説明

記録媒体搬送装置および画像形成装置

【課題】すべり量を考慮した搬送誤差値を超える用紙長の用紙を検出する記録媒体搬送装置を提供する。
【解決手段】記録媒体搬送装置は、搬送ローラを回転させて、搬送路に沿って記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送路上で搬送される前記記録媒体を検知する媒体検知部と、前記記録媒体の標準長が記憶された記憶部と、前記媒体検知部による検知開始から検知終了までの検知時間を計測する検知時間計測部と、前記検知時間と前記搬送ローラの周速度とを乗算した値から、前記標準長を差分して搬送誤差値を算出する演算部と、今回搬送した記録媒体を計測した前記検知時間と前記周速度とを乗算した値と、1つ前に搬送した記録媒体から算出した前回の搬送誤差値を前記標準長から差分して得た値との差分値が、所定の値より大きいときにエラーと判定する判定部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録媒体搬送装置および画像形成装置に関し、特に、プリンタなどの複写装置の内部に設置されて、用紙(記録媒体)を搬送する記録媒体搬送装置、および記録媒体搬送装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の記録媒体搬送装置は、給紙トレイに格納された用紙をモータで回転させたローラで高速で搬送していた。この搬送手段の場合、ローラと用紙との間ですべりが生じるという問題がある。この問題を解決するために、特許文献1の記録媒体搬送装置は、ローラのすべりなどが生じないように、ローラの回転速度を変更するようにしている。ここで、特許文献1の記録媒体搬送装置は、基準となる所定位置のセンサを通過してからの時間を計測して、記録媒体の給紙速度(給紙ローラの外周速度)に時間を乗算して、記録媒体の用紙長を計測していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−308245号公報(段落0050〜0057)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の記録媒体搬送装置は、用紙の移動速度と、ローラの回転角速度に半径を乗算した周速度との差であるすべりを考慮していなかった。ローラの外周面と用紙(記録媒体)との間ですべりが生じるため、センサを通過するまでの時間が、すべりが生じなかった場合の理想時間より多くかかった。そのため、用紙が実際の用紙長よりも長く計測されてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであり、すべり量を考慮した搬送誤差値を超える用紙長の用紙を検出する記録媒体搬送装置、および記録媒体搬送装置を備える画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の記録媒体搬送装置は、搬送ローラを回転させて、搬送路に沿って記録媒体を搬送する搬送部と、前記搬送路上で搬送される前記記録媒体を検知する媒体検知部と、前記記録媒体の標準長が記憶された記憶部と、前記媒体検知部による検知開始から検知終了までの検知時間を計測する検知時間計測部と、前記検知時間と前記搬送ローラの周速度とを乗算した値から、前記標準長を差分して搬送誤差値を算出する演算部と、今回搬送した記録媒体を計測した前記検知時間と前記周速度とを乗算した値と、1つ前に搬送した記録媒体から算出した前回の搬送誤差値を前記標準長から差分して得た値との差分値が、所定の値より大きいときにエラーと判定する判定部とを備える構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、以上のような問題を解決するためになされたものであり、すべり量を考慮した搬送誤差値を超える用紙長の用紙を検出する記録媒体搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係る記録媒体搬送装置の搬送路と、搬送路に配設されたローラおよびセンサとの一例を示す図である。
【図2】画像形成装置が備える第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置の搬送用紙長計測処理動作のフローチャートである。
【図4】図3に続く第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置の搬送用紙長計測処理動作のフローチャートである。
