
キャリッジ31は、X軸方向に延びるキャリッジガイド軸34に沿って、図外のモーターにより往復移動可能に設けられている。なお、図2に示すように、キャリッジ31は、傾斜姿勢で設けられるため、キャリッジガイド軸34を中心として回動しようとする力が生じる。そこで、キャリッジ31の上方に設けられた被ガイド部35が、X軸方向に延びるキャリッジガイド板36を挟み込むことで、キャリッジ31の姿勢を一定に保持している。
【0029】
案内部材33は、搬送経路の一部を構成すると共に、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド32との間のギャップ(ワークギャップ)を規定する。また、案内部材33には、インクジェットヘッド32と対向する位置に縁無し印刷の際、用紙P端から外れた領域に吐出されるインクを受ける凹部が形成されている。この凹部の中には、インクを吸収するインク吸収材(図示省略)が設けられている。そして更に、案内部材33の下方には、打ち捨てられたインクを貯留する廃液タンク(図示省略)が配置されている。
【0030】
なお、本実施形態は、インクカートリッジがキャリッジ31から独立して設けられたいわゆるオフキャリッジ型であるが、インクカートリッジがキャリッジ31に搭載された、いわゆるオンキャリッジ型であってもよい。また、本実施形態では、キャリッジ31がX軸方向に移動しながら記録を行ういわゆるシリアルプリンターであるが、用紙P幅をカバーする固定式のインクジェットヘッド32を用いてもよい。さらに、インクジェット方式に限らず、その他の記録方式であってもよい。
【0031】
搬送部4は、上流側から、装着された記録媒体カセット5の先端に対向する位置に設けられ、記録媒体カセット5から供給された用紙Pを下流側へと送り出す給送ローラー41と、用紙Pを印刷部3へと搬送する一対の搬送ローラー42と、印刷部3の案内部材33から用紙Pの浮き上がりを防止する案内ローラー43と、記録の行われた用紙Pを印刷部3から排出する一対の排紙ローラー44と、を有している。なお、図示は省略するが、給送ローラー41(後述する補助従動ローラー46)、各搬送ローラー42、案内ローラー43および各排紙ローラー44は、それぞれ、用紙Pの幅方向(X軸方向)に延びる回転軸と、回転軸に適宜の間隔で複数軸着したローラー本体と、から構成されている。
【0032】
給送ローラー41は、用紙Pの先端と接した状態で、図外のモーターにより回転することにより用紙Pを下方へと送り出す。給送ローラー41の外周面に対向位置には、用紙Pが湾曲反転する略U字状の搬送経路を形成するガイド部材45が配設されている。なお、符号46は、給送ローラー41による用紙Pの送り出しを補助する補助従動ローラーである。すなわち、給送ローラー41と補助従動ローラー46とでニップローラーの形態を為している。
【0033】
一対の搬送ローラー42は、図外の駆動モーターにより回転駆動される搬送駆動ローラー42aと、図外の付勢手段により搬送駆動ローラー42aに向かって付勢されている搬送従動ローラー42bと、を有し、ニップローラーの形態を為している。搬送従動ローラー42bは、搬送駆動ローラー42aとの間で用紙Pを挟圧することで従動回転する。
【0034】
一対の排紙ローラー44は、図外の駆動モーターにより回転駆動される排紙駆動ローラー44aと、図外の付勢手段により排紙駆動ローラー44aに向かって付勢されている排紙従動ローラー44bと、を有し、ニップローラーの形態を為している。排紙駆動ローラー44aは、その表面がゴム等により形成されている。排紙従動ローラー44bは、拍車状(スターホイール)に形成され、排紙駆動ローラー44aとの間で用紙Pを挟圧することで従動回転する。
【0035】
下方へと送り出された用紙Pは、給送ローラー41およびガイド部材45によって上向きに反転させられ、一対の搬送ローラー42へと送られる。用紙Pは、一対の搬送ローラー42の間に挟まれて、印刷部3に送られる。印刷部3で記録の行われた用紙Pは、案内ローラー43および一対の排紙ローラー44を介して、記録媒体カセット5の保持面61(後述する。)に摺接しながら上方に移動する(図3の破線参照)。排紙された用紙Pは、その下端が排紙駆動ローラー44aの近傍の装置フレームに設けられた受容部62に起立姿勢で支持される。なお、案内ローラー43は、拍車状のローラー(スターホイール)により構成されている。
【0036】
受容部62は、排紙駆動ローラー44a側の先端部分が上方に屈曲しており、支持した用紙Pの下端が脱落したり、排紙駆動ローラー44aに接触しないようになっている。また、受容部62は、適宜の間隔で複数配置された排紙駆動ローラー44aの間に入り込むようにして、X軸方向に適宜の間隔で複数配置されている。つまり、受容部62は、全体として略櫛歯形状に形成されている。なお、請求項に言う「保持部」とは、受容部62および保持面61を指す。