【図5】画像形成装置が備える第3の実施形態に係る記録媒体搬送装置の構成を示すブロック図である。
【図6】第3の実施形態に係る記録媒体搬送装置のすべり量記憶部に記憶される用紙の種類とすべり量との関係を示すデータベースの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0010】
《第1の実施形態》
[記録媒体搬送装置による搬送処理の概要]
記録媒体搬送装置1は、図1に示すように、給紙トレイ2に載置された用紙P(記録媒体)を1枚ずつ搬送路3(搬送部)に沿って搬送するものであり、用紙Pを搬送路3に沿って搬送させるローラ4(給紙ローラ41、搬送ローラ42(搬送部)、レジストローラ43)と、用紙Pを検知するセンサ5(搬送センサ51、媒体検知部52、レジストセンサ53)とを備えている。ここで、記録媒体搬送装置1による用紙Pの搬送処理について簡単に説明する。
まず、給紙トレイ2に設置された給紙ローラ41が回転して、給紙トレイ2に載置された用紙Pのうち1枚が搬送路3に繰り出される。搬送ローラ42が回転して用紙Pが搬送路3に沿って搬送されて、搬送センサ51、次に媒体検知部52を通過して、レジストローラ43およびレジストセンサ53に到達する。そして、レジストローラ43によるスキュー補正が行われる。
その後、画像形成装置100は、記録媒体搬送装置1により搬送された用紙Pに画像を形成することで、用紙Pに画像が印刷されることになる。
【0011】
[画像形成装置の構成]
次に、画像形成装置100の構成を説明する。図2に示すように、記録媒体搬送装置1は、画像形成装置100に備えられ、画像形成装置100のコントロール部61からの指示に応じて、記録媒体搬送装置1の各構成部が動作して、ローラ4を回転させて用紙Pを搬送させる。
ここで、画像形成装置100は、例えば、電子写真記録方式のプリンタ、ファクシミリ装置、複写機、MFP(Multifunction Peripheral:多機能周辺装置)などであるが、いかなる種類の画像形成装置であってもよい。
【0012】
(画像形成装置100)
画像形成装置100は、記録媒体搬送装置1と、コントロール部61(制御部6)と、通信部11と、画面表示部12とを備える。以下、コントロール部61と通信部11と画面表示部12とについて簡単に説明する。記録媒体搬送装置1については詳細を後記する。
通信部11は、ネットワークを介してホストコンピュータ(不図示)と通信可能に接続するインタフェースであり、ホストコンピュータがユーザに操作されて、ホストコンピュータから印刷情報(画像データや印刷指示データなど)が送信される。
コントロール部61(制御部6)は、画像形成装置100が機能するように制御する構成部であり、印刷ジョブ管理部611と画面データ生成部612とを備える。
印刷ジョブ管理部611は、通信部11を介して取得した印刷情報(画像データや印刷指示データなど)に基づき、画像データを用紙P(記録媒体)に印刷するように、画像形成装置100が備える記録媒体搬送装置1や画像形成部(不図示)を制御する。
画面データ生成部612は、要求に応じて画面データを生成し、画面表示部12に出力する構成部である。例えば、エラー画面生成指示があったときに、画面データ生成部612は、後記する記憶部7の画面データ記憶部71からエラーに係るデータを取得して、エラー画面データを生成する。このエラー画面データを画面表示部12に出力する。
画面表示部12は、画面データ生成部612から取得した画面データを、ユーザが視認可能なように画面に表示する構成部であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)やモニタなどである。
【0013】
ここで、画像形成装置100は、通信部11の代わりに、ユーザから指示が入力される操作入力部や、読み取り台に載置された媒体をスキャンして画像データを生成する画像形成部を備えて、印刷ジョブ管理部611が、操作入力部から印刷指示データを取得し、画像形成部から画像データを取得する構成であってもよい。
【0014】
《第1の実施形態》
[記録媒体搬送装置1の構成]
次に、第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置1の構成を説明する。記録媒体搬送装置1は、図2に示すように、給紙トレイ2と、搬送路3と、ローラ4と、センサ5と、駆動制御部62(制御部6)と、検知時間取得部63(制御部6)と、演算部64(制御部6)と、エラー判定部65(制御部6)と、記憶部7と、タイマ部8とを備える。
【0015】
(給紙トレイ2)
給紙トレイ2は、用紙P(記録媒体)が積み重ねられて格納される構成部であり、用紙のサイズ毎に別のトレイに格納される。例えば、ISO 216の規格に準じたA4サイズの用紙が格納されるトレイや、B5サイズの用紙が格納されるトレイなどがある。
【0016】
(搬送路3)
搬送路3(搬送部)は、用紙Pが搬送されるルートである。ここで、第1の実施形態において搬送路3とは、給紙トレイ2の後端からレジストローラ43の前端までのルートとする。
【0017】
(ローラ4)
ローラ4は、給紙ローラ41と、搬送ローラ42と、レジストローラ43とを備え、各ローラは、外周面に弾性ゴムが装着されている。これらが駆動制御部62に制御されて回転することで、用紙Pが搬送路3に沿って搬送される。各ローラはモータにより回転する。
【0018】
給紙ローラ41は、給紙トレイ2から用紙Pを搬送路3に給紙する構成部である。給紙ローラ41は、給紙トレイ2に設置され、給紙ローラ41が回転することにより、給紙トレイ2に載置された用紙Pのうち1枚を繰り出して、搬送路3に給紙する。
搬送ローラ42(搬送部)は、用紙Pを搬送路3に沿って搬送させる構成部である。この搬送ローラ42の回転速度(回転角速度ω)により、用紙Pが搬送路3を移動する速度が変わる。このとき、搬送ローラ42の弾性ゴムと用紙Pとが接する部分では、弾性ゴムの変形によりニップ部が形成される。これにより、ニップ部の外周部とニップ部以外の外周部とで、ローラの外周部の速度が変化する。ここで、ニップ部以外の外周部の速度を周速度Vとし、ニップ部以外の外周部を含むローラの外周速度を等価的な周速度とする。この周速度Vは、搬送ローラ42の回転角速度ωに搬送ローラ42の有効半径Rを乗算した値で求まり、搬送ローラ42が搬送路3または用紙Pと接していない外周部の速度である。
レジストローラ43は、後記するレジスト制御部623からの指示に応じて、回転する構成部である。
【0019】
(センサ5)
センサ5は、搬送センサ51と、媒体検知部52と、レジストセンサ53とを備える。
搬送センサ51は、搬送路3に沿って搬送される用紙Pを検知し、用紙Pが搬送されたことを検知する構成部である。
媒体検知部52は、搬送路3に沿って搬送される用紙Pを検知する構成部である。媒体検知部52は、用紙Pの先端部が媒体検知部52の検知位置に差し掛かることで用紙Pを検知してから(検知ON)、その用紙Pの後端部が検知位置を通過して用紙Pを検知できなくなった時(検知OFF)までを検知する。媒体検知部52は、検知ONになったときに検知時間取得部に通知し、その後、検知OFFになったときにも検知時間取得部に通知する。この媒体検知部52は、例えば、用紙の厚みを測定する光学センサである。
【0020】
レジストセンサ53は、レジストローラ43の上流側に設置されたレジストセンサ53a(図1)と、下流側に設置されたレジストセンサ53b(図1)とを備え、搬送路3に沿って搬送される用紙Pを検知する構成部である。レジストセンサ53の検知結果を印刷ジョブ管理部611が管理している。
レジストセンサ53aは検知した用紙Pの搬送異常を検出するセンサであり、レジストセンサ53aにより用紙Pの先端部または後端部を検出できない場合、印刷ジョブ管理部611は、用紙搬送異常と判定する。一方、レジストセンサ53aにて用紙Pの先端部または後端部が検出されれば、用紙Pはレジストローラ43へと搬送される。
レジストセンサ53bは、レジストローラ43によりスキュー補正された用紙Pが搬送されたことを検知するセンサであり、用紙Pの先端部をレジストセンサ53bが検知した時点で、印刷ジョブ管理部611は不図示の感光ドラムでの露光を開始する。
【0021】
(記憶部7)
記憶部7は、画面データ記憶部71と、媒体情報記憶部72と、すべり量記憶部73(搬送誤差値記憶部)とを備える。ここで、画面データ記憶部71および媒体情報記憶部72は不揮発性記憶部であり、例えば、HDD(Hard Disc Drive)で構成される。一方、すべり量記憶部73は揮発性記憶部であり、例えば、RAM(Random Access Memory)で構成される。
画面データ記憶部71は、画面データを記憶する構成部である。画面表示部12に表示させるエラー画面の画面データを記憶している。
【0022】