【0037】
続いて、図2ないし図7を参照して、記録媒体カセット5について説明する。記録媒体カセット5は、筐体2に対してZ軸方向にスライドすることで着脱可能に構成されており、装着することで記録装置1の外観を構成する。また、記録媒体カセット5を取り外すことで記録装置1の内部が露出するため、搬送経路に用紙Pが詰まった等の不具合を容易に解消することができる。
【0038】
記録媒体カセット5は、装着時に筐体2と面一になり、記録装置1の概観をなすカセット筐体部53と、全体としてトレイ状に形成された本体トレイ54と、用紙Pを収容する用紙収容空間Sを開閉する上部外側カバー55と、上部外側カバー55に対し、本体トレイ54の上端から突出するようにスライド可能に設けられた上部内側カバー56と、本体トレイ54に対し、本体トレイ54の上端から突出するようにスライド可能に設けられた上部スライドトレイ57と、用紙収容空間Sに収容した用紙Pの先端を揺動させる可動トレイ59と、上部外側カバー55に対し、X軸方向にスライド可能に設けられたエッジガイド58と、上部スライドトレイ57に対し、Y軸方向にスライド可能に設けられたレングスガイド63と、を備えている。
【0039】
本体トレイ54の下端部には、収容した用紙Pの先端を支持する用紙先端支持壁54aが形成されている。記録媒体カセット5が装着された状態において収容された用紙Pは、その先端が用紙先端支持壁54aに当接した状態で支持される。
【0040】
図4ないし図7に示すように、上部外側カバー55は、本体トレイ54の上下方向略中央部に設けられた左右一対の回動支点55aを中心に回動するようになっている。上部外側カバー55を開放することにより、用紙収容空間Sが表れて、用紙Pの収容が可能となる。また、上部外側カバー55の外面(装着時に装置内側に向く面)は、記録済みの用紙Pを保持する(蓄える)ための保持面61として機能している。
【0041】
図2および図3に示すように、上部内側カバー56は上部外側カバー55に対し、また、上部スライドトレイ57は本体トレイ54に対し、それぞれスライドすることで、用紙PのZ軸方向の長さに合わせて、用紙収容空間Sを伸縮させることができる。また、上部内側カバー56を延ばした場合は、上部外側カバー55の外面から連なるように上部内側カバー56の外面が延在し、保持面61がZ軸方向に延長される。なお、請求項に言う「ベースケース」とは、本体トレイ54および上部スライドトレイ57を指し、また、「カバーケース」とは、上部外側カバー55および上部内側カバー56を指す。
【0042】
可動トレイ59は、本体トレイ54の下側に設けられ、左右一対の揺動支点59a(図4参照)を中心に回動し、収容された用紙Pの先端を、給送ローラー41に圧接させる状態(図3参照)と、離間させる状態(図2参照)と、の間を揺動する(いわゆるホッパー)。また、図4に示すように、可動トレイ59には、用紙Pの先端に対応する位置に、給送ローラー41が圧接できるように、X軸方向に沿って適宜の間隔で複数の接触開口部59bが形成されている。
【0043】
図2ないし図5に示すように、エッジガイド58は、用紙収容空間Sに収容された用紙Pをガイドする供給側ガイド64と、保持面61に保持された用紙Pをガイドする排出側ガイド65と、上部外側カバー55を貫通して形成された長穴55bを通して供給側ガイド64と排出側ガイド65とを連結する連結部66と、を有している。
【0044】
エッジガイド58は、連結部66の部分で、長穴55bに沿ってスライド自在に設けられており、図4および図5において右側から用紙Pの端に接触して、用紙Pの搬送方向(Z軸方向)への移動をガイドする。これにより、用紙Pは、幅方向に整えられた状態で用紙収容空間Sにセットされ、幅方向にずれることなく正常に搬送される。
【0045】
図2ないし図5に示すように、供給側ガイド64は、用紙収容空間S内(上部外側カバー55の内側)に位置する上部ガイド71と、可動トレイ59の内側に位置する下部ガイド72と、上部ガイド71の下端部と下部ガイド72の上端部とを回動自在に連接するガイド回動支点73と、を有している。すなわち、下部ガイド72は、上部外側カバー55から外れて用紙Pの搬送方向に延在して形成されている。したがって、下部ガイド72は、用紙Pの左右端に対して搬送方向(Z軸方向)に長く接触することができる。このため、エッジガイド58としての機能を確実に発揮することができる。
【0046】