媒体情報記憶部72は、給紙トレイ2に格納される用紙の情報を記憶する記憶部である。例えば、給紙トレイ2にA4サイズの用紙が格納されるトレイや、B5サイズの用紙が格納されるトレイなどがあれば、A4サイズの用紙情報やB5サイズの用紙情報が記憶されている。ここで、用紙情報とは、A3サイズの用紙であれば、媒体標準長L=420mm、マージンM=40mmなどが記憶されている。このマージンMは、後記するエラー判定部65で行われる判定において、用紙Pの用紙長に対して容認された誤差値であり、用紙のサイズに基づいて予め決められた値である。
【0023】
すべり量記憶部73(搬送誤差値記憶部)は、後記する演算部64により算出されたすべり量Kを記憶する構成部であり、すでに記憶されているすべり量Kに対して、新たなすべり量Kで更新して(上書き)記憶する。
【0024】
(タイマ部8)
タイマ部8は、現在時刻を得ることができる構成部である。
【0025】
(駆動制御部62)
駆動制御部62(制御部6)は、ローラ4の回転を制御する構成部であり、給紙ローラ41を制御する給紙制御部621と、搬送ローラ42を制御する搬送制御部622と、レジストローラ43を制御するレジスト制御部623とを備える。
【0026】
給紙制御部621は、印刷ジョブ管理部611からの搬送指示に応じて、給紙ローラ41を回転させる制御を行う構成部である。
搬送制御部622は、印刷ジョブ管理部611からの搬送指示に応じて、搬送ローラ42を回転させる制御を行う構成部である。この搬送制御部622は、搬送ローラ42を回転角速度ωで回転させる。これにより、搬送ローラ42は等価的な周速度Vで回転する。そして、後記する演算部64からの要求に応じて、搬送制御部622は周速度Vを演算部64に出力する。
レジスト制御部623は、レジストローラ43を制御して、用紙Pにスキュー補正を行う構成部である。例えば、レジスト制御部623は、レジストローラ43を回転させて、用紙の曲がりや歪みなどを矯正する。
【0027】
(検知時間取得部63)
検知時間取得部63(制御部6)は、媒体検知部52からの検知ONから検知OFFまでの時間を計測する構成部である。
検知時間取得部63は、媒体検知部52からの検知ONの通知を受けたタイミングで、タイマ部8から現在時刻(検知開始時刻)を取得し、次の媒体検知部52からの検知OFFの通知を受けたタイミングで、再びタイマ部8から現在時刻(検知終了時刻)を取得する。それから、検知時間取得部63は、検知開始時刻から検知終了時刻までの時間(検知時間Td)を算出する。そして、検知時間取得部63は、検知時間Tdを後記する演算部64に出力する。ここで、検知時間取得部63は、媒体検知部52からの検知ONの通知を受けたタイミングで、演算部64に対して処理の実行開始タイミングを与える。
【0028】
(演算部64)
演算部64(制御部6)は、搬送された用紙Pの実測データから、用紙Pの用紙長を算出し、搬送用紙計測長を得る構成部である。
演算部64は、検知時間取得部63から処理の実行開始タイミングを受け、媒体情報記憶部72から用紙Pに係る用紙サイズ情報(媒体標準長LおよびマージンM)を取得する。ここで、用紙Pの用紙サイズは、給紙制御部621が給紙ローラ41を制御して、給紙ローラ41が給紙する。これにより、給紙ローラ41が用紙Pを繰り出した給紙トレイ2の情報から得ることができる。
【0029】
そして、演算部64は、すべり量記憶部73からすべり量Kを取得する。ここで、すべり量記憶部73にすべり量Kが記憶されていなければ、すべり量K=0として以下の処理を行う。
演算部64は、監視量Cを算出する。この監視量Cは、媒体情報記憶部72から取得した媒体標準長LおよびマージンMと、すべり量Kとを加算して得られる値である(C=L+M+K)。この監視量Cをエラー判定部65に出力する。
【0030】
その後、演算部64は検知時間取得部63から検知時間Tdを取得し、さらに搬送制御部622から周速度Vを取得して、検知時間Tdに周速度Vを乗算することで、用紙Pの用紙長を算出する(搬送用紙計測長:Td×V)。この搬送用紙計測長(Td×V)をエラー判定部65に出力する。
演算部64は、エラー判定部65から「判定結果OK」を取得して、すべり量Kを算出する。このすべり量Kは、搬送用紙計測長(Td×V)から媒体標準長Lを差分した値である(K=Td×V−L)。これにより算出したすべり量Kを演算部64はすべり量記憶部73に記憶させる。
【0031】
(エラー判定部65)
エラー判定部65(制御部6)は、演算部64が算出した搬送用紙計測長が誤差範囲内であるか否かを判定する構成部である。
エラー判定部65は、演算部64から搬送用紙計測長(Td×V)および監視量Cを取得して、搬送用紙計測長(Td×V)が監視量Cを超えているか否かを判定する。判定の結果、超えていれば(Td×V>C)、エラー判定部65は、コントロール部61に計測エラーであることを出力する。一方、超えていなければ(Td×V≦C)、エラー判定部65は、コントロール部61および演算部64に判定結果がOKであることを出力する。
【0032】
ここで、監視量Cは、用紙Pに係る媒体標準長Lにその用紙情報のマージンMを加算した値であり、このとき、すべり量記憶部73にすべり量Kが記憶されていれば、その加算値にすべり量Kをさらに加算した値である。これにより、エラー判定部65は、判定対象の用紙Pが給紙ローラ41に給紙された2枚目以降の用紙であれば、1枚目のときに演算部64が算出したすべり量Kを考慮した判定を行う。
【0033】
以上の構成を備えることで、第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置1は、用紙Pを搬送時に発生してしまうすべり量Kを考慮して、用紙サイズエラーの判定の対象とすることができる。また、搬送用紙計測長(Td×V)からすべり量Kを差分した値が媒体標準長Lとなるため、このすべり量Kを考慮して、印刷位置をずらすなどすることで、画像形成装置100は用紙Pに正確な印刷を行うことができる。
【0034】
[搬送用紙長計測処理動作]
第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置の搬送用紙長計測処理動作について、図3および図4のフローチャートを用いて説明する。
駆動制御部62が印刷ジョブ管理部611から搬送指示を取得し(ステップS101)、給紙ローラ41が給紙トレイ2から用紙Pを繰り出して、搬送路3上に給紙する(ステップS102)
【0035】
媒体検知部52が搬送路3に沿って搬送される用紙Pを検知し(媒体検知部がON)(ステップS103)、検知時間取得部63に通知する。これにより、検知時間取得部63は、タイマ部8から検知開始時刻を取得する(ステップS104)。そして、検知時間取得部63は、演算部64に処理を行わせる。
【0036】
演算部64は、媒体情報記憶部72から用紙サイズ情報(媒体標準長LおよびマージンM)を取得する(ステップS105)。そして、演算部64は、すべり量記憶部73にすべり量Kが記憶されているか否かを判定する(ステップS106)。ここで、すべり量Kが記憶されていれば、媒体標準長LにマージンMを加算した値に、さらにすべり量Kを加えた監視量Cを算出する(C=L+M+K)(ステップS107)。一方、すべり量Kが記憶されていなければ、媒体標準長LにマージンMを加算した監視量Cを算出する(C=L+M)(ステップS108)。
【0037】
その後、用紙Pの後端部が媒体検知部52の検知位置を通過して、媒体検知部52が用紙Pを検知できなくなり(媒体検知部がOFF)(ステップS109)、検知時間取得部に通知する。これにより、検知時間取得部63は、タイマ部8から検知終了時刻を取得する(ステップS110)。そして、検知時間取得部63は、ステップS104で取得した検知開始時刻から、ステップS110で取得した検知終了時刻までの検知時間Tdを算出する(ステップS111)。検知時間取得部63は、検知時間Tdを演算部64に出力する。演算部64は、検知時間Tdに周速度Vを乗算して搬送用紙計測長(Td×V)を算出し、搬送用紙計測長(Td×V)および監視量Cをエラー判定部65に出力する。
【0038】
エラー判定部65は、搬送用紙計測長(Td×V)が監視量Cを超えているか否かを判定する(搬送用紙計測長>監視量?(Td×V>C))(ステップS112(図4))。判定の結果、搬送用紙計測長(Td×V)が監視量Cを超えていれば(ステップS112,Yes)、エラー判定部65は、コントロール部61に計測エラーであることを出力する。これにより、コントロール部61の画面データ生成部612は、画面データ記憶部71から画面データを取得して、計測エラーのエラー画面データを生成し、画面表示部12にエラー画面を表示させる(ステップS113)。このとき、エラー画面には、搬送時に異常(搬送異常)が発生している可能性があることや、用紙Pのサイズに異常(記録媒体のサイズ異常)が発生している可能性があることが表示される。
【0039】
一方、判定の結果、搬送用紙計測長(Td×V)が監視量Cを超えていなければ(ステップS112,No)、エラー判定部65は、コントロール部61および演算部64に判定結果がOKであることを出力する(搬送用紙計測長判定:OK)(ステップS114)。