図6および図7に示すように、ガイド回動支点73は、上記した左右一対の回動支点55aと同軸に設けられている。したがって、上部ガイド71は、上部外側カバー55と共に回動する。これにより、用紙収容空間Sを大きく開放することができると共に、上部外側カバー55を外れた部分のエッジガイド58が、用紙Pの収容時のガイドとなる。また、上記した左右一対の揺動支点59aは、回動支点55aおよびガイド回動支点73よりも僅かに下方かつ後方に位置ずれして設けられている(図2および図3参照)。これにより、下部ガイド72は、可動トレイ59と共に回動可能となっている。
【0047】
次に、排出側ガイド65は、保持面61側に設けられ、連結部66から上方に延設されたガイドバー74と、ガイドバー74の上端部に接続された板状部75と、を有している。板状部75は、排紙された用紙Pに対し、X軸方向の一端(図4および図6では右側)から用紙Pに臨むように設けられている。また、ガイドバー74および板状部75は、ユーザーがエッジガイド58のスライド操作を行うための操作子となる。
【0048】
このように、供給側ガイド64と排出側ガイド65とは、連結部66により連結されていることから、供給側ガイド64または排出側ガイド65のうちどちらか一方を変位させることにより、他方も同時に変位させることができる。すなわち、用紙Pを収容した用紙収容空間Sを、上部外側カバー55により閉塞したまま、エッジガイド58のスライドを操作することができる。これにより、用紙Pの左右端に対するエッジガイド58の突き当てが強い(または弱い)ため、エッジガイド58の変位調整が必要な場合など、上部外側カバー55を再び開放することなく容易かつ迅速にエッジガイド58を変位させることができる。
【0049】
以上のように、本実施形態のエッジガイド58には、上部外側カバー55の表裏にそれぞれ供給側ガイド64と排出側ガイド65とが設けられている。このため、用紙収容空間S内の用紙Pだけでなく、保持面61に保持された用紙Pの左右端もガイドすることができる。これにより、供給側と排出側とで個別にエッジガイド58の摺動構造を設ける必要がなく、構造の単純化および低コスト化を図ることができる。
【0050】
なお、図4ないし図6に示すように、上部外側カバー55の長穴55bの下側近傍には、例えばJIS規格A4判サイズなどに対応した用紙PのX軸方向の端を指標する目盛55cが設けられている。この目盛55cは、上部外側カバー55の表裏を貫通する穴であり、用紙収容空間S内からだけでなく、保持面61側からも確認できるようになっている。これにより、上部外側カバー55により用紙収容空間Sを閉塞する前に、収容した用紙Pに合わせてエッジガイド58を変位させることができる。また、目盛55cを確認することで、用紙収容空間Sを閉塞した後に、収容した用紙Pのサイズを知ることができる。なお、目盛55cを貫通した穴ではなく、上部外側カバー55の表裏にそれぞれ印刷、窪みや突起等でマーキングしてもよい。
【0051】
続いて、図5および図6に示すように、レングスガイド63は、上部スライドトレイ57の用紙収容空間S側においてZ軸方向に延在して形成されたスライド溝77に対してスライド自在に係合するスライダー76と、スライダー76に取り付けられ、セットされた用紙Pの上端に接触する上端ガイド78と、を有している。
【0052】
スライド溝77は、図5および図6において左寄りに形成され、スライダー76を介して上端ガイド78を上下方向への移動をガイドする。上端ガイド78は、ユーザーがスライド操作するための摘みとして用いられると共に、上側から用紙Pの端に接触して用紙PのZ軸方向への移動を規制する。これにより、用紙Pは、長さ方向に対しても整えられた状態で用紙収容空間S内にセットされる。特に複数枚の用紙Pを積層してセットした場合に、搬送方向の下流側の端部が不揃いとなることで生じうる搬送不良を防止することができる。
【0053】
ここで、上部外側カバー55に対し、エッジガイド58およびレングスガイド63の摺動構造(長穴55bおよびスライド溝77)を設けると、上部外側カバー55の構造強度が低下する。上部スライドトレイ57に長穴55bおよびスライド溝77設けた場合も同様である。
しかし、本実施形態では、エッジガイド58は、上部外側カバー55に設けられ、レングスガイド63は、上部外側カバー55ではなく、上部スライドトレイ57に設けられている。このため、上部外側カバー55および上部スライドトレイ57の構造強度の低下を防止することができる。
【0054】
本実施形態の記録媒体カセット5に用紙Pをセットする場合、ユーザーは、先ず、上部外側カバー55を開放し、用紙Pを収納し、レングスガイド63を用紙Pの上端に接触させる。次に、好ましくは、用紙Pのサイズに合わせてエッジガイド58(供給側ガイド64)を大雑把に位置調整しておく。その後、上部外側カバー55を閉塞し、操作子となるガイドバー74または板状部75をスライド操作して供給側ガイド64を用紙Pの右端に突き当てるようにする。この際、目盛55cを指標として操作する。