演算部64は、エラー判定部65から「判定結果OK」を取得して、すべり量Kを算出する(K=Td×V−L)(ステップS115)。演算部64はすべり量記憶部73に算出したすべり量Kを記憶させる。(ステップS116)。
【0040】
この後、駆動制御部62が印刷ジョブ管理部611から次の搬送指示があるか否かを判定する(ステップS117)。ここで、次の搬送指示があれば(ステップS117,Yes)、ステップS102の処理を再び行う。一方、次の搬送指示がなければ(ステップS117,No)、処理を終了する。これにより、記録媒体搬送装置1は搬送用紙長計測処理を終了する。
【0041】
《第2の実施形態》
次に、第2の実施形態に係る記録媒体搬送装置1Aの構成を説明する。ここで、第2の実施形態に係る記録媒体搬送装置1Aは、第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置1のすべり量記憶部73(図2)の機能が異なるだけなので図示を省略し、図1を参照して説明する。以下では便宜的にこれをすべり量記憶部73A(図2)と表記する。
すべり量記憶部73Aは、画面データ記憶部71(図2)および媒体情報記憶部72(図2)と同様に不揮発性記憶部であり、例えば、HDD(Hard Disc Drive)で構成される。これにより、第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置1とは異なり、記録媒体搬送装置1Aは、図3ないし図4に示す搬送用紙長計測処理の動作を終了しても、すべり量記憶部73Aにすべり量Kが記憶されることになる。
そのため、第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置1とは異なり、記録媒体搬送装置1Aは、給紙トレイ2から給紙された1枚目の用紙Pにも、すべり量Kを考慮した用紙長を算出することができる。
【0042】
《第3の実施形態》
次に、第3の実施形態に係る記録媒体搬送装置1Bの構成を説明する。記録媒体搬送装置1Bは、図5に示すように、第1の実施形態に係る記録媒体搬送装置1のすべり量記憶部73(図2)の代わりに、すべり量記憶部73Bを備える点が、記録媒体搬送装置1と異なっている。他の構成は同様なので、説明を便宜的に省略する。
【0043】
すべり量記憶部73Bは、画面データ記憶部71(図2)および媒体情報記憶部72(図2)と同様に不揮発性記憶部であり、例えば、HDD(Hard Disc Drive)で構成される。
このすべり量記憶部73Bは、演算部64により算出されたすべり量Kを、用紙情報ごとに記憶する構成部である。例えば、ISO 216の規格に準じた用紙サイズ(A3,A4,B4,B5など)ごとにすべり量Kを記憶してもよいし、用紙の質量を考慮してすべり量Kを記憶してもよい。
【0044】
ここで、第3の実施形態のすべり量記憶部73Bには、単位面積当たりの用紙の質量を考慮したすべり量Kが、例えば、図6に示すように記憶されているとする。すべり量記憶部73Bでは、1平方メートル当たりの質量が64g/m2以上82g/m2以下をLight紙、82g/m2を超えて105g/m2以下をMedium紙、そして、105g/m2を超えて128g/m2以下をHeavy紙と分類され、Light紙であればすべり量K=20、Medium紙であればすべり量K=30、そして、Heavy紙であればすべり量K=40としてすべり量記憶部73Bに記憶されているとする。
【0045】
ここで、媒体情報記憶部72に、用紙ごとの単位面積当たりの質量を予め記憶させておいてもよい。これにより、演算部64は、給紙ローラ41が用紙Pを繰り出した給紙トレイ2の情報から、用紙情報を取得するため、用紙情報に応じて、すべり量記憶部73BからLight紙であればすべり量K=20、Medium紙であればすべり量K=30、そして、Heavy紙であればすべり量K=40を取得することができる。
例えば、用紙情報が普通紙以外のOHP(overhead projector)シートなどであっても、演算部64は給紙トレイ2の情報から用紙情報を取得して、その用紙情報に応じて、媒体情報記憶部72から用紙ごとの1平方メートル当たりの質量を取得する。そして、すべり量記憶部73Bからすべり量を取得すればよい。
【0046】
以上の構成を備えることで、第3の実施形態に係る記録媒体搬送装置1Bは、用紙ごとの1平方メートル当たりの質量を考慮したすべり量Kを用いて、用紙長を算出することができる。用紙の1平方メートル当たりの質量によりすべり量Kは異なるため、第1の実施形態および第2の実施形態にかかる記録媒体搬送装置1(1A)よりも、さらに正しく用紙サイズエラーの判定を行うことができる。同様に、画像形成装置100は用紙Pにさらに正確な印刷を行うことができる。
【0047】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
例えば、第1の実施形態において、ステップS104の処理後、検知時間取得部63は、演算部64にステップS106〜S108の処理を行わせているが、ステップS111の処理後に、演算部64がステップS106〜S108の処理およびステップS112以降の処理を行っても構わない。
【符号の説明】
【0048】
1 記録媒体搬送装置
2 給紙トレイ
3 搬送路
4 ローラ
5 センサ
6 制御部
7 記憶部
8 タイマ部
11 通信部
12 画面表示部
41 給紙ローラ
42 搬送ローラ
43 レジストローラ
51 搬送センサ
52 媒体検知部
53(53a,53b) レジストセンサ
61 コントロール部
62 駆動制御部
63 検知時間取得部
64 演算部
65 エラー判定部
71 画面データ記憶部
72 媒体情報記憶部
73 すべり量記憶部(搬送誤差値記憶部)
100 画像形成装置
611 印刷ジョブ管理部
612 画面生成部
621 給紙制御部
622 搬送制御部
623 レジスト制御部
C 監視量
K すべり量(搬送誤差値)
L 媒体標準長
M マージン
R 搬送ローラの有効半径
ω 搬送ローラの回転角速度
Td 検知時間
V 周速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ローラを回転させて、搬送路に沿って記録媒体を搬送する搬送部と、
前記搬送路上で搬送される前記記録媒体を検知する媒体検知部と、
前記記録媒体の標準長が記憶された記憶部と、
前記媒体検知部による検知開始から検知終了までの検知時間を計測する検知時間計測部と、
前記検知時間と前記搬送ローラの周速度とを乗算した値から、前記標準長を差分して搬送誤差値を算出する演算部と、
今回搬送した記録媒体を計測した前記検知時間と前記周速度とを乗算した値と、1つ前に搬送した記録媒体から算出した前回の搬送誤差値を前記標準長から差分して得た値との差分値が、所定の値より大きいときにエラーと判定する判定部と
を備えることを特徴とする記録媒体搬送装置。
【請求項2】
前記周速度は、前記搬送ローラの回転角速度と前記搬送ローラの半径とを乗算した値であることを特徴とする請求項1に記載された記録媒体搬送装置。
【請求項3】
前記搬送誤差値が記憶される搬送誤差値記憶部
をさらに備え、
前記演算部は、算出した前記搬送誤差値を、前記前回の搬送誤差値として前記搬送誤差値記憶部に記憶させ、
前記判定部は、前記搬送誤差値記憶部から前記前回の搬送誤差値を取得する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された記録媒体搬送装置。
【請求項4】
前記記録媒体がサイズごとに格納される給紙トレイと、
前記給紙トレイから搬送路上に繰り出す給紙ローラと、
をさらに備え、
前記記憶部には、前記給紙トレイに格納された前記記録媒体のサイズごとの前記標準長が記憶され、
前記搬送誤差値記憶部には、前記搬送誤差値が、前記給紙トレイに格納された前記記録媒体の単位面積当たりの質量に基づいて、分別されて記憶されていることを特徴とする請求項3に記載された記録媒体搬送装置。
【請求項5】
前記所定の値は、前記記録媒体の標準長に基づいて決められた容認された誤差値を加算した値であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された記録媒体搬送装置。
【請求項6】
前記エラーは、搬送異常および前記記録媒体のサイズ異常のいずれか一方または双方であることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載された記録媒体搬送装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載された記録媒体搬送装置を備える画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−188281(P2012−188281A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55424(P2011−55424)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】