【0055】
以上の構成によれば、用紙収容空間Sを上部外側カバー55により閉塞した状態で、エッジガイド58のスライド動作を操作することができる。このため、用紙Pのエッジに対するエッジガイド58の突き当てが不適切である場合に、上部外側カバー55を再び取り外すことなく容易にエッジガイド58を変位調整することができる。
【符号の説明】
【0056】
1:記録装置、55:上部外側カバー、57:上部スライドトレイ、58:エッジガイド、61:保持面、62:受容部、63:レングスガイド、64:供給側ガイド、65:排出側ガイド、66:連結部、71:上部ガイド、72:下部ガイド、73:ガイド回動支点、74:ガイドバー、75:板状部、P:用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体に記録を行う記録装置に対し着脱自在に構成され、前記記録媒体が収容される収容部を有するベースケースと、
前記ベースケースの前記収容部を覆うように設けられ、前記収容部を開閉するカバーケースと、
前記カバーケースに対し摺動自在に設けられ、前記収容部を閉塞したときに前記収容部に収容した前記記録媒体の少なくとも一端に接触して前記記録媒体をガイドするエッジガイドと、を備え、
前記エッジガイドは、前記カバーケースの前記ベースケースと反対側の面に露出した操作子を有することを特徴とする記録媒体カセット。
【請求項2】
前記カバーケースは、前記ベースケースと反対側の面が、収容状態から送り出されて記録が行われた前記記録媒体の保持部として機能し、
前記エッジガイドは、前記収容部側に設けられ、前記収容部に収容された前記記録媒体をガイドする供給側ガイドと、前記保持部側に設けられ、前記操作子を有し、前記保持部に保持された前記記録媒体をガイドする排出側ガイドと、前記カバーケースを貫通して形成された貫通穴を通して前記供給側ガイドと前記排出側ガイドとを連結する連結部と、を有し、前記貫通穴に沿って摺動自在に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の記録媒体カセット。
【請求項3】
前記エッジガイドは、前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に摺動自在に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の記録媒体カセット。
【請求項4】
前記ベースケースに対し前記記録媒体の搬送方向に摺動自在に設けられた第2エッジガイドを、更に備えていることを特徴とする請求項3に記載の記録媒体カセット。
【請求項5】
前記カバーケースは、一端を回転軸として回動自在に前記ベースケースに取り付けられていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の記録媒体カセット。
【請求項6】
前記カバーケースは、前記記録媒体の搬送方向に直交する方向に延在した一端を回転軸として回動自在に前記ベースケースに取り付けられており、
前記エッジガイドは、前記カバーケースから外れて前記記録媒体の搬送方向に延在して形成され、前記回転軸と同軸のエッジ回動軸により前記カバーケースと一体に回動することを特徴とする請求項3または4に記載の記録媒体カセット。
【請求項7】
前記ベースケースは、ベース本体と、前記ベース本体に対し摺動自在に係合するスライドベースと、を有し、
前記カバーケースは、カバー本体と、前記カバー本体に対し摺動自在に係合するスライドカバーと、を有し、
前記スライドベースおよび前記スライドカバーは、それぞれ、前記記録媒体の搬送方向に摺動することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の記録媒体カセット。
【請求項8】
前記カバーケースの前記ベースケースと反対側の面に前記記録媒体のサイズを指標する目盛が設けられていることを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の記録媒体カセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171716(P2012−171716A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32929(P2011−32929)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